説明

新規ヒアルロン酸誘導体、その製造方法及びその使用

本発明は、式(I):
(式中、nは、720〜6200の範囲の整数を表し、iは、1〜nの範囲であり、Rは特にOH、又は式(III):
(式中、kは、1〜17の範囲の整数を表し、R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であるが、但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基を表し、且つ式中少なくとも1個のR基は式(III)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、新規ヒアルロン酸誘導体、及びその製造方法に関する。本発明はまた、前記新規誘導体の使用、特に医薬分野での使用にも関する。
【0002】
溶液中で物理的相互作用により会合する疎水的に修飾した水溶性高分子は、しばしば効果的なレオロジー調節剤である(Polymers in Aqueous Media:Performance through Association;Glass,J.E.,Ed.;Advances in Chemistry Series 223;American Chemical Society:Washington,DC,1989;Polymers as Rheology Modifiers;Schulz,D.N.,Glass,J.E.,Eds.;ACS Symposium Series 462;American Chemical Society:Washington,DC,1991;Winnik,M.A.;Yekta,A.Curr.Opin.Colloid Interface Sci.1997,2,424)。これらの高分子は、塗料、化粧品、食品、油回収などの多くの応用分野において増粘剤として使用される。このような高分子の主要な微細構造的特徴は、水溶液において弱い分子内及び分子間疎水性相互作用を生じるその能力である。準希薄領域(semi-dilute regime)においては、これらの分子間会合が優勢である。従って、シアシニング(shear thinning)挙動を示す高粘性溶液又は物理ゲルを得ることができる。疎水的に修飾した高分子電解質では、粘度低下が通常観察される非会合性高分子電解質とは異なり、塩の添加時に溶液粘度を数桁増大させることも可能である。多数の研究が、合成の会合性高分子電解質に捧げられてきた。しかしながら、食品産業、製薬学、化粧品学、及び医薬の分野において、会合性の基を有する天然に存在する高分子電解質により提供され得る多数の応用にもかかわらず、このような高分子の型はほとんど提案されたことがなかった(Sinquin,A.;Hubert,P.;Marchal,P.;Choplin,L.;Dellacherie,E.Colloid Surf A 1996,112,193;Fischer,A.;Houzelle,M.C.;Hubert,P.;Axelos,M.A.V.;Geoffroy−Chapotot,C.;Carre,M.C.;Viriot,M.L.;Dellacherie,E.Langmuir 1998,14,4482;Pelletier,S.;Hubert,P.;Payan,E.;Marchal,P.;Choplin,L.;Dellacherie,E.J.Biomed.Mat.Res.2001,54,102;Desbrieres,J.;Martinez,C.;Rinaudo,M.Int.J.Biol.Macromol.1996,19,21;Desbrieres,J.;Rinaudo,M.;Babak,V.;Vikhoreva,G.Polym.Bull.1997,39,209;Auzely,R.;Rinaudo,M.Macromol.Biosci.2003,3,562)。
【0003】
ヒアルロン酸(HA)は、グリコサミノグリカン群に属する、N−アセチル−D−グルコサミンとD−グルクロン酸との二糖繰り返し単位からなる直鎖状多糖であり、前記繰り返し単位は、下記式:
【化1】

を有する。
【0004】
ヒアルロン酸は、滑液、軟骨、硝子体液及び細胞外マトリックスの成分であり、そこで重要な構造的及び生物学的役割を演ずる。ヒアルロン酸の製造は、伝統的に、ヒト又は動物の組織からの抽出プロセスに基づいていた。臍帯、オンドリの鶏冠又はウシの硝子体液は、医薬産業及び化粧品産業において、様々な応用のための高分子量ヒアルロン酸を提供する原材料として広く使用された。しかしながら、ヒト又は動物の供給原料からの抽出プロセスでは、ウイルス感染の危険性があり、安全なHAの製造が可能ではない。更に、動物組織からのプロテオグリカンとの複合体形成のため、経済的に実行可能な方法で純粋なHAを得ることは困難である(O’Regan,M.,Martini,I.,Crescenzi,F.,DeLuca,C.,andLansing,M.(1994).Molecular mechanisms and genetics of hyaluronan biosynthesis.International Journal of Biological Macromolecules 16,283−286.)。
【0005】
現今では、製造プロセスは、ヒト又は動物の原材料からの抽出プロセスに基づいているだけでなく、HAプロデューサーとしての微生物を用いるバイオテクノロジープロセスにも基づいている。C群ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、又はパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)などのいくつかの株は、様々な炭水化物からHAを産生する能力を有する。様々な発酵プロセスが、文献に記載され、又は特許化(KR8701815、DE10019868、JP2000189186)されているが、そのプロセスは、すべて以下の同じ経路に基づいている:
・細菌又は酵母菌のGMO(遺伝子組み換え生物(genetically modified organism))株又は非−GMO株の使用、
・菌株増殖及びHA産生のための炭水化物(例えば、グルコース、フルクトース...)に由来する炭素源、
・菌株増殖及びHA産生のための窒素源(動物又は植物)、
・制御された条件での反応装置(発酵装置)の使用、
・発酵ブロスから細胞を除去する精製プロセス、
・発酵ブロスからHAを回収する精製プロセス。
【0006】
粘性補給(viscosupplementation)は、HAの最も広く知られた使用である。それは病的滑液を置き換えて、内因性ヒアルロン酸の弾性及び粘性を補給するために使用される。(Balazs EA.The physical properties of synovial fluid and the special role of hyaluronic acid.In helfet AJ(ed)Disorders of the knee 2edn.Philadelphia:JB Lippincott,1982;61−74).
【0007】
変形性関節症において膝の痛みの治療成功の鍵となる点は、くり返しの注入を回避するために、及び化学修飾したHAの非生物分解性残渣の生体内蓄積の危険性を回避するために、できるだけ長くHAのレオロジー特性を維持することである。
【0008】
関節炎にかかった関節の滑液の粘性補給に使用される様々なヒアルロン酸としては、Synvisc(商標)(Genzyme)、Orthovisc(商標)(Anika Therapeutics)、Arthrum(商標)(LCA,France)、Hyalgan(商標)(Sanofi Aventis)、Supartz(商標)(Smith&Nephew)及びAdant(商標)(Tedec Meiji Farma SA,Espagne)を挙げることができる。
【0009】
Synvisc(商標)G−F20は、化学的に架橋したヒアルロン酸(オンドリの鶏冠由来)を経て製造されるHylan A流体80%及びHylan Bゲル20%からなる。Synvisc(商標)は、生理的運動の全周波数範囲にわたり高い弾性パーセンテージを有するように、特に設計されている。従って、このHA製剤は、膝の変形性関節症による症状がある患者への関節内注射剤として承認されている(米国特許第5,099,013号及び第4,713,448号明細書)。
【0010】
Orthovisc(商標)は、オンドリの鶏冠からの高純度ヒアルロナンから作られた、高分子量(1.0〜2.9百万ダルトン)からなる、生理食塩水に溶解された、粘性滅菌溶液である。これはまた、膝の変形性関節症において痛みの治療にも必要とされている。
【0011】
Arthrum(商標)は、分子量2.4百万ダルトンの細菌性ヒアルロン酸の滅菌溶液である。
【0012】
Hyalgan(商標)は、オンドリの鶏冠からの超高純度高分子量ヒアルロナンであり、平均して分子量0.5百万ダルトンを有し、このHA製剤は、膝の変形性関節症による症状がある患者への関節内注射剤として承認されている。
【0013】
天然のHAは直鎖状であり、比較的低い粘性を有するのに対して、Synvisc(商標)は、ゲル画分を含有する。Synvisc(商標)は、加水分解剤に対してはより安定になるが、しかし非生物分解性の化学的接合部を含む。
【0014】
本発明の目的は、粘性補給、特に関節炎にかかった関節の滑液の粘性補給に使用できるであろう新規ヒアルロン酸誘導体を提供することである。
【0015】
本発明の目的は、アルキル基を有する新規ヒアルロン酸誘導体を提供することである。
【0016】
本発明の目的はまた、前記ヒアルロン酸誘導体の新規な製造方法をも提供することであり、前記方法は好収率を有する。
【0017】
本発明は、下記式(I):
【化2】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数、特に1400〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化3】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は下記式(III’):
【化4】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖、又はアダマンタンなどのp個の炭素原子を含む環基を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であり、
R”は、H又はp’個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖を表し、ここでp’は、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+p+p’は28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III’)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用に関する。
【0018】
本発明は、下記式(I):
【化5】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化6】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化7】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は式(III)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用に関する。
【0019】
前記のZが二価対イオンを表すとき、Zは、鎖間架橋結合を引き起こして、溶解度を低下させることができる。
【0020】
前記の式(I)で表される諸化合物は、約300000〜2.5×10g・mol−1の範囲の分子量を有し、好ましくは800000〜1.5×10g・mol−1の範囲の分子量を有する。
【0021】
前記の式(I)によれば、式(I)で表される諸化合物は、n個のモチーフの繰り返しを含有する諸化合物であり、そこでは、1個のモチーフは下記式:
【化8】

を有する。
【0022】
従って、式(I)においては、各モチーフ「i」がR基を含有する。各モチーフは、前記のように各モチーフについて異なるR基を含有することができ、従ってR基は、第1のモチーフについてはRに相当し、第2のモチーフについてはRに相当し、第3のモチーフについてはRに相当し、そして(nと番号付けされた)最後のモチーフについてはRに相当する。
【0023】
有利な実施態様によれば、本発明は、nが720〜6250の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0024】
より有利な実施態様によれば、本発明は、nが1900〜3700の範囲の整数、好ましくは2000〜3800の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0025】
有利な実施態様によれば、前記の式(II)及び式(III)においては、kは、2〜12の範囲の整数を表す。
【0026】
前記定義の式(I)で表される諸化合物は、kが17を超える場合、又はpが17を超えるか、又はk+pが28を超える場合は、水溶液に非可溶の諸化合物である。
【0027】
有利な実施態様によれば、前記の式(III)においては、R’は、3〜16個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表す。
【0028】
本発明は、前記の式(I)で少なくとも1個のR基が式(III)で表される基である、前記の式(I)で表される諸化合物の使用に関する。従って、本発明は、「i」と番号付けされた少なくとも1個のモチーフが式(III)で表される基を含有する、前記の諸化合物の使用に関する。
【0029】
k+pの値は、所与のR基に対して(又は所与のR’基に対して)定義される。
【0030】
有利な実施態様によれば、本発明は、k+pが11〜28の範囲にあり、好ましくは11〜20の範囲にある、前記の式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0031】
本発明の修飾したHA(式(I)で表される諸化合物)は、系の弾性を増し自己修復的性格を与える可動接合部を含有する。
【0032】
粘弾性は、動的レオロジーによって与えられる高分子溶液の特性である;この特性は、付与応力に対する材料の応答における弾性成分(G’)と粘性成分(G”)の存在に関係する。
【0033】
ゲルは3D網目構造である;それは化学反応又は物理的相互作用により架橋され得る。化学ゲルは、共有結合により安定化され(任意の周波数に対してG’>G”)、一方物理ゲルは、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水結合などのような可逆的二次結合により安定化される。これらの条件においては、所与の実験条件においてそれぞれの系に特徴的なω(臨界周波数)よりも大きな所与の周波数領域においては、G’は、G”よりも大きい。
【0034】
本発明は、下記式(I):
【化9】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化10】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III’):
【化11】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖、又はアダマンタンなどのp個の炭素原子を含む環基を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であり、
R”は、H又はp’個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖を表し、ここでp’は、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+p+p’は28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III’)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加(tissue augmentation)、眼科手術などのビスコサージェリー(viscosurgery)、ビスコプロテクション(viscoprotection)、手術後適用のビスコセパレーション(viscoseparation)、受動的薬物送達(passive drug delivery)、及び粘性補給用の、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用に関する。
【0035】
本物質の粘弾性特性は、外科手術を容易にするために(ビスコサージェリー)、傷つきやすい組織表面を保護するために(ビスコプロテクション)、癒着形成を少なくするために(手術後適用のビスコセパレーション)、及び関節炎にかかった関節の痛みを減らし機能を回復させるために(粘性補給)使用することができる。
【0036】
粘性補給用流体の性能は、レオロジーにより特徴付けられる。粘弾性流体のレオロジープロファイル(G’:貯蔵弾性率及びG”:損失弾性率(応力付与周波数の関数として))は、例えば低周波数ではG”>G’であり、臨界周波数(ω(Hz))を超えると、G’は、G”よりも大きくなる。
【0037】
低周波数では、健康な関節の滑液は、大部分は粘性流体として振舞う;生理的運動において、及び遅い歩行(ω=0.5Hz)で起こる応力よりもいくらか小さい応力を受けたとき、本物質は、(クロスオーバーポイントでは)大部分弾性固体として働きはじめる(G’>G”)。
【0038】
病的状態の滑液(例えば、関節炎にかかった関節)においては、生理的変形の力を受けたとき、その流体は大部分粘性流体として振舞い、組織に弾性固体の保護を与えない。
【0039】
本発明は、下記式(I):
【化12】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化13】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化14】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加、眼科手術などのビスコサージェリー、ビスコプロテクション、手術後適用のビスコセパレーション、受動的薬物送達、及び粘性補給用の、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用に関する。
【0040】
本発明はまた、下記式(I):
【化15】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化16】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表す)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化17】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜6の範囲の整数であるが、
但し、k+pは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用にも関する。
【0041】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表す、式(I)で表される化合物の前記の使用に関する。
【0042】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表し、且つpが1〜6の範囲の整数である、式(I)で表される化合物の前記の使用に関する。
【0043】
本発明はまた、下記式(I):
【化18】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化19】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表す)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化20】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜6の範囲の整数であるが、
但し、k+pは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加、眼科手術などのビスコサージェリー、ビスコプロテクション、手術後適用のビスコセパレーション、受動的薬物送達、及び粘性補給用の、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用にも関する。
【0044】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表す、式(I)を有する化合物の前記の使用に関する。
【0045】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表し、且つpが1〜6の範囲の整数である、式(I)で表される化合物の前記の使用に関する。
【0046】
本発明は、全R基のうちの2〜30%が、式(II)又は(III)で表される基であるが、但し、少なくとも1個の前記R基が式(III)で表される基であるものとする、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0047】
本発明は、全R基のうちの8%が式(II)又は(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0048】
基が式(II)又は(III)で表される基に相当するとき、語法の簡略化のために、以下「修飾したR基」と表す。
【0049】
本発明は、修飾したR基のうちの5〜100%、好ましくは25〜100%、最も好ましくは50%が式(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0050】
本発明は、修飾したR基のうちの0〜95%が式(II)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記定義の使用に関する。
【0051】
本発明は、全R基のうちの0〜28.5%が式(II)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0052】
本発明は、全R基のうちの0.1〜30%が式(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記定義の使用に関する。
【0053】
有利な実施態様によれば、本発明は、全R基のうちの0〜7.6%が式(II)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0054】
本発明は、全R基のうちの0.4〜8%が式(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記定義の使用に関する。
【0055】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表し、且つpが7〜17の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0056】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが13〜17の範囲の整数を表し、且つpが1〜6の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0057】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが13〜17の範囲の整数を表し、且つpが7〜17の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0058】
本発明はまた、下記式(I):
【化21】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化22】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化23】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用にも関する。
【0059】
有利な実施態様によれば、本発明は、nが720〜6250の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0060】
有利な実施態様によれば、本発明は、nが1900〜3800、又は2000〜3700の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0061】
本発明はまた、下記式(I):
【化24】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化25】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化26】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加、眼科手術などのビスコサージェリー、ビスコプロテクション、手術後適用のビスコセパレーション、受動的薬物送達、及び粘性補給用の、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用にも関する。
【0062】
有利な実施態様によれば、本発明は、nが720〜6250の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用に関する。
【0063】
より有利な実施態様によれば、本発明は、nが2000〜3800の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の使用にも関する。
【0064】
本発明はまた、pが8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17である、式(I)で表される諸化合物の使用にも関する。
【0065】
本発明はまた、kが2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17である、式(I)で表される諸化合物の使用にも関する。
【0066】
本発明は、全R基のうちの2〜30%が、式(II)又は(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0067】
このような置換度(2〜30%)は、本発明の生成物の重要な特徴であり、得られた流体の物理特性は、この置換度に関係している。このような置換度により、溶解度特性の維持及びアルキル鎖の会合の維持が可能となり、均一な網目構造(そこでは静電斥力がゲル膨潤を引き起こす)を得る。
【0068】
前記置換度は、本発明の諸化合物において、静電斥力と疎水性引力との間の均衡が存在するように選択される。
【0069】
本発明は、全R基のうちの8%が、修飾したR基を表す、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0070】
このような好ましい置換度は、架橋の制御をもたらし、ゲル膨潤を維持しながらアルキル鎖の会合を可能にする。
【0071】
本発明は、修飾したR基のうちの5〜100%、好ましくは25〜100%、最も好ましくは50%が、式(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0072】
本発明は、修飾したR基のうちの0〜95%が、式(II)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0073】
本発明は、全R基のうちの0〜28.5%が、前記定義の式(II)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0074】
本発明は、全R基のうちの0,1〜30%が、式(III)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0075】
本発明は、修飾したR基のうちの5〜100%が、前記定義の式(III)で表される基を表し、pが10である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0076】
本発明は、kが4に等しいか又は4を超える、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0077】
本発明は、kが4である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0078】
本発明は、nが2400〜3800の範囲の整数、好ましくは2400〜3700の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0079】
nが2400〜3800の範囲の整数である、式(I)で表される前記の諸化合物は、約1×10〜1.5×10g・mol−1の分子量を有する。
【0080】
本発明は、下記式(I):
【化27】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化28】

で表される基;
又は、下記式(III−1):
【化29】

で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III−1)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用に関する。
【0081】
これらの好ましい諸化合物の利点は、次の通りである:疎水性相互作用による非共有架橋、良好な水溶液中溶解度、良好なレオロジー特性及び市場で生産されている粘性補給剤に比べてより高い粘性補給性能(実験の部を参照のこと)。
【0082】
本発明はまた、下記式(I):
【化30】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化31】

で表される基;
又は、下記式(III−1):
【化32】

で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、(III−1)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加、眼科手術などのビスコサージェリー、ビスコプロテクション、手術後適用のビスコセパレーション、受動的薬物送達、及び粘性補給用の、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用にも関する。
【0083】
本発明は、全R基のうちの8%が式(II−1)又は(III−1)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0084】
本発明は、全R基のうちの5%が式(III−1)で表される基を表し、全R基のうちの3%が式(II−1)で表される基である、式(I)で表される諸化合物の前記の使用に関する。
【0085】
nが2400〜3800の範囲の整数である、請求項21〜24のいずれか一項に記載の使用。
【0086】
これらの好ましい諸化合物は、注入化合物量を減少させると同時に、その弾性特性がSynvisc(商標)の弾性特性よりも良好であるので、特に有利である。
【0087】
本発明はまた、下記式(I):
【化33】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化34】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は下記式(III’):
【化35】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖、又はアダマンタンなどのp個の炭素原子を含む環基を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であり、
R”は、H又はp’個の炭素原子を含む直鎖状若しくは分岐状アルキル鎖を表し、ここでp’は、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+p+p’は28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III’)で表される基である)
を有する化合物にも関する。
【0088】
本発明はまた、下記式(I):
【化36】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化37】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は下記式(III):
【化38】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物にも関する。
【0089】
本発明の諸化合物は、粘弾性であり、明確な極性(親水性;ここではHA骨格)領域及び非極性(疎水性;ここではアルキル鎖)領域を含有するので、両親媒性である。
【0090】
本発明の諸化合物は、非毒性である。
【0091】
本発明の諸化合物は、生体内で、生物体により容易に除去され得る非毒性の分子に分解され得る。
【0092】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが1〜12の範囲の整数を表し、且つpが7〜17の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物に関する。
【0093】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが13〜17の範囲の整数を表し、且つpが1〜6の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物に関する。
【0094】
有利な実施態様によれば、本発明は、kが13〜17の範囲の整数を表し、且つpが7〜17の範囲の整数である、式(I)で表される諸化合物に関する。
【0095】
本発明の有利な化合物は、全R基のうちの2〜30%が前記定義の修飾したR基を表す、前記定義の式(I)で表される化合物である。
【0096】
有利な実施態様によれば、本発明の化合物は、全R基のうちの8%が前記定義の修飾したR基を表す、前記定義の式(I)で表される化合物である。
【0097】
他の有利な実施態様によれば、本発明の化合物は、修飾したR基のうちの5〜100%、好ましくは25〜100%、最も好ましくは50%が、前記定義の式(III)で表される基である、前記定義の式(I)で表される化合物である。
【0098】
他の有利な実施態様によれば、修飾したR基のうちの0〜95%が式(II)で表される基である、前記定義の式(I)で表される化合物である。
【0099】
本発明による特に好ましい化合物は、修飾したR基のうちの5〜100%が前記定義の式(III)(ここでpは10である)で表される基である、前記定義の式(I)で表される化合物である。
【0100】
本発明は、kが4に等しいか又は4を超える、前記定義の式(I)で表される化合物に関する。
【0101】
本発明は、kが4である、前記定義の式(I)で表される化合物に関する。
【0102】
本発明はまた、下記式(I−2):
【化39】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−2):
【化40】

で表される基;
又は下記式(III−2):
【化41】

(式中、pは、7に等しいか又は7を超え、好ましくは10である)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III−2)で表される基である)
を有する、前記定義の化合物にも関する。
【0103】
式(I−2)で表される化合物は、式(II)で表される基が式(II−2)で表される基に相当し、式(III)で表される基が式(III−2)で表される基に相当する、式(I)で表される化合物に相当する。
【0104】
式(II−2)で表される基は、kが4である、式(II)で表される基に相当する。
【0105】
式(III−2)で表される基は、kが4である、式(III)で表される基に相当する。
【0106】
本発明は、下記式(I−3):
【化42】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−3):
【化43】

で表される基;
又は下記式(III−3):
【化44】

(式中、kは、4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III−3)で表される基である)
を有する、化合物に関する。
【0107】
式(I−3)で表される化合物は、式(II)で表される基が式(II−3)で表される基に相当し、式(III)で表される基が式(III−3)で表される基に相当する、式(I)で表される化合物に相当する。
【0108】
式(II−3)で表される基は、式(II)で表される基に相当する。
【0109】
式(III−3)で表される基は、pが10である、式(III)で表される基に相当する。
【0110】
本発明の好ましい化合物は、下記式(I−4):
【化45】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化46】

で表される基;
又は下記式(III−1):
【化47】

で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III−1)で表される基である)
を有する。
【0111】
式(I−4)で表される化合物は、式(II)で表される基が式(II−1)で表される基に相当し、式(III)で表される基が式(III−1)で表される基に相当する、式(I)で表される化合物に相当する。
【0112】
式(II−1)で表される基は、kが4であり且つpが10である、式(II)で表される基に相当する。
【0113】
式(III−1)で表される基は、kが4であり且つpが10である、式(III)で表される基に相当する。
【0114】
本発明のもう一つの好ましい化合物は、下記式(I−5):
【化48】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化49】

で表される基;
又は下記式(III−1):
【化50】

で表される基;
を表し、
且つ式中、全R基のうちの2〜30%は、式(III−1)で表される基である)
を有する。
【0115】
式(I−5)で表される化合物は、式(II)で表される基が式(II−1)で表される基に相当し、式(III)で表される基が式(III−1)で表される基に相当し、そして全R基のうちの2〜30%が式(III−1)で表される基である、式(I)で表される化合物に相当する。
【0116】
有利な実施態様によれば、本発明は、全R基のうちの8%が修飾したR基(式中、kは4であり且つpは10である)を表す、前記の式(I−5)で表される化合物に関する。
【0117】
有利な実施態様によれば、本発明は、修飾したR基(式中、kは4であり且つpは10である)のうちの5〜100%が式(III−1)で表される基である、前記の式(I−5)で表される化合物に関する。
【0118】
本発明による有利な化合物は、全R基のうちの5%が式(III−1)で表される基を表し、且つ全R基のうちの3%が式(II−1)で表される基である、前記定義の式(I−4)又は(I−5)で表される化合物である。
【0119】
本発明は、nが2400〜3700の範囲の整数である、前記定義の式(I)で表される化合物に関する。
【0120】
高いほうの分子量のもの(この範囲の上述のもの)を使用するほうが、レオロジーパラメーターがより高くなるために、興味深い;このことは、HA300(分子量300,000g・mol−1を有する本発明の諸化合物)及びHA1500(分子量1,500,000g・mol−1を有する本発明の諸化合物)の特性を比較するときに実証される(図2及び図4を参照のこと)。
【0121】
前記の式(I)で表される本発明の諸化合物は、化学的架橋プロセスなしで得られるので、特に有利である:従って、前記諸化合物は、化学的に架橋したSynvisc(商標)と違い、濾過することができる。更に、前記諸化合物は、緩衝溶液で希釈する間、その粘弾性特性を維持するという特性を示す(実験の部を参照のこと)。
【0122】
本発明はまた、前記定義の式(I)で表される諸化合物の混合物を含む組成物にも関する。
【0123】
前記混合物は、同じ式(I)を有する諸化合物を含有することができる。そなわち、nが同一であり、且つ各モチーフ「i」の各Rが同一である、式(I)で表される諸化合物か、又はnが同一であり、且つ各モチーフ「i」の各Rが同一ではない、式(I)で表される諸化合物を含有することができる。
【0124】
前記混合物はまた、同じ式(I)を有しない諸化合物を含有することもできる。すなわち、nが異なることができ、及び/又は各モチーフ「i」の各Rが同一ではない、式(I)で表される諸化合物を含有することもできる。
【0125】
本発明はまた、ヒアルロン酸と前記定義の式(I)で表される化合物との混合物を含む組成物にも関する。
【0126】
好ましくは、本発明は、約400,000〜2.7×10g・mol−1の分子量を有するヒアルロン酸又はその塩形態と前記定義の式(I)で表される化合物との混合物を含む組成物であって、前記ヒアルロン酸が非修飾の天然ヒアルロン酸に相当するものである組成物に関する。
【0127】
有利な実施態様によれば、前記定義の前記組成物は、ヒアルロン酸1〜99%及び前記定義の式(I)で表される化合物1〜99%、好ましくは50〜99%を含む。
【0128】
本発明はまた、薬学的に許容可能な担体と合わせて、前記定義の式(I)で表される化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0129】
本発明の誘導体は、薬物送達に適合させることができるが、化粧品及び医療など、医薬品以外の領域で他の多くの応用にも適合させることができる。
【0130】
上述の薬学的に許容可能な担体の例は、シクロデキストリン(α、β又はγ)である。
【0131】
シクロデキストリンは、本発明の化合物の粘度を低下させ、それにより前記化合物の注入がより容易になるので、本発明において特に適切である。より正確には、疎水性鎖がシクロデキストリンの空洞中にカプセル化されることによりマスクされるために、シクロデキストリンの接触において、疎水性相互作用が破壊される。
【0132】
本発明の化合物の注射剤にシクロデキストリンを添加することにより、前記化合物の生物体内流動が容易になる。
【0133】
医薬組成物注入後、シクロデキストリンと本発明の化合物との間の相互作用が弱いので。
【0134】
注入後、シクロデキストリンは生物体内において希釈により拡散する、そしてまた脂質などのインシトゥーの分子との競合的疎水性相互作用のため。
【0135】
アルキル鎖とCDとの間の相互作用は、可逆的である。
【0136】
前記医薬組成物は、非毒性である。
【0137】
前記の医薬組成物においては、本発明による式(I)で表される化合物の量は、約1〜約30g・L−1の範囲であり、好ましくは約10g・L−1である。
【0138】
更に、本発明の医薬組成物は、ゲル様特性を与える溶液形態にあり、注射器でより容易に注入され得る。
【0139】
本発明はまた、オクチル硫酸ナトリウム、デシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、及びテトラデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤と合わせて、前記定義の式(I)で表される化合物を含む組成物、特に医薬組成物にも関する。
【0140】
本発明はまた、下記式(I):
【化51】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化52】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は下記式(III):
【化53】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数、好ましくは3〜16の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が次の工程:
−式(A):
【化54】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、水溶性カップリング剤、例えばEDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B):
【化55】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C):
【化56】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D):
【化57】

(kは前記定義のとおりである)
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C)で表される化合物を、NaCNBH、NaBH、Pic−BH及びPyr−BHなどの還元剤の存在下に、炭素原子1〜17個、好ましくは3〜16個を含み、特に炭素原子を少なくとも7個含み、好ましくは炭素原子10個を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0141】
本発明はまた、前記定義のような方法により得られるような生成物にも関する。
【0142】
還元剤の使用により、還元剤を用いない同じ反応と比較したとき、前記還元剤がヒドラゾン結合を安定化するので、アルデヒドとヒドラジド間の反応収率が改良される。
【0143】
前記還元剤を用いないで同じプロセスを実施することにより、本発明の生成物を得ることはできない:その場合は結局、極少量のヒドラゾンを得るだけとなる。
【0144】
有利な実施態様によれば、本発明は、nが720〜6250の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の製造方法に関する。
【0145】
より有利な実施態様によれば、本発明は、nが2000〜3800の範囲の整数を表す、式(I)で表される諸化合物の製造方法に関する。
【0146】
本発明はまた、下記式(I):
【化58】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化59】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数を表す)
で表される基;
又は下記式(III):
【化60】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜6の範囲の整数であるが、
但し、k+pは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が次の工程:
−式(A):
【化61】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、水溶性カップリング剤、例えばEDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B):
【化62】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数を表す)
で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C):
【化63】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D):
【化64】

(kは前記定義のとおりである)
で表される基、
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C)で表される化合物を、還元剤の存在下に、炭素原子1〜6個を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0147】
本発明はまた、前記定義のような方法により得られるような生成物にも関する。
【0148】
本発明はまた、下記式(I):
【化65】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化66】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は下記式(III):
【化67】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、7に等しいか又は7を超える整数、特に7〜17の範囲の整数であり、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が次の工程:
−式(A):
【化68】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、水溶性カップリング剤、例えばEDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B):
【化69】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C):
【化70】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D):
【化71】

(kは前記定義のとおりである)
で表される基、
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C)で表される化合物を、還元剤の存在下に、少なくとも7個の炭素原子を含み、好ましくは10個の炭素原子を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0149】
本発明はまた、前記定義のような方法により得られるような生成物にも関する。
【0150】
本発明はまた、下記式(I−5):
【化72】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ、(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化73】

で表される基;
又は下記式(III−1):
【化74】

で表される基;
を表し、
且つ式中、全R基のうちの2〜30%は、式(III−1)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が次の工程:
−式(A):
【化75】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、EDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B−1):
【化76】

で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C−1):
【化77】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D−1):
【化78】

で表される基、
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D−1)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C−1)で表される化合物を、還元剤の存在下に、10個の炭素原子を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I−5)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法にも関する。
【0151】
本発明はまた、前記定義のような方法により得られるような生成物にも関する。
【0152】
本発明はまた、前記定義の式(I)で表される諸化合物を一緒に混合することによる、前記定義の式(I)で表される諸化合物の混合物を含む組成物の製造方法にも関する。
【0153】
本発明はまた、直鎖状ヒアルロン酸(修飾していない天然ヒアルロン酸及びその塩形態)の溶液を、前記定義の式(I)で表される諸化合物の溶液と混合することによる、ヒアルロン酸と前記定義の式(I)で表される化合物との混合物を含む組成物の製造方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】C−10アルキル鎖(p=10)を有する式(I)(式中、全R基のうちの5%が、k=4及びp=10を有する式(III)で表される基である(DS=0.05))で表される化合物のHNMRスペクトル(400MHz,80℃,6mg・mL−1/DO(HODシグナル:4.11ppm))。
【図2】次の市販品と本発明の誘導体についての、NaCl 0.1M中25℃での、ずれ速度の関数としての粘度(mPa.s)を与える流動実験。市販のHA(市販用書面から引用した値):Arthrum(商標)(○);Orthovisc(商標)(□);Supartz(商標)/Adant(商標)(◇);Synvisc(商標)(×);及び本発明の式(I)で表されるHA誘導体:HA−5C10(分子量300,000g・mol−1(+)及び1,500,000g・mol−1(△))。
【図3】ずれ速度(s−1)の関数としての粘度(Pa.s);緩衝液中37℃での、市販の試料Synvisc(商標)(菱形印を用いた曲線)の、直鎖状HA(天然HA)(三角印を用いた曲線)及び本発明のHA誘導体(本発明による式(I)で表される諸化合物)(四角印を用いた曲線)との比較。
【図4】37℃での動的実験における周波数の関数としてのG’(黒記号)及びG”(白記号):対照のHA(Synvisc(商標)を10g/Lで対照として使用)(菱形印)から得た結果の、本発明の式(I)で表されるHA誘導体、すなわち5C−10(Mw=300,000)(丸印)及び5−C10(Mw=1.5×10)(三角印)から10g/Lで得た結果との比較。本発明のHAは、緩衝溶液中37℃で試験する。
【図5】緩衝液中37℃での様々な試料の酵素分解。レオロジー試験を開始するのに必要な応答遅延時間(delay)の間に速やかな第1ステップが起こる。この図は、直鎖状HA(天然HA)(三角印)、本発明1500KのHA−5C10(分子量1,500,000g・mol−1)(実線)、及び市販の対照(Synvisc(商標))(四角印)についての、時間(秒)の関数としての複素還元粘度比(reduced complex viscosity ratio)(h*(t)/h*)を表す(h*:初期値)。
【図6】混合物HA/本発明のHA−5C10(式(III)(式中、p=10及びk=4)で表される基であるR基5%を有する、式(I))についての、周波数の関数としての弾性率G’(Pa)の漸進的変化。この図は、以下の生成物について、周波数の関数としてのG’を表す:Synvisc(商標)(+)、本発明のHA−5C10(Mw=1.5×10g/mol)単独(□)、本発明のHA−5C10のHA(Mw=1.5×10g/mol)との混合物(次のそれぞれの百分率のHA−5C10を含む:90%(◇)、80%(△)、70%(×)、60%(○)、及び50%(−))。
【図7】混合物HA/HA−5C10(その組成は0/100%〜50/50%(重量百分率)の範囲である)についての、1Hz(□)及び0.1Hz(△)でのG’の値(Pa)。高分子の全濃度は、25℃緩衝溶液中10g/Lである。
【図8】25℃でNaCl 0.1M中10g/Lでの本発明のHA−5C10、単独(四角印)、又は天然α−CDの(C10(p=10)のアルキル鎖に関して)1モル当量共存(三角印)若しくは3モル当量共存(丸印)についての、周波数(Hz)の関数としてのG’(Pa)(白記号)及びG”(Pa)(黒記号)。
【図9】25℃でNaCl 0.1M中10g/Lでの本発明のHA−5C10、単独(丸印)、又は天然β−CDの(C10(p=10)のアルキル鎖に関して)1モル当量共存(四角印)及び3モル当量共存(三角印)についての、周波数(Hz)の関数としてのG’(白記号)及びG”(黒記号)。
【図10】25℃でNaCl 0.1M中10g/Lでの本発明のHA−5C10(Mw=300,000g/mol)、単独(丸印)、又は天然α−CDの(C10(p=10)のアルキル鎖に関して)1モル当量共存(四角印)若しくは4モル当量共存(三角印)についての、周波数(Hz)の関数としてのG’(Pa)(白記号)及びG”(Pa)(黒記号)。
【図11】25℃でNaCl 0.1M中10g/Lでの本発明のHA−5C10(M=300,000g/mol)、単独(丸印)、又はデシル硫酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)についてCMC/4に等しい濃度のデシル硫酸ナトリウム共存(三角印)、若しくはCMCに等しい濃度のデシル硫酸ナトリウム共存(菱形印)若しくは4CMCに等しい濃度のデシル硫酸ナトリウム共存(四角印)(ここでCMCは前記アニオン界面活性剤の臨界ミセル濃度に相当する)についての、周波数(Hz)の関数としてのG’(Pa)(白記号)及びG”(Pa)(黒記号)。
【0155】
<実験の部>
材料
本発明で原料として使用するヒアルロン酸は、前に記載した経路に基づいている。すなわち、非GMO株、炭素原としてのグルコース、窒素源としての小麦タンパク質、並びに濾過プロセス及びアルコール沈殿法及び乾燥に基づく精製プロセスを用いる経路に基づいている。この多糖は、粘性補給(関節炎にかかった関節の痛み減少及び機能回復)、組織工学(3D細胞培養生体吸収性足場材)及び薬物送達において多くの応用例を有する、新しい生体適合性材料開発の魅力的な基礎的要素(building block)となってきている。(Lapcik Jr.,L.;Lapcik,L.;De Smedt,S.;Demeester,J.Chem.Rev.1998,98,2663;New Frontiers in Medical sciences:Redefining Hyaluronan;Abatangelo G.,Weigel P.H.Eds.;Elsevier;2000).
【0156】
この細菌性ヒアルロン酸ナトリウムを、本研究において使用した。分子量分布(w(M))及び重量平均分子量(M)は、0.1M NaNO中5×10−4g/mLの濃度の溶液からのトリプル検出装置を用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。試料の多分散性は、M/M〜1.5である。重量平均分子量は、1.5×10g/mol及び3×10g/molであると測定された。以下において、これらの試料を、それぞれHA1500及びHA300と呼ぶ。タンパク質含有量は、0.1重量%未満であると測定された。アルデヒド鎖(1−デカナール又は1−ドデカナール)及びすべての他の化学薬品はFluka(Buchs,Switzerland)から購入した。
【0157】
NMRスペクトル
HNMR実験は、400MHzで作動するBrukerにより製造されたDRX400スペクトロメーターを用いて行なった。HNMRスペクトルは、16Kのデータポイントを用いて集めた。酸化ジュウテリウムは、SDS(Vitry,France)から入手した。
【0158】
<式(I)で表される諸化合物の合成>
【化79】

【0159】
HA−ADH3(k=4を有する本発明の化合物(C−1))
HA300(4g,9.97mmol)(n=750を有する化合物(A))を、水に溶解して、濃度4g/Lとした。この溶液に、アジピン酸ジヒドラジド(17.3g,99.7mmol)(化合物(B−1))を添加した。次いで0.1N HClを用いて、反応のpHを4.75±0.05に調整した。次に、1−エチル−3−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(EDC)(0.287g,1.49mmol)の水溶液を、混合物にゆっくり添加した。0.1N HClの添加により、反応混合物のpHを、4.75±0.05に維持した。更なるpH変化が観察されなくなるまで(すなわち4時間)、室温で反応を進行させておいた。次いで0.1N NaOHで反応のpHを7.5に調整した。濃度0.5MでNaClを添加後、EtOH/HOの割合が約3/2(v/v)でEtOHを用いて、修飾したHAを沈殿させた。沈殿をエタノールで洗浄し、次いで濾過して、HA−ADH(3.48g,85%)を得た。最終生成物の化学的完全性と純度は、HNMRにより確認した。HAのアノマープロトン及びADHのメチレンプロトンから生じるNMRシグナルのデジタル積分は、置換度0.08を与えた。
【0160】
アルキル化HA5a(本発明による式(I)(k=4;p=10)で表される諸化合物)
HA−ADH3(0.6g,1.46mmol)/水(144mL)溶液に、EtOH(82mL)を添加した。次いで0.1M HCl水溶液の滴下により、溶液のpHを5.1±0.5に調整した。次いでアルデヒド鎖(1−デカナール)(0.015g,0.096mmol)(p=10)を添加し、そのあとNaCNBH(還元剤)(0.21g,2.84mmol)/水(2mL)溶液を添加した。室温で24時間撹拌後、次いで0.1N NaOH水溶液で反応のpHを7.5に調整した。0.5M濃度でNaClを添加後、EtOH/HOの割合が約3/2(v/v)でEtOHを用いて、修飾したHAを沈殿させた。沈殿をエタノールで洗浄し、次いで濾過して、n=750で、且つ全R基のうちの5%が式(III)(k=4及びp=10)で表される基である、式(I)で表される化合物である、HA−5C10を得た。
【0161】
高分子は、HA−xCy(式中、xは、100のR基に対する式(III)で表されるR基の数であり、yは、ペンダントアルキル鎖の炭素数(p)である)として示される。
【0162】
前記の合成はまた、他の型のアルデヒド鎖を用いても実施できるであろう。
【0163】
アルキル化HA5a(本発明による式(I)(k=4;p=10)で表される諸化合物)の代替合成方法は、次の通りである:
HA600(1g,2.49mmol)(化合物(A)(n=1500))を水に溶解して、濃度を2g/Lとした。この溶液にアジピン酸ジヒドラジド(0.432g,2.49mmol)(化合物(B−1))を添加した。15時間撹拌後、0.22μmメンブランを通して溶液を濾過した。次いで0.5M HClを用いて、反応のpHを4.75±0.05に調整した。次に、混合物に1−エチル−3(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(0.071g,0.37mmol)の水溶液をゆっくり添加した。0.5M HClの添加により、反応混合物のpHを4.75±0.05に維持した。更なるpHの変化が観察されなくなるまで(すなわち4時間)、室温で反応を進行させておいた。次いで0.5M NaOHを用いて、反応のpHを7.5に調整した。ミリポアメンブラン(細孔径100.000MW)を用いる限外濾過により生成物を精製した。初期容積の10倍まで精製後、透過溶液の伝導度を測定して、それが脱イオン水の伝導度(〜5μS)であることを確認した。限外濾過後に得られた修飾したHA溶液(500mL)に、EtOH(333mL)を添加した。次いで0.1M HCl水溶液の滴下により、反応のpHを5.10±0.05に調整した。次いでアルデヒド鎖(1−デカナール)(0.025g,0.160mmol)(p=10)を添加し、そのあと2−ピコリン−ボラン錯体(PicBH)(0.130g,1.215mmol)/エタノール(1mL)溶液を添加した。室温で24時間撹拌後、0.1M NaOH水溶液を用いて、反応のpHを7.5に調整した。濃度0.5MでNaClを添加後、EtOH/HOの割合が3/2(v/v)でEtOHを用いて、修飾したHAを沈殿させた。沈殿をエタノールで洗浄し、次いで濾過して、n=1500で、且つ全R基のうちの5%が式(III)(k=4及びp=10)で表される基である、式(I)で表される化合物である、HA−5C10を得た。
【0164】
前記の合成はまた、他の型のアルデヒド鎖又は還元剤(NaCNBH、NaBH、...)を用いても実施できるであろう。
【0165】
<結果>
アルキル化HA誘導体の合成及びキャラクタリゼーション
pH4.75±0.05で、水中で、HA1(化合物(A))と、10モル当量のアジピン酸ジヒドラジド(ADH)2(化合物(B−1))及び0.15モル当量の1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−カルボジイミド(EDC)との反応により、高純度HA−ADH誘導体3を得ることが可能になった(反応工程式1)。HNMRから決定された置換度(DS)は、予想通り、0.08に等しいことが見出された。実際には、天然の高分子で観察された独特の粘弾性特性を失わないようにするために、及びまた前記高分子の水溶性の起源に存在するHA骨格上の高い電荷を維持するためにも、HA−ADHに対する低いDS値(DS£0.1)が目標とされた。それから、HA−ADH3を、pH5.1±0.5で、水/エタノール混合物中、シアノホウ水素化ナトリウムの存在下に、10及び12個の炭素原子を有する様々なアルデヒド鎖4(又は他の鎖構造)と反応させた(反応工程式1)。
【0166】
本事例において、還元剤の添加は、ヒドラゾン結合の安定化により、反応収率の著しい増加を可能にした。実際、このような条件下では、カップリング反応が準定量的であることが示された。最終生成物(I)の化学的完全性及び純度を、高分解能HNMRにより確認した。NMR分析はDO中で行い、アルキル化HA誘導体は副生成物を少しも含まないことが示された。一例として、図1はC−10鎖を有するHA(p=10)のNMRスペクトルを示すが、その場合、HAのアノマープロトン及び鎖中CH基のプロトンから生じるNMRシグナルのデジタル積分では、置換度(DS=x/100)0.05が得られている。
【0167】
これらの両親媒性の系を特徴付ける静電斥力と疎水性引力との間の均衡との関係において、溶媒のイオン濃度及び温度がこの挙動にいくらかの効果を有する。
【0168】
HA−5C10は、全R基のうちの5%が式(III)(k=4及びp=10)で表される基を表し、且つ全R基のうちの3%が式(II)(k=4)で表される基である、式(I)で表される化合物である。
【0169】
HA−4C12は、全R基のうちの4%が式(III)(k=4及びp=12)で表される基を表し、且つ全R基のうちの4%が式(II)(k=4)で表される基である、式(I)で表される化合物である。
【0170】
<レオロジー>
レオロジー実験
コーンプレートレオメータ(TA Instruments提供のAR1000)を用いて、振動実験を行なった。すべての動的レオロジーデータ(弾性率G’、損失弾性率G”、複素粘性率h*)は、測定が線形粘弾性領域で行なわれたことを保証するために、ひずみ振幅の関数としてチェックし、次いで、周波数(ω(Hz))の関数として試験した。3g/Lより高濃度の高分子濃度に対する定常せん断流動実験(ずれ速度γの関数としての粘度η)は、同じコーンプレートレオメータを用いて実施した。用いたコーンは、測定する系の粘度に応じて、直径4cmと角度3°59’又は直径6cmと角度1°を有する。大部分の実験は、溶媒蒸発を避けるためにシリコーンの膜を用いて、25℃又は37℃で実施した。天然HA溶液及び本発明によるアルキル化HA誘導体の溶液は、それらを水性溶媒(0.1M NaCl又は次のものからなる緩衝液:8.5g/L NaCl、0.05g/L NaHPO、0.6g/L NaHPO)に溶解することにより調製した。一晩撹拌後、試料は、キャラクタリゼーション前に1日間冷蔵庫に保存した。
【0171】
I−25℃での流動曲線。文献データとの比較
本発明者らの2種の高分子について、ずれ速度の関数としての粘度の図を描き、様々な市販製品に対する市販用書面から引用したデータと比較した(図2)。図2において、溶媒は、様々な会社により採用された溶媒である。修飾したHA(5−C10(Mw=0.3×10)及び5−C10(Mw=1.5×10))については、溶媒は0.1M NaClであり、測定は25℃で行なう。すべての試料は10g/Lで存在するが、しかしArthrum(商標)は20g/Lで存在する。
この比較図から、本発明の生成物の粘度は、市販の試料の大部分よりも高いこと、及び特に、本発明のHA誘導体HA−5C10(Mw=1.5×10g/mol)の粘度は、同じ高分子濃度10g/Lで考えられる最も有効な製品の粘度よりも高いことが明らかである。2倍濃度で調製したArthrum(商標)と比較したときは、そのことがなお一層明らかである。
【0172】
II−リン酸−NaCl緩衝液中37℃での流動曲線
対照として用いた市販の試料(Synvisc(商標))は、次のものからなる緩衝液に可溶化されることが知られている:8.5g/L NaCl、0.05g/L NaHPO、0.6g/L NaHPO;本発明の諸化合物の試料は、同じ溶媒中で調製した。図3の曲線は、増加するずれ速度に対する、ずれ速度の関数としての流動粘度を与える。
この図から、直鎖状HAの粘度への化学修飾の役割が実証される;加えて、本発明の諸化合物で得られた粘度は、対照製品の粘度よりずっと大きい。
【0173】
III−動的実験
これらの実験結果を図4に示す。
0.01〜30Hzの範囲で、どの周波数を用いても、G’及びG”並びにG’>G”において遷移は存在しない。そこで周波数がどうであろうとも、製造したすべての誘導体は、主として弾性であり、特に歩行周波数及び走行周波数(それぞれ0.5及び2.5Hz)の比較においては主として弾性である。
次の表において、前の図のデータから得る0.1及び1HzでのG’及びG”のいくつかの値を比較する。
【表1】


10g/Lでは、特に低周波数において、修飾したHAは、対照のG’値よりずっと高いG’値を有する。これにより、高分子の低濃度側では、良好な性能(G’、G”値)も得られるはずであると仮定することが可能である(希釈の役割は後ほど試験される)。
【0174】
IV−高分子濃度の影響
【表2】


25℃では、特に低周波数において、濃度37g/Lに対して、式(I)で表される修飾したHAは、対照のSynvisc(商標)よりずっと高いG’値を有する。これにより、高分子の低濃度側では、良好な性能(G’及びG”モジュラス)も得られることが確証される。10g/Lよりも低い高分子濃度を用いることが提案される。
本発明では、同じレオロジー効果を得るために、市販製品に比較して、患者に注入される化学修飾したHAのより少ない使用が可能になる。それが、膝関節への非生分解性分子の潜在的蓄積を減少させる結果となる。
【0175】
V−酵素分解
酵素分解は、1U/mg(式(I)で表される化合物)の存在下に、緩衝液中37℃で行なった。ヒアルロニダーゼは、Sigmaにより提供される(H2251;lot:70K0841 TypeIII ヒツジ精巣由来 ECN°253−464−3)。
動的レオロジーデータを、10g/L溶液について1Hzで得、モジュラスG’/G’の初期値(G’/G’)(データは図示せず)として、及び複素還元粘度比(the ratio of the reduced complex viscosity)(h*/h*の初期値(h*))として、時間の関数で示す(図5)。
この図から、本発明の化合物は、直鎖状高分子及び対照高分子よりも良好な安定性(その粘度は、他の試料の粘度よりも高いままである)を有することが明らかである。この効果は、自己修復性高分子として振る舞う両親媒性高分子に含まれる非共有性会合のメカニズムに関連している。
対照(Synvisc(商標))と比較して、本発明の分子の分解性が低いことにより、より長期間にわたり、患者に対する効果的なレオロジー特性を維持することができるという事実が強固にされる。結果として、2回の注入の間の時間が大幅に伸びるので、患者の治療が楽になるという改良点が存在する。
【0176】
VI−HA(Mw=1.510g・mol−1)及びHA5−C10を含む混合物
レオロジー
直鎖状HAの溶液を、誘導体の溶液と混合して、混合物中のそれぞれの高分子が様々な割合のものを得る。初期溶液は、25℃で、緩衝液中、10g/Lで存在する。
図6は、混合物HA/HA−5C10について、周波数の関数としての弾性率G’の漸進的変化を示す。前記混合物は、HAとHA−5C10の重量で、0/100%〜50/50%を含み、混合した高分子溶液中の全濃度は、10g/Lである。
混合物10/90(90%HA−5C10及び10%HA)及び20/80(80%HA−5C10及び20%HA)に対するG’の値は、市販対照(Synvisc(商標))に対するG’の値に近いことを認めることができる。
これらのデータから誘導体70%のみを含む混合物は、なお良好な性能(対照に比較して高いG’値)を有することがわかる。これらのデータから、2つの周波数、すなわち0.1と1Hzに対するG’値を決定することが可能である。これらのデータを図7上に示す。
50/50%までは、G”値が常に15Paより低いので、混合物の弾性特性が維持されている(G’>G”)ことを認めることができる。
【0177】
VII−α−及びβ−シクロデキストリン(α−及びβ−CD)の使用
HA−5C10(Mw=1.5×10g・mol−1)水溶液への1モル当量のα−シクロデキストリン(α−CD)の添加により、G’及びG”の重要な低下が引き起こされ、より良好な注射可能性を与える。しかしながら、得られた混合物(HA−5C10 + α−CD)は、弾性のままである(図8)。インシトゥー注入後、シクロデキストリンは、拡散により、次いでゲル形成の回復により、除去される。
G’の値は、約30倍低下する。β−シクロデキストリンは、効果がより小さい(図9)。
シクロデキストリンの添加によるG’及びG”の値の低下により、HA−5C10の注入が容易になる。
CDの効果は、表3に与えるモジュラス値により示される。これらのデータから、シクロデキストリンは、アルキル化溶液のモジュラスを減少させ、β−CDに比べてα−CDの効果がより強いことが明らかである。これにより、小細孔メンブラン(0.2ミクロメーター)での溶液の濾過が可能となるのである。一方、対照(Synvisc(商標))は、化学的に架橋されているので、同じ条件下では濾過できないであろう。
【表3】


HA−5C10(Mw=300,000g・mol−1)を用いて、同じ実験を実施した。同様に、HA−5C10(Mw=300,000g・mol−1)水溶液への1モル当量のα−シクロデキストリン(α−CD)の添加により、G’及びG”モジュラスの重要な低下が引き起こされる(図10及び表4)。
【表4】

【0178】
VIII−会合系への小さい分子の添加
界面活性剤の添加:
アルキル化ヒアルロン酸水溶液へのアニオン界面活性剤の添加では、そのレオロジー挙動に対して意味深い効果をもたらすことができる。アルキル化ヒアルロン酸存在下でのアニオン界面活性剤は、混合ミセル形成を引き起こす。界面活性剤濃度に応じて、混合ミセルは、1以上の高分子鎖に属する、アルキル基を含有する。
界面活性剤濃度が前記界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC=その濃度を超えて任意に添加した界面活性剤分子がミセル凝集体として現れる濃度)よりも低い場合、それが水中にのみ存在するとき、高分子鎖間の架橋結合が起こり、その架橋結合は、界面活性剤がない場合の前記高分子鎖間架橋結合に比較してより強力であり、レオロジーモジュラスの値を増加させる。この場合においては、ミセルは、1を超える高分子鎖に属する、アルキル基を含有する。
そうでなく、界面活性剤濃度がCMCよりも高い場合、過剰の界面活性剤分子がグラフトアルキル鎖と別々に相互作用をして、ミセル様凝集体を形成する。そして後者は、アルキル鎖を可溶化することにより、モジュラスの値の減少及び高周波数側へのG’及びG”曲線の交差点のシフトを引き起こす。この場合においては、ミセルは、1の高分子鎖に属する、アルキル鎖を含有する。
図11及び表5に示すように、CMC/4の濃度での界面活性剤添加では、G’/G”比は減少するけれども、G’及びG”モジュラスの増加がもたらされる。粘弾性溶液の挙動は、CMCに等しい界面活性剤濃度で得られる。CMCよりも高い界面活性剤濃度については、混合ミセル形成による、物理的網目構造の漸進的解体を観察することができる。
過剰量の界面活性剤添加によるG’及びG”値の低下は、HA−5C10注入を容易にすることができる。
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化2】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化3】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物の、粘弾性組成物製造のための使用。
【請求項2】
下記式(I):
【化4】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化5】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか若しくは4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化6】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物の、細胞培養、組織工学、顔の皺や傷跡の矯正などの軟組織増加、眼科手術などのビスコサージェリー、ビスコプロテクション、手術後適用のビスコセパレーション、受動的薬物送達、及び粘性補給用の薬剤製造のための、特に膝関節症などの関節症治療用の薬剤製造のための使用。
【請求項3】
下記式(I):
【化7】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化8】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表す)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化9】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜6の範囲の整数であるが、
但し、k+pは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物の、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
下記式(I):
【化10】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化11】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化12】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、7に等しいか又は7を超える整数、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物の、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項5】
全R基のうちの2〜30%が、式(II)又は(III)で表される基である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
全R基のうちの8%が、式(II)又は(III)で表される基である、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項7】
下記式(I):
【化13】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化14】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化15】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
を有する化合物。
【請求項8】
全R基のうちの2〜30%が、請求項7に定義される式(II)又は(III)で表される基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
全R基のうちの8%が、請求項7に定義される式(II)又は(III)で表される基である、請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
kが4に等しいか又は4を超える、請求項7〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
下記式(I):
【化16】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II−1):
【化17】

で表される基;
又は、下記式(III−1):
【化18】

で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III−1)で表される基である)
を有する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれか一項に定義される式(I)で表される諸化合物の混合物を含む組成物。
【請求項13】
ヒアルロン酸又はその塩形態及び請求項7〜11のいずれか一項に定義される化合物の混合物を含む組成物。
【請求項14】
薬学的に許容可能な担体と合わせて、請求項7〜11のいずれか一項に定義される化合物を含む、医薬組成物。
【請求項15】
アニオン界面活性剤と合わせて、請求項7〜11のいずれか一項に定義される化合物を含む組成物、特に医薬組成物。
【請求項16】
式(I):
【化19】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化20】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化21】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、1〜17の範囲の整数、好ましくは3〜16の範囲の整数であり、特に7に等しいか又は7を超え、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下、好ましくは20以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が、下記工程:
−式(A):
【化22】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、水溶性カップリング剤、例えばEDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B):
【化23】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C):
【化24】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D):
【化25】

(kは前記定義のとおりである)
で表される基、
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C)で表される化合物を、NaCNBH、NaBH、Pic−BH及びPyr−BHなどの還元剤の存在下に、炭素原子1〜17個、好ましくは3〜16個を含み、特に炭素原子を少なくとも7個含み、好ましくは炭素原子10個を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
式(I):
【化26】

(式中、
−nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表し、
−iは、1〜nの範囲であり、
−Rは、
OH;
OZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである);又は
下記式(II):
【化27】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表される基;
又は、下記式(III):
【化28】

(式中、
kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超え、
R’は、p個の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状アルキル鎖を表し、ここでpは、7に等しいか又は7を超える整数、特に7〜17の範囲の整数であり、好ましくは10であるが、
但し、k+pは28以下であるものとする)
で表される基;
を表し、
且つ式中少なくとも1個のR基は、式(III)で表される基である)
で表される諸化合物の製造方法であって、前記方法が、次の工程:
−式(A):
【化29】

(式中、
Xは、OH又はOZ(式中、Zは、Na若しくはKなどの任意の一価対イオン又はCa2+若しくはMg2+などの任意の二価対イオンを表し、好ましくは一価カチオンである)であり、
nは、720〜6200の範囲の整数、好ましくは1900〜3800の範囲の整数を表す)
で表されるヒアルロン酸を、水溶性カップリング剤、例えばEDCなどの水溶性カルボジイミドの存在下に、式(B):
【化30】

(式中、kは、1〜17の範囲の整数、好ましくは2〜12の範囲の整数を表し、特に4に等しいか又は4を超える)
で表されるジヒドラジドと反応させて、式(C):
【化31】

(式中、Yは、
OH又は
OZ(Zは前記定義のものである)、又は
式(D):
【化32】

(kは前記定義のとおりである)
で表される基、
であり、
式中少なくとも1個のY基は式(D)で表される基である)
で表される化合物を得る工程、
−並びに、前記式(C)で表される化合物を、還元剤の存在下に、炭素原子を少なくとも7個含み、好ましくは炭素原子10個を含むアルデヒドと反応させて、前記定義の式(I)で表される化合物を得る工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法で得られるような生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−516765(P2009−516765A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541621(P2008−541621)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010991
【国際公開番号】WO2007/059890
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(505409247)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク (16)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(504169485)
【氏名又は名称原語表記】AGRO INDUSTRIE RECHERCHES ET DEVELOPPEMENTS(A.R.D.)
【Fターム(参考)】