説明

新規グルタミン酸受容体とその利用

【課題】新規グルタミン酸受容体とその利用に関し、詳しくは、グルタミン酸受容体とそれをコードするDNA、ならびにそれらを発現させた細胞を利用して同受容体に結合するアゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレータ及び抗体を同定する方法、及びそのグルタミン酸受容体調節剤の製造方法とそれら調節剤から成る医薬組成物の提供。
【解決手段】グルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーター、を探索する工程と、有効成分として医薬組成物を調製する工程を含む、グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合する事により発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規グルタミン酸受容体とその利用に関し、詳しくは、グルタミン酸受容体とそれをコードするDNA、それら受容体を発現する形質転換細胞、受容体の製造方法、ならびにそれらを発現させた細胞を利用して同受容体に結合するアゴニスト、アンタゴニスト、アロステリックモジュレータ及び抗体を検索する方法、及びその製造方法と医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は、中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であり、その制御異常は、記憶障害、虚血性脳障害、筋萎縮性側策硬化症(ALS)、パーキンソン氏病、及びハンチントン舞踏病等の進行性脳障害などの病態形成に寄与していると広く考えられている(非特許文献1;非特許文献2)。そのため、グルタミン酸受容体に関する多くの研究が脳神経系を通じてこれまでなされ、多くの受容体(イオン型受容体3種類、代謝型受容体8種類)がそれらのスプライシングバリアントとともに中枢神経系で発見された。特に1992年にI型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1a)が中西らによりクローニングされて以来、mGluR1変異体としては少なくとも3種類のスプライシングバリアント(mGluR1b, mGluR1c, mGluR1d)が確認されている(詳しくは非特許文献3を参照)。それらの変異体の全てがmGluR1aのC末部分が短くなっており、神経細胞やグリア細胞において存在が確認されている。これらの受容体情報に基づいて、それら受容体の各々に作用する薬物の開発が盛んになされてきた。現在でも上記疾患の治療のための新しい治療薬が開発されている。(詳しくは非特許文献4;非特許文献5を参照)。
【0003】
今日我々は、末梢性グルタミン酸受容体の生理機能を示唆する幾つかの知見を有している(非特許文献6〜14)。それら末梢性グルタミン酸受容体は末梢神経、平滑筋や免疫組織に発現している。しかしながら、舌上皮や消化管におけるは発現についてはこれまで報告がなかった。
【0004】
ヒトを含めた哺乳動物が正常に成長(growth)し、正常な生活(健康)を維持するためには、必要な時期に必要な量の栄養素を経口より摂取し、不必要なものは排泄する必要がある。それを実際に行っているのが、口腔、胃、小腸、大腸からなる一本の管である消化管であり、消化吸収プロセスは腸管内在神経叢と外在脳神経系により管理されている。必要な栄養素の摂取判断は、意識に上る経路(味覚)と、意識に上らない自律的な経路(内臓感覚)の脳内における統合により行われる。塩味(ナトリウム、カリウムなど)はミネラルのマーカーとして体液浸透圧の保持等に、甘味(グルコース)は炭水化物のマーカーとしてエネルギー補給に、うま味(グルタミン酸ナトリウム)はタンパク質源のマーカーとしてエネルギー・体蛋白補給、苦味は有害物質のマーカーとしての意味があると考えられている。即ち、味を頼りに、必要な栄養素は摂取される。そして、必要量を十分摂取したかどうかは、胃および小腸、及び肝臓−門脈系に存在する栄養素センサーを介して迷走神経求心路を活性化し、延髄孤束核へ入力され一連の脳内プロセスを得ることによって、満足感(satiety)として判断される(非特許文献15; 非特許文献16)。
【0005】
一方、消化管における栄養素認識(chemical sense)機構に関する生理学的検討は古くから行われており、消化管内には内容物を知覚するセンサーが存在すると想定されている(詳しくは、非特許文献17、18を参照)。これら消化管センサーとしては、グルコースセンサー(非特許文献19)、温度センサー(非特許文献20)、浸透圧センサー(非特許文献21)、pHセンサー、アミノ酸センサー(非特許文献22)、圧センサー(非特許文献23)が挙げられる。
【0006】
特に、グルタミン酸を認識するセンサーとしては、新島らが、主として胃、小腸を支配している迷走神経胃枝及び腹腔枝の神経活動を電気的に捉える手法を用いて、グルタミン酸の消化管内投与時に神経興奮が起こることを見出し、迷走神経終末にグルタミン酸認識機構が存在すると仮定し、グルタミン酸センサーとしてその存在を示唆した(非特許文献24)。しかしながら、我々の本発明までグルタミン酸を認識するセンサーのクローニングはなされてこなかった。
【0007】
【非特許文献1】Meldrum, B.S., Neurology, 1994 Nov;44 (11 Suppl 8):S14-23
【非特許文献2】Nishizawa, Y., Life Sci. 2001, Jun 15;69(4):369-81
【非特許文献3】Hermans E. and Challiss RA, Biochemical J., 359: 465-484, 2001
【非特許文献4】Barnard, E.A., Trends Pharmacol. Sci., 1997, May;18(5):141-8
【非特許文献5】Schoepp, D.D., Conn, P.J., Trends Pharmacol. Sci. 1993 Jan;14(1):13-20
【非特許文献6】Berk, M., Plein, H., Ferreira, D., Clin. Neuropharmacol., 2001, May-Jun;24(3):129-32
【非特許文献7】Karim, F., J. Neurosci. 2001, Jun 1;21(11):3771-9
【非特許文献8】Berk, M., Plein, H., Belsham, B., Life Sci. 2000;66(25):2427-32
【非特許文献9】Carlton, S.M., Coggeshall, R.E., Brain Res. 1999, Feb 27;820(1-2):63-70
【非特許文献10】Haxhiu. M.A., Erokwu, B., Dreshaj, I.A., J. Auton. Nerv. Syst. 1997, Dec 11;67(3):192-9
【非特許文献11】Inagaki, N., FASEB J. 1995, May;9(8):686-91; Erdo, S.L.,Trends Pharmacol. Sci., 1991, Nov;12(11):426-9
【非特許文献12】Aas, P., Tanso, R., Fonnum, F., Eur. J. Pharmacol. 1989, May 2;164(1):93-102
【非特許文献13】Said, S.I., Dey, R.D., Dickman, K., Trends Pharmacol. Sci. 2001, Jul;22(7):344-5
【非特許文献14】Skerry,T.M., Genever, P.G., Trends Pharmacol. Sci. 2001, Apr;22(4):174-81
【非特許文献15】Bray, G.A., Proc. Nutr. Soc., 2000;59:373-84
【非特許文献16】Bray, G.A., Med. Clin. North.Am. 1989:73:29
【非特許文献17】Mei, N., J. Auton. Nerv. Syst., 1983;9:199-206
【非特許文献18】Mei, N., Lucchini, S., J. Auton. Nerv. Syst., 1992;41:15-8
【非特許文献19】Mei, N., J. Physiol. (Lond.) 1978, 282, 485-506
【非特許文献20】El Ouazzani, T., Mei, N., Exp. Brain Res. 1979 ;15;34:419-34
【非特許文献21】Mei, N., Garnier, L.,J. Auton. Nerv. Syst., 1986;16:159-70
【非特許文献22】Mei, N., Physiol. Rev., 1985;65:211-37
【非特許文献23】Barber, W.D., Burks, T.F., Gastroenterol Clin. North. Am. 1987;16:521-4
【非特許文献24】Niijima, A., Physiol. Behav., 1991;49:1025-8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、グルタミン酸受容体及び消化管センサーについて多くの研究がなされているが、今日まで、グルタミン酸センサーの実体は不明であり、研究の進展は見られていない。グルタミン酸センサーを含んだ消化管粘膜上における栄養素認識に必要な受容機構(受容体、トランスポーター等)が単離されていないことが、この分野の研究の進展を妨げている。本発明者らは、グルタミン酸消化管センサーに結合するうま味(様)物質の解明が、下記に挙げる栄養素認識機構の調節を目的とした薬剤等の開発への可能性につながると考えた。
【0009】
即ち、栄養素認識機構は、満足感(sataiety)あるいは飽きにも重要な役割を果たし、過食による体調不全、および偏食による摂取栄養素の偏りを是正する。この消化管における栄養素認識が正常に行われなくなると、当然ながら、消化吸収の全体のプロセスが乱れ、過食、偏食、食欲不振、消化不良、下痢、便秘等が引き起こされることが考えられる。より医学的には、心因性過食症、拒食症及び肥満症、胃酸分泌異常、消化管血流異常、消化酵素分泌異常等による消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、ストレス性潰瘍、薬物性(NSAIDs等)急性潰瘍、虚血性潰瘍(虚血性大腸炎)、インシュリン分泌異常又は消化管ホルモン分泌異常による糖尿病、運動性機能異常による胃もたれ、むかつき、便秘、下痢、過敏性腸症候群などの要因として考えられる。
【0010】
また、近年、肥満者の急増は社会現象化し、問題となっている。これらの人は基礎代謝が低下した人が多く、また過食傾向にあると言われ、これらの人の食べたいという欲求を如何にコントロールするかは社会的関心が非常に大きい。無理なダイエットを試みる人も多いが、多くの場合、失敗に終わっている。消化管における栄養素認識機構を是正し、食事による満足感を如何に正常に得るかは、これらの人にとっても非常に重要である。
【0011】
本発明の第二の目的は、上記観点からなされたものであり、課題は消化管上皮のグルタミン酸センサーに結合するグルタミン酸様物質を探索し、そのようなセンサー利用した技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、I型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の細胞内ドメインを認識する抗体を用いた免疫組織学的手法により、舌上皮及び消化管内における受容体分布を検討した。その結果、舌上皮及び胃内粘膜層には代謝型グルタミン酸1型受容体(GluR1)陽性細胞が存在すること見い出した。舌上皮では味蕾中の味細胞の内腔側面が、胃では、胃体部の粘液分泌細胞(副細胞)及びペプシノーゲン分泌細胞(主細胞)、並びに幽門部の粘液細胞がmGluR1陽性であった。舌上皮から配列番号19の核酸配列と味蕾型mGluR1β, type Aを含む新規グルタミン酸受容体のcDNA を最初にクローニングした(以下、“味覚型mGluR1”又は“味覚型mGluR1変異体”と呼ぶ)。 味覚型mGluR1は味蕾及び胃粘膜の細胞に見つかっており、このグルタミン酸受容体は新規うま味受容体として期待されている。更に、発明者らは胃粘膜の細胞中には別のmGluR1変異体が存在するかどうか根気強く検討を続けたところ、このグルタミン酸受容体は、これまで実態が不明であった、消化管グルタミン酸センサーである可能性が高く、本受容体cDNA、精製受容体及び本受容体発現細胞は、消化管グルタミン酸センサーの機能調節剤のスクリーニングに有用であることが見出された。
【0013】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、少なくとも以下の内容を含む。
[1]下記(A)又は(B)のいずれかの配列を有するグルタミン酸受容体タンパク質:
(A)配列番号2記載のアミノ酸配列
(B)配列番号2記載のアミノ酸配列において下記(a)、(b)、(c)及び(d)から選択されるアミノ酸置換を有する
(a)His 26のTyrへの置換;
(b)Ag 39のSerへの置換;
(c)Val 51のIleへの置換;及び
(d)前記(a)〜(c)の組合せ
[2]ラット胃粘膜の細胞に由来するものである、[1]記載のグルタミン酸受容体タンパク質。
[3]下記(a)〜(e)のいずれかの配列を有するDNA:
(a)下記(A)又は(B)のいずれかの配列を有するグルタミン酸受容体蛋白質をコードする塩基配列:
(A)配列番号2記載のアミノ酸配列
(B)配列番号2記載のアミノ酸配列において下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)から選択されるアミノ酸置換を有する
(i)His 26のTyrへの置換;
(ii)Ag 39のSerへの置換;
(iii)Val 51のIleへの置換;及び
(iv)前記(i)〜(iii)の組合せ
(b)配列番号1記載の核酸配列
(c)配列番号1の残基番号442〜2169の核酸配列
(d)配列番号1記載の核酸配列を有するDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るグルタミン酸受容体活性を有する蛋白質をコードする核酸配列。
[4][3]のいずれか記載のDNAを発現可能な形態で保持する細胞。
[5]DNAがベクターとともに発現可能な形態で保持されるものである、[4]に記載の細胞。
[6]グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索する方法であって、以下の工程を有する:
(a)[1]に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させる工程、
(b)該反応の阻害又は促進を検出する工程
[7]前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する[6]記載の方法。
[8]グルタミン酸のアゴニストの探索方法であって、以下の工程を有する:
(a)[1]に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と被検物質とを反応させる工程、
(b)該反応を検出する工程
[9]前記反応の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する[9]記載の方法。
[10]前記グルタミン酸受容体タンパク質を、[4]記載の細胞又は同細胞から調製される膜画分を用いる[6]又は[8]記載の方法。
[11][1]に記載のグルタミン酸受容体タンパク質に特異的に結合する抗体。
[12]以下の工程を含むプロセスにより製造され、グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより産生されるセカンドメッセンジャーを調節するための活性物質:
(a)[1]に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させる工程、
(b)該反応の阻害又は促進を検出する工程、及び、
(c)被検物質による該反応の阻害又は促進を分析し、被検物質がグルタミン酸のアゴニスト、アンタゴニスト、又は、アロステリックモジュレーターのいずれであるかを決定する工程
[13][12]記載の活性物質と、薬学的に許容されるキャリアーとを含んで成る、医薬組成物。
[14][1]に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索する工程と、
前記ステップにより得られるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として医薬組成物を調製する工程を含む、
グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、新規な代謝型グルタミン酸受容体が提供される。本グルタミン酸受容体は、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索に用いることができる。また、新規うま味物質としての食品添加物として、また、消化管における代謝異常による疾患、症状を改善する医薬として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のグルタミン酸受容体タンパク質は、典型的には、配列表の配列番号2のアミノ酸配列においてアミノ酸番号1〜576で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。本タンパク質をコードするラットcDNAの塩基配列のオープンリーディング領域を配列番号1に示す。
グルタミン酸受容体変異体のタンパク質は胃粘膜細胞から見つかった胃型のI型代謝型グルタミン酸受容体であるため、本発明者らはこれを胃型mGluR1と命名した。mGluR1にはC末部分のスプライシング変異によってA型(mGluR1a)、B型(mGluR1b)の2種類が知られている。なお、配列番号1でコードされる本発明のタンパク質はA型(mGluR1a)の変異である。以下、本発明のグルタミン酸受容体タンパク質は本明細書においてはmGluR1変異体と一般的に記載される場合がある。
いずれにしても、配列番号1に示す塩基配列の上流に適当なプロモーターを連結し、適当な細胞で発現させれば、活性のあるグルタミン酸受容体を産生させることができる。
【0016】
本発明の配列番号2記載のアミノ酸配列を、脳型代謝型グルタミン酸1型受容体(以下、mGluR1と記載;accession number M61099,配列番号14)と比較したところ、本発明の受容体はN末側が欠損していた。胃型mGluR1の一番目のメチオニンは脳型グルタミン酸受容体のM410に相当する。舌上皮から単離したmGluR1変異体にもこのN末アミノ酸配列欠損が含まれていた。細胞内ドメインのアミノ酸配列以外は、これまで明らかとなっている脳型、味覚型、胃型のmGluR1変異体のアミノ酸配列は全て同一である。胃型mGluR1はC末のK952部位(番号は脳型受容体のアミノ酸配列に対応している)でスプライシングを受けている。本発明のタンパク質は952番目のリジン以降は配列番号18に示されるアミノ酸配列から成る新規なペプチドを有している。このアミノ酸配列は脳型mGluR1には存在しない。配列の詳細は図2および3に示す。
【0017】
このように、本発明のmGluR1変異体はI型代謝型グルタミン酸受容体と同じ膜貫通ドメインを有しているが、I型代謝型グルタミン酸受容体とは細胞内ドメイン、細胞外ドメインが異なっている。本発明のGluR1変異体の細胞ガイドメインはグルタミン酸に対して活性を有する部位であるが、脳型mGluR1とはアフィニティが異なる。他の脳型mGluR1アゴニストである、イボテン酸、ACPD(1-aminocyclopentane-trans-1, 3-dicarboxylic acid)などなどもおそらく本発明のmGluR1変異体のリガンドとして機能することが予測される。
また、本発明のmGluR1変異体の細胞内ドメインはmGluR1の細胞内ドメインとは異なっているが、C末のG蛋白質と結合する部位は保存されている。より短いC末は受容体の活性化による電気生理応答に対して影響を与えるものの(Mary et al., J Biol Chem. 1998 Jan 2;273(1):425-32)、本mGluR1変異体はセカンドメッセンジャーを産生することができる機能的な受容体であると考えられる。
【0018】
本発明のmGluR1変異体は、ラット由来のものであってもよいし、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るという性質を持つ限り、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウサギといった哺乳類や鳥類、魚類その他いかなる動物由来のmGluR1変異体でもよい。
【0019】
mGluR1変異体を医薬組成物の成分として用いる場合には、哺乳類由来のものが好ましい。N末の欠損部分のアミノ酸配列はラット、マウス、ヒトの間で高く保存されている。図1に示すように、ラットに見られるN末スプライシングがおこるイントロン構造の核酸配列は、種の異なるマウスの同部位の配列と非常に類似している。ラットの胃及び味覚型mGluR1変異体のN末欠損を生じるイントロン構造も種の異なるマウスにも存在している。よって、その保存されたイントロン配列から、マウスおよびヒトにおいても同様の変異体が存在していることがわかる。
【0020】
本発明のmGluR1変異体は、配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質に加えて、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るという性質を持つ限り、配列番号2に示すアミノ酸配列において1若しくは複数の位置での1若しくは複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加を有するものであってもよい。特に、そのような置換、欠失、挿入または付加はラット、マウス、ヒト、サル、犬、牛やウサギ間での種差においても同様に生じている。本発明はラットから得られた典型的な配列であり、そのような置換がありうるアミノ酸の候補は一般的に入手可能なホモロジー検索ソフトウエアで容易に類推することが可能である。典型的な部分比較を図1に示す。特に、26番目のHisがTyrに、39番目のArgがSerに、51番目のValがIleに置換が起こりやすい(部位番号は配列番号2に対応)。したがって、本発明の変異体は、変異体特異的な欠損部位が保存されている限りにおいて、全ての置換バリエーションを含む。
【0021】
ここで、「複数」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、配列番号2に示すアミノ酸配列との相同性が80%以上、好ましくは90%以上となるような数が挙げられる。より具体的には、2〜115個、好ましくは、2〜58個、より好ましくは2〜30個である。
【0022】
尚、本発明のmGluR1変異体は、精製又は単離された形態であってもよいが、活性を必要とする場合は、適当な細胞で発現され、同細胞の膜に局在化した形態、又は、mGluR1変異体が発現した細胞から調製される膜画分に含まれる形態であることが好ましい。したがって、本発明のmGluR1変異体には、このようなmGluR1変異体を発現している細胞又は同細胞から調製された膜画分も含まれる。
【0023】
mGluR1変異体は、例えば、mGluR1変異体をコードするDNAを適当な宿主細胞に導入し、発現させることによって取得することができる。前記DNAとしては、マウス等の哺乳類細胞の染色体から単離したmGluR1変異体をコードする遺伝子又はcDNAが挙げられる。尚、染色体遺伝子を用いる場合は、mGluR1変異体を生成させるように、転写後のスプライシング等のプロセスを調節する必要があると考えられるため、cDNAを用いることが好ましい。
【0024】
mGluR1変異体cDNAは、ラット等の哺乳動物の舌上皮から調製したRNAを鋳型とし、実施例中に示したオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い、mGluR1変異体cDNAを増幅することによって、クローニングすることができる。また、本発明により、mGluR1変異体の構造、特にN末端領域の特徴的な構造が明らかになったので、開示されたこれらの構造情報に基づいて、mGluR1変異体cDNAのクローニング及び同定は容易に行うことができる。こうして得られるmGluR1変異体cDNAのオープンリーディング領域塩基配列が、配列番号1に示した配列である。
【0025】
本発明の別の態様は、mGluR1変異体をコードするポリヌクレオチドに関する。本発明のmGluR1変異体をコードするポリヌクレオチドは、それがDNAあるいはRNAであっても、上記のmGluR1変異体をコードするポリヌクレオチドの配列を有し、脳型の配列ではないものは、本発明に含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、DNAやmRNAのようなRNAであり、mGluR1変異体をコードする配列を持つものであり、二本鎖あるいは一本鎖の場合がある。二本鎖ポリヌクレオチドとは、DNAの二本鎖の場合、RNAの二本鎖の場合及びDNAとRNAが結合した二本鎖の場合とがある。一本鎖ポリヌクレオチドとは、コーディング配列を含むセンス鎖の場合と、コーディング配列を含まないアンチセンス鎖の場合がある。典型的には、ポリヌクレオチドは配列番号 1で示された配列を持つ。
変異型mGluR1をコードするDNAとは、配列番号1に示した配列を持つDNAに加えて、配列番号1の配列のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAや、この配列をもとに作ったプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものは、本発明に含まれる。「ストリンジェントな条件下」とは、特異的なハイブリダイズは生じるが、非特異的なハイブリダイズは生じない、という条件を表している。その条件を数値で表すことは難しいが、例えば、50%以上、好ましくは75%以上、更に好ましくは85%以上、とりわけ好ましくは95%以上の相同性を有するDNAはハイブリダイズするが、それ以下の相同性をもつDNAはハイブリダイズしない条件、あるいは、通常のサザンハイブリダイゼーションの条件、すなわち60℃で塩濃度は1 X SSC, 0.1% SDSのもの、あるいはむしろ、0.1 X SSC, 0.1% SDS、でハイブリダイズする、という条件が挙げられる。あるいは、配列番号16に示した塩基配列を持つプローブを用いると、胃型特異的ハイブリッドの形成が期待される。
【0026】
mGluR1変異体をコードするDNAを導入する細胞としては、mGluR1変異体の活性を必要とする場合は、動物細胞、昆虫細胞又は酵母が好ましく、動物細胞が特に好ましい。例えば、mGluR1変異体をコードするDNAを含む組換えベクターを導入し、一時的な機能発現が可能と考えられる細胞として、アフリカツメガエル卵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、baby hamster kidney (BHK)細胞、human embryonic kidney (HEK)細胞、Sf-9 insect細胞、PC12細胞、COCA-2細胞等が挙げられる。また、mGluR1変異体をコードするDNAを染色体DNAに組み込み、mGluR1変異体を永久的に発現させる場合には、上記の細胞のうち、アフリカツメガエル卵母細胞以外の細胞が好ましい。
mGluR1変異体をコードするDNAの導入方法としては一般的な方法を用いることができる。DNAの細胞への導入操作に必要な手技はSambrook, J., Fritsch, E. F. and Maniatis, T. "Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)などに記載されている。
【0027】
一方、mGluR1変異体を、mGluR1変異体に特異的に結合する抗体を作製するための免疫源として用いる場合のように、生理活性を必要としない場合には、mGluR1変異体をコードするDNAを導入する細胞は、mGluR1変異体を活性のある形態で発現しない細胞であってもよい。そのような細胞としては、エシェリヒア・コリをはじめとする異種蛋白質生産に通常用いられている微生物細胞を用いることができる。
【0028】
mGluR1変異体を宿主細胞中で産生させるためには、宿主細胞に適したプロモーターおよびエンハンサー等の発現調節配列に、mGluR1変異体をコードするDNAを連結する。また、mGluR4変異体をコードするDNAは、必要に応じて、プロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列を含んでいていもよい。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターである。
【0029】
細胞へのDNAの導入等の操作に必要な技術は、Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T., "Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition", Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)等に記載されている。
【0030】
上記のようにして得られるmGluR1変異体をコードするDNAを発現可能な形態で保持する細胞を培地で培養し、mGluR1変異体を生成させることにより、mGluR1変異体及びmGluR1変異体を保持する細胞を製造することができる。
【0031】
活性なmGluR1変異体、すなわちグルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るmGluR1変異体は、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索等に利用することができる。例えば、mGluR1変異体と、mGluR1変異体に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーター(以下、これらを「リガンド」と総称することがある)を探索することができる。アロステリックモジュレーターは、mGluR1変異体とグルタミン酸との結合部位以外の部位に結合し、アゴニスト又はアンタゴニストと同様の機能を示す。
また、グルタミン酸のアゴニストは、mGluR1変異体と被検物質とを反応させ、該反応を検出することによっても、探索することができる。
【0032】
活性なmGluR1変異体としては、mGluR1変異体を発現している細胞、又は同細胞から調製される膜画分が挙げられる。このような膜画分は、例えば、上記のように細胞に活性なmGluR1変異体を発現させ、そして、細胞を超音波などで破砕後、密度勾配遠心法で膜分画を集めることにより調製することができる。
【0033】
また、前記mGluR1変異体に結合する物質として、グルタミン酸もしくはグルタミン酸アゴニスト、又はmGluR1に結合する公知のリガンド(L-AP4、CPPG、MAP-4等)等が挙げられる。mGluR1変異体の活性を調節する物質としては、細胞内カルシウム濃度に影響を与える薬剤(カルシウムチャンネルおよびナトリウムチャンネルオープナー、Na/Kポンプ阻害剤、Na/Ca交換系作用剤、Ca-ATPase阻害剤、プロテインキナーゼC作用剤)、細胞内cAMP濃度に影響を与える薬剤(フォスフォジエステラーゼ作用剤、アデニレートシクラーゼ作用剤)、細胞内cGMP濃度に影響を与える薬剤(cGMP依存性フォスフォジエステラーゼ作用剤、グアニレートシクラーゼ作用剤)等が挙げられる。
【0034】
mGluR1変異体と、これに結合する物質との反応の阻害又は促進は、mGluR1変異体にグルタミン酸等のリガンドが結合することによって発生するセカンドメッセンジャーを検出することによって、検出することができる。また、セカンドメッセンジャーを検出する代わりに、既知のリガンドを標識したものを用い、標識リガンドとmGluR1変異体との結合を測定することによっても、前記反応の阻害又は促進を検出することができる。
また、mGluR1変異体とグルタミン酸のアゴニストとの反応は、mGluR1変異体とグルタミン酸のアゴニストとの結合により発生するセカンドメッセンジャーを検出することによって、検出することができる。
【0035】
胃型mGluR1変異体の細胞内ドメインは脳型mGluR1aの細胞内ドメインより267アミノ酸(約800塩基)欠損している。その差を除いては、脳、味覚、胃型mGluR1は基本的に同じ細胞内シグナル伝達機序を持つと思われる。したがって、前記セカンドメッセンジャーは、Gq(G蛋白結合蛋白質)を活性化しフォスフォリパーゼCの活性化に伴うイノシトールトリス燐酸(IP3)産生に伴う、細胞内カルシウム濃度の上昇である。また、シグナル伝達におけるカルシウム変動の下流には、細胞内カルシウム依存性のプロテインキナーゼを介した遺伝子発現調節によるものと、細胞質・膜蛋白の燐酸化による急性期の機能調節がある。したがって、細胞膜フラクションの蛋白リン酸化、カルシウム依存性フォスフォジエステラーゼの活性化に伴う、細胞内cAMP, cGMP変動、チャンネル機能変化の測定等によって、カルシウム、IP3以外のセカンドメッセンジャーを検出することができる。
以下に、mGluR1変異体を用いたリガンド探索の具体的な方法を例示する。
【0036】
(1)アフリカツメガエル卵母細胞に、mGluR1変異体cRNAを発現させ、2電極ボルテージクランプ法により、細胞内カルシウム依存性クロライド電流の増強或いは減弱を指標に、mGluR1変異体に作用するリガンド検索を行う(Pin JP et al., Proc Natl Acad Sci U S A 1992 Nov 1;89(21):10331-5; Kasahara J, Sugiyama H, FEBS Lett 1994 Nov 21;355(1):41-4; Takahashi K et al., J Biol Chem 1993 Sep 15;268(26):19341-5)。
【0037】
(2)mGluR1変異体発現細胞又は同細胞から調製した膜画分に、リガンド候補化合物、及びmGluR1に作用する既知のリガンド(例えばグルタミン酸、キスカル酸、CHPG, MPEP, LY367385等)を一定期間作用させ、mGluR1変異体発現細胞の細胞膜又は膜画分に結合した既知リガンドの量を測定することにより、リガンド検索を行う(Naples MA, Neuropharmacology 2001;40(2):170-7; Thomsen C, Neuropharmacology 1997 Jan;36(1):21-30; H.I. Yamamura, S.J. Enna and M.J. Kuhar eds, 1958, Neurotransmitter Receptor Binding, 2nd ed., Raven Press, New York)。既知リガンドの量は、それらの物質の一部を放射活性ラベルし、細胞膜又は膜画分に結合する放射活性の量により、測定することができる。
【0038】
(3)mGluR1変異体発現細胞に、あらかじめカルシウム感受性色素(例えばFura-2、Indo-1、Fluo-3等)を導入し、リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内カルシウム濃度)変化を指標として、リガンド検索を行う。あるいは、mGluR1変異体アゴニストと、リガンド候補化合物と、カルシウム感受性色素を導入したmGluR1変異体発現細胞とを一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内カルシウム濃度)変化により、リガンド検索を行う。
【0039】
(4)mGluR1変異体発現細胞に、あらかじめcAMP感受性蛍光蛋白質(例えばFlCRhR等)を導入し、リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときの蛍光強度比(細胞内cAMP濃度)変化を指標として、リガンド検索を行う(Adams SR, Nature 1991 Feb 21;349(6311):694-7)。
【0040】
(5)リガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたとき、あるいは、mGluR1変異体作動薬とリガンド候補化合物とmGluR1変異体発現細胞を一定期間接触させたときのプロトン産生量をサイトセンサーにより測定し、プロトン産生量を指標としてリガンド検索を行う(McConnell HM, Science 1992 Sep25;257(5078):1906-12)。
【0041】
上記のようにして検索されるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として含む食品添加物は新規うま味調節物質として使用ができる。また、上記のようにして検索されるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として含む医薬組成物は、グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬として使用することができる。セカンドメッセンジャーを調節することによって、グルタミン酸受容体異常に起因する疾患、病態を改善、予防することができる。
【0042】
グルタミン酸受容体異常に起因する迷走神経制御異常としては、求心路異常(栄養素認識障害)と遠心路異常がある。求心路異常に起因する疾患又は病態としては、過食症、拒食症及び肥満症等が挙げられる。また、遠心路異常に起因するものとしては、胃酸分泌異常、消化管血流異常、消化酵素分泌異常等による消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)、ストレス性潰瘍、薬物性(NSAIDs等)急性潰瘍、虚血性潰瘍(虚血性大腸炎)、インシュリン分泌異常又は消化管ホルモン分泌異常による糖尿病、過食症、拒食症、肥満症、及び、運動性機能異常による胃もたれ、むかつき、便秘、下痢、過敏性腸症候群などが挙げられる。
【0043】
mGluR1変異体を免疫源として用いることにより、mGluR1変異体に特異的に結合する抗体を作製することができる。特に、mGluR1変異体はC末端側に新規なアミノ酸配列(配列番号18)を有しているので、この部分をエピトープとする抗体、特にモノクローナル抗体は、mGluR1変異体に結合し、他のグルタミン酸受容体には結合しないと予想される。mGluR1変異体に特異的な抗体は、mGluR1変異体特異的な免疫染色等に用いることができる。更に、mGluR1変異体のC末細胞内ドメインのアミノ酸残基の立体構造予測から、mGluR1変異体特異的な抗体を作製することが可能である。mGluR1変異体に特異的な抗体は、mGluR1変異体特異的な免疫染色等に用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されたものではない。
【0045】
[実施例1] ラット有郭乳頭からの新規な代謝型グルタミン酸受容体cDNAのクローニング
10匹の16週齢のウィスター系ラットの有郭乳頭(circumvallate papillae)からtotal RNAを抽出して、逆転写反応によりcDNAを得た(SuperScript, Gibco-BRL社)。完全長のmGluR1 cDNAを鋳型として、Z-TaqでPCRを行った。この酵素は、3’末端の反応性がよく、後のTOPOクローニング反応に適している。PCR産物は2%アガロースゲル電気泳動に供し、また塩基配列はABIシーケンサー(ABI社製、Model 3100)で解析した。
味覚mGluR1β タイプAは、表1で示した変異型mGlluR1βタイプAに特異的な、5’配列のforwardプライマー(北海道システムサイエンス社製)を用いて、circumvallate papillaeからクローニングした。また、以下のreverseプライマーは、脳型のmRNA配列を基に設計した(mGluR1-4253R 5'-TAC CAT ATG GAA TTG TGC TTT GTC A-3' (配列番号: 4) and mGluR1-4198R 5'-ATA ATT CAA GAG TCA CAA TCC TGG C-3' (配列番号: 11) for type A (Masu, et al., Nature, 349:760, 1991)。
150ngのcDNAを鋳型として用い、10 μMのforwardプライマーとreverseプライマー、10X LA PCRバッファー、2.5 mM の MgCl2 と、 それぞれ2.5 mM の dNTPを、0.25 units の Z-Taqと混合し、水を加えて10 μlとした。PCRの反応条件は、GeneAmp PCR System 9700を用いて、94℃20秒、56℃1分、68℃3分で30サイクル反応させた後、68℃で10分間反応させた。続いて、2回目のPCRを行った後、増幅産物はTOPO TA Cloning Kit (Invitrogen)を用いて、pCRII-TOPO vectorにクローニングした。コロニーPCRでポジティブクローンを選別し、フ゜ラスミト゛DNAはHispeed Plasmid Maxi-Kit (Quiagen)で精製して機能解析に用いた。
結果として、配列番号19に記載されているmGluR1β タイプAのcDNAが見つかった。
【0046】
表1 プライマー

【0047】
[実施例2]胃のmGluR1のIn Situ ハイブリダイゼーション
ラットの胃粘膜は以前の報告に従って調製した (Hoshino et al., 1999, and Yoshida et al., 2001)。ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション用溶媒(50% formamide, 5× SSC, 1% SDS, 50 μg/ml tRNA, 50 μg/ml heparin)にプローブを200-500 ng/mlの濃度で溶解させ、16時間55℃で行った。配列番号17に示す全てのmGluR1に共通した核酸配列に対するアンチセンスプローブはジゴキシゲニンで標識し、標本は抗ジゴキシゲニンアルカリフォスファターゼ包接抗体(Roche Molecular Biochemicals)でインキュベート後、BM purple substrate (Roche Molecular Biochemicals)を用いて発色させた。
その結果、mGluR1アンチセンスプローベを用いたIn Situハイブリダイゼーション法により、mGluR1の転写産物を含む胃の細胞は、図4の左図に示すように頚部粘膜細胞、主細胞、壁細胞であることが判明した。
【0048】
[実施例3]ラット胃からの新規代謝型グルタミン酸受容体cDNAのクローニング
組織とRNA
12から16週齢のSprague-Dawleyラット(チャールズリバー社,Japan)20匹の胃を採取した。コントロールとしてmGluR1a遺伝子を得るためにラットの小脳を採取した。total RNAはISOGEN(Wako, Osaka, Japan)を用いて抽出し、第1鎖5' RACE (rapid amplification of cDNA ends)合成は、SuperScript 逆転写酵素(Invitrogen, USA)と、oligo (dT) 12-18 primer (Invitrogen, USA) およびSMART II oligonucleotide (SMART RACE cDNA amplification kit, Clontech Laboratories, USA)を用いて行った。
3’末端のPCR
変異型のC末端配列は、PCRで確認した。シークエンスはABI社のシーケンサーModel 3100で解析した。完全長の胃の変異型mGluR1を得るために、変異体のN末端配列と相同のN末端forward primer-1 [NFP-1] (5'-GGGACTCTCTCCTGTCTTGTGAG-3'; 配列番号: 3)と、mGluR1a のmGluR1aのスプライシングバリアント配列のC末端 reverse プライマー( mGluR1 4253R 5'-TACCATATGGAATTGTGCTTTGTCA-3'; 配列番号: 4)を用いて、PCRにより2種の配列を得た。シークエンス解析の結果、ひとつの配列はmGluR1aのC末端と同一配列であり、他の一つはこれまでのどのmGluR1スプライシングバリアントとも異なる配列であった(Soloviev at al., 1999)。2種のC末端については、NFP-1 forward プライマーと、変異型に特異的なC末端reverseプライマー(mGluR1-COOR variant 5'-TTGACACTCCTTGGTGCTGGCAT-3'; 配列番号: 5)か、またはmGluR1 type a に特異的なプライマー(mGluR1 3241Ra 5'-GTAAAGGGTCTTGGTGCTGGCAT-3'; 配列番号: 6)との組み合わせによって確認した。(図6)
クロスオーバーPCRとクローニング
シークエンス解析後、胃型mGluR1変異体の完全長コーディング領域の配列は、以下のプライマーを用いたクロスオーバーPCRによって構築した:
N-Terminal forward primer-1 [NFP-1] (配列番号: 3)
5'-GGGACTCTCTCCTGTCTTGTGAG-3'
N-Terminal reverse primer-1 [NRP-1] (配列番号: 7)
5'-GTATTGTCCTCTTCTTCCACATTGTAAAGGGTCTTGGTGCTGGCAT-3'
C-Terminal forward primer [CFP-2] (配列番号: 8)
5'-AATGTGGAAGAAGAGGACAATACCCCTTCT-3'
C-Terminal reverse primer [CRP-2] (配列番号: 9)
5'-TACCATATGGAATTGTGCTTTGTCA-3'
NFP-1とNRP1、およびCFP-2とCRP-2で得られた断片を、最終的な胃の変異型mGluR1 cDNA配列を得るために、次のプライマーを用いて結合した。
[NFP-2] 5'-AGCATAACAGGGAATTGCAGTGG-3' (配列番号: 10)
mGluR1-4198R 5'-ATAATTCAAGAGTCACAATCCTGGC-3' (配列番号: 11)
最初の増幅はpfu DNA polymerase enzyme (Promega, USA)で行った。クロスオーバーPCRはEasy-A high-fidelity PCR cloning enzyme (Stratagene, USA)で行った。
最終産物はTOPOシステムを使ってpcDNA3.1/V5-His vectorにクローニングした。 (TOPO TA Expression Kit, Invitrogen, USA)
ラットの小脳から機能解析の対照としてmGluR1を増幅したプライマーは、mGluR1-114F (5'TGGACACCTGATCCACACACCTT-3'; 配列番号: 12) と、 reverse primer mGluR1-4198R (配列番号: 11)である。
以上の結果、配列番号1に示した新規の胃型mGluR1βのcDNAが見出された。見出された胃型mGluR1のN末端は、申請者らがNo. WO2003068818でPCT出願している実施例1に示した味蕾型のmGluR1β type A variantと同一の配列である。C末端配列についての詳細は図2に示した。図2aは、脳型mGluR1 type Aの核酸配列であり、胃からクローニングされた変異型と配列対比をした。上段の大文字、太字は対応する脳型のアミノ酸配列を示している。スプライシングサイトから下流の部分では、胃型mGluR1はストップコドン方向に脳型配列と同じになっている。そして変異型の3’末端は同じオープンリーディングフレーム内にストップコドンを有している。その結果、胃の変異型受容体は脳型に比べて33アミノ酸短くなっている。脳と胃の変異型受容体の違いは、図2bに示した。この脳と胃の3’領域の差は、胃において約800塩基対欠落していることによる。脳型と胃型のmGluR1の蛋白質構造は図3に示した。
図1aは、ラット、マウス、ヒトの味覚および胃型mGluR1蛋白質のスタートコドンが410番目のメチオニンにあり、またN末領域は非常に相同性が高いことを示している。また、同グループに属する他のグルタミン酸受容体であるmGluR4およびT1R1との相同性を比較した。図1bは、胃および味覚mGluR1の5’cDNAが始まる部分に相当するマウスとラットのイントロン配列を比較したものである。このように、アミノ酸配列が非常に良く保存されているという点は、おそらく他の生物種でも同様と思われる。さらに、変異型βの5’末端構造はマウスにおいても保存されている。
胃の中で、どの細胞がmGluR1を発現しているかを調べるために、胃切片を用いて、in situ ハイブリダイゼーション実験を行った。mGluR1の相補鎖プローブで染めた結果、図4左に示すように、mGluR1を発現しているのは、頚部粘膜(neck mucous), 主細胞(chief cells)、壁細胞(parietal cells)であった。図5はポジティブコントロールで、同じmGluR1相補鎖プローブで青く染色した小脳のプルキンエ細胞(Purkinje cells)で、多くのmGluR1が発現していることがわかる。
次に、胃の変異型mGluR1の機能を調べるために、まずクロスオーバーPCRでその遺伝子を増幅した。用いたPCRプライマーとその産物は図6に示した。プライマーは変異部位に特異的な配列をもとに設計した(NRP-2 と CFP-2)。アガロースゲルのデータに示すとおり、全長のcDNAはPCR産物の連結反応によって得た。PCRの最終産物は、シーケンス解析で確認した後、電気生理学の実験に用いた。
【0049】
[実施例4]機能の解析
cRNA合成: 調製したpcDNA3.1/V5-His vectorを鋳型として用いて、胃と脳のmGluR1のcRNAを合成した。目的のDNAは、T7 promoter sequence (T7 PCR Forward primer 5'-TATTTAATACGACTCACTATAGGATAAGCATAACAGGGAATTGCAGTGG-3'; 配列番号: 13)を含むプライマーと、reverse primer mGluR1-4198R (配列番号: 11)のプライマーを用いて、pfu DNA polymeraseで増幅した。キャップRNAは、T7 transcription kit (mMessage mMachine, Ambion, USA)のキットで合成した。RNA合成を完結させるため反応液は37℃で二時間反応させ、その後、鋳型のDNAはDNase 1を添加して15分間分解した。 転写産物はフェノール・クロロホルム抽出及びイソプロパノール沈殿によってcRNAはジエチルピロカルボン酸処理(DEPC)した水に溶解させ、卵母細胞に注入する前にUV吸収法による定量を行った。
卵母細胞への注入. 採取24時間後の動物極・植物極が明確で健康なアフリカツメガエル母卵細胞に直径12mmのガラス製キャピラリーを用いてcRNA 25nl (100ng)を注入した (microinjector, WPI)。電気生理学的記録は注入後24時間および48時間に2mLピルビン酸、0.5mMテオフィリン含有MBS溶液中[88mM NaCl, 1mM KCl, 2.4 mM NaHCO3, 10mM HEPES, 0.82 mM MgSO4, 0.33 mM Ca(NO3)2, 0.91mM CaCl2, pH 7.5]で実施した。
電位固定法. 母卵細胞を記録チャンバーに移し室温下MBS溶液で潅流した。記録及び固定用電極は外径1.5mmのキャピラリーを引いて3M KClを充填後に使用した。電極は動物極に挿入し、GeneClampアンプ(Axon Instruments, USA)を用いて-70mVに電位固定を行った。Lグルタミン酸を記録チャンバーに潅流させ、ラットmGluR1を発現させた母卵細胞のカルシウム依存性クロライド電流を記録した。データの記録と解析はpClampソフトウエアを用いて行った(Axon Instruments, USA)。
実験結果. 受容体活性は全長mGluR1クローンから試験管内で合成したcRNAをマイクロインジェクションした母卵細胞を用いて検討した。そして、胃型変異体の機能を既に確立してある脳型mGluR1の応答性と比較した。脳型(左)あるいは胃型変異体(右)の試験管内合成mGluR1 cRNAを注入したアフリカツメガエル母卵細胞からのLグルタミン酸投与(30秒)時の電流応答を記録した。記録は-70 mV電位固定化に行い内向き電流の振れ幅として記録した。脳型及び胃型mGluR1はともにカルシウム依存性クロライドチャンネルを活性化した。しかし、脳型は100uMのLグルタミン酸濃度で最大電流値となったが、胃型mGluR1は最大刺激を得るにはより高いグルタミン酸濃度を必要とした(食物材料中の量に相当する、25mM程度)。更に、グルタミン酸は胃型変異体を発現させた母卵細胞より脳型を発現させた母卵細胞でより大きい内向き電流を引き起こした。
胃型(■)及び脳型(●)mGluR1を発現させた母卵細胞を用い、種々の濃度のグルタミン酸刺激による膜電流応答を記録した。用量反応曲線(各々2から3回の試行の平均)から、胃型mGluR1は脳型と比較してグルタミン酸に対する親和性が低い結果となった。これは、N末端が短いことに起因していると考えられた。
【0050】
本発明により、新規な代謝型グルタミン酸受容体が提供される。本グルタミン酸受容体は、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターの探索に用いることができる。また、新規うま味物質としての食品添加物として、また、消化管における代謝異常による疾患、症状を改善する医薬として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】a:mGluR1タンパク質の配列の種間の相同性配列比較である:ラットmGluR1、マウスmGluR1、ヒトmGluR1、mGluR4 と T1R1である。b:転写物の5’末端のラットとマウスの配列比較である。
【図2】a: mGluR1のC末端の配列比較である。胃からクローニングされたmGluR1の3‘末端領域と、そこに相当する脳型mGluR1aスプライシングバリアント(脳型mGluR1、上段、アクセッションナンバーはM61099である)との配列比較。b:どのようにして、C末端の変異が生じたかを示した配列比較である。約800塩基の欠失がある。
【図3】脳型mGluR1と胃型mGluR1変異体を比較した模式図を示す。
【図4】mGluR1変異体の発現細胞を含む胃粘膜の一連の写真を示す。胃体部の頚部粘膜、主細胞、壁細胞がmGluR1アンチセンスプローブによってハイブリダイズされている(左図)。
【図5】陽性対照組織である小脳におけるmGluR1のIn Situハイブリダイゼーションの一連の写真を示す。小脳のプルキンエ細胞が青色に発色し、mGluR1転写物が発現していた。左の図はアンチセンスでハイブリダイズした組織切片を、右図はセンスでハイブリダイズした組織切片を示す。
【図6】a:クロスオーバーPCRと、使用したPCRプライマーを示したものである。プライマーは変異部位特異的な配列(NPR-2 と CFP-2)を持つようにデザインした。b:アガロースゲル電気泳動の写真で、aで示したPCRから、最終的にそれを連結して得られた完全長のcDNA産物を示したものである。
【図7】a:脳型mGluR1をアフリカツメガエル母卵細胞に発現させたときのグルタミン酸ナトリウム作用時の膜電流変化を示す図である。b:胃型mGluR1変異体をアフリカツメガエル母卵細胞に発現させたときのグルタミン酸ナトリウム作用時の膜電流変化を示す図である。
【図8】胃型変異体及び脳型mGluR1に対するグルタミン酸の用量―電流応答を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)又は(B)のいずれかの配列を有するグルタミン酸受容体タンパク質:
(A)配列番号2記載のアミノ酸配列
(B)配列番号2記載のアミノ酸配列において下記(a)、(b)、(c)及び(d)から選択されるアミノ酸置換を有する
(a)His 26のTyrへの置換;
(b)Ag 39のSerへの置換;
(c)Val 51のIleへの置換;及び
(d)前記(a)〜(c)の組合せ
【請求項2】
ラット胃粘膜の細胞に由来するものである、請求項1記載のグルタミン酸受容体タンパク質。
【請求項3】
下記(a)〜(e)のいずれかの配列を有するDNA:
(a)下記(A)又は(B)のいずれかの配列を有するグルタミン酸受容体蛋白質をコードする塩基配列:
(A)配列番号2記載のアミノ酸配列
(B)配列番号2記載のアミノ酸配列において下記(i)、(ii)、(iii)及び(iv)から選択されるアミノ酸置換を有する
(i)His 26のTyrへの置換;
(ii)Ag 39のSerへの置換;
(iii)Val 51のIleへの置換;及び
(iv)前記(i)〜(iii)の組合せ
(b)配列番号1記載の核酸配列
(c)配列番号1の残基番号442〜2169の核酸配列
(d)配列番号1記載の核酸配列を有するDNA分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グルタミン酸が結合することによってセカンドメッセンジャーを発生し得るグルタミン酸受容体活性を有する蛋白質をコードする核酸配列。
【請求項4】
請求項3のいずれか記載のDNAを発現可能な形態で保持する細胞。
【請求項5】
DNAがベクターとともに発現可能な形態で保持されるものである、請求項4に記載の細胞。
【請求項6】
グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索する方法であって、以下の工程を有する:
(a)請求項1に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させる工程、
(b)該反応の阻害又は促進を検出する工程
【請求項7】
前記結合の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する請求項6記載の方法。
【請求項8】
グルタミン酸のアゴニストの探索方法であって、以下の工程を有する:
(a)請求項1に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と被検物質とを反応させる工程、
(b)該反応を検出する工程
【請求項9】
前記反応の阻害又は促進を、グルタミン酸受容体タンパク質が発生するセカンドメッセンジャーにより検出する請求項9記載の方法。
【請求項10】
前記グルタミン酸受容体タンパク質を、請求項4記載の細胞又は同細胞から調製される膜画分を用いる請求項6又は8記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載のグルタミン酸受容体タンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項12】
以下の工程を含むプロセスにより製造され、グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより産生されるセカンドメッセンジャーを調節するための活性物質:
(a)請求項1に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させる工程、
(b)該反応の阻害又は促進を検出する工程、及び、
(c)被検物質による該反応の阻害又は促進を分析し、被検物質がグルタミン酸のアゴニスト、アンタゴニスト、又は、アロステリックモジュレーターのいずれであるかを決定する工程
【請求項13】
請求項12記載の活性物質と、薬学的に許容されるキャリアーとを含んで成る、医薬組成物。
【請求項14】
請求項1に記載のグルタミン酸受容体タンパク質と同タンパク質に結合する物質とを被検物質の存在下で反応させ、該反応の阻害又は促進を検出することにより、グルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを探索する工程と、
前記ステップにより得られるグルタミン酸のアゴニストもしくはアンタゴニスト又はアロステリックモジュレーターを有効成分として医薬組成物を調製する工程を含む、
グルタミン酸受容体にグルタミン酸が結合することにより発生するセカンドメッセンジャーを調節するための医薬の製造方法。


【図1】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−68009(P2006−68009A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238248(P2005−238248)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】