説明

新規フッ素樹脂水性分散液

【課題】 本願発明は、フッ素系界面活性剤を含有せず各種の基材に効果的にコーティングすることが可能なフッ素樹脂水性分散液、およびそれを有効成分として含むコーティング塗料剤を提供するものである。
【解決手段】 フッ素樹脂水性分散液であって、0.1%水溶液の室温での動的表面張力が、最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるアセチレンジオール系界面活性剤を含有するフッ素樹脂水性分散液、およびそれを有効成分として含むコーティング塗料剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規フッ素樹脂水性分散液に関する。詳しくは、フッ素系界面活性剤を含有しない新規フッ素樹脂水性分散液、および、それを有効成分とする建築用膜材、プリント基板等のコーティングに用いるコーティング塗料剤に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フッ素樹脂水性分散液は、パーフルオロオクタン酸アンモニウム(以下、APFOと記す)等のフッ素系界面活性剤を用いた乳化重合によって製造される。APFO等のフッ素系界面活性剤(以下、フッ素系界面活性剤と記す)は難分解性であるため、環境保護面からフッ素樹脂水性分散液中の含有量が少ないことが望まれている。
そこで、フッ素樹脂水性分散液から、フッ素系界面活性剤を除去するための手法が提案されている。例えば、特許第3820369号に記載されているイオン交換樹脂を用いる方法がある。
【0003】
【特許文献1】特許第3820369号
【特許文献2】特開平7−188087号公報
【特許文献3】特開2003−113350号公報
【特許文献4】特表2006−516673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フッ素系界面活性剤を除去したフッ素樹脂水性分散液は、表面張力を低減する作用を有するフッ素系界面活性剤を含有しないため、その表面張力は、フッ素系界面活性剤を除去していないフッ素樹脂水性分散液よりも大きくなる。また、フッ素系界面活性剤は、静的表面張力だけでなく、動的表面張力を低減することにも優れているため、フッ素系界面活性剤を除去したフッ素樹脂水性分散液を各種の基材にコーティングすると、はじきが生じて塗膜がきれいに形成できなくなる傾向があり、コーティング塗料剤としては好ましいものではない。特に、重ねてコーティングする場合には、形成するフッ素樹脂塗膜の臨界表面張力が非常に小さいために、重ね塗りに困難を来たすという問題があった。
本発明者は、上記の問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
本発明は、フッ素系界面活性剤を含有することなく、各種の基材に効果的にコーティングすることが可能なフッ素樹脂水性分散液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、0.1%水溶液の室温での動的表面張力が、最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるアセチレンジオール系界面活性剤を含有するフッ素樹脂水性分散液を用いることによって、各種の基材に効果的にコーティングすることが可能であることを見出したことに基づくものである。
【0006】
本発明は、0.1%水溶液の室温での動的表面張力が最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるアセチレンジオール系界面活性剤を含有することを特徴とするフッ素樹脂水性分散液を提供する。
【0007】
前記水性分散液が、さらにシリコーン系界面活性剤を含有する態様は、本発明の好ましい態様である。
【0008】
前記アセチレンジオール系界面活性剤が一般式(I)で表される化合物、またはそのポリアルコキシレートである一般式(II)で表される化合物である、前記した水性分散液は本発明の好ましい態様である。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

(式中、RおよびRは、各々独立して、炭素数3〜9のアルキル基を表し、RおよびRは、各々独立して、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、mおよびnは整数であり、mとnの合計は2〜50を表す。)
【0011】
本発明はまた、前記した水性分散液を含むコーティング塗料剤を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、フッ素系界面活性剤を含有することなく、各種の基材に効果的にコーティングすることが可能なフッ素樹脂水性分散液が提供される。
また、本発明により各種の基材にコーティングできるコーティング塗料剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のフッ素樹脂水性分散液は、0.1%水溶液の室温での動的表面張力が、最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるアセチレンジオール系界面活性剤を含有することを特徴とするものである。
【0014】
フッ素樹脂とは、フッ素を含有する高分子化合物であり、例えば、テトラフルオロエチレン重合体(PTFE:以下、PTFEと記す)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA:以下、PFAと記す)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。中でもフッ素樹脂としては、PTFE、PFA、FEPが好ましい。
【0015】
フッ素樹脂は、例えば、フッ素含有モノマー(例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、パーフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ふっ化ビニリデン(VDF)、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、パーフルオロブチルビニルエーテル(PBVE)、クロロトリフルオロエチレン等)を、公知の通常の製造方法にて、水中で乳化重合に付すことによって得ることができる。
【0016】
本発明において、フッ素樹脂水性分散液とは、フッ素樹脂の微粒子が分散した水性分散液である。上述の乳化重合で得られたフッ素樹脂は、乳化重合の際に用いる界面活性剤によって、安定化された微粒子が分散した分散液(ディスパージョン)として得られるので、このように安定化されたフッ素樹脂の微粒子が分散した水性分散液は、本発明のフッ素樹脂水性分散液として好適なものである。
上述の乳化重合の際に用いる界面活性剤としては、例えば、APFOが挙げられる。
【0017】
界面活性剤溶液では界面活性剤が表面に吸着されることによって、その表面張力が低下する。界面活性剤分子が表面に吸着される過程では、表面張力は徐々に低下し、完全に吸着すると表面張力は一定となる。このとき、吸着進行中の変化している表面張力を動的表面張力、吸着完了後の変化しない表面張力を静的表面張力という。
本発明において、動的表面張力とは、上述の動的表面張力のことである。
【0018】
液体が固体表面に濡れるためには、液体の表面張力が固体の表面張力より小さくなければならない。コーティング時、特に高速コーティングにおいては、新たな表面が次々に生成する。そこで、良好な塗膜を得るためには、常に塗料である液体の表面張力を低く保つ必要がある。このとき、動的表面張力の大きい、すなわち表面張力を下げるのに時間のかかる(界面活性剤の表面への吸着に時間のかかる)界面活性剤では、新たに生成した表面への吸着が追いつかなくなる。
従って、コーティング時に欠陥のない塗膜を得るためには、静的表面張力だけではなく、動的表面張力をも小さくする必要がある。
【0019】
本発明において、動的表面張力は最大泡圧法によって測定される。最大泡圧法は、キャピラリー先端から、窒素やエアーの気泡を液中に発生させ、その気泡内部の最大圧力から液の動的表面張力を求める方法である。本発明においては、動的表面張力を測定する機器として、「シータt60」(英弘精機株式会社製)を用いた。
【0020】
本発明において用いられるアセチレンジオール系界面活性剤の好ましい例は、下記一般式(I)で表される化合物、またはである一般式(II)で表されるそのポリアルコキシレートであって、0.1%水溶液の室温での動的表面張力が、最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるものである。
【0021】
【化3】

【0022】
式中、RおよびRは、各々独立して、炭素数3〜9のアルキル基である。炭素数3〜9のアルキル基としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基、ペンチル基、第三級ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、3,5−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基などが挙げられる。より好ましいのは、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二級ブチル基、第三級ブチル基などの炭素数3〜4のアルキル基である。
【0023】
【化4】

【0024】
式中、RおよびRは、上記と同じ意味である。
およびRは、各々独立して、炭素数1〜4のアルキレン基である。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などを挙げることができるが、好ましくは、メチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基であり、さらに好ましくはエチレン基である。
mおよびnは整数であり、mとnの合計は2〜50であり、好ましくは、4〜10である。
【0025】
一般式(I)で表される化合物、または一般式(II)で表されるそのポリアルコキシレートであるアセチレンジオール系界面活性剤のさらに好ましいものとしては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、またはそのエトキシレートが挙げられる。
【0026】
本発明には、アセチレンジオール系界面活性剤として、市販のアセチレンジオール系界面活性剤をそのまま用いることができる。そのような市販のアセチレンジオール系界面活性剤としては、例えば、「サーフィノール104シリーズ」、「サーフィノール420」、サーフィノール440」、サーフィノール465」、「サーフィノール485」、「サーフィノールSE」、サーフィノールDFシリーズ」、「サーフィノールCTシリーズ」、「サーフィノール61」、「ダイノール604」、「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンPD」、「オルフィンEXPシリーズ」(以上、日信化学工業株式会社製)、
「アセチレノールE00」、「アセチレノールE00G」、「アセチレノールE00P」、「アセチレノールE00H」、「アセチレノールE13T」、「アセチレノールE40」、「アセチレノールE70」、「アセチレノールE100」、「アセチレノールE300」(以上、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
また、本発明には、アセチレンジオール系界面活性剤のポリアルコキシレートとして、市販のアセチレンジオール系界面活性剤のポリアルコキシレートをそのまま用いることができる。そのような市販のアセチレンジオール系界面活性剤のポリアルコキシレートとしては、例えば、「サーフィノール420」(日信化学工業株式会社製)、「サーフィノール440」(日信化学工業株式会社製)、「アセチレノールE13T」(川研ファインケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0028】
フッ素樹脂水性分散液に加えるアセチレンジオール系界面活性剤の量は、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.05〜10重量%であり、好ましくは、0.1〜5.0重量%、さらに好ましくは、0.1〜1.0重量%である。
アセチレンジオール系界面活性剤の量が少なすぎる場合には、十分に表面張力を下げることが難しく、また、多すぎる場合には、粘度が上昇したり、フッ素樹脂粒子同士の凝集を引き起こしたりすることがあり、コーティング塗料剤としては好ましいものではない。
【0029】
本発明において用いられるシリコーン系界面活性剤とは、疎水基がシリコーンである界面活性剤である。
シリコーン系界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシアルキレン変性ポリジアルキルシロキサンを挙げることができる。さらに好ましい例として、疎水基がポリジメチルシロキサン基である下記構造式(III)で表されるポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。
【0030】
【化5】

【0031】
式中、Rは、炭素数1〜4のアルキレン基である。炭素数1〜4のアルキレン基の好ましい例は、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等であり、さらに好ましくは、メチレン基、エチレン基、またはトリメチレン基である。
pは、少なくとも1の整数であり、好ましくは、1〜3の整数である、
qは、少なくとも3の整数であり、好ましくは、5〜9の整数であり、また
rは、少なくとも2の整数であり、好ましくは、2〜5の整数である。
【0032】
本発明には、シリコーン系界面活性剤として、市販のシリコーン系界面活性剤をそのまま用いることができる。そのような市販のシリコーン系界面活性剤としては、例えば、「ポリフローKL」(協栄社化学株式会社製)、「FZ-77」(東レ・ダウコーニング株式会社製)、「BYK-333」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0033】
フッ素樹脂水性分散液に加えるシリコーン系界面活性剤の量は、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.05〜30重量%であり、好ましくは、0.1〜10重量%、さらに好ましくは、0.1〜3.0重量%ある。
【0034】
本発明において、コーティング塗料剤とは基材にコーティングをするための塗料であり、その基材としては、好ましくは、ガラスクロス、PTFEフィルム、および、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、ABS樹脂、ケブラー(登録商標)等の各種プラスチックフィルム、鉄、銅、アルミニウム等の金属板、各種繊維の織物、不織布、紙等が挙げられる。
【0035】
本発明の水性分散液は、通常用いられている方法、例えば、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、ブレードコーティング、エアドクターコーティング等の方法によって、基材にコーティングすることができる。
【0036】
本発明の水性分散液は、下記の前工程1〜3の後、工程1または2によって製造することができる。
前工程1:公知の通常の製造方法によって製造されたフッ素樹脂水性分散液(樹脂固形分30重量%)に、攪拌下、常温または加温下(〜60℃)にて、非イオン性界面活性剤(1〜20重量%)を加え、安定化する。
前工程2:前工程1で安定化した水性分散液を、上記特許文献1と同様の方法によって、脱フッ素系界面活性剤処理を行う。
前工程3:前工程2で得られた水性分散液を、相分離法により60重量%まで濃縮する。
工程1:前工程2で得られた水性分散液(60重量%)に、アセチレンジオール系界面活性剤(0.05〜10重量%)を加え、常温または加温下(〜70℃)で、1〜60分間、攪拌する。
工程2:前工程2で得られた水性分散液(60重量%)に、シリコーン系界面活性剤(0.05〜30重量%)を加え、常温または加温下(〜70℃)で攪拌した後、アセチレンジオール系界面活性剤(0.05〜10重量%)を加え、常温または加温下(〜70℃)で、1〜60分間、攪拌する。
【0037】
上記の前工程1で使用される非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアルコキシレート、シリコーン系界面活性剤(変性シリコーン)、高分子系界面活性剤が挙げられ、さらに好ましくは、下記一般式(IV)で表されるアルキルエトキシレートが挙げられる。
−O−(CH−CH−O)−H (IV)
(式中、Rは、炭素数8〜20のアルキル基を表し、nは5〜20の整数を表す。)
【0038】
炭素数8〜20のアルキル基の例としては、例えば、ヘプチル基、オクチル基、3,5−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基などを挙げることができる。
【0039】
また、本発明には、市販の非イオン性界面活性剤をそのまま用いることができる。そのような市販の非イオン性界面活性剤としては、例えば、「レオコールTD」(ライオン株式会社製)、「Tergitol TMN-10」(Dow Chemical社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、製造例、試験例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
(製造例1)
PFA固形分60%、平均粒径0.23μmの水性分散体であって、PFA固形分に対して4.5重量%の非イオン性界面活性剤で安定化した後、上記特許文献1と同様な方法でフッ素系界面活性剤を取り除いたフッ素樹脂水性分散液を調製した。
【0042】
(製造例2)
PFA固形分60%、平均粒径0.23μmの水性分散体であって、PFA固形分に対して4.5重量%の非イオン性界面活性剤で安定化し、フッ素系界面活性剤の除去は行わないフッ素樹脂水性分散液を調製した。
【0043】
(実施例1)
製造例1で調製したフッ素樹脂水性分散液に、動的表面張力が最大泡圧法で6Hz時35.1mN/mであるアセチレンジオール系界面活性剤「サーフィノール420」(日信化学工業株式会社製)を、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.3重量%添加し、50℃温水浴中で5分間攪拌して、本発明のフッ素樹脂水性分散液を得た。
【0044】
(実施例2)
製造例1で調製したフッ素樹脂水性分散液に、シリコーン系界面活性剤である「ポリフローKL270」(協栄社化学株式会社製)をフッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.6重量%添加し、50℃温水浴中で5分間攪拌した。次いで、動的表面張力が最大泡圧法で6Hz時35.1mN/mであるアセチレンジオール系界面活性剤「サーフィノール420」(日信化学工業株式会社製)を、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.3重量%添加し、50℃温水浴中で5分間攪拌して、本発明のフッ素樹脂水性分散液を得た。
【0045】
(実施例3)
製造例2で調製したフッ素樹脂水性分散液に、動的表面張力が最大泡圧法で6Hz時35.1mN/mであるアセチレンジオール系界面活性剤「サーフィノール420」(日信化学工業株式会社製)を、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.3重量%添加し、50℃温水浴中で5分間攪拌して、本発明のフッ素樹脂水性分散液を得た。
【0046】
(比較例1)
製造例1と同様に調製して、フッ素樹脂水性分散液を得た。
【0047】
(比較例2)
製造例1で調製したフッ素樹脂水性分散液に、シリコーン系界面活性剤である「ポリフローKL270」(協栄社化学株式会社製)を、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.6重量%添加し、50℃温水浴中で5分間攪拌して、フッ素樹脂水性分散液を得た。
【0048】
(比較例3)
製造例2と同様に調製して、フッ素樹脂水性分散液を得た。
【0049】
(評価試験)
実施例1および2、ならびに比較例1および2で得られたフッ素樹脂水性分散液について、下記のコーティング試験を行い、結果を表1に示した。
(1)コーティング試験
以下の1〜4の工程の試験方法によってコーティング特性を評価した。
1.5×10cmにカットしたPTFEスカイブドシートをアセトンに浸漬した後、布ウェスで拭いて脱脂した。
2.PTFEスカイブドシートをフッ素樹脂水性分散液に浸漬した。
3.フッ素樹脂水性分散液中からPTFEスカイブドシートをすばやく引き上げてクリップにはさみ、垂直に吊した。
4.1分後、塗面の状態を目視で観察した。
【0050】
(2)試験結果
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のフッ素樹脂水性分散液は、フッ素系界面活性剤を含有することなく、各種の基材に効果的にコーティングすることが可能である。
本発明により提供される水性分散液を含むコーティング塗料剤は、ガラスクロス、PTFEフィルム、および、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニル、ABS樹脂、ケブラー(登録商標)等の各種プラスチックフィルム、鉄、銅、アルミニウム等の金属板、各種繊維の織物、不織布、紙などに、通常使用されている方法によって好適にコーティングすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1%水溶液の室温での動的表面張力が最大泡圧法で6Hz時40mN/m以下であるアセチレンジオール系界面活性剤を含有することを特徴とするフッ素樹脂水性分散液。
【請求項2】
さらに、シリコーン系界面活性剤を含有する請求項1に記載の水性分散液。
【請求項3】
前記アセチレンジオール系界面活性剤が、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.05〜10重量%である請求項1または2に記載の水性分散液。
【請求項4】
前記シリコーン系界面活性剤が、フッ素樹脂水性分散液100重量%に対して、0.05〜30重量%である請求項2または3に記載の水性分散液。
【請求項5】
前記アセチレンジオール系界面活性剤が、一般式(I)で表される化合物、または一般式(II)で表されるそのポリアルコキシレートである請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散液。
【化1】

【化2】

(式中、RおよびRは、各々、独立して、炭素数3〜9のアルキル基を表し、RおよびRは、各々独立して、炭素数1〜4のアルキレン基を表し、mおよびnは整数であり、mとnの合計は2〜50を表す。)
【請求項6】
前記アセチレンジオール系界面活性剤が、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、またはそのエトキシレートである請求項1〜4のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項7】
前記シリコーン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレン変性ポリジアルキルシロキサンである請求項2〜6のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項8】
前記シリコーン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンである請求項2〜6のいずれかに記載の水性分散液。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の水性分散液を含むコーティング塗料剤。

【公開番号】特開2009−161616(P2009−161616A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340501(P2007−340501)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000174851)三井・デュポンフロロケミカル株式会社 (59)
【Fターム(参考)】