説明

新規二重硬化系

本発明は、新規二重硬化系およびポリイソシアネート架橋剤、その製造法およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規二重硬化系およびポリイソシアネート架橋剤、その製造法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの独立した方法によって硬化する被覆コンパウンドは、二重硬化系として一般に既知である。それらが含有する結合剤成分は、種々の官能基を一般に有し、それらは一般に、好適な条件下に相互に独立して架橋する。先行技術の従来の二重硬化系は 放射線硬化性基および熱硬化性基を有し、特に有利な特性を、イソシアネート基およびヒドロキシル基を熱架橋性官能基として使用することによって得ている。
【0003】
EP-A 0928800は、例えばOH基を含有する好適な結合剤を使用して熱硬化することができる放射線硬化性アクリレート基およびイソシアネート基の両方を有する架橋剤を含有する二重硬化系を開示している。NCO基およびOH基は室温でも相互に反応するので、前記の被覆系は、NCO含有成分およびNCO反応性成分を被覆工程の直前かまたはその工程の間に混合する2成分系としてしか扱うことができない。これらの系の極めて短い可使時間の欠点は、遊離NCO基をブロッキングすることによって解消することができる。ブロックトイソシアネート基を含有するそのような放射線硬化系および熱硬化系の組合せは、例えば、EP-A-126359、WO-A 01/42329またはUS-A 4961960に開示されている。
【0004】
先行技術の大部分のブロックトポリイソシアネートを使用した場合、それらが含有するブロッキング剤が、架橋反応の間に放出され、次に遊離する。これは、被覆系のVOC分に負の作用を有するだけでなく、放出されたブロッキング剤が塗料皮膜に残留して被覆特性に負の作用もする。従って、1成分(1C)塗料皮膜の耐引掻性および耐酸性は、2成分(2C)ポリウレタン塗料仕上より一般に有意に低い(例えば、T. Engbert, E. Koenig, E. Juergens, Farbe & Lack, Curt R. Vincentz Verlag, Hanover 10/1995)。ブロッキング剤の放出、および塗料皮膜からの気体状態でのその漏出は、塗料のふくれも生じうる。放出されたブロッキング剤の後燃え(afterburning)が必要な場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
90〜120℃の特に低い架橋温度に関して、最近、マロン酸ジエチルでブロックされたイソシアネートが使用されている(例えば、EP-A 0947531)。例えばカプロラクタムまたはブタノンオキシムのようなN−複素環式化合物とのブロッキング反応と対照的に、この場合、全てのブロッキング剤は放出されずに、硬化の間に、エタノールの放出を伴ってマロン酸ジエチルにおけるエステル交換が生じる。しかし、この場合の欠点は、不安定なエステル結合の故に、そのような系が酸の作用を極めて受けやすく、それによってこれらの製剤の適用可能性が制限されることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
活性環式ケトンの基本構造を有するCH−酸化合物は、物質を放出せずに反応する安定な二重硬化系を得るために、イソシアネート基をブロッキングするのに特に好適であることが見出された。
【0007】
本発明は、化学線の作用下に重合を伴って、エチレン性不飽和化合物と反応する少なくとも1つの不飽和官能基を有し、式(I):
【化1】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される構造単位を有する有機ポリイソシアネートを提供する。
【0008】
本発明は、本発明のポリイソシアネートを製造する方法も提供し、該方法は、
A1) 1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネートを、
A2) 少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する少なくとも1つの基を有する1つまたはそれ以上の化合物;
A3) 任意に、他のイソシアネート反応性化合物;および
A4) 一般式(2):
【化2】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される少なくとも1つのCH−酸性環式ケトンを含有するブロッキング剤と、
A5) 1つまたはそれ以上の触媒;および
A6) 任意に、補助物質および添加剤;および
A7) 任意に、溶剤の存在下に、
反応させることを含んでなる。
【0009】
本発明におけるイソシアネート反応性基は、自然に、または0〜200℃の温度への暴露下に、ポリウレタン化学から当業者に既知の触媒による所望の加速を伴って、NCO官能基と反応する全ての官能基であるものと理解される。これらの例は、下記のものを包含する:ヒドロキシル基、アミノ基、アスパルテート基、チオール基、ならびに、β−アミノアルコールを含有するような系、例えば、テトラキスヒドロキシエチレンエチレンジアミンまたはジアルキルアミノエタノールまたはアミノエタノール。ヒドロキシル基が好ましい。
【0010】
化学線は、電磁波、電離線、特に電子線、紫外線および可視光であるものと理解される(Roche Lexikon Medizin、第4版;Urban & Fischer Verlag, Munich 1999)。
【0011】
本発明のポリイソシアネートの製造のために、有機イソシアネート基を有する全ての化合物、好ましくは、NCO官能価≧2を有する脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式ポリイソシアネートを、単独でまたは任意に組合せて成分A1)として使用することができ、その場合、これらをホスゲン化によって生成したかまたは無ホスゲン法によって生成したかは重要でない。
【0012】
ウレトジオン、カルボジイミド、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ビウレット、ウレタン、アロファネート、オキサジアジントリオンまたはアシル尿素構造を有するポリイソシアネート、およびモル過剰の前記ポリイソシアネートの1つと、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート反応性水素原子(例えば、OH基の形態)を有する有機物質との予備反応によって得られるような、平均NCO官能価>1を有するポリイソシアネートプレポリマーも極めて好適である。
【0013】
本発明において、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的および/または芳香族的に結合したイソシアネート基を有する分子量140〜400g/molを有する前記の種類の化合物を、成分A1)に使用するのが好ましい。
【0014】
成分A1)の脂肪族および脂環式イソシアネートの例は、下記のものである:1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(Desmodur(登録商標)W, Bayer AG, Leverkusen)、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(トリイソシアナトノナン、TIN)、ω,ω'−ジイソシアナト−1,3−ジメチルシクロヘキサン(H6XDI)、1−イソシアナト−1−メチル−3−イソシアナトメチルシクロヘキサン、1−イソシアナト−1−メチル−4−イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス−(イソシアナトメチル)ノルボルナン。
【0015】
成分A1)の芳香族イソシアネートの例は、下記のものである:1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,3−および1,4−ビス−(2−イソシナトプロパ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4−および2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、特に2,4−および2,6−異性体、および2つの異性体2,4'−および4,4'−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)の技術混合物、1,5−ジイソシアナトナフタリン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)。
【0016】
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)および/または4,4'−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに特に基づく、専ら脂肪族的および/または脂肪環式的に結合したイソシアネート基を有する前記の種類のポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物を、成分A1)に使用するのが特に好ましい。
【0017】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する少なくとも1つの不飽和官能基を有する全ての化合物を、単独でまたは任意に組み合わせて、成分A2)として使用することができる。
【0018】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有するα,β−不飽和カルボン酸誘導体、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレイネート、フマレート、マレイミド、アクリルアミド、ならびにビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテルおよびジシクロペンタジエニル単位を有する化合物を、成分A2の化合物として使用するのが好ましく、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有するアクリレートおよびメタクリレートが特に好ましい。
【0019】
成分A2)の化合物の例は、3−イソシナトプロピルメタクリレート、ウレタンおよび/またはアロファネート構造単位を有する化合物を得るポリイソシアネートとヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートとの部分反応生成物であり、それらは、例えば、DE-OS 2909715(特に、実施例の付加物P、Q、RおよびS)、EP-A 126359(特に、実施例1〜3)、US-A 6465539(p.2, L.20〜p.4, L.55、特に、実施例化合物FおよびG)、およびDE-A-19860041(特に実施例1〜10、12およびV1〜V4)に開示されている。
【0020】
ヒドロキシ官能性アクリレートまたはメタクリレートとして好適な化合物の例は下記の化合物である:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えば、Tone(登録商標)M100(Union Carbide, USA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、エトキシル化、プロポキシル化またはアルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはそれらの技術混合物のような多価アルコールのヒドロキシ官能性モノ−、ジ−またはテトラアクリレート。二重結合を有する酸と二重結合を任意に有するモノマーエポキシ化合物とを反応させることによって得られるアルコール、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物、またはバーサチック酸のグリシジルエステル(Cardura(登録商標)E10、Resolution Nederland BV, Shell BV, NL)も好適である。
【0021】
例えば、親水化作用を有し、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物を、単独でまたは組み合わせて成分A3)として使用することができる。親水化作用を有する化合物は、本発明のポリイソシアネートを水または含水混合物に溶解させるかまたは分散させる場合に特に使用される。
【0022】
親水化作用を有する化合物は、少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有するあらゆるイオン性、潜在イオン性および非イオン性親水化化合物であるものと理解される。これらの化合物は、ヒドロキシおよび/またはアミノ官能基をイソシアネート反応性基として有するのが好ましい。
【0023】
少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および少なくとも1つの官能基、例えば、−COOY、−SO3Y、−PO(OY)2(Y=H、NH4、金属陽イオン)、−NR2、−NR3、−PR3(R=H、アルキル、アリール)を有する化合物を、成分A3)のイオン性または潜在イオン性親水化化合物として使用するのが好ましい。潜在イオン性親水化は、水性媒体との相互作用の際に、場合によりpH依存性の解離平衡に入り、このようにして陰荷電、陽荷電または中性荷電される化合物を意味するものと理解される。
【0024】
好適なイオン性または潜在イオン性親水化化合物は、例えば、モノ−およびジヒドロキシカルボン酸、モノ−およびジアミノカルボン酸、モノ−およびジヒドロキシスルホン酸、モノ−およびジアミノスルホン酸、およびモノ−およびジヒドロキシホスホン酸またはモノ−およびジアミノホスホン酸およびそれらの塩、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバル酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルまたはブチルスルホン酸、1,2−または1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、マレイン酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸の付加生成物(EP-A 0916647、実施例1)およびそのアルカリおよび/またはアンモニウム塩;硫酸水素ナトリウムのブテン−2−ジオール−1,4,ポリエーテルスルホネートへの付加物、2−ブテンジオールおよびNaHSO3のプロポキシル化付加物(例えば、DE-A 2446440, p.5-9に開示、式I-III)、および陽イオン基に変換できる構造成分、例えば親水性構造成分としてのN−メチルジエタノールアミンである。好ましいイオン性または潜在イオン性親水化化合物は、カルボキシ基またはカルボキシレート基および/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有する化合物である。特に好ましいイオン化合物は、カルボキシル基および/またはスルホネート基をイオン性または潜在的イオン性の基として含有する化合物、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、またはIPDIとアクリル酸の付加物(EP-A 0916647、実施例1)およびジメチロールプロピオン酸の塩である。
【0025】
少なくとも1つのヒドロキシ基またはアミノ基をイソシアネート反応性基として含有するポリエーテル構造を有する化合物、好ましくは、アルキレンオキシドに基づくポリエーテルを、親水性非イオン化合物として使用することができる。
【0026】
ポリエーテル構造を有するこれらの化合物は、例えば、好適な出発分子のアルコキシル化によって既知の方法で得られる1分子につき統計平均5〜70、好ましくは7〜55のエチレンオキシド単位を有し、少なくとも30mol%のエチレンオキシドを有する一価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールであってよい(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版、第19巻、Verlag Chemie, Weinheim, p.31-38)。
【0027】
好適な出発分子は、例えば下記のものである:飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンまたはテトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコールまたはオレイン酸アルコール、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性クレゾ−ルまたはメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコールまたはシンナミルアルコール、第二級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルおよびN−エチルシクロヘキシルアミンまたはジシクロヘキシルアミンおよび複素環式第二級アミン、例えば、モルホリン、ピロリジン、ピペリジンまたは1H−ピラゾール。好ましい出発分子は飽和モノアルコールである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルは、出発分子と使用するのに特に好ましい。
【0028】
アルコキシル化反応に好適なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、それらを任意の順序で別々に、または組み合わせて、アルコキシル化反応に使用して、ブロックまたは混合ポリエーテルを得ることができる。
【0029】
ポリエーテル構造を有する化合物は、好ましくは純粋ポリエチレンオキシドポリエーテルまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであり、そのアルキレンオキシド単位は、少なくとも30mol%、好ましくは少なくとも40mol%のエチレンオキシド単位を有する。
【0030】
特に好ましいのは、少なくとも40mol%のエチレンオキシドおよび最大60mol%のプロピレンオキシド単位を有する一官能性混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルである。
【0031】
さらに、低分子量モノアルコール、ジオールまたはポリオール、例えば、短鎖脂肪族、芳香脂肪族または脂環式モノアルコール、ジオールまたはトリオール(即ち、2〜20個の炭素原子を含有)を、成分A3)の化合物として使用することができる。モノアルコールの例は、メタノール、エタノール、異性体プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ならびにジアセトンアルコール、脂肪アルコールまたは弗素化アルコール(例えば、Zonyl(登録商標)の商品名でDuPontから入手可能)である。ジオールの例は、下記のものである:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性ジエチルオクタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸−(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)。好適なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチリロールプロパンまたはグリセロールである。アルコール1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールおよびトリメチロールプロパンが好ましい。
【0032】
前記のモノアルコール、ジオールまたはトリオールは、使用される場合に、イソシアネート1当量につきわずか<0.3当量、特に<0.1当量で使用するのが好ましい。これらのモノアルコール、ジオールまたはトリオールの使用を避けるのが特に好ましい。
【0033】
一般式(2)で示されるCH−酸性環式ケトンは、成分A4)におけるブロッキング剤として使用される:
【化3】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]。
【0034】
電子求引性基Xは、例えばメソメリー効果および/または誘起効果によって、α水素においてCH酸性を生じるあらゆる置換基であってよい。これらは、例えば、エステル基、スルホキシド基、スルホ基、ニトロ基、ホスホネート基、ニトリル基、イソニトリル基またはカルボニル基であってよい。ニトリル基およびエステル基が好ましく、カルボン酸メチル基およびカルボン酸エチル基が特に好ましい。
【0035】
酸素、硫黄または窒素原子のようなヘテロ原子を任意に有する一般式(2)の化合物も好適である。この場合、ラクトンの構造が好ましい。この場合、ラクトンまたはチオラクトンの基本構造が好ましい。
【0036】
式(2)の活性環系は、5(n=1)および6(n=2)の環サイズであるのが好ましい。
【0037】
一般式(2)の好ましい化合物は、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボン酸ニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルまたはシクロペンタノン−2−カルボニルメタンである。特に好ましいのは、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルおよびシクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルおよびカルボキシエチルエステルである。
【0038】
前記のCH−酸性環式ケトンは、当然、相互の混合物および他のブロッキング剤との任意混合物の両方において成分4)に使用することができる。好適な他のブロッキング剤は、例えば下記のものである:アルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾールおよびアミン、例えば、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、ジエチルマロネート、アセト酢酸エステル、アセトンオキシム、3,5−ジメチルピラゾール、ε−カプロラクタム、N−メチル、N−エチル、N−(イソ)プロピル、N−n−ブチル、N−イソ−ブチル、N−t−ブチルベンジルアミンまたは1,1−ジメチルベンジルアミン、N−アルキル−N−1,1−ジメチルメチルフェニルアミン、マロン酸エステルのような活性二重結合を有する化合物へのベンジルアミンの付加物、N,N−ジメチルアミノプロピルベンジルアミンおよび任意に置換されていてよい他のベンジルアミンおよび/または第三級アミノ基を含有するジベンジルアミンまたはこれらのブロキッキング剤の任意混合物。使用されるとしても、成分A4)におけるCH−酸性環式ケトンと異なるこれらの他のブロッキング剤の割合は、成分A4)全体の80wt%まで、好ましくは60wt%まで、特に好ましくは20wt%までである。
【0039】
シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステルだけを、成分A4)として使用するのが特に好ましい。
【0040】
ブロックされるイソシアネート基対ブロッキング剤A4)の比は、0.8:1.2(モル)、好ましくは1:1である。
【0041】
本発明のポリイソシアネートにおける遊離NCO基の含有量は、<5wt%、好ましくは<0.5wt%、特に<0.1wt%である。
【0042】
当業者に既知のNCOブロッキング触媒作用を有するあらゆる化合物を、成分A5)の化合物として、単独でまたは任意に組み合わせて使用することができる。下記のようなアルカリおよびアルカリ土類金属塩基が好ましい:微粉末炭酸ナトリウム(ソーダ)または燐酸三ナトリウム、第二亜族、特に亜鉛の金属塩、およびDABCO(1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)のような第三級アミン。
【0043】
炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは亜鉛塩、特に2−エチルヘキサン酸亜鉛を、成分A5)に使用するのが好ましい。
【0044】
本発明の方法において、成分A5)は、本発明のポリイソシアネートの非揮発分に対して0.05〜10wt%、好ましくは0.1〜3wt%、特に0.2〜1wt%の量で使用される。
【0045】
ポリウレタン化学およびエチレン性不飽和被覆コンパウンドの化学から当業者に既知のあらゆる補助物質および添加剤またはそれらの混合物を、任意に使用される成分A6)として含有させることができる。早期重合を防止する安定剤を、不飽和基の量に対して0.01〜1wt%、好ましくは0.1〜0.5wt%の量で使用するのが好ましい。そのような禁止剤は、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第4版、第XIV/1巻、Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1961, p.433 ffに開示されている。下記のものが例として挙げられる:亜ジチオン酸ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫黄、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドラゾベンゼン、N−フェニル−β−ナフチルアミン、N−フェニルエタノールジアミン、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、p−ニトロソジメチルアニリン、ジフェニルニトロソアミン、フェノール、例えばパラ−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−t−ブチルカテコールまたは2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、テトラメチルチウラムジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩、フェノチアジン、N−オキシル化合物、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPO)またはその誘導体の1つ。安定剤は化学的に組み込むこともでき、それによって、前記の種類の化合物は、それらが他の遊離脂肪族アルコール基または第一級または第二級アミン基も有し、従ってウレタン基または尿素基によって化学的に結合している安定剤である場合に、特に好適である。この目的に特に好適なのは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシドである。好ましい変形例において、酸素含有ガス、好ましくは空気も、本発明のポリイソシアネートの製造の間に導入する。
【0046】
本発明のポリイソシアネートの製造は、溶剤を使用せずに、または好適な溶剤または反応性希釈剤の存在下に、行なうことができる。好適な溶剤は、一般的な塗料溶剤、例えば、酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、または芳香族炭化水素含有溶剤としてのExxon Chemieからの溶剤ナフサ、および前記溶剤の混合物である。前記溶剤中でブロッキングを行なうのが好ましく、達成される固形分は10〜90%である。
【0047】
好適な反応性希釈剤は、例えば、放射線硬化技術において既知の化合物(参照:Roempp Lexikon Chemie, p.491, 第10版、Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)、特に、30mg KOH/g未満、好ましくは10mg KOH/g未満の低ヒドロキシル分を有する化合物である。下記アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸、好ましくはアクリル酸とのエステルを、例として挙げることができる:異性性ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールおよびデカノール、ならびに脂環式アルコール、例えば、イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール、芳香脂肪族アルコール、例えばフェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール。これらのアルコールのアルコキシル化誘導体も使用することができる。二価アルコールは、例えば、下記のアルコールである:エチレングリコール、プロパンジオール−1,2、プロパンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2−エチルヘキサンジオールおよびトリプロピレングリコールまたはこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体。好ましい二価アルコールは、ヘキサンジオール−1,6、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。多価アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールまたはそれらのアルコキシル化誘導体。
【0048】
本発明のポリイソシアネートは、25〜180℃、好ましくは30〜90℃の温度範囲で製造するのが好ましい。
【0049】
本発明の好ましい態様において、成分A1)を先ず用意し、NCO含量が所望の数値に減少するまで、A2)、任意にA3)および任意にA4)と30〜150℃の温度で反応させる。成分A2)〜A4)は、任意の順序で個々に、または混合物として、添加することができる。混合物として添加するのが好ましい。前記成分の反応の間に、酸素含有ガス、好ましくは空気を、反応媒体に通気するのが好ましい。
【0050】
A2)、A3)およびA4)を先ず用意し、そしてA1)を添加することもできる。または、A2)、A3)、A4)またはこれらの成分の2つの混合物だけを先ず用意し、次にA1)を添加し、最後に、残っている成分A2)、A3)および/またはA4)を添加することもできる。
【0051】
成分A5)を、A2)、A3)またはA4)の添加の開始時、添加の間または添加後に添加することができる。A5)は、A4)の直ぐ後に添加するのが好ましい。A6)を使用する場合、特にそれが安定剤を含有する場合に、その少なくとも一部を、A2)の添加前に添加する。溶剤A7)は、反応の終了の前または後に添加するのが好ましい。特に、溶剤がイソシアネートと反応する場合、反応が終了するかまたはNCO含量が1wt%未満に減少するまで、溶剤を添加しないのが好都合である。
【0052】
A1)におけるNCO1当量につき0.2〜0.8当量のA4)、特に0.3〜0.7当量のA4)を使用するのが好ましい。A1)におけるNCO1当量につき、0.2〜0.8当量のA2)、特に0.3〜0.7当量のA4)を使用するのが好ましい。
【0053】
本発明のポリイソシアネートが、適用した際に固体である被覆コンパウンド(例えば粉体塗料)の成分である場合、本発明のポリイソシアネートは、20〜90℃、特に30〜65℃のガラス転移温度を有する非晶質であるか、または30〜130℃、特に60〜120℃の融点を有する結晶質であるべきである。そのようなポリイソシアネートは、例えば、本発明のポリイソシアネートの製造において脂環式構造単位を有する化合物を使用することによって得られる。この目的のために、脂環式ジイソシアネートを成分A1)に使用するのが好ましい。
【0054】
本発明は、下記を含有する被覆コンパウンドも提供する:
B1) 1つまたはそれ以上の本発明のポリイソシアネート;および/または
B2) 式(1):
【化4】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される構造単位を有する1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネート;
B3) 少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有し、化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する1つまたはそれ以上の官能基を任意に含有する1つまたはそれ以上の化合物;
B4) 任意に、化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応し、NCO基もNCO反応性基も有さない官能基を有する化合物;
B5) 任意に、触媒;および
B6) 任意に、補助物質および添加剤;
B7) 任意に、成分B1)〜B6)の相互の反応から得られる生成物。
【0055】
B2)の意味におけるポリイソシアネートは、成分A1)に関して先に記載したイソシアネート(特に、好ましいものとして記載したイソシアネート)に基づく。
【0056】
一般式(1)で示される構造に加えて、成分B2)のポリイソシアネートは、環式ケトンと異なるA4)において記載した他のブロッキング剤でブロックされたブロックトNCO基も有しうる。B2)において使用されるブロックトポリイソシアネートの製造は当業者に既知であり、前記触媒を任意に使用して、本発明のポリイソシアネートのブロッキングと同様に行なわれる。
【0057】
成分B3)の化合物は、モノマー、オリゴマーまたはポリマーであってよく、少なくとも1つ、好ましくは2つまたはそれ以上のイソシアネート反応性基を含有する。
【0058】
成分B3)に好適な化合物は、低分子量短鎖脂肪族、芳香脂肪族または脂環式ジオールまたはトリオールであり、即ち2〜20個の炭素原子を含有する。ジオールの例は下記のものである:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、位置異性ジエチルオクタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−および1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオン酸−(2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル)。好適なトリオールの例は、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンまたはグリセロールである。好適な高官能性アルコールは、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールまたはソルビトールである。
【0059】
高分子量ポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ヒドロキシ官能性アクリル樹脂、ヒドロキシ官能性ポリウレタンまたは対応する混成物(参照:Roempp Lexikon Chemie, p.465-466, 第10版、1998, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)も好適である。
【0060】
成分B3)の化合物は、A2)において記載した全ての化合物、ならびにアクリレート基および/またはメタクリレート基を含有する単独のまたは前記モノマー化合物と組み合わせたイソシアネート反応性オリゴマーまたはポリマー不飽和化合物も包含する。この場合、OH含量30〜300mg KOH/g、好ましくは60〜200mg KOH/g、特に好ましくは70〜120mg KOH/gを有するヒドロキシル基含有ポリエステルアクリレートを使用するのが好ましい。
【0061】
ポリエステルアクリレートの製造は、DE-A 4040290(p.3, L.25〜p.6, L.24)、DE-A 3316592(p.5, L.14〜p.11, L.30)およびP.K.T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints, 第2巻、1991, SITA Technology, London, p.123-135に記載されている。
【0062】
下記のものも成分B3)に使用しうる:OH含量20〜300mg KOH/g、好ましくは100〜280mg KOH/g、特に好ましくは150〜250mg KOH/gを有する既知のヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレート、またはOH含量20〜300mg KOH/g、好ましくは40〜150mg KOH/g、特に好ましくは50〜100mg KOH/gを有するヒドロキシル基含有ポリウレタン(メタ)アクリレート、およびそれらの相互の混合物、およびそれらとヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとの混合物、およびポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物、またはヒドロキシル基含有不飽和ポリエステルとポリエステル(メタ)アクリレートとの混合物。そのような化合物も、P.K.T. Oldring編、Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints, 第2巻、1991, SITA Technology, London, p.37-56に記載されている。ヒドロキシル基含有エポキシ(メタ)アクリレートは、特に、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、モノマー、オリゴマーまたはポリマービスフェノールA、ビスフェノールF、ヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールのエポキシド(グリシジル化合物)との反応生成物またはそれらのエトキシル化および/またはプロポキシル化誘導体に基づく。
【0063】
ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリシロキサンのようなポリマー、ならびに化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する化合物を、成分B4)の化合物として使用することができる。そのような群は、α,β−不飽和カルボン酸誘導体、例えば、アクリレート、メタクリレート、マレイネート、フマレート、マレイミド、アクリルアミド、ならびに、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、アリルエーテルおよびジシクロペンタジエニル単位を含有する化合物である。アクリレートおよびメタクリレートが好ましい。その例は、放射線硬化技術において既知の反応性希釈剤(参照:Roempp Lexikon Chemie, p.491, 第10版、1998, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)または放射線硬化技術において既知の結合剤、例えば、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートであるが、それらは、ヒドロキシル基分30mg KOH/g未満、好ましくは20mg KOH/g未満、特に好ましくは10mg KOH/g未満を有する。
【0064】
下記のアルコールのアクリル酸またはメタクリル酸、好ましくはアクリル酸のエステルを、成分B4)の例として挙げることができる。一価アルコールは、異性体ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールおよびデカノール、ならびに脂環式アルコール、例えば、イソボルノール、シクロヘキサノールおよびアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール、芳香脂肪族アルコール、例えば、フェノキシエタノールおよびノニルフェニルエタノール、およびテトラヒドロフルフリルアルコールである。これらのアルコールのアルコキシル化誘導体も使用することができる。二価アルコールは、例えば、下記のようなアルコールである:エチレングリコール、プロパンジオール−1,2、プロパンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール−1,6、2−エチルヘキサンジオールおよびトリプロピレングリコールまたはこれらのアルコールアルコキシル化誘導体。好ましい二価アルコールは、ヘキサンジオール−1,6、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールである。多価アルコールは、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、またはジペンタエリトリトールまたはそれらのアルコキシル化誘導体。
【0065】
基本的に、ルイス酸を成分B5)として使用して、水素含有反応体、例えばアルコール、アミン、および混合アルコール−およびアミン−含有反応体でのブロックトイソシアネートの硬化を加速させることができる。この場合、少なくとも2価のイオンのルイス酸が好適である。例えば、亜鉛、チタン、ジルコニウムおよびビスマスの塩が好適である。亜鉛およびジルコニウムの化合物が好ましく、2−エチルヘキサン酸亜鉛が特に好ましい。
【0066】
触媒B5)の量は、硬化温度を考慮に入れて、当業者によって、硬化必要条件に合わせて調節することができる。好適な量は、例えば、全固形分に対して0.01〜2wt%、好ましくは0.05〜1wt%、特に好ましくは0.07〜0.6wt%触媒である。高い焼付温度(即ち、約160℃より高い温度)で操作する場合、触媒の使用を場合により省くこともできる。
【0067】
被覆剤、塗料、印刷インキ、シーラントおよび接着剤の技術において一般に使用される添加剤または補助物質を、成分B6)として含有させることができる。これらは、化学線によって活性化して、対応する重合性基のラジカル重合を誘発する開始剤も包含する。この場合、紫外線または可視光によって活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は、市販されている既知の化合物であり、一分子(I型)および二分子(II型)開始剤に分類される。好適な(I型)系は、芳香族ケトン化合物、例えば、第三級アミンと組み合わしたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記種類の混合物を包含する。下記のような(II型)開始剤も好適である:ベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノンおよびα−ヒドロキシアルキルフェノン。本発明の被覆コンパウンドを、水性処理する場合、水性被覆コンパウンドに容易に組み込める光開始剤を使用するのが好ましい。そのような製品の例は、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)819 DW(Ciba, Lampertheim, DE)、Esacure(登録商標)KIP(Lamberti, Aldizzate, Italy)である。これらの化合物の混合物も使用することができる。
【0068】
重合性成分の硬化を加熱によって開始する場合、成分B6)に好適な化合物は下記の化合物である:過酸化化合物、例えば、ジアシルパーオキシド、例えばベンゾイルパーオキシド、アルキルヒドロパーオキシド、例えばジイソプロピルベンゼンモノヒドロパーオキシド、アルキルパーオキシエステル、例えばt−ブチルパーベンゾエート、ジアルキルパーオキシド、例えばジ−t−ブチルパーオキシド、パーオキシドジカーボネート、例えばジセチルパーオキシドジカーボネート、無機パーオキシド、例えばパーオキソ二硫酸アンモニウム、パーオキソ二硫酸カリウム、またはアゾ化合物、例えば、2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビズ{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、ならびにベンゾピナコール。水溶性であるかまたは水性エマルジョンの形態をとる化合物が、水性被覆系に好ましい。これらのラジカル発生剤を既知の方法で促進剤と組み合わせることができる。
【0069】
使用することができる他の添加剤は、A6)に記載した安定剤、光安定剤、例えば紫外線吸収剤および立体障害アミン(HALS)、並びに酸化防止剤、充填剤および塗料補助物質、例えば、沈降防止剤、消泡剤および/または湿潤剤、流れ調整剤、反応性希釈剤、可塑剤、触媒、補助溶剤および/または増粘剤ならびに顔料、染料および/または艶消剤である。光安定剤の使用およびその種々のタイプが、A. Valet, Lichtschutzmittel fuer Lacke, Vincentz Verlag, Hanover, 1996に記載されている。
【0070】
本発明のポリイソシアネートを使用して、塗料、被覆剤、サイズ剤、接着剤および成形品を製造することができる。
【0071】
本発明は、本発明の被覆化合物を製造する方法も提供し、該方法において、被覆コンパウンドの成分を、−20℃〜120℃、好ましくは10℃〜90℃、特に20℃〜60℃の温度で任意の順序で混合する。被覆コンパウンドは、室温において、固体または液体であるかまたは溶解または分散していてよい。固体被覆コンパウンドは、粉体塗料技術において一般に使用される装置、特に、押出器、粉砕器および空気分離器を使用して製造される。液体、溶解または分散被覆コンパウンドについて、液体系被覆剤技術において当業者に既知のミキサーまたは分散装置が好適である。
【0072】
B1)およびB2)におけるブロックトイソシアネート基対B3)におけるイソシアネート反応性基の比は、好ましくは0.5〜2、好ましくは0.8〜1.5、特に好ましくは1:1である。
【0073】
化合物B4)は、被覆コンパウンドに対して75wt%まで、好ましくは50wt%未満の量で任意に使用され、特に好ましは使用しない。
【0074】
本発明の被覆コンパウンドは、吹付け、ロール塗り、ナイフ塗布、注入、噴霧、はけ塗り、含浸または浸漬のような一般法によって、種々の基材に適用することができる。好適な基材の例は下記のものである:木材、金属、特に、ワイヤ、コイル、缶または容器被覆用途に使用される金属、およびプラスチック、特に、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDMおよびUP(DIN 7728 Teil 1に定義されている略語)、紙、革、織物、フェルト、ガラス、電子モジュールまたは鉱物基材。いくつかの前記材料から成る基材、または予備被覆基材も被覆することができる。被覆コンパウンドを基材に一時的にのみ適用し、次に、それらを部分的にまたは完全に硬化させ、それらを再びはがす、即ちフィルムを製造することもできる。
【0075】
適用されるフィルム厚み(硬化前)は、一般に0.5〜5000μm、好ましくは5〜1500μm、特に好ましくは15〜1000μmである。
【0076】
放射線硬化は、高エネルギー放射線、言い換えれば紫外線または太陽光、例えば波長200〜750nmの光線の作用下、または高エネルギー電子(電子線放射、150〜300keV)での照射によって、行なうのが好ましい。例えば、水銀蒸気をガリウムまたは鉄のような他の元素でドーピングすることによって改質することができる高圧水銀灯を、光線または紫外線の照射源として使用することができる。レーザー、パルス灯(UVフラッシュ放射体として既知)、ハロゲン灯またはエキシマー(eximer)放射体も使用しうる。放射体を固定位置に取り付け、それによって照射される物品が機械的装置によって照射源を通って移動しうるか、またはラジエーターを可動性にして、照射される物品が硬化の間に位置を変えないようにすることもできる。紫外線硬化における架橋に適切な照射線量は通常80〜5000mJ/cm2である。
【0077】
照射は、所望により酸素を排除して、例えば不活性ガス雰囲気または酸素減少雰囲気中で、行なうこともできる。窒素、二酸化炭素、希ガスまたは燃焼ガスは、不活性ガスとして好適である。さらに、照射は、放射線透過性の媒体で塗布物を覆うことによって行なうこともできる。これらの例は、例えば、プラスチックフィルム、ガラスまたは水のような液体である。
【0078】
放射線量および硬化条件に依存して、所望により使用される開始剤の種類および濃度を、当業者に既知の方法で変化させることができる。
【0079】
固定して取り付けた高圧水銀ラジエーターは、硬化に使用するのに特に好ましい。次に、光開始剤を、被覆剤中の固形物に対して0.1〜10wt%、特に好ましくは0.2〜3.0wt%の濃度で使用する。波長範囲200〜600nmで測定した線量200〜3000mJ/cm2を、これらの被覆剤を硬化させるのに使用するのが好ましい。
【0080】
本発明の被覆コンパウンドは、熱エネルギーの作用によっても硬化する。熱エネルギーは、放射線、熱伝導および/または対流によって被覆剤に導入することができ、その場合、被覆技術において一般的に使用される赤外線ラジエーター、近赤外線ラジエーターおよび/またはオーブンが一般に使用される。熱エネルギーの導入は、被覆コンパウンドにおける環式ケトン基とイソシアネート反応性基との架橋反応を開始させる。
【0081】
化学線の作用および熱エネルギーの発生は、2つの独立した化学メカニズムを生じるので、化学線/熱エネルギーの順序、従ってそのメカニズムが進む順序は、どのようにも組み合せることができる。存在しうるどのような有機溶剤および/または水も、被覆剤技術に一般に使用される方法によって先ず除去するのが好ましい。好ましい変形例において、完全または部分硬化を、化学線の作用よって先ず行なう。その直後またはその後に、熱硬化を、同じかまたは別の場所で行なうことができる。例えば、損傷されることなく基材の変形に耐える軟質塗布物を先ず製造し、次に、熱によってそれらをさらに硬化させることができる。例えば、任意に予備被覆したコイル形態の金属を被覆し、塗布物を先ず化学線の作用によって硬化して軟質塗布物を形成する。次に、被覆したコイルを使用して、当業者に既知の方法、例えば打抜きによって、特定部品を製造し、そして、塗布物を例えば損傷させたり裂けたりさせずに、機械的に再付形することができる。次に、熱エネルギーを使用して、被覆コンパウンドにおける環式ケトン基とイソシアネート反応性基との架橋反応を開始させ、それによって、例えば車体または自動車組み立てに使用される部品用の透明被膜としても好適な極めて耐性の塗布物(塗膜)が形成される。
【0082】
他の変形例において、プラスチックフィルムを先ず被覆し、塗布物を化学線によって硬化させて、非架橋であるが弾性の層を形成する。このフィルムを後に成形品上に適用し、成形品に結合させることができる。熱成形として既知のこの方法は、高温で行なうのが好ましく、その場合、熱成形工程の間、その終了時および/または熱成形工程後に達する温度は、被覆コンパウンドにおける環式ケトン基とイソシアネート反応性基との架橋に必要な温度であり、それによって塗布物が架橋して高耐性の層を形成する。
【0083】
別の変形例において、先ず熱エネルギーによって架橋し、次に、そのようにして得た被覆基材表面、または本発明の被覆コンパウンドだけから成る部分の架橋を、化学線の作用下に、0〜300℃、好ましくは23〜200℃、特に80〜150℃の温度で継続することもできる。金型内被覆として当業者に既知の塗布物の熱硬化法と、後の金型外での化学線による架橋とを組み合せることが特に好都合である。
【0084】
[実施例]
特に指定しなければ、全てのパーセントは重量%(wt%)である。
【0085】
Desmodur(登録商標)N3300: イソシアネヌレート構造を有するHDIポリイソシアネート、NCO含量21.8%、粘度3000mPas/23℃、Bayer AG, Leverkusen, DE。
【0086】
Desmodur(登録商標)XP 2410: イソシアヌレートおよびイミノオキサジアジンジオン構造単位を有するヘキサメチレンジイソシアネートトリマーに基づくポリイソシアネート、NCO含量23.0wt%、粘度700mPas/23℃、Bayer AG, Leverkusen, DE。
【0087】
Baymicron(登録商標)OXA WM 06: ヘキサメチレンジイソシアネートおよび二酸化炭素から成るオキサジアジントリオン構造単位を主に有するオリゴマーポリイソシアネート、NCO含量20.2〜20.7%、Bayer AG, Leverkusen, DE。
【0088】
遊離NCO基の含有量は、DIN EN ISO 11909による滴定(ジブチルアミンを用いる滴定)によって測定した。
【0089】
粘度は、回転粘度計(Visco Tester(登録商標)550およびHaake PK 100, Thermo Haake GmbH, D-76227 Karlsruhe)を使用して23℃で測定した。
【0090】
Perkin Elmer 製 Paragon 1000 FT-IR測定装置を使用して、IRスペクトルを記録した。試料を、付加的希釈を行なわずに市販NaClプレート間で測定した。
【実施例1】
【0091】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
酢酸ブチル25.6g中の、ヒドロキシエチルアクリレート11.61g(0.1val)、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル31.86g(0.204val)、およびDesmodur(登録商標)N3300 59.1g(0.3val)、2−エチルヘキサン酸亜鉛103mgおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール103mg(固形分80%)を、機械攪拌器および内部温度計を備えた250mL3口フラスコ中で混合し、NCO含量が0%に減少するまで(IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)、35℃で攪拌した。混合物におけるブロックトNCO基含量は6.68%であった。粘度は4000mPasであった。
【実施例2】
【0092】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
ヒドロキシエチルアクリレート15.48g(0.133val)、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル69.72g(0.275val)、およびDesmodur(登録商標)XP 2410 174.3g(0.4val)、亜鉛テトラメチルヘプタジオネート86mgおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール128mgを、機械攪拌器および内部温度計を備えた500mL3口フラスコ中で混合し、NCO含量が0%に減少するまで(IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)、35℃で攪拌した。ブロックトNCO基含量は9.0%であり、このようにして得た生成物の粘度は200,000mPasであった。
【実施例3】
【0093】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
酢酸ブチル128.22g中のヒドロキシエチルアクリレート58.06g(0.5val)、Desmodur(登録商標)N3300 295.5g(1.5val)およびシクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル159.32g(1.02val)、および亜鉛アセチルアセトン256mgおよび2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール513mg(固形分80%)を、1000mL3口フラスコに入れ、NCO含量が0%に減少するまで(IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)、35℃で攪拌した。生成物中のブロックトNCO基含量は6.68%であり、粘度は2800mPasであった。
【実施例4】
【0094】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
Baymicron(登録商標)OXA WM 06(214.5g/val NCO)42.90g(0.2val)および2−エチルヘキサン酸亜鉛0.043gを、還流冷却器を備えた250mL3口フラスコ中で混合し、40℃に加熱した。次に、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/mol)31.86g(0.204mol)を30分以内で滴下し、混合物を40℃で14時間攪拌し、それによって遊離NCO基が検出されなくなった。次に、トリエチルアミン0.086g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.259g、およびヒドロキシエチルアクリレート11.6g(0.1val)を、攪拌しながら順次添加し、その間に少しのガス放出が観察された。一定の間隔で真空を適用して、反応を終了させた。10時間攪拌した後、反応が終了した(IRスペクトルにおける1825cm−1のバンド(オキサジアジントリオンのバンド)の減少によって検出できた)。生成物のブロックトNCO基含量は10.3%であり、粘度は100,000mPasより高かった。
【実施例5】
【0095】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
Baymicron(登録商標)OXA WM 06(214.5g/val NCO)42.90g(0.2val)および亜鉛アセチルアセトネート0.043gを、還流冷却器を備えた250mL3口フラスコ中で混合し、40℃に加熱した。次に、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/mol)23.90g(0.153val)を30分以内で滴下し、混合物を14時間攪拌し、それによって遊離NCO基が検出されなくなった。次に、トリエチルアミン0.084g、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.253g、およびヒドロキシエチルアクリレート17.4g(0.15val)を順次添加し、その間に穏やかなガス放出が生じた。攪拌を14時間継続し、その間に、反応を終了させるために真空を定期的に適用した。その後、反応が終了した(これは、IRスペクトルにおける1825cm−1のバンド(オキサジアジントリオンのバンド)の減少によって検出できた)。このようにして得た生成物におけるブロックトNCO基含量は7.9%であり、粘度は100,000mPasより高かった。
【実施例6】
【0096】
アクリレート基含有ブロックトポリイソシアネート
Baymicron OXA 06(214.5g/val NCO)42.90g(0.2val)および2−エチルヘキサン酸亜鉛0.039gを、還流冷却器を備えた250mL3口フラスコ中で混合した。最高温度40℃において、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/mol)15.93g(0.102val)をゆっくり滴下した。滴下は30分後に終了した。約14時間攪拌した後、トリエチルアミン0.078g、および2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.233g、次に、ヒドロキシエチルアクリレート23.2g(0.2val)を添加した。穏やかなガス放出が生じた。定期的な真空の適用によって反応を終了させた。14時間攪拌した後に、反応が終了した(これは、IRスペクトルにおける1825cm−1のバンド(オキサジアジントリオンのバンド)の減少によって検出できた)。生成物におけるブロックトNCO基含量は5.41%であった。粘度は約100,000mPasであった。
【実施例7】
【0097】
ブロックトポリイソシアネート
Desmodur XP 2410(Bayer AG, Leverkusen, 174.3g/val)104.6g(1.0val)および亜鉛テトラメチルヘプタジオネート0.099gを、還流冷却器を備えた500mL3口フラスコ中で10分間混合した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/val)93.7g(1.0val)を40℃の温度で滴下した。30分後に、滴下を終了した。NCO含量が0%になるまで(これは、IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)、40℃の温度で攪拌を継続した。ブロックトNCO含量は12.71%であり、粘度は>100,000mPasであった。
【実施例8】
【0098】
アクリレートおよびメタクリレート基を有する親水化ブロックトポリイソシアネート
Desmodur N 3300(195g/val)97.50g(0.5val)、ヒドロキシル価が235mg KOH/gのグリシジルメタクリレートとアクリル酸の付加物(1:1)47.75g、ヒドロキシピバル酸(118g/val)5.90g(0.05val)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.19g、錫−2−エチルヘキサノーエート0.76mgおよびメチルエチルケトン47.55gを、還流冷却器を備えた500mL3口フラスコ中で混合した。NCO価が理論値である5.28%より0.1%低くなるまで、混合物を60℃の温度で14時間反応させた。次に、2−エチルヘキサン酸亜鉛0.19gを65℃で添加し、10分間混合した。次に、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/mol)39.05g(0.25val)をゆっくり滴下した。30分後に滴下を終了した。16時間攪拌した後、NCO含量が0%になった(これは、IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)。生成物は、ブロックトNCO含量が4.41%、粘度が4220mPasである。
【実施例9】
【0099】
アクリレート含有ブロックトポリイソシアネート
Desmodur N 3300(197g/val)59.10g(0.3val)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール0.103g、酢酸ブチル25.64gおよび2−エチルヘキサン酸亜鉛0.051gを、還流冷却器を備えた250mL3口フラスコ中で10分間混合した。最高温度40℃において、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(156.2g/val)31.86g(0.204val)およびヒドロキシエチルアクリレート(116.12g/val)11.61g(0.1val)を滴下した。約30分後に滴下を終了した。バッチがNCO含量=%を有するまで(これは、IRスペクトルにおける2260cm−1のバンド(イソシアネート基のバンド)の減少によって検出できた)、40℃の温度で攪拌を継続した。生成物は、固形分が80%であり、ブロックトNCO含量が6.68%である。粘度は4000mPasであった。
【実施例10】
【0100】
被覆コンパウンドおよび塗布物
それぞれ、実施例9で得た生成物5.52gを表に示した量で混合した。Desmophen(登録商標)A870は、酢酸ブチル中70%のヒドロキシル基含有ポリアクリレートである(Bayer AG, Leverkusen, DE)。PETIAは、OH含量が30mg KOH/gのアクリレート化ペンタエリトリトールである(UCB GmbH, Kerpen, DE)。Darocur(登録商標)1173は、光開始剤である(Ciba Spezialitaetenchemie GmbH, Lampertheim, DE)。エチルヘキサン酸亜鉛は酢酸ブチルに50%で溶解させた。全ての量は(g)で示されている。
【表1】

【0101】
被覆コンパウンド10a)〜10e)を、骨型100μmハンドブレードでガラス板に適用した。全ての塗布物から、乾燥室において50℃で15分間で溶剤を除去され、次に、UVラジエーターによって1500mJ/cm2で硬化した(CKラジエーター、80W/cm、IST Strahlentechnik, Nuertingen, DE)。室温で60分後、ケーニッヒ振子硬度を測定した。次に、全ての塗布物を140℃でさらに20分間硬化させた。室温で60分後、ケーニッヒ振子硬度を再度測定した。
【表2】

【0102】
実施例10a)〜e)と同様に、それぞれ、実施例1で得た生成物10.60gを表に示した量(g)で混合した。
【表3】

【0103】
被覆コンパウンド10f)〜10k)を、10a)〜10e)と同様に、塗布し、硬化させた。
【表4】

【0104】
実施例10a)〜e)と同様に、それぞれ、実施例7で得た生成物16.52gを表に示した量(g)で混合した。Laromer(登録商標)PE 44Fは、OH含量が77mg KOH/gのポリエステルアクリレートである(BASF AG, Ludwigshafen, DE)。Ebecryl(登録商標)600は、OH含量が225mg KOH/gの芳香族エポキシアクリレートである(UCB GmbH, Kerpen、DE)。
【表5】

【0105】
被覆コンパウンド10l)〜10n)を、10a)〜10e)と同様に、塗布し、硬化させた。
【表6】

【0106】
このようにして、2つの独立したメカニズムで被覆コンパウンドが硬化することが示された。塗料技術において予期される必要条件は、物質を放出せずに反応するこの系によって満たされる。
【実施例11】
【0107】
被覆コンパウンドおよび塗布物
実施例3のポリイソシアネート62.7gを、ヒドロキシ官能性ポリエステルDesmophen(登録商標)T XP 2374(酢酸ブチル/イソブタノール9:1中80%、Bayer AG, Leverkusen, DE)60.7g、酢酸ブチル28.6g、Irgacure(登録商標)184(光開始剤、Ciba Spezialitaetenchemie GmbH, Lampertheim, DE)2.0g、Lucirin(登録商標)TPO(光開始剤、BASF AG, Ludwigshafen, DE)1.0g、およびByk(登録商標)306(流れ調整剤、Byk-Chemie, Wesel, DE)0.5gと充分に混合した。この被覆コンパウンドを、スパイラルブレードでアルミニウム薄板に塗布し、乾燥皮膜厚みを50μmとした。溶剤を80℃で10分間蒸発させ、次に、塗布物を1500mJ/cm2(1 CKラジエーター80W/cm)で紫外線硬化させ、次に、140℃で20分間熱硬化させた。冷却後、該薄板は、塗布物裂けを生じずに直径1cmのマンドレルのまわりに曲げることができた。
【実施例12】
【0108】
分散液または粉末スラリーの製造
Bayhydrol(登録商標)VP LS 2235(ヒドロキシル基含有ポリアクリレート分散液、固形分約45%、ヒドロキシル分3.3%、Bayer AG, Leverkusen, DE)100g、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS 2282(ウレタンアクリレート分散液、固形分約39%、HO基不含、Bayer AG, Leverkusen, DE)100g、エチルジイソプロピルアミン0.3g、水80g、および実施例8のポリイソシアネート46.8gの混合物を、この順序で逐次、機械攪拌器を備えた500mL3口フラスコに強く攪拌しながら導入した。30分間攪拌した後、メチルエチルケトン(補助溶剤)を、23mbarの減圧下に40℃で分散液から留去した。次に、Irgacure(登録商標)500(光開始剤、Ciba Spezialitaetenchemie GmbH, Lampertheim, DE)3.2gを攪拌しながら添加した。得られた被覆コンパウンドは、固形分が40.1%、DIN4ビーカーにおける流出粘度(discharge viscosity)が18秒であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する少なくとも1つの不飽和官能基を有し、式(1):
【化1】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される構造単位を有する、有機ポリイソシアネート。
【請求項2】
電子求引性基Xが、エステル、スルホキシド、スルホ、ニトロ、ホスホネート、ニトリル、イソニトリルまたはカルボニル基であることを特徴とする請求項1に記載のポリイソシアネート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリイソシアネートの製造法であって、
A1) 1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネートを、
A2) 少なくとも1つのイソシアネート反応性基、および化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する少なくとも1つの基を有する1つまたはそれ以上の化合物;
A3) 任意に、他のイソシアネート反応性化合物;および
A4) 一般式(2):
【化2】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される少なくとも1つのCH−酸性環式ケトンを含有するブロッキング剤と、
A5) 1つまたはそれ以上の触媒;および
A6) 任意に、補助物質および添加剤;および
A7) 任意に、溶剤の存在下に、
反応させることを含んで成る方法。
【請求項4】
塗料、被覆剤、サイズ剤、接着剤および成形品の製造における、請求項1または2に記載のポリイソシアネートの使用。
【請求項5】
B1) 請求項1または2に記載の1つまたはそれ以上のポリイソシアネート;および/または
B2) 式(1):
【化3】

[式中、
Xは、電子求引性基であり;
R1、R2は、互いに独立して、水素原子、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基、任意に置換されていてよい芳香族または芳香脂肪族基であり、各基は、12個までの炭素原子を含有し、任意に酸素、硫黄、窒素からの3個までのヘテロ原子を有し、任意にハロゲン原子によって置換されていてよく;
nは、0〜5の整数である]
で示される構造単位を有する1つまたはそれ以上の有機ポリイソシアネート;
B3) 少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有し、化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応する1つまたはそれ以上の官能基を任意に含有する1つまたはそれ以上の化合物;
B4) 任意に、化学線の作用下に重合を伴ってエチレン性不飽和化合物と反応し、NCO基もNCO反応性基も有さない官能基を有する化合物;
B5) 任意に、触媒;
B6) 任意に、補助物質および添加剤;
B7) 任意に、成分B1)〜B6)の相互の反応から得られる生成物
含んで成る被覆コンパウンド。
【請求項6】
成分B1)〜B6)を混合することによって、請求項5に記載の被覆コンパウンドを製造する方法。
【請求項7】
請求項5に記載の被覆コンパウンドから得られる塗膜。
【請求項8】
請求項7に記載の塗膜で被覆した基材。

【公表番号】特表2006−510786(P2006−510786A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562699(P2004−562699)
【出願日】平成15年12月6日(2003.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013829
【国際公開番号】WO2004/058848
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】