説明

新規ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体及びその用途

【課題】従来の抗がん剤の効果は副作用の出現などの問題によりその効果が十分ではない。従って患者の予後改善をもたらすためには新規な抗がん剤が必要である。
【解決手段】一般式(1)


(式中、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又はシアノ基を示し、nは1〜3の整数を示す。)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、およびその医薬としての用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
抗癌剤としては、非特許文献1および2に示されているように作用機序の異なる多くの薬剤が開発されている。アドリアマイシン、シスプラチン、タキソール、ビンクリスチン、ゲムシタビン等が広く臨床で使用されている。この中でアドリアマイシンを始めとするアンスラサイクリン系化合物は代表的な抗癌剤として広く臨床で使用されているが、心毒性、骨髄抑制等の副作用や薬剤耐性癌細胞の出現により十分な治療が施せないケースが増加しており、治療上の問題となっている。また、乳癌治療には上記の化学療法剤の他、ホルモン剤や分子標的制がん剤であるハーセプチン等が用いられているが、これらの薬剤に対しても抵抗性の癌が問題となり新たな抗がん剤の開発が待たれている。
【0002】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の類似化合物は、特許文献1、2で示されているようにプロテインチロシンキナーゼ阻害、mGlu2レセプター阻害といった生理活性が報告されており、また非特許文献3ではp21欠損細胞での細胞増殖阻害活性が報告されている。しかしピペリジン、ピロリジン、アゼパンを置換基に持つピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体については細胞増殖阻害活性の報告はなされていない。
【非特許文献1】癌と化学療法 26 Supplement 1、23−31 (1999)
【非特許文献2】化学療法の領域 19 Supplement 1、9−15 (2003)
【非特許文献3】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 15、p.1591−1594(2005)
【特許文献1】特開2005−8581号公報
【特許文献2】国際公開2005/123738号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、既存の抗癌剤と異なる、新規の抗癌剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため合成化合物について種々検索した結果、新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体が細胞増殖阻害作用、特に乳癌細胞に強い細胞増殖阻害作用を持つことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は
(1)一般式(1)
【0006】
【化1】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又はシアノ基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、アミノ基およびN−保護アミノ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。nは1〜3の整数を示す。Zは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ベンジル基、ヘテロアリール基、低級アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、低級アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
【0007】
(2)一般式(1)において、nが2である前記(1)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(3)一般式(1)において、XおよびYがそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(2)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(4)一般式(1)において、Zが水素原子、低級アシル基または低級アルコキシカルボニル基を示し、低級アシル基および低級アルコキシカルボニル基は置換されていてもよく、置換される場合には低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基およびアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(3)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(5)一般式(1)において、Zが水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基である前記(4)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(6)一般式(2)
【0008】
【化2】

(式中、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。Z1は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基を示す。)で表される前記(5)記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
【0009】
(7)一般式(2)において、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(6)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(8)一般式(2)において、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基又はチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合には塩素原子およびメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(7)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(9)一般式(3)
【0010】
【化3】

(式中、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。Z2は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基を示す。)で表される前記(5)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
【0011】
(10)一般式(3)において、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(9)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(11)一般式(3)において、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合には塩素原子およびメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す前記(10)に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩、
(12)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする哺乳動物の医薬品もしくは疾病の予防または治療剤、
(13)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする細胞増殖阻害剤、
(14)前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗癌剤、
(15)癌が乳癌である前記(14)の抗癌剤、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、細胞増殖抑制作用を有する、新規なピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体が提供される。更には本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体は乳癌細胞に対して強い増殖阻害活性を有することが示された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、低級アルキル基とは炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基,n−プロピル基、イソプロピル基、ジメチルプロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメチル基、エチル基、tert−ブチル基を挙げることができる。さらに好ましい基として、メチル基、エチル基を挙げることができる。
【0014】
本発明において、アリール基とは炭素数6〜14の芳香族炭化水素基を示し、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはフェニル基を挙げることができる。
【0015】
本発明において、ヘテロアリール基とはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子または硫黄原子を同一または異なるヘテロ原子として1〜4個含む複素芳香族を示し、例えばフリル基、チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、インドリル基、チアジアゾリル基、フラザニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、チアジアゾリル基、ピラゾロピリミジニル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはチエニル基を挙げることができる。
【0016】
本発明において、低級アルコキシ基とは低級アルキルオキシ基のことで低級アルキル基は前述の通り、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を示し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基を挙げることができる。さらに好ましい基として、メトキシ基、tert−ブトキシ基を挙げることができる。
【0017】
本発明において、シクロアルキル基とは炭素数3〜8の飽和環状炭化水素基を示し、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基を挙げることができる。
【0018】
本発明において、ヘテロシクロアルキル基とはヘテロ原子として窒素原子、酸素原子または硫黄原子を同一または異なるヘテロ原子として1〜4個含むシクロアルキル基を示し、例えばテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピペリジニル基、モルホリル基等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、ハロゲン原子とはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。これらのうち、好ましい原子としては塩素原子を挙げることができる。
【0020】
本発明において、低級アシル基とは前述の低級アルキル基にカルボニル基が結合した基を示し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはアセチル基を挙げることができる。
【0021】
本発明において、低級アルコキシカルボニル基とは前述の低級アルコキシ基にカルボニル基が結合した基を示し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはtert−ブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0022】
本発明において、N−保護アミノ基とは通常使われているアミンの保護基が結合したアミノ基を示し、アミンの保護基としてはアシル型、カルバメート型、イミド型等があり、例えばアシル型ではアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレロイル基、アクリロイル基、クロトニル基、シクロプロパンカルボニル基等が挙げられる。また、カルバメート型では、置換基を有していても良いベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基等が、イミド型ではフタロイル基等が挙げられる。これらのうち、好ましい基としてはアセチル基、ベンジルオキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0023】
本発明において、低級アルキルチオ基とは前述の低級アルキル基にチオール基が結合した基を示し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメチルチオ基を挙げることができる。
【0024】
本発明において、低級アルキルアミノカルボニル基とは前述の低級アルキル基にアミノ基およびカルボニル基が結合した基を示し、例えばメチルアミノカルボニル基、エチルアミノカルボニル基、n−プロピルアミノカルボニル基、イソプロピルアミノカルボニル基、n−ブチルアミノカルボニル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはメチルアミノカルボニル基を挙げることができる。
【0025】
本発明において、アリールアミノカルボニル基とは前述の低級アリール基にアミノ基およびカルボニル基が結合した基を示し、例えばフェニルアミノカルボニル基、ビフェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、アントリルアミノカルボニル基、フェナントリルアミノカルボニル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましい基としてはフェニルアミノカルボニル基を挙げることができる。
【0026】
本発明において、−(CH2n−とはnが1〜3の整数を示すアルキレン鎖を示し、構成される環の大きさとしては5〜7員環を示す。好ましいアルキレン鎖として、nが2であるエチレン基を挙げることができ、構成される環の大きさとしては6員環である。
【0027】
上記一般式(1)において、XおよびYはそれぞれ独立していて水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基およびシアノ基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、アミノ基およびN−保護アミノ基からなる群から選択される置換基で1〜4個置換されることを示す。これらのうち、好ましい基としては水素原子、低級アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を挙げることができる。より好ましくは水素原子、4−メトキシフェニル基、2−チエニル基、4−フルオロフェニル基、3−クロロフェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、を挙げることができる。
【0028】
上記一般式(1)において、Zは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、低級アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基および低級アルコキシ基からなる群から選択される置換基で1〜4個置換されることを示す。これらのうち、好ましい基としては水素原子、低級アルコキシカルボニル基を挙げることができる。より好ましくは水素原子、tert−ブトキシカルボニル基を挙げることができる。
【0029】
上記一般式(2)において、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される置換基で1〜4個置換されることを示す。これらのうち、好ましい基としては水素原子、低級アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を挙げることができる。より好ましくは水素原子、4−メトキシフェニル基、2−チエニル基、4−フルオロフェニル基、3−クロロフェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基を挙げることができる。
【0030】
上記一般式(2)において、Z1は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基が好ましい。
【0031】
上記一般式(3)において、X2およびY2はそれぞれ独立していて水素原子、低級アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される置換基で1〜4個置換されることを示す。これらのうち、好ましい基としては水素原子、低級アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を挙げることができる。より好ましくは水素原子、4−メトキシフェニル基、2−チエニル基、4−フルオロフェニル基、3−クロロフェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、を挙げることができる。
【0032】
上記一般式(3)において、Z2は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基を示す。
【0033】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る水和物としては、水分子1分子以上と会合又は結合した状態のものが挙げられる。また、本発明化合物の水和物には、上記本発明化合物の薬理学的に許容しうる塩の水和物も含まれる。
【0034】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る溶媒和物としては、例えば、エタノールもしくはプロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸等の有機酸、酢酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン若しくはジエチルエーテル等のエーテル類、ジメチルスルホキシド等の溶媒和物が挙げられる。溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。また、本発明化合物の溶媒和物には、上記本発明化合物の薬理学的に許容しうる塩の溶媒和物も含まれる。
【0035】
本発明化合物の薬理学的に許容し得る塩としては、塩酸、硫酸等の鉱酸との塩、酢酸、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸との塩などが挙げられる。これらの塩は常法に従って製造することができる。
【0036】
一般式(1)で表される化合物としては以下のような化合物が挙げられる。
(1)2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(2)2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(3)2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(4)2−tert−ブチル−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(5)2−(3−クロロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(6)2−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(7)2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(8)2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(9)2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(10)2−チオフェン−2−イル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(11)2−メチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(12)2−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(13)2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(14)2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(15)2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(16)2−エチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(17)2−メチル−3−(4−フルオロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(18)2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(19)2−メチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(20)2−メチル−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(21)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(22)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−ベンジルオキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(23)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−アセチルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(24)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−ベンゾイルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(25)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−ピバロイルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(26)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−トリクロロエトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(27)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−アリルオキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(28)3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(29)3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(30)3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピロリジン−2−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(31)2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(32)2−シクロヘキシル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(33)2−フェニル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(34)2−(4−ピリジル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(35)2−メトキシ−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(36)2−(ピロリジン−2−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(37)2−クロロ−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(38)2−ヒドロキシ−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(39)2−(チオフェン−2−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(40)2−(フラン−2−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(41)2−(3−クロロフェニル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(42)3−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(43)3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(44)3−シクロヘキシル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(45)3−フェニル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(46)3−(4−ピリジル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(47)3−(フラン−2−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(48)3−(3−メチルフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(49)3−(3−ニトロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(50)3−(3−カルボキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(51)3−(3−ヒドロキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(52)3−(3−アセチルフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(53)3−(3−メトキシカルボニル−フェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(54)3−(3−トリフルオロメチルフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(55)3−(3−フルオロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(56)3−(3−ブロモフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(57)3−(3−ヨードフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(58)3−(7−キノリル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(59)3−モルホリノ−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(60)3−(テトラヒドロフラン−2−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(61)3−ナフチル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(62)3−(ビフェニル−4−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(63)3−(3−アミノフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(64)3−(3−アセトアミド)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(65)3−(3−ベンズアミド)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(66)3−(3−tert−ブトキシカルボニルアミノフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(67)3−(3−ベンジルオキシカルボニルアミノフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(68)3−メチル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(69)3−tert−ブチル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(70)3−シクロペンチル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(71)3−(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(72)3−ベンジル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(73)3−フェニルエチル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(74)3−(チアゾロ−2−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(75)3−(2−(3H−イミダゾール−4−イル)−エチル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(76)2−エチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(77)2−(n−プロピル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(78)2−(n−ヘキシル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(79)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−メチルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(80)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−ベンジルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(81)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(82)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−n−プロピルアミノカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(83)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−フェニルアミノカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(84)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−シクロヘキシルアミノカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(85)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−メタンスルホニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(86)2−メトキシメチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−エチルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(87)2−(テトラヒドロピラン−4−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−プロピオニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(88)2−(2,5−ジメチルフラン−3−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−エトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(89)2−(1−メチルイミダゾール−2−イル)−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−メタンスルホニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(90)2−メチルチオ−3−シアノ−7−(1−(4−トルエンスルホニル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(91)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−(4−メトキシフェニル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(92)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−(4−フルオロベンジル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(93)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−(4−メトキシベンゾイル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(94)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−(アミノアセチル)ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(95)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−カルボキシアセチルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
(96)3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−ヒドロキシアセチルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
【0037】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体(但し、Zが水素原子の場合を除く。)は以下の方法で合成することができる。下記一般式(4)
【0038】
【化4】

(式中、Z4およびn4は一般式(1)のZおよびnと同一である。但し、Z4が水素原子の場合を除く。)で表される共通中間体Aと下記一般式(5)
【0039】
【化5】

(式中、X5およびY5は一般式(1)のXおよびYと同一である。)で表される共通中間体Bとを溶解した溶液を必要に応じて加熱や酢酸などの有機酸を添加し反応させることによって下記一般式(1)
【0040】
【化6】

(式中、X、Y、Zおよびnは前記の通りである。但し、Zが水素原子である場合を除く。)で表される目的の化合物を得ることができる。
【0041】
Zが水素原子の化合物は、上記一般式(1)においてZがtert−ブトキシカルボニル基である化合物を塩化水素ジオキサン溶液などの酸で処理することで得ることができる。
【0042】
また、一般式(4)で表される共通中間体Aは以下の方法で合成することができる。
下記一般式(7)
【0043】
【化7】

(式中、Z7およびn7は一般式(1)のZおよびnと同一である。但し、Z7が水素原子の場合を除く。)で表される化合物とN,O−ジメチルヒドロキシルアミンをカルボニルジイミダゾールなどの活性化剤により処理し、カルボン酸をアミド化することにより下記一般式(8)
【0044】
【化8】

(式中、Z8およびn8は一般式(1)のZおよびnと同一である。但し、Z8が水素原子の場合を除く。)で表される化合物を得ることができる。次いでメチルマグネシウムブロミドなどのメチル化金属試薬を作用させることで下記一般式(9)
【0045】
【化9】

(式中、Z9およびn9は一般式(1)のZおよびnと同一である。但し、Z9が水素原子の場合を除く。)で表される化合物を得ることができる。更に一般式(9)で表される化合物にジメチルホルムアミドジメチルアセタールを添加し、必要に応じて加熱し反応させることによって、一般式(4)で表される共通中間体Aを得ることができる。
【0046】
一方、一般式(5)で表される共通中間体Bは以下の方法で合成することができる。下記一般式(10)
【0047】
【化10】

(式中、X10は一般式(1)のXと同一である。)で表される化合物(一般式(10)で表される化合物は、J.Am.Chem.Soc.,Vol.76,p4112(1954)に従い得ることができる。)をナトリウムアルコキシドなどの塩基で処理した後、下記一般式(11)
【0048】
【化11】

(式中、Y11は一般式(1)のYと同一である。)で表される化合物を添加し、必要に応じて加熱し反応させることによって、下記一般式(12)
【0049】
【化12】

(式中、X12およびY12は一般式(1)のXおよびYと同一である。)で表される化合物を得ることができる。次いで一般式(12)で表される化合物にヒドラジン一水和物を作用させることによって、一般式(5)で表される共通中間体Bを得ることができる。
【0050】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を医薬品として使用する場合の製剤化および投与方法は従来公知の種々の方法が適用できる。すなわち、投与方法としては例えば注射、経口又は直腸投与等が可能である。
【0051】
製剤化の際に本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩に悪影響を与えない限り、医薬用に用いられる種々の医薬用添加剤、すなわち、担体やその他の助剤、例えば安定剤、防腐剤、無痛化剤、乳化剤等を使用してもよい。製剤において、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩の含量は製剤形態等により広範囲に変えることが可能であり、一般には0.01〜100%(重量)、好ましくは0.1〜70%(重量)含有する。経口剤の場合には添加剤と共に錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、液剤、ドライシロップ剤等の形態で用いられる。カプセル剤、錠剤、顆粒、散剤は一般に5〜100%(重量)、好ましくは25〜98%(重量)の有効成分を含む。
【0052】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする医薬品は、好ましくは細胞増殖阻害剤として使用できる。あるいは、好ましくは抗癌剤として使用される。
【0053】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の抗癌剤としての使用としては、例えば、乳癌、脳腫瘍、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌等の治療が挙げられるが、特に乳癌に高い効果が期待される。
【0054】
本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩の投与量は適応症、症状、投与方法等により異なるが、成人1人1日あたり0.01〜800mg程度である。
【実施例】
【0055】
次に実施例として本発明化合物の合成例及び薬理実験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下で室温とは10〜30℃を示す。また、LCMSは島津製作所製LCMS2010Aにて分析し、LCはカラムにInertsil ODS−3(φ2.1×100mm)を用い、溶出液Aに0.1%ギ酸水溶液、溶出液Bにアセトニトリルをそれぞれ用い、溶出液Bの濃度が20(0min)−90%(5.5min)−90%(6.5min)−20%(6.51min)−20%(10min)のグラジエントで流速0.3mL/minで溶出した。保持時間(Rt)はUV検出器までの時間とし、MSはESI(Positive)モードで測定した。
【0056】
実施例1
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成
1−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボキシピペリジンの合成(第1工程)
ニコペチン酸エチル(0.98mol)をTHF(450mL)に溶解し、tert−ブトキシジカルボン酸(1.1mol)を加え室温で1時間攪拌した。反応液を濃縮し残渣をメタノール(600mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(1.27mol)を水(424mL)に溶解した溶液を加え室温で一晩攪拌した。次いで、2M塩酸(600mL)を滴下しpH3にした。析出した沈殿物を濾取し、水およびヘキサンで洗浄し、乾燥させることで目的の化合物を得た。収率は89%であった。
【0057】
1−tert−ブトキシカルボニル−3−(N,O−ジメトチルヒドロキシルアミノカルボニル)ピペリジンの合成(第2工程)
第一工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−3−カルボキシピペリジン(0.59mol)をTHF(675mL)に溶解し、カルボニルジイミダゾール(0.8mol)を加え室温で1時間攪拌した。次いでN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.81mol)およびトリエチルアミン(0.85mol)を無水アセトニトリル(540mL)に溶解した溶液を加え同温で攪拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応液を濃縮した。残渣をクロロホルムに溶解し、水、20%酢酸水溶液、飽和炭酸カリウム水溶液の順に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで目的の化合物を得た。収率は85%であった。
【0058】
1−tert−ブトキシカルボニル−3−アセチルピペリジンの合成(第3工程)
メチルマグネシウムブロミド(1.28mol)のトルエン−THFの混合溶媒(800mL)に、第2工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−3−(N,O−ジメトチルヒドロキシルアミノカルボニル)ピペリジン(0.74mol)をTHF(500mL)に溶解した溶液を0℃で滴下した後、室温まで昇温し攪拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応液を氷水に注加し酢酸(203mL)を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで目的の化合物を得た。収率は90%であった。
【0059】
1−tert−ブトキシカルボニル−3−(3−ジメチルアミノアクロイル)ピペリジンの合成(第4工程)
第3工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−3−アセチルピペリジンをジメチルホルムアミドジメチルアセタール(250mL)に溶解し、10時間加熱還流した。反応液を濃縮し、ジエチルエーテル(100mL)を加えた。沈殿した固体を濾取した。ジエチルエーテルで洗浄後、乾燥することで目的の化合物を得た。収率は71%であった。
【0060】
2−(4−メトキシフェニル)−3−オキソブチロニトリルの合成(第5工程)
金属ナトリウム(0.252mol)をエタノール(10mL)に加えた溶液に、4−メトキシフェニルアセトニトリル(0.229mol)を酢酸エチル(0.229mol)に溶解した溶液を加え、6時間加熱還流した後、反応液を減圧除去した。残渣を水(300mL)に溶解し、酢酸エチル(2×100mL)で洗浄した。水層に酢酸を加えpH6.5〜7にし、沈殿物を濾取し、水で洗浄し乾燥することで目的の化合物を得た。収率は55%であった。
【0061】
3−メチル−4−(4−メトキシフェニル)−5−アミノピラゾールの合成(第6工程)
第5工程で得た2−(4−メトキシフェニル)−3−オキソブチロニトリル(0.149mol)、ヒドラジン一水和物(0.164mol)、酢酸(0.149mol)をエタノール(100mL)に溶解し、3時間加熱還流した。反応液を減圧除去し、得られた生成物は精製を行わず次の工程へ用いた。
【0062】
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成(第7工程)
第4工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−3−(3−ジメチルアミノアクロイル)ピペリジン(2.75mol)、第6工程で得た3−メチル−4−(4−メトキシフェニル)−5−アミノピラゾール(2.75mol)および酢酸(2.75mol)をエタノール(20mL)に溶解し、8時間加熱還流した。反応液を減圧除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン−ヘキサン、1:1)により精製し油状の目的化合物を得た。
1H−NMR(DMSO−d6,ppm):1.35(9H,s)、1.5−2.2(4H,m)、3.0(1H,m)、3.2(1H,m)、3.6(1H,m)、3.8(3H,s)、3.85(1H,m)、4.3(1H,m)、6.9(1H,d,J=5Hz)、7.0(2H,d,J=8.5Hz)、7.6(2H,d,J=8.5Hz)、8.4(1H,d,J=5Hz)
LCMS:Rt=7.870min,m/z:423(M+H)+
【0063】
実施例2
2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成
1−tert−ブトキシカルボニル−4−カルボキシピペリジンの合成(第1工程)
イソニコペチン酸エチル(0.98mol)をTHF(450mL)に溶解し、二炭酸ジ−tert−ブチル(1.1mol)を加え室温で1時間攪拌した。反応液を濃縮し残渣をメタノール(600mL)に溶解し、水酸化ナトリウム(1.27mol)を水(424mL)に溶解した溶液を加え室温で一晩攪拌した。次いで、2M塩酸(600mL)を滴下しpH3にした。沈殿物を濾取し、水およびヘキサンで洗浄し、乾燥させることで目的の化合物を得た。収率は89%であった。
【0064】
1−tert−ブトキシカルボニル−4−(N,O−ジメチルヒドロキシルアミノカルボニル)ピペリジンの合成(第2工程)
第1工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−4−カルボキシピペリジン(0.59mol)をTHF(675mL)に溶解し、カルボニルジイミダゾール(0.8mol)を加え室温で1時間攪拌した。次いでN,O−ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.81mol)およびトリエチルアミン(0.85mol)を無水アセトニトリル(540mL)に溶解した溶液を加え同温で攪拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応液を濃縮した。残渣をクロロホルムに溶解し、水、20%酢酸水溶液、飽和炭酸カリウム水溶液の順に洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで目的の化合物を得た。収率は85%であった。
【0065】
1−tert−ブトキシカルボニル−4−アセチルピペリジンの合成(第3工程)
メチルマグネシウムブロミド(1.28mol)のトルエン−THFの混合溶媒(800mL)に、第2工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−4−(N,O−ジメトチルヒドロキシルアミノカルボニル)ピペリジン(0.74mol)をTHF(500mL)に溶解した溶液を0℃で滴下した後、室温まで昇温し攪拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応液を氷水に注加し酢酸(203mL)を加え、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を5%重炭酸ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで目的の化合物を得た。収率は90%であった。
【0066】
1−tert−ブトキシカルボニル−4−(3−ジメチルアミノアクロイル)ピペリジンの合成(第4工程)
第3工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−4−アセチルピペリジン(0.67mol)をジメチルホルムアミドジメチルアセタール(250mL)に溶解し、2時間加熱還流した。反応液を濃縮し、ジエチルエーテル(100mL)を加えた。沈殿した固体を濾取した。ジエチルエーテルで洗浄後、乾燥することで目的の化合物を得た。収率は71%であった。
【0067】
2−(チオフェン−2−イル)−3−オキソブチロニトリルの合成(第5工程)
チオフェン−2−イルアセトニトリル(0.25mol)およびプロピオン酸エチル(0.2mol)をTHFに溶解し、カリウムtert−ブトキシド(0.3mol)を0℃で加え、室温で2〜4時間攪拌した。反応液を0℃にし、飽和クエン酸水溶液を加えpH5〜7にした。反応液を濃縮し酢酸エチルで抽出し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル−ヘキサン)により精製し目的の化合物を得た。収率は44%であった。
【0068】
3−エチル−4−(チオフェン−2−イル)−5−アミノピラゾールの合成(第6工程)
第5工程で得た2−(チオフェン−2−イル)−3−オキソブチロニトリル(0.05mol)をエタノール(150mL)に溶解し、ヒドラジン一水和物(0.08mol)を加え16時間加熱還流した。反応液を減圧除去し、残渣を酢酸エチル(200mL)および水(200mL)に溶解した。水層に重炭酸ナトリウムを加えpH7〜8にし2層を分離した後、有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで目的の化合物を得た。
【0069】
2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成(第7工程)
第4工程で得た1−tert−ブトキシカルボニル−4−(3−ジメチルアミノアクロイル)ピペリジン(0.124mol)および第6工程で得た3−エチル−4−(チオフェン−2−イル)−5−アミノピラゾール(0.156mol)を酢酸(30mL)に溶解し、4時間加熱還流した。反応液に水(200mL)を加え氷冷した。沈殿物を濾取した後、水で洗浄し、乾燥することで目的化合物を得た。収率は64%であった。
【0070】
2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジンの合成(第8工程)
第7工程で得た2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン(0.08mol)をイソプロパノールに溶解し、塩化水素ガス(0.16mmol)をジオキサンに溶解した溶液を加え室温で4時間攪拌した。反応液を濃縮することで目的化合物を得た。収率は93%であった。
1H−NMR(DMSO−d6,ppm):1.4(3H,t,J=7.5Hz)、2.0(2H,m)、2.4(2H,m)、3.1(2H,q,J=7.5Hz)、3.2(2H,m)、3.4(2H,m)、3.9(1H,m)、6.9(1H,d,J=5Hz)、7.2(1H,dd,J=5.4,4Hz)、7.5(2H,m)、8.5(1H,d,J=5Hz)、9.2(2H,brs)
LCMS:Rt=3.604min,m/z:313(M+H)+
【0071】
実施例3〜20について得られた各々の化合物の理化学的性質を以下に示す。
【0072】
実施例3
2−エチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.663min,m/z:313(M+H)+
【0073】
実施例4
2−tert−ブチル−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルおよび酢酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよびピバリン酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=8.149min,m/z:359(M+H)+
【0074】
実施例5
2−(3−クロロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび3−クロロ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.624min,m/z:313(M+H)+
【0075】
実施例6
2−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび4−メトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.221min,m/z:309(M+H)+
【0076】
実施例7
2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルおよび酢酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび3,4−ジメトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=7.232min,m/z:439(M+H)+
【0077】
実施例8
2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例7の化合物を用い、実施例2の第8工程と同様の方法に準じて得た。
LCMS:Rt=2.722min,m/z:339(M+H)+
【0078】
実施例9
2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび3,4,5−トリメトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.098min,m/z:369(M+H)+
【0079】
実施例10
2−チオフェン−2−イル−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよびテノイル酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=2.511min,m/z:285(M+H)+
【0080】
実施例11
2−メチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第1工程のニコペチン酸エチルの代わりにイソニコペチン酸エチルを用い、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルの代わりにチオフェン−2−イルアセトニトリルを用いて得た。
LCMS:Rt=7.992min,m/z:399(M+H)+
【0081】
実施例12
2−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび4−メトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.140min,m/z:309(M+H)+
【0082】
実施例13
2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第1工程のニコペチン酸エチルの代わりにイソニコペチン酸エチルを用い、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルおよび酢酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび3,4−ジメトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=7.158min,m/z:439(M+H)+
【0083】
実施例14
2−(3,4−ジメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例13の化合物を用い、実施例2の第8工程と同様の方法に準じて得た。
LCMS:Rt=2.506min,m/z:339(M+H)+
【0084】
実施例15
2−(3,4,5−トリメトキシフェニル)−7−(ピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれアセトニトリルおよび3,4,5−トリメトキシ安息香酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=2.968min,m/z:369(M+H)+
【0085】
実施例16
2−エチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルの代わりに4−メトキシフェニルアセトニトリルを用いて得た。
LCMS:Rt=8.063min,m/z:399(M+H)+
【0086】
実施例17
2−メチル−3−(4−フルオロフェニル)−7−(ピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例2の方法に準じて合成し、第1工程のイソニコペチン酸エチルの代わりにニコペチン酸エチルを用い、第5工程のチオフェン−2−イルアセトニトリルおよびプロピオン酸エチルの代わりに、それぞれ4−フルオロフェニルアセトニトリルおよび酢酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.617min,m/z:311(M+H)+
【0087】
実施例18
2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−4−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第1工程のニコペチン酸エチルの代わりにイソニコペチン酸エチルを用いて得た。
LCMS:Rt=3.648min,m/z:337(M+H)+
【0088】
実施例19
2−メチル−3−(チオフェン−2−イル)−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルの代わりにチオフェン−2−イルアセトニトリルを用いて得た。
LCMS:Rt=6.458min,m/z:317(M+H)+
【0089】
実施例20
2−メチル−7−(1−tert−ブトキシカルボニルピペリジン−3−イル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン
実施例1の方法に準じて合成し、第5工程の4−メトキシフェニルアセトニトリルの代わりにアセトニトリルを用いて得た。
LCMS:Rt=7.791min,m/z:423(M+H)+
【0090】
10%牛胎児血清(Moregate社製)を添加したRPMI1640培地(イワキ社製)を用いて、ヒト乳癌細胞T47D(ATCC)、ヒト脳腫瘍細胞U251、ヒト大腸癌細胞HCT116(ATCC)、ヒト卵巣癌細胞OVCAR−3、ヒト前立腺癌細胞PC−3(ATCC)、ヒト肺癌細胞HOP18(NCI)を37℃、5%CO2下で培養した。これらの細胞を96穴プレートへ播種し、1日間培養した後、種々の濃度の本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を添加した。更に3日間培養した後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸水にて抽出し、660nmの吸光度を測定した。
【0091】
増殖阻害活性は、化合物を添加しない細胞の吸光度に対する化合物添加群の吸光度の減少率で表し、濃度−増殖阻害曲線を作成し、IC50値を求めその値を表1に示した。
【0092】
表1
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の細胞増殖阻害作用(1)
IC50(μM)
T47D U251 HCT OVCAR PC−3 HOP18
116 −3
実施例1 1.0 3.5 2.9 8.9 3.8 12.8
【0093】
試験例2
10%牛胎児血清(Moregate社製)を添加したRPMI1640培地(イワキ社製)を用いて、ヒト乳癌細胞T47D、ヒト乳癌細胞MDA−MB−231(ATCC)、ヒト腎癌細胞UO−31(NCI)を5%CO2下で培養した。これらの細胞を96穴プレートへ播種し、1日間培養した後、種々の濃度の本発明のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体を添加した。更に3日間培養した後、細胞をメタノールで固定し、メチレンブルー色素を用いて染色した。染色後色素を0.3%塩酸水にて抽出し、660nmの吸光度を測定した。
【0094】
増殖阻害活性は、化合物を添加しない細胞の吸光度に対する化合物添加群の吸光度の減少率で表し、濃度−増殖阻害曲線を作成し、IC50値を求めその値を表2、表3に示した。
【0095】
表2
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の細胞増殖阻害作用(2)
IC50(μM)
T47D UO−31 MDA−MB−231
実施例1 3.5 *23.7 *22.5
実施例2 4.8 13.0 17.7
実施例3 3.4 13.2 >20
実施例4 11.3 14.3 >20
実施例5 6.1 3.4 18.1
実施例6 19.7 13.1 28.1
実施例7 >20 >20 >20
実施例8 11.6 *45.6 >20
実施例9 *25.3 >20 >20
実施例10 12.2 15.5 16.8
実施例11 14.4 >20 >20
実施例12 16.4 17.8 >20
実施例13 15.8 >20 >20
実施例14 *58.7 >20 >20
実施例15 *28.0 *22.6 >20

*20μMでの阻害率が40%を超えていた場合の外挿値
【0096】
表3
ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体の細胞増殖阻害作用(3)

IC50(μM)
T47D UO−31 MDA−MB−231
実施例1 2.1 *20.8 9.3
実施例16 2.7 >20 16.4
実施例17 4.0 3.6 11.9
実施例18 11.3 16.6 *29.4
実施例19 *43.8 >20 >20
実施例20 2.4 >20 *57.5

*20μMでの阻害率が40%を超えていた場合の外挿値
【0097】
表1、表2、表3から明らかなように、ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体は、哺乳動物の様々な癌細胞に対する細胞増殖阻害作用を示した。中でも乳癌細胞T47Dに高い細胞増殖阻害活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、XおよびYはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルキルチオ基又はシアノ基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基、ニトロ基、カルボキシル基、トリフルオロメチル基、アミノ基およびN−保護アミノ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。nは1〜3の整数を示す。Zは水素原子、低級アシル基、低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ベンジル基、ヘテロアリール基、低級アルコキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、低級アルキルアミノカルボニル基またはアリールアミノカルボニル基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、水酸基、低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基、アリール基および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。)で表されるピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
一般式(1)において、nが2である請求項1に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
一般式(1)において、XおよびYがそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、それぞれの基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子、低級アルキル基、シクロアルキル基、アリール基および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項2に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
一般式(1)において、Zが水素原子、低級アシル基または低級アルコキシカルボニル基を示し、低級アシル基および低級アルコキシカルボニル基は置換されていてもよく、置換される場合には低級アルキル基、アミノ基、カルボキシル基およびアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項3に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
一般式(1)において、Zが水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基である請求項4に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
一般式(2)
【化2】

(式中、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。Z1は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基を示す。)で表される請求項5に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
一般式(2)において、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項6に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
一般式(2)において、X1およびY1はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基又はチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合には塩素原子およびメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項7に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
一般式(3)
【化3】

(式中、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、アリール基又はヘテロアリール基を示し、アリール基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す。Z2は水素原子またはtert−ブトキシカルボニル基を示す。)で表される請求項5記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項10】
一般式(3)において、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合にはハロゲン原子および低級アルコキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項9に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項11】
一般式(3)において、X2およびY2はそれぞれ独立して水素原子、低級アルキル基、フェニル基またはチエニル基を示し、フェニル基は置換されていてもよく、置換される場合には塩素原子およびメトキシ基からなる群から選択される1種以上の置換基で1〜4個置換されることを示す請求項10に記載のピラゾロ[1,5−a]ピリミジン誘導体、その水和物、その溶媒和物または薬理学的に許容される塩。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする哺乳動物の医薬品もしくは疾病の予防または治療剤。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする細胞増殖阻害剤。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物またはその水和物、その溶媒和物、または薬理学的に許容される塩を有効成分とする抗癌剤。
【請求項15】
癌が乳癌である請求項14の抗癌剤。

【公開番号】特開2007−332061(P2007−332061A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164149(P2006−164149)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】