説明

新規ジカルボン酸型化合物

【課題】生分解性及び安全性を有し、優れた界面活性を示す新規ジカルボン酸型化合物の提供。
【解決手段】一般式(1)で示される化合物。


但し、一般式(1)中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示す。R1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。但し、R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が、炭素原子数9〜25炭化水素構造をなすように選択される。Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン又はアンモニウムイオンを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ジカルボン酸型化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤には様々な構造のものがあるが、例えば天然原料である脂肪酸を利用した固形石鹸等の1鎖1親水基型界面活性剤は、良好な生分解性や安全性を示すため、世間一般に広く用いられている。特に界面活性剤を頭髪あるいは皮膚洗浄剤組成物に用いる場合は、高い生分解性や安全性が求められるとともに、水溶性が高く、洗浄力、泡立ちが良好であること、即ち少量でも効果を発揮する界面活性剤が望まれている。
最近では、優れた界面活性を有し、界面活性剤の使用量を削減できる環境に優しい次世代の界面活性剤として2鎖2親水基型界面活性剤(ジェミニ型界面活性剤)に期待が寄せられ、その新規界面活性剤の様々な研究開発がなされている(非特許文献1)。例えば特許文献1には多鎖二極性基化合物が開示され、特許文献2にはジェミニ型界面活性剤及び補助両親媒性化合物を含有する界面活性剤組成物が開示されている。また、親水基の種類が異なるもの、アルキル鎖の長さが非対称な構造を持つもの、親水基とアルキル鎖の長さがそれぞれ非対称な構造を持つ2鎖2親水基型界面活性剤も研究されている(非特許文献2)。また、生分解性を付与するため、分子中にエステル結合を有するジェミニ型界面活性剤も報告されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−219654号公報
【特許文献2】特表2003−509571号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】R.Zana,Journal of Colloid and Interface Science 248,203−220(2002)
【非特許文献2】E.Alami and K.Holmberg,Advances in Colloid and Interface Science 100−102(2003)13−46
【非特許文献3】T.Tatsumi, W.Zhang, T.Kida, Y.Nakatsuji, D.Ono,T.Takeda, I,Ikeda Journal of Surfactants and Detergents 4, 279−285 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、2鎖2親水基型界面活性剤は、その製造にあたって比較的高価な原材料の使用を余儀なくされることが多く、しかも合成経路が複雑で、またその化合物構造に起因して一般に生分解性が劣ることから、その優れた性能にもかかわらず、未だ実用に至っているものはほとんどないというのが実情である。例えば、エステル結合を有する非特許文献3のジェミニ型界面活性剤は、生分解性を示すものの分解速度が遅いなどの欠点が挙げられる。
また、通常、2鎖2親水基型界面活性剤の合成には、1鎖1親水基型界面活性剤同士をつなぐ連結基(スペーサー)と呼ばれる部分をその界面活性剤の主鎖に結合するための反応を行う必要があるため、工程数が増えてしまうという問題がある。さらに、疎水基2鎖の非対称な長さを有する2鎖2親水基型界面活性剤の合成には、それぞれ鎖長の違う疎水基
を持つ1鎖1親水基型界面活性剤を2種類準備し、それらを結合させる必要があるため、より反応工程数が増えてしまうなどの問題がある。
本発明者等は鋭意研究の結果、原料として工業的に入手し易く、連結基へと誘導する二重結合部位を有する不飽和脂肪酸または、そのエステルを用いることにより、容易に合成が可能で、良好な生分解性、生体への安全性、かつ界面活性剤としての利用が可能な新規ジカルボン酸型化合物を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、下記一般式(1)で示される新規ジカルボン酸型化合物である。
【化1】

但し、上記一般式(1)中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示す。R1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。但し、R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン又はアンモニウムイオンを示す。
【0007】
ジカルボン酸型化合物は、下記一般式(2´)で表される化合物と無水コハク酸を反応させて下記一般式(1´)で表される化合物を製造する段階と、続いて、場合により、一般式(1´)で表される化合物をアルカリ金属若しくは第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオンの水酸化物又はアミンと反応させて得られたものであることか好ましい。
【0008】
【化2】

(式中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示し、
1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。)
【0009】
【化3】


(式中、Cn2n+1、n、R1及びR2は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わす。)
【0010】
また、本発明は、上記本発明の新規ジカルボン酸型化合物からなる、界面活性剤である。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の新規ジカルボン酸型化合物を含む、洗浄剤である。
【0012】
また、本発明は、上記本発明の新規ジカルボン酸型化合物を含む、乳化剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジカルボン酸型化合物は、工業的に入手し易い天然由来の不飽和脂肪酸または、そのエステルを原料に用いることで、当該原料の不飽和脂肪酸部分の二重結合部位が連結基となり、且つその二重結合部分を酸化して得られた水酸基にジカルボン酸又はその塩を容易に結合させることができるので、その製造において、反応工程数が少なく容易に合成することができるという利点を有する。また、本発明のジカルボン酸型化合物において、親水性−疎水性バランスは、脂肪酸鎖の末端カルボン酸部分にエステル結合させる原料のアルコールにおけるアルキル鎖の長さ(Cn2n+1)を選択することにより、容易に調製することが可能であり、したがって本発明のジカルボン酸型化合物は界面活性剤として有用である。さらに、本発明のジカルボン酸型化合物は、少量で優れた界面活性能を有することから各種用途に広く利用でき、界面活性剤使用量を低減できるとともに、生分解性、皮膚刺激性などの安全性、加水分解に対する安定性が高いため、環境や人体に対する負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例4で得られたジカルボン酸型化合物の1H−NMRスペクトルを示す。
【図2】図2は、実施例4で得られたジカルボン酸型化合物の13C−NMRスペクトルを示す。
【図3】図3は、実施例4で得られたジカルボン酸化合物のESI−MSスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のジカルボン酸型化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化4】

但し、上記一般式(1)中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示す。R1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。但し、R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、又はアンモニウムイオンを示す。
【0016】
上記一般式(1)において、Cn2n+1で示される炭素原子数1〜22の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられるが、n−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0017】
上記一般式(1)において、R1で示される炭素原子数1〜22のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−テトラデシレン基、n−ペンタデシレン基、n−ヘキサデシレン基、n−ヘプタデシレン基、n−オクタデシレン基、n−ノナデシレン基、n−イコシレン基、n−ヘンイコシレン基、n−ドコシレン基等が挙げられるが、好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−オクチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基、n−ドデシレン基、n−トリデシレン基、n−ペンタデシレン基が挙げられる。より好ましくは、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、n−ヘプチレン基、n−ノニレン基、n−デシレン基、n−ウンデシレン基等が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)において、R2で示される炭素原子数1〜22のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−ヘニコシル基、n−ドコシル基等が挙げられるが、疎水性相互作用を確保するため、好ましくは、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−
テトラデシル基、n−ノナデシル基が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)において、炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される−R1−CH−CH−R2部分は、例えば、−(CH22−CH−CH−(CH24CH3、−(CH27−CH−CH−CH3、−CH2−CH−CH−(CH27−CH3、−(CH22−CH−CH−(CH26CH3、−(CH23−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH22CH3、−(CH22−CH−CH−(CH28CH3、−(CH23−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH23CH3、−(CH24−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH24CH3、−CH2−CH−CH−(CH211CH3、−(CH25−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH25CH3、−(CH25−CH−CH−(CH28CH3、−(CH26−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH26CH3、−CH2−CH−CH−(CH213CH3、−(CH22−CH−CH−(CH212CH3、−(CH24−CH−CH−(CH210CH3、−(CH25−CH−CH−(CH29CH3、−(CH26−CH−CH−(CH28CH3、−(CH27−CH−CH−(CH27CH3、−(CH29−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH28CH3、−(CH29−CH−CH−(CH27CH3、−(CH210−CH−CH−(CH27CH3、−(CH211−CH−CH−(CH27CH3、−(CH28−CH−CH−(CH211CH3、−(CH212−CH−CH−(CH27CH3、−(CH213−CH−CH−(CH27CH3、−(CH23−CH−CH−(CH218CH3、−(CH215−CH−CH−(CH26CH3、−(CH215−CH−CH−(CH27CH3等が挙げられるが、この中でも、−CH2−CH−CH−(CH27−CH3、−(CH22−CH−CH−(CH26CH3、−(CH23−CH−CH−(CH25CH3、−(CH22−CH−CH−(CH28CH3、−(CH23−CH−CH−(CH27CH3、−(CH24−CH−CH−(CH27CH3、−CH2−CH−CH−(CH211CH3、−(CH25−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH25CH3、−(CH25−CH−CH−(CH28CH3、−(CH26−CH−CH−(CH27CH3、−(CH27−CH−CH−(CH26CH3、−CH2−CH−CH−(CH213CH3、−(CH22−CH−CH−(CH212CH3、−(CH24−CH−CH−(CH210CH3、−(CH25−CH−CH−(CH29CH3、−(CH26−CH−CH−(CH28CH3、−(CH27−CH−CH−(CH27CH3、−(CH29−CH−CH−(CH25CH3、−(CH27−CH−CH−(CH28CH3、−(CH29−CH−CH−(CH27CH3、−(CH210−CH−CH−(CH27CH3、−(CH211−CH−CH−(CH27CH3が好ましい。
【0020】
【化5】

【0021】
本発明のジカルボン酸型化合物の原料である、上記一般式(2)で示される不飽和脂肪酸アルキルエステルは、炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸と炭素原子数1〜22の脂肪族アルコールとのエステル化反応、あるいは炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸の低級アルキルエステルと、炭素原子数1〜22の脂肪族アルコールとのエステル交換反応によって得ることができる。
前記炭素原子数10〜26の不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素原子数10の4−デセン酸、炭素原子数11の9−ウンデセン酸、炭素原子数12のリンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸等の3−ドデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、炭素原子数1
3のcis−9−トリデセン酸、炭素原子数14のツズ酸、ミリストレイン酸等の4−テトラデセン酸、5−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、炭素原子数15の6−ペンタデセン酸、cis−9−ペンタデセン酸、炭素原子数16のパルミトレイン酸等のtrans−3−ヘキサデセン酸、cis−7−ヘキサデセン酸、cis−9−ヘキサデセン酸、trans−9−ヘキサデセン酸、炭素原子数17のcis−7−ヘプタデセン酸、cis−8−ヘプタデセン酸、cis−9−ヘプタデセン酸、炭素原子数18のペトロセリン酸、ペトロセエライジン酸、オレイン酸、エライジン酸、パセニン酸等のtrans−3−オクタデセン酸、cis−3−オクタデセン酸、trans−4−オクタデセン酸、cis−6−オクタデセン酸、trans−6−オクタデセン酸、cis−7−オクタデセン酸、trans−7−オクタデセン酸、cis−8−オクタデセン酸、trans−8−オクタデセン酸、cis−9−オクタデセン酸、trans−9−オクタデセン酸、cis−11−オクタデセン酸、trans−11−オクタデセン酸、炭素原子数19のcis−9−ノナデセン酸、炭素原子数20のゴンドイン酸等のcis−11−エイコセン酸、trans−11−エイコセン酸、炭素原子数21の12−ヘニコセン酸、炭素原子数22のエルカ酸、ブラシン酸等のcis−13−ドコセン酸、trans−13−ドコセン酸、炭素原子数23の10−トリコセン酸、14−トリコセン酸、炭素原子数24のセラコレイン酸等のcis−15−テトラコセン酸、trans−15−テトラコセン酸、炭素原子数25のcis−15−ペンタコセン酸、cis−17−ペンタコセン酸、炭素原子数26のcis−17−ヘキサコセン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられるが、炭素原子数12以上22以下の不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくは、工業的な原料供給の面と原料が安価である点からオレイン酸やエルカ酸が好ましい。
【0022】
また前記炭素原子数1〜22の脂肪族アルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ウンデシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−トリデシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−ペンタデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−ヘプタデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、n−ノナデシルアルコール、n−イコシルアルコール、n−ヘニコシルアルコール、n−ドコシルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の飽和脂肪族アルコールが挙げられるが、n−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−ノニルアルコール、n−デシルアルコール、n−ドデシルアルコール、n−テトラデシルアルコール、n−ヘキサデシルアルコール、n−オクタデシルアルコール、n−ドコシルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)において、Xを表すアルカリ金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。また第2族元素イオンとしては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。遷移元素イオンとしては、イットリウムイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、マンガンイオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、銀イオン等が挙げられる。第12族元素イオンとしては、亜鉛イオン、カドミウムイオンが挙げられる。その他、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン等が挙げられる。アンモニウムイオンとしては、アンモニア、ヒドロキシアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族アミン由来のアンモニウムイオン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピペラジン、ピロール等の環状アミン由来のアンモニウムイオ
ン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
次に本発明のジカルボン酸型化合物の合成方法を述べる。一般には、不飽和脂肪酸と脂肪族アルコールとの反応物である不飽和脂肪酸アルキルエステルを過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物と反応させて二重結合を酸化して、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの塩基を作用させ、水酸基を導入することにより、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルを合成する。あるいは、ジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルの別の合成方法としては、最初に不飽和脂肪酸に過酸化水素とギ酸等の有機酸とから得られる有機過酸化物を反応させて二重結合を酸化して、水酸化ナトリウムや炭酸カリウムなどの塩基を作用させ、水酸基を導入することにより得られる上記一般式(3)で示されるジヒドロキシ脂肪酸と、脂肪族アルコールを酸触媒あるいはアルカリ触媒下でエステル合成反応を行っても得ることができる。次にこのジヒドロキシ脂肪酸アルキルエステルを無水コハク酸と反応させることにより、本発明のジカルボン酸型化合物(Xが水素イオン)を得ることができる。更にXをアルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン、又はアンモニウムイオンとする場合には、例えば、前記ジカルボン酸型化合物(Xが水素イオン)を水やエチルアルコールなどの溶媒中で、対応するアルカリ金属や第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオンなどの水酸化物やアミンなどと中和反応させることにより得ることができる。
【0026】
【化7】

さらに具体的に本発明のジカルボン酸型化合物(Xが水素原子)の合成方法を説明すると、上記合成フローに示すように、まずcis−9−オクタデセン酸アルキルエステル(オレイン酸アルキルエステル)を、過酸化水素及び蟻酸を用いて酸化し、その後、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール中で炭酸カリウムを用いて処理することにより、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸アルキルエステルを合成する(第1工程)。次に、トルエン、ジクロロメタン、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒中で9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸アルキルエステルと、該エステルの2〜4倍mol当量、好ましくは、2.3〜3.0倍mol当量の無水コハク酸と、該エステルの1.0〜3.0倍mol当量、好ましくは、1.2〜2.5倍mol当量のトリエチルアミン(TEA)とを、20〜110℃、好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは、75〜85℃の温度で、8〜24時間攪拌しながら反応させ、次にこの反応液に塩酸水溶液を入れ、水層の
pHが4以下であることを確認して、50〜80℃で1〜3時間程度攪拌を行い、その後酸洗浄層を抜き、中性になるまで水洗した後、有機層を冷却し、析出した結晶をろ別する、又は、溶媒を減圧留去させる、又は、スプレードライヤー装置を用いて溶媒を乾燥させることで、目的物を得ることができる。エステル化の反応触媒として、4−ジメチルアミノピリジン(以下、DMAP)を0.01倍mol当量〜1倍mol当量を加えてもよい。また必要に応じてアセトニトリル、トルエン、酢酸エチル等の溶媒を用いた再結晶或いは、シリカゲルを固定相とし、クロロホルム・メタノール混合溶媒を移動相とするカラムクロマトグラフィー等によって精製することにより、上記合成フローで示されるジカルボン酸化合物を得ることができる(第2工程)。
【0027】
本発明のジカルボン酸型化合物は、それ自体で界面活性剤として使用できる。また、水で希釈して界面活性剤組成物として用いることができる。界面活性剤として使用する場合には、上記一般式(1)においてXは、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。また、より中性領域で使用したい場合は、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン由来のアンモニウムイオンが好ましい。
【0028】
本発明のジカルボン酸型化合物は、その界面活性能を活かし、例えば、起泡、洗浄、乳化、可溶化、浸透、湿潤の目的で、起泡剤、洗浄剤、乳化剤、可溶化剤、浸透・湿潤剤等として、化粧品、香粧品等の用途において広く利用することができる。特に、洗浄剤として優れている。また本発明のジカルボン酸型化合物を頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤に用いる場合は、必要に応じて従来から用いられている他の添加剤を、本発明のジカルボン酸型化合物の特性を損なわない範囲において適宜添加することができる。併用可能な添加剤としては、例えば抗菌剤、増粘剤、香料、コンディショニング剤、金属イオン封鎖剤、パール化剤、起泡剤、滑り性向上剤、平滑剤、整髪剤、保湿剤、分散安定剤、ふけとり剤、殺菌剤、清涼刺激緩和剤、防腐剤、外観調整剤等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
<測定機器>
[FT−IR]
FTIR−8900((株)島津製作所製)
[NMR]
AV400M(ブルカー・バイオスピン(株)製)
[元素分析]
SeriesII CHNS/O Analyzer 2400(パーキンエルマー社製)
[ESI−MS]
JMS−T100CS(日本電子(株)製)
【0031】
実施例1
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸ブチルエステル(50g、0.15mol)と88%ギ酸(154.5g、3.0mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(28.7g、0.30mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(20.4g、0.15mol)、エチルアルコール133mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ブチルエステル(33.1g、0
.089mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ブチルエステル(14g、0.037mol)、トリエチルアミン(9.3g、0.092mol)、及び無水コハク酸(11.1g、0.11mol)にトルエン140mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸94mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、125mLの水で2回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体をクロロホルム−メタノールを溶離液に用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体19.3g(収率91.3%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(4)で表される化合物)と純度を確認した。
【0032】
FT−IR:1734cm-1(C=O(エステル),st),1714cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,3H),0.93(t,3H)1.25−1.64(m,30H),2.29(t,2H),2.61−2.71(m,8H),4.07(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ13.7,14.1,22.6,24.9,25.0,28.9−29.4,30.7,30.8,31.8,34.3,64.3,74.4,171.6,174.3,178.2
元素分析(C305210):
実測値(%) C:62.88%,H:9.42%
計算値(%) C:62.91%,H:9.15%
ESI−MS:
[M+Na]+=595.3427(calc.595.3458)
【0033】
【化8】

【0034】
実施例2
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸ヘキシルエステル(80g、0.22mol)と88%ギ酸(228.1g、4.36mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(42.4g、0.44mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(30.2g、0.22mol)、エチルアルコール196mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ヘキシルエステル(55.2g、0.138mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ヘキシルエステル(52.5g、0.131mol)、トリエチルアミン(33.1g、0.33mol)、及び無水コハク酸(32.8g、0.33mol)にトルエン263mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で20時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸131mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、180mLの水で3回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体にアセトニトリルを加えて再結晶化を行い、白色固体53.0g(収率67.3%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(5)で表される化合物)と純度を確認した。
【0035】
FT−IR:1730cm-1(C=O(エステル),st),1708.8cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.86−0.91(m,6H),1.25−1.63(m,34H),2.29(t,2H),2.59−2.73(m,8H),4.06(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.0,14.1、22.5,22.7、24.9,25.0,25.6,28.6−29.4,30.8,31.4,31.8、34.3,64.6,74.4,171.6,174.3,178.2
元素分析(C325610):
実測値(%) C:64.31%,H:9.28%
計算値(%) C:63.97%,H:9.40%
ESI−MS:
[M+Na]+=623.3776(calc.623.3771)
【0036】
【化9】

【0037】
実施例3
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸オクチルエステル(40g、0.10mol)と88%ギ酸(106g、2.0mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(19.7g、0.20mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(14.0g、0.10mol)、エチルアルコール91mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクチルエステル(34.8g、0.081mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸オクチルエステル(25.3g、0.058mol)、トリエチルアミン(14.7g、0.145mol)、無水コハク酸(14.5
g、0.145mol)及びDMAP(71mg、0.58mmol)にトルエン252mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で13時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸58mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、100mLの水で2回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体にアセトニトリルを加えて再結晶化を行い、白色固体29.7g(収率81.2%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(6)で表される化合物)と純度を確認した。
【0038】
FT−IR:1730cm-1(C=O(エステル),st),1708.8cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,6H),1.25−1.63(m,38H),2.29(t,2H),2.61−2.71(m,8H),4.06(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.1,22.6,24.9,25.0,25.9,28.6−29.4,30.8,31.8,34.3,64.6,74.4,171.5,174.3,178.2
元素分析(C346010):
実測値(%) C:65.29%,H:9.99%
計算値(%) C:64.94%,H:9.62%
ESI−MS:
[M+Na]+=651.4055(calc.651.4084)
【0039】
【化10】

【0040】
実施例4
1)ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸デシルエステル(30g、0.066mol)と88%ギ酸(68.7g、1.31mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(12.8g、0.13mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(9.1g、0.066mol)、メチルアルコール59mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、メチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸デシルエステル(21.4g、0.058mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸デシルエステル(20g、0.043mol)、トリエチルアミン(10.9g、0.108mol)、無水コハク酸(10.8g、0.108mol)及びDMAP(52mg、0.43mmol)にトルエン200mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、6
0℃まで温度を下げ、2Mの塩酸40mLを加えて攪拌し、70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、80mLの水で2回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を冷却し、吸引ろ過後、得られた固体にアセトニトリルを加えて再結晶化を行い、白色固体22.9g(収率80.5%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(7)で表される化合物)と純度を確認した。
【0041】
FT−IR:1732cm-1(C=O(エステル),st),1710.7cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,6H),1.25−1.63(m,42H),2.29(t,2H),2.61−2.70(m,8H),4.05(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.1,22.6,24.9,25.0,25.9,28.6−29.5,30.8,31.8,31.9,34.3,64.6,74.4,171.5,174.3,178.0
元素分析(C366410):
実測値(%) C:66.30%,H:10.24%
計算値(%) C:65.82%,H:9.82%
ESI−MS:
[M+Na]+=679.4372(calc.679.4397)
【0042】
【化11】

【0043】
実施例5
1)不飽和脂肪酸ジヒドロキシ化反応
cis−9−オクタデセン酸(100g、0.354mol)と88%ギ酸(370.3g、7.1mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(72.2g、0.74mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。その後、水洗を行った後、3Mの水酸化ナトリウム水溶液500mLを入れ、80℃で4時間攪拌を行い、室温に冷却後、2MのHCl水溶液900mLを入れて室温で2時間攪拌を行った。ろ過後、メチルエチルケトンを用いて再結晶を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸(89.6g、0.28mol)を得た。
2)エステル化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸(80g、0.25mol)、ドデシルアルコール(223.6g、1.2mol)、及び三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1.5g)を反応容器に入れ、検水管を装着し、260℃で6時間加熱攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ過して、メチルエチルケトンを用いて再結晶を行い、9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルエステル(69.2g、0.143mol)を得た。
3)ジカルボン酸化反応
9,10−ジヒドロキシオクタデカン酸ドデシルエステル(9g、0.018mol)、トリエチルアミン(4.6g、0.045mol)、及び無水コハク酸(5.5g、0.055mol)にトルエン90mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸60mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、80mLの水で2回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体をクロロホルム−メタノールを溶離液に用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体8.9g(収率70.9%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(8)で表される化合物)と純度を確認した。
【0044】
FT−IR:1734cm-1(C=O(エステル),st),1718.5cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,6H),1.25−1.63(m,38H),2.29(t,2H),2.61−2.71(m,8H),4.05(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.1,22.7,24.9,25.0,25.9,28.6−29.6,30.8,31.8,31.9,34.3,64.6,74.4,171.5,174.3,178.1
元素分析(C386810):
実測値(%) C:66.63%,H:10.31%
計算値(%) C:66.63%,H:10.01%
ESI−MS:
[M+Na]+=707.4722(calc.707.4710)
【0045】
【化12】

【0046】
実施例6
1)ジヒドロキシ化反応
cis−13−ドコセン酸ブチルエステル(50g、0.127mol)と88%ギ酸(132.3g、2.5mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(24.6g、0.25mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(17.5g、0.127mol)、エチルアルコール114mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、13,14−ジヒドロキシドコサン酸ブチルエステル(42.3g、0.099mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
13,14−ジヒドロキシドコサン酸ブチルエステル(20g、0.047mol)、トリエチルアミン(11.8g、0.12mol)、及び無水コハク酸(14.0g、0
.14mol)にトルエン200mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸40mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、80mLの水で2回洗浄した。その後、この反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を冷却し、吸引ろ過後、得られた固体にアセトニトリルを加えて再結晶化を行い、白色固体22.0g(収率75%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(9)で表される化合物)と純度を確認した。
【0047】
FT−IR:1734cm-1(C=O(エステル),st),1714.6cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,3H),0.93(t,3H)1.25−1.64(m,38H),2.29(t,2H),2.61−2.71(m,8H),4.07(t,2H),5.01−5.04(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ13.7,14.1,19.1,22.6,24.9,25.0,28.9−29.4,30.7,30.8,31.8,31.9,34.3,64.3,74.4,171.6,174.3,178.2
元素分析(C346010):
実測値(%) C:65.11%,H:9.84%
計算値(%) C:64.94%,H:9.62%
ESI−MS:
[M+Na]+=651.4073(calc.651.4084)
【0048】
【化13】

【0049】
実施例7
1)ジヒドロキシ化反応
cis−4−ドデセン酸ヘキサデシルエステル(20g、0.047mol)と88%ギ酸(49.5g、0.95mol)を反応容器に入れ攪拌を行い、40℃にて、35%過酸化水素(9.2g、0.095mol)を滴下した。滴下終了後、40℃で24時間攪拌を行った。ギ酸層を除去し、その後水洗を2回行った後、炭酸カリウム(6.5g、0.047mol)、エチルアルコール43mLを加え、25℃で24時間攪拌を行い、ろ過して過剰の炭酸カリウムを除いた後、エチルアルコールを除去し、ヘキサンを用いて再結晶化を行い、4,5−ジヒドロキシドデカン酸ヘキサデシルエステル(15.3g、0.033mol)を得た。
2)ジカルボン酸化反応
4,5−ジヒドロキシドデカン酸ヘキサデシルエステル(15g、0.033mol)、トリエチルアミン(8.3g、0.082mol)、及び無水コハク酸(9.8g、0.098mol)にトルエン150mLを加え、窒素雰囲気下、80℃で16時間攪拌した。TLCにて目的物の生成を確認後、60℃まで温度を下げ、2Mの塩酸30mLを加えて70℃にて1時間攪拌し、洗浄した後、60mLの水で2回洗浄した。その後、この
反応液に無水硫酸ナトリウムを加え、脱水した後、ろ過し、ろ液を減圧留去後、得られた固体をクロロホルム−メタノールを溶離液に用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、白色固体10.8g(収率50.2%)を得た。
得られた白色固体を、FT−IR(KBr法)、1H−NMR、13C−NMR、ESI−MS及び元素分析で測定した結果を以下に示す。この結果から、得られた白色固体の構造(下記式(10)で表される化合物)と純度を確認した。
【0050】
FT−IR:1735cm-1(C=O(エステル),st),1712cm-1(C=O(カルボン酸),st)
1H−NMR(400MHz,CDCl3):δ0.88(t,6H),1.25−1.64(m,36H),1.96(m,2H),2.29(t,2H),2.61−2.71(m,8H),4.07(t,2H),5.01−5.10(m,2H)
13C−NMR(100MHz,CDCl3):δ14.1,22.6,23.2,24.9,25.9,27.0,28.9−29.4,30.7,30.8,31.8,31.9,64.6,73.8,74.1,171.6,174.3,178.2
元素分析(C366410):
実測値(%) C:65.91%,H:10.15%
計算値(%) C:65.82%,H:9.82%
ESI−MS:
[M+Na]+=679.4414(calc.679.4397)
【0051】
【化14】

【0052】
実施例8:臨界ミセル濃度及び臨界ミセル濃度における表面張力
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと中和させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウム(ラウリン酸ナトリウム)を用いた。表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、白金プレートを用いたWilhelmy法により、25℃、pH10(水酸化ナトリウム水溶液で調製)で、各化合物濃度において表面張力の測定を行い、表面張力―濃度プロットを作成し、臨界ミセル濃度(cmc)及び臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)を求めた。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
2鎖2親水基型界面活性剤は、1鎖1親水基型界面活性剤に比べて、臨界ミセル濃度(cmc)及び臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)が低いことが一般的に知られている。
そこで、本発明のジカルボン酸型化合物についても、従来の2鎖2親水基型界面活性剤同様、優れた界面活性能を有するか検討した。
表1の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物は、比較例1に比べて、約1/12〜1/24000程度の低い臨界ミセル濃度(cmc)を示した。また、臨界ミセル濃度における表面張力(γcmc)についても、比較例1に比べて低く、高い表面張力低下能を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は界面活性能剤として有用であり、例えば、洗浄剤、乳化剤、可溶化剤、浸透・湿潤剤として使用する際に、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
【0055】
実施例9:生分解性試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物の生分解性試験を、圧力センサー式BOD測定器(アクタック社製)を用いて、OECDテストガイドライン301C修正MITI試験に基づき、供試物質濃度:100mg/L、活性汚泥濃度:40mg/L、試験温度:25℃、試験期間:28日間の条件で行った。その結果を表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物は、いずれも60%以
上の良好な生分解性を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は環境に優しい化合物であり、環境負荷の少ない安全な材料が求められる、例えば頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤、台所洗浄剤、リンス等の基材の用途に有用である。
【0058】
実施例10:皮膚刺激性試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と、比較例1として、一鎖一親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウムについて、ヒト3次元培養表皮モデル「ラボサイト エピ・モデル」(J−TEC社製)を用いて、皮膚刺激性試験を行った。試験は、供試物質濃度:1wt/v%水溶液、供試物質量:50μL、曝露時間:24時間、試験温度:37℃、試験条件:CO2インキュベーター(5〜10%)の条件で行った。曝露後、供試物質を取り除き、リン酸緩衝液500μLで3回洗浄後、MTT(3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5- diphenyltetrazolium bromide)培地500μLを分注し、CO2インキュベーターに入れ、3時間室温で静置し、生細胞中の還元酵素がMTTと反応した際の生成物が発する青紫色に染色されたヒト表皮組織を取り出して、イソプロピルアルコール(IPA)300μLと共にマイクロチューブに入れ、2時間室温で色素の抽出を行い、得られた各IPA抽出液の吸光度(570nm)をマイクロプレートリーダーで測定し、陰性対照として精製水で同様に処理したヒト表皮組織のIPA抽出液の吸光度を生細胞率100%として、吸光度の相対値から各物質の生細胞率を求めた。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩は、比較例1に比べて、実施例2は同等の生細胞率、実施例1は50%以上の生細胞率を示し、実施例3〜7はいずれも80%以上と高い生細胞率を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、皮膚に対して低刺激性であることから、安全性が求められる人体との接触が避けられない、例えば頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤、台所洗浄剤、化粧品、リンス等の基材の用途に有用である。
【0061】
実施例11:加水分解安定性試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物をエタノール−水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと中和させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)を脱水して無水物とし、基準物質として、2,2,3,3,-D4-3-トリメチルシリル-プロピオン酸ナトリウム塩を少量添加し、5mg/0.5mlの割合で重水に溶解させ、1H−NMRにて1ヶ月後、3ヶ月後に測定を行い、0.9ppm付近の末端メチルのプロトンの積分比を基準として、4.
0ppm付近のエステル結合近傍のC(=O)の隣のメチレンのプロトンの積分比と、5.0ppm付近のエステル結合近傍のメチンのプロトンの積分比から下記の(数1)式より各化合物の構造維持率を見積もった。その結果を表4に示す。
【0062】
(数1)
構造維持率(%)=100×[経時のメチン及びメチレンプロトンの積分比/調製直後
のメチン及びメチレンプロトンの積分比]
【0063】
【表4】

【0064】
表4の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩は、3ヶ月経過後、いずれも95%以上の構造維持率を示し、良好な加水分解安定性を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、水を含有する化粧品、洗浄剤、潤滑剤、製紙工業、繊維工業分野の各種処理剤などの配合基材としても有用である。
【0065】
実施例12:クラフト点
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と、比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウムをそれぞれ1wt/v%に調製した水溶液を用いて、0℃の冷蔵庫に1週間保存し、結晶析出有無を確認したところ、比較例1のドデカン酸ナトリウムは、結晶が析出していたが、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩水溶液は、結晶が析出せず、無色透明溶液であった。クラフト点が0℃以下であることが判明した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、常温での水への溶解性に優れ、添加量の制限を低減できることから、主成分としての使用が可能となり、起泡剤、洗浄剤などの用途に有用であるとともに、乳化剤、可溶化剤、浸透・湿潤剤として配合した場合にも、配合成分の分離や結晶析出等を起し難いので製品の保存安定性が維持できる。
【0066】
実施例13:起泡力試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と、比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウムを用いて、振とう法により、起泡力と泡安定性を評価した。詳細には、pH10(水酸化ナトリウム水溶液で調製)に調製した0.1wt/v%水溶液10mLを共栓つきメスシリンダー100mLに入れ、恒温水槽で25℃恒温とした後、1分間上下に100回激しく振とうし、振とう直後の泡沫容積(mL)、5分後の泡沫容積(mL)を目視で観察し、記録した。また、5分後の泡沫安定性を示す指標として、下記の(数2)式より残泡率を計算した。その結果を表5に示す。
【0067】
(数2)
残泡率(%)=100×(5分後の泡沫容積/直後の泡沫容積)
【0068】
【表5】

【0069】
表5の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩は、比較例1に比べて、高い起泡力および泡沫安定性を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、例えば起泡剤、洗浄剤などの用途に有用であるとともに、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
【0070】
実施例14:洗浄力試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と、比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウムを用いて、リーナッツ試験改良法(JIS K−3362の方法に準拠)により、洗浄力を評価した。詳細には、あらかじめ使用汚垢液として、大豆油10g、牛脂10g、モノオレイン0.25g、オイルレッド(スダンIII)0.1g、クロロホルム約100mLをトールビーカー(100mL)に入れ、溶解させて調製した。まず、清浄なスライドグラス6枚を0.1mgの単位まで重量を測定し、先に調製した室温の汚垢液に、1枚ずつ約55mmの高さまで2〜3秒間程度浸漬する。余分な汚垢液を除いた後、25℃、65%RHに調製した恒温恒湿器に1時間静置後に0.1mgの単位まで重量を測定する。0.1wt/v%水溶液(実施例1は0.3wt/v%水溶液、実施例2は0.2wt/v%水溶液)に調整した各ナトリウム塩化合物水溶液700mLを30℃とし、スライドグラスを固定相にはさみ、ゆっくりと浸漬させる。回転数250rpmで3分間洗浄を行い、その後、水を精製水に入れ替え、1分間、250rpmですすぎをした後、固定相より取り出して、1晩風乾を行う。重量を測定して、洗浄力(%)を以下の式で算出した。その結果を表6に示す。
【0071】
(数3)
洗浄力(%)=100×[(洗浄前汚垢量―洗浄後汚垢量)/洗浄前汚垢量]
【0072】
【表6】

【0073】
表6の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩は、洗浄力を有し、実施例2〜7は比較例1に比べて、モル濃度が低いにも関わらず、高い洗浄力を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、洗浄剤の用途に有用であるとともに、脂肪酸鎖の末端カルボン酸部分にエステル結合させる原料のアルコールにおけるアルキル鎖の長さ(Cn2n+1)を選択することにより、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
【0074】
実施例15:乳化力試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で2当量の水酸化ナトリウムまたは2当量のトリエタノールアミンと反応させたナトリウム塩化合物及びトリエタノールアミン塩化合物と、比較例1、2として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウム塩及びドデカン酸トリエタノールアミン塩を用いて、0.1wt/v%水溶液(比較例2のみ1wt/v%水溶液)に調製した各ナトリウム塩化合物水溶液50mLあるいは各トリエタノールアミン塩化合物水溶液50mLとトルエン25mLを100mLトールビーカーに入れ、40℃とし、ホモジナイザーにて10000rpmで3分間攪拌を行い、その後、50mL目盛り付きの栓付きメスシリンダーに50mL移して25℃、65%の恒温恒湿器で静置し、分離した水分量を目視で直後と6時間後に計測し、乳化力を評価した。全体の容量から分離した水分量を読み取り、以下の式から乳化率を計算した。ナトリウム塩化合物での結果を表7に、トリエタノールアミン塩化合物での結果を表8に示す。
【0075】
(数4)
乳化率(%)=100×[(全体の乳化量―分離水分量)/全体の乳化量]
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

【0078】
表7及び表8の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩及びトリエタノールアミン塩はともに、比較例1に比べて、高い乳化力を示し、化合物濃度の高い比較例2と比べても同等であった。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、乳化剤の用途に有用であるとともに、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
【0079】
実施例16:浸透力試験
実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物を水溶媒中で水酸化ナトリウムと反応させたナトリウム塩化合物(Xがナトリウム)と、比較例1として1鎖1親水基型界面活性剤であるドデカン酸ナトリウムをそれぞれ0.1wt/v%水溶液(比較例2のみ0.5wt/v%水溶液)に調製した各ナトリウム塩化合物水溶液を用いて、フェルト沈降法により浸透力を評価した。詳細には、100mLのトールビーカーに各ナトリウム塩化合物水溶液60mLを入れ、温度25℃にて、2cm×2cm、厚さ1mmのフェルト片を液
面に浮かべた瞬間から液中に沈降するまでの時間を測定した。その結果を表9に示す。
【0080】
【表9】

【0081】
表9の結果より、実施例1〜7で得られたジカルボン酸型化合物のナトリウム塩は、化合物濃度の高い比較例2より沈降までの時間がかかるものの、同濃度である比較例1に比べて、フェルト片が沈降するまでの時間が著しく短く、ぬれやすく高い浸透力を示した。すなわち、本発明のジカルボン酸型化合物は、浸透性が求められる、例えば浸透・湿潤剤、洗浄剤、製紙工業、繊維工業分野の各種処理剤などの用途に有用であるとともに、従来の1鎖1親水基型界面活性剤に比べて使用量を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のジカルボン酸型化合物は、工業的に入手し易い天然由来の脂肪酸などを出発原料としており、容易に合成することができるので、産業上の利用可能性は非常に大きい。
本発明のジカルボン酸型化合物は、界面活性剤として有用であり、頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤、台所用洗剤、機械金属用洗浄剤等の種々の用途に利用可能であるが、少量で洗浄力、起泡性等が良好であり、優れた界面活性能を有し、かつ生分解性にも優れ安全性が高いことから、頭髪用洗浄剤、皮膚洗浄剤の基材として好適である。また本発明のジカルボン酸型化合物は、製紙工業分野における紙力の増強剤、紙質改善剤、サイズ剤、各種充填材、顔料、染料などの歩留まり向上剤、接着工業分野における接着促進剤、繊維工業分野における各種繊維の染色性改善剤、防縮剤、防燃加工剤、帯電防止剤、機械・金属加工分野における潤滑剤、防錆剤、等としての利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるジカルボン酸型化合物。
【化1】

但し、上記一般式(1)中、Cn2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、nは1〜22の整数を示す。R1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、R2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示す。但し、R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン又はアンモニウムイオンを示す。
【請求項2】
下記一般式(2´)
【化2】

(式中、
n2n+1は直鎖状の又は分岐状のアルキル基を示し、
nは1〜22の整数を示し、
1は炭素原子数1〜22のアルキレン基を示し、
2は炭素原子数1〜22のアルキル基を示し、
但し、前記R1及びR2は−R1−CH−CH−R2部分が炭素原子数9〜25の炭化水素構造をなすように選択される。)で表される化合物と無水コハク酸を反応させて下記一般式(1´)
【化3】

(式中、Cn2n+1、n、R1及びR2は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わす。)で表される化合物を製造する段階と、続いて、場合により、一般式(1´)で表される化合物をアルカリ金属若しくは第2族元素、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオンの水酸化物又はアミンと反応させて下記一般式(1)
【化4】

(式中、Cn2n+1、n、R1及びR2は、一般式(2´)における定義と同様の意味を表わし、Xは、水素イオン、アルカリ金属イオン、第2族元素イオン、遷移元素イオン、第12族元素イオン、アルミニウムイオン、インジウムイオン、スズイオン、鉛イオン又はアンモニウムイオンを示す。)で表される化合物を製造する段階とを含む、ジカルボン酸型化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のジカルボン酸型化合物からなる、界面活性剤。
【請求項4】
請求項1に記載のジカルボン酸型化合物を含む、洗浄剤。
【請求項5】
請求項1に記載のジカルボン酸型化合物を含む、乳化剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157354(P2011−157354A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2556(P2011−2556)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000114318)ミヨシ油脂株式会社 (120)
【Fターム(参考)】