説明

新規ネアミン誘導体の合成及び抗菌薬としてのその使用

本発明は、式(I)の化合物(式中、R1=OHまたはNH2であり;OR2、OR3、OR4及びOR5は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート官能基を形成し;かつR5=Hの場合、R2=R3=R4なら、R2、R3及びR4≠Hであり;R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり;R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり;R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hであり;R5≠Hの場合、R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり;R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり;R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hである)に関する。本発明は、また、抗生物質としてのこれらの使用、及びこれらの合成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌薬に関する。
【0002】
より正確には、ネアミンの極めて活性と思われる新規誘導体を合成した。
【背景技術】
【0003】
アミノグリコシドは、グラム陽性細菌によって合成される、他の細菌と戦うための天然のポリアミノ化偽多糖である。このファミリーの最初の化合物は、1940年代に発見され、強力な抗菌薬として同定され、それらは、極めて急速に医療分野で使用された。ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、及びゲンタマイシンは、単離されるべきアミノグリコシドファミリーの最初の分子であった。
【0004】
大部分のアミノグリコシドは、共通の構造要素として、1つまたは2つの単糖または二糖単位にグリコシド結合で連結されたストレプタミンまたは2-デオキシストレプタミン環を有する。これらには、グリコシド結合によって4-位で環IIに連結された環I(2-デオキシストレプタミン)から構成される(下記に示す)パロマミン(1)及びネアミン(2)が含まれる。これら2つの化合物は、アミノグリコシドの2つの大きなファミリー:すなわち、
・パロモマイシン(3)及びネオマイシン(4)が属する、5-位で置換された誘導体のファミリー
・カナマイシン及びトブラマイシンが属する、6-位で置換された誘導体(5)のファミリー
のための基本型を構成する。
【0005】
【化1】

【0006】
現在の抗生物質の中で、アミノグリコシドは、病院環境で必須的に使用される極めて重要な部類の分子を代表する。この環境への使用を制限することは、耐性菌の発生リスクを最小にし、非常時における活性分子の利用を可能にする。
【0007】
ほとんどのアミノグリコシドは、グラム陽性及びグラム陰性細菌の双方に対して抗生物質効果を有する。それらのアミノグリコシドは、そのスペクトルを拡げるためにβ-ラクタムまたはフルオロキノロンと併用して投与されることが多い。一方、すべてのアミノグリコシドは、嫌気性細菌及びマイコプラズマに対して不活性である。
【0008】
アミノグリコシドは、いくつかの作用方式を有し、その主要な1つは、細菌の16SリボソームRNAの部位Aとの強力な相互作用によってタンパク質合成を妨害することである。1987年に、Mozaed及びNollerは、いくつかのアミノグリコシドが、リボソームRNAと特異的に相互作用することを示した。この発見以来、アミノグリコシドが良好なリガンドであるRNAが、他にも同定されてきた。それらは、例えば、HIV-1のTAR、RRE及びDIS RNAに固着する能力がある。
【0009】
アミノグリコシドの抗生物質効果は、それらが、細菌膜の性質に誘発する修飾のためでもある。
【0010】
残念ながら、アミノグリコシドは、それらを医薬品として使用する場合に、いくつかの欠点を有する。実際、それらの毒性によりそれらの治療的使用が制約され、かつ他の多くの薬剤のように、耐性が現れている。耐性細菌株は、かくして、重大な健康問題である院内疾患の原因である。
【0011】
これら耐性の形式には、アミノグリコシドの構造を酵素によって修飾してそれらが細菌のリボソームRNAへ結合することを不可能にすること、細胞内アミノグリコシド濃度を排出によって低下させること、標的RNAの30Sサブユニットの構造を改変すること、及びRNA中のアミノグリコシド結合部位をメチル化することが含まれる。
【0012】
特定の細菌によって合成される修飾酵素で引き起こされる耐性に関して、3つの部類の耐性酵素が存在する:すなわち、
・ATPを利用してアミノグリコシドのヒドロキシル基をリン酸化する、アミノグリコシドO-ホスホトランスフェラーゼ(APH)及びアミノグリコシドヌクレオチジルトランスフェラーゼ(ANT);
・補酵素Aを利用してアミノグリコシドのアミン基のアシル化を触媒するアミノグリコシドN-アセチルトランスフェラーゼ(ACC)。
【0013】
修飾酵素は、アミノグリコシドの種々の位置に対して特異的である。環IIの3'-位のヒドロキシル基をリン酸化する酵素は、APH3'の名称を有する。例えば、カナマイシンBは、次図の酵素によって修飾される:
【0014】
【化2】

【0015】
注:1997年に、二元機能酵素、AAC(6')-APH(2'')が発見された。
【0016】
活性分子の細胞内濃度の低下に寄与する機構に関して、原核細胞の細胞膜中の排出ポンプは、細胞を中毒させる可能性のある生体異物を拒絶する機構を形成する。突然変異は、これらのポンプを過度に活性化することができる。細胞の中には、これらのポンプを調節する遺伝子の突然変異を有するものもあり、その結果、それらの遺伝子が過度に発現され、生体異物の拒絶に関する選択性がより低くなり、アミノグリコシドの排出を可能にする(多剤耐性またはMDRシステム)。
【0017】
アミノグリコシドの主な抗生物質効果及び耐性の問題は、かくして、新たな抗生物質及び/または抗ウイルス薬を発見するために、これらの分子の化学における関心の復活をもたらした。詳細には、これは、現在利用可能なアミノグリコシド、すなわち現在の治療に対して抵抗性である細菌に作用する新な薬剤を同定することからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】国際公開第2005/060573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、この領域に含まれる。実際、本発明者は、新規なアミノグリコシド、特にネアミンまたはパロマミンの誘導体のための合成経路を開発し、これらの誘導体が注目すべき抗菌特性を有することを示した。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、第1態様において、本発明は、次式:
【化3】

を有する化合物に関するものであり、式中、
・R1=OHまたはNH2であり
・OR2、OR3、OR4及びOR5は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート基であり、かつ
・R5=Hの場合
R2=R3=R4なら、R2、R3及びR4≠Hであり;
R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり;
R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり:
R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hであり;
・R5≠Hの場合
R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり;
R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり;
R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hである。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明による化合物の式は、
【化4】

であり、式中、
・R1=OHまたはNH2であり
・OR2、OR3及びOR4は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート基であり、かつ
・R2=R3=R4なら、R2、R3及びR4≠Hであり;
・R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり;
・R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり;
・R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hである。
【0022】
換言すれば、本発明は、ネアミンまたはパロマミンの3'、4'及び/または6-位で二置換(3'+6-位または3'+4'-位または4'+6-位)あるいは三置換(3'+4'+6-位)された誘導体に関する。また、ネアミンまたはパロマミンの5-位を含む三置換誘導体(3'+6+5-位または3'+4'+5-位または4'+6+5-位)も本発明に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ネアミン及びパロマミンの式において、OR2、OR3、OR4及びOR5は、式OHをもつアルコール基である。
【0024】
本発明によれば、これらのアルコール基の少なくとも2つまたは3つは、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート基で代替される。
【0025】
本発明による化合物は、アミン基と酸との反応に由来する塩の形態で存在してもよいことに留意されたい。従って、ネアミン誘導体(R1=NH2)は、プロトン化された形態、例えば、四塩酸塩または四トリフルオロ酢酸塩の形態で存在する。
【0026】
アルコール基中で、酸素は、水素原子への単結合を有する(OH)。
【0027】
エーテル基中で、酸素は、それ自体がアルキル型(OCRR'R'')またはアリール型(OAr)の基に含まれる炭素原子への単結合を有する。
【0028】
エステル基中で、酸素は、それ自体がもう1つの酸素原子への二重結合を有する炭素原子への単結合を有する(OCOR)。
【0029】
カルボネート基中で、酸素は、それ自体が第2の酸素原子への二重結合及び第3の酸素原子へのもう1つの単結合を有する炭素原子への単結合を有する(OC(O)OR)。
【0030】
カルバメート基中で、酸素は、それ自体がもう1つの酸素原子への二重結合及び窒素原子への単結合を有する炭素原子への単結合を有する(OC(O)NHRまたはOC(O)NRR')。
【0031】
スルホネート基中で、酸素は、それ自体がそれぞれの酸素原子への二重結合を2つ及び炭素原子への単結合を有する硫黄原子への単結合を有する(OSO2R)。
【0032】
スルファメート基中で、酸素は、それ自体がそれぞれの酸素原子への二重結合を2つ及び窒素原子への単結合を有する硫黄原子への単結合を有する(OSO2NHRまたはOSO2NRR')。
【0033】
これらの官能基の種類は、後で説明するように、これらの誘導体を合成するのに使用される方法に由来する。
【0034】
本発明に関わる化合物において、OR2、OR3及びOR4、ならびに場合によってOR5基は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート官能基によって構成される群から独立に選択できることを明瞭に理解できる。したがって、任意の組合せを考えることができる。
【0035】
なんらかの所与の理論に拘束されることを望むものではないが、これらの戦略的位置の基による修飾及び/または占拠は、アミノグリコシドの構造修飾に関連する耐性の原因である細菌酵素によるそれらアミノグリコシドの分解を防止する可能性がある。このことは、これらの化合物に関して観察される注目すべき抗菌活性を説明できる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、同一または異なる残基R2、R3、R4及びR5は、
・H;
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含むアルキル、ハロアルキルまたはヘテロアルキル基;
・直鎖または分枝鎖中に2〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルケニルまたはアルキニル基;
・直鎖または分枝鎖中に3〜30個の炭素原子を含み、置換された(例えば、ストレプタミンまたは2-デオキシストレプタミン核など)または置換されていない1種または複数のシクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基;
・環当たり3〜10個の炭素原子を含む1種または複数のアリールまたはヘテロアリール基;
・1〜30個の炭素原子を含むアルカリールまたはアラルキル基(用語アリール及びアルキルは、後記の定義を有する);
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルコキシ、チオアルキル、スルホニルアルキル、またはアミノアルキル基;
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルアミノアルキル、アルキルケトアルキル、アリールまたはアルキルアルキルエステル基;
・環当たり5〜10個の炭素原子を含む1種または複数の複素環基;
・ネアミンまたはその誘導体の1種などの糖、オリゴ糖、または偽オリゴ糖(この部類に分類されるすでに記載の存在し得る天然誘導体は、有利には、このような化合物の保護の範囲から排除される);
・アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル(-C(O)R)基(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アルキルオキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル(-C(O)OR)基(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アルキルカルバモイルまたはアリールカルバモイル基(-C(O)NHRまたは-C(O)NRR')(R及びR'は、同一または異なって、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・スルホニル基(-SO2R)(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アミノスルホニル基(-SO2NHRまたは-SO2NHRR')(R及びR'は、同一または異なって、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
を表し、
すべての前記基は、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルボニルまたはアミノ基によって、1つまたは複数のハロゲンによって、あるいは1つまたは複数のニトリル、シアンヒドリンまたはアルデヒド官能基によって置換されていてもよい。
【0037】
「アミン」は、窒素原子を含む基を意味すると解釈される。それは、第1級アミンNH2、第2級アミンNHR'、または第3級アミンNR'R''であってよい。同一または異なっていてよいR'及びR''は、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される。
【0038】
本発明によれば、用語「アルキル」は、1〜30個の炭素原子の直鎖または分枝鎖の炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、またはイコシルなどを記述する。上で定義したアルキル基は、1つまたは複数のハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素)を含むことができる。この場合、本発明者は「ハロアルキル」という言葉を使用する。アルキル基は、また、P、O、N、S及びSeから選択されるヘテロ原子を含むことができる。この場合、本発明者は「ヘテロアルキル」基という言葉を使用する。
【0039】
「アルケニル」は、2〜30個の炭素原子からなり、1つまたは複数の二重結合を含む直鎖または分枝の炭化水素鎖を意味すると解釈される。アルケニル基の例には、-CH-CH=CH-CH2、H2C=CH-(ビニル)またはH2C=CH-CH2-(アリル)のように、たった1つの二重結合を有するアルケニル基がある。
【0040】
アルキニルは、2〜30個の炭素原子からなり、1つまたは複数の三重結合を含む直鎖または分枝の炭化水素鎖を意味すると解釈される。アルキニル基の例には、-CH2C≡CHのように、たった1つの三重結合を有するアルキニル基がある。
【0041】
「シクロアルキル」は、3〜10個の炭素原子を含み、単環または多環式でよい飽和炭化水素基を記述する。これらには、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル及びシクロドデシルなどの単環式シクロアルキル基がある。
【0042】
「シクロアルケニル」は、本発明で、上で定義したようなシクロアルキル基から誘導され、1つまたは複数の二重結合、例えば2つの二重結合を有する基を意味すると解釈される。例えば、それは、シクロヘキセン(1つの二重結合)またはシクロペンタ-1,3-ジエン(2つの二重結合)基を指す。
【0043】
「シクロアルキニル」は、本発明で、上で定義したようなシクロアルキル基から誘導され、1つまたは複数の三重結合、例えば1つの三重結合を有する基を意味すると解釈される。
【0044】
用語「アリール」は、フェニルまたはナフチルのように、環当たり3〜10個の炭素原子を含む芳香族の多環式または単環式炭化水素基を指す。「ヘテロアリール」は、環当たり3〜10個の炭素原子を含み、かつP、O、N、S及びSeから選択される環当たり1、2または3個の環内へテロ原子を含む多環式または単環式の芳香族基を指す。例には、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、及びトリアジニル基がある。「アルカリール」は、アリール基で置換されたアルキル基(これらの2種の基は上で定義されている)を意味すると解釈される。
【0045】
「アラルキル」は、アルキル基で置換されたアリール基を意味すると解釈される(これらの2種の基は上で定義されている)。
【0046】
「アルコキシ」は、1〜30個の炭素原子を含むO-アルキル基、詳細には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ及びブトキシを意味すると解釈される。「アルコキシアルキル」は、1〜30個の炭素原子を含むアルキル-O-アルキル基を意味すると解釈される。「チオアルキル」または「アルキルチオアルキル」、「スルホニルアルキル」または「アルキルスルホニルアルキル」、及び「アミノアルキル」または「アルキルアミノアルキル」基は、それぞれ付加部分に、1つまたは複数の硫黄原子、1つまたは複数のスルホニル基、及び1つまたは複数のアミン官能基を含む。
【0047】
用語「複素環式基」は、P、O、N、S及びSeから選択される1、2または3個の環内へテロ原子を含む、多環式または単環式の不飽和または飽和炭素環を指す。これらは、一般に、前述のヘテロアリール基の誘導体である。不飽和複素環の例には、ジヒドロフリル、ジヒドロチエニル、ジヒドロピロリル、ピロリニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル、イソキサゾリニル、イソチアゾリニル、オキサジアゾリニル、ピラニル、ならびにピペリジン、ジオキサン、ピペラジン、トリチアン、モルホリン、ジチアン、チオモルホリンのモノ不飽和誘導体、ならびにテトラヒドロピリダジニル、テトラヒドロピリミジニル、ならびにテトラヒドロトリアジニルがある。
【0048】
本発明で有利に使用される方法なので、R4(6-位)及びR3(3'-位)、あるいはR2(4'-位)、及び場合によってR5(5-位)は、好ましくは同一である。
【0049】
好ましい実施形態によれば、R2及び/またはR3及び/またはR4及び/またはR5は、次の群:ナフチル-2-メチレン(2NM)、ナフチル-1-メチレン(1NM)、及びヘキシルから選択される。
【0050】
本発明による特に好ましい二置換または三置換化合物は、次の通りである。
【0051】
【化5】

【0052】
化合物6aは、3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-メチレン)ネアミンである。
化合物7aは、3',4',6-O,O',O''-トリ(ナフチル-2-メチレン)ネアミンである。
化合物6bは、3',6-O,O'-ジ(ナフチル-1-メチレン)ネアミンである。
化合物7cは、3',4',6-O,O',O''-トリ-n-ヘキシルネアミンである。
化合物8aは、3',4'-O,O'-ジ(ナフチル-2-メチレン)ネアミンである。
【0053】
より一般的に、かつ2NM誘導体に比較して、次式を有する化合物は、容易に調製され、後で説明する所望の生物活性を有する。
【0054】
【化6】

【0055】
詳細には次の化合物を挙げることができる:
・3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-プロピル)ネアミン、
・3',4',6-O,O',O''-トリ(ナフチル-2-プロピル)ネアミン、
・3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-ブチル)ネアミン、
・3',4',6-O,O',O''-トリ(ナフチル-2-ブチル)ネアミン。
【0056】
これらすべての化合物が新規であることに加えて、それらは、治療的応用のために重要である可能性のあることが、本発明の文脈で示された。この理由及び他の態様により、本発明は、医薬品としての前述のような化合物の使用、及びそれを含有する医薬組成物に関する。
【0057】
有利には、このような組成物において、本発明による化合物は、医薬として許容し得る塩、特に塩酸塩またはメチルスルホン酸塩の形態である。
【0058】
もちろん、このような組成物は、任意の賦形剤または医薬として不活性なビヒクル、及び場合によって1種または複数のその他の活性成分を含有することもできる。抗生物質のカクテルの場合、好ましい活性物質は、別の部類の抗生物質、好ましくはβ-ラクタムまたはフルオロキノロンである。
【0059】
すでに述べたように、本発明による化合物は、細菌感染症の予防または治療を意図した医薬品の調製で有利に使用できる。これらの細菌感染症は、野生型または耐性のある、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などのグラム陽性細菌、あるいは大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeriginosa)、アシネトバクター・ルウォフィー(Acinetobacter lwoffi)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、シトロバクター・アマロナチカス(Citrobacter amalonaticus)などのグラム陰性細菌が原因の場合がある。本発明による化合物は、感受性菌株、及びネアミンまたはネオマイシンなどの古典的アミノグリコシドに対して特に耐性と考えられる菌株の双方に対して著しく活性であり得る。
【0060】
別の態様によれば、本発明は、また、ネアミンまたはパロマミン由来の、所望の位置で二置換または三置換された誘導体を得るための合成方法に関する。
【0061】
かくして、本発明は、種々の容易な合成経路をもたらした。これらの種々の経路は、共通に次の要点を有する:
・パロマミン(6'-位のR1=OH)またはネアミン(6'-位のR1=NH2)である出発物質、
・有利にはトリチル化によって1、3、2'、6'-位のアルコール及び/またはアミン官能基を保護することからなる第1段階、
・その後の、6及び/または3'-位のヒドロキシル基の修飾、
・そして、1、3、2'及び6'-位を脱保護する最終段階。
【0062】
最初の段階は、1、3、2'、及び6'-位の官能基、特にアミンを保護することからなるので、周知である。国際公開第2005/060573号に記載の方法によれば、この段階は、出発誘導体パロマミンまたはネアミン中のアミン官能基がプロトン化されるなら、これらの位置に存在するアミン官能基のそれを超えるpKa値を有する塩基の存在下にトリチル基(トリフェニルメチル、4-モノメトキシトリチル、4',4'-ジメトキシトリチルまたは4,4',4''-トリメトキシトリチル)を使用して実施することができる。
【0063】
必要とされる誘導体を得るためのこのような方法の最終段階は、また、アミン及びヒドロキシル官能基を酸媒質中で、例えば、TFA/アニソール混合物を用いて処理することによって脱保護することからなるのでそれ自体周知である。
【0064】
中間段階の目的は、必要とされる位置に、特にアルキル化によって基を導入することである。種々の位置での基の反応性に応じて、一時的な保護段階を必要とすることもある。
【0065】
最初の合成経路(経路A)によれば、保護された生成物を、6-位、場合によって3'-位、及び場合によって4'-位に導入すべきR基をもつハロゲン化誘導体(例えば、X=Cl、BrまたはI)またはスルホニル化誘導体(例えば、X=メシルまたはトシル)RXと反応させる。Rは、本発明でR2、R3及びR4に付されたものと同様の定義を有する。
【0066】
この反応は、標的のヒドロキシル基からプロトンを取り除く能力を有する塩基、例えば、水酸化ナトリウムの存在下で行われる。温度、溶媒、ハロゲン化またはスルホニル化誘導体の性質、及び試薬の比率は、必要とされる選択性(6-位及び/または3'-位及び/または4'-位でのアルキル化)に応じて選択される。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が、一般的に使用される溶媒であるが、例えば、DMF-テトラヒドロフラン(THF)混合物を使用すると、反応が減速され、必要とされる選択性を向上させることができる。いくつかの事例では、反応を加速するために、反応媒質にヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加することができる。
【0067】
この場合、6-位で単置換された、3'+6-位で二置換された、及び3'+4'+6-位で三置換された誘導体が、同時に得られる。加えて、最も単純な反応計画によれば、これらの誘導体は、同一のR3(3'-位)、R4(6-位)及びR2(4'-位)残基を有する。
【0068】
対応する反応スキームを、テトラトリチル化ネアミン9について下に示す。
【0069】
【化7】

【0070】
まったく予想外に、誘導体7aを調製するのに使用される誘導体11aの酸媒質中での最後の脱トリチル化段階は、また、反応時間が増大すると(24時間)、3'+4'-位でアルキル化された誘導体8aを生成することが観察された。対応する反応スキームを下に示す。
【0071】
【化8】

【0072】
本発明の文脈において、これらの誘導体は、活性のある抗菌薬であることが分かった。
【0073】
6-位で単置換された誘導体は、それが2つの他の合成経路(経路B及びC)中の中間生成物として役立つので、極めて興味深い。
【0074】
次の実施形態(経路B)によれば、6-位にR基を所持する単置換誘導体を、3'-位、及び場合によって4'-位に導入すべきR'基を所持するハロゲン化誘導体(例えば、X=Cl、Br、I)またはスルホニル化誘導体(例えば、X=メシルまたはトシル)でよい誘導体R'Xと反応させる。4'-位に対しては、別の化合物R''Xの使用が考えられ得る。やはり、R'及びR''は、本発明でR2、R3及びR4に付与されたものと同様の定義を有する。
【0075】
この反応の最後の時点で、3'+6-位で同時に二置換された、及び3'+4'+6-位で同時に三置換された誘導体が得られ、R3(3'-位)及びR4(6-位)の残基は異なっていてもよく、R3(3'-位)及びR2(4'-位)の残基は同一、または場合によって異なる。
【0076】
これらの反応は、標的のヒドロキシル基からプロトンを取り除く能力を有する塩基、例えば、水酸化ナトリウムの存在下で行われる。温度、溶媒、ハロゲン化またはスルホニル化誘導体の性質、及び試薬の比率は、必要とされる選択性(6-位及び/または3'-位及び/または4'-位でのアルキル化)に応じて選択される。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が、一般的に使用される溶媒であるが、例えば、DMF-テトラヒドロフラン(THF)混合物を使用すると、反応が減速され、必要とされる選択性を向上させることができる。いくつかの事例では、反応を加速するために、反応媒質にヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加することができる。
【0077】
対応する反応スキームを、テトラトリチル化ネアミンに関して下に示す。
【0078】
【化9】

【0079】
代わりの実施形態(経路C)によれば、6-位にR基を所持する単置換誘導体を、まず、保護基(Z)を使用して3'-位で保護し、次いで、4'-位に導入すべきR'基を所持するハロゲン化(例えば、X=Cl、BrまたはI)またはスルホニル化(例えば、X=メシルまたはトシル)されていてもよい誘導体R'Xと反応させる。R'は、本発明でR2、R3及びR4に付与されたものと同様の定義を有する。
【0080】
3'-位の保護は、酸に不安定な基Zを使用し、特にアリールメチレン(ArCH2X、Ar=2-ナフチル、1-ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニルなど)またはシリル化型(Z=tert-ブチルジメチルシリル、トリエチルシリルなど)のハロゲン化(例えば、X=Cl、BrまたはI)またはスルホニル化(例えば、X=メシルまたはトシル)されていてもよい誘導体と反応させることによって提供することができる。
【0081】
反応は、標的のヒドロキシル基からプロトンを取り除く能力を有する塩基、例えば、水酸化ナトリウムの存在下で行われる。温度、溶媒、ハロゲン化またはスルホニル化誘導体の性質、及び試薬の比率は、必要とされる選択性(酸に不安定な保護基を導入するための3'-位でのアルキル化、その後の4'-位でのアルキル化による保護)に応じて選択される。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が、一般的に使用される溶媒であるが、例えば、DMF-テトラヒドロフラン(THF)混合物を使用すると、反応が減速され、必要とされる選択性を向上させることができる。いくつかの事例では、反応を加速するために、反応媒質にヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加することができる。
【0082】
この反応の最後の時点で、4'+6-位で二置換された誘導体が得られ、残基R2(4'-位)及びR4(6-位)は、場合によって異なる。
【0083】
対応する反応スキームをテトラトリチル化ネアミンについて下に示す。
【0084】
【化10】

【0085】
最後に、最終実施形態によれば、6-位の修飾は、保護基(Z)を導入することからなる。この保護は、酸に不安定な基Zを使用し、特にアリールメチレン(ArCH2X、Ar=2-ナフチル、1-ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニルなど)またはシリル化型(Z=tert-ブチルジメチルシリル、トリエチルシリルなど)のハロゲン化(例えば、X=Cl、BrまたはI)またはスルホニル化(例えば、X=メシルまたはトシル)されていてもよい誘導体と反応させることによって提供することができる。
【0086】
次いで、保護された誘導体を、3'-位及び4'-位に導入すべきR'基を所持し、ハロゲン化(例えば、X=Cl、BrまたはI)またはスルホニル化(例えば、X=メシルまたはトシル)されていてもよい誘導体RXと反応させる。Rは、本発明でR2、R3及びR4に付与されたものと同様の定義を有する。
【0087】
これらの反応は、標的のヒドロキシル基からプロトンを取り除く能力を有する塩基、例えば、水酸化ナトリウムの存在下で行われる。温度、溶媒、ハロゲン化またはスルホニル化誘導体の性質、及び試薬の比率は、必要とされる選択性(3'-位での最初のアルキル化と同一または異なる3'-位及び4'-位でのアルキル化)に応じて選択される。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が、一般的に使用される溶媒であるが、例えば、DMF-テトラヒドロフラン(THF)混合物の使用は、反応を減速し、必要とされる選択性を向上させることができる。いくつかの事例では、反応を加速するために、反応媒質にヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加することができる。
【0088】
最も単純な反応スキームによれば、この第2段階の最後の時点で、3'+4'-位で二置換された誘導体が得られ、残基R3(3'-位)及びR2(4'-位)は同一である。しかし、これらの残基は、アルキル化を2段階で実施すると、すなわち、所定の残基Rを用いる3'-位での最初のアルキル化を、次いでRとは異なる残基R'を用いる4'-位での第2のアルキル化ステップを実施すると、異なることもある。
【0089】
対応する反応スキームを、テトラトリチル化ネアミンについて下に示す。
【0090】
【化11】

【0091】
本発明による重要な化合物を合成する別の経路は、相関移動触媒の存在下で二相法を使用することからなる。後記する溶液中での方法と比較して、この部類の方法は、高度に選択的であり、生成物の大多数を生成するが、それらの性質は適用される実験条件に依存する。
【0092】
したがって、存在する相関移動触媒の性質に応じて、一方では、3'-位のヒドロキシル官能基の修飾、他方では6-位のヒドロキシル基の修飾をベースにした2つの主要合成経路が進行する。
【0093】
最初の態様によれば、アルキル化は、存在するハロゲン化アルキル(RX)の量に応じて、3'-位(下図の右側経路)、または3'+6-位(下図の左側経路)で選択的に起こる。
【0094】
該アルキル化は、水酸化ナトリウム(30〜50%)を含む水相、及び溶解された誘導体9を含むトルエン(または、例えばジクロロメタン)からなる有機相との相関移動によって起こる。次いで、相関移動触媒(ここではヨウ化または臭化テトラブチルアンモニウム)を、続いてハロゲン化アルキル(RX)、例えばパラメトキシベンジルクロリド(PMBCl)を添加する。
【0095】
ハロゲン化アルキル(例えば、PMBCl)の量及び相関移動触媒の量を制限することからなる最初の条件下では、3'-位に官能基を有する誘導体の形成を促進することが可能である。反応は、室温またはより高い温度で実施できる。形成された3'-位での誘導体を単離した後、それを、異なる条件下で4'-位及び6-位でビスアルキル化し、次いでTFA及びアニソールの存在下で脱保護して、4'-位及び6-位でビスアルキル化された誘導体に導くことができる。別法として、それを、異なる条件下で4'-位、5-位及び6-位でトリアルキル化し、次いでTFA及びアニソールの存在下で脱保護して、4'-位、5-位及び6-位でトリアルキル化された誘導体に導くことができる。
【0096】
最初のアルキル化段階を、より多量のハロゲン化アルキル(例えば、PMBCl、1NMBr、2NMBr)を使用する相関移動によって実施することだけからなる別の条件下では、3'-位、6-位でビスアルキル化された誘導体の形成を促進することが可能である。
【0097】
3'-位に前以て導入した基が、TFA/アニソール混合物中で安定であるなら、脱保護後でも3'、4'、6トリアルキル化された混合誘導体(R≠R')を調製することもできる。
【0098】
これらの種々の経路を下図に示す。
【0099】
【化12】

【0100】
この図は、例えば次を合成するのに役立ち得る:
・ネアミンの4',6-ジ-2NM誘導体:
【化13】

・パロマミン系列の3',6-ジ-2NM誘導体:
【化14】

・ネアミン系列の3',6-ジ-1NM誘導体:
【化15】

【0101】
第2態様によれば、アルキル化は、存在するハロゲン化アルキルの量に応じて、6-位(下図の右側の経路)、または3'+4'+6-位(下図の左側の経路)で選択的に起こる。
【0102】
該アルキル化は、水酸化ナトリウム(30〜50%)を含む水相、及び溶解された誘導体9を含むトルエン(または、例えばジクロロメタン)からなる有機相との相関移動によって行われる。次いで、相関移動触媒、ここでは、フッ化(または、塩化もしくはリン酸水素化)テトラブチル(または、テトラメチルもしくはトリエチル)アンモニウムを、続いてハロゲン化アルキル、例えばパラメトキシベンジルクロリド(PMBCl)を添加する。
【0103】
ハロゲン化アルキル(例えば、PMBCl)の量、及び相関移動触媒の量を制限することからなる最初の条件下では、6-位に官能基を有する誘導体の形成を促進することが可能である。形成された6-位誘導体を単離した後、それを、異なる条件下に3'-位及び4'-位でビスアルキル化し、次いでTFA及びアニソールの存在下で脱保護して3'-位及び4'-位でビスアルキル化された誘導体に導くことができる。別法として、それを、異なる条件下で3'-位、4'-位及び5-位でトリスアルキル化し、次いでTFA及びアニソールの存在下で脱保護して、3'-位、4'-位及び5-位でトリスアルキル化された誘導体に導くことができる。
【0104】
6-位に前以て導入した基が、TFA/アニソール混合物中で安定であるなら、脱保護後でも3'、4'、6トリアルキル化された混合誘導体(R≠R')を調製することもできる。
【0105】
最初のアルキル化段階を、より多量のハロゲン化アルキル(例えば、PMBCl、1NMBr、2NMBr)を使用する相関移動で実施することだけからなる別の条件下では、3'+4'+6-位でトリスアルキル化された誘導体の形成を促進することが可能である。
【0106】
これらの種々の経路を下図に示す。
【0107】
【化16】

【0108】
この図は、例えば、次の誘導体を合成するのに役立つことができる:
・ネアミンのN-テトラトリチル化された6-モノ-2NM誘導体
【化17】

・3',4',5-トリ-2NM誘導体
【化18】

【0109】
これまで、アルキル化反応に関してこれらの種々の反応スキーを説明してきた。それにもかかわらず、アリール誘導体、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート誘導体を調製する場合も、原理は結局同じである。
【0110】
これらの誘導体の場合、前記のアルキル化及び/または保護反応は、当業者に周知のアリール化、アシル化、カルボネート化、カルバモイル化、スルホニル化、アミノスルホニル化、及び/またはシリル化反応によって代替される。例として、アシル化反応は、ジクロロメタン中、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、またはトリエチルアミンなどの塩基の存在下に酸無水物または酸クロリドを用いて実施される。アシル化を酵素的に実施することを考えることも可能である。
【0111】
さらに、これらの反応スキーム中で挙げられるRまたはR'基、さらにはR''基も、最終化合物中に存在するR2、R3、R4及びR5基に一致させることができると思われる。それにもかかわらず、これらの基の性質を、2つの機構によって修正することができる:すなわち、
・アルキル化反応(及び、同様に、アリール化、アシル化、カルボネート化、カルバモイル化、スルホニル化またはアミノスルホニル化)を変えて、Rの性質を各段階の間に(異なる位置へ導入する間に)修正することができる。
・3'-位または4'-位または6-位または5-位に配置される基は、いくつかの段階中で導入できる。したがって、必要とされる位置にRまたはR'を導入した後に、この残基を、次の反応によって修正することができる。
【実施例】
【0112】
(実施形態の例)
本発明及びそれに由来する利点を、以下の実施例によりさらに十分に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0113】
本発明は、下記に要約する前記経路Aによる合成の終末時点で得られる、3'-位及び6-位でジアルキル化された、または3'-位、4'-位及び6-位でトリアルキル化された化合物を用いてさらに説明される。
【0114】
【化19】

【0115】
(実験の部)
I-誘導体の合成
A/古典的経路
1/3',6-ジ(ナフチル-2-メチレン)ネアミン6a及び3',4',6-トリ(ナフチル-2-メチレン)ネアミン7a誘導体の合成
ネアミンのトリチル化誘導体9(2.0g、1.55ミリモル)をアルゴン下で無水DMF(20mL)に溶解した。水素化ナトリウム(60%、217mg、5.42ミリモル)、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(572mg、1.55ミリモル)及び2-(ブロモメチル)ナフタレン(857mg、3.87ミリモル)を逐次的に添加した。混合物を室温で24時間継続的に撹拌し、次いで、150mLのジクロロメタンを添加した。次いで、有機相を200mLの水で洗浄し、次いで硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、得られた残留物を、50/50のシクロヘキサン/ジクロロメタン混合物を使用するアルミナゲルでのクロマトグラフィーにかけた。分離し、減圧下で溶媒を蒸発させて、生成物10a(980mg、0.62ミリモル、40%)及び生成物11a(1.01g、0.59ミリモル、38%)を得た。化合物10a:MS(FAB+、NBA)m/z=1594[M+Na]+、化合物11a:MS(FAB+、NBA)m/z=1735[M+Na]+
【0116】
化合物10a(602mg、0.39ミリモル)及び化合物11a(121mg、0.07ミリモル)を、それぞれ、ジクロロメタンとトリフルオロ酢酸(v/v:1/1)との少量のアニソールを添加した混合物中に溶解した。室温で12時間反応した後、減圧下で溶媒を蒸発させ、水/ジエチルエーテルでの抽出を実施した。減圧下で水相を濃縮した後、残留物を、100/0〜50/50の水/メタノールによるグラジエント溶離を用いるC18逆相カラムクロマトグラフィーにかけた。かくして得られた化合物を、溶離液として水を、次いで水/アンモニア混合物(98/2)を用いるイオン交換カラムに通した。減圧下で溶媒を蒸発させた後、化合物を1N HCl水溶液に溶解した。濃縮及び乾燥後に、化合物6a及び化合物7aが塩酸塩の形態で得られた。
【0117】
化合物6a: 収率=70%; NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.84-7.89 (m, 8H, H-ナフチル), 7.47-7.50 (m, 6H, H-ナフチル), 5.86 (d, J = 3.6Hz, 1H, H-1'), 5.05 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 5.02 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.88 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.85 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.04 (dd, J = 8.5と10.4Hz , 1H, H-3'), 3.96 (m, 1H, H-5'), 3.91 (dd, J = 10.0Hz, 1H, H-4), 3.82 (dd, J = 9.2Hz, 1H, H-5), 3.65 (dd, J = 9.2Hz, 1H, H-4'), 3.58 (dd, J = 9.2Hz, 1H, H-6), 3.45 (dd, J = 3.6及び10.4Hz, 1H, H-2'), 3.43-3.28 (m, 3H, H-3, H-6'b, H-1), 3.22 (dd, J = 9.6及び12.8Hz, 1H, H-6'a), 2.42 (ddd, J = 4.0及び12.4Hz, 1H, H-2eq.), 2.01 (ddd, J = 12.4Hz, 1H, H-2ax.) ; NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 132.9-134.6 (C-ナフチル), 126.3-128.6 (CH-ナフチル), 95.8 (C-1'), 79.8 (C-6), 77.5 (C-4), 75.6 (C-5及びC-3'), 75.1 (CH2-ナフチル), 70.9 (C-4'), 69.9 (C-5'), 52.6 (C-2'), 48.8 (C-1), 48.3 (C-3), 39.8 (C-6'), 28.1 (C-2); MS (DCI+) m/z = 603 [M + H] +, 463, 303, 141; HRSM (ESI+): [M+H]+ m/z 理論値=603.3183, 実測値=603.3186, [M+Na]+ m/z 理論値=625.3002, 実測値=625.3006.
【0118】
化合物7a: 収率=65%, NMR 1H (400MHz, MeOD) δ ppm = 7.39-7.97 (m, 21H, H-ナフチル), 6.03 (d, J = 3.6Hz, 1H, H-1'), 4.94-5.29 (m, 6H, CH2-ナフチル), 3.57-3.59 (m, 2H, H-3', H-5'), 4.20 (dd, J = 9.6Hz, 1H, H-4), 4.08 (dd, J = 9.2Hz, 1H, H-5), 3.65-3.74 (m, 2H, H-6, H-4'), 3.49-3.56 (m, 2H, H-3, H-2'), 3.35-3.42 (m, 2H, H-6'b, H-1), 3.17 (dd, J = 9.6及び13.2Hz, 1H, H-6'a), 2.46 (ddd, J = 4.0及び12.4Hz, 1H, H-2eq.), 2.01 (ddd, J = 12.8Hz, 1H, H-2ax.) ; NMR 13C (100MHz, MeOD) δ ppm = 133.1-135.4 (C-ナフチル), 125.3-127.9 (CH-ナフチル), 95.2 (C-1'), 80.5 (C-6), 78.9及び78.5 (C-4及びC-4'), 77.5 (C-3'), 76.3 (C-5), 74.7及び74.4 (CH2-ナフチル), 69.7 (C-5'), 53.4 (C-2'), 49.5 (C-1), 48.6 (C-3), 40.3 (C-6'), 29.5 (C-2); SM (DCI+) : m/z = 743 [M + H] +, 603 [M + H -(ナフチルメチレン)] +, 441, 303, 141; HRSM (ESI+): [M+H]+ m/z 理論値=743.3809, 実測値=743.3810, [M+Na]+ m/z 理論値=765.3628, 実測値=765.3628.
【0119】
2/3',4',6-トリ-n-ヘキシルネアミン誘導体7cの合成
化合物7cを、1.5gのトリチル化ネアミン誘導体9、1-ヨードヘキサンから、ヨウ化テトラブチルアンモニウムを添加しないで、化合物6a及び7aについて説明した方法により合成した。純粋な中間保護生成物11cは、溶離液として75/25〜50/50のシクロヘキサン/ジクロロメタン混合物を使用してアルミナカラムを通した後に、50%の収率で得られた(MALDI MS、DHB、m/z=1567[M+Na]+)。前に説明したように酸媒質中で脱保護した後に、生成物7cを、単純な水/ジクロロメタン抽出で単離し、エチルエーテルで洗浄した。収率60%。NMR 1H (400MHz, MeOD) δ ppm = 5.80 (d, J = 3.6Hz, 1H, H-1'), 4.12 (ddd, J = 2.4及び9.2Hz, 1H, H-5'), 3.96 (ddd, J = 7.2Hz, 1CH2Oの1H), 3.54-3.89 (m, 8H, H-4, H-3', H-5, 3CH2Oの5H), 3.11-3.39 (m, 7H, H-1, H-6, H-4', H-3, H-2', H-6'a, H-6'b), 2.38 (ddd, 1H, J = 4.0及び12.0Hz, H-2eq.), 1.87 (ddd, J = 12.0Hz, 1H, H-2ax.), 1.55-1.75 (m, 6H, 3CH2), 1.25-1.47 (m, 18H, 9CH2), 0.90-0.96 (m, 9H, 3CH3); NMR 13C (100MHz, MeOD) δ ppm = 95.8 (C-1'), 81.1 (C-6), 79.6 (C-4及びC-4'), 77.2 (C-3'), 76.1 (C-5), 73.5, 73.3及び73.0 (3CH2O), 69.5 (C-5'), 53.4 (C-2'), 49.5 (C-1), 48.6 (C-3), 40.1 (C-6'), 31.5 (3CH2), 29.9, 29.8及び29.6 (C-2及び3CH2), 25.5, 25.4及び25.2 (3CH2), 22.3 (3CH2), 13.0 (3CH3); MS (MALDI, DHB) m/z = 575 [M + H]+.
【0120】
3/3',4'-ジ-(ナフチル-2-メチレン)ネアミン誘導体8aの合成
この化合物は、誘導体11aを酸媒質中で脱保護することによって得られた。化合物11aを、ジクロロメタン-トリフルオロ酢酸(v/v:1/1)の混合物に溶解し、アニソールを添加した。室温で24時間反応した後、減圧下で溶媒を蒸発させ、水/ジエチルエーテルによる抽出を実施した。後に続く精製は、ネアミンから調製される他の誘導体に使用したものと同様とした。
【0121】
【化20】

【0122】
収率=10% (2段階合計). NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.10-7.90 (m, 14H, H-ナフチル), 5.87 (d, J = 3.6Hz, 1H, H-1'), 4.87 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.78 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.62 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.59 (d, J = 12.0Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.05-4.20 (m, 2H, H-3', H-5'), 3.88 (dd, J = 10.0Hz, 1H, H-4), 3.62 (dd, J = 9.6Hz, 1H, H-5), 3.54-3.61 (m, 2H, H-4', H-2'), 3.40-3.51 (m, 2H, H-6, H-3), 3.19-3.29 (m, 2H, H-6'b, H-1), 3.13 (dd, J = 8.8及び13.6Hz, 1H, H-6'a), 2.42 (ddd, J = 4.0及び12.4Hz, 1H, H-2eq.), 1.79 (ddd, J = 12.0Hz, 1H, H-2ax.) ; NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 132.7-134.4 (C-ナフチル), 125.3-128.4 (CH-ナフチル), 95.4 (C-1'), 78.2 (C-4'), 77.7 (C-4), 75.7 (C-3'), 75.1 (C-5), 74.9 (CH2-ナフチル), 72.3 (C-6), 69.7 (C-5'), 52.6 (C-2'), 49.6 (C-1), 48.4 (C-3), 39.8 (C-6'), 28.2 (C-2) ; MS (ESI+) m/z = 603 [M + H] +, 463, 441, 301, 141.
【0123】
4/テトラトリチル化された6-(ナフチル-2-メチレン)ネアミン誘導体18aの合成
【0124】
【化21】

【0125】
ネアミンのトリチル化誘導体9(502mg)をアルゴン下に室温でDMF/THF(3mL/3mL)混合物に溶解し、次いで、NaH(170mg、10当量)を添加した。30分後、反応混合物に2-(ブロモメチル)ナフタレン(130mg、1.5当量)を添加し、室温で4時間撹拌した後、減圧下で蒸発させて濃縮した。残留物を、ジクロロメタンに溶解し、飽和塩化アンモニウム溶液、水、次いで食塩水で洗浄した。有機相を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、次いで蒸発乾固した。次いで、粗生成物を、溶離液としてCH2Cl2/MeOH(100/0、次いで99.8/0.2)を用いてアルミナカラムで精製して、誘導体18a(6-位でアルキル化されたトリチル化ネアミン)を12%の収率で得た(出発化合物9のかなりの量が未反応でそのまま回収された):MS(MALDI、DHB)m/z=1454[M+Na]+、1430[M+H]+、1211[M-Tr+Na]+、1187[M-Tr+H]+。同定のために、他のネアミン誘導体について説明した方法により、トリフルオロ酢酸で処理することによって、トリチル化された基を除去することができる。
【0126】
化合物20a: 収率=82%; NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.86-7.91 (m, 2H, H-ナフチル), 7.48-7.53 (m, 2H, H-ナフチル), 5.89 (d, J = 3.6Hz, 1H, H-1'), 5.04 (d, J = 11.2Hz, 1H, CH2-ナフチル), 4.88 (d, J = 11.2Hz, 1H, CH2-ナフチル), 3.88-3.98 (m, 3H, H-3', H-5', H-4), 3.85 (dd, J = 8.8及び9.2Hz, 1H, H-5), 3.30-3.49 (m, 5H, H-3, H-4', H-2', H-6'b, H-1), 3.22 (dd, J = 6.8及び13.6Hz, 1H, H-6'a), 2.42 (ddd, J = 4.0及び12.4Hz, 1H, H-2eq.), 1.83 (ddd, J = 12.4Hz, 1H, H-2ax.); NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 134.4及び132.9 (C-ナフチル), 128.6, 128.0, 127.8, 127.6, 126.9及び126.4 (CH-ナフチル), 96.0 (C-1'), 79.9 (C-6), 77.5 (C-4), 75.8 (C-5), 75.2 (CH2-ナフチル), 70.6 (C-4'), 69.3 (C-5'), 68.2 (C-3'), 53.5 (C-2'), 48.9 (C-1), 48.4 (C-3), 40.1 (C-6'), 28.2 (C-2); MS (FAB+, NBA): m/z = 463 [M + H] +, 303, 161, 141; HRSM (ESI+): [M+H]+ m/z 理論値= 463.2557, 実測値=463.2545.
【0127】
このモノアルキル化誘導体20aは、それ自体重要でないが、例として示したそのトリチル化誘導体18aの合成は、前に述べた経路B及びCの最初の段階を構成する。
【0128】
B/相関移動触媒の存在下での二相法
1/ネアミンのテトラ-N-トリチル3'-O-p-メトキシベンジル誘導体の合成
【0129】
【化22】

【0130】
1gのテトラ-N-トリチル化ネアミン9(1当量、0.775ミリモル)を30mLのトルエンに溶解し、続いて430mg(1.5当量)のヨウ化テトラブチルアンモニウム及び0.15mLのp-メトキシベンジルクロリド(PMBCl、1.2当量)を添加した。この溶液に15mLの水酸化ナトリウム(50%m/m NaOH水)を添加し、かくして得られた2つの相を激しく撹拌して、黄色の乳液を得た。0.05mL(0.4当量)のPMBClを2回、24時間後及び72時間後に添加した。4日後に、撹拌を止め、水酸化ナトリウムを除去するために反応媒質をデカントした。有機相を、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を、減圧下での蒸発によって除去した。構造は、水素化ナトリウム及び過剰のヨードメタンとのDMF中での反応によって主要化合物に誘導することによって確認した。保護基は、前以て得られた粗混合物に対するジクロロメタン中でのトリフルオロ酢酸(TFA)及び数滴のアニソールの作用によって除去した。
NMR 1H (MeOD, ppm, 400MHz): 5.68 (s, H-1); 4.10 (m, H-5'); 4.02 (t, J = 9.4Hz, H-4), 3.95 (t, J = 7.6Hz, H-3'); 3.73 (t, J = 9.4Hz, H-6); 3.69-3.29 (m, H-2', H-5, H-3, H-6', H-4', H-6', H-1); 3.66; 3.60; 3.54 (3 s, H-OMe); 2.48 (m, H-2 eq)及び1.87 (m, H-2 ax).
NMR 13C (MeOD, ppm, 100MHz): 164 (CO TFA); 117 (CF3 TFA); 94.40 (C-1'); 84.99 (C-5); 79.50 (C-4'); 77.50 (C-3'); 76.23 (C-4); 73.40 (C-6); 71.51 (C-5'); 60.88; 60.84; 60.43 (3 C-OMe); 52.47 (C-2'); 50.70 (C-1); 49.63 (C-3); 40.30 (C-6')及び29.00 (C-2).
【0131】
2/ネアミンの4',6-ジ-O-[(2-ナフチル)メチレン]誘導体の合成
【0132】
【化23】

【0133】
390mg(1当量、0.28ミリモル)のネアミン-テトラ-N-Tr-3'-O-PMBのDMF(15mL)溶液に、不活性雰囲気中で33mg(3当量、0.83ミリモル)の水素化ナトリウム(60%オイル懸濁物)を添加した。反応容器を、氷浴中で振とう、冷却した。15分後に、152mg(2.5当量、0.69ミリモル)の2-(ブロモメチル)ナフタレンを添加し、浴を0℃で30分間維持し、次いで反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応はTLC(トルエン/酢酸エチル=9/1)で追跡した。反応媒質の溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。かくして得られた粗生成物を、酢酸エチルに溶解し、次いで2回、蒸留水及び飽和NaCl溶液で洗浄した。水相を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。主要生成物を、10mLのジクロロメタン中、0℃で、5mLのTFA及び数滴のアニソールの作用によって直接的に脱保護した。2時間撹拌した後、TFAを、減圧下での蒸発、及びエタノール次いでトルエンとの共蒸発によって除去した。次いで、誘導体を、C18でグラフトされたシリカゲルでのクロマトグラフィー(水100%〜水/メタノール=70/30まで)によって精製して、40mgの半透明ゴム状物を得た。収率: 40%
NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.90-7.50 (m, 14H, H-ナフチル); 6.01 (d, J = 3.6Hz,1H, H-1'); 5.20 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.90 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.27 (dd, J = 8及び12Hz,1H, H:-3'); 4.18 (m, 1H, H-5'); 4.11 (dd, J = 10Hz,1H, H-4); 3.91 (dd, J = 10Hz,1H, H-5); 3.64 (dd, J = 8Hz, 1H, H-6); 3.28-3.46 (m, 5H, H-1, H-3, H-2', H-4', H-6'b); 2.98 (dd, J = 8及び12Hz, 1H, H-6'a); 2.50 (m, 1H, H-2b); 2.08 (m, 1H, H-2a); NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 132.0-135.0 (6C-ナフチル); 129.9-127.3 (14CH-ナフチル); 97.2 (C-1'); 82.0 (C-6); 80.5 (C-4'); 79.5 (C-4); 78.0 (C-5); 76.4 (CH2-ナフチル); 76.1 (CH2-ナフチル); 70.6 (C-3'); 70.3 (C-5'); 55.6 (C-2'); 50.8 (C-1); 50.2 (C-3); 42.1 (C-6'); 30 (C-0); HRMS (ESI+): [M+H:]+ m/z 計算値 603.3183, 実測値 603.3199, [M+Na]+ m/z 計算値 625.3002, 実測値 625.3005, [M+K]+ m/z 計算値 641.2741, 実測値 641.2726.
【0134】
3/パロマミンのテトラ-N-トリチル誘導体の合成
【0135】
【化24】

【0136】
不活性雰囲気の反応容器中で、2.5g(1当量、5.78ミリモル)のパロマミン4HClを100mLの無水DMF及び5mLのトリエチルアミン(水酸化カリウム上に貯蔵した)で懸濁液とした。溶液を1時間撹拌した後に、このパロマミン懸濁液に、前以て無水DMFに溶解した8g(5当量、0.029モル)を滴加した。12時間後に、反応媒質にほぼ10mgの4,4'-N-ジメチルアミノピリジンを添加した。24時間後に、減圧下で溶媒を蒸発させた。得られた残留物を、ジクロロメタンに溶解し、次いで2回、蒸留水及び飽和NaCl溶液で洗浄した。化合物を、トリエチルアミンで処理したシリカゲルでのクロマトグラフィー(シクロヘキサン/AcOEt)によって精製して、白色粉末を得た(3.32g、77%)。
LRMS(MALDI、DHB)m/z=1331[M+K]+、1315[M+Na]+、1293[M+H]+
【0137】
4/パロマミンの3',6-ジ-O-[(2-ナフチル)メチレン]誘導体6aの合成
【0138】
【化25】

【0139】
1g(1当量、0.774ミリモル)のN-テトラトリチル化パロマミンを30mLのトルエンに溶解した。この溶液に、750mg(3当量、2.32ミリモル)の臭化テトラブチルアンモニウム、続いて510mg(3当量、2.32ミリモル)の2-(ブロモメチル)ナフタレンを添加した。この混合物に15mLの50%(m/m)水酸化ナトリウム溶液を添加した。かくして得られた2つの相を連続的に撹拌して、時間と共に黄色になる乳液を得た。24時間後に、反応媒質をデカントして水酸化ナトリウムを除去し、次いで有機相をトルエンで希釈した。これを、2回、蒸留水次いで飽和NaCl水溶液で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させて除去し、褐色の残留物を得た。次いで、必要とされる化合物を、グラジエント溶離(シクロヘキサン/トルエン;トルエン/酢酸エチル)による塩基性アルミナでのクロマトグラフィーによって精製して、黄色粉末を得た(382mg、31.4%)。300mgのN-テトラトリチル化3',6-ジ-O-[(2-ナフチル)メチレン]パロマミンを、10mLのジクロロメタン中、0℃で、5mLのTFA及び数滴のアニソールの作用によって脱保護した。2時間撹拌した後、TFAを、減圧下で蒸発によって、エタノール次いでトルエンとの共蒸留によって除去した。次いで、誘導体を、C18でグラフトされたシリカゲルでのクロマトグラフィー(水100%〜水/メタノール=70/30まで)によって精製して、半透明のゴム状物を得た(62mg、30%)。
NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.85-7.55 (m, 14H, H-ナフチル); 5.65 (d, 1H, H-1'); 5.10 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.95 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.06 (dd, 1H, H-3'); 3.9 (m, 4H, H-4', H-5, H-5', H-6'a); 3.75 (m, 3H, H-4', H-6, H-6'a); 3.55 (m,2H, H-3, H-2'); 3.40 (dd, 1H, H-1); 2.50 (m, 1H, H-2b); 1.85 (m, 1H, H-2a); NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 167.8及び164.4 (CO TFA); 136.3-134.5 (6CH-ナフチル); 130.29-128.0 (14CH-ナフチル); 98.4 (C-1'); 82.0 (C-6); 82.2 (C-4); 81.2 (C-6); 78.1 (C-3'); 76.8 (CH2-ナフチル); 76.7 (CH2-ナフチル); 76.0 (C-5'); 71.43 (C-4'); 61.7 (C-6'); 54.5 (C-2'); 50.4 (C-3, C-1); 29.9 (C-2)
【0140】
5/ネアミンの3',6-ジ-O-[(1-ナフチル)メチレン]誘導体6bの合成
【0141】
【化26】

【0142】
1gのN-テトラトリチル化ネアミン9(1当量、0.775ミリモル)を、30mLのトルエンに溶解し、続いて428mg(1.5当量)のヨウ化テトラブチルアンモニウム及び350μL(3当量)の1-(クロロメチル)ナフタレンを添加した。この溶液に15mLの50%(m/m)水酸化ナトリウムを添加し、かくして得られた2つの相を激しく撹拌して黄色の乳液を得た。反応は、TLC(トルエン/酢酸エチル;9/1)で追跡した。175μLの1-(クロロメチル)ナフタレン(1.5当量)を3回、12、24及び48時間後に添加した。7日後に、撹拌を止め、水酸化ナトリウムを除去するために反応媒質をデカントした。有機相を、トルエンで希釈し、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。次いで、必要とされる化合物を、グラジエント溶離(シクロヘキサン/トルエン;トルエン/酢酸エチル)によるアルミナでのクロマトグラフィーによって精製して、黄色粉末を得た(500mg、41%)。300mgの単離化合物を、10mLのジクロロメタン中、0℃で、5mLのTFA及び数滴のアニソールの作用によって脱保護した。2時間撹拌した後、TFAを、減圧下での蒸発、及びエタノール次いでトルエンとの共蒸発によって除去した。次いで、必要とされる誘導体を、C6H5でグラフトされたシリカゲルでのクロマトグラフィー(水100%〜水/メタノール=70/30まで)によって精製して、半透明のゴム状物を得た(115mg、60.5%)。LRMS(MALDI、DHB)m/z=641[M+K]+、629[M+Na]+、604[M+H]+
【0143】
6/ネアミンのテトラ-N-トリチル化6-O-[(2-ナフチル)メチレン]誘導体の合成
【0144】
【化27】

【0145】
2gのN-テトラトリチル化ネアミン9(1当量、1.55ミリモル)を60mLのトルエンに溶解し、続いて486mg(1.5当量)の水和されたフッ化テトラブチルアンモニウム及び411mg(1.2当量)の2-(ブロモメチル)ナフタレンを添加した。この溶液に、30mLの50%(m/m)水酸化ナトリウムを添加し、かくして得られた2つの相を激しく撹拌して、黄色の乳液を得た。12時間反応した後、反応媒質をデカントし、水酸化ナトリウムを除去し、次いで、有機相をトルエンで希釈した。これを、2回、蒸留水次いで飽和NaCl水溶液で洗浄した。次いで、有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下で蒸発させた後、必要とされる化合物を、グラジエント溶離(シクロヘキサン/トルエン;トルエン/酢酸エチル)によるアルミナでのクロマトグラフィーによって精製して、黄色粉末を得た(450mg、18.5%)。LRMS(MALDI、DHB)m/z=1454[M+Na]+、1430[M+H]+、1211[M-Tr+Na]+、1187[M-Tr+H]+
【0146】
7/ネアミンのテトラ-N-トリチル6-O-PMB誘導体の合成
【0147】
【化28】

【0148】
1gのN-トリチル化ネアミン9(1当量、0.775ミリモル)を、30mLのトルエンに溶解し、続いて243mg(1当量)フッ化テトラブチルアンモニウム及び0.31μL(2.5当量)のPMBClを添加した。この溶液に15mLの50%(m/m)水酸化ナトリウムを添加し、かくして得られた2つの相を激しく撹拌して黄色の乳液を得た。2時間後に、撹拌を止め、水酸化ナトリウムを除去するために反応媒質をデカントした。有機相を、酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。構造は、DMF中での水素化ナトリウム(油中60%)及び過剰のヨードメタンとの反応によって主要化合物に誘導することによって確認した。脱保護は、ジクロロメタン中での、前以て蒸発させて得られた残留物に対するTFA及び数滴のアニソールの作用によって実施した。
NMR 1H (MeOD, ppm, 100MHz): 5.68 (s, H-1); 4.10 (m, H-5'); 4.02 (t, J = 9.4Hz, H-4); 3.95 (t, J = 7.6Hz, H-3') ; 3.73 (t, J = 9.4Hz, H-6); 3.69-3.29 (多量, H-2', 5, 3, 6', 4', 6', 1); 3.66; 3.60; 3.54 (3 s, H-OMe); 2.48 (m, H-2 eq)及び1.87 (m, H-2 ax).
NMR 13C (MeOD, ppm, 100MHz): 164 (CO TFA); 117 (CF3 TFA); 94.40 (C-1'); 84.99 (C-5); 79.50 (C-4'); 77.50 (C-3'); 76.23 (C-4); 73.40 (C-6); 71.51 (C-5'); 60.88; 60.84; 60.43 (3 C-OMe); 52.47 (C-2'); 50.70 (C-1); 49.63 (C-3); 40.30 (C-6')及び29.00 (C-2).
【0149】
8/ネアミンの3',4',5-トリ-O-[(2-ナフチル)メチレン]誘導体の合成
【0150】
【化29】

【0151】
600mg(1当量、0.43ミリモル)のテトラ-N-トリチル化6'-O-PMBネアミンの無水DMF(15mL)溶液に、不活性雰囲気中で172mg(10当量、4.3ミリモル)の水素化ナトリウム(60%オイル懸濁物)を添加した。反応容器を、氷浴中で振とう、冷却した。15分後に、569mg(6当量、2.58ミリモル)の2-(ブロモメチル)ナフタレン(前以て5mLの無水DMFに溶解された)を滴加し、浴を0℃で30分間維持し、次いで反応混合物を室温で48時間撹拌した。反応はTLC(100%トルエン)で追跡した。溶媒を減圧下で蒸発させて除去した。残留物を、トルエンに溶解し、次いで2回、蒸留水及び飽和NaCl水溶液で洗浄した。水相を、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、次いで減圧下で濃縮した。次いで、必要とされる化合物を、グラジエント(シクロヘキサン100%〜シクロヘキサン/トルエン 40/60まで)による塩基性アルミナでのクロマトグラフィーによって精製して、黄色粉末を得た(300mg、38%)。単離された化合物300mgを、10mLのジクロロメタン中、0℃で、5mLのTFA及び数滴のアニソールの作用によって脱保護した。2時間撹拌した後、TFAを、減圧下での蒸発によって、及びエタノール次いでトルエンとの共沸を起こさせることによって除去した。次いで、必要とされる誘導体を、C18でグラフトされたシリカゲルでのクロマトグラフィー(水100%〜水/メタノール 70/30まで)によって精製して、半透明ゴム状物を得た(120mg、64.5%)。
NMR 1H (400MHz, D2O) δ ppm = 7.9-7.3 (m, 21H, H-ナフチル); 5.60 (d, 1H, H:-1'); 5.30 (m, 2H, CH2-ナフチル); 5.0 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.7 (m, 2H, CH2-ナフチル); 4.55 (dd, 1H, H-3'); 4.25 (m, 1H, H-3'); 4.10 (m, 1H, H-4) ; 3.65 (m, 2H, H-5, H-6); 3.5 (m, 4H, H-2', H-4', H-3, H-6'b); 3.30 (dd, 1H, H-1); 3.00 (m, 1H, H-6'a); 2.50 (m, 1H, H-2b); 2.25 (m, 1H, H-2a); NMR 13C (100MHz, D2O) δ ppm = 163.6及び164.4 (CO TFA); 137.1-134.6 (9CH-ナフチル); 129.6-126.6 (21CH-ナフチル); 93.5 (C-1'); 85.0 (C-5'); 79.8 (C-4); 77.1 (CH2-ナフチル); 75.9 (C-3'); 74.8 (C-6); 74.5 (C-5); 74.2 (CH2-ナフチル); 73.9 (C-4'); 73.7 (CH2-ナフチル); 51.6-50.33 (C-3, C-1, C-2'); 39.7 (C-6'); 29.2 (C-2). LRMS (MALDI, DHB) m/z =782 [M + K]+, 766 [M+Na]+, 744 [M+H]+.
【0152】
II.抗菌活性
1/被験分子
分子を、水またはDMSOに5または10mg/mLの濃度で溶解し、次いで必要なら、その溶液を希釈した。それらのそれぞれ200μLの容量を96ウェルプレート上に載せた。
【0153】
2/被験菌株
抗菌活性試験では、次の菌株を使用した:
(1)大腸菌(Escherichia coli)ATCC25922=グラム陰性菌株、感受性。
(2)黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC25923=グラム陽性、感受性臨床菌株。
(3)黄色ブドウ球菌1199B=グラム陽性、シプロフロキサシンを含むフルオロキノロン系に対して耐性をもつ、MFSファミリーのNorA排出ポンプを過剰発現する突然変異臨床菌株。
(4)黄色ブドウ球菌RN4220/pUL5054=msr(A)遺伝子を所持するマルチコピープラスミドpUL5054を含む、MrsA ABCトランスポーターを過剰発現するグラム陽性菌株:EryR
(5)黄色ブドウ球菌APH2''-AAC6'=アミノグリコシドを酵素的に修飾する能力を有するMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)型のグラム陽性耐性菌株:酵素による耐性は、アミノグリコシド-6'-N-アセチルトランスフェラーゼ/2''-O-ホスホリルトランスフェラーゼの作用による。
(6)黄色ブドウ球菌APH3'=アミノグリコシドを酵素的に修飾する能力を有するMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)型のグラム陽性耐性菌株:酵素による耐性は、アミノグリコシド3'-O-ホスホリルトランスフェラーゼの作用による。
(7)黄色ブドウ球菌ANT4'=アミノグリコシドを酵素的に修飾する能力を有するMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)型のグラム陽性耐性菌株:酵素による耐性は、アミノグリコシド4'-O-ホスホリルトランスフェラーゼの作用による。
【0154】
3.微生物試験
A-菌株の検証
使用する前に、各菌株を、その抗生物質耐性について個々に試験した。これは、各菌株について、1種または複数の参照抗生物質のMIC(最小阻止濃度)を試験して、該細菌の表現型の安定性を確かめることを意味する。
【0155】
次の抗生物質を試験した:
・大腸菌ATCC25922(菌株(1)):アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン。
・黄色ブドウ球菌ATCC25923(菌株(2)):アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、シプロフロキサシン。
・黄色ブドウ球菌1199B(菌株(3)):シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ペフロキサシン。
・黄色ブドウ球菌RN4220/pUL5054(菌株(4)):エリスロマイシン。
・黄色ブドウ球菌APH2''-AAC6'、APH3'及びANT4' (菌株(5)、(6)及び(7)):カナマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン。
【0156】
最初の例では、菌株を、-80℃で保たれた在庫品から取り出し、MH寒天培地を含むペトリ皿上に移した。これらの皿を、37℃で一夜インキュベートし、次いで、翌日に使用するか、あるいは4℃に保った。この方法で、皿を2〜3週間にわたって使用することができた。
【0157】
試験の前日に、寒天皿から1mLのMH培地の前培養物を、植え継ぎ、37℃で一夜インキュベートした。
【0158】
翌日、Biomek2000ロボット(Beckman)を使用して、96ウェルプレート中で試験を実施した。予想値が見出されるはずである広範な範囲の濃度を包含させるために、そこで、抗生物質の溶液を1/2に2回希釈してウェルに載せた。次いで、1/100の濃度に希釈された以前の日の前培養物から調製されたある容量の接種物を、各ウェルに添加した。各ウェルを重複させた。培養培地のみから構成される非汚染対照(ブランク)、及び接種物及び抗生物質不含培養培地から構成される増殖対照も含めた。
【0159】
プレートを37℃でインキュベートした。細菌の増殖は、インキュベーションの17〜18時間後に、620nmでの光学密度(OD620nm)を読み取ることによって測定し、得られた値を文献中に見出されるものと比較した。その値が(最近接希釈に)相当するなら、菌株は「検証された」ことにした。
【0160】
B-スクリーニング
これらの試験も、96ウェルプレート及びBiomek2000ロボット(Beckman)を使用して実施した。各試験を2回実施した。試験は、試験すべき分子を細菌株と一緒にすることからなる。それゆえ、前日の細菌前培養物を1/100濃度に希釈し、接種菌液に、分子を100μg/mLの最終濃度(自由裁量で選択される値)で添加した。プレートを37℃でインキュベートし、0、1、4、7及び24時間の時点でOD620nnmを測定することによって、細菌増殖の速度を24時間にわたって監視した。各プレートには、増殖、非汚染、及び参照抗生物質に対して耐性/感受性の対照も含めた。
【0161】
各ウェルに評点をつけた:
評点1000=その分子は、増殖対照と比較して、細菌増殖に対して効果を有さない。
評点100=24時間のインキュベーション後に、細菌増殖は、増殖対照と比較して少なく、対照値の約10%のみであった。
評点10=24時間のインキュベーション後に、増殖対照と比較して、細菌の増殖はほとんどなく、対照値の10%未満であった。
【0162】
C-MICの決定
10または100のスクリーニング評点を持つ分子を選択し、被試験菌株に関してそれらのMICを決定した。
【0163】
菌株の検証については、広範な範囲の濃度を包含するために、選択した分子の溶液を、Biomek2000ロボットを使用して、96ウェルプレート中で1/2に2回希釈した。これらのウェルのそれぞれに、前日の前培養物から調製され、1/100の濃度に希釈されたある量の接種菌液を添加した。各ウェルを重複させた。実験には、やはり、非汚染、増殖、及び参照抗生物質に対して耐性/感受性の対照を含めた。プレートを37℃でインキュベートし、細菌増殖の速度を、0、1、4、7及び24時間の時点でOD620nmを測定することによって、24時間にわたって監視した。
【0164】
MICは、24時間のインキュベーション後に、細菌の増殖を阻止する能力のあることが見出された最低濃度とした。この値を前以て認識しなければ、値が、選択された希釈範囲に入ることができない可能性があった。その場合、この範囲を調整して操作を繰り返さなければならなかった。
【0165】
(結果)
したがって、抗生物質効果は、耐性のあるまたはそうではない各種のグラム陰性及びグラム陽性細菌に関して、細菌の増殖を阻止する最小濃度(MIC)によって測定された。
【0166】
1/グラム陽性細菌について:
種々の菌株に対してμg/mLで表現したMICの結果を、いくつかの分子について以下の表1に示し、ネアミン及びネオマイシンのそれと比較する。
【0167】
【表1】

【0168】
二官能化及び三官能化誘導体は、特に通常のアミノグリコシドに対して耐性のある細菌に対してかなり興味のある抗生物質効果を示すことが分かる。
【0169】
2/グラム陰性細菌について:
同様の測定を種々のグラム陰性細菌について実施した。対応する結果を以下の表2及び表3に示す。被験菌株は、R.Vanhoof(大腸菌PAZ505H8101及びL58058、緑膿菌ATCC27853、Psa.F03、アシネトバクター・ルウォフィーA1.88-483)から、Y.Glupczynski(シトロバクター・アマロナチカスCa06AB0010)から、J.C.Pechere(黄色ブドウ球菌PA02、PA03)から、P.Plesiat(黄色ブドウ球菌PA01、PA21、PA22)から、H.Schweizer(黄色ブドウ球菌PA405、PA406)から提供された。
【0170】
【表2】

【0171】
【表3】

【0172】
3',6-ジ1NM及び3',4',6-トリ2NM(7)誘導体は、RNAメチル化酵素(r-メチラーゼ)を発現する耐性細菌:シトロバクター・アマロナチカス06AB0010アーム、大腸菌06AB003アーム、エンテロバクター・エロゲネス06AB008アームに対しても活性であることが分かる(MIC=4〜16μg/mL)。一方、これらの細菌は、全体的に、ゲンタマイシン、アミカシン及びトブラマイシンに対して耐性である(MIC>128μg/ml)。
【0173】
(参考文献)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、
・R1=OHまたはNH2であり
・OR2、OR3、OR4及びOR5は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート基であり、かつ
・R5=Hの場合
R2=R3=R4なら、R2、R3及びR4≠Hであり、
R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり、
R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり、
R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hであり、
・R5≠Hの場合
R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり
R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり、
R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hである]
を有する化合物。
【請求項2】
式:
【化2】

[式中、
・R1=OHまたはNH2であり
・OR2、OR3及びOR4は、アルコール、エーテル、エステル、カルボネート、カルバメート、スルホネートまたはスルファメート基であり、かつ
・R2=R3=R4なら、R2、R3及びR4≠Hであり、
・R2=Hなら、R3≠HかつR4≠Hであり、
・R3=Hなら、R2≠HかつR4≠Hであり、
・R4=Hなら、R2≠HかつR3≠Hである]
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2、R3、R4及びR5が、同一または異なって、
・H;
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含むアルキル、ハロアルキルまたはヘテロアルキル基;
・直鎖または分枝鎖中に2〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルケニルまたはアルキニル基;
・直鎖または分枝鎖中に3〜30個の炭素原子を含み、置換された(例えば、ストレプタミンまたは2-デオキシストレプタミン核などによって)または置換されていない1種または複数のシクロアルキル、シクロアルケニルまたはシクロアルキニル基;
・環当たり3〜10個の炭素原子を含む1種または複数のアリールまたはヘテロアリール基;
・1〜30個の炭素原子を含むアルカリールまたはアラルキル基(用語アリール及びアルキルは、前記の定義を有する);
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルコキシ、チオアルキル、スルホニルアルキルまたはアミノアルキル基;
・直鎖または分枝鎖中に1〜30個の炭素原子を含む1種または複数のアルコキシアルキル、アルキルチオアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アルキルアミノアルキル、アルキルケトアルキル、アリール、またはアルキルアルキルエステル基;
・環当たり5〜10個の炭素原子を含む1種または複数の複素環基;
・ネアミンまたはその誘導体の1種などの糖、オリゴ糖または偽オリゴ糖;
・アルキルカルボニルまたはアリールカルボニル(-C(O)R)基(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アルキルオキシカルボニルまたはアリールオキシカルボニル(-C(O)OR)基(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アルキルカルバモイルまたはアリールカルバモイル基(-C(O)NHRまたは-C(O)NRR')(R及びR'は、同一または異なって、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・スルホニル基(-SO2R)(Rは、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);
・アミノスルホニル基(-SO2NHRまたは-SO2NHRR')(R及びR'は、同一または異なって、R2、R3、R4及びR5と同様に定義される);であり、
すべての前記基が、1つまたは複数のニトロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、カルボニルまたはアミノ基によって、1つまたは複数のハロゲンによって、あるいは1つまたは複数のニトリル、シアンヒドリンまたはアルデヒド官能基によって置換されていてもよいことを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2及びR3、場合によってR4、及び場合によってR5が同一であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
R2及び/またはR3及び/またはR4及び/またはR5が、次の群:ナフチル-2-メチレン、ナフチル-1-メチレン及びヘキシルから選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
化合物の式が、次の群:3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-メチレン)ネアミン、3',4',6-O,O',O'''-トリ(ナフチル-2-メチレン)ネアミン、3',6-O,O'-ジ(ナフチル-1-メチレン)ネアミン、3',4',6-O,O',O''-トリ-n-ヘキシルネアミン、3',4'-O,O'-ジ(ナフチル-2-メチレン)ネアミン、3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-プロピル)ネアミン、3',4',6-O,O',O''-トリ(ナフチル-2-プロピル)ネアミン、3',6-O,O'-ジ(ナフチル-2-ブチル)ネアミン、及び3',4',6-O,O',O''-トリ(ナフチル-2-ブチル)ネアミンから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
医薬品として使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、及び場合によってβ-ラクタムまたはフルオロキノロンなどの少なくとも1種の他の抗生物質を含有する医薬組成物。
【請求項9】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などのグラム陽性細菌または大腸菌(Escherichia coli)などのグラム陰性細菌に、特にアミノグリコシド耐性菌株に作用する医薬品を調製するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項10】
次の段階:すなわち
・有利にはトリチル化によって、パロマミンまたはネアミン分子上の1、3、2'及び6'-位のアルコール及び/またはアミン官能基を保護する段階;
・6及び/または3'-位のヒドロキシル官能基を修飾する段階;
・有利には脱トリチル化によって、1、3、2'及び6'-位の官能基を脱保護する段階;
を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物の調製方法。
【請求項11】
前記方法が、相関移動触媒の存在下で行われる二相法であることを特徴とする、請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
6-位のヒドロキシル官能基の修飾が、化合物RXを用いるアルキル化反応であり、RがR2、R3及びR4と同様に定義され、かつXが、ハロゲン、有利にはCl、BrまたはI、あるいはスルホニル基、有利にはメシルまたはトシルであることを特徴とする、請求項10に記載の調製方法。
【請求項13】
化合物RXを用いるアルキル化反応が、3'-位、及び場合によって4'-位のヒドロキシル官能基にも起こることを特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
6-位での化合物RXを用いるアルキル化反応に、3'-位のヒドロキシル官能基への化合物R'Xを用いるアルキル化反応、かつ、場合によって4'-位のヒドロキシル官能基への化合物R''Xを用いるアルキル化反応が続き、R''及びR'は、同一または異なって、Rと同一であるか、あるいは異なり、R2、R3及びR4と同様に定義されることを特徴とする、請求項12に記載の調製方法。
【請求項15】
6-位での化合物RXを用いるアルキル化反応に、有利には基Zを使用する3'-位のヒドロキシルの保護、次いで、4'-位のヒドロキシル官能基への化合物R'Xを用いるアルキル化反応が続き、R'が、Rと同一であるか、あるいは異なり、R2、R3及びR4と同様に定義され、基Zが、酸に不安定であり、例えばアリールメチレンのハロゲン化誘導体、有利にはCl、BrまたはI、あるいはスルホニル化誘導体、有利にはメシルまたはトシル(Z=ArCH2X、Ar=2-ナフチル、1-ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニルなど)、またはシリル化型(Z=tert-ブチルジメチルシリル、トリエチルシリルなど)との反応によって導入されることを特徴とする、請求項12に記載の調製方法。
【請求項16】
6-位のヒドロキシル官能基の修飾が、有利には基Zを使用する保護と、それに続く3'及び4'-位のヒドロキシル官能基の化合物RXを用いるアルキル化反応、あるいは3'-位のヒドロキシル官能基の化合物RXを用いるアルキル化反応と、それに続く4'-位のヒドロキシル官能基のR'Xを用いる第2のアルキル化ステップに相当し、R及びR'が、R2、R3及びR4と同様に定義され、Xが、ハロゲン、有利にはCl、BrまたはIであるか、あるいはスルホニル基、有利にはメシルまたはトシルであり、基Zが、酸に不安定であり、例えばアリールメチレンのハロゲン化誘導体、有利にはCl、BrまたはI、あるいはスルホニル化誘導体、有利にはメシルまたはトシル(Z=ArCH2X、Ar=2-ナフチル、1-ナフチル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニルなど)、またはシリル化型(Z=tert-ブチルジメチルシリル、トリエチルシリルなど)との反応によって導入されることを特徴とする、請求項11に記載の調製方法。
【請求項17】
脱保護段階、特に酸媒質中での脱トリチル化が、6-位のR基を除去するような方法で、数時間、有利には24時間にわたって行われることを特徴とする、請求項13に記載の調製方法。
【請求項18】
1つまたは複数のアルキル化反応が、アリール化、アシル化、カルボネート化、カルバモイル化、スルホニル化、またはアミノスルホニル化反応によって代替されることを特徴とする、請求項12〜17のいずれか一項に記載の調製方法。

【公表番号】特表2011−509983(P2011−509983A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542671(P2010−542671)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050088
【国際公開番号】WO2009/095588
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(502298435)ユニヴェルシテ・ジョセフ・フーリエ (9)
【Fターム(参考)】