説明

新規リン酸化CDC25Bホスファターゼ配列、その配列に対する抗体並びにその利用

本発明は少なくとも10アミノ酸残基断片を含む、あるいはそれにより構成される、次の配列番号1:DRKMEVEELSPLALGRFSL、のペプチドに関するもので、10番目の位置のセリン残基はリン酸化されているのを特徴とし、前記断片は前記リン酸化セリン残基含有断片である。また、本発明は前記定義されたペプチド配列を同定できるポリクローナル又はモノクローナル抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明の課題は、新規リン酸化CDC25CBホスファターゼ配列及びこれら配列に対するポリクローナル又はモノクローナル抗体である。また、本発明の課題は、特に、細胞有糸分裂阻害化合物(すなわち、有糸分裂の開始又はその進行を阻害する化合物)をスクリーニングする試験管内での(in vitro)方法の実施のためのこれら新規リン酸化配列の使用である。
【0002】
細胞分裂の制御機構には多数の因子が関与し、その活性はキナーゼ及びホスファターゼが関与するリン酸化及び脱リン酸化反応によって制御される。多くの癌において、これらの制御機構の解除が確認されている。それらの同定及び性質が、今や癌の診断及び治療に対する新しい展望を開きつつある。
【0003】
CDC25Bは細胞周期を制御するホスファターゼであり、有糸分裂の開始・継続の制御に必須である。これは、哺乳動物において、異なる遺伝子(CDC25A、B、及びC)によりコードされる3つのメンバーで構成されるファミリーに属する。CDC25Bタンパク質は、細胞周期のG2期の終わりに発現し、活性化される(Baldin et al., 1997; Gabrielli et al., 1996)。その細胞内での局在は、NES及びNLS配列(Davezac et al., 2000)、並びに、14−3−3タンパク質との相互作用(Mils et al., 2000; Forrest et al., 2001)により制御されている。CDC25Bは、有糸分裂初期反応の“スターター”として作用できることが示唆されている(Nilsson et al., 2000)。これは、中心体が核転座を起こす前の段階におけるCDC2/サイクリンB複合体の初期の活性化で役割を果たしている可能性がある(Kumagai et al., 1992; Hoffmann et al., 1993)。細胞分裂の進行に必要な構造上並びに生化学的な変化を起こさせるために、CDC25BがCDK/サイクリン複合体を活性化する。その活性は、その発現の変化、制御にかかわる相手との結合、及びリン酸化反応により制御される。従って、シグナル・カスケードにより有糸分裂開始に関与するCDC25Bの触媒活性が変化する。
【0004】
本発明の目的の一つは、新規のリン酸化CDC25Bホスファターゼ配列と、前記リン酸化CDC25Bホスファターゼのリン酸化エピトープに対する新規の抗体とを提供することである。
【0005】
本発明の目的の一つは、有糸細胞分裂(特に、有糸分裂開始)を阻害する化合物をスクリーニングするin vitro方法を提供することであり、前記阻害化合物は、特に、抗癌療法の枠組み(framework)での目的で使用されることができる。
【0006】
本発明は、以下の配列番号1の配列;
DRKMEVEELSPLALGRFSL(配列番号1)
に由来するアミノ酸少なくとも約10個の断片を含むか、又はその断片により構成され、10位のセリン残基はリン酸化されており、前記断片は前記リン酸化セリン残基を含むことを特徴とするペプチド配列に関する。
【0007】
用語「リン酸化残基」は、リン酸基を担持するアミノ酸を意味する。
【0008】
有利な実施態様によると、本発明は、以下の配列番号2の配列;
MEVEELSPLALGR(配列番号2)
の配列を含むか、又はそれにより構成され、前記の7位のセリン残基はリン酸化されていることを特徴とする、前記定義されたペプチド配列に関する。
【0009】
配列番号2の配列は前記配列番号1の配列の一断片に相当する。より正確には、それは配列番号1の4位のアミノ酸から16位のアミノ酸までに限定された断片である。
【0010】
本発明は、以下のいずれかの1つの配列;
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B1であって、前記235位のセリン残基がリン酸化されている配列番号3の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記208位のセリン残基がリン酸化されている配列番号4の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記249位のセリン残基がリン酸化されている配列番号5の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記259位のセリン残基がリン酸化されている配列番号6の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記284位のセリン残基がリン酸化されている配列番号7の配列、
を含むか、又はそれにより構成されることを特徴とする、前記定義されたペプチド配列に関する。
【0011】
本発明は、また、前記定義されたペプチド配列を認識することのできるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体(但し、前記抗体は、249位のセリン残基がリン酸化されていない配列番号8の配列は認識しない)にも関する。
【0012】
配列番号8の配列は、非リン酸化CDC25Bタンパク質配列に相当する。
【0013】
本発明の有利なポリクローナル抗体は、前記定義された配列番号2の配列を認識することを特徴とする。但し、前記抗体は249位のセリン残基がリン酸化されていない配列番号8の配列は認識しない。
【0014】
配列番号2のリン酸化エピトープに対する前記抗体は、ウサギを前記エピトープで免疫することより製造される。
【0015】
より正確には、前記エピトープは、担体(carrier)タンパク質(例えば、ヘモシアニン、BSA又は卵白アルブミン)へ共有結合で結合している。ウサギを、次に、3ヶ月間にわたり免疫し(合計4回の注射)、最終回の瀉血で約50mlの血清を回収する。次に、血清はリン酸化ペプチドアフィニティーカラム、次いで、非−リン酸化ペプチドのアフィニティーカラムを用いて二重に精製される。
【0016】
本発明は前記定義されたモノクローナル抗体、特には、前記定義された配列番号2のペプチド配列に対するモノクローナル抗体の調製する方法に関し、前記抗体は上に定義されたペプチド配列に対する抗体を分泌するハイブリドーマの選択により生じるものであるか、あるいは、抗体の全体又は部分をコードする相補的DNAの発現バンク(expression bank)から選択されることで生じることを特徴とする。
【0017】
本発明は、以下の工程;
−ハイブリドーマを得るために、前記定義されたペプチド配列の注射による免疫動物、特にヒトでないあらかじめ免疫した動物のミエローマと、動物、特にヒトでない動物、の脾臓細胞とを融合する工程、
−この様にして得られたハイブリドーマを培養する工程、
−前記工程において得られ、そして前記定義されたペプチド配列に対する抗体を分泌するハイブリドーマから選択されたハイブリドーマのクローニングによる回収及び精製の工程、
を含むことを特徴とする、特に前記定義された配列番号2のペプチド配列に対する、前記定義されたモノクローナル抗体の製造方法に関する。
【0018】
免疫段階に使用される動物は、特に、マウスである。
【0019】
融合用に使用されるミエローマは、特に、マウス由来のものである。
【0020】
融合用に使用される脾臓細胞は、ミエローマが由来したのと同じ動物種由来のもの、すなわち、特にマウス由来のものである。
【0021】
ハイブリドーマは、配列番号2のペプチド配列に対する抗体を分泌するものであって、ELISA法で免疫に用いたリン酸化ペプチドを認識できるが非リン酸化ペプチドを認識できない抗体を産生していることに基づき選択される。
【0022】
本発明は前記定義されたモノクローナル抗体、特には前記定義した配列番号2のペプチド配列に対するモノクローナル抗体の製造方法であって、抗体の全体又は一部をコードするcDNAの発現バンクから選択する工程を含むことを特徴とする製造方法に関する。
【0023】
前記抗体は、配列番号2のペプチド配列に対し、ELISA法において、タンパク質転移(ウエスタンブロット)により、又は任意の他の適当な方法により、免疫に用いられたリン酸化ペプチドを認識するが、非リン酸化ペプチドは認識しない能力に基づき選択される。
【0024】
本発明は、また、前記定義されたペプチド配列、又は前記定義された抗体を、薬剤学的に許容可能な媒体と組み合わせて、活性成分として含むことを特徴とする医薬組成物に関する。
【0025】
本発明は、また、過剰増殖性疾患、例えば癌の治療目的の薬剤を製造するための、前記定義されたペプチド配列、又は前記定義された抗体の使用に関する。
【0026】
本発明は、また、培養細胞からの、又は健常若しくは癌組織の切片からの、前記定義されたペプチド配列を発現する有糸分裂細胞のin vitro検出用方法を実施するための、前記定義された抗体の使用に関する。
【0027】
培養細胞を、抗体の存在下で、固定し、細胞膜を透過性にし、そして、インキュベーションする。抗体の可視化は、蛍光色素を担持する二次抗体(次に、蛍光顕微鏡を用いて観察を行う)か、あるいは、可視光線下で、基質の加水分解及び発色反応の生産を観察可能にすることのできる分子かを用いて実施する。組織切片についても同様の実験方策を用いることができる。
【0028】
また、本発明は、培養細胞におけるか、又は健常若しくは癌組織の切片、特に乳癌、肺癌あるいは膵臓癌組織の切片における、前記定義されたタンパク質配列の過剰発現のin vitro検出用方法を実施するための、前期適宜された抗体の使用に関する。
【0029】
CDC25Bの過剰発現の実証は、有糸分裂細胞の検出方法と同じ前記の実験方策に基づく。タンパク質転移(ウェスタン・ブロット)か、又は健常細胞若しくは癌細胞から調製される全タンパク質抽出物について目的のタンパク質を定量できる任意のその他方法かによって行うことができる。
【0030】
また、本発明は、有糸分裂阻害化合物(すなわち、有糸分裂の開始又はその進行を阻害する化合物)のin vitroスクリーニング方法であって、前記阻害化合物は、特に抗癌療法のフレームワークで使用されることができ、
−前記化合物と細胞を一緒にすること、及び
−適当な方法、特にELISA、タンパク質転移(ウェスタン・ブロット)、又は間接免疫蛍光技術を用いることによって請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列を認識することのできる抗体である、前記定義された抗体との結合の欠如を検出することによる阻害化合物の選択、
を含むことを特徴とする前記スクリーニング方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1A、1B、1C、1D及び1Eは、蛍光抗体法による、異なる細胞周期段階での249位セリンリン酸化型CDC25Bの検出像を示す。図1Aは間期に相当し;図1Bは前期に相当し;1Cは中期に相当し;図1Dは後期/終期に相当し;そして、図1EはG1期に相当する。
【図2】タンパク質転移(ウェスタン・ブロット)による、249位セリンリン酸化型CDC25Bの検出を示す図である。カラム1は、精製CDC25Bタンパク質のみに相当し;カラム2は、リン酸化ペプチドを用いて精製したCDC25Bタンパク質に相当し;カラム3は、非−リン酸化ペプチドを用いて精製したCDC25Bタンパク質に相当し;そして、カラム4は、ラムダホスファターゼ処理CDC25Bに相当する。
【方法と結果】
【0032】
《CDC25Bホスファターゼは249位セリンがリン酸化されている》
CDC25Bの質量分析による解析で、249位セリン残基のリン酸化を検出することができた。
その後CDC25Bタンパク質はトリプシンにより分解された。MS/MS質量分析による解析の結果は、1残基リン酸化ペプチドの存在を示した。このペプチドの断片化により、リン酸基が249位のセリンに存在することを同定した。
【0033】
《249位アミノ酸セリンがリン酸化されたCDC25Bタンパク質に対する抗体の製造》
リン酸化セリンが(p)で示されている、MEVEELS(p)PLALGRの配列を持つペプチド(配列番号2)をウサギの免疫に使用した。動物を安楽死させた後、血清を二段階のクロマトグラフィーで精製した:第一段階は特異的抗体を保持するためにリン酸化ペプチドカラムを用い、次に第二段階として、同一配列よりなる非リン酸化MEVEELSPLALGR配列(配列番号9)を持つペプチドカラムを用い、リン酸化された特異的抗体を流出画分として精製した。抗体によるリン酸化ペプチドの認識を、ELISA法により評価した。以後、これらの抗体を抗−S249Pと称する。
【0034】
《抗−S249P抗体は有糸分裂細胞のCDC25Bタンパク質を認識する》
A)HeLa細胞を固定し使用して、これら抗体を用いた免疫蛍光法による分析を実施した。核の位置を確認するために、細胞を、4’−6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した。図1に示す像は、多数の細胞で実施した観察の中の代表例である。これらは、249位のセリンがリン酸化されたCDC25Bタンパク質(配列番号2)が有糸分裂中の細胞、特に紡錘体極のレベルで、非常に大量に蓄積していることを示している。免疫に用いたリン酸化ペプチドによる競合テストではこの像は消失するが、非リン酸化ペプチド(MEVEELSPLALGR)、又は、関連性の無いリン酸化ペプチドでは像の消失は認められない。
B)CDC25Bタンパク質を、培養細胞より精製した後で、249位セリンリン酸化CDC25Bタンパク質に対する抗体を用いたタンパク質転移(ウェスタン・ブロット)により解析した。図2に示すように、CDC25Bタンパク質はin vivoで同位にリン酸化されている。ラムダホスファターゼ処理によりこのリン酸化は消失する。免疫に使用したリン酸化ペプチドと競合させると検出できなくなる。
これらの観察は、有糸分裂細胞におけるリン酸化CDC25Bの検出にはこれら抗体が有効であることを示す。
【応用分野】
【0035】
《A−有糸分裂細胞の指標》
リン酸化型CDC25Bのリン酸化の検出により、培養細胞又は癌組織切片での分裂細胞の存在の検出が可能になる。
249位セリンのリン酸化型CDC25Bは有糸分裂細胞に存在する。それは、前期では核に局在し、次に、後期における赤道への侵入に先立って、中期の2つの有糸分裂半紡錘体に濃縮し、そして、有糸分裂の終了とともに消失する。
前記リン酸化型CDC25Bに対するポリクローナル又はモノクローナル抗体により、CDC25Bホスファターゼを発現している任意の有糸分裂細胞の検出も可能になる。
前記有糸分裂細胞の検出は、間接的免疫蛍光又は免疫化学的技術を用い、固定した培養細胞あるいは健常又は癌の組織切片について実施することができる。
従って、前記方法による有糸分裂細胞の検出は、細胞生物学者や解剖病理学者が自由に使いこなすことのできる新規な道具である。
【0036】
《B−治療方針決定の補助:》
癌におけるCDC25Bの発現レベルを考慮に入れることは、治療決定の際の選択(CDC25Bタンパク質を標的とする薬剤使用の可否)で大きな利益をもたらす。249位セリンのリン酸化型CDC25Bの検出は、この応用にあたり大きな利益をもたらす。
CDC25Bの発現は組織により異なる。癌(乳癌、肺癌、膵臓癌など)ではこのタンパク質が過剰に発現していることが示されている。膵臓癌の場合には、癌の成長はCDC25Bの発現と機能に依存している(Guo et al., 2004)。
CDC25Bを標的とすることのできる新しい薬剤が最近業界により開発されている(Prevost et al., 2003)。従って、前記治療を利用するかどうかを決定するために、CDC25Bホスファターゼの発現レベルを考慮することが必須となっている。
249位セリンのリン酸化型CDC25Bに対する抗体を利用することにより、有糸分裂での(そしておそらく活性化された)前記ホスファターゼの形態を可視化することができる。生検や外科措置の後に採取された組織断片でのこのタンパク質の検出(免疫細胞化学による)を実施することは、CDC25Bが過剰発現している場合に、CDC25ホスファターゼ阻害剤の使用を推奨するといった、場合により提供される治療の選択における基本的な情報を提供する。
【0037】
《C−ハイスループット・スクリーニングのセットアップ》
細胞周期阻害分子の研究のために、有糸分裂開始阻害を評価する目的で本発明による抗体を利用することができる。
現在、細胞周期の進行を阻害する分子に関する活発な研究が、多くの薬学関連のグループで行われている。
有糸分裂細胞の指標を明らかにすることは、有糸分裂の開始及びその進行の阻害能力をもつ分子の、簡単なそしてハイスループット・スクリーニングによる選択手段を提供することを意味する。
リン酸化型CDC25Bに対する抗体はこの需要に対応する。従って、これらの抗体は、免疫細胞化学、フロー・サイトメトリー、又は、リン酸化CDC25Bタンパク質の検出を可能にする任意の他の適切な方法にも使用可能である。
《参照文献》
- Baldin, V., Cans, C., Superti−Furga, G. & Ducommun, B (1997) Alternative splicing of the human CDC25B tyrosine phosphatase. Possible implications for growth control? Oncogene, 14, 2485−2495,
- Davezac, N. et al. (2000) Regulation of CDC25B phosphatases subcellular localization, Oncogene, 19, 2179−85,
- Forrest A. & Gabrielli, B. (2001) Cdc25B activity is regulated by 14−3−3, Oncogene, 20, 4393−401,
- Gabrielli, B. G. et al. (1996) Cytoplasmic accumulation of CDC25B phosphatase in mitosis triggers centrosomal microtubule nucleation in HeLa cells, J. Cell. Science, 109, 1081−1093,
- Guo et al. (2004) Expression and functional significance of CDC25B in human pancreatic ductal adenocarcinoma, Oncogene, 23, 71−81,
- Hoffmann, I., Clarke, P., Marcote, M. J., Karsenti, E. & Draetta, G. (1993) Phosphorylation and activation of human cdc25−C by cdc2−cyclin B and its involvement in the self amplification of MPF at mitosis, EMBO J, 12, 53−63,
- Kumagai, A. & Dunphy, W. (1992) Regulation of the cdc25 protein during the cell cycle in Xenopus extracts, Cell, 70, 139−151,
- Mils, V. et al. (2000) Specific interaction between 14.3.3 isoforms and the human CDC25B phosphatase, Oncogene, 19, 1257−1265,
- Nilsson, I. & Hoffmann, I. (2000) Cell cycle regulation by the Cdc25 phosphatase family, Prog Cell Cycle Res, 4, 107−14,
- Prevost, G. et al. (2003) Inhibitors of the CDC25 phosphatases in “Progress in cell cycle research” Ed. Meijer, L., Jezequel, A., Roberge, M., vol. 5, 225−234.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の配列番号1の配列;
DRKMEVEELSPLALGRFSL(配列番号1)
に由来するアミノ酸少なくとも約10個の断片を含むか、又はその断片により構成され、10位のセリン残基はリン酸化されており、前記断片は前記リン酸化セリン残基を含むことを特徴とするペプチド配列。
【請求項2】
以下の配列番号2の配列;
MEVEELSPLALGR(配列番号2)
の配列を含むか、又はそれにより構成され、前記の7位のセリン残基はリン酸化されていることを特徴とする、請求項1に記載のペプチド配列。
【請求項3】
以下のいずれかの1つの配列;
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B1であって、前記235位のセリン残基がリン酸化されている配列番号3の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記208位のセリン残基がリン酸化されている配列番号4の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記249位のセリン残基がリン酸化されている配列番号5の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記259位のセリン残基がリン酸化されている配列番号6の配列、
−ヒト由来CDC25Bホスファターゼタンパク質のスプライシング変異体CDC25B2であって、前記284位のセリン残基がリン酸化されている配列番号7の配列、
を含むか、又はそれにより構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のペプチド配列。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列を認識することのできるポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体(但し、前記抗体は、249位のセリン残基がリン酸化されていない配列番号8の配列は認識しない)。
【請求項5】
請求項2で定義した配列番号2の配列を認識することのできるポリクローナル抗体(但し、前記抗体は249位のセリン残基がリン酸化されていない配列番号8の配列は認識しない)。
【請求項6】
以下の工程;
−ハイブリドーマを得るために、請求項2に記載のペプチド配列の注射による免疫動物、特にヒトでないあらかじめ免疫した動物のミエローマと、動物、特にヒトでない動物、の脾臓細胞とを融合する工程、
−この様にして得られたハイブリドーマを培養する工程、
−前記工程において得られ、そして請求項2に記載のペプチド配列に対する抗体を分泌するハイブリドーマから選択されたハイブリドーマのクローニングによる回収及び精製の工程、
を含むことを特徴とする、特に請求項2で定義された配列番号2のペプチド配列に対する、請求項4のモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項7】
抗体の全体又は一部をコードするcDNAの発現バンクから選択する工程であって、前記抗体が、ELISA法においてか、タンパク質転移によりか、又は任意の他の適当な方法により、免疫に用いられた請求項1〜3のいずれか一項に記載のリン酸化ペプチドを認識するが、非リン酸化ペプチドは認識しない能力に基づき選択される抗体である工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載のモノクローナル抗体、特には請求項2で定義した配列番号2のペプチド配列に対するモノクローナル抗体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列、又は請求項4若しくは5に記載の抗体を、薬剤学的に許容可能な媒体と組み合わせて、活性成分として含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
過剰増殖性疾患、例えば癌の治療目的の薬剤を製造するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列、又は請求項4若しくは5に記載の抗体の使用。
【請求項10】
培養細胞からの、又は健常若しくは癌組織の切片からの、請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列を発現する有糸分裂細胞のin vitro検出用方法を実施するための、請求項4又は5に記載の抗体の利用。
【請求項11】
培養細胞におけるか、又は健常若しくは癌組織の切片、特に乳癌、肺癌あるいは膵臓癌組織の切片における、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタンパク質配列の過剰発現のin vitro検出用方法を実施するための、請求項4又は5に記載の抗体の使用。
【請求項12】
有糸分裂阻害化合物(すなわち、有糸分裂の開始又はその進行を阻害する化合物)のin vitroスクリーニング方法であって、前記阻害化合物は、特に抗癌療法のフレームワークで使用されることができ、
−前記化合物と細胞を一緒にすること、及び
−適当な方法、特にELISA、タンパク質転移(ウェスタン・ブロット)、又は間接免疫蛍光技術を用いることによって請求項1〜3のいずれか一項に記載のペプチド配列を認識することのできる抗体である、請求項4又は5に記載の抗体との結合の欠如を検出することによる阻害化合物の選択、
を含むことを特徴とする前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−515779(P2008−515779A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528921(P2007−528921)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002126
【国際公開番号】WO2006/024796
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(505409247)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク (16)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】