説明

新規人工抗原提示細胞およびそれらの用途

本発明は新規人工抗原提示細胞(aAPC)に関する。該aAPCは最低1種の刺激リガンドおよび最低1種の共刺激リガンドを含んでなり、該リガンドはそれぞれ目的のT細胞上のコグネイトの分子と特異的に結合し、それにより該T細胞の増殖を媒介する。本発明のaAPCは、目的のT細胞を増殖させるために有用な付加的な分子をさらに含み得る。本発明のaAPCは、目的のT細胞を増殖させるよう容易に設計し得る「在庫があり入手可能な」APCとして使用し得る。また、本発明のaAPCは、刺激、共刺激、ならびに目的T細胞の成長および増殖を媒介するいずれかの他の因子を同定するのに使用し得る。従って、本発明は、T細胞の活性化および増殖が利益を提供し得る新規治療薬の開発のための強力なツールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦の支援を受けた研究若しくは開発に関する声明
本研究は米国政府の資金(国立保健研究所(National Institutes of Health)助成金R21 AI060477、R01 CA105216およびR01 AI057838により部分的に支援され、そして、米国政府は従って本発明においてある種の権利を有しうる。
【背景技術】
【0002】
養子移入は、同種移植片拒絶を研究するためにMedawar(非特許文献1)により作られた用語である。養子免疫療法という用語は、癌若しくは感染性疾患の処置のための免疫担当細胞の移入を示す(非特許文献2;非特許文献3)。養子療法は、損傷を受けた組織若しくは系の生物学的機能を自己若しくは同種細胞によって置換、修復若しくは増強することを目的とした戦略とみなし得る。注入に際しての高度の生着を可能にした、ex vivoで増殖させたHIVに感染したポリクローナルCD4 T細胞の最初の成功裏の注入は、HIVに感染した個体のT細胞をex vivoで増殖させるために抗CD3および抗CD28ビーズで被覆した磁性ビーズ(CD3/28被覆ビーズ)を使用して実施された。8例の患者に、このプロトコル下で、最少の有害事象を伴い、共刺激したCD4細胞の51回の注入を投与した(非特許文献4)。
【0003】
HIV感染はHIV特異的CD8 T細胞の顕著な増殖を誘導する。これらのCD8 T細胞は、HIVの複製を制限しならびにHIV感染細胞を直接溶解する(非特許文献5;非特許文献6)可溶性因子を放出する(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。SIV攻撃前のCD8 T細胞の枯渇は確認されないウイルス複製および迅速な死につながり、HIVを慢性疾患にするのにCD8 T細胞活性が必要であることを示す(非特許文献10;非特許文献11)。それにもかかわらず、CD8 T細胞は、HIV感染を制御することに最終的には失敗する。HIV特異的T細胞は、高度に低下されたパーフォリン発現(非特許文献12;非特許文献13)、2種の重要なシグナル伝達受容体CD3ζおよびCD28のダウンレギュレーション(非特許文献14)、歪んだ成熟パターン(非特許文献15)、ならびにFas誘発性のアポトーシスに対する高感受性(非特許文献16)を有することが示された。従って、HIV特異的CD8 T細胞の最適の活性化がエフェクター機能を修復することができることが考えられる。
【0004】
抗CD3および抗CD28(CD3/28)被覆ビーズは、HIVに感染したCD4 T細胞の増殖を可能にした第一世代の人工APC(aAPC)であった(非特許文献17)。T細胞の活性化および増殖に必要とされるシグナルを送達することに加えて、CD3/28ビーズ刺激は、CCR5をダウンレギュレートしかつそのリガンドすなわちβ−ケモカインRANTES、マクロファージ炎症タンパク質−1α(MIP−1α)およびMIP−1βの発現をアップレギュレートすることにより、T細胞をR5感染に対し抵抗性にする(非特許文献18;非特許文献19)。数件のフェーズIおよびフェーズII試験は、CD3/28被覆ビーズを使用して増殖させた自己CD4 T細胞のR5に感染した個体への注入が、安全かつ実現可能の双方であることを示した(非特許文献19;非特許文献4;非特許文献20;非特許文献21)。より重要なことには、総リンパ球数の持続性の増加、CD4対CD8 T細胞比、サイトカインを分泌するT細胞の画分、およびリコール抗原に応答する能力が観察され、養子T細胞免疫療法が、HIVに感染した個体に少なくとも制限された免疫機能を戻し得ることを示唆する(非特許文献4)。これらの初期の試験の成功にもかかわらず、(1)CD8T細胞の増殖、(2)T細胞のあるサブセットを増殖させるのに必要とされうる付加的な共刺激シグナルの追加、(3)注入前のビーズの除去、および(4)高生着能力をもつ抗原特異的T細胞の生成の困難さを包含するいくつかの制限が示された。
【0005】
他者は、T細胞増殖CD3/28被覆ビーズを、遺伝子を改変したT細胞をHIV感染患者に導入するのに使用した。これらの研究(非特許文献20;非特許文献22;非特許文献23)において、CD4の細胞外ドメインおよびCD3ζ鎖の細胞内ドメインよりなるキメラ分子(CD4ζはレトロウイルス形質導入を介してCD4 T細胞に導入した)。CD4ζ改変T細胞は、DNA PCRにより注入後の全患者の末梢血中で検出され、そして全末梢血単核細胞(PBMC)の1〜3%という平均レベルが全部の注入後の時間点で持続された。延長された経過観察において、CD4ζは、注入後1年の18例の患者の17例の血液中で検出された。これらのレベルの持続性生着は、おそらく以前の細胞培養技術がアポトーシス若しくは複製老化に対する感受性を誘導していたかもしれないため、ヒトT細胞注入について以前に観察されたものより数桁より高い(非特許文献24;非特許文献25;非特許文献26;非特許文献27;非特許文献28)。これらの臨床結果は、ビーズに基づくaAPCで増殖させた共刺激したT細胞が安全でありかつ長期の生着に対する能力を有することを示す。しかしながら、試験被験体の制限された数、およびHIV治療試験における臨床エンドポイントを達成するのに必要とされる時間の長さにより、HIVに感染した個体への自己CD4 T細胞移入の臨床上の利益の統計学的有意性は測定し得なかった。
【0006】
免疫不全の制限において潜在的に有効な一方で、ポリクローナルCD4 T細胞は、HIV特異的応答に対する穏やかな効果のみを有することがありそうである。抗原特異的CD8 T細胞の養子移入を使用するヒトウイルス感染の免疫療法が、CMV、EBVおよびHIV感染の設定で研究されている。このアプローチは、CMVに対するHLA拘束性の抗原特異性をもつT細胞クローンを使用して評価された(非特許文献29;非特許文献30)。MHCが同一の骨髄ドナーから単離したCMV特異的CD8 T細胞をex vivoで増殖させ、そして14例の同種骨髄移植レシピエントに投与した。CMV特異的CTL活性の回復が各症例で見られ、そして、養子移入したCTLはin vivoで12週まで持続した。類似の一試験において、ネオマイシン耐性遺伝子で遺伝子的に印をつけた、ドナー由来のEBV特異的CD8およびCD4 T細胞を、T細胞を枯渇させた同種骨髄同種移植片の6例のレシピエントに投与した(非特許文献31;非特許文献32)。EBVでのin vivo若しくはex vivo攻撃に応答性の、遺伝子に印を付けたCD4およびCD8 T細胞は、注入後約18ヵ月間、低頻度でin vivoで持続した。HIVに対する単一特異性をもつCD8 T細胞(Nef)(非特許文献33)の1例の患者への注入は、ウイルスバリアントのCTL選択を示し、複数の標的に対するHIV特異的T細胞の注入がHIV複製を制御するために必要でありうることを示す。これらの試験の全部において、これらのT細胞の大多数の生着することの不能は、抗原特異的CD8 T細胞免疫療法の長期の効果の研究を制限した。該分野の主要な一課題は、生着しかつ慢性感染症とより効果的に戦うために強力なエフェクター機能を長期間有することができるCD8 T細胞を増殖させることである。しかしながら、十分な数の治療的T細胞に対する長期の必要性にもかかわらず、これらの細胞を増殖させるのに利用可能な方法が存在しない。
【0007】
HIV特異的T細胞はHIVを含有することが可能であるが、しかし根絶させることは可能でない。HIV感染の前若しくは間にCD8 T細胞を除去した研究は、確認されないウイルス複製およびAIDSへのはるかにより速い進行を示し、CD8 T細胞がHIVの制御において重要であることを示す(非特許文献10;非特許文献11)。しかしながら、HIV特異的T細胞は、一般にパーフォリン発現(非特許文献34)、およびHIVを宿主から排除するための他の不可欠なエフェクター機能を欠く。長期非進行者の研究は、これらの個体からのHIV特異的T細胞が増殖しかつパーフォリンを含有することがよりありそうであることを示し、高められたエフェクター機能をもつCD8 T細胞がAIDSへの進行を遅らせうることを示す(非特許文献35)。他の研究者は、2種の重要なシグナル伝達受容体CD3ζおよびCD28が、HIV特異的T細胞上でダウンレギュレートされること(非特許文献14;非特許文献36;非特許文献37)、また、HIV特異的T細胞がFas誘発性のアポトーシスに対しより感受性であること(非特許文献16)を示した。Appayら(非特許文献15)は、CD27およびCD28発現に基づくHIV、EBVおよびCMV特異的CD8 T細胞間の差違を検査した。早期に分化したT細胞はCD27およびCD28双方を発現し、そして乏しいエフェクター機能、しかし優れた増殖能力を有した。中間のT細胞はCD27陽性しかしCD28陰性であり、そしてこれらの細胞は制限された増殖およびエフェクター機能を有した。最も分化したT細胞はCD27およびCD28双方を欠き、そしてこれらの細胞は増殖能力をほとんど有しなかったが、しかし高められたエフェクター機能を有した。HIV特異的T細胞の大部分が該中間の表現型を有したことが観察された。従って、増殖能力およびエフェクター機能の双方を欠くこの中間のT細胞表現型に「留まって」いる細胞は、HIV特異的T細胞の無効性への要因でありうる(非特許文献15)。さらに、CD8 T細胞の機能はCD4 T細胞の機能に高度に依存し(非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40)、また、HIVはCD4 T細胞を標的とするため、HIV感染で観察されたCD8 T細胞の欠点は、T細胞ヘルプの欠如の結果であり得る。
【0008】
従って、多様な急性および慢性感染症と闘うためにT細胞を刺激し、かつ、養子免疫療法のため十分な数の治療的T細胞を広める方法を提供するという長年の切実な必要性が存在する。本発明はこれおよび他の必要性をかなえる。
【非特許文献1】Medawar、1954、Proc.Royal Soc.143:58−80
【非特許文献2】June,C.H.編、2001、Cancer Chemotherapy and Biotherapy:Principles and Practice、Lippincott Williams & Wilkins、ボルチモア中
【非特許文献3】Vonderheideら、2003、Immun.Research 27:1−15
【非特許文献4】Levineら、2002、Nature Med.8:47−53
【非特許文献5】Walkerら、1987、Nature 328:345−348
【非特許文献6】Koupら、1994、J.Virol.68:4650−4655
【非特許文献7】Walkerら、1986、Science 234:1563−1566
【非特許文献8】Zhangら、2002、Science 298:995−1000
【非特許文献9】Cocchiら、1995、Science 270:1811−1815
【非特許文献10】Schmitzら 1999、Science 283:857−860
【非特許文献11】Jinら、1999、J.Exp.Med.189:991−998
【非特許文献12】Zhangら、2003、Blood 101:226−235
【非特許文献13】Appayら、2000、J.Exp.Med.192:63−75
【非特許文献14】Trimbleら、2000、Blood 96:1021−1029
【非特許文献15】Appayら、2002、Nature Med.8、379−385
【非特許文献16】Muellerら、2001、Immunity、15:871−882
【非特許文献17】Levineら、1996、Science 272:1939−1943
【非特許文献18】Rileyら、1997、J.Immunol.158:5545−5553
【非特許文献19】Carrollら、1997、Science 276:273−276
【非特許文献20】Walkerら、2000、Blood 96:467−474
【非特許文献21】Rangaら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 95:1201−1206
【非特許文献22】Mitsuyasuら、2000、Blood 96:785−793
【非特許文献23】Deeksら、2002、Mol.Ther.5:788−797
【非特許文献24】Rosenbergら、1990、N.Engl.J.Med.323:570−578
【非特許文献25】Yeeら、2002、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:16168−16173
【非特許文献26】Brodieら、1999、Nature Med.、5:34−41
【非特許文献27】Riddellら、1996、Nature Med.2:216−223
【非特許文献28】Riddellら、2000、Cancer Journal 6:S250−258
【非特許文献29】Riddellら、1992、Science 257:238−241
【非特許文献30】Walterら、1995、N.Engl.J.Med.333:1038−1044
【非特許文献31】Rooneyら、1995、Lancet 345:9−13
【非特許文献32】Heslopら、1996、Nature Med.2:551−555
【非特許文献33】Koenigら、1995、Nature Med.1:330−336
【非特許文献34】Gandhiら、2002、Annu.Rev.Med.53:149−172
【非特許文献35】Miguelesら、2002、Nature Immunol.3:1061−1068
【非特許文献36】Trimbleら、1998、Blood 91:585−594
【非特許文献37】Trimbleら、2000、J.Virol.74;7320−7330
【非特許文献38】Zajacら、1998、J.Exp.Med.188:2205−2213
【非特許文献39】Shedlockら、2003、Science 300:337−339
【非特許文献40】Sunら、2003、Science 300:339−342
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
本発明は、単離された人工抗原提示細胞(aAPC)を包含し、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは最低1種の免疫刺激リガンドおよび最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、かつ、さらに、前記aAPCは前記刺激リガンドおよび前記共刺激リガンドを発現しそして前記aAPCと接触させたT細胞を刺激しかつ増殖させ得る。
【0010】
本発明の一態様において、刺激リガンドは、抗原を負荷された主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCクラスI)分子、抗CD3抗体、抗CD28抗体および抗CD2抗体よりなる群から選択されるポリペプチドである。
【0011】
本発明の別の態様において、前記共刺激リガンドは、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、ICOS−L、ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、ILT3、ILT4、3/TR6、およびB7−H3と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される最低1種の共刺激リガンドである。
【0012】
本発明のなお別の態様において、前記共刺激リガンドは、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、LFA−1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、BTLA、Tollリガンド受容体、およびCD83と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される共刺激分子の最低1種と特異的に結合する。
【0013】
本発明のさらに別の態様において、前記共刺激リガンドは、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、LFA−1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、Tollリガンド受容体、およびCD83と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される最低1種の分子と特異的に結合する抗体である。
【0014】
本発明の一態様において、前記aAPCは、CD32分子およびCD64分子よりなる群から選択されるFcγ受容体をさらに含んでなる。
【0015】
本発明の別の態様において、前記LVは、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、ペプチド−MHC四量体、ペプチド−MHC三量体、ペプチド−MHC二量体、およびペプチド−MHC単量体よりなる群から選択される最低1種の抗原をコードする核酸を含んでなる。
【0016】
本発明のなお別の態様において、前記腫瘍抗原は、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MART−1、GP100、CEA、HER−2/Neu、PSA、WT−1、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4およびテロメラーゼよりなる群から選択される。
【0017】
本発明のさらに別の態様において、前記LVは、サイトカインおよびケモカインから選択される最低1種のペプチドをコードする核酸を含んでなる。
【0018】
本発明のなお別の態様において、前記サイトカインは、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−21、インターフェロン−α(IFNα)、インターフェロン−β(IFNβ)、インターフェロン−γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、腫瘍壊死因子−β(TNFβ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)よりなる群から選択される最低1種のサイトカインである。
【0019】
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法を包含し、前記方法は、前記T細胞を本発明のaAPCと接触させることを含んでなり、さらに、前記共刺激リガンドは前記既知の共刺激分子と特異的に結合して、それにより前記T細胞の増殖を特異的に誘導する。
【0020】
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法を包含し、前記方法は、前記既知の共刺激分子を発現する最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を本発明のaAPCと接触させることを含んでなり、前記aAPCは前記既知の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを発現し、前記既知の共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が、前記T細胞の増殖を誘導する。
【0021】
本発明は、T細胞集団のサブセットの特異的増殖方法を包含し、前記方法は、前記サブセットの最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を本発明のaAPCと接触させることを含んでなり、前記aAPCは前記サブセットの前記T細胞上の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを含んでなり、前記共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記サブセットの前記T細胞の増殖を誘導し、それによりT細胞集団の1サブセットを特異的に増殖させる。
【0022】
本発明は、T細胞サブセットの活性化を特異的に誘導する共刺激リガンド若しくはその組合せの同定方法を包含し、前記方法は、本発明のaAPCとT細胞の集団を接触させること、および、前記T細胞集団の増殖のレベルを、前記aAPCと接触されないT細胞のそれ以外は同一の集団の増殖のレベルと比較することを含んでなり、前記aAPCと接触されないT細胞の前記それ以外は同一の集団の増殖のレベルと比較した、前記aAPCと接触させた前記T細胞の増殖のより高いレベルが、前記共刺激リガンドが前記T細胞の活性化を特異的に誘導することの指標である。
【0023】
本発明は、哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法を包含し、前記方法は本発明のaAPCを前記哺乳動物に投与することを含んでなり、前記aAPCは前記抗原を負荷されたMHCクラスI分子をさらに含んでなり、前記aAPCは、前記抗原に特異的なT細胞の増殖を誘導して、それにより前記哺乳動物における前記抗原に対するT細胞応答を誘導する。
【0024】
本発明は、それの必要な哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法を包含し、前記方法は、前記哺乳動物から細胞の集団を得ること(前記集団はT細胞を含んでなる)、細胞の前記集団を本発明のaAPCと接触させること(前記aAPCは前記抗原を負荷されたMHCクラスI複合体をさらに含んでなり、それにより、前記細胞を前記aAPCと接触させることが、前記抗原に特異的な抗原特異的T細胞の増殖を誘導する)、前記抗原特異的T細胞を細胞の前記集団から単離すること、および前記抗原特異的T細胞を前記哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物において前記抗原に対するT細胞応答を誘導することを含んでなる。
【0025】
本発明は、制御性T(Treg)細胞の集団の特異的増殖方法を包含し、該方法は前記集団を請求項1に記載のaAPCと接触させることを含んでなり、前記aAPCは抗CD3抗体および抗CD28抗体を負荷されたFcγ受容体をさらに含んでなり、該方法は、細胞の前記集団をサイトカインと接触させることをさらに含んでなり、前記抗CD3抗体および前記抗CD28抗体の前記Treg細胞との結合が前記Treg細胞の増殖を誘導し、それによりTreg細胞の集団を特異的に増殖させる。
【0026】
本発明の一態様において、前記サイトカインはインターロイキン−2である。
【0027】
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖を特異的に誘導するためのキットを包含し、前記キットは有効量のaAPCを含んでなり、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは前記既知の共刺激分子を特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記既知の共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記T細胞を刺激しかつ増殖させ、前記キットは、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる。
【0028】
本発明は、既知の刺激分子を発現するT細胞の増殖を特異的に誘導するためのキットを包含し、前記キットは有効量のaAPCを含んでなり、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは前記既知の刺激分子を特異的に結合する最低1種の刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記既知の刺激分子の前記刺激リガンドとの結合が前記T細胞を刺激しかつ増殖させ、前記キットは、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる。
【0029】
本発明は、T細胞集団のサブセットを特異的に増殖させるためのキットを包含し、前記キットは有効量のaAPCを含んでなり、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは前記T細胞集団上の共刺激分子を特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記T細胞集団を刺激しかつ増殖させ、前記キットは、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる。
【0030】
本発明は、T細胞サブセットの活性化を特異的に誘導する、共刺激リガンド若しくは前記リガンドの組合せを同定するためのキットを包含し、前記キットは複数のaAPCを含んでなり、各前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは共刺激分子と特異的に結合する最低1種の既知の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記キットは、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる。
【0031】
[発明の詳細な記述]
本発明は、レンチウイルスベクターを使用して、多数のT細胞刺激および共刺激リガンド、ならびにそれらに対する抗体、ならびに、とりわけ抗原、サイトカインを安定に発現するaAPCを効率的に製造し得るという驚くべき発見に関する。本発明はまた、製造される新規aAPC、ならびに所望のT細胞を増殖させ、特定のT細胞サブセットを活性化しかつ/若しくは増殖させ、特定のT細胞サブセットの増殖を促進し得る刺激分子、共刺激分子およびそれらの組合せを同定するためのそれらの使用方法、ならびに該新規aAPCを使用するT細胞の増殖および刺激に関する多数の治療的用途にも関する。
【0032】
本明細書に開示されるデータにより示されるとおり、T細胞活性化に際して、IFNγのような因子が分泌され、それらは順にK562細胞中でのIL−15のようなサイトカインおよびB7−H3のような共刺激リガンドの発現を誘導する(Thomasら、2002、Clin.Immunol.105:259−272)。aAPCとT細胞の間の交換すなわち「クロストーク」は、細胞に基づくaAPCがビーズに基づくaAPCより効率的なT細胞増殖系である理由である。これらの細胞が継続的に更新可能な「在庫があり入手可能な」樹状細胞(DC)置換系であるようなK562細胞が工作される。aAPCの使用は、細胞培養のためのAPCの供給源としての自己DCを生成させるのに必要とされる時間および費用を未然に除くとみられる。付加的な共刺激シグナルは、HIV特異的CD8 T細胞からのエフェクター機能をレスキューするために必要とみられ、また、本明細書のデータにより示されるとおり、aAPC細胞はこうしたシグナルを所望のとおり発現するよう改変し得る。再度、これは、T細胞のあるサブセットを増殖させることを必要としうる付加的な共刺激シグナルを追加することを包含しない、ビーズに基づく系を上回る一利点である。
【0033】
以前、細胞に基づくaAPCは、CD32および4−1BBL発現プラスミドを用いるK562細胞の電気穿孔法により創製された。薬物選択、細胞分取および限界希釈の組合せを使用して、高発現クローンが単離された(Mausら、2002、Nature Biotechnol.20:143−148)。有効ではあるものの、このアプローチは時間がかかり、かつ、薬物選択マーカーを使用することの必要性により制限されるの双方である。薬物選択の依存は、K562細胞に導入され得る構築物の数を制限し、そして臨床使用が企図される場合にGMP遵守の問題を引き起こす。
【0034】
定義
本明細書で使用されるところの以下の用語のそれぞれは、この節でそれと関連した意味するところを有する。
【0035】
冠詞「a」および「an」(1つの)は、該冠詞の文法上の目的語の1つ若しくは1つ以上(すなわち最低1つ)を指すために本明細書で使用する。例として、「an element」(要素)は1個の要素若しくは1個以上の要素を意味している。
【0036】
本明細書で使用されるところの疾患を「軽減する」ことは、疾患の1種若しくはそれ以上の症状の重症度を低下させることを意味している。
【0037】
本明細書で使用されるところの「アミノ酸」は、以下の表に示されるところのそれらの完全な名称、それらに対応する三文字記号、若しくはそれらに対応する一文字記号により表される:
【0038】
【表1】

「アンチセンス」は、とりわけ、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、若しくは該非コーディング鎖に実質的に相同である配列を指す。本明細書で定義されるところのアンチセンス配列は、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列が該DNA分子のコーディング鎖のコーディング部分のみに相補的であることは必要でない。アンチセンス配列は、タンパク質をコードするDNA分子のコーディング鎖上の指定される制御配列に対し相補的であることができ、その制御配列は該コーディング配列の発現を制御する。
【0039】
該用語が本明細書で使用されるところの「アプリケーター」という用語により、本発明の化合物および組成物を投与するための、限定されるものでないが皮下注射器、ピペットなどを挙げることができるいかなる装置も意味している。
【0040】
「疾患」は、動物が恒常性を維持し得ない、および該疾患が軽減されない場合には該動物の健康状態が悪化し続ける、動物の一健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、該動物が恒常性を維持することが可能であるが、しかし、該動物の健康状態がそれが該障害の非存在下にありうるよりも少なく好都合である健康状態である。処置されないまま放置されれば、障害は動物の健康状態の将来の低下を必ずしも引き起こすわけではない。
【0041】
本明細書で使用されるところの「有効量」という用語により、哺乳動物に投与される場合に、該化合物の非存在下で検出されるT細胞応答に比較してのT細胞応答の検出可能なレベルを引き起こす量を意味している。T細胞応答は、無数の技術に認識される方法により容易に評価され得る。
【0042】
当業者は、本明細書で投与される化合物若しくは組成物の量が変動し、また、処置されている疾患若しくは状態、処置されている哺乳動物の齢ならびに健康および身体状態、疾患の重症度、投与されている特定の化合物などのような多数の因子に依存して容易に決定され得ることを理解するであろう。
【0043】
該用語が本明細書で使用されるところの「説明資料」は、本明細書で列挙される多様な疾患若しくは障害を軽減若しくは処置することを遂げるためのキット中の本発明の組成物および/若しくは化合物の有用性を知らせるのに使用し得る、刊行物、録音・録画、図若しくはいかなる他の表現媒体も包含する。場合によっては、若しくはあるいは、説明資料は、本明細書の別の場所に開示されるところを包含する細胞若しくは組織若しくは哺乳動物における疾患若しくは障害の1種若しくはそれ以上の軽減方法を記述しうる。
【0044】
キットの説明資料は、例えば、本発明の化合物および/若しくは組成物を含有する容器に付属されうるか、または該化合物および/若しくは組成物を含有する容器と一緒に発送されうる。あるいは、説明資料は、受領者が該説明資料および化合物を共同して使用するという意図をもって、容器と別個に発送されうる。
【0045】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、有効成分が組合せられることができかつ組合せ後に被験者に有効成分を投与するのに使用し得る化学物質組成物を意味している。
【0046】
本明細書で使用されるところの「生理学的に許容できる」エステル若しくは塩という用語は、製薬学的組成物が投与されることになる被験体にとって有害でない、該組成物のいかなる他の成分とも適合性である有効成分のエステル若しくは塩の形態を意味している。
【0047】
本発明のタンパク質「をコードする核酸の一部分若しくは全部に対し相補的」により、例えば共刺激リガンドタンパク質をコードしない核酸の配列を意味している。むしろ、細胞中で発現されている配列は、該タンパク質をコードする核酸の非コーディング鎖に同一であり、そして従って該タンパク質をコードしない。
【0048】
本明細書で使用されるところの「共刺激」および「アンチセンス」という用語は全くの同義ではない。「アンチセンス」は、とりわけ、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、若しくは該非コーディング鎖に実質的に相同である配列を指す。
【0049】
本明細書で使用されるところの「相補的」は、2種の核酸、例えば2種のDNA分子の間のサブユニットの配列の相補性の広範な概念を指す。該分子の双方中のあるヌクレオチド位置が相互と塩基対形成することが通常可能なヌクレオチドにより占有される場合には、該核酸はこの位置で相互に対し相補的であるとみなされる。従って、2種の核酸は、該分子のそれぞれ中の実質的な数の対応する位置(最低50%)が、通常相互と塩基対形成する(例えばA:TおよびG:Cヌクレオチド対)ヌクレオチドにより占有されている場合に、相互に対し相補的である。本明細書で定義されるところのアンチセンス配列は、タンパク質をコードする二本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列がDNA分子のコーディング鎖のコーディング部分のみに相補的であることは必要でない。アンチセンス配列は、タンパク質をコードするDNA分子のコーディング鎖上の指定される制御配列に相補的であることができ、その制御配列はコーディング配列の発現を制御する。
【0050】
遺伝子の「コーディング領域」は、該遺伝子の転写により産生されるmRNA分子のコーディング領域とそれぞれ相同であるか若しくはそれに相補的である、該遺伝子のコーディング鎖のヌクレオチド残基、および該遺伝子の非コーディング鎖のヌクレオチドよりなる。
【0051】
mRNA分子の「コーディング領域」もまた、mRNA分子の転写の間に転移RNA分子のアンチコドン領域と一致するか若しくは終止コドンをコードするmRNA分子のヌクレオチド残基よりなる。コーディング領域は、従って、mRNA分子によりコードされる成熟タンパク質中に存在しないアミノ酸残基(例えばタンパク質輸出シグナル配列中のアミノ酸残基)に対応するヌクレオチド残基を包含しうる。
【0052】
「コードすること」は、ヌクレオチドの定義された配列(すなわちrRNA、tRNAおよびmRNA)若しくはアミノ酸の定義された配列のいずれかを有する、生物学的過程において他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型としてはたらく、遺伝子、cDNA若しくはmRNAのようなポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、ならびにそれら由来の生物学的特性を指す。従って、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞若しくは他の生物学的系中でタンパク質を産生する場合にタンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列に同一でありかつ通常は配列表に提供されるコーディング鎖、および遺伝子若しくはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖の双方が、その遺伝子若しくはcDNAのタンパク質若しくは他の産物をコードすると称され得る。
【0053】
別の方法で明記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、相互の縮重バージョンでありかつ同一のアミノ酸配列をコードする、全部のヌクレオチド配列を包含する。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列はイントロンを包含しうる。
【0054】
「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に効果的に連結された発現制御配列を含んでなる組換えポリヌクレオチドを含んでなるベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なcisに作用する要素を含んでなり;発現のための他の要素は、宿主細胞により、若しくはin vitro発現系中で供給され得る。発現ベクターは、組換えポリヌクレオチドを組み込む、コスミド、プラスミド(例えば裸の若しくはリポソーム中に含有される)、ならびにウイルス(例えばレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)のような、当該技術分野で既知の全部のものを包含する。
【0055】
オリゴヌクレオチドの第一の領域は、2領域が相互に隣接する場合、若しくは2領域が約1000ヌクレオチド残基を超えない、および好ましくは約100ヌクレオチド残基を超えないだけ離れている場合に、該オリゴヌクレオチドの第二の領域に「隣接する」。
【0056】
本明細書で使用されるところの、核酸に適用されるところの「フラグメント」という用語は、通常、長さ最低約18ヌクレオチド、好ましくは最低約24ヌクレオチド、より典型的には約24から約50ヌクレオチドまで、好ましくは最低約50ないし約100ヌクレオチド、なおより好ましくは最低約100ヌクレオチドないし約200ヌクレオチド、さらになおより好ましくは最低約200ないし約300、なおより好ましくは最低約300ヌクレオチドないし約400ヌクレオチド、さらになおより好ましくは最低約400ないし約500であることができ、そして、最も好ましくは、核酸フラグメントは長さが約500ヌクレオチドより大きいことができる。
【0057】
タンパク質に適用されるところの刺激若しくは共刺激リガンドタンパク質または抗原の「フラグメント」は長さが約6アミノ酸である。より好ましくは、タンパク質のフラグメントは、長さが約8アミノ酸、なおより好ましくは最低約10、なおより好ましくは最低約15、なおより好ましくは最低約20、なおより好ましくは最低約30、なおより好ましくは約40、およびより好ましくは最低約50、より好ましくは最低約60、なおより好ましくは最低約70、なおより好ましくは最低約80、ならびにより好ましくは最低約100アミノ酸長さのアミノ酸である。
【0058】
「ゲノムDNA」は、それが天然の宿主中で存在するところの遺伝子と相同なヌクレオチド配列を有するDNA鎖である。例として、染色体のフラグメントはゲノムDNAである。
【0059】
本明細書で使用されるところの「相同な」は、2種のポリマー分子間、例えば2種の核酸分子、例えば2種のDNA分子若しくは2種のRNA分子間、または2種のポリペプチド分子間のサブユニット配列の類似性を指す。該2種の分子の双方中のあるサブユニット位置が同一の単量体サブユニットにより占有される場合、例えば、2種のDNA分子のそれぞれ中の一位置がアデニンにより占有される場合には、それらはその位置で完全にすなわち100%相同である。2配列間の相同性パーセントは、一致する若しくは相同な位置の数の直接の関数であり、例えば、2種の化合物の配列中の位置の半分(例えば長さ10サブユニットのポリマー中の5位置)が相同である場合には、該2配列は50%同一であり、位置の90%、例えば10のうち9が一致する若しくは相同である場合は、該2配列は90%の相同性を共有する。例として、DNA配列5’ATTGCC3’および5’TATGGC3’は50%の相同性を共有する。
【0060】
加えて、「相同性」若しくは「同一性」という用語が核酸およびタンパク質を指すのに本明細書で使用される場合は、それは核酸およびアミノ酸配列双方のレベルでの相同性若しくは同一性に適用されると解釈されるべきである。
【0061】
「単離された核酸」は、天然に存在する状態でそれに隣接する配列から分離されている核酸セグメント若しくはフラグメント、例えば、該フラグメントに通常隣接する配列、例えばそれが天然に存在するゲノム中のフラグメントに隣接する配列から取り出されたDNAフラグメントを指す。該用語は、細胞中でそれに天然に付随する核酸、例えばRNA若しくはDNAまたはタンパク質に天然に付随する他の成分から実質的に精製された核酸にもまた当てはまる。該用語は、従って、例えばベクター、自律複製プラスミド若しくはウイルス、または原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれているか、あるいは他の配列から独立した別個の分子として(例えば、PCR若しくは制限酵素消化により生じられたcDNAまたはゲノム若しくはcDNAフラグメントとして)存在する組換えDNAを包含する。それはまた、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAも包含する。
【0062】
本発明の文脈において、一般に存在する核酸塩基の以下の略語を使用する。「A」はアデノシンを指し、「C」はシチジンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、そして「U」はウリジンを指す。
【0063】
2種のポリヌクレオチドを「操作可能に連結される」として記述することにより、一本鎖若しくは二本鎖核酸部分が、該2種のポリヌクレオチドの最低1種が、それが他者に対して特徴づけられる生理学的効果を発揮することが可能であるような様式で、核酸部分内に配置された2種のポリヌクレオチドを含んでなることを意味している。例として、ある遺伝子のコーディング領域に操作可能に連結されたプロモーターは、該コーディング領域の転写を促進することが可能である。
【0064】
好ましくは、所望のタンパク質をコードする核酸がプロモーター/制御配列をさらに含んでなる場合、該プロモーター/制御は、それが細胞中での該所望のタンパク質の発現を駆動するような、所望のタンパク質コーディング配列の5’端に配置される。一緒にすれば、所望のタンパク質およびそのプロモーター/制御配列をコードする核酸は「導入遺伝子」を含んでなる。
【0065】
本明細書で使用されるところの「プロモーター/制御配列」という用語は、該プロモーター/制御配列に操作可能に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味している。いくつかの場合には、この配列はコアプロモーター配列であることができ、そして、他の場合には、この配列は、エンハンサー配列、および該遺伝子産物の発現に必要とされる他の調節エレメントもまた包含しうる。プロモーター/制御配列は、例えば組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものでありうる。
【0066】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコード若しくは指定するポリヌクレオチドと操作可能に連結される場合に、細胞の大部分の若しくは全部の生理学的条件下の生存ヒト細胞中で該遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0067】
「誘導可能な」プロモーターは、遺伝子産物をコード若しくは指定するポリヌクレオチドと操作可能に連結される場合に、実質的に該プロモーターに対応する誘導物質が細胞中に存在する場合にのみ生存ヒト細胞中で該遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0068】
「部位特異的」プロモーターは、遺伝子産物をコード若しくは指定するポリヌクレオチドと操作可能に連結される場合に、実質的に細胞が該プロモーターに対応する組織型の細胞である場合にのみ生存ヒト細胞中で該遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
【0069】
「ポリアデニル化配列」は、転写されたメッセンジャーRNA配列へのポリA尾部の付加を指図するポリヌクレオチド配列である。
【0070】
「ポリヌクレオチド」は、核酸の一本鎖若しくは平行および反平行鎖を意味している。従って、ポリヌクレオチドは一本鎖若しくは二本鎖いずれの核酸でもありうる。
【0071】
「核酸」という用語は、典型的に大型のポリヌクレオチドを指す。
【0072】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的に、一般には約50ヌクレオチドを超えない短いポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわちA、T、GC)により表される場合に、これは「U」が「T」の変わりに用いられるRNA配列(すなわちA、U、G、C)もまた包含することが理解されるであろう。
【0073】
ポリヌクレオチド配列を記述するのに慣習的表記法を本明細書で使用する。すなわち、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端が5’端であり;二本鎖ポリヌクレオチド配列の左の方向は5’の方向と称される。
【0074】
生来のRNA転写物へのヌクレオチドの5’ないし3’付加の方向が転写方向と称される。mRNAと同一の配列を有するDNA鎖は「コーディング鎖」と称され;該DNA上の参照点に対し5’に位置する該DNA鎖上の配列は「上流配列」と称され;該DNA上の参照点に対し3’である該DNA鎖上の配列は「下流配列」と称される。
【0075】
ポリヌクレオチドの一「部分」は、該ポリヌクレオチドの最低少なくとも約20の連続したヌクレオチド残基を意味している。ポリヌクレオチドの一部分は該ポリヌクレオチドのすべてのヌクレオチド残基を包含しうることが理解される。
【0076】
「プライマー」は、指定されたポリヌクレオチド鋳型に特異的にハイブリダイズしかつ相補ポリヌクレオチドの合成のための開始点を提供することが可能であるポリヌクレオチドを指す。こうした合成は、合成が誘発される条件下、すなわちヌクレオチド、相補ポリヌクレオチド鋳型、およびDNAポリメラーゼのような重合のための剤の存在下にポリヌクレオチドプライマーが置かれる場合に起こる。プライマーは典型的には一本鎖であるが、しかし二本鎖であってもよい。プライマーは典型的にはデオキシリボ核酸であるが、しかし多様な合成および天然に存在するプライマーが多くの応用に有用である。プライマーは、合成の開始の部位としてはたらくためにそれにハイブリダイズするようそれが設計されている鋳型に対し相補的であるが、しかし該鋳型の正確な配列を反映する必要はない。こうした場合には、鋳型へのプライマーの特異的ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件の緊縮性に依存する。プライマーは、例えば色素生産性、放射活性若しくは蛍光部分で標識し得、そして検出可能な部分として使用し得る。
【0077】
「プローブ」は、別のポリヌクレオチドの指定された配列に特異的にハイブリダイズすることが可能であるポリヌクレオチドを指す。プローブは標的の相補ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするが、しかし鋳型の正確な相補配列を反映する必要はない。こうした場合には、標的へのプローブの特異的ハイブリダイゼーションはハイブリダイゼーション条件の緊縮性に依存する。プローブは、例えば色素生産性、放射活性若しくは蛍光部分で標識し得、そして検出可能な部分として使用し得る。
【0078】
「組換えポリヌクレオチド」は、天然に一緒に結合されない配列を有するポリヌクレオチドを指す。増幅若しくは集成した組換えポリヌクレオチドを適するベクター中に包含することができ、そして該ベクターを使用して適する宿主細胞を形質転換し得る。
【0079】
組換えポリヌクレオチドは、非コーディング機能(例えばプロモーター、複製起点、リボソーム結合部位など)を同様に供しうる。
【0080】
「組換えポリペプチド」は組換えポリヌクレオチドの発現に際して産生されるものである。
【0081】
「ポリペプチド」は、アミノ酸残基から構成されるポリマー、関係する天然に存在する構造バリアント、ならびにペプチド結合を介して連結されたそれらの合成の天然に存在しないアナログ、関係する天然に存在する構造バリアント、およびそれらの合成の天然に存在しないアナログを指す。合成ポリペプチドは、例えば自動ポリペプチド合成機を使用して合成し得る。
【0082】
「タンパク質」という用語は典型的に大型のポリペプチドを指す。
【0083】
「ペプチド」という用語は典型的に短いポリペプチドを指す。
【0084】
ポリペプチド配列の特徴を描くのに本明細書で慣習的表記法を使用する。すなわち、ポリペプチド配列の左端がアミノ末端であり;ポリペプチド配列の右端がカルボキシル末端である。
【0085】
本明細書で使用されるところの「レポーター遺伝子」という用語は、その発現が既知の方法を使用して検出され得る遺伝子を意味している。例として、大腸菌(Eschelichia coli)のlacZ遺伝子を培地中でのレポーター遺伝子として使用しうる。lacZ遺伝子の発現は、o−ニトロフェニル−β−ガラクトシドのような色素生産性基質を培地に添加することにより、既知の方法を使用して検出し得るからである(Gerhardtら編、1994、Methods for General and Molecular Bacteriology、American Society for Microbiology、ワシントンDC、p.574)。
【0086】
「制限部位」は制限エンドヌクレアーゼにより認識される二本鎖核酸の一部分である。
【0087】
第一のオリゴヌクレオチドは、最低約73%、より好ましくは最低約75%、なおより好ましくは最低約80%、なおより好ましくは最低約85%、なおより好ましくは最低約90%、および最も好ましくは最低約95%相補的であるオリゴヌクレオチドのみが相互とアニーリングする条件下で2種のオリゴヌクレオチドがアニーリングする場合に、「高緊縮性で」第二のオリゴヌクレオチドとアニーリングする。2種のオリゴヌクレオチドをアニーリングするのに使用される条件の緊縮性は、とりわけ、アニーリング媒体の(欠落)温度、イオン強度、インキュベーション時間、オリゴヌクレオチドの長さ、オリゴヌクレオチドのG−C含量、および既知の場合は該2種のオリゴヌクレオチド間の非相同性の期待される程度の関数である。アニーリング条件の緊縮性の調節方法は既知である(例えば、Sambrookら、1989、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ニューヨークを参照されたい)。
【0088】
本明細書で使用されるところの「導入遺伝子」という用語は、外因性核酸がトランスジェニック細胞若しくは哺乳動物によりコードされる外因性核酸配列を意味している。
【0089】
「組換え細胞」は導入遺伝子を含んでなる細胞である。こうした細胞は真核生物細胞でも若しくは原核生物細胞でもありうる。また、トランスジェニック細胞は、限定されるものでないが、aAPC、導入遺伝子を含んでなる胚性幹細胞、細胞が導入遺伝子を含んでなるトランスジェニックES細胞由来のキメラ哺乳動物から得られる細胞、トランスジェニック哺乳動物から得られる細胞、またはその胎児若しくは胎盤組織、および該導入遺伝子を含んでなる原核生物細胞を挙げることができる。
【0090】
「外因性核酸」という用語により、細胞若しくは動物中への核酸の導入を助長する目的上開発された技術を使用して核酸が細胞若しくは動物中に導入されたことを意味している。
【0091】
「標識」ポリペプチドは、目的のタンパク質にペプチド結合により連結された場合に、タンパク質の位置を推定するため、それを細胞抽出物から精製するため、それを結合アッセイでの使用のため固定するため、またはその生物学的特性および/若しくは機能を別の方法で研究するために使用しうる、いかなるタンパク質も意味している。
【0092】
本明細書で使用されるところの「処置する」ことは、疾患(すなわちウイルス感染症、腫瘍増殖および/若しくは転移、または、T細胞の減少された数および/若しくは低下された活性により媒介される他の効果など)の症状が患者により経験される頻度を低下させることを意味している。
【0093】
本明細書で使用されるところの「ベクター」という用語により、外因性核酸をコードするいかなるプラスミド若しくはウイルスも意味している。該用語は、例えばポリリシン化合物などのような、ビリオン若しくは細胞中への核酸の移入を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物を包含するともまた解釈されるべきである。ベクターは、本発明のタンパク質および/若しくは抗体をコードする核酸の患者若しくはaAPCへの送達のための送達ベヒクルとして適するウイルスベクターでありうるか、または、ベクターは、同一の目的上適する非ウイルスベクターでありうる。
【0094】
細胞および組織へのDNAの送達のためのウイルスおよび非ウイルスベクターの例は当該技術分野で公知であり、そして例えばMaら(1997、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:12744−12746)に記述されている。ウイルスベクターの例は、限定されるものでないがレンチウイルスベクター、組換えアデノウイルス、組換えレトロウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、組換え鶏痘ウイルスなどを挙げることができる(Cranageら、1986、EMBO J.5:3057−3063;1994年8月18日公開の国際特許出願第WO94/17810号明細書;1994年10月27日公開の国際特許出願第WO94/23744号明細書)。非ウイルスベクターの例は、限定されるものでないがリポソーム、DNAのポリアミン誘導体などを挙げることができる。
【0095】
「治療的」処置は、病的状態の兆候を縮小若しくは排除しかつ/またはそれらの兆候の頻度、持続期間および強度を低下若しくは減少させる目的上、該兆候を表す患者に投与される処置である。
【0096】
化合物の「有効量」は、T細胞のそれ以外は同一の集団、またはaAPC若しくはそれにより増殖されたT細胞が投与されない哺乳動物に比較した場合に、aAPCが投与されかつ/若しくはそれと接触されるT細胞の集団若しくは哺乳動物に検出可能な効果を提供するのに十分である細胞(例えば、aAPCまたはそれにより刺激かつ/若しくは増殖されたT細胞)の量である。
【0097】
当業者は、有効量が変動し、かつ、処置されている疾患若しくは状態、処置されている哺乳動物の齢ならびに健康および身体状態、疾患の重症度、投与されている特定の化合物若しくは細胞、aAPC若しくはそれにより増殖されたT細胞の活性若しくは発現のレベルなどのような多数の因子に基づき容易に決定し得ることを理解するであろう。一般に、有効量は約0.1mg/kgないし約100mg/kgの間、より好ましくは約1mg/kgおよび25mg/kgから設定することができる。化合物若しくは細胞(例えば、サイトカイン、刺激分子若しくはそれに対するリガンド、共刺激分子若しくはそれに対するリガンド、リガンドと特異的に結合する抗体、こうしたタンパク質をコードする核酸、aAPC、それにより増殖されたT細胞など)は静脈内注入により投与し得るか、または腫瘍部位に送達し得、そしてとりわけボーラス注入を包含する。しかしながら、本発明はこれ若しくはいずれかの他の投与方法に制限されない。
【0098】
「治療的」処置は、病的状態の兆候を縮小若しくは排除しかつ/またはそれらの兆候の頻度、持続期間および強度を低下若しくは減少させる目的上、該兆候を表す患者に投与される処置である。
【0099】
「刺激」という用語により、そのコグネイトのリガンドとの刺激分子(例えばTCR/CD3複合体)の結合により誘導されて、それにより限定されるものでないがTCR/CD3複合体を介するシグナル伝達を挙げることができるシグナル伝達事象を媒介する、一次応答を意味している。刺激はTGF−βのダウンレギュレーションのようなある分子の変えられた発現、および/若しくは細胞骨格構造の再構成などを媒介し得る。
【0100】
本明細書で使用されるところの「活性化」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化は、誘導されたサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能もまた伴い得る。「活性化されたT細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けているT細胞を指す。
【0101】
本明細書で使用されるところの「特異的に結合する」という用語により、サンプル中に存在するコグネイトの結合パートナー(例えばT細胞上に存在する刺激および/若しくは共刺激分子)タンパク質を認識かつそれと結合する抗体若しくはリガンドを意味しているが、しかしその抗体若しくはリガンドはサンプル中の他の分子を実質的に認識若しくは結合しない。
【0102】
本明細書で使用されるところの「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えばaAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合にT細胞上のコグネイトの結合パートナー(本明細書で「刺激分子」と称される)と特異的に結合し得、それにより、限定されるものでないが免疫応答の活性化、開始、増殖などを挙げることができるT細胞による一次応答を媒介するリガンドを意味している。刺激リガンドは当該技術分野で公知であり、そして、とりわけ、ペプチドを負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0103】
該用語が本明細書で使用されるところの「刺激分子」は、抗原提示細胞(例えばとりわけ本発明のaAPC)上に存在するコグネイトの刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味している。
【0104】
本明細書で使用されるところのペプチドを「負荷される」は、MHC分子の情況の抗原の提示を指す。本明細書で使用されるところの「負荷される」は、CD32および/若しくはCD64のような細胞上のFc結合受容体への抗体の結合もまた意味している。
【0105】
該用語が本明細書で使用されるところの「共刺激リガンド」は、T細胞上のコグネイトの共刺激分子を特異的に結合してそれにより例えばペプチドを負荷されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合により提供される一次シグナルに加えて限定されるものでないが増殖、活性化、分化などを挙げることができるT細胞応答を媒介するシグナルを提供する、抗原提示細胞(例えばaAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を包含する。共刺激リガンドは、限定されるものでないが、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、誘導可能な共刺激リガンド(ICOS−L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体を結合するアゴニスト若しくは抗体、およびB7−H3と特異的に結合するリガンドを挙げることができる。共刺激リガンドは、とりわけ、限定されるものでないがCD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、リンパ球機能関連抗原−1(LFA−1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドを挙げることができる、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体もまた包含する。
【0106】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合して、それにより、限定されるものでないが増殖を挙げることができるT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上のコグネイトの結合パートナーを指す。共刺激分子は、限定されるものでないがMHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体を挙げることができる。
【0107】
本明細書で使用されるところの「スーパーアゴニスト抗体」は、T細胞上の分子と特異的に結合しかつTCR/CD3複合体若しくはT細胞上のCD2の相互作用を伴わずにT細胞中での一次活性化シグナル事象を媒介し得る抗体を意味している。こうしたスーパーアゴニスト抗体は、限定されるものでないがスーパーアゴニスト抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を挙げることができる。
【0108】
「スーパーアゴニスト」と称されない限り、抗CD2抗体、抗CD28抗体などは、本明細書の別の場所で定義されるところの共刺激リガンドであり、そして一次活性化シグナルよりはむしろ共刺激シグナルを提供する。
【0109】
該用語が本明細書で使用されるところの疾患を「処置する」ことは、1種若しくはそれ以上の症状疾患若しくは障害の1症状が動物により経験される頻度を低下させて疾患若しくは障害の頻度を低下させることを意味している。
【0110】
本明細書で使用されるところの「ワクチン」という用語により、ワクチンが投与されていないそれ以外は同一の動物に比較して、若しくは該ワクチンの投与前の該動物と比較して免疫応答を誘導することにより、疾患に対し動物を保護しかつ/若しくは疾患に既に苦しめられている動物を処置するようはたらく、本発明の組成物、タンパク質若しくはタンパク質をコードする核酸、またはaAPCを意味している。
【0111】
本明細書で使用されるところの「免疫ワクチン」は、動物に投与される場合に検出可能な免疫応答を導き出し得るaAPCを意味している。より好ましくは、免疫ワクチンは、動物に投与される場合にT細胞を刺激かつ活性化して、その結果、免疫ワクチンが投与されないそれ以外は同一の動物にあればT細胞免疫応答に比較した場合に、それが病原体、腫瘍細胞などに対する検出可能なT細胞免疫応答を生成させるaAPCである。
【0112】
記述
本発明は、MHCクラスI若しくはクラスII分子を発現せずかつ遺伝子操作技術に反応しないと以前は考えられていたヒト赤白血病細胞株K562が、限定されるものでないが、刺激リガンド、共刺激リガンド、抗原(例えば腫瘍、ウイルスなど)、サイトカインなどを挙げることができる多数の分子を発現するように、レンチウイルスベクターを使用して容易に形質導入し得るという驚くべき発見に関する。
【0113】
さらに、本明細書に開示されるデータは、数種のタンパク質を発現する数種(少なくとも9種)の外因性核酸がこれらの細胞中に容易に導入されかつそれら中で発現され得ること、しかし該タンパク質の発現のレベルがプラスミドに基づく発現系を使用して達成されるものより高くかつ該発現が検出可能な低下を伴わずに数か月間安定でありかつ継続することを示す。加えて、MHCクラスI若しくはII分子を発現しないK562に基づく人工抗原提示細胞(aAPC)を、それらで形質導入し得かつそれらを容易に発現させ得る。際立っては、目的の抗原をコードする核酸で形質導入したaAPCは、抗原をプロセシングしかつそれをT細胞に適正に提示し、それにより該T細胞により認識されるエピトープを同定する必要性を伴わずに抗原特異的T細胞を産生した。驚くべきことに、本明細書に開示されるデータにより示されるとおり、該aAPC細胞は抗原を適正にプロセシングかつ提示した。
【0114】
I.組成物
本発明は、単離された人工抗原提示細胞(aAPC)を包含し、該細胞はレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなる。さらに、該LVは最低1種の免疫刺激および共刺激リガンドをコードする。本明細書に開示されるデータは、K562細胞に形質導入された約9種の異なる分子をコードする約9種の核酸が、長期培養において安定かつ高度に発現されたことを示す一方、これがこれらの細胞中に導入され得る分子の数若しくは種類の制限であることを示唆するものは何も存在しない。代わりに、いかなる分子若しくはリガンドも、刺激、共刺激、サイトカイン、抗原、Fcγ受容体などであろうと、これらの細胞中に導入して本発明のaAPCを生じさせ得る。
【0115】
当業者は、本明細書に提供される教示を一旦備えれば、多数の免疫調節分子を使用してほぼ無制限に多様なaAPCを製造し得ることを、本明細書に提供される開示に基づき認識するであろう。すなわち、T細胞の活性化および誘導に関与する事象および分子に関して当該技術分野に膨大な知識が存在し、そして、T細胞媒介性の免疫応答およびそれらを媒介する因子を論考する学術論文が当該技術分野で公知である。さらに、第WO 03/057171号および第US2003/0147869号明細書に提供される膨大な開示が、本明細書にそっくりそのまま示されるかのように引用することにより組み込まれる。より具体的には、通常はT細胞上のT細胞受容体/CD3複合体を介して媒介される一次シグナルが、T細胞活性化過程を開始する。加えて、T細胞の表面上に存在する多数の共刺激分子が、休止T細胞から細胞増殖への移行の調節に関与している。それらのそれぞれのリガンドと特異的に結合する「共刺激物質」ともまた称されるこうした共刺激分子は、限定されるものでないがCD28(B7−1[CD80]、B7−2[DE86]と結合する)、PD−1(リガンドPD−L1およびPD−L2と結合する)、B7−H3、4−1BB(リガンド4−1BBLを結合する)、OX40(リガンドOX40Lを結合する)、ICOS(リガンドICOS−Lを結合する)およびLFA(リガンドICAMを結合する)を挙げることができる。従って、一次刺激シグナルはT細胞刺激を媒介するが、しかし、共刺激シグナルはその後、増殖により示されるところのT細胞活性化に必要とされる。
【0116】
従って、本発明のaAPCは、一次シグナルが伝達されるようなTCR/CD3複合体と特異的に結合する刺激リガンドを含んでなる細胞を包含する。加えて、本明細書に提供される開示に基づき当業者により認識されるであろうとおり、該aAPCは、T細胞上に存在する最低1種の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドをさらに含んでなり、その共刺激分子は、限定されるものでないがCD27、CD28、CD30、CD7、、CD83と特異的に結合するリガンド、4−1BB、PD−1、OX40、ICOS、LFA−1、CD30L、NKG2C、B7−H3、MHCクラスI、BTLA、Tollリガンド受容体およびLIGHTを挙げることができる。これは、以前に論考されかつ本明細書の別の場所に開示されるデータにより示されるとおり、共刺激シグナルがT細胞の活性化および関連した増殖を誘導するのに必要とされるためである。他の共刺激リガンドが、本明細書に提供される教示を備えた当業者により理解されるであろうとおり、本発明に包含される。こうしたリガンドは、限定されるものでないが、前述された天然のリガンドの変異体、バリアント、フラグメントおよびホモログを挙げることができる。
【0117】
これらおよび他のリガンドは当該技術分野で公知であり、そして例えば、Schwartzら、2001、Nature 410:604−608;Schwartzら、2002、Nature Immunol.3:427−434;およびZhangら、2004、Immunity.20:337−347に記述されるとおり十分に特徴付けられている。リガンドに関する当該技術分野の膨大な知識を使用して、当業者は、本明細書に提供される教示を備え、リガンドの変異体若しくはバリアントが本明細書に包含されかつ本発明のaAPCを製造するためにLVを使用して細胞中に形質導入し得ることを認識することができ、そしてこうした変異体およびバリアントは本明細書の別の場所でより完全に論考する。すなわち、本発明は、目的のリガンドの変異体若しくはバリアントを使用することを包含し、そしてこうした変異体およびバリアントの製造方法は当該技術分野で公知でありかつ本明細書でさらに論考されない。
【0118】
従って、本発明のaAPCは最低1種の刺激リガンドおよび最低1種の共刺激リガンドを含んでなり、その結果、該aAPCは、該aAPC上のリガンドとT細胞上の対応する分子の間の相互作用がとりわけT細胞増殖(proliferation)、増殖(expansion)および免疫応答を所望のように媒介するような、aAPC上の刺激リガンドと特異的に結合するコグネイトの結合パートナーの刺激分子、およびaAPC上の共刺激リガンドと特異的に結合するコグネイトの結合パートナーの共刺激分子を含んでなるT細胞を刺激しかつ増殖させ得る。当業者は、目的のT細胞上の特定の刺激および共刺激分子が既知である場合に、そのT細胞を増殖させるために本発明のaAPCを容易に製造し得ることを認識するであろう。逆に、目的のT細胞上の刺激および共刺激分子が既知でない場合は、本発明の一団のaAPCを使用してどの分子およびそれらの組合せがそのT細胞を増殖させ得るかを決定し得る。従って、本発明は、所望のT細胞の増殖のためのツール、ならびにT細胞の活性化および増殖を媒介する特定のT細胞上の分子を解明するためのツールを提供する。
【0119】
当業者は、本発明の核酸が、本発明のタンパク質をコードするRNA若しくはDNA配列、ならびに、該核酸配列が細胞を含まない場合若しくはそれが細胞を伴う場合にそれをより安定にするDNA若しくはRNAの化学修飾を包含するそれらのいかなる改変された形態も包含することを理解するであろう。ヌクレオチドの化学修飾は、核酸配列が細胞により取り込まれる効率、若しくはそれが細胞中で発現される効率を高めるのにもまた使用しうる。ヌクレオチド配列の改変いずれかのおよび全部の組合せを本発明で企図している。
【0120】
さらに、いかなる数の処置も、例えばSambrookとRussell(2001、Molecular Cloning,A Laboratory Approach、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)およびAusubelら(2002、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、ニューヨーク)に記述されるもののような当該技術分野で公知の組換えDNAの方法論を使用する、本発明のタンパク質の変異体、誘導体若しくはバリアントの形態の生成に使用しうる。ポリペプチドをコードするDNA配列を変えることによるタンパク質若しくはポリペプチド中のアミノ酸変化の導入のための手順は当該技術分野で公知であり、そしてまたこれらおよび他の学術論文にも記述されている。
【0121】
本発明は共刺激リガンド若しくは抗原をコードする核酸を包含し、ここで標識ポリペプチドをコードする核酸がそれに共有結合される。すなわち、本発明は、標識ポリペプチドをコードする核酸配列が本発明の最低1種のタンパク質若しくはその生物学的に活性のフラグメントをコードする核酸に共有結合されているキメラ核酸を包含する。こうした標識ポリペプチドは当該技術分野で公知であり、そして例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、インフルエンザウイルスヘマグルチニン標識ポリペプチド、ヘルペスウイルス標識ポリペプチド、myc、myc−ピルビン酸キナーゼ(myc−PK)、His、マルトース結合タンパク質(MBP)、FLAG標識ポリペプチド、およびグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)標識ポリペプチドを包含する。しかしながら、本発明は上に列挙された標識ポリペプチドをコードする核酸に制限されるといかなる方法でも解釈されるべきでない。むしろ、これらの標識ポリペプチドに実質的に類似の様式で機能しうるポリペプチドをコードするいかなる核酸配列も本発明に包含されると解釈されるべきである。
【0122】
標識ポリペプチドをコードする核酸を含んでなる核酸は、細胞、組織および/若しくは生物体全体(例えばヒトなど)内での本発明のタンパク質若しくはその生物学的に活性のフラグメントの位置を推定し、かつ、細胞中での該タンパク質の役割(1種若しくは複数)を研究するのに使用し得る。さらに、標識ポリペプチドの付加は、本発明のタンパク質が容易に産生かつ精製され得るような「標識」タンパク質の単離および精製を助長する。より重要なことに、本明細書の別の場所に示されるとおり、標識を含んでなる共刺激リガンドの発現は該リガンドの発現の検出を可能にし、そしてさらに、限定されるものでないが細胞分取を挙げることができる多くの方法を使用しての該リガンドを発現する細胞の単離を可能にする。
【0123】
本発明はまた、本明細書に開示されるところの共刺激リガンドを含んでなるタンパク質若しくはペプチドのアナログも提供する。アナログは、保存的アミノ酸配列の差違若しくは配列に影響を及ぼさない修飾または双方により、天然に存在するタンパク質若しくはペプチドと異なりうる。例えば、それらがタンパク質若しくはペプチドの一次配列を変えるとは言えその機能を通常は変えない保存的アミノ酸変化を作成しうる。保存的アミノ酸置換は、典型的には、以下の群:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン:
リシン、アルギニン;
フェニルアラニン、チロシン
内の置換を包含する。修飾(通常は一次配列を変えない)は、ポリペプチドのin vivo若しくはin vitroの化学的誘導体化、例えばアセチル化若しくはカルボキシル化を包含する。グリコシル化の改変、例えばその合成およびプロセシングの間若しくはさらなるプロセシング段階におけるポリペプチドのグリコシル化パターンを改変することにより;例えばグリコシル化に影響を及ぼす酵素、例えば哺乳動物のグリコシル化若しくは脱グリコシル化酵素にポリペプチドを曝露させることにより作成されるものもまた包含される。リン酸化されたアミノ酸残基、例えばホスホチロシン、ホスホセリン若しくはホスホトレオニンを有する配列もまた包含される。
【0124】
タンパク質分解性の分解に対するそれらの抵抗性を向上させる、若しくは溶解性の特性を至適化する、若しくはそれらを治療薬としてより安定にするように、通常の分子生物学技術を使用して改変したポリペプチドもまた包含される。こうしたポリペプチドのアナログは、天然に存在するL−アミノ酸以外の残基、例えばD−アミノ酸、若しくは天然に存在しない合成アミノ酸を含有するものを包含する。本発明のペプチドは、本明細書に列挙される特定の例示的方法のいずれかの生成物に制限されない。
【0125】
本発明はまた、本発明のペプチド(若しくはそれらをコードするDNA)の「変異体」、「誘導体」および「バリアント」を包含するとも解釈されるべきであり、それら変異体、誘導体およびバリアントは、生じるペプチド(若しくはDNA)が本明細書に列挙される配列に同一でないがしかし本発明の共刺激リガンド、サイトカイン、抗原などの生物学的/生化学的特性(例えば、該タンパク質を発現するaAPCをT細胞と接触させることがT細胞の増殖を媒介するか若しくは別の方法でそれに影響を及ぼすaAPCによる発現)を有するために本明細書に開示されるペプチドと同一の生物学的特性を有するような1個若しくはそれ以上のアミノ酸が変えられている(または、それをコードするヌクレオチド配列に言及する場合は1個若しくはそれ以上の塩基対が変えられている)共刺激リガンド、サイトカイン、抗原(例えば腫瘍細胞、ウイルスおよび他の抗原)である。
【0126】
本明細書で使用されるところの「生物学的活性」のなかに、K562細胞に形質導入された場合に発現される共刺激リガンドが包含され、そして、該細胞がその表面上にコグネイトの共刺激分子を発現するT細胞と接触される場合に、それは誘導された増殖を伴うT細胞の活性化および刺激を媒介する。
【0127】
事実、本発明は、潜在的な新規の形態の共刺激リガンドが本発明のaAPCに形質導入されかつその中で発現され得るために、共刺激リガンドの変異体、バリアント、フラグメントおよびホモログの同定のための強力な新規スクリーニングアッセイを提供する。T細胞を刺激かつ/若しくは活性化するaAPCの能力を評価し得、そして野性型すなわち「天然の」共刺激リガンドを含んでなるaAPCのそれ以外は同一のT細胞を刺激かつ/若しくは活性化する能力と比較し得る。こうして、対照の野性型リガンドほどより大きい、より小さい若しくは等しい程度までT細胞を活性化/刺激する能力を示す機能的バリアントを、容易に同定、単離かつ特徴付けし得る。共刺激リガンドのこうした新規バリアントはT細胞過程の解明のための潜在的研究ツールであり、そしてまた、限定されるものでないが、天然のリガンドと競合して限定されるものでないが移植片拒絶を挙げることができる不要なT細胞応答を阻害し得る阻害活性をもつバリアントの投与を挙げることができる、T細胞の活性化/刺激を阻害若しくは誘導することに基づく重要な潜在的な治療薬も提供する。逆に、より大きな共刺激リガンド活性を示すバリアントを使用して、限定されるものでないが免疫抑制患者への投与を挙げることができる所望のT細胞応答を増大させ得る。例えば、一例示的バリアントリガンドを、より有効なその天然のリガンドとなるか、若しくは負の調節因子(CTLA−4)を犠牲にして正の共刺激分子(CD28)の結合に好都合であるように工作し得る。これらおよび多くの他のバリアントが本発明に包含される。
【0128】
当業者は、共刺激リガンドが、該リガンドもまた結合するT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体を包含することを、本明細書に提供される開示に基づき認識するであろう。すなわち、本発明は、T細胞上の共刺激分子(例えばCD28)を結合する共刺激リガンド(例えばとりわけCD80およびCD86)を含んでなるaAPCを包含するのみならず、しかしまた共刺激分子と特異的に結合する最低1種の抗体(例えば抗CD28)も包含する。共刺激分子に対する多数の抗体が現在入手可能であるか、若しくは、それらは当該技術分野で公知である手順に従って製造し得る。
【0129】
当業者は、抗体を含んでなるaAPCが、本明細書の別の場所に例示されるとおり、CD32(ヒトFcγ受容体)をコードする核酸をaAPCに導入することにより製造され得ることを、本明細書に提供される開示に基づき理解するであろう。さらに、本明細書の別の場所に開示されるとおり、CD3抗体若しくはCD28抗体のような抗体を結合するaAPCは、CD64をコードする核酸をaAPC上で発現させることにより製造し得る。CD64は高親和性ヒトFcγRI受容体である。aAPC表面上で発現されるCD32および/若しくはCD64にその後、限定されるものでないがCD3を特異的に結合する抗体およびCD28と特異的に結合する抗体を挙げることができるCD32および/若しくはCD64と結合するいずれかの所望の抗体を「負荷し」得る。さらに、本発明は、おそらくIRES配列に連結された目的の抗体リガンドをコードする核酸をaAPCに形質導入しかつその表面上で発現させてそれによりCD32および/若しくはCD64の発現およびそれらの負荷の必要性を排除する、aAPCを包含する。従って、本発明は、とりわけCD3、CD28、PD−1、B7−H3、4−1BB、OX40、ICOS、CD30、HLA−DR、MHCII、Tollリガンド受容体およびLFAと特異的に結合する最低1種の抗体をコードする核酸で形質導入したaAPC、ならびに、CD32および/若しくはCD64で形質導入しかつ前述の分子と特異的に結合する最低1種の抗体を負荷したaAPCを包含する。
【0130】
さらに、本発明は、共刺激リガンドが、共刺激分子と特異的に結合するコグネイトの結合パートナーであり、ならびに、リガンドが共刺激分子と特異的に結合する抗体およびそれらのいずれかの組合せであり、その結果、単一のaAPCが、共刺激リガンドをコードする核酸および/若しくはT細胞上に存在する共刺激分子に特異的な抗体の双方、ならびにそれらのいずれかの組合せを含み得る、aAPCを包含する。
【0131】
本発明はまた、目的の抗原をコードする核酸を含んでなるaAPCも包含する。限定されるものでないが、腫瘍抗原、例えばテロメラーゼ、T細胞により認識される黒色腫抗原(MART−1)、黒色腫抗原をコードする遺伝子、1、2および3(MAGE−1、−2、−3)、黒色腫GP100、癌胎児性抗原(CEA)、乳癌抗原HER−2/Neu、血清前立腺特異的抗原(PSA)、ウィルムス腫瘍1(WT−1)、ムチン抗原(MUC−1、−2、−3、−4)ならびにB細胞リンパ腫イディオタイプを挙げることができる、無数の抗原が包含される。これは、本明細書の別の場所に開示されるデータにより示されるとおり、抗原を含んでなるK562に基づくaAPCが、MHCの情況(MHCクラスI若しくはクラスII分子をコードする核酸でもまた細胞が形質導入される場合)で抗原をプロセンシングかつ提示して、それにより抗原特異的T細胞を生じさせ得かつその集団を増殖させ得るからである。開示されるデータは、hTERT特異的CTLが、CD32および4−1BBLで形質転換したaAPC(K32/4−1BBL)を使用してhTERT+ T細胞を増殖させることにより生じられたことを示す。従って、aAPCは、それの必要な患者にT細胞を投与し従って抗原を担持する腫瘍細胞に向けられた免疫ワクチン処置を提供するために、十分な抗原特異的T細胞を増殖かつ産生させるのに使用し得る。従って、目的の抗原を本発明のaAPCに導入し得、ここでaAPCはその後、抗原をMCHクラスI若しくはII複合体の情況で提示し、すなわちMHC分子が抗原を「負荷」され、そして該aAPCを使用して抗原特異的T細胞を生じさせ得る。
【0132】
同様に、ウイルス若しくはいずれかの他の病原体の抗原もまた該aAPCにより形質導入しかつ発現させ得る。本明細書の別の場所に開示されるデータは、選別されたマトリックスタンパク質(flu−MP四量体)陽性T細胞および抗CD28抗体を負荷した刺激した照射したaAPC細胞(K2/CD3/4−1BBL/FLU−GFP)が、T細胞を増殖させて、該ウイルス抗原に特異的な多数の抗原特異的CTLを提供したことを示す。これらのデータは、本発明のaAPCを使用して、ウイルスおよび他の病原体の感染を処置するのに使用されるべき抗原特異的T細胞を増殖かつ製造し得ることを示す。
【0133】
加えて、本発明は、最低1種のサイトカイン、最低1種のケモカイン若しくは双方をコードする核酸で形質導入したaAPCを包含する。これは、本明細書の別の場所に開示されるデータが、インターロイキン(例えばIL−7、IL−15など)をコードする核酸で形質導入したaAPCがインターロイキンを安定に発現したことを十分に示すからである。さらに、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含んでなるLVベクターを使用して、インターロイキンをaAPCから分泌させ得る(例えば、限定されるものでないがpCLPS CD32−IRES−IL−7、−12、−15、−18および−21を挙げることができるLVベクターで形質導入したK562)。aAPCにより発現させ得る他のサイトカインは、限定されるものでないが、インターフェロン−γ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、SLC、IL−2、IL−4、IL−23、IL−27などを挙げることができる。本発明はさらに、限定されるものでないがケモカインRANTES、MIP−1a、MIP−1b、SDF−1、エオタキシンなどを挙げることができる。
【0134】
従って、本発明は、完全長、フラグメント、ホモログ、バリアント若しくは変異体のサイトカインを包含するサイトカインを包含する。サイトカインは、別の細胞の生物学的機能に影響を及ぼすことが可能であるタンパク質を包含する。サイトカインにより影響を及ぼされる生物学的機能は、限定されるものでないが細胞増殖、細胞分化若しくは細胞死を挙げることができる。好ましくは、本発明のサイトカインは、細胞の表面上の特異的受容体に結合することが可能であり、それにより細胞の生物学的機能に影響を及ぼす。
【0135】
好ましいサイトカインは、とりわけ、造血成長因子、インターロイキン、インターフェロン、免疫グロブリンスーパーファミリー分子、腫瘍壊死因子ファミリー分子および/若しくはケモカインを包含する。本発明のより好ましいサイトカインは、とりわけ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、腫瘍壊死因子β(TNFβ)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−4(IL−4)、インターロイキン−5(IL−5)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−15(IL−15)、インターロイキン−21(IL−21)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、インターフェロンγ(IFNγ)、およびIGIFを包含する。
【0136】
それらのホモログ、バリアント、変異体若しくはフラグメントを包含するケモカインは、限定されるものでないがC5a、インターロイキン−8(IL−8)、単球走化性タンパク質1α(MIP1α)、単球走化性タンパク質1β(MIP1β)、単球走化性タンパク質1(MCP−1)、単球走化性タンパク質3(MCP−3)、血小板活性化因子(PAFR)、N−ホルミル−メチオニル−ロイシル−[H]フェニルアラニン(FMLPR)、ロイコトリエンB(LTB4R)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、RANTES、エオタキシン、リンホタクチン、IP10、I−309、ENA78、GCP−2、NAP−2、および/若しくはMGSA/groを挙げることができるα−ケモカイン若しくはβ−ケモカインを包含する。当業者は、本明細書に提供される教示を一旦備えれば、本発明が、当該技術分野で公知であるようなケモカインおよびサイトカイン、ならびに将来発見されるいずれも包含することを認識するであろう。
【0137】
当業者は、本発明のaAPCがいずれかの特定の抗原、サイトカイン、共刺激リガンド、共刺激分子を特異的に結合する抗体などにいかなる方法でも制限されないことを、本明細書に提供される教示を一旦備えれば認識するであろう。むしろ、本発明は、単一のプロモーター/制御配列の制御下若しくは1種以上のこうした配列の制御下のいずれかで全部発現される多数の分子を含んでなるaAPCを包含する。さらに、本発明は、多様なaAPCが多様な分子をコードする本発明の1種若しくはそれ以上のaAPCの投与を包含する。すなわち、多様な分子(例えば共刺激リガンド、抗原、サイトカインなど)は、cis(すなわち、同一のaAPC中、および/または同一の連続する核酸により若しくは同一のaAPC内の別個の核酸分子上でコードされる)あるいはtrans(すなわち多様な分子が異なるaAPCにより発現される)で機能し得る。
【0138】
こうして、当業者により理解されるであろうとおり、本明細書に提供される開示に基づき、aAPCの用量および投与のタイミングは各応用について特別に調整し得る。より具体的には、1種のaAPC若しくは数種のaAPCにより発現されるある種の分子を使用してT細胞に対する刺激、次いで重なる場合であっても異なる一組の分子を発現する別のaAPC若しくは数種のaAPCを使用する刺激を提供することが望ましい場合には、cisおよびtransのアプローチの組合せを利用し得る。本質的に、本発明のaAPCおよび本明細書に開示される方法はほぼ無制限の数の変形物を提供し、そして、本発明はいずれかの特定の組合せ若しくはアプローチにいかなる方法でも制限されない。当業者は、本明細書に提供される教示および当該技術分野で入手可能な知識を備えれば、各特定のT細胞についての所望のアプローチを容易に決定し得る。あるいは、本明細書に開示されるT細胞の刺激および増殖方法の有効性の評価方法を提供する本明細書に提供される開示に基づき、当業者は、増殖若しくは刺激されるべき特定のT細胞にどのアプローチ(1種若しくは複数)を適用し得るかを決定し得る。
【0139】
当業者は、本発明のaAPC中で発現されるべき分子の多様な組合せが好ましいかもしれないことを、本明細書に提供される開示に基づき理解するであろう。限定されるものでないが表1、2、3および4に例示される組合せを挙げることができる、分子のこれらの組合せのいくつかが、本明細を通じて示される一方、本発明は、これら、若しくは分子のいずれかの特定の組合せを含んでなるいずれかの他のaAPCにいかなる方法でも制限されない。むしろ、当業者は、分子の多様な組合せを細胞に形質導入して本発明のaAPCを製造し得ることを、本明細書に提供される教示に基づき認識するであろう。該分子は、本明細書で論考されるもののような当該技術分野で既知のもの、ならびに将来開示されるはずである分子を包含する。
【0140】
本発明は、有効成分として本発明のaAPCを含んでなる製薬学的組成物の製剤および使用を包含する。こうした製薬学的組成物は、有効成分単独、被験体への投与に適する形態の最低1種の有効成分(例えば有効用量のaAPC)の組合せとしてよりなりうるか、あるいは、製薬学的組成物は、有効成分および1種若しくはそれ以上の製薬学的に許容できる担体、1種若しくはそれ以上の付加的な(活性および/若しくは不活性の)成分、またはこれらのいくつかの組合せを含みうる。
【0141】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」という用語は、有効成分をそれと組み合わせることができかつ組合せ後に有効成分を被験者に投与するのに使用し得る、化学物質組成物を意味している。
【0142】
本明細書に記述される製薬学的組成物の製剤は、薬理学の技術分野で既知の若しくは今後開発されるいずれの方法によっても製造しうる。一般に、こうした調剤方法は、有効成分を担体または1種若しくはそれ以上の他の付属成分との連合にもたらす段階、およびその後、必要な若しくは所望の場合は、生成物を所望の単一若しくは複数の投薬単位に造形若しくは包装する段階を包含する。
【0143】
本明細書に提供される製薬学的組成物の記述は、原則として、ヒトへの倫理的投与に適する製薬学的組成物に向けられるとは言え、こうした組成物は一般に全部の種類の動物への投与に適することが当業者により理解されるであろう。組成物を多様な動物への投与に適するようにするためのヒトへの投与に適する製薬学的組成物の改変は十分に理解されており、そして、通常の熟練の獣医薬理学者は、わずかな通常の(あれば)実験でこうした改変を設計かつ実施し得る。本発明の製薬学的組成物の投与が企図されている被験体は、限定されるものでないが、ヒトおよび他の霊長類、ヒト以外の霊長類、畜牛、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコおよびイヌのような商業的に適切な哺乳動物を包含する哺乳動物、ニワトリ、アヒル、ガチョウおよびシチメンチョウのような商業的に適切な鳥類を包含する鳥類、養殖魚および水族館の魚を包含する魚類、ならびに養殖貝のような甲殻類を挙げることができることを企図している。
【0144】
本発明の方法で有用である製薬学的組成物は、経口、直腸、膣、非経口、局所、肺、鼻内、病変内、頬側、眼、静脈内、臓器内若しくは別の投与経路に適する製剤で製造、包装若しくは販売しうる。他の企図される製剤は、突起付きナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分を含有する再封止赤血球、および免疫学的に基づく製剤を包含する。
【0145】
本発明の製薬学的組成物は、バルクで、単一単位用量として、若しくは複数の単一単位用量として製造、包装若しくは販売しうる。本明細書で使用されるところの「単位用量」は、予め決められた量の有効成分を含んでなる、個別の量の製薬学的組成物である。有効成分の量は、一般に、被験体に投与されるであろう有効成分の投薬量、または例えばこうした投薬量の1/2若しくは1/3のようなこうした投薬量の便宜的な画分に等しい。
【0146】
本発明の製薬学的組成物中の有効成分、製薬学的に許容できる担体、およびいずれかの付加的な成分の相対量は、処置される被験体の正体(identity)、大きさおよび状態に依存して、また、該組成物が投与されるはずである経路にさらに依存して変動することができる。例として、該組成物は0.1%と100%(w/w)の間の有効成分を含みうる。
【0147】
有効成分に加えて、本発明の製薬学的組成物は、1種若しくはそれ以上の付加的な製薬学的有効成分をさらに含みうる。とりわけ企図される付加的な剤は、制吐剤、ならびにシアン化物およびシアン酸塩スカベンジャーのようなスカベンジャー、ならびにAZT、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、インターロイキン−2、インターフェロン、サイトカインなどを包含する。
【0148】
本発明の製薬学的組成物の制御若しくは持続放出製剤を、慣習的技術を使用して作成しうる。
【0149】
本明細書で使用されるところの、製薬学的組成物の「非経口投与」は、被験体の組織の物理的断裂を特徴とする投与、および組織中の断裂を通しての製薬学的組成物の投与のいずれかの経路を包含する。非経口投与は、従って、限定されるものでないが、組成物の注入、外科的切開による組成物の適用、組織を貫通する非外科的創傷による組成物の適用などによる製薬学的組成物の投与を挙げることができる。とりわけ、非経口投与は、限定されるものでないが皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内注入、および腎透析注入技術を挙げることができることを企図している。
【0150】
非経口投与に適する製薬学的組成物の製剤は、滅菌水若しくは滅菌の等張生理的食塩水のような製薬学的に許容できる担体と組み合わせた有効成分を含んでなる。こうした製剤は、ボーラス投与若しくは連続投与に適する形態で製造、包装若しくは販売しうる。注入可能な製剤は、保存剤を含有するアンプル若しくは複数用量容器中のような単位投薬形態物で製造、包装若しくは販売しうる。非経口投与のための製剤は、限定されるものでないが、懸濁剤、溶液、油性若しくは水性ベヒクル中の乳剤、パスタ剤、および植入可能な徐放性若しくは生物分解性製剤を挙げることができる。こうした製剤は、さらに、限定されるものでないが懸濁化剤、安定剤若しくは分散助剤を挙げることができる1種若しくはそれ以上の付加的な成分を含みうる。
【0151】
製薬学的組成物は、滅菌の注入可能な水性若しくは油性の懸濁剤若しくは溶液の形態で製造、包装若しくは販売しうる。この懸濁剤若しくは溶液は既知技術に従って処方し得、そして、有効成分に加え、本明細書に記述される分散助剤、湿潤剤若しくは懸濁化剤のような付加的な成分を含みうる。こうした滅菌の注入可能な製剤は、例えば水若しくは1,3−ブタンジオールのような非毒性の非経口で許容できる希釈剤若しくは溶媒を使用して製造しうる。他の許容できる希釈剤および溶媒は、限定されるものでないが、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、および合成モノ若しくはジグリセリドのような不揮発性油を挙げることができる。有用である他の非経口で投与可能な製剤は、有効成分を微晶質の形態で、リポソーム製剤中に、若しくは生物分解性のポリマー系の成分として含んでなるものを包含する。徐放性若しくは植入のための組成物は、乳剤、イオン交換樹脂、わずかに溶解性のポリマー若しくはわずかに溶解性の塩のような製薬学的に許容できるポリマー若しくは疎水性物質を含みうる。
【0152】
本発明のaAPC、および/若しくは該aAPCを使用して増殖させたT細胞は動物、好ましくはヒトに投与し得る。本発明のaAPCを使用して増殖させたT細胞を投与する場合、投与される細胞の量は約百万細胞から約3千億細胞までの範囲にわたり得る。それにより増殖されたT細胞を伴い若しくは伴わずのいずれかでaAPCそれら自身を投与する場合は、それらは約100,000から約十億細胞までの範囲にわたる量で投与し得、ここで該細胞をそれの必要な動物、好ましくはヒト患者に注入する。一方、投与される正確な投薬量は、限定されるものでないが動物の型および処置されている疾患の型、動物の齢ならびに投与経路を挙げることができるいずれかの数の因子に依存して変動することができる。
【0153】
aAPCは1日に数回くらい頻繁に動物に投与しうるか、あるいはそれは1日1回、週1回、2週ごとに1回、月1回のようにより少なく頻繁に、あるいは数か月ごとに1回またはなお年1回若しくはそれ未満のようななおより少なく頻繁に投与しうる。投与の頻度は当業者に容易に明らかであることができ、そして、限定されるものでないが、処置されている疾患の型および重症度、動物の型および齢などを挙げることができるいずれかの数の因子に依存することができる。
【0154】
aAPC(若しくはそれにより増殖させた細胞)は多様な他の化合物(とりわけサイトカイン、化学療法剤および/若しくは抗ウイルス薬)と共投与しうる。あるいは、該化合物(1種若しくは複数)を、aAPC(若しくはそれにより増殖させた細胞)またはそれらのいずれかの順列の1時間、1日、1週間、1か月若しくはなおより前に投与しうる。さらに、該化合物は、aAPC(若しくはそれにより増殖させた細胞)の投与1時間、1日、1週間若しくはなおより後に投与し(欠落)る。頻度および投与レジメンは当業者に容易に明らかであることができ、そして、限定されるものでないが、処置されている疾患の型および重症度、動物の齢および健康状態、投与されている化合物(1種若しくは複数)の正体、多様な化合物およびaAPC(若しくはそれにより増殖させた細胞)の投与経路などを挙げることができるいずれかの数の因子に依存することができる。
【0155】
さらに、aAPCを哺乳動物に投与すべきである場合に、それらが「増殖なしの状態」にある;すなわち該細胞が哺乳動物に投与される場合に分裂することが不可能であるように該細胞を処理することが、本明細書に提供される開示に基づき、当業者により認識されるであろう。本明細書の別の場所に開示されるとおり、該細胞を照射して、哺乳動物に一旦投与されればそれらを増殖若しくは分割を不可能にし得る。とりわけヒトに投与されるべき細胞を増殖を不可能にするためのハプテン化(haptenization)(例えばジニトロフェニルおよび他の化合物を使用する)を包含する他の方法が当該技術分野で既知であり、そしてこれらの方法は本明細書でさらに論考されない。さらに、in vivoで分割することを不可能にされたaAPCの投与の安全性は、本明細書に論考される分子のいくつかをコードするプラスミドベクターでトランスフェクトしたaAPCを使用するフェーズI臨床試験で確立された。
【0156】
II.方法
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法を包含する。該方法は、増殖されるべきであるT細胞を、その共刺激分子と特異的に結合するリガンドをコードするレンチウイルスベクターを含んでなるaAPCと接触させることを含んでなる。本明細書の別の場所に示されるとおり、とりわけT細胞表面上で発現されるコグネイトの共刺激分子を特異的に結合する共刺激リガンドを含んでなるK562に基づくaAPCとT細胞を接触させることは、T細胞を刺激し、そして、多数の特異的T細胞が容易に産生され得るようなT細胞増殖を誘導する。aAPCは、特定の共刺激分子を発現するT細胞のみが該aAPCにより増殖されるために、「特異的に」T細胞を増殖させる。従って、発現されるべきT細胞が、そのいくつか若しくは大部分が共刺激分子を発現しない細胞の混合物中に存在する場合は、目的のT細胞のみを誘導して増殖させかつ細胞数を大きくすることができる。T細胞は、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書の別の場所に記述されるもののような多様な細胞分離および精製技術を使用してさらに精製し得る。
【0157】
当業者により認識されるであろうとおり、本明細書に提供される開示に基づけば、目的のT細胞はaAPCを使用する増殖の前に同定若しくは単離される必要はない。これは、該aAPCが選択的でありかつコグネイトの共刺激分子を発現するT細胞(1種若しくは複数)のみを増殖させることができるからである。
【0158】
好ましくは、ある種のT細胞の増殖は、限定されるものでないが抗原、サイトカイン、共刺激リガンド、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体リガンドを挙げることができる多様な分子を発現する数種のaAPC若しくは単一のaAPCを使用することにより達成される。本明細書の別の場所に開示されるとおり、aAPCは、aAPC表面上で発現されるCD32および/若しくはCD64がFcγ受容体であるCD32および/若しくはCD64を結合する限りは、それらに所望のいずれかの抗体を「負荷し」得るような、CD32および/若しくはCD64をコードする核酸を含み得る。これは、「在庫があり入手可能な」aAPCを、いずれかの所望のT細胞を刺激するように容易に調整させる。
【0159】
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法を包含する。該方法は、既知の共刺激分子を発現する最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を、共刺激分子のリガンドをコードするLVを含んでなるaAPCと接触させることを含んでなる。本明細書の別の場所に開示されるとおり、aAPCがT細胞上の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを発現する場合は、そのコグネイトの共刺激リガンドとの共刺激分子の結合が、T細胞の増殖を誘導する。従って、目的のT細胞は、細胞の集団から細胞を最初に精製する必要なく、増殖するよう誘導される。また、この方法は、集団中のいずれかの細胞が目的の特定の共刺激分子を発現しているかどうかを決定するための迅速なアッセイを提供する。細胞をaAPCと接触させることは、成長する細胞の増殖および検出を誘導することができ、それにより目的の共刺激分子を発現するT細胞がサンプル中に存在したことを同定するからである。こうして、細胞の表面上の最低1種の共刺激分子が既知である目的のいかなるT細胞も増殖させかつ単離し得る。
【0160】
本発明は、あるT細胞集団サブセットの特異的増殖方法を包含する。より具体的には、該方法は、目的の1サブセットの最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を、そのT細胞を増殖することが可能なaAPC、若しくは該T細胞の表面上のコグネイトの共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを発現する最低1種のaAPCと接触させることを含んでなる。本明細書の別の場所に以前に示されたとおり、共刺激分子のその結合パートナーの共刺激リガンドとの結合は、T細胞の増殖を誘導し、それによりT細胞集団サブセットを特異的に増殖させる。当業者は、T細胞サブセットが、Tヘルパー(TH1およびTH2)CD4を発現する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)(Tc1若しくはTc2)制御性T(TREG)、TC/S、ナイーブ、メモリー、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、ならびにγδT細胞を包含することを、本明細書に提供される開示に基づき理解するであろう。従って、特定の1T細胞サブセットについて濃縮された細胞集団を、本発明の方法を使用して容易に製造し得る。
【0161】
本発明はまた、1T細胞サブセットの活性化を特異的に誘導する、1種の共刺激リガンド若しくはそれらの組合せの同定方法も包含する。簡潔には、該方法は、T細胞の1集団を、最低1種の共刺激リガンドをコードするLVを含んでなるaAPCと接触させること、およびaAPCと接触させたT細胞サブセットの増殖のレベルを、aAPCと接触されないそれ以外は同一のT細胞サブセットの増殖のレベルと比較することを含んでなる。aAPCと接触させなかったそれ以外は同一のT細胞サブセットの増殖のレベルと比較しての、aAPCと接触させたT細胞サブセットの増殖のより高いレベルは、該共刺激リガンドでそのT細胞が属するT細胞サブセットの活性化を特異的に誘導することの指標である。
【0162】
該方法は、どの因子(1種若しくは複数)があるT細胞サブセットを増殖させるかが以前に知られていない場合にそのT細胞サブセットを特異的に増殖させる共刺激リガンドの同定を可能にする。当業者は、スクリーニングの数を最小限にするために、アッセイの数を減少させ得るような共刺激リガンドをコードする同じ数だけの核酸を形質導入することが好ましいことを認識するであろう。さらに、該方法は、多様なタンパク質(例えば刺激リガンド、共刺激リガンド、抗原、サイトカインなど)を組み合わせることにより、因子のどの組合せ(1種若しくは複数)が最も効果的なaAPCを作成することができるか、すなわちT細胞サブセットを増殖させるためのaAPCの組合せを評価することを可能にする。こうして、各T細胞サブセットについての増殖および活性化のための多様な要件を検査し得る。
【0163】
一態様において、該方法は、多様なaAPCを、T細胞サブセットの表面上の共刺激分子を最初に特徴づけることなくT細胞サブセットと接触させることを含んでなる。また、本発明は、T細胞サブセットの表面上に存在する共刺激分子(1種若しくは複数)を、aAPCを該細胞と接触させる前に検査する方法を包含する。従って、本発明は、多様なT細胞サブセットに対する増殖の要件を決定するための新規アッセイを提供する。
【0164】
本発明は、哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法を包含する。該方法は、抗原に特異的なT細胞の増殖を特異的に誘導するaAPCを投与することを含んでなる。十分な数の抗原特異的T細胞が、該T細胞を増殖させるためにaAPCを使用して一旦得られれば、そのように得られた抗原特異的T細胞を、本明細書の別の場所に開示される方法に従って哺乳動物に投与し、それにより該哺乳動物における該抗原に対するT細胞応答を誘導する。これは、本明細書に開示されるデータにより示されるとおり、抗原特異的T細胞が、本発明のaAPCを使用して休止T細胞を刺激することにより容易に産生され得るからである。
【0165】
本発明は、それの必要な哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法を包含し、該方法は、哺乳動物から細胞の集団を得ること(該集団はT細胞を含んでなる)、該T細胞を、MHC複合体の情況で抗原を提示するaAPCと接触させること(T細胞をaAPCと接触させることは該抗原に特異的なT細胞の増殖を誘導する)を含んでなる。抗原特異的T細胞を哺乳動物に投与し、それによりそれの必要な哺乳動物において該抗原に対するT細胞応答を誘導する。本明細書の別の場所に以前に述べられたとおり、別の場所に開示されるデータは、抗原特異的CTLが、aAPC(該aAPCはMHC複合体の情況で抗原を提示する)とT細胞を接触させることにより容易に産生され得ることを十分に示す。本明細書の別の場所に以前に示されたとおり、多様な分子(共刺激リガンド、抗体、抗原、MHCなど)の多数の組合せを含んでなる多様なaAPCを使用して、それの必要な哺乳動物への投与のための抗原特異的T細胞の最適な増殖方法を決定し得る。
【0166】
III.キット
本発明は、本発明のaAPC、多様なタンパク質をコードする核酸、T細胞の表面上の共刺激分子に特異的に結合する抗体、および/または本発明の抗体、抗原若しくはサイトカインをコードする核酸、アプリケーター、ならびに本発明の方法を実施するためのキットの使用を記述する説明資料を含んでなる多様なキットを包含する。例示的キットを下述するとは言え、他の有用なキットの内容は本開示に照らして当業者に明らかであろう。これらのキットのそれぞれが本発明内に包含される。
【0167】
本発明は、既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖を特異的に誘導するためのキットを包含する。これは、T細胞をaAPCと接触させることがT細胞の増殖を特異的に誘導するからである。該キットは本発明に開示される方法に従い使用する。簡潔には、該キットを使用して、最低1種の共刺激分子を発現するT細胞に本発明のaAPCを投与しうる。これは、本明細書の別の場所により完全に開示されるとおり、本明細書に開示されるデータが、T細胞上に存在するコグネイトの共刺激分子と特異的に結合する共刺激リガンドを含んでなるaAPCとT細胞を接触させることがT細胞の刺激および活性化を媒介することを示すからである。さらに、本キットを使用して生じられるT細胞を動物に投与して、治療結果を達成し得る。
【0168】
該キットはさらに、aAPCをT細胞に投与するのに有用なアプリケーターを含んでなる。該キットに包含される特定のアプリケーターは、例えばaAPC、ならびにaAPCにより増殖されるT細胞を投与するのに使用される方法に依存することができ、そしてこうしたアプリケーターは当該技術分野で公知であり、かつ、とりわけピペット、シリンジ、スポイトなどを包含しうる。さらに、該キットは該キットの使用のための説明資料を含んでなる。これらの資料は、本明細書に提供される開示を単に例示する。
【0169】
該キットは製薬学的に許容できる担体を包含する。該組成物は、本明細書の別の場所に示されるところの適切な量で提供される。さらに、投与経路および投与頻度は、本明細書の別の場所に以前に示されたとおりである。
【0170】
該キットは、限定されるものでないが本明細書の別の場所で表1、2、3および4に示されるものを挙げることができる、無数の分子を含んでなるaAPCを包含する。しかしながら、本明細書に提供される教示を備えた当業者は、本発明が分子のこれら若しくはいずれかの他の組合せにいかなる方法でも制限されないことを容易に認識するであろう。むしろ、本明細書に示される組合せは具体的に説明する目的上であり、そしてそれらは本発明により包含される組合せをいかなる方法でも制限しない。さらに、該キットは、aAPC中に形質導入されるべき各分子が、分子をコードする単離された核酸、分子をコードする核酸を含んでなるベクター、および最低2分子が連続する核酸によりコードされかつ/若しくは同一ベクターによりコードされる場合を包含するそれらのいずれかの組合せとして提供されるキットを含んでなる。当業者は、本発明が本発明のaAPCに導入されるべき目的の分子をコードする無数の構築物を包含することを理解するであろう。
【0171】
本発明は以下の実験実施例を参照することにより詳細にさらに記述される。これらの実施例は具体的に説明する目的上のみに提供され得、そして別の方法で明記されない限り、制限することを意図していない。従って、本発明は、以下の実施例に制限されるといかなる方法でも解釈されるべきでなく、しかしむしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるいかなるおよび全部の変形物も包含すると解釈されるべきである。
実施例
【実施例1】
【0172】
養子免疫療法のための細胞に基づく人工抗原提示細胞(aAPC)の開発
CD4およびCD8 T細胞の固有の増殖要件は異なることが示されている(Deethsら、1997、Eur.J.Immunol.27:598−608;Lauxら、2000、Clin.Immunol.96:187−197;Fouldsら、2002、J.Immunol.168:1528−1532)。CD8細胞の長期増殖のためのCD28に加えて多様な共刺激分子の発現の遺伝子操作を可能にするように、細胞に基づくaAPCを設計した。該培養系は、共刺激シグナルが、CD28により提供されるものに加えて最適なCD8細胞の増殖に必要とされるという事実に基づいた。ヒト赤白血病CML細胞株K562(Lozzioら、1975、Blood 45:321−334)は、同種応答を促進するとみられるHLAタンパク質を発現しないため、この細胞株を細胞性aAPCの足場構造として使用した。しかしながら、K562はICAM(CD54)およびLFA−3(CD58)を発現し、それらの双方はT細胞との相互作用を促進する(図1)。K562細胞を使用することの他の利点は、限定されるものでないが、照射したK562細胞が臨床の設定に導入され得るという事実を挙げることができる。これらの細胞はマイコプラスマを含まず、血清を含まない培地中で増殖し、そしてナチュラルキラー(NK)細胞により容易に死滅されるからである。こうしたaAPCを産生するためにK562を使用することの望ましさにもかかわらず、K562細胞は形質導入するのが有名に困難であった(Kahlら、2004、J.Virol.78:1421)。驚くべきことに、本明細書に開示されるデータは、K562細胞が、無数の外因性核酸で連続してかつ/若しくは同時にのいずれでも形質導入されて多数の分子を発現し、それにより所望の表現型をもつaAPCのライブラリーを得ることができることを初めて示す。こうしたLVに基づく形質導入は、連続してかつ/若しくは同時に実施され、そしてMoFloを使用して所望の表現型を示す細胞がクローン化される。さらに、該データは、最適のプロモーターを選択し得、そして、プロモーターの競合を評価し得かつ必要若しくは所望の場合は排除し得ることを示す。本発明の方法を使用して製造されるaAPCのライブラリーをその後、限定されるものでないがNOD/SCIDマウスモデルを挙げることができる、技術に認識されたモデルを使用して、生物学的機能についてin vivoで評価する。
【0173】
aAPCを製造するためのK562の使用に関して、米国特許出願第10/336,135号明細書(現在、米国特許出願公開第US2003/0147869A1号明細書として公開されている)、および国際特許出願第PCT/US03/00339号明細書(現在、国際公開第WO 03/057171A2号明細書として公開されている)の開示が、そっくりそのまま本明細書に示されるかのように引用することにより組み込まれる。
【0174】
レンチウイルスベクターの製造
K562細胞に遺伝子を導入するための以前に記述されたトランスフェクションに基づくアプローチの制限を回避するため、一連の高力価レンチウイルスベクターを、本明細書の別の場所に開示されるとおり使用して、K562細胞中に多数の共刺激リガンドおよびMHC分子を安定に導入した。これは、多様なaAPCの系統的かつ迅速な産生を見込み、また、HIV特異的T細胞に対する最適の増殖およびエフェクター機能を生じる共刺激分子の組合せの決定を見込む。本明細書に開示されるデータはこのアプローチを示す。
【0175】
制限しない一例として、本発明のaAPCは、とりわけ本明細書に記述されるリガンドの数種若しくは全部を含み得る。これらの多様な構築物を、LVを使用してK562細胞を形質導入するのに使用する。これらは単に例示的であり、そして、本発明は、該細胞中で発現されるべき目的の既知分子を用いる本発明のaAPCの形質導入のためのこれらの構築物若しくはいずれかの他の特定の構築物に制限されない。
【0176】
CD32:CD32を含んでなるLVで形質導入したaAPCは、好中球RNAから調製したcDNAから増幅したCD32(配列番号8)を使用して製造した。簡潔には、好中球を、正常な無名のドナーから得たアフェレーシス産物からFicoll勾配により単離した。このPCR産物を、各増幅プライマーの端に付加したKpn IおよびNot I制限部位を介してpcDNA3.1にクローン化した。このベクターをXbaIおよびSal Iで消化し、そしてpCLPS(Parryら、2003、J.Immunol.171:166−174)にクローン化して、pCLPS CD32を創製した。高力価レンチウイルスベクターを含有する上清を、Dullら(1998、J.Virol.72:8463−8471)およびParryら(2003、J.Immunol.171:166−174)に記述されたところのスプリットゲノムトランスフェクション法を使用してトランスフェクトした、トランスフェクトされた293T細胞を収集することにより得た。
【0177】
IL−7:一態様において、IL7を含んでなるaAPCを、cDNAから増幅しかつpcDNA3.1 hygromycinにクローン化したIL−7核酸(配列番号9)を使用して製造した。5’のCD32 XbaIおよび3’のIL−7 SalIを用いて設計したプライマーを使用するPCR(3個の別個の反応よりなる)によるSOEを実施した。反応の間に使用した付加的な鋳型はCD32−pCDNA3.1およびpCLPS m8h28−IRES−YFPを包含し、次いでPCR産物を制限酵素消化してCD32−IRES−IL−7 pCLPSを生じた。レンチウイルスは本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり作成した。
【0178】
IL−15:別の態様において、成熟IL−15配列に結合されたIgEリーダーペプチドを含んでなるプラスミドpVAX Hum IL−15(配列番号10を含んでなる)を使用した。PCRプライマーは、プラスミド配列にMluIおよびSalI制限部位を付加するように設計した。PCR産物を制限酵素で消化し、そしてCD32−IRES−IL−7 pCLPS(IL−7遺伝子を除去するためMluIおよびSalIでもまた切断した)にクローン化した。レンチウイルスは本明細書に記述されるとおり調製した。
【0179】
IL−21:別の態様において、活性化したヒトPBMCからIL−21(配列番号11)を増幅し、そしてTOPO 3ベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)にクローン化した。BamHIおよびXhoIを使用して、ヒトIL−21遺伝子を該ベクターから切り出し、そして、該挿入物をその後、NKG2D−IRES−DAP12 pCLPS構築物(BamHIおよびXhoIを使用して製造した)の第一の位置にクローン化した。ヒトCD32を、MluIおよびSalI部位を含んでなる端に隣接したPCRプライマーを使用してCD32−pCLPS(上述されたところの)から増幅した。PCR産物をそれぞれの酵素で消化し、そして第二の位置にクローン化して、IL21−IRES−CD32 pCLPSを創製した。レンチウイルスは本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0180】
OX40L:別の態様において、OX40L(配列番号12)を、成熟樹状細胞から得たcDNAから増幅し(Schliengerら、2000、Blood)、そしてpCDNA3.1 hygromycinにクローン化した。制限酵素部位MluIおよびSalIをPCRプライマーの端に付加し、そしてPCR産物をそれぞれの酵素で消化し、そして、またMluIおよびSalIで切断してIL−7挿入物を除去したCD32−IRES−IL−7 pCLPSにクローン化した。CD32−IRES−OX40L pCLPSレンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり作成した。
【0181】
4−1BBL:別の態様において、4−1BBL(配列番号13)を、以前に記述されたとおり陰性選択により精製しかつPMAおよびイオノマイシンで活性化した、活性化したB細胞から得たcDNAから増幅した。Kpn IおよびNotI部位を端に導入したPCR産物を、KpnI/Not I消化したpcDNA3.1 hygromycinにクローン化した。該ベクターをXbaIおよびSal Iで消化し、そしてXbaI/Sal Iで消化したpCLPSレンチウイルスベクターにクローン化した。pCLPS 4−1BBLレンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり作成した。
【0182】
CD80:なお別の態様において、CD80(配列番号14)を、PCR産物の端にBamHIおよびSalI部位を導入したPCRプライマーを使用して、不死化B細胞株(Vonderheideら、1999、Immunity 10:673−679)から得たcDNAから増幅した。これらの酵素での消化後に、CD80をBamHI/SalIで消化したpCLPSレンチウイルスベクターにクローン化した。CD80−pCLPSレンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0183】
CD83:なおさらなる一態様において、CD83(配列番号15)を、PCR産物の端にXbaIおよびXhoI制限部位を導入するためのプライマーを使用して、Ramesh細胞株から調製したcDNAから増幅した。これらの酵素での消化後に、CD83 PCR産物をpCLPS(XbaI/SalIで消化した)に連結した。CD83−pCLPSレンチウイスルベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0184】
CD86:別の態様において、CD86(配列番号16)を、BamHIおよびNot I制限部位を端に付加したPCRプライマーを使用して成熟樹状細胞から得たcDNA(Schliengerら、2000、Bloodに記述されたとおり調製した)から増幅した。PCR産物をBamHIおよびNot Iで消化し、そして同様に消化したpcDNA3.1 hygromycinに連結した。このベクターをBamHIおよびSal Iで消化しかつpCLPSにクローン化した。pCLP CD86レンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0185】
ICOS−L:別の態様において、ICOS−L:(配列番号17)を、樹状細胞から得たcDNAを使用して、端にKpn IおよびNot I制限部位を含んでなるPCRプライマーを使用して増幅した。PCR産物を、KpnIおよびNot Iで消化したpcDNA3.1 hygromycinにクローン化した。該プラスミドをBamHIおよびXho Iで消化してICOS−L挿入物を切り出し、それをpCLPS(BamHI/XhoIで消化した)にクローン化してICOS−L−pCLPSを生成させた。レンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0186】
HLA−A0201:なお別の態様において、HLA−A0201 cDNAクローンを、国際組織適合性ワーキンググループ組織(International Histocompatibility Working Group organization)の細胞および遺伝子バンク共用資源(cell and genebank shared resources)(cbankover)のウェブサイト(ihwg.org)から公的に利用可能である国際細胞・遺伝子バンク(The International Cell and Gene Bank)から得た。HLA−A0201を、端にBam HIおよびSal制限部位を含んでなるプライマーを使用するPCRにより増幅し、そして増幅産物をpCLPSにクローン化した。pCLPS HLA−A2レンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0187】
Flu−GFP:一態様において、Fluマトリックスタンパク質1のヌクレオチド113−290(配列番号18)に融合した増強緑色蛍光タンパク質(BD Biosciences、カリフォルニア州パロアルト)のコーディング領域全体を含んでなるFlu−GFP融合ベクターを使用した。この構築物をBamHIおよびXho Iで消化し、そしてBam HIおよびSal Iで消化したpCLPSにクローン化した。pCLPS GFP−fluレンチウイルスベクターは、本明細書の別の場所に以前に記述されたとおり製造した。
【0188】
DRα:別の態様において、DRα(配列番号19)およびDRB4(配列番号20)を、標準的技術を使用して、CD3/28で活性化したCD4 T細胞から得たcDNAを使用してクローン化し、そして各核酸をpCLPSにクローン化した。DR4を発現するK562細胞を製造するため、(欠落)をK562およびHLA−DR細胞に同時に形質導入し、そして、DR4を発現する細胞を、本明細書の別の場所に記述されるところのフローサイトメトリーを使用して単離した。
【0189】
加えて、ILT3(配列番号21)およびILT4(配列番号22)を、本明細書の別の場所に開示されかつ当該技術分野で既知の方法に本質的に従って、本発明のaAPC中で発現させた。
【0190】
高力価、高効率の第三世代のレンチウイルスベクター(LV)を使用してaAPCを効率的に製造した。これらのベクターは、それらをヒト治療薬に理想的に適するようにする多数の固有の安全性の特徴を有する。とりわけ、HIV−1配列のおよそ90%が移入ベクターから除去され、ペイロード遺伝子に物理的に連結されたパッケージングおよび組込み配列のみを残す。複製能力のないパッケージングされたLVはスプリットゲノムアプローチを使用して生成させる。とりわけ、293 T細胞を、HIV gag/pol、VSV Gタンパク質(env)、HIV revおよび移入ベクターをコードする4種の別個のプラスミドでトランスフェクトする。レンチウイルスベクターが、RPMI 1640(BioWhittaker,Inc.、メリーランド州ロックビル)、10%FCS、2mMグルタミンおよび100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン中で培養した293T HEK細胞のトランスフェクション後に生じられた。細胞をトランスフェクションの24時間前にT 150組織培養フラスコあたり5×10で接種した。全部のプラスミドDNAはCsCl勾配を使用して二重精製した。細胞を、7μgのpMDG.1(VSV−Gエンベロープ)、18μgのpRSV.rev(HIV−1 Revをコードするプラスミド)、18μgのpMDLg/p.RRE(パッケージングプラスミド)および15μgのpCLS移入プラスミドで、Fugene 6(Roche Molecular Biochemicals、インジアナ州インジアナポリス)を使用してトランスフェクトした。培地をトランスフェクション6時間後に交換し、そしてウイルス上清をトランスフェクション後24時間および48時間に収集した。ウイルス粒子を、Reiser(2000、Gene Ther.7:910−913)に記述されるとおり、Beckmann SW28ローターを用いての28,000RPMで3時間の超遠心により10倍濃縮した。
【0191】
この戦略の結果として、3つの独立かつ高度にありそうにない組換え事象が起きて複製コンピテントなベクターを創製させたと言わざるを得ない。付加的な安全措置として、このベクターを、3’LTRプロモーターを欠失させることにより自己不活性化にさせた(Zuffereyら、1998、J.Virol.72:9873−9880)。従って、組込みに際して、機能するプロモーターのみが、ペイロード遺伝子と並置される供給された内的プロモーター(この場合はCMV)であり、そして従ってHIV配列は転写されない。
【0192】
このレンチウイルスベクター形質導入アプローチを使用して、数種の高力価レンチウイルスベクターが、CD83およびICOS−LならびにKA2/32/86/4−1BBL aAPCについて創製され、また、親KA2/32/86(図3)、ならびに本明細書の別の場所に記述される他のaAPCを創製した。簡潔には、K562細胞を、CD32、HLA−A2、4−1BBLおよびインフルエンザMP1GFP融合タンパク質をコードするレンチウイルス発現ベクターで形質導入し、全4種のマーカーを発現する単一クローンについて選別し、そして4週間増殖させた(図3)。加えて、K562に基づくaAPCの形質導入に有用な分子の多数の組合せを含んでなる多様なレンチウイルスベクターが、表1に示されるとおり、製造(P)されているか若しくは設計(D)されている。
【0193】
【表2】

【0194】
K562細胞
K562細胞は、末期の急性転化の慢性骨髄性白血病を伴う患者から単離した(Lozzioら、1975、Blood、45:321−334)。K562はMHC分子若しくはT細胞共刺激リガンドを発現しないDC前駆細胞を表しうるが、しかし、限定されるものでないがサイトカイン産生、接着分子発現およびマクロ飲作用を挙げることができる、DCを効果的なAPCにする多くの他の属性を保持する。単球細胞株U−937は効果的なaAPCとして機能することが不可能であったため、これらの属性はK562細胞に独特でありうる。従って、K562細胞は、その上に所望のMHC分子および共刺激リガンドを導入してCD様aAPCを樹立し得る理想的な足場構造を表す。こうしたaAPCは、高レベルのMHC発現、多数の共刺激リガンド、およびT細胞とのサイトカインのクロストークに携わる能力を包含するDCの全部の利点を有する。K562に基づくaAPCはまた、それらの制限された寿命、複製能力の欠如、および明確に定義されていない成熟要件のようなDCの欠点も欠く(Leeら、2002、Vaccine 20:A8−A22)。
aAPCを製造するためのK562細胞の形質導入
本明細書に開示されるデータは、K562細胞がDCの強力なT細胞刺激能力を良好に模倣することを可能にする、共刺激リガンドのレンチウイルスに媒介される導入を介するK562 aAPCの創製を示す。
【0195】
K562細胞をヒトFc受容体CD32でトランスフェクトして(「K32細胞」)抗CD3および抗CD28抗体の負荷を可能にし、そして、該細胞を、追加された共刺激のためヒト4−1BBLでもまたトランスフェクトした(「H32/4−1BBL細胞」)(図1)。KA2/32/86/4−1BBL/CD83 aAPCを、スピン感染(spinoculation)(O’Dohertyら、2000、J.Virol.74:10074−10080)によりCD83レンチウイルスベクターを用いて生じ(欠落)、KA2/32/86/4−1BBL親を形質導入した。およそ5百万のKA2/32/86/4−1BBL細胞を500μlの濃縮ウイルス(5×10〜5×10IFU/ml)と混合し、そして1200gで2時間回転した。形質導入5日後に細胞をCD83特異的Abで染色し、そしてMofloソーターを使用して高発現クローンを単離した。選別15〜20日後に単一クローンのコロニーが見え、そして単一クローンのこれらのコロニーをCD83発現によりスクリーニングした。高発現体をさらに増殖させ、そして他の導入したマーカー(HLA−A2、4−1BBL、CD86およびCD32)の発現レベルを測定して、子孫がCD83発現のほかはすべて親細胞株に類似であることを確認した。K32/86/4−1BBL/ICOS−LおよびK32/86/4−1BBL/ICOS−L/CD83 aAPCを、適切なウイルスを使用してこの様式で創製した。
【0196】
本明細書に記述される方法を使用して、最低9種の遺伝子の安定な発現がK562 aAPCで達成された。以下の遺伝子をK562細胞に形質導入し、そして、フローサイトメトリーを使用して検出されたとおり安定に発現された:Flu−GFP(図8A);CD80(図8B);CD86(図8C);4−1BBL:(図8D);およびHLA ABC(図8E)。KT32/A2/4−1BBL/40L/CD80/CD83/CD86は、検出可能なレベルのCD32、CD83、CD40LおよびICOS−Lもまた安定に発現した。これらの発現レベルは、いかなる選択も伴わずに3か月以上の連続培養について一定のままであった。加えて、数種のaAPCの製造を図3に具体的に説明する。これらのaAPCは、CMVプロモーターにより駆動される導入遺伝子の全部の発現を含んでなる。CMV特異的転写因子の隔絶により導入遺伝子の発現レベルを減少させることが起こり得たとは言え、(Cahillら、1994、FEBS Lett.344:105−108;Kangら、1992、Science 256:1452−1456)今日まで、5種の異なるレンチウイルスベクターでK562細胞を連続的に形質導入することに伴ういかなる問題の証拠も検出されていない(図3)。
【0197】
K562細胞の上述された形質導入方法を使用して、親K562ccを、LVで形質導入したK562細胞(例えば5種および8種の遺伝子で形質導入されかつそれらを発現する)と比較した。図7および8に具体的に説明されるとおり、LVで形質導入した細胞は、それ以外は同一のしかし形質導入されていない親細胞に比較して、好都合な増殖のキネティクスを表す。
【0198】
共刺激リガンドの発現に加え、本発明のaAPCは、CD32/IRES/IL−7およびCD32/IRES/IL−15ベクターで形質導入したK562細胞によるIL−7およびIL−15の産生により例示されるとおり、多様なサイトカインを産生させるのに使用し得る。該細胞を高CD32発現について選別し、そしてそれぞれのインターロイキンの産生を評価して(図13)、適切なサイトカインが産生されたことを示した。
【0199】
さらに、上述されたK562細胞の形質導入方法を使用して、aAPCは、プラスミドベクターを使用してトランスフェクトしたそれ以外は同一のK562細胞中でのCD32の発現より高レベルで、LVからCD32を発現する(図11)。これらのデータは、驚くべきことに、K562がレンチウイルスベクターを使用して容易に形質導入されたことを示す。図11Dは、K562細胞を形質導入するためLVを使用するCD32の発現が、プラスミドベクターを使用してトランスフェクトしたそれ以外は同一のK562細胞中でのCD32発現のレベルより大きいことを描くグラフである。さらに、本明細書に開示されるデータは、CD32発現のレベルが9か月間以上維持されたことを示す。さらに、このレベルのCD32発現は9か月間以上維持された。CD64を発現するaAPC細胞の特徴付けを下述する。
【0200】
加えて、本明細書に開示されるデータは、該aAPCがウシ胎児血清(FCS)を含まない培地中の培養物中で増殖することを示す(ヒト患者の処置での使用のためのaAPCの製造に重要な考慮)(図7を参照されたい)。これらのデータは、本発明の新規aAPCが3%AB血清を含んでなる合成培地(Aim V)中で増殖することを示す。すなわち、多様なK562に基づくaAPCを、レンチウイルスベクター(「LV」)すなわちKT32(1遺伝子);KT32/4−1BBL/CD86(3遺伝子);KT32/4−1BBL/CD86/A2/Flu−GFP(5遺伝子)を使用して親K562(k562cc)を形質導入することにより製造した。加えて、図7に具体的に説明されるとおり、レンチウイルスベクターの導入はK562細胞の増殖速度を有意に変えない。これらのデータは、LVで形質導入したK562 aAPCを使用してマスター細胞バンクを製造し得ること、およびaAPCが親細胞と同じくらい良好に増殖することを示す。
【0201】
本データは、K562細胞の形質導入方法、ならびにこれらのaAPCの発現および増殖特性を示した。加えて、K562に基づくaAPCに形質導入したサイトカイン/共刺激分子の長期安定性および十分な発現が評価されている。CD32は、形質導入したK562細胞中で9ヵ月より長い間安定に発現された。さらに、K562に基づくaAPCに導入された最低8種の外因性分子の検出可能かつ安定な発現もまた達成され(KT32−A2−41BBL−40L−80−83−86)、また、付加的な分子が同様に発現されることができないことを示唆するデータは存在しない。事実、現時点で、60日より長い間9種の遺伝子(ICOS−Lを包含する)を発現したaAPCが製造されている。従って、現在、単一のaAPC中で多様な分子を発現する本発明のaAPCの能力は制限されない。さらに、本発明のaAPCはマイコプラスマについて陰性かつ複製コンピテントなレンチウイルス(RCL)であり、また、それらの安全性およびいずれかの汚染する病原体の欠如は容易に評価し得る。
【0202】
本発明は、限定されるものでないが表2に示されるものを挙げることができる、本明細書に示される方法により製造される多数のK562に基づくaAPCを含んでなる。多様な免疫刺激分子の組合せを含んでなるこれらのaAPCは、あるT細胞サブセットの増殖、T細胞サブセットを増殖させる因子の組合せの同定、ならびにaAPCおよび若しくはそれにより増殖されたT細胞がそれの必要な患者に投与される、細胞に基づくおよび遺伝子治療を含んでなる、ex vivoおよびin vivo双方の方法に使用し得る。もちろん、本発明はこれら若しくはいずれかの特定のaAPCに制限されず、そして、表2に並べられる一覧は本明細書に提供される教示を単に具体的に説明する。
【0203】
【表3】

【実施例2】
【0204】
aAPCのin vitroの治療的使用
本発明は、治療的使用のためのT細胞のin vivo治療的ワクチン接種およびex vivo増殖のためのLVで工作したK562 aAPCを包含する。抗原、サイトカインおよび/若しくは共刺激分子を、同一若しくは別個のプロモーター/制御配列の制御下にK562細胞に形質導入し得る。さらに、腫瘍細胞抗原をコードする核酸を細胞中に形質導入し得るか、若しくは、細胞が適切なエピトープをプロセシングしかつMHCタンパク質の情況で提示するような細胞に別の方法で抗原を負荷し得る。これは、K562細胞が、必要とされる特異的抗原若しくはエピトープを最初に同定若しくは単離する必要性を伴わずに抗原をプロセシングかつ提示する能力を有することが、本明細書の別の場所で示されているからである。従って、細胞抽出物(腫瘍細胞の最低1種の膜成分を含んでなる)をK562に基づくaAPCに負荷し得、そして、関連する抗原をプロセシングかつ提示する該細胞の天然の能力を活用する。カスタマイズしたaAPCを本明細書に示す一方、これらは具体的説明の目的上のみであり、そして本発明は表3に示されるこれらの態様に制限されない。これは、本明細書の別の場所に提供される教示を備えた当業者により認識されるであろうとおり、無数の分子を事実上無制限の組合せでaAPCにより形質導入しかつ発現させ得るからである。
【0205】
【表4】

【実施例3】
【0206】
aAPCのex vivoでの治療的使用
他のaAPCを、限定されるものでないが養子免疫療法および遺伝子治療を挙げることができるex vivoの使用のため製造し得る。こうしたex vivo使用のためのaAPCのカスタマイズしたバージョンのいくつかは、とりわけ下の表4に開示される構築物である。すなわち、被験体から単離したT細胞を、これら若しくは無数の他のaAPCを使用してin vitroで刺激かつ増殖させ得、その後、該T細胞を被験体に導入してそれによりそれに対する養子免疫療法を提供し得る。加えて、増殖させたT細胞を、遺伝子工作前若しくはその非存在下での該T細胞中での該タンパク質の発現に比較して、発現されなかったか若しくはより低レベルで発現された外因性タンパク質を発現するように遺伝子的に工作し得る。従って、本発明は、それの必要な被験体の自己移植に使用されるT細胞を増殖させるために本発明のaAPCを使用するex vivoの細胞に基づく養子免疫療法および遺伝子治療の双方を提供する。表4は単にこうした細胞/遺伝子治療に使用し得るaAPCのいくつかの具体的に説明する例を示すが、しかし、本発明は、本発明のこれらの例示的な「在庫があり入手可能な」aAPCに制限されない。
【0207】
【表5】

【実施例4】
【0208】
ヒトCD 4 T細胞のaAPCでの刺激
本明細書に開示されるデータは、CD4 T細胞の長期増殖が、外因性サイトカインの存在下でK32/CD3/28およびK32/86CD3 aAPCを使用して得られたが、しかしU937に基づくaAPCは有効でなかったことを示す(図5)。さらに、該データは、K562に基づくaAPC(例えばK32/CD3/28、K32/86/CD3)が、ビーズおよび細胞双方にCD3およびCD28を負荷する場合にCD4 T細胞の長期増殖をより効果的にビーズに基づくaAPC(CD3/28被覆ビーズ)を媒介することを示す。これらの結果は、ビーズに基づく系を使用して可能でない、検出可能な「クロストーク」がK562に基づくaAPCとT細胞の間に存在することを示す。図5に具体的に説明されるとおり、全部の腫瘍細胞株が人工APCとしてはたらく能力を有するわけではなく、また、該データは、予期されなかった、強力なAPCとしてはたらくK562細胞の能力をさらに示す。これらの驚くべき結果は、K562に基づくaAPCを使用して可能である、従来技術の方法を上回る有意の改良を裏付ける。
【0209】
本明細書に開示されるデータは、CD4 T細胞によるサイトカインおよび/若しくは共刺激分子発現を誘導するためのK562に基づくaAPCの有用性をさらに示す(図6A−6D)。これらのデータは、全部、K562に基づくaAPCが、T細胞によるサイトカインおよび共刺激(costim)遺伝子の発現の誘導において、U937に基づくaAPCよりもはるかに優れていること、また、数種のaAPC構築物が、発現されているサイトカインおよび/若しくは共刺激分子にいくぶん依存して、他者よりも良好であることを示す。より具体的には、K32/CD3/28は他のaAPCと比較して一般に優れていた一方、B7−H3の発現は、類似の条件下でK32/CD3/28に比較した場合に、CD4の存在下でK32/CD3により実際により大きかった。これらのデータは、K562 aAPCが、T細胞と相互作用する際に、T細胞の活性化および増殖をさらに高め得る一連の付加的なサイトカインおよび共刺激分子を産生する(APCおよびT細胞のクロストーク)ことを示す。より具体的には、ある種の分子(例えばK32/CD3/28、K32/CD3、K32、U32/CD3/28、U32/CD3、U32)をコードする多様なベクターで形質導入した多様なK562およびU937に基づくaAPCを、目的の分子(例えばIL−15、PD−L−1、PD−L2およびB7−H3)の発現を誘導するそれらの能力についてアッセイした。本明細書に開示されるデータは、K562に基づくaAPCがこれらの分子の検出可能な発現を誘導し、かつ、U937に基づく細胞よりもはるかにより大きい程度までそうしたことを示す。これらのデータは、本発明の新規aAPCの有用性、および従来技術の方法を上回る有意の改良をさらに示す。これらのデータは、全部、K562に基づくaAPCが、T細胞によるサイトカインおよび共刺激(costim)遺伝子の発現の誘導においてU937に基づくaAPCよりはるかに優れていることを示すからである。これらの結果は、K562親細胞株が乏しいT細胞刺激活性を示すことを示す以前の教示(Brittenら、2002、J.Immunol.Methods 259:95−110)を考えれば、とりわけ注目に値する。
【0210】
親K562細胞、U937に基づくaAPCおよびビーズに比較しての本発明のaAPCの優れた結果を考えて、本明細書に開示される多様なaAPCの相対的能力を評価した。数種のaAPC構築物は、ある種のT細胞に対する効果の媒介で他者よりも良好であり、また、有効性が、発現されているサイトカインおよび/若しくは共刺激分子またはそれらの組合せにいくぶん依存して変動すること。より具体的には、K32/CD3/28は他のaAPCと比較して全般的に優れていた一方、B7−H3の発現は、類似の条件下でK32/CD3/28と比較した場合にCD4の存在下でK32/CD3により実際により大きかった。これらのデータは、新規K562に基づくaAPC中で発現される分子のある種の組合せが、T細胞のある種の集団に対しより大きな効果を有することをさらに示す。これらのデータは、従って、所望の効果(1種若しくは複数)を達成しかつ/または目的のT細胞サブセットを刺激しかつ増殖させること(それらのいずれも本発明の前に可能でなかった)の分子の多様な組合せの有効性を評価するための新規の系を提供する。
【実施例5】
【0211】
ヒトCD8 T細胞のaAPCでの刺激
簡潔には、50,000の照射したKT32/4−1BBL/CD86を抗CD3 Abで被覆し、そして健康なドナーからの100,000の新たに単離したCD8 T細胞と混合した。10〜12日ごとに、CD8 T細胞を、新たに照射したKT32/4−1BBL/CD86 aAPCで再刺激した。細胞を廃棄しなかった場合に蓄積していたとみられる細胞の総数を、培養日数に対する総細胞数の半対数プロットとして描く(図9)。図9でまた具体的に説明されるとおり、CD32および4−1BBLで形質導入したaAPC(K32/4−1BBL)により増殖させたポリクローナルCD8 T細胞は、43日後に18,600倍増殖した。
【0212】
本明細書に開示されるデータは、aAPC(例えばK32/K−41BBL aAPC)を使用しての抗原特異的CD8 TCMの増殖をさらに示す。簡潔には、flu tet+およびflu tet−双方のT細胞を、培養日数の関数として増殖させ(図10A−10C)、ここでインターロイキン2(IL−2)を第20日に培地に添加した。該データは、細胞をFlu tet−若しくはFlu tet+であるとして選別したフローサイトメトリーを使用してCD8増殖について染色した細胞中での第16日までの移動を示し、K32/4−1BBL aAPCとともに培養したCD8 TCM細胞の抗原特異的増殖を示す。第26日に、細胞を、T2ヌルであったか若しくはT2−fluを発現したtet+若しくはtet−細胞を特異的に溶解するそれらの能力についてアッセイした。該データは、細胞死滅が、クロム放出アッセイにより示されるとおり、tet+のT2−flu標的細胞に特異的であったことを示す(図10E)。特異的溶解パーセントはエフェクター:標的(E:T)細胞比の関数であり、最大の特異的細胞溶解は10:1の比で検出され、そしてその後、ET:比を1:1まで減少させた際に減少した。検査した全部のE:T比で、tet+のT2−fluに特異的な細胞溶解が、該aAPCを使用して増殖させた細胞を使用して観察された。
【0213】
本発明のaAPCが抗原/MHC特異的様式で作用し得るかどうかを決定するため、K562細胞を、GFPに連結したA2拘束性エピトープGILGFVFTL(配列番号1)をコードするHLA−A2、CD86、4−1BBL、CD32、CD64およびインフルエンザMP1ミニ遺伝子で形質導入した。このKA2/32/86/41−BBL/Flu GFP aAPCのFACS分析は、全5種のマーカーが高レベルで発現されることを示し(図3および12)、また、全部の導入遺伝子の安定な発現が約9か月の連続培養の間観察された。
【0214】
これらのaAPCが抗原特異的細胞を増殖させるのに十分であったことを示すため、1500のflu四量体陽性細胞をHLA−A2ドナーから単離し、そして3000の照射したKA2/32/86/4−1BBL/Flu GFP aAPCと混合した。10日ごとに、新たに照射したKA2/32/86/4−1BBL Flu GFP aAPCを、2T細胞ごとについておよそ1aAPCとなりうるように培養物に添加する。22日後に、およそ一千万のCD8 T細胞が存在した。これらの細胞をFlu特異的A2四量体で染色し、そして細胞の90%以上がFlu特異的であり(図12)、選別前細胞と比較しておよそ250倍の濃縮であった(図12E)。これらのデータは、K562細胞が、抗体の使用を伴わずに抗原をプロセシングかつ提示しそして抗原特異的T細胞を増殖させる能力を有することを示す。重要なことには、KA2/32/86/4−1BBL/Flu GFP aAPCは、細胞の四量体陰性画分からT細胞を増殖させることが不可能であった。
【0215】
類似の実験プロトコルを使用してflu特異的T細胞を増殖させたが、しかし、シグナル「1」を送達するのに、MHCクラスIにより結合されたペプチドよりむしろ抗CD3を使用した(図2)。簡潔には、細胞を、インフルエンザマトリックスタンパク質ペプチドのアミノ酸配列(GILGFVTVL;配列番号1)を負荷したA*0201四量体MHCで染色し、そして陽性および陰性画分に選別した。K32/4−1BBL/CD3/28 aAPCを使用する17日の増殖後に、最初の選別に使用した同一の四量体で細胞の各集団を染色した。細胞の約60%のみがflu四量体陽性であり、そして全体の染色レベルはより低かった。これは、KA2/32/86/4−1BBL/Flu GFP aAPCが、HLA−A2により提示されるGILGFVFTL(配列番号1)ペプチドに対する最高の親和性を有するT細胞受容体(TCR)を選択的に増殖させることを示唆する。
【0216】
抗CD3およびCD28 Abで被覆したK32/4−1BBL aAPCを、抗原特異的CD8 T細胞を増殖させるのに使用し得るかどうかを決定するために、MHC四量体で選別した初代CD8 T細胞の集団を、K32/4−1BBL/CD3/28 aAPCとともに10週間培養した(図2A)。インフルエンザに対する免疫をもつA*0201の個体からのT細胞を、抗CD8 mAb、および、インフルエンザマトリックスタンパク質のA*0201拘束性ペプチドエピトープに複合体形成させたA*0201 MHC四量体(flu MP四量体)で染色した。低頻度(約0.1%未満)の四量体集団を選別し、そして抗CD3およびCD28 Abで被覆した照射したK32/4−1BBL aAPCで刺激した。全細胞を、K32/4−1BBL aAPCで約10日間隔で再刺激した。培養の間に特異的flu刺激を提供しなかった。数か月の培養の間、指数増殖曲線が得られた。代表的な一実験において、およそ8,000の抗原特異的T細胞が培養1か月後に1.5×10細胞を生じ(図2B)、これは効果的な免疫療法に十分な数である(Riddellら、1995、Annu.Rev.Immunol.13:545−586)。培養物の表現型分析は、休止ヒトT細胞と混合した照射したaAPCが純粋なT細胞の集団を1週間以内に生じたことを示した。さらに、flu MP四量体陽性細胞は、Flu−MPペプチドでパルスしたT2標的に対する強力な細胞傷害性を表した(図2C)。この戦略は、HIV特異的CD8 T細胞を増殖させ、および広範な特異性をもつCD8 T細胞を増殖させるためにこれらのaAPCを使用するように適合させ得る。
【0217】
K32/4−1BBL aAPCを、hTERT特異的細胞傷害性リンパ球(CTL)を増殖させるのにもまた使用した。K32/4−1BBL aAPCを使用して増殖させたhTERT特異的CTLは、HLA−A2を発現しかつテロメラーゼの癌細胞(OV−7)を特異的に溶解したが、しかし、テロメラーゼかつHLA−A2である癌細胞(SK−OV−3)はしなかった(図10E)。従って、aAPCは、HLA−A2の情況で認識されるために抗原を必要とする抗原特異的CTLの増殖を誘導した。さらに、増殖の間に、hTERTをワクチン接種した乳癌患者から得たCTLは、MoFlo選別を使用して評価されるとおり、K32/4−1BBL aAPCによる増殖の間にtet+ CD8 CTLの割合の検出可能な増加を示した。それぞれ10A〜10Cに対応するMoFlo選別のタイミングを、矢印により示されるところの集団の倍加を示すグラフ上で示す(図10D)。
【0218】
驚くべきことに、本明細書に開示されるデータは、K562に基づくaAPCが、その後T細胞に提示される抗原をプロセシングする能力を有し、それにより増殖を司る特定のエピトープが演繹的に知られていない抗原特異的T細胞を増殖させることを初めて示す。より具体的には、精製したT細胞をHLA A*0201ドナーから得、そして該細胞を抗CD8 mAb、およびインフルエンザマトリックスタンパク質のA*0201拘束性エピトープと複合体形成させたA*0201 MHC四量体(flu−MP−四量体)で染色した。およそ1,500細胞の四量体陽性集団を選別し、そして抗CD28抗体を負荷した照射したKTA2/CD32/4−1BBL/FLU−GFP aAPCを使用して刺激した。細胞をおよそ10〜12日ごとにKTA2/CD32/4−1BBL/FLU−GFP aAPCで再刺激した。インターロイキン−2を供給(feeding)ごとに(およそ2〜3日ごとに)培養物に添加した。
【0219】
培養26日後に、T細胞の大部分は最初の選別前集団に比較してflu−MP四量体陽性となり、aAPCがflu特異的抗原をプロセシングかつ提示し、そしてflu特異的CTLを効率的に増殖させたことを示した(図12A−12F)。これらの結果は、本発明のaAPCが、細胞を産生するのに必要とされる抗原の正確なエピトープが知られていない場合であっても抗原特異的T細胞を増殖および産生させるのに使用し得ることを示す。これは、T細胞を刺激する正確な抗原が知られていない移入療法の開発に重要である。これは、とりわけ、ほとんどが知られていない腫瘍特異的抗原の場合である。従って、本発明は、病原体(例えばウイルス)、若しくはそれに対する特異的T細胞応答が望ましい他の分子をK562細胞に提供すること、および該細胞に該抗原をプロセシングかつ提示させてそれにより所望の抗原特異的応答を生じさせることに関する。
【0220】
付加的な一実験において、特異的リガンドが抗原特異的CD8 T細胞の予期されない増殖を促進することが示された。図21は、四量体選別により単離しかつCFSEで染色しそして2:1の比でaAPCと混合したCMV特異的T細胞を具体的に説明する。図21AはCMV特異的CD8細胞を具体的に説明し、図21Bは、抗CD3抗体を負荷したK32細胞と接触させたCMV特異的CD8細胞を具体的に説明する。図21Cは、CD32、IL−15、4−1BBL、CD80および抗CD3を発現するaAPCと接触させたCMV特異的CD8細胞を描く。これらのデータは、共刺激リガンド(この場合はCD80 IL−15および4−1BBL)の添加が、抗原特異的CD8 T細胞の増殖を予想外に促進することを示す。
【実施例6】
【0221】
修復された(restored)エフェクター機能を伴うHIV−1特異的CD8 T細胞のaAPC増殖
抗原特異的CD8 T細胞の自己移入によるHIV特異的T細胞応答を増強するための試みは、HIV感染の長期抑制をもたらしていない(Tanら、1999、Blood 93:1506;Koenigら、1995、Nature Med.1:330−336;Brodieら、1999、Nature Med.5:34(欠落)、Riddellら、1996、Nature Med.2:216−223;Liebermanら、1997、Blood 90:2196−2206)。これらの細胞のin vivoで生存することの不能は、臨床上意味のある方法で抗HIV応答を測定するためのいかなる試みも不可能にした。若干の症例において、これらの細胞の早期の死亡は選択可能なマーカーの免疫認識として容易に説明された(Riddellら、1996、Nature Med.2:216−223)。他の症例においては、注入に際してのT細胞の死の理由はより少なく明確であった。これらの早期の研究は、HIV特異的ペプチドを末梢単核血液細胞(PMBC)若しくはリンパ芽球腫細胞株(LCL)に負荷すること、限界希釈を実施してクローンを単離すること、ならびに、高濃度の外因性IL−2および共刺激の非存在下でトリガーするTCRを使用してT細胞をex vivoで数か月間増殖させて1×10までのHIV特異的T細胞を生じさせることというわずかに異なる変形物を使用した。いずれかの特定の論理により拘束されることを願わないが、もしかしたら高濃度のIL−2への依存性と結合された長期のex vivo培養が、それらの宿主に一旦戻し注入されればこれらの細胞でのアポトーシスの開始につながったのかもしれない。
【0222】
ビーズに基づくaAPC(CD3/28被覆ビーズ)は、HIVに感染した個体からCD4 T細胞を増殖させるための効率的なベヒクルである(Levineら、1996、Science 272:1939−1943)一方、HIV養子移入臨床試験での使用に細胞に基づくaAPC(遺伝子を改変したK562細胞)を使用することに対する多数の潜在的な利点が存在する。第一に、細胞に基づくaAPCはビーズに基づく系よりもはるかにより確実にT細胞を増殖させる(Parryら、2003、J.Immunol.171:166−174)。これは治療的量のT細胞を得るのに必要とされる時間を短縮して、これらの治療の費用を低減し、そしておそらく、それらが患者に一旦戻し注入されれば該細胞の機能を向上させる。次に、付加的な共刺激分子はレンチウイルス形質導入によりaAPCに容易に導入し得る。重要なことに、CD3/28被覆ビーズはCD4 T細胞を増殖させるためにのみ有効である(Lauxら、2000、Clin.Immunol.96:187−197;Deethsら、1999、J.Immunol.163:102−110)。従って、CD4およびCD8双方のex vivoで増殖させたT細胞をHIVに感染した個体に戻し注入することの免疫再構成能力を試験するために、新たな増殖系を開発しなければならず、そしてこうした系は本明細書に開示される。
【0223】
HIVに感染した個体からCD8 T細胞を最適に増殖させるAPCを創製することが有用である。以前、K562細胞が、CD8 T細胞の長期増殖を誘導する最低限のaAPCとして、CD32(刺激性Abを結合するため)および4−1BBLでトランスフェクトされた。また、CD86でトリガーされたCD28は、抗CD28Abを与えられたT細胞をトリガーすることと同一の増殖能力をT細胞に与えたことが示された(Thomasら、2002、Clin.Immunol.105:259−272)。Abに依存しない培養系を開発することが望ましかったため、CD86を、むしろ抗CD28よりも、T細胞増殖およびHIV複製双方に対するCD28の共刺激効果をトリガーするのに使用した。従って、以下の5種のaAPC、すなわち、KA2/32/86、KA2/32/86/4−1BBL、KA2/32/86/4−1BBL/CD83、KA2/32/86/4−1BBL/ICOS−LおよびKA2/32/86/4−1BBL/CD83/ICOS−Lを使用して、HIV感染患者からのCD8 T細胞を増殖かつ機能的に試験し得る。KA2/32/86はCD8 T細胞を刺激し得るが、しかしそれらに長期増殖能力を与えない(Mausら、2002、Nature Biotechnol.20:143−148)。このaAPCは、他の共刺激リガンドをそれと比較し得る陰性(すなわち基礎)対照としてはたらく。創製したaAPCの全部はHLA−A2およびCD32双方を発現する。これは、CD32が結合した抗CD3 Abにより送達されるシグナル1を有することによりポリクローナルCD8 T細胞を(図1)、若しくはHLA−A2に結合されたペプチドにより開始されるシグナル1を有することにより抗原特異的T細胞を増殖させるための同一のaAPCの使用を可能にする。
【0224】
KA2/32/86/4−1BBLは、健康なドナーからのCD8 T細胞を増殖させるための最低限のaAPCである(Mausら、2002、Nature Biotechnol.20:143−148)。付加的な共刺激シグナルが、向上されたエフェクター機能をもつHIV特異的T細胞を増殖させるのに必要とされうる。このaAPCで増殖させた細胞の、下に列挙されるaAPCで増殖させた細胞との比較は、いかなる付加的な所望の共刺激シグナルの同定も見込む。
【0225】
KA2/32/86/4−1BBL/CD83は、CD83が、T細胞活性化におけるその役割が最近検討された成熟DCのマーカーであるために使用される。抗CD3およびCD83Ig融合タンパク質で被覆した磁性ビーズでのT細胞の刺激は、CD4 T細胞に対するCD8の比を高め、CD83の連結がCD8 T細胞を優先的に活性化することを示唆した。さらに、CD8を発現する腫瘍細胞は、CD8 T細胞によりより効率的に死滅され、また、CD83欠乏性の腫瘍もまた拒絶するように免疫系をプライミングした(Schollerら、2001、J.Immunol.166:3865−3872;Schollerら、2002、J.Immunol.168:2599−2602)。
【0226】
KA2/32/86/4−1BBL/ICOS−Lは、ICOS−LがCD28関連分子の誘導可能な共刺激タンパク質(ICOS)を結合して、エフェクターサイトカイン(IFN−γ、IL−4およびIL−13)の産生を高めるがしかし高レベルのIL−2を産生(Hutloffら、1999、Nature 397:263−266)若しくは生存因子Bcl−xLを誘導(Parryら、2003、J.Immunol.171:166−174)することが不思議なことに不可能であるT細胞に強力な共刺激シグナルを送達するために使用される。ICOSおよびCD28が免疫系で演じている正確な役割は未だ不明確であるが、しかし、いくつかの疾患モデルでのICOSおよびCD28阻害の結果を比較することが手掛かりを明らかにした。ICOS若しくはCD28いずれかの阻害は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(Kopfら、2000、J.Exp.Med.192:53−61)およびトキソプラスマ(Toxoplasma gondii)(Villegasら、2002、J.Immunol.169:937−943)感染モデルにおいて、IFN−γ産生および保護免疫の生成の双方を妨害し、ICOSとCD28共刺激の間の非重複の関係を示唆する。さらに、共刺激の阻害が投与される場合の検査は、CD28がプライミングに決定的に重要である一方、ICOSはT細胞応答を維持することに対してより重要であることを示した(Gonzaloら、2001、Nature Immunol.2:597−604;Coyleら、2000、Immunity 13:95−105)。ICOS−L刺激はCD4およびCD8双方のT細胞におけるエフェクター機能を促進する(Villegasら、2002、J.Immunol.169:937−943;Mittruckerら、2002、J.Immunol.169:5813−5817;Wallinら、2001、J.Immunol.167:132−139)。
【0227】
KA2/32/86/4−1BBL/CD83/ICOS−Lは、とりわけ、免疫応答の生成においてCD83とICOS−Lのシグナル伝達の間に相乗効果が存在するかどうかの検査を可能にする。
【0228】
これらのaAPCは、最適なex vivo増殖により、HIV−1に感染したドナーからのT細胞に対して、エフェクター機能が修復され得るかどうかの実験を可能にする。aAPCの創製の完了に際して、HIV感染患者から単離したポリクローナルCD8 T細胞を増殖させるそれらの能力を評価し、そして、ex vivo増殖が、抗原刺激に応答する能力のHIV特異的T細胞を変えたかどうか、およびどのように変えたかを決定した。次に、HIVに感染したおよび感染していない個体から単離したPol特異的細胞を使用した類似の分析を実施した。これらの研究は、臨床試験へのaAPCの潜在的な使用を示し、そして、HIV感染がHIV特異的CD8 T細胞の発生にどのように影響を及ぼすかの研究を可能にする。
【0229】
本実施例に記述される方法は、HIVに感染したおよび感染していない個体からのPol特異的およびポリクローナルのCD8 T細胞の精製に関する。これらの細胞は、本明細書に開示される方法で使用される原料としてはたらく。
【0230】
HIV−1に感染したT細胞の供給源および精製
HLA−A2ドナーを、該集団中でのこの対立遺伝子の高頻度のため使用する。最初は、ウイルス表現型をHLA−A2ドナーの患者選択基準として使用しない。ナイーブなCD8 T細胞が活性化後にそれらの細胞表面上に少量のCD4を発現して、それらをHIV感染に感受性にすることが示されている(Yangら、1998、J.Exp.Med.187:1139−1144;Kitchenら、1998、J.Virol.72:9054−9060;Flamandら、1998、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 95:3111−3116;Imalchら、2001、J.Virol.75:11555−11564)。しかしながら、ナイーブなCD8 T細胞のみがこの可塑性を有するようであり、そして使用されたPol特異的T細胞は本質的にメモリーT細胞である。従って、いずれかの特定の論理に拘束されることを願わず、これらの細胞は感染せず、そしてex vivo増殖に際して感染した状態になることができない。
【0231】
HLA−2ドナーを使用することに加え、PBMCを使用し得る。PBMCを、FITC標識したHLA−A2特異的Ab、BB7.2(BD Pharmingen)で染色する。所望の細胞はHLA−A2ドナーのアフェレーシスから得ることができる。CD4 T細胞数の断面(cross−section)およびウイルス負荷量をアフェレーシス生成物から得る。アフェレーシス生成物のサンプルを使用してFicoll/Hypaque勾配を実施し、そしてPBMCを5千万/バイアルのアリコートで凍結させる。残存するアフェレーシス生成物を用い、単球を溶出により除去してPBLを創製し、そして、およそ5千万のCD4 T細胞を陰性選択(Mausら、2002、Nature Biotechnol.20:143−148)により単離する。PBLの残りを使用して、精製されたCD8 T細胞を(陰性選択により)作成し、そして本明細書に記述される方法および実験で使用する。
【0232】
四量体染色によるHIV Pol特異的T細胞のパーセントがおよそ0.7%±1.1であると見出されることが測定された(Sunら、2003、Journal of immunological methods 272:23−34;Kostenseら、2002、Blood 99:2505−2511;Rinaldoら、2000、J.Virol.74:4127−4138)。従って、1億のCD8 T細胞から約700,000のHIV Pol特異的CD8 T細胞が回収される。HIVに感染したT細胞を生存選別すること(live sorting)は多数の技術的および安全性の問題を提示する。Vantage SE/DiVaは、12色ならびに前方および側方散乱を測定することが可能なフル装備のソーターである。Vantage SE/DiVaは、それが感染性物質を一度に4集団に安全に選別することを可能にする高められた安全性機能(Perfettoら、2003、Cytometry 52A:122−130)を供給されている。
【0233】
非HIV感染宿主からのPol特異的T細胞の供給源および精製
7例のHLA−A2乳癌患者を、PolペプチドILKEPVHGV(配列番号3)に対し、対照治療群としてhTERTペプチドワクチンに対し、ワクチン接種した(Vonderheide、2004、Clin.Cancer Res.10:828−839)。ワクチン接種したHLA−A2乳癌患者からの細胞を使用して、HIV陰性宿主からのPol特異的細胞を増殖させる。これらの患者からの凍結PMBCを使用してPol特異的T細胞を精製する。これらのPol特異的T細胞の頻度は、HIVに感染したドナーから期待される頻度より低く(およそ0.1%)、従って、より少数(しかしなお十分な数)のこれらの細胞が、実験を開始するために得られる。Pol特異的T細胞患者は、Polペプチドでワクチン接種していたいずれの患者からも得ることができる。
【0234】
ex vivo増殖の間に、p24 ELISAを使用することによりHIV感染の証拠について培養物をモニターする。HIV感染は結果を歪ませるからである。感染が観察される場合は、R5ウイルスに感染している患者を使用する。R5ウイルスは、CCR5の天然のリガンドRANTES、MIP−1およびMIP−1βの高レベルの分泌、ならびにCCR5転写物の定常状態のレベルをダウンレギュレートすることにより、CD3/28で共刺激したT細胞中で複製することが不可能である(Rileyら、1997、J.Immunol.158:5545−5553;Carrollら、1997、Science 276:273−276)。従って、CD28共刺激は、T細胞の増殖特性を変えうる抗ウイルス成分の添加を伴わずに、R5に感染したT細胞の長期増殖を可能にする。ウイルスの向性はLittmanらにより開発されたGHOST細胞アッセイを使用して測定される。
【0235】
また、本明細書に開示される実験は純粋なPol特異的T細胞を必要としない。四量体被覆した磁性ビーズにより単離したHIV−1 Pol特異的CD8 T細胞を使用し得る(Mausら、2003、Clin.Immunol.106:16−22)。この方法はPol特異的T細胞の十分な濃縮を提供し得、また、Pol特異的細胞を単離するのに使用し得る。
【実施例7】
【0236】
ex vivoで増殖させたポリクローナルCD8 T細胞の特徴付け
HIV感染患者からの大量のT細胞を増殖させる能力を、HIV特異的T細胞を増殖させるこれらのaAPCの能力を特徴付けする前に検査する。これは、特定の1T細胞サブセットが1種のaAPCにより他者を上回って優先的に増殖されるかどうかを決定するための増殖率の測定を見込む。加えて、IFN−γ分泌およびパーフォリン発現と結合された四量体染色の分析を使用して、特定の1aAPCが、flu、CMV、EBV若しくはHIV特異的CD8 T細胞を優先的に増殖しかつ/若しくはそれらに向上されたエフェクター機能を与えるかどうかを決定する。
【0237】
HIV特異的T細胞が増殖およびエフェクター機能の誘導に対する独特の共刺激リガンドの要件を有するかどうかを決定するための、HIV特異的CD8 T細胞を分離して増殖させるものとのこれらの研究の比較。以下の属性を測定する:
【0238】
T細胞増殖
治療レベルのHIV特異的CD8 T細胞を生成させるため、T細胞を約10,000と約1,000,000倍の間(約13〜20回の集団倍加)まで増殖させる(Riddellら、1995、Annu.Rev.Immunol.13:545−586)。HIV特異的CD8 T細胞がex vivo培養物中で過ごす時間の量と、これらの細胞がHIV感染患者に提供する潜在的な臨床上の利益の間に逆相関が存在する。従って、HIV感染患者からのCD8 T細胞を最も迅速に増殖させるaAPCを決定し、そして本明細書に開示される方法で使用する。
【0239】
T細胞の生存および複製能力
ex vivo増殖後のT細胞の健康状態は、in vivoで機能するそれらの能力の優れた予測因子である。これらのaAPCの重要な細胞生存遺伝子Bcl−xLを誘導する能力もまた測定する。増殖過程の間の培養物中のアポトーシス細胞の比率を使用して、細胞に基づくaAPCのいずれかが増殖されたT細胞に特定の生存の利点を与えるかどうかを決定する。加えて、ex vivo増殖後の細胞のテロメア長を測定して、特定の1aAPCが、それが増殖させる細胞の複製能力の保存においてより効果的であるかどうかを決定する。各染色体の端に、テロメアと呼ばれる多数のTTAGGGヌクレオチド反復配列が存在する。細胞が分割する度ごとにそれは損失そのテロメアの一部分。大部分の細胞は、染色体の端の該DNA反復配列のコピーを修復し得る酵素テロメラーゼを発現しないため、細胞がその遠隔測定(telemetric)長さの決定的な量を一旦喪失してしまえばそれは分割するその能力を喪失すると考えられている。テロメア長は、細胞が何回複製したかを計るため、および推論によりその将来の複製能力を評価するための一方法として、当該技術分野で使用されている(Palmerら、1997、J.Exp.Med.185:1381−1386;Wengら、1997、J.Immunol.158:3215−3220)。しかしながら、Tリンパ球はテロメラーゼ活性を誘導し得る数種の細胞型の1つであり(Wengら、1996、J.Exp.Med.183:2471−2479)、そして従って異なる方法を使用して増殖させたT細胞間の相対的差違は、T細胞の有糸分裂事象の回数ならびにテロメラーゼが誘導された程度の双方を反映する。最も高い複製能力を有する細胞を注入することは、養子移入したHIV特異的T細胞がHIV感染を長期間制御することを確実にするために最も重要である。
【0240】
サイトカイン産生
サイトカインは重要なエフェクター分子であり、そしてT細胞分化への洞察を提供する。HIVに感染した個体由来のCD8 T細胞からの以下のサイトカインすなわちIL−2(ex vivo増殖のための重要なT細胞増殖因子であり、そして、IL−2を誘導する細胞の能力はその長期増殖能力と良好に相関する);IL−4(TH2分化のマーカー);およびIL−10(制御性T細胞の増殖の代理となりうる免疫抑制性サイトカイン)を誘導するaAPCのそれぞれの能力を定量する。HIV感染患者には、低レベルのIL−10を産生するようにT細胞を誘導するaAPCが好ましい。他のサイトカインは、限定されるものでないがTGF−β(IL−10と同一の論理的根拠のため);IFN−γ(TH1分化のマーカーかつ重要なエフェクターサイトカイン);およびTNFα(重要なエフェクターサイトカイン)を挙げることができる。
【0241】
四量体およびエフェクターの機能分析
Immunomicsにより開発された四量体/細胞内IFN−γおよびパーフォリン染色アッセイ(製造元の説明書による)は、表現型分析と結合された抗原特異的T細胞の検出および機能アッセイ双方を可能にする。この流れに基づく(flow based)方法は、現在利用可能な抗原特異的T細胞機能の最も正確なアッセイである。このアッセイを使用して、ex vivo増殖がHIV特異的T細胞の総数および機能にどのように影響を及ぼすかを決定する。
【0242】
T細胞増殖
これらのaAPCが大量のHIV−1に感染したT細胞をどのように増殖するかを評価するため、各aAPCに照射し、抗CD3 Abで被覆し、そしてHIV−1感染患者からの精製したCD8 T細胞と1:2のaAPC対T細胞比で混合した。細胞増殖の初期速度を比較するため、細胞をHチミジン取り込みよりはむしろCFSE染色にかけて、各aAPCが全T細胞の増殖をどのくらい良好に誘導したかを決定した。CFSE染色ははるかにより定量的な終点を提供しかつ増殖させた細胞の同時の表現型分類を可能にするからである。HIVに感染した個体からのおよそ2千万の精製したCD8 T細胞を3μMのCFSEと8分間混合し、徹底的に洗浄して未結合のCFSEを除去し、そしてaAPCで刺激する。刺激後毎日、細胞のアリコートを各培養物から取り出し、そしてフローサイトメトリーにより分析する。CFSE染色は細胞を高度に蛍光性にする。細胞分裂に際して蛍光は半分になり、そして従って細胞が多く分裂するほどそれはより少なく蛍光性になる。T細胞増殖を誘導する各aAPCの能力を、1回、2回、3回、など分裂した細胞の数を測定することにより定量する。特定の時間点で最も多数の細胞分裂を誘導するaAPCは、HIVに感染した個体からのCD8 T細胞の最も強力な増殖体(expander)と考えられる(Wellsら、1997、Clin.Invest.100:3173−3183)。
【0243】
しかしながら、CFSE染色は制限された数のT細胞分裂(およそ7回)しか検出し得ず、そして、免疫療法のために治療的量のT細胞を生成させるためには、13〜20回の集団倍加が必要でありうる。従って、これらのaAPCがT細胞の長期増殖をどのくらい良好に促進するかを決定するために、細胞増殖曲線を作成する。これらの実験は、本明細書に別の場所に記述されるところのCFSE実験と同じくらい正確に設定されているが、しかしCFSEは使用しない。培養2〜3日ごとに、T細胞をそれぞれの培養物から取り出し、そしてどのくらい多くの細胞が存在するかおよび細胞の平均体積を測定するコールターカウンターを使用してカウントする。平均細胞体積は細胞を再刺激すべき時期の最良の予測因子である。一般に、T細胞が適正に刺激される場合、それらはそれらの細胞体積を三倍にする。この体積が最初の芽細胞の約半分以上まで低下される場合、T細胞を再刺激して対数線形増殖を維持することが必要でありうる(Levineら、1996、Science 272:1939−1943;Levineら、1997、J.Immunol.159:5921−5930)。それが各aAPCを20回の集団倍加を誘導するのにかかる時間を計算する。このレベルのT細胞増殖を誘導するための各aAPCの相対的差違は、特定の一aAPCを使用して臨床試験を前進させる重要な基準である。
【0244】
各aAPCにより増殖させた細胞の表現型を特徴付けして、特定の1サブセットが優先的に増殖されるかどうかを決定する。各再刺激前に、増殖するT細胞集団の表現型分析を実施して、Appayら(2002、Nature Med.8、379−385)により提案されたCD27およびCD28の定義、ならびにSallustoら(1999、Nature 401:708−712)により提案されたCCR7の定義を使用して、増殖されたT細胞の分化状態を定義する。パーフォリンおよびグランザイムB細胞内染色を使用して、細胞溶解能力を推定するための全体的測定を実施する。
アポトーシス率およびテロメア長
アネキシンV/To−Pro(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)染色を各再刺激前に実施して、増殖速度の差違がアポトーシスを受けている細胞の数の差違を反映するかどうか決定する。このアッセイの実験の詳細はMausら(2002、Nature Biotechnol.20:143−148)に詳細に記述されている。最少量のアポトーシスに至る培養条件が望ましい。
【0245】
テロメア長は、当該技術分野で既知の多様な確立した技術を使用して測定されるが、しかし、好ましい一方法はflow FISH法を使用することである。それははるかにより少ない細胞を使用して比較的迅速に実施し得、そして定量するのがより容易であるからである。この方法において、およそ百万のT細胞(とは言えはるかにより少ないものが必要とされる)を熱および75%ホルムアミドを使用して変性させ、そしてその後、FITC複合DNAプローブを用いてTTAGGG配列にハイブリダイズさせる。未結合のプローブを洗い流し、そしてDNAをLDS 751で対染色する。それぞれ既知の量の可溶性蛍光色素(MESF)の分子同等物を有するFITC標識ビーズの4集団の混合物を各実験で分析して、較正曲線の創製および長時間の各培養物の相対テロメア長の測定を見込む(Baerlocherら、2002、Cytometry 47:89−99)。相対テロメア長を各再刺激前に測定し、そしてaAPCのいずれかが、有意により長いテロメアを有するT細胞を増殖させるかどうかについて記録する。
【0246】
サイトカインおよびBcl−xL発現
サイトカイン産生およびBcl−xL発現レベルを検討するため、およそ百万の細胞から各刺激24時間後にRNAを単離し、そして限定されるものでないがIL−2、IL−4、IL−10、IFN−γ、TNF−αおよびBcl−xLの相対的発現を検査するため定量的RT−PCRにかける。これらの確立したアッセイの実験の詳細はMausら(2002、Nature Biotechnol.20:143−148)、Thomasら(2002、Clin.Immunol.105:259−272)およびParryら(2003、J.Immunol.171:166−174)に見出し得る。TGF−α mRNAレベルと分泌されたサイトカインの間の多くの矛盾が示され(Assoianら、1987、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:6020−6024)、従ってTGF−α産生はELISAにより測定する。
四量体およびELISPOT分析
共通のリコール抗原およびHIVを認識する増殖されたCD8 T細胞の能力を比較する。増殖前に、精製したCD8 T細胞を、以下、とりわけHLA−A2四量体GLCTLVAML(配列番号4)(EBV BMLF)、NLVPMVATV(配列番号5)(CMV p65)、SLYNTVATL(配列番号6)(HIV gag p17)、ILKEPVHGV(配列番号3)(HIV RT pol)、GILGFVFTL(配列番号1)(Fluマトリックス)およびLLFGYPVYV(配列番号7)(HTLV Tax)を使用して染色し、そしてこれらの四量体の頻度をex vivo増殖前に測定する。次に、HIVに感染したドナーからの大量のCD8 T細胞を、本明細書に開示されるaAPCを使用して刺激し、そして、本明細書に記述される方法を使用して該細胞を増殖させる。各再刺激前に、増殖させたT細胞を四量体染色にかけて、EBV、CMVおよびHIV特異的T細胞の相対頻度が特定の一aAPCによる刺激により変えられたかどうか決定する。
【0247】
抗原認識後のIFN−γを分泌する細胞の頻度および高レベルのパーフォリンを発現する細胞の頻度を決定することが重要である。細胞内サイトカインアッセイを四量体染色と組合せて抗原特異的細胞を使用する流れに基づく機能アッセイを実施する、Immunomicsにより開発された四量体/細胞内IFN−γ染色アッセイを使用し得る。該アッセイはパーフォリン発現についての細胞内染色の組込みを包含し得る。各患者から単離したPBMCを凍結する前に、本明細書の別の場所に列挙されるペプチドのそれぞれを使用する四量体/細胞内IFN−γおよびパーフォリン染色アッセイを使用して、初期の四量体陽性/IFN−γ分泌/パーフォリン産生集団を決定する。対応する四量体を伴う各ペプチドについて、およそ百万のPBMCを、以下の実験条件および対照、すなわち1)ペプチドで刺激していない対照、2)ペプチド刺激を伴わない対照四量体染色、ならびに3)四量体およびペプチドのチューブについて3本のチューブに入れる。次に、適切な四量体を各チューブに添加し、そして室温で30分間インキュベートする。2マイクログラムのペプチドを第三のチューブに添加し、そしてサンプルを37℃で1時間インキュベートする。ブレフェルジンAを全3本のチューブに添加し、そしてチューブを別の4時間インキュベートする。四量体の全部はP5−Cy5.5およびAPC−Cy7で標識されるため、PerCP、ならびにAPC標識CD27およびCD28 Abを使用して、ウイルス特異的T細胞の分化状態を決定し得る。細胞を溶解し、固定し、かつ浸透化し、そして当該技術分野で既知の方法および本明細書に開示される方法を使用してIFN−γ FITC標識プロトコルを実施する。IFN−γ発現およびパーフォリン発現の同時測定を可能にする、PE標識抗パーフォリンAbをIFN−γ Abとともにインキュベートすることによりパーフォリン発現の測定に成功している。IFN−γを分泌するHIV特異的T細胞と死滅させる能力を有するものとの間の報告された矛盾(Zhangら、2003、Blood 101:226−235)を考えれば、この分析を使用して、多様な細胞に基づくaAPCを用いるex vivo増殖がこれらの機能的属性のいずれかをどのように変えるかが決定される。細胞をPFAに固定しかつフローサイトメトリーにより分析する。この分析は、IFN−γ パーフォリン発現細胞の基礎の表現型を確立する。四量体陽性細胞、またはIFN−γを分泌するか若しくは高レベルのパーフォリンを発現する細胞の表現型がex vivo増殖後に変えられるかどうかを決定するため、示差的に増殖させたCD8 T細胞を使用して四量体/細胞内IFN−γ染色アッセイを実施する。これを行うために、自己PBMCを使用し、そして存在するCD8 T細胞の割合を測定し、そしてCD8 T細胞を磁性ビーズ枯渇により取り出す。枯渇させたCD8 T細胞を、本明細書の別の場所に記述されるK562に基づくaAPCにより増殖させたものを用いて再構成し、そして本明細書の別の場所に記述されるところの四量体/細胞内IFN−γ染色アッセイにかける。これらの実験は、どのaAPCがex vivo増殖の間にHIV特異的T細胞の機能的表現型を変えることが可能であったかに関する指標を提供する。
【0248】
本明細書に開示されるデータは、細胞に基づくaAPCにより増殖させた、HIVに感染した個体から単離したCD8 T細胞の表現型を示す。いずれかの特定の論理に拘束されることを願わない一方で、それは、aAPCのあるサブセットが向上されたエフェクター機能をもつHIV特異的T細胞を増殖させ得ることを予測した。この結果は、これらのエフェクター機能がex vivo増殖により(欠落)され得ることを確認するとみられる。排除の過程により、どのシグナルがこの形質転換に必要であるかが、本明細書に記述される方法に従って決定される。この知見は、HIV特異的T細胞を分離して増殖させることにより確認され、そして、aAPC a GMP試薬を作成しかつ改良されたex vivoで増殖させたCD8 Tエフェクター細胞が患者でのHIV感染を制御するのを助け得るかどうかを知るためのフェーズI臨床試験を実施するための理論的根拠を提供する。加えて、この結果は、HIV特異的T細胞の欠点(1個若しくは複数)を媒介する機構、および特定の1共刺激リガンドがどのようにこの欠点を克服若しくは逆転し得るかを研究するための実験系を確立する。
【実施例8】
【0249】
ex vivoで増殖させたPol特異的T細胞の特徴付け
本明細書に開示される方法は、ポリクローナルT細胞増殖の環境内でこれらの細胞の増殖および機能を検査することにより、HIV特異的CD8 T細胞の増殖においてどのaAPCが最良であるかへの重要な洞察を提供する。しかしながら、恒常性の機構がCD4 T細胞の喪失について補正しかつHIV非特異的CD8 T細胞に全体的な異常がないように思われる際に、全CD8 T細胞の数が大部分のHIV感染患者で増大しているため、HIVに感染した個体からのex vivoで増殖させたポリクローナルT細胞の翻訳値は低い(Gandhiら、2002、Annu.Rev.Med.53:149−172)。従って、自己養子移入によりHIV特異的CD8 T細胞応答を向上させるため、HIV特異的T細胞のみを増殖させかつ長期間HIV感染を除外し得るエフェクター機能をそれらに与える系が望ましい。
【0250】
細胞に基づくaAPCのそれぞれを使用して四量体単離されたPol特異的T細胞を増殖させ、そしてどれが最高の複製および生存能力を伴いHIV感染細胞を最良に死滅させ得るPol特異的T細胞を生成させるかを決定することが望ましい。これらの研究は、HIVに感染した個体から単離したPol特異的細胞を、Pol特異的ペプチドでワクチン接種した癌患者から単離したPol特異的T細胞とともに使用して実施する。この比較は、HIVが該世代の抗原特異的細胞に対し有する影響に関する独特な洞察を提供する。同一の試薬およびアッセイを使用して、これら2種の疾患型から単離したこれらのPol特異的T細胞を研究し得るからである。これらの研究は、HIV特異的T細胞の欠点の性質への洞察を提供しかつこれらの欠点を克服する方法に関する新たな仮説を導きうる。
【0251】
T細胞の増殖および表現型
平均して700,000のPol特異的T細胞をHLA−A2陽性のHIVに感染した個体から、また、およそ100,000のPol特異的T細胞をワクチン接種した癌患者から単離する。抗原特異的増殖は約1,500のT細胞を使用して達成し得る(図3)。培養条件を同等にするため、培養は、96ウェルプレート中合計100μlの培地中で、7,500のPol特異的T細胞および15,000の本明細書の別の場所に記述されるaAPCを0.5ng/mlの抗CD3 Abと混合することにより開始する(T細胞対APC比を逆転させることが非常に少ない細胞を増殖させる場合に重要であることが観察されている)。これらの細胞を刺激する抗CD3およびK562にプロセシングかつ提示される抗原の能力を比較するため、そのaAPCもまたPol−GFP発現ベクターで形質導入した理想的な一組の培養物を増殖させる。従って、各ドナーの細胞について10個の培養物が利用可能である。新たに照射したaAPCを、2T細胞ごとに対し推定される1aAPCの比で、増殖するポリクローナルT細胞に10〜12日ごとに添加する。存在する細胞の数の正確な量がコールターカウンターを使用して計算され得る点まで該集団が一旦増殖したら、各集団の増殖速度を追跡する。T細胞増殖の前および後にHIVおよび癌患者から単離したPol特異的T細胞のCD28/CD27表現型を比較する。
サイトカイン産生、Bcl−xL発現、アポトーシス率およびテロメア長の評価
これらの研究は、存在する数百万の細胞を使用すること(およそ30日)から分析が構成されることを除き、本明細書の別の場所に開示される方法を使用して実施する。にもかかわらず、これらの研究は、ポリクローナルT細胞を使用して本明細書の別の場所に開示される結果を確認するはずである。
【0252】
HIVに感染した標的の死滅
抗原特異的T細胞を分離して増殖させることの一利点は、複数の死滅および他の機能アッセイを非常に定量的様式で実施し得ることである。第一の試験は四量体/細胞内IFN−γおよびパーフォリン発現アッセイである。本明細書の別の場所に開示されるとおり、ex vivoで増殖させたCD8 T細胞を、自己CD8を枯渇したPBMCと混合する。CD8 T細胞の大部分は四量体陽性であるため、Polペプチドとの接触に際して最高レベルのIFN−γおよびパーフォリンを産生するT細胞をどのaAPCが生じさせるかに関する定量的データが得られる。加えて、四量体細胞の数は制限しないため、CCR7、CD27、CD28、CD62L、CD45 RO、CD45 RAおよびCD57を使用するこれらの細胞の完全な表現型分析(Brenchleyら、2003、Blood 101:2711−2720)を実施し、それによりエフェクター機能(1種若しくは複数)をT細胞表現型と相互に関連づける。
【0253】
51Cr放出アッセイを介して、Polペプチドを負荷したT2細胞を死滅させる示差的に増殖させたPol特異的T細胞の能力を評価する。このアッセイにおいて、T2細胞に、51Crの取り込み前にPolペプチドILKEPVHGVを負荷する。徹底的に洗浄した後、標識したT2細胞を抗原特異的T細胞とともに1:30、1:10、1:3および1:1ならびに1:3の比で4時間インキュベートする。抗原特異的T細胞がT2細胞上に提示されるペプチドを認識しかつこれらの細胞を死滅させる能力を有する場合には、51Crが放出されかつ検出され得る。いかなるペプチド対照および洗剤溶解対照も特異的溶解の測定を可能にしない。高度の特異的溶解が観察される最低の標的対エフェクター比は、最高の死滅能力をもつT細胞をどのaAPCが増殖させるかを示す。
【0254】
ex vivoで増殖させたPol特異的T細胞のT2細胞を死滅させる能力を、Polを発現するCD4 T細胞を死滅させるこれらの細胞の能力と比較する。このシナリオは、ex vivoで増殖させたCD8 T細胞のin vivo標的をより緊密に模倣する。HIVに感染したCD4 T細胞を死滅させるこれらの細胞の能力は原理の最終的な証明である。さらに、このレベルで感染している細胞が51Cr放出アッセイにおいて非常に高いバックグラウンドを生成させて、増殖されたCD8 T細胞の有効性を決定することを困難にするとみられることがありそうである。一代替として、自己CD4 T細胞を、GFP発現によるPol発現細胞の追跡を可能にするPol IRES GFP発現レンチウイルスベクターで形質導入する。51Cr放出アッセイの十分な標的を生じさせるこれらのベクターにより形質導入されたT細胞のそのおよそ50%が観察された(T細胞をレンチウイルスベクターでどのように形質導入するかの詳細については、Parryら、2003、J.Immunol.171:166−174を参照されたい)。Polで形質導入されたならびに形質導入されないCD4 T細胞を51Crで標識する。CD4 T細胞ならびにT2細胞は51Crを取り込まず、従って該標的は1:100、1:30、1:10および1:3のエフェクター比に移動してアッセイの感度を向上させる。Polを発現するCD4 T細胞を死滅させるそれらの能力の増殖されないおよび増殖されたCD8 T細胞の間の差違は、別のものを上回る1種のaAPCをさらに開発するための強い理論的根拠を提供する。
【0255】
CD8 T細胞の長期のex vivo増殖にCD28発現が必要とされる。レトロウイルス形質導入によるCD28発現の復帰が、CD4 T細胞の存在を伴わずにIL−2を産生しかつ増殖させるCD28陰性細胞の能力を復帰させることが最近観察された(Toppら、2003、J.Exp.Med.198:947−955)。最近、IL−12が、CD28陰性T細胞にCD28発現を復帰することが示された(Warringtonら、2003、Blood 101:3543−3549)。IL−12がPol特異的T細胞のCD28発現を高め得かつ長期増殖能力を向上させ得るかどうかを決定するため、10ng/mlのIL−12を多様なaAPC/Pol特異的培養物に添加し、そして、該細胞を、Pol特異的細胞においてCD28発現がどのくらい良好に向上されるか、また、aAPCのいずれかが長期培養物中でPol特異的細胞を増殖させ得るかどうかについて評価する。IL−21およびIL−15のような他のサイトカインが、IL−12と協力して作用してHIV特異的T細胞増殖を誘導しうる。IL−21は、TおよびB細胞増殖ならびにナチュラルキラー(NK)細胞分化を誘導する多機能サイトカインである(Parrich−Novakら、2002、J.Leukoc.Biol.72:856−863)。IL−21は、活性化されたCD4 T細胞により独占的に産生され、そしてIL−2およびIL−15と相乗作用を与えてCD8 T細胞増殖を促進する。同様に、IL−15は重要なCD8 T細胞生存因子であり、そして、活性化されたマクロファージおよびDC(その添加もまたCD8 T細胞増殖を高めうる)により産生される(Waldmannら、2001、Immunity 14:105−110)。
【0256】
サイトカインがHIV特異的T細胞の長期増殖を可能にすることに失敗する場合は、CD28を発現するレンチウイルスでPol特異的T細胞を形質導入する。Parryら、2003、J.Immunol.171:166−174に概説されるとおり、T細胞の90%以上を単一の導入遺伝子ベクターで形質導入し得る(本明細書に開示されるところのIRES含有ベクターはより少なく効率的である)。従って、CD28の形質導入がPol特異的T細胞に長期増殖を復帰するかどうかを試験するため、Pol特異的T細胞を、これらの細胞をaAPCと混合する直前にCD28を発現するレンチウイルスベクターにスピン感染させる(O’Dohertyら、2000、J.Virol.74:10074−10080)。これらのaAPCにより誘導されるT細胞活性化はこのベクターの組込みを助長し、そして、導入遺伝子の発現は形質導入12時間後に観察され得る。これらの細胞、および回収されるPol特異的T細胞を、本明細書の別の場所に開示されるとおり培養する。これは、CD28共刺激がこれらの細胞の長期増殖に必要とされることの指標である。HIV特異的T細胞を増殖させるための必要な一段階としてレンチウイルス形質導入を使用する場合、それはこれらの結果の解釈の影響を遅らせうる。しかしながら、HIVに感染した個体からのT細胞のレンチウイルス形質導入が実現可能な治療オプションでありうることが最近示された。
【実施例9】
【0257】
広範な特異性をもつHIV特異的CD8 T細胞の増殖
Nefエピトープを認識した単一のCD8クローンの注入は、このエピトープを発現しなかったウイルスの選択につながり(Koenigら、1995、Nature Med.1:330−336)、HIVエスケープミュータントを予防するために複数の特異性をもつT細胞が必要とされることを示す。ある患者からの特定の1ウイルスの複数のエピトープを認識するT細胞を生成させる潜在的に強力な一方法は、細胞に基づくaAPC取り込みを有し、そして天然のAPCの抗原に類似の抗原を提示させることである。MHCを発現するK562に基づくaAPCに、患者の化学的に不活性化されたウイルスを負荷すること、および自己T細胞に混合することにより、患者特異的抗HIV T細胞を増殖させ得る。HIV特異的T細胞がHIV特異的抗原に遭遇するこの最適な状況を提供することにより、免疫優性および潜在(cryptic)双方の抗原を認識するT細胞を増殖させ得、従ってHIV感染を制御するためのより大きな潜在能力をもたらす。さらに、共有されるHLAクラスI対立遺伝子をもつ、感染していない健康な人からのT細胞を、レシピエントの化学的に不活性化したウイルスでex vivoでワクチン接種し得、増殖させ得、そしてHIV感染患者に注入し得る。これは、進行した疾患を伴いかつ制限されたT細胞レパートリーをもつ個体にとって強力な潜在的処置の一選択肢を表す。
【0258】
最近、Luら(2003、Nature Med.9:27−32)は、化学的に不活性化した形態のSIVを負荷したDCを注入したサルが有意により低いウイルスRNAおよびDNAレベルを有したことを示し、この免疫療法のアプローチを使用して開始されるT細胞応答がSIV感染を制御し得ることを示唆する。これらのデータは、適正にプライミングされたT細胞がSIV感染を制御し得かつヒトにおける細胞に基づくHIVワクチンの期待を強める(Bhardwajら、2003、Nature Med.9:13−14)ことを示唆する。不活性化したウイルスを使用して、本明細書の別の場所に記述される化学的に不活性化したSIV研究に同様に、MHCを発現するK562に基づくaAPCに負荷する。該複合体を使用して、HIV特異的T細胞をex vivoで増殖させて、患者特異的T細胞治療ワクチンを創製する。該複合体はまた、in vivoのアプローチを使用して患者にも投与し得る。
【0259】
CD107aおよび107bは、T細胞表面上で通常は見出されないリソソーム関連タンパク質である。TCRのトリガーに際して、CD8 T細胞の脱顆粒が迅速に発生し、そしてCD107および他のリソソームタンパク質が細胞膜に輸送されて、パーフォリンおよびグランザイムの放出を助長する。Bettsら(2003、J.Immunol.Methods 281:65−78)は、CD107発現が、刺激後4時間の最大発現を伴い、刺激後約30分に抗原特異的CD8 T細胞上で検出され得ることを示した。従って、抗原特異的エフェクターが所望のT細胞を死滅させずに同定され得、それによりどの抗原が細胞を活性化するかを同定する。HIV特異的T細胞を同定しかつ増殖させるための類似の研究が本明細書に開示されるとおり実施される。
【0260】
図4は、いずれかの特定の論理により拘束されることを願わずに、広範な特異性をもつHIV特異的CD8 T細胞を増殖させるための実験的アプローチを具体的に説明する。保存T細胞、および最近完了した養子移入臨床試験からの高力価の自己ウイルス単離物が利用可能であり(Levineら、2002、Nature Med.8:47−53)、そして本明細書に開示される方法で使用される。患者のウイルス単離物を、該ウイルスの融合能力を保存するために250μMのアルドリチオール−2(AT−2)を使用して不活性化する(Luら、2001、J.Virol.75:8949−8956)。HIVを不活性化するAT−2の能力は、PHA芽細胞をこの処理したウイルスに感染させること、およびp24産生を2週間にわたり測定することにより検証する。HIV融合を可能にするために、Pol特異的T細胞の増殖を最良に可能にした細胞に基づくaAPCを、既に利用可能である(Simmonsら、2003、Virology 305:115−123)CD4およびCCR5レンチウイルス発現ベクターで形質導入する。K562細胞はCXCR4を天然に発現する(Guptaら、1999、J.Leukoc.Biol.66:135−143)。これらのaAPCを、不活性化したウイルス(50ngのp24/百万の細胞に基づくaAPC)で37℃で2時間パルスする(Luら、2001、J.Virol.75:8949−8956)。患者からの5千万のCD8 T細胞を、抗原を負荷したaAPCと二重で混合する。一方の培養物で、高められたエフェクター機能を与えられた抗原特異的T細胞の代理物としてのCD107の可動化(mobilization)を使用することの利用性を評価する。刺激4時間後に細胞をCD8およびCD107について染色し、BLS 3ソーターを使用してCD8CD107細胞を選別し、そして「感染した」aAPCを使用して分離して増殖させる。他の組の細胞において、ポリクローナル集団からHIV特異的T細胞を選択的に増殖させるこれらのaAPCの能力を試験する。化学的に不活性化したHIVに感染させたaAPCを使用して、HIVに感染した個体からの大量のCD8 T細胞を10日ごとに刺激する。対照として、K562抗原を認識する細胞のみを増殖させるはずである、ウイルスでパルスしていないaAPC細胞、および全部の細胞を増殖させるαCD3被覆したaAPCの双方を使用する。2週間の増殖後に培養物をモニターし、そして細胞を評価して、患者自身のウイルスを参照株のHIVより良好に認識するHIV特異的T細胞が濃縮されているかどうかを決定する。PHAが使用されて刺激し、そして高力価の患者ウイルス(およそ5×10(欠落)TCID50/ml)、または類似性高力価Bal(R5患者について)若しくはNL4−3(X4患者について)いずれかのウイルスで、患者のCD8 T細胞を枯渇させたPBMCを3日間重複感染させる。ex vivoで増殖させた自己CD4 T細胞を受領した患者の大部分は検出不可能なウイルス負荷量を有し(Levineら、2002、Nature Med.8:47−53)、そして従って、わずか3日後に、複製するウイルスの大多数が重複感染したウイルスを表すことができる。感染したCD8を枯渇させた患者から得たおよそ400,000のPBMCを、患者自身のウイルスに感染させたaAPCから増殖させた100,000のCD8 T細胞と混合する。24時間後に、INF−λおよびパーフォリンを発現するCD8 T細胞の割合を細胞内フローサイトメトリーにより測定する。患者自身のウイルスと重複感染させたPBMCと混合した場合に、Bal若しくはNL4−3参照株と重複感染させたものに比較してIFN−λおよびパーフォリンを発現するより多くのCD8 T細胞が観察される場合、該患者ウイルスのaAPC提示はおそらく、該患者のウイルスエピトープを選択的に認識するT細胞の増殖を可能にした。このアプローチは、彼若しくは彼女自身のウイルスに対する患者のHIV応答の幅を増大させる甚だしい潜在能力を有し、そして、潜在的に、天然のHIV感染の間に十分に提示されない潜在エピトープに対する応答を導き出し得る(Sewellら、1999、J.Immunol.162:7075−7079)。さらに、これらの実験は、CD107染色がHIV特異的T細胞を同定しかつ増殖させるためのより確実な方法を提供するかどうかの決定を提供する。
【0261】
高親和性CTLがより低い抗原レベルを発現するAPCから生成されたことが以前に示された(Alexander−Millerら、1996、Proc Natl.Acad.Sci U.S.A.93:4102−4017;Ohら、2003、J.Immunol.170:2523−2530)。より低レベルのMHCクラスIを発現するaAPCが、それらの標的を死滅させるより高い能力を有する高親和性T細胞の生成においてより効果的であるかどうかを評価する。本明細書の開示に基づき、KA2細胞を負荷するのに使用したウイルスの量を滴定するか、若しくは、より少量のHLA−A2を発現するaAPCを使用して、養子移入免疫療法に有用である高親和性T細胞応答が生成されることを確認する(Alexander−Millerら、1996、Proc Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:4102−4017)。
【0262】
化学的に不活性化したウイルスを負荷したaAPCが患者特異的T細胞を増殖させるための効果的な方法でない場合は、HIV特異的T細胞のこの生成方法を、Larssonら(2002、AIDS 16:1319−1329)により記述される交差プライミング法と比較する。この方法を機能させるため、K562に基づくaAPCは死につつある若しくは死んだT細胞から抗原を取り込む能力を有する。T細胞をGFP若しくはfluマトリックス−GFP融合LV構築物のいずれかで形質導入する。これらの細胞を、Schliengerら(2003、Clin.Cancer Res.9:1517−1527)に記述されるところのUVB放射にかけ、そして最適なHLA−A2を発現するaAPCと混合する。aAPCが死んだインフルエンザに感染したT細胞を適正に有する場合は、fluマトリックス−GFP融合タンパク質を発現するアポトーシス性T細胞とともにインキュベートしたKA2細胞は、本明細書の別の場所に記述されるところのflu特異的細胞を増殖させ得るが、しかしGFPだけを発現するT細胞とともにインキュベートしたものはしない。KA2が死んだ細胞からの抗原をプロセシングかつ提示する場合は、患者のT細胞は彼/彼女のウイルスに重複感染させ得る。これらの細胞をUVB放射にかけ、そしてaAPCとともにインキュベートする。アポトーシス性のHIVに感染した細胞を負荷したaAPCの、HIV特異的T細胞の増殖を促進する能力を、その後、本明細書の別の場所に記述されるとおり評価する。
【0263】
あるいは、複数の特異性をもつHIV特異的T細胞を、HIV特異的四量体の一団を使用して増殖させる。このアプローチにおいて、同一の蛍光色素で標識した多数のHIV特異的四量体を、HIVに感染したドナーからのT細胞と混合し、そしてこれらの種々雑多の四量体を結合するT細胞を単一集団に選別する。抗原特異的T細胞のこの集団を、本明細書の別の場所に記述されるところの最適なaAPCを使用して増殖させ、そしてこの様式で増殖させたT細胞の、参照株に対し自己ウイルスを認識しかつそれに応答する能力を、本明細書の別の場所に記述されるとおり評価する。現在、gag、polおよびnef中の保存されたエピトープを認識する定義されたHLA−A2四量体が存在し、そして、HIV特異的ペプチドを提示する新たな四量体を創製し得る。このアプローチは制限された数の抗原特異的T細胞を増殖させる一方、それはウイルスのエスケープを予防するのに十分であるはずである。さらに、本明細書に開示される方法はフェーズI臨床試験に迅速に移され得る。
【実施例10】
【0264】
CD32若しくはCD64を含んでなるK562細胞の製造および評価
K562細胞を、(i)抗CD3および抗CD28抗体の外因性の負荷を可能にするためのヒトFcγ受容体CD32、ならびに、細胞の別個の集団を、抗CD3、抗CD28および他の受容体の高親和性負荷を可能にするヒトFcγ受容体CD64で形質導入した、ならびに(ii)ヒト4−1BBリガンドで安定にコトランスフェクトした。CD137としてもまた知られる4−1BBは、CD8 T細胞の生存を促進するTNF受容体ファミリーの1メンバーである(Hurtadoら、1997、J.Immunol.158:2600−2609;Takahashiら、1999、J.Immunol.162:5037−5040;Tranら、1995、J.Immunol.155:1000−1009)。4−1BB刺激は、優先的に、CD8 T細胞をin vitroで活性化し、CTL応答をin vivoで増幅し、そして活性化されたCTLの生存を向上させる(Shufordら、1997、J.Exp.Med.186:47−55)。4−1BBはCD8 T細胞の長期のex vivo増殖を促進し得る候補分子である。CD3/28ビーズ、若しくは抗CD3およびCD28 Abで被覆したK32/4−1BBL aAPC(K32/4−1BBL CD3/28)いずれかで刺激したCD8 T細胞の初期増殖速度は同等であった。しかしながら、再刺激に際して、K32/4−1BBL CD3/28 aAPCで活性化したCD8 T細胞のみが増殖し続けた。増殖するこの能力は、細胞生存遺伝子Bcl−xLおよびサイトカインIL−2のアップレギュレーションと相関した。誘導されているこれらの遺伝子の非存在下で、培養物の大きな割合がアネキシンV陽性(アポトーシスの初期の兆候)になった(Mausら、2002、Nature Biotechnol.20:143−148)。細胞に基づくaAPCとT細胞の間の「クロストーク」が観察された(Thomasら、2002、Clin.Immunol.105:259−272)。
【0265】
CD64でのK562細胞の形質導入は後に続くとおり達成した。すなわち、K562細胞を、本明細書に記述される方法に従って、CD64(配列番号2)を発現するレンチウイルスベクターで形質導入した。高発現体を選別し、そして単一クローンをCD64発現についてスクリーニングした。1クローンを選択したをさらなる特徴付けであった(図14)。
【0266】
CD64を発現するK562細胞(K64細胞)の結合能力を、後に続くとおり評価した。百万のK64細胞に、0.5〜50μlのIgG2a−FITC標識した抗体を4℃で1時間負荷し、その後1回洗浄しかつ固定した。既知の抗体濃度(50μg/ml)、既知のFITC/タンパク質比(3.5)およびImmuno−Brite(Beckman Coulter)ビーズを使用して、K64細胞に結合した抗体の量は、各細胞に結合した約2000と6000抗体の間になることが計算された(図15)。
【0267】
抗体を負荷しかつT細胞を刺激するK64細胞の能力を評価するために、K64およびK32細胞を100Gyで照射し、そして、タンパク質を含まないPFHM II培地(Gibco/Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中10細胞あたり1μg/mlの抗CD3/抗CD28混合物を負荷しかつ4℃で1時間回転した。細胞をその後、同一のタンパク質を含まない培地で3回洗浄し、同一培地に再懸濁し、そしてCD4 T細胞に2:1の比で添加した。T細胞を、1ミリリットルあたり10細胞の濃度でRPMI+10%HSABに再懸濁した。対照としてK64およびK32細胞もまた、慣習的方法(洗浄を伴わず室温で10分)を使用して負荷し、そしてその後CD4 T細胞と混合した。
【0268】
図16に具体的に説明されるとおり、K64細胞をK32細胞と比較する場合、抗CD3/CD28抗体を負荷しかつ過剰の未結合の個体を除去するため3回洗浄したK64細胞は、T細胞を効率的に刺激することがなお可能である。とりわけ、図16に描かれるとおり、休止CD4 T細胞は約140flの平均細胞体積を有する。細胞のこの集団の消失はCD4 T細胞が活性化されたことを示す。従って、本発明のaAPC細胞は、本明細書の別の場所に記述されるとおりin vivoの応用で使用し得る。それらは、モノクローナル抗体を本発明のin vivoの応用で使用する場合に、HAMA(ヒト抗マウス抗体)応答をもたらし得る過剰の抗体の存在を伴わずにT細胞の刺激および増殖を開始させることが可能であるからである。
【0269】
さらに、図17に示されるとおり、はるかにより少ない抗体がK64細胞に最適に負荷するために必要とされるが、しかし、哺乳動物に投与される場合にHAMA反応を予防するためにK64細胞を洗浄することは、T細胞を刺激するaAPCの能力に対してあるとしても最小限の影響を有する。K64細胞を100Gyで照射し、そして、タンパク質を含まないPFHM II培地(Gibco/Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)中二重で10細胞あたり1、1/4、1/16、1/64若しくは1/25mg/mlいずれかの抗CD3/抗CD28混合物を負荷し、そして4℃で1時間回転した。一組の細胞をPFHM IIで3回洗浄し、そして同一培地に再懸濁した。他の組の細胞は洗浄しなかった。双方の組のK64細胞を、CFSE標識したCD4 およびCD8 T細胞に比2:1で添加した。T細胞を、上述されたとおりRPMI+10%HSABに再懸濁した(10/ml)。対照として、K64およびK32細胞もまた慣習的方法(洗浄を伴わず室温で10分)を使用して負荷し、そしてその後CD4 T細胞と混合した。CFSE希釈をフローサイトメトリーにより測定した。
【0270】
図17に具体的に説明されるとおり、過剰の抗体を除去するための3回の洗浄は、CD4およびCD8細胞双方を刺激するためのCD64を含んでなるaAPCの効果をほとんど有しない。
【実施例11】
【0271】
Tregの増殖および機能の特徴付け
天然に存在するCD25+CD4+サプレッサー細胞(Treg)細胞は、自己の構成要素(すなわち免疫学的自己寛容)に対する免疫学的非応答性、および非自己抗原に対する多様な免疫応答の負の制御の確立および維持において能動的部分を演じている。Tregを定義するための少数の信頼できるマーカーが存在するが、しかし、蓄積する証拠が、天然に存在するCD25+CD4+ Tregが、免疫学的自己寛容の維持、および病理学的ならびに生理学的免疫応答の負の制御において決定的に重要な役割を演じていることを示すため、この集団が最も広範に研究されている。表現型上別個の集団としての免疫系におけるそれらの天然の存在は、それらを、免疫学的疾患を処置若しくは予防しかつ病理学的ならびに生理学的免疫応答を制御するための方法を設計するための良好な標的にする。しかしながら、細胞のこの集団を増殖させかつ操作するための方法はあるとしてもほとんど存在しない。
【0272】
刺激および増殖を誘導しかつaAPCと接触させたTreg細胞の機能を検討するために、以下の実験を実施した。
【0273】
末梢血リンパ球を抗CD4および抗CD25抗体で標識し、そしてCD25+を発現する最上の1%の細胞を細胞選別により単離した。これらの細胞を、抗CD3およびCD28抗体で被覆したビーズ、若しくは抗CD3およびCD28抗体を負荷したK32細胞いずれかで刺激した。3000U/mlのIL−2の存在下でT細胞を培養すること、およびT細胞濃度を1ミリリットルあたり8十万と2百万細胞の間に維持することにより細胞増殖を測定した。細胞を2ないし3日ごとにコールターカウンターIIEでカウントした。図18に具体的に説明されるとおり、Treg集団のaAPC刺激は、ビーズ刺激に比較した場合に細胞の数のより大きな増大をもたらした。加えて、より多数のTreg細胞が、ビーズのような慣習的手段を用いるよりも迅速に産生される。
【0274】
aAPCにより刺激したTreg細胞の機能性を評価するため、CD4およびCD25陽性ならびにCD4 CD25陰性の細胞を、抗CD3およびCD28 Abを負荷したK32細胞ならびに3000U/mlのIL−2を使用して17日間増殖させた。これらの細胞を、同一ドナーからの休止期のCFSE染色した細胞と1:4の比(4個の休止細胞ごとについて1個の増殖させた細胞)で混合した。この混合物を同種樹状細胞上に置き、そしてCFSE希釈をフローサイトメトリーにより測定した。図19に具体的に説明されるとおり、aAPCで増殖させたTreg細胞は、同種の混合リンパ球反応および増殖されたCD4陽性CD25陽性の抑制されたT細胞増殖を抑制する一方、CD25陰性集団はしなかった。
【0275】
類似の実験を、OX40Lを発現するCD32を発現するaAPC(K32細胞)を使用して実施した。図20に具体的に説明されるとおり、CD4+CD25+ Treg細胞はaAPCでのこうした処理後に非抑制性にされる。
【0276】
本明細書に引用されるそれぞれのおよびすべての特許、特許出願および刊行物の開示は、ここにそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0277】
本発明は特定の態様に関して開示された一方、本発明の他の態様および変形物が、本発明の真の技術思想および範囲から離れることなく当業者により考案されうることが明らかである。付属の請求の範囲は、全部のこうした態様および同等な変形物を包含すると解釈されることを意図している。
【0278】
本発明を具体的に説明する目的上、本発明のある態様が図面に描かれる。しかしながら、本発明は、該図面に描かれる態様の正確な配置および手段に制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】親K562ヒト赤白血病細胞株を使用する人工抗原提示細胞(aAPC)に基づくT細胞培養系の構築のモデルを具体的に説明する図である。図1はCD8+ T細胞と相互作用する、工作されたK32/4−1BBL aAPCを描く。
【図2】図2Aから2Cを含んでなり、K32/4−1BBL/CD3/28 aAPCを使用する四量体選別したインフルエンザウイルス(flu)特異的セントラルメモリーT細胞の増殖を描く。図2Aは、インフルエンザウイルスに曝露されていたHLA−A2ドナーからのCD8 T細胞の選別を示す一連の画像を描く。図2Bは、これらの細胞が培養物中で70日間維持されることが可能であったことを示すグラフである。細胞が廃棄されなかった場合に蓄積していたとみられる細胞の総数を、培養日数に対する総細胞数の半対数プロットとして描く。図2Cは、fluペプチドを負荷したか、若しくはそれらを指定されるエフェクター対標的比でパルスされないまま残すかのいずれかの、TAP欠損HLA−A2陽性T2細胞を使用するクロム放出アッセイを示す。
【図3】図3Aから3Eを含んでなり、flu特異的T細胞を増殖させるのに使用し得るaAPCの創製を具体的に説明する。図3は、aAPCによるマーカーCD32(図3A)、KA2(図3B)、4−1BBL(図3D)およびFluGFP(緑色蛍光タンパク質、図3E)のそれぞれについてのFACS分析を示し、かつ、アイソタイプ対照もまた描く、一連の5つの画像を描く。
【図4】広範な特異性をもつHIV特異的CD8 T細胞の増殖方法を示す実験モデルを具体的に説明する図である。
【図5】K562に基づくaAPC(例えばK32/CD3/28、K32/86/CD3)がCD4 T細胞の長期増殖を媒介し、そしてU937に基づくaAPC(U32/CD3/28)若しくはビーズに基づくaAPC(CD3/28被覆ビーズ)よりも効果的にそうすることを示すグラフである。
【図6】図6Aから6Dを含んでなり、K562に基づくaAPC上での、しかしU937に基づくaAPCでないサイトカインおよび共刺激遺伝子の発現の誘導を示すグラフである。図6Aは、K32/CD3/28、K32/CD3、K32、U32/CD3/28、U32/CD3、U32、および休止CD4 T細胞によるインターロイキン15(IL−15)の誘導のその該レベルを描くグラフである。図6Bは、K32/CD3/28 aAPCが実質的により高レベルのPD−L1を発現することを示す、細胞中でのPD−L1誘導を描く。図6Cは、上述されたところの多様なaAPCによるPD−L2の誘導を描くグラフである。図6Dは、多様なaAPCによるB7−H3の誘導を描くグラフである。
【図7】3%ヒトAb血清((欠落)、Biomedical、バージニア州ウィンチェスター)を補充した(欠落)、カリフォルニア州カールズバッド)中で培養した、レンチウイルス(LV)で形質導入したaAPCの増殖速度を描くグラフである。多様なK562に基づくaAPCは、以下のLVベクター構築物、すなわちKT32(1遺伝子;濃四角);KT32/4−1BBL/CD86(3遺伝子;淡三角);KT32/4−1BBL/CD86/A2/Flu−GFP(5遺伝子;「X」)を使用して親K562(k562cc;濃菱形)を形質導入することにより製造した。細胞が廃棄されていなかった場合に蓄積していたとみられる細胞の総数を、培養日数に対する全細胞数の半対数プロットとして描く。
【図8】図8Aから8Eを含んでなり、単一K562 aAPC中の最低8遺伝子(8−THREAT)の安定な共発現を描くグラフである。以下の遺伝子、すなわちFlu−GFP(図8A);CD80(図8B);CD86(図8C);4−1BBL(図8D);およびHLA ABC(図8E)をK562細胞に形質導入し、そしてフローサイトメトリーを使用して検出されたとおり、安定に発現された。
【図9】LVで形質導入したaAPCを使用するポリクローナルCD8 T細胞の長期増殖を示すグラフである。
【図10】図10A−10Eを含んでなり、K32/4−1BBL aAPCがhTERT特異的細胞傷害性リンパ球(CTL)を増殖させたことを示す一連のグラフである。図10Aから10Cは、K32/4−1BBL aAPCによる増殖の間のtet+ CD8 CTLの増大する割合を描くグラフである。各図10A−10Cに対応するMoFlo選別のタイミングを、集団倍加を示すグラフ上で示す(図10D)。図10Dは、aAPCによるhTERT特異的CTLの増殖を描くグラフであり、ここでCTLはhTERTでワクチン接種した乳癌患者から得た。図10Eは、aAPCを使用して増殖させたhTERT特異的CTLが、HLA−A2およびテロメラーゼ+を発現する癌細胞(OV−7)を特異的に溶解するが、しかしテロメラーゼ+であるがしかしHLA−A2−である癌細胞(SK−OV−3)はしなかったことを示すグラフである。
【図11】図11Aから図11Dを含んでなり、プラスミドを使用するaAPCのトランスフェクションを、LVを使用してそれ以外は同一のaAPCに形質導入した分子の発現と比較するデータを描く。図11Aは、本明細書の別の場所に開示されるところの特定の改変を描く、本明細書で使用される例示的一LVを描く図である。図11Bおよび11Cは、GFP(単シストロン性)若しくはmCD8 IRES GFP(二シストロン性)を発現するウイルスの単回接種のK562細胞の形質導入効率を描く。mCD8およびGFPの表面発現を形質導入5日後に測定した。
【図12】図12Aから12Fを含んでなり、8,000の抗原特異的T細胞が1か月培養後に2×106細胞を生じることが観察された代表的一実験を描く。簡潔には、HLA A*0201ドナーから得た精製したT細胞を、抗CD8 mAb、およびインフルエンザマトリックスタンパク質のA*0201拘束性エピトープに複合体形成させたA*0201 MHC四量体(flu−MP四量体)で染色した。四量体陽性の集団(約8000細胞)を選別し、そして抗CD28抗体を負荷した照射したKTA2/CD32/4−1BBL/FLU GFP aAPCで刺激した。該細胞を、KTA2/CD32/4−1BBL/FLU GFP aAPCで(図12A−D)およそ10〜12日ごとに再刺激した。インターロイキン2(IL−2)をそれぞれの細胞供給時(2〜3日ごと)に培養物に添加した。図12Eおよび12F増殖前および26日後のflu四量体反応性細胞の純度を示すグラフ。すなわち、四量体陽性集団の約250倍の増殖がこれらの培養条件下で観察された。
【図13】CD32 IRES IL−7で形質導入したK562 aAPC(KT32−IL7)およびCD32 IRES IL−15で形質導入したK562(KT32−IL15)を使用してのサイトカイン発現のレベルを描く棒グラフであり、ここで、細胞を高CD32発現について選別した。
【図14】CD64を発現するレンチウイルスベクターで形質導入したK562細胞の表面上のCD64の安定な発現を示すプロットである。
【図15】CD64を発現するレンチウイルスベクターで形質導入したK562細胞(K64細胞)の増大した抗体結合能力を具体的に説明するグラフである。
【図16】抗体を負荷しかつ複数回洗浄したK64細胞が、CD32を発現するK562細胞(K32細胞)と比較した場合にT細胞の刺激において優れているが、とは言えK64細胞およびK32細胞双方がT細胞を刺激することが可能であることを具体的に説明する一連のグラフである。
【図17】図17Aから17Dを含んでなり、K32細胞に比較した場合にはるかにより少ない抗体がK64細胞に最適に負荷するのに必要とされることを具体的に説明する一連の画像である。図17Aおよび17BはCD4細胞を描き、図17Cおよび17DはCD8細胞を描く。
【図18】抗CD3および抗CD28被覆ビーズで刺激したTreg細胞に比較しての、抗CD3および抗CD28抗体を負荷したK32細胞で刺激したTreg細胞の増大した増殖を具体的に説明するグラフである。
【図19】同種混合リンパ球反応(MLR)を抑制するTreg細胞の能力を描くグラフである。
【図20】OX40Lを発現するK32細胞を使用して刺激したCD4 CD25 Treg細胞がTreg細胞を非抑制性にすることを示すグラフである。
【図21】図21Aから21Cを含んでなり、抗CD3抗体を負荷しかつIL−15、4−1BBおよびCD80を発現するK32を使用する抗原特異的CD8細胞の増殖を具体的に説明する一連の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された人工抗原提示細胞(aAPC)であって、レンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、かつ、前記LVは最低1種の免疫刺激リガンドおよび最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、かつ、さらに、前記aAPCは前記刺激リガンドおよび前記共刺激リガンドを発現しそして前記aAPCと接触されたT細胞を刺激かつ増殖させ得る、上記細胞。
【請求項2】
前記刺激リガンドが、抗原を負荷された主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCクラスI)分子、抗CD3抗体、抗CD28抗体および抗CD2抗体よりなる群から選択されるポリペプチドである、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項3】
前記共刺激リガンドが、CD7、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、PD−L1、PD−L2、4−1BBL、OX40L、ICOS−L、ICAM、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA−G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、ILT3、ILT4、3/TR6、およびB7−H3と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される最低1種の共刺激リガンドである、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項4】
前記共刺激リガンドが、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、LFA−1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、BTLA、Tollリガンド受容体、およびCD83と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される共刺激分子の最低1種と特異的に結合する、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項5】
前記共刺激リガンドが、CD27、CD28、4−1BB、OX40、CD30、CD40、PD−1、ICOS、LFA−1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7−H3、Tollリガンド受容体、およびCD83と特異的に結合するリガンドよりなる群から選択される最低1種の分子と特異的に結合する抗体である、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項6】
前記aAPCが、CD32分子およびCD64分子よりなる群から選択されるFcγ受容体をさらに含んでなる、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項7】
前記LVが、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、ペプチド−MHC四量体、ペプチド−MHC三量体、ペプチド−MHC二量体、およびペプチド−MHC単量体よりなる群から選択される最低1種の抗原をコードする核酸を含んでなる、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項8】
前記腫瘍抗原が、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MART−1、GP100、CEA、HER−2/Neu、PSA、WT−1、MUC−1、MUC−2、MUC−3、MUC−4およびテロメラーゼよりなる群から選択される、請求項7に記載の単離されたaAPC。
【請求項9】
前記LVが、サイトカインおよびケモカインから選択される最低1種のペプチドをコードする核酸を含んでなる、請求項1に記載の単離されたaAPC。
【請求項10】
前記サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−6、IL−7、IL−10、IL−12、IL−15、IL−21、インターフェロン−α(IFNα)、インターフェロン−β(IFNβ)、インターフェロン−γ(IFNγ)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、腫瘍壊死因子−β(TNFβ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)よりなる群から選択される最低1種のサイトカインである、請求項9に記載の単離されたaAPC。
【請求項11】
既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法であって、前記T細胞を請求項1に記載のaAPCと接触させることを含んでなり、かつ、さらに、前記共刺激リガンドが前記既知の共刺激分子と特異的に結合してそれにより前記T細胞の増殖を特異的に誘導する、上記方法。
【請求項12】
既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖の特異的誘導方法であって、前記既知の共刺激分子を発現する最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を請求項1に記載のaAPCと接触させることを含んでなり、かつ、前記aAPCは前記既知の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを発現し、前記既知の共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記T細胞の増殖を誘導する、上記方法。
【請求項13】
T細胞集団の、サブセットの特異的増殖方法であって、前記サブセットの最低1種のT細胞を含んでなるT細胞の集団を請求項1に記載のaAPCと接触させることを含んでなり、かつ、前記aAPCは、前記サブセットの前記T細胞上の共刺激分子と特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドを含んでなり、前記共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記サブセットの前記T細胞の増殖を誘導して、それによりT細胞集団の1サブセットを特異的に増殖させる、上記方法。
【請求項14】
T細胞サブセットの活性化を特異的に誘導する共刺激リガンド若しくはその組合せの同定方法であって、請求項1に記載のaAPCとT細胞の集団を接触させること、および、前記T細胞集団の増殖のレベルを、前記aAPCと接触されないT細胞のそれ以外は同一の集団の増殖のレベルと比較することを含んでなり、かつ、前記aAPCと接触されないT細胞の前記それ以外は同一の集団の増殖のレベルと比較した、前記aAPCと接触させた前記T細胞の増殖のより高いレベルが、前記共刺激リガンドが前記T細胞の活性化を特異的に誘導することの指標である、上記方法。
【請求項15】
哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法であって、請求項1に記載のaAPCを前記哺乳動物に投与することを含んでなり、かつ、前記aAPCが前記抗原を負荷されたMHCクラスI分子をさらに含んでなり、前記aAPCが、前記抗原に特異的なT細胞の増殖を誘導して、それにより前記哺乳動物における前記抗原に対するT細胞応答を誘導する、上記方法。
【請求項16】
それの必要な哺乳動物における抗原に対するT細胞応答の誘導方法であって、前記哺乳動物から細胞の集団を得ること(前記集団はT細胞を含んでなる)、細胞の前記集団を請求項1に記載のaAPCと接触させること(前記aAPCは前記抗原を負荷されたMHCクラスI複合体をさらに含んでなり、かつ、それにより、前記細胞を前記aAPCと接触させることが前記抗原に特異的な抗原特異的T細胞の増殖を誘導する)、前記抗原特異的T細胞を細胞の前記集団から単離すること、および前記抗原特異的T細胞を前記哺乳動物に投与して、それにより前記哺乳動物において前記抗原に対するT細胞応答を誘導することを含んでなる、上記方法。
【請求項17】
制御性T(Treg)細胞の集団の特異的増殖方法であって、前記集団を請求項1に記載のaAPCと接触させることを含んでなり、かつ、前記aAPCは抗CD3抗体および抗CD28抗体を負荷されたFcγ受容体をさらに含んでなり、該方法は、細胞の前記集団をサイトカインと接触させることをさらに含んでなり、前記抗CD3抗体および前記抗CD28抗体の前記Treg細胞との結合が前記Treg細胞の増殖を誘導して、それによりTreg細胞の集団を特異的に増殖させる、上記方法。
【請求項18】
前記サイトカインがインターロイキン−2である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
既知の共刺激分子を発現するT細胞の増殖を特異的に誘導するためのキットであって、有効量のaAPCを含んでなり、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、かつ、前記LVは前記既知の共刺激分子を特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記既知の共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記T細胞を刺激しかつ増殖させ、前記キットが、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる、上記キット。
【請求項20】
既知の刺激分子を発現するT細胞の増殖を特異的に誘導するためのキットであって、有効量のaAPCを含んでなり、かつ、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは前記既知の刺激分子を特異的に結合する最低1種の刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記既知の刺激分子の前記刺激リガンドとの結合が前記T細胞を刺激しかつ増殖させ、前記キットが、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる、上記キット。
【請求項21】
T細胞集団のサブセットを特異的に増殖させるためのキットであって、有効量のaAPCを含んでなり、かつ、前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは前記T細胞集団上の共刺激分子を特異的に結合する最低1種の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記共刺激分子の前記共刺激リガンドとの結合が前記T細胞集団を刺激しかつ増殖させ、前記キットが、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる、上記キット。
【請求項22】
T細胞サブセットの活性化を特異的に誘導する、共刺激リガンド若しくは前記リガンドの組合せ物を同定するためのキットであって、複数のaAPCを含んでなり、かつ、各前記aAPCはレンチウイルスベクター(LV)を使用して形質導入されたK562細胞を含んでなり、前記LVは共刺激分子と特異的に結合する最低1種の既知の共刺激リガンドをコードする核酸を含んでなり、前記キットが、アプリケーター、および前記キットの使用のための説明資料をさらに含んでなる、上記キット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6D】
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【図7】
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【図8A−8E】
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【図9】
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【図10A−10E】
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【図11A−11D】
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【図12A−12D】
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【図12E−12F】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A−17D】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A−21C】
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【公表番号】特表2008−500052(P2008−500052A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515334(P2007−515334)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/018533
【国際公開番号】WO2005/118788
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502409813)ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア (37)
【Fターム(参考)】