説明

新規化合物、該化合物を用いた光学フィルター及び光学記録材料

【課題】吸収波長特性及び耐光性に優れ、特に、画像表示装置用の光学フィルター及びレーザ光による光学記録材料に用いられる光学要素に適した化合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物。


(式中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は複素環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R1とR2とは連結して環を形成していてもよく、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、Anq-はq価のアニオンを表し、qは、1又は2であり、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアリールエチレンより誘導される新規な化合物、該化合物を用いた光学フィルター及び光学記録材料に関する。該化合物は、光学要素等、特に、画像表示装置用の光学フィルターに含有させる光吸収剤、及びレーザ光により記録、再生される光学記録媒体の光学記録層に用いられる光学記録材料に含有させる光学記録剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
450nm〜1100nmの範囲に強度の大きい吸収を有する化合物、特に極大吸収(λmax)が480〜620nmにある化合物は、DVD±R等の光学記録媒体の光学記録層や、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用の光学フィルターにおいて、光学要素として用いられている。
【0003】
例えば、画像表示装置における光学要素の用途としては、カラーフィルターの光吸収剤がある。画像表示装置は、赤、青、緑の三原色の光の組合せでカラー画像を表示しているが、カラー画像を表示する光には、緑と赤の間の550〜600nm等の表示品質の低下をきたす光が含まれており、また、750〜1100nmの赤外リモコンの誤作動の原因となる光も含まれている。そこで、これらの不要な波長の光を選択的に吸収する光吸収性化合物(光吸収剤)を含有する光学フィルターが使用されている。
【0004】
更に、光学フィルターには、蛍光灯等の外光の反射や映り込みを防止する機能も求められている。反射や映り込みを防止するには、光学フィルターには、上記の不要な波長の光を選択的に吸収する機能に加え、480〜500nmの波長光を吸収することが必要である。この領域の光は画像表示に必要な輝線に近い。従って、画像品質に影響を及ぼさないためには、光吸収剤の光吸収が特別に急峻であること、即ちλmaxの半値幅が小さいことが求められる。
また、光吸収剤には、光や熱等により機能が失われないことも求められる。
【0005】
光吸収剤を含有する光学フィルターとして、例えば、下記特許文献1には、440〜510nmに極大吸収波長を有するジピロメテン金属キレート化合物を使用した光学フィルターが開示されており、下記特許文献2には、440〜510nmに極大吸収波長を有するポルフィリン化合物を使用した光学フィルターが開示されている。しかし、これらの光学フィルターに使用される化合物は、吸収波長特性、あるいは溶媒やバインダー樹脂との親和性の点で満足のいく性能が得られていない。従って、これらの光学フィルターは、480〜500nmにおいて充分な性能を示すものではなかった。
【0006】
また、上記の光学記録媒体においては、記録及び再生に用いる半導体レーザの波長は、CD−Rは750〜830nmであり、DVD±Rは620nm〜690nmであるが、更なる容量の増加を実現すべく、短波長レーザを使用する光ディスクが検討されており、例えば、記録光として380〜420nmの光を用いるものが検討されている。
【0007】
短波長記録用の光学記録媒体において、光学記録層の形成には、各種化合物が使用されている。例えば、特許文献3にはシアニン系色素が報告されており、特許文献4にはトリアゾール化合物の金属錯体が報告されており、特許文献5にはポルフィリン化合物が報告されている。しかし、これらの化合物は、光学記録層の形成に用いられる光学記録材料としては、その吸収波長特性及び耐光性が必ずしも適合するものではなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−57436号公報
【特許文献2】特開2004−45887号公報
【特許文献3】特開2001−301333号公報
【特許文献4】特開2004−174838号公報
【特許文献5】特開2005−59601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、吸収波長特性及び耐光性に優れ、特に、画像表示装置用の光学フィルター及びレーザ光による光学記録材料に用いられる光学要素に適した化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、検討を重ねた結果、ビアリールエチレンより誘導される特定の構造を有する化合物が、吸収波長特性及び耐光性に優れることを知見し、これを使用することにより、上記課題を解決しうることを知見した。
【0011】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(I)で表される化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0012】
【化1】

(式中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は複素環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R1とR2とは連結して環を形成していてもよく、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、Anq-はq価のアニオンを表し、qは、1又は2であり、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【0013】
また、本発明は、下記一般式(II)で表される化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0014】
【化2】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【0015】
また、本発明は、下記一般式(III)で表される化合物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0016】
【化3】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基又は下記一般式(IV)で表される置換基を表し、s及びtは、それぞれ独立に、1〜5の数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【0017】
【化4】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されていてもよく、Zは、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0018】
また、本発明は、上記化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学フィルターを提供することで、上記目的を達成したものである。
【0019】
また、本発明は、上記化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学記録材料を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0020】
また、本発明は、基体上に、上記光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、光学要素として適する吸収波長特性及び耐光性に優れた新規な化合物を提供することができる。また、該化合物を用いた光学フィルターは、画像表示用光学フィルターとして好適なものであり、該化合物を含有してなる光学記録材料は、光学記録媒体の光学記録層の形成に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の化合物、並びに該化合物を含有してなる光学フィルター及び光学記録材料について、好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0023】
まず、上記一般式(I)で表される本発明の化合物について説明する。
上記一般式(I)における環A及び環Bで表される置換基を有していてもよい複素環としては、特に制限されず、テトラヒドロピラン環、ピラン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドレニン環、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、オキサゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環等を用いることができ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
【0024】
上記一般式(I)におけるR1及びR2で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)におけるR1とR2とが連結して形成する環構造としては、ピペリジン環、ピペラジン環、ピロリジン環、モルフォリン環、チオモルフォリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン環、イソオキサゾリジン環、イソチアゾリジン環等が挙げられ、これらの環は他の環と縮合されていたり、置換されていたりしてもよい。
【0026】
環A及び環Bで表されるベンゼン環、ナフタレン環及び複素環並びにR1及びR2で表される炭素原子数1〜8のアルキル基は、いずれも、置換基を有していてもよい。該置換基としては、以下のものが挙げられる。尚、R1及びR2が、上記の炭素原子数1〜8のアルキル基等の炭素原子を含有する基であり、且つ、それらの基が、以下の置換基の中でも、炭素原子を含有する置換基を有する場合は、該置換基を含めたR1及びR2全体の炭素原子数が、規定された範囲を満たすものとする。
【0027】
上記置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、シクロペンチル、ヘキシル、2−ヘキシル、3−ヘキシル、シクロヘキシル、ビシクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、2−ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル等のアルキル基;メチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、第三アミルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、イソヘプチルオキシ、第三ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ、イソオクチルオキシ、第三オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等のアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、イソブチルチオ、アミルチオ、イソアミルチオ、第三アミルチオ、ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、ヘプチルチオ、イソヘプチルチオ、第三ヘプチルチオ、n−オクチルチオ、イソオクチルチオ、第三オクチルチオ、2−エチルヘキシルチオ等のアルキルチオ基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、2−プロペニル、1−メチル−3−プロペニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、イソブテニル、3−ペンテニル、4−ヘキセニル、シクロヘキセニル、ビシクロヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、エイコセニル、トリコセニル等のアルケニル基;ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基;フェニル、ナフチル等のアリール基;フェノキシ、ナフチルオキシ等のアリールオキシ基;フェニルチオ、ナフチルチオ等のアリールチオ基;ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等の複素環基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;アセチル、2−クロロアセチル、プロピオニル、オクタノイル、アクリロイル、メタクリロイル、フェニルカルボニル(ベンゾイル)、フタロイル、4−トリフルオロメチルベンゾイル、ピバロイル、サリチロイル、オキザロイル、ステアロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル、カルバモイル等のアシル基;アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ等のアシルオキシ基;アミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ブチルアミノ、シクロペンチルアミノ、2−エチルヘキシルアミノ、ドデシルアミノ、アニリノ、クロロフェニルアミノ、トルイジノ、アニシジノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ,ナフチルアミノ、2−ピリジルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、ホルミルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基等が挙げられ、これらの基は更に置換されていてもよい。また、カルボキシル基及びスルホ基は塩を形成していてもよい。
【0028】
上記一般式(I)において、Anq-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リン酸アニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン、特開平8−253705号公報、特表2004−503379号公報、特開2005−336150号公報、国際公開2006/28006号公報等に記載されたスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドアニオン、ビスパーフルオロブタンスルホニルイミドアニオン、パーフルオロ−4−エチルシクロヘキサンスルホネートアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸アニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)カルボアニオン、ジベンゾイル酒石酸アニオン等が挙げられ、二価のものとしては、例えば、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有するクエンチャーアニオンやシクロペンタジエニル環にカルボキシル基やホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物アニオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0029】
上記のクエンチャーアニオンとしては、例えば、下記一般式(A)、(B)又は下記式(C)、(D)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平5−305770号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平9−323478号公報、特開平10−45767号公報、特開平11−208118号公報、特開2000−168237号公報、特開2002−201373号公報、特開2002−206061号公報、特開2005−297407号公報、特公平7−96334号公報、国際公開98/29257号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0030】
【化5】

(式中、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表し、R5及びR6は、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基又は−SO2−G基を表し、Gは、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいアリール基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、ピペリジノ基又はモルフォリノ基を表し、a及びbは、それぞれ独立に、0〜4の数を表す。また、R7、R8、R9及びR10は、各々独立にアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基又はハロゲン化フェニル基を表す。)
【0031】
【化6】

【0032】
【化7】

【0033】
上記一般式(I)で表される化合物の中でも、下記一般式(II)又は(III)で表されるものが、製造コストが小さく、且つ吸収波長特性が380〜420nmの短波長用レーザ用の光学記録媒体の光学記録層の形成に特に適しているので好ましい。
【0034】
【化8】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜5の数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【0035】
【化9】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基又は下記一般式(IV)で表される置換基を表し、s及びtは、それぞれ独立に、1〜5の数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【0036】
【化10】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されていてもよく、Zは、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【0037】
上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基としては、上記一般式(I)におけるR3及びR4として例示したものが挙げられ、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントラセン−1−イル、フェナントレン−1−イル等が挙げられ、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基としては、ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11及びR12で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11及びR12で表される炭素原子数2〜20の複素環基としては、ピリジル、ピリミジル、ピリダジル、ピペリジル、ピラニル、ピラゾリル、トリアジル、ピロリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、2−ピロリジノン−1−イル、2−ピペリドン−1−イル、2,4−ジオキシイミダゾリジン−3−イル、2,4−ジオキシオキサゾリジン−3−イル等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(IV)におけるRa〜Riで表される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−O−で置換された基としては、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メトキシエチル等が挙げられ、該アルキル基中のメチレン基が−CO−で置換された基としては、アセチル、1−カルボニルエチル、アセチルメチル、1−カルボニルプロピル、2−オキソブチル、2−アセチルエチル、1−カルボニルイソプロピル等が挙げられる。上記一般式(IV)におけるZで表される置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル等が挙げられ、該アルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−−N=CH−又は−CH=CH−で置換された基としては、メチレンオキシ、エチレンオキシ、オキシメチレン、チオメチレン、カルボニルメチレン、カルボニルオキシメチレン、メチレンカルボニルオキシ、スルホニルメチレン、アミノメチレン、アセチルアミノ、エチレンカルボキシアミド、エタンイミドイル、エテニレン、プロペニレン等が挙げられる。
【0040】
上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数1〜8のアルキル基、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数6〜20のアリール基、上記一般式(III)におけるR11、R12、R13及びR14で表される炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11及びR12で表されるアミノ基、上記一般式(II)におけるR3及びR4並びに上記一般式(III)におけるR11及びR12で表される複素環基、上記一般式(IV)におけるZで表される炭素原子数1〜8のアルキレン基は、いずれも、置換基を有していてもよい。該置換基としては、上記で例示したものが挙げられる。
【0041】
本発明の上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜16が挙げられる。尚、以下の例示では、アニオンを省いたカチオンで示している。本発明の化合物において、二重結合は共鳴構造をとっていてもよい。
【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
上記一般式(I)で表される化合物は、その製造方法によって特に限定されず、周知一般の反応を利用した方法で得ることができる。該化合物は、例えば、下記[化13]に示す反応式の如く、ケトン化合物とメチルマグネシウムブロミドをグリニャール反応により反応させ、続いて脱水してエテン化合物を得、得られたエテン化合物とホルムアミド誘導体とを反応させる方法により合成することができる。
【0045】
【化13】

(式中、環A、環B、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じである。)
【0046】
上述した本発明の化合物は、450nm〜1100nmの範囲の光に対する光学要素、特に480〜620nmの範囲の光に対する光学要素として好適である。該光学要素とは、特定の光を吸収することにより機能を発揮する要素のことであり、具体的には、光吸収剤、光学記録剤、光増感剤等が挙げられる。例えば、光学記録剤は、DVD±R等の光学記録媒体における光学記録層に用いられ、光吸収剤は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用、あるいは分析装置用、半導体装置製造用、天文観測用、光通信用等の光学フィルターに用いられる。
【0047】
次に、本発明の上記一般式(I)で表される化合物を少なくとも一種含有する本発明の光学フィルターについて以下に説明する。
本発明の光学フィルターに含有される本発明の化合物の使用量は、特に画像表示装置用において、光学フィルターの単位面積当たり、通常1〜1000mg/m2、好ましくは5〜100mg/m2である。1mg/m2未満の使用量では、光吸収効果を十分に発揮することができず、1000mg/m2を超えて使用した場合には、フィルターの色目が強くなりすぎて表示品質等を低下させるおそれがあり、さらには、明度が低下するおそれもある。
【0048】
本発明の光学フィルターは、画像表示装置用として用いる場合、通常ディスプレイの前面に配置される。例えば、本発明の光学フィルターは、ディスプレイの表面に直接貼り付けてもよく、ディスプレイの前に前面板が設けられている場合は、前面板の表側(外側)または裏側(ディスプレイ側)に光学フィルターを貼り付けてもよい。
【0049】
画像表示装置用として用いる場合、本発明の光学フィルターには、色調調整等のために、本発明の化合物以外の光吸収剤を用いたり、外光の反射や映り込みを防止するために、本発明の化合物以外の480nm〜500nm対応の光吸収剤を用いてもよい。また、画像表示装置がプラズマディスプレイの場合、750〜1100nm対応の近赤外線吸収剤を用いてもよい。
【0050】
色調調整用の上記光吸収剤としては、550〜600nmのオレンジ光の除去のために用いられるものとして、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンベンゾオキサゾリウム化合物、トリメチンベンゾチアゾリウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;ペンタメチンオキサゾリウム化合物、ペンタメチンチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム色素誘導体;アゾメチン色素誘導体;キサンテン色素誘導体;アゾ色素誘導体;ピロメテン色素誘導体;アゾ金属錯体誘導体:ローダミン色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0051】
また、外光の映り込み防止用の480〜500nm対応の上記光吸収剤としては、トリメチンインドリウム化合物、トリメチンオキサゾリウム化合物、トリメチンチアゾリウム化合物、インドリデントリメチンチアゾニウム化合物等のトリメチンシアニン誘導体;フタロシアニン誘導体;ナフタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0052】
また、赤外リモコン誤作動防止用の750〜1100nm対応の近赤外線吸収剤としては、ビスイミニウム誘導体;ペンタメチンベンゾインドリウム化合物、ペンタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ペンタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のペンタメチンシアニン誘導体;ヘプタメチンインドリウム化合物、ヘプタメチンベンゾインドリウム化合物、ヘプタメチンオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾオキサゾリウム化合物、ヘプタメチンチアゾリウム化合物、ヘプタメチンベンゾチアゾリウム化合物等のヘプタメチンシアニン誘導体;スクアリリウム誘導体;ビス(スチルベンジチオラト)化合物、ビス(ベンゼンジチオラト)ニッケル化合物、ビス(カンファージチオラト)ニッケル化合物等のニッケル錯体;スクアリリウム誘導体;アゾ色素誘導体;フタロシアニン誘導体;ポルフィリン誘導体;ジピロメテン金属キレート化合物等が挙げられる。
【0053】
本発明の光学フィルターにおいて、上記の色調調整のための光吸収剤、480〜500nm対応の光吸収剤、及び近赤外線吸収剤は、本発明の化合物と同一の層に含有されていてもよく、別の層に含有されていてもよい。それらの使用量はそれぞれ、通常光学フィルターの単位面積当たり1〜1000mg/m2の範囲であり、好ましくは5〜100mg/m2である。
【0054】
本発明の光学フィルターの代表的な構成としては、透明支持体に、必要に応じて、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層等の各層を設けたものが挙げられる。本発明の化合物や、本発明の化合物以外の色素化合物である光吸収剤、各種安定剤の任意成分を本発明の光学フィルターに含有させる方法としては、例えば、(1)透明支持体又は任意の各層に含有させる方法、(2)透明支持体又は任意の各層にコーティングする方法、(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法、(4)任意の各層とは別に、本発明の化合物等の光吸収剤等を含有する光吸収層を設ける方法が挙げられる。本発明の化合物は、上記(3)の方法により粘着剤層に含有させるか、又は上記(4)の方法により光吸収材に含有させるのに好適である。
【0055】
上記透明支持体の材料としては、例えば、ガラス等の無機材料;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース等のセルロースエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリスチレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン;ポリメチルメタクリレート、等のアクリル系樹脂;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルイミド;ポリオキシエチレン、ノルボルネン樹脂などの高分子材料が挙げられる。透明支持体の透過率は80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。ヘイズは、2%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。屈折率は、1.45〜1.70であることが好ましい。
【0056】
上記透明支持体中には、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機微粒子等を添加することができ、また、上記透明支持体には、各種の表面処理を施すことができる。
【0057】
上記無機微粒子としては、例えば、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0058】
上記各種表面処理としては、例えば、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理等が挙げられる。
【0059】
上記下塗り層は、光吸収剤を含有する光吸収層を設ける場合に、透明支持体と光吸収層との間に用いる層である。上記下塗り層は、ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む層、光吸収層側の表面が粗面である層、又は光吸収層のポリマーと親和性を有するポリマーを含む層として形成する。また、下塗り層は、光吸収層が設けられていない透明支持体の面に設けて、透明支持体とその上に設けられる層(例えば、反射防止層、ハードコート層)との接着力を改善するために設けてもよく、光学フィルターと画像表示装置とを接着するための接着剤と光学フィルターとの親和性を改善するために設けてもよい。下塗り層の厚みは、2nm〜20μmが好ましく、5nm〜5μmがより好ましく、20nm〜2μmがさらに好ましく、50nm〜1μmがさらにまた好ましく、80nm〜300nmが最も好ましい。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーを含む下塗り層は、ポリマーの粘着性で、透明支持体とフィルター層とを接着する。ガラス転移温度が−60〜60℃のポリマーは、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、ブタジエン、ネオプレン、スチレン、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル又はメチルビニルエーテルの重合又はこれらの共重合により得ることができる。ガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましく、25℃以下であることがさらにまた好ましく、20℃以下であることが最も好ましい。下塗り層の25℃における弾性率は、1〜1000MPaであることが好ましく、5〜800MPaであることがさらに好ましく、10〜500MPaであることが最も好ましい。光吸収層の表面が粗面である下塗り層は、粗面の上に光吸収層を形成することで、透明支持体と光吸収層とを接着する。光吸収層の表面が粗面である下塗り層は、ポリマーラテックスの塗布により容易に形成することができる。ラテックスの平均粒径は、0.02〜3μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。光吸収層のバインダーポリマーと親和性を有するポリマーとしては、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、ポリビニルアルコール、可溶性ナイロン及び高分子ラテックス等が挙げられる。また、本発明の光学フィルターには、二以上の下塗り層を設けてもよい。下塗り層には、透明支持体を膨潤させる溶剤、マット剤、界面活性剤、帯電防止剤、塗布助剤、硬膜剤等を添加してもよい。
【0060】
上記反射防止層においては、低屈折率層が必須である。低屈折率層の屈折率は、上記透明支持体の屈折率よりも低い。低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.55であることが好ましく、1.30〜1.50であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50〜400nmであることが好ましく、50〜200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、屈折率の低い含フッ素ポリマーからなる層(特開昭57−34526号、特開平3−130103号、特開平6−115023号、特開平8−313702号、特開平7−168004号の各公報記載)、ゾルゲル法により得られる層(特開平5−208811号、特開平6−299091号、特開平7−168003号の各公報記載)、あるいは微粒子を含む層(特公昭60−59250号、特開平5−13021号、特開平6−56478号、特開平7−92306号、特開平9−288201号の各公報に記載)として形成することができる。微粒子を含む層では、微粒子間又は微粒子内のミクロボイドとして、低屈折率層に空隙を形成することができる。微粒子を含む層は、3〜50体積%の空隙率を有することが好ましく、5〜35体積%の空隙率を有することがさらに好ましい。
【0061】
広い波長領域の反射を防止するためには、上記反射防止層において、低屈折率層に加えて、屈折率の高い層(中・高屈折率層)を積層することが好ましい。高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.40であることが好ましく、1.70〜2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との中間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.90であることが好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましい。中・高屈折率層の厚さは、5nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜10μmであることがさらに好ましく、30nm〜1μmであることが最も好ましい。中・高屈折率層のヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。中・高屈折率層は、比較的高い屈折率を有するポリマーバインダーを用いて形成することができる。屈折率が高いポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリカーボネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状(脂環式又は芳香族)イソシアネートとポリオールとの反応で得られるポリウレタン等が挙げられる。その他の環状(芳香族、複素環式、脂環式)基を有するポリマーや、フッ素以外のハロゲン原子を置換基として有するポリマーも、屈折率が高い。二重結合を導入してラジカル硬化を可能にしたモノマーの重合反応により形成されたポリマーを用いてもよい。
【0062】
さらに高い屈折率を得るため、上記ポリマーバインダー中に無機微粒子を分散してもよい。無機微粒子の屈折率は、1.80〜2.80であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物または硫化物から形成することが好ましい。金属の酸化物又は硫化物としては、酸化チタン(例えば、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造)、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛等が挙げられる。これらの中でも、酸化チタン、酸化錫及び酸化インジウムが特に好ましい。無機微粒子は、これらの金属の酸化物又は硫化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(重量%)が多い成分を意味する。他の元素としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S等が挙げられる。被膜形成性で溶剤に分散し得るか、それ自身が液状である無機材料、例えば、各種元素のアルコキシド、有機酸の塩、配位性化合物と結合した配位化合物(例えばキレート化合物)、活性無機ポリマーを用いて、中・高屈折率層を形成することもできる。
【0063】
上記反射防止層の表面には、アンチグレア機能(入射光を表面で散乱させて、膜周囲の景色が膜表面に移るのを防止する機能)を付与することができる。例えば、透明フィルムの表面に微細な凹凸を形成してその表面に反射防止層を形成するか、あるいは、反射防止層を形成後、エンボスロールにより表面に凹凸を形成することにより、アンチグレア機能を有する反射防止層を得ることができる。アンチグレア機能を有する反射防止層は、一般に3〜30%のヘイズを有する。
【0064】
上記ハードコート層は、上記透明支持体の硬度よりも高い硬度を有する。ハードコート層は、架橋しているポリマーを含むことが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系のポリマー、オリゴマー又はモノマー(例えば紫外線硬化型樹脂)等を用いて形成することができる。シリカ系材料からハードコート層を形成することもできる。
【0065】
上記反射防止層(低屈折率層)の表面は、潤滑層を形成してもよい。潤滑層は、低屈折率層表面に滑り性を付与し、耐傷性を改善する機能を有する。潤滑層は、ポリオルガノシロキサン(例えばシリコンオイル)、天然ワックス、石油ワックス、高級脂肪酸金属塩、フッ素系潤滑剤又はその誘導体を用いて形成することができる。潤滑層の厚さは、2〜20nmであることが好ましい。
【0066】
本発明の化合物を光学フィルターに含有させる際に前記「(3)透明支持体及び任意の各層から選択される任意の隣合う二者間の粘着剤層に含有させる方法」を採用する場合には、本発明の化合物等を粘着剤に含有させた後、該粘着剤を用いて、上述した透明支持体及び任意の各層のうちの隣合う二者を接着すればよい。該粘着剤としては、シリコン系、ウレタン系、アクリル系、ポリビニルブチラール系、エチレン−酢酸ビニル系等の公知の合わせガラス用透明粘着剤を用いることができる。また、該粘着剤を用いる場合、必要に応じて、硬化剤として、金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤を用いることができる。また、粘着剤層の厚みは、2〜400μmとすることが好ましい。
【0067】
前記「(4)任意の各層とは別に、本発明の化合物等の光吸収剤を含有する光吸収層を設ける方法」を採用する場合、本発明の化合物は、そのまま使用して光吸収層を形成することもできるし、バインダーに分散させて光吸収層を形成することもできる。該バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド等の合成高分子材料が用いられる。
【0068】
上記バインダーを使用する際には、同時に有機溶媒を使用することもでき、該有機溶媒としては、特に限定されることなく公知の種々の溶媒を適宜用いることができ、例えば、イソプロパノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
【0069】
また、上記の下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、光吸収層等は、一般的な塗布方法により形成することができる。塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)等が挙げられる。二以上の層を同時塗布により形成してもよい。同時塗布法については、米国特許第2761791号、米国特許第2941898号、米国特許第3508947号、米国特許第3526528号の各明細書及び原崎勇次著「コーティング工学」253頁(1973年朝倉書店発行)に記載がある。
【0070】
次に、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、本発明の化合物を含有してなる本発明の光学記録材料について、以下に説明する。
上記一般式(I)で表される本発明の化合物は、情報をレーザ等による熱的情報パターンとして付与することにより記録する光学記録媒体における光学記録層に使用される光学記録材料にも有用であり、特にDVD−R、DVD+R等の光学記録層に使用される光学記録材料に好適である。なお、本発明の光学記録材料は、光学記録層を形成するために用いられる材料であり、上記一般式(I)で表される本発明の化合物及び後述する有機溶媒や各種化合物との混合物のことである。
【0071】
上記一般式(I)で表される化合物を含有する本発明の光学記録材料を用いて光学記録媒体の光学記録層を形成する方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に、本発明の化合物及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解して溶解して溶液状の光学記録材料を作製し、該光学記録材料を基体上にスピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられ、蒸着法、スパッタリング法等も用いられる。上記有機溶媒を使用する場合、その使用量は、本発明の光学記録材料中における上記一般式(I)で表される化合物の含有量が0.1〜10質量%となる量にするのが好ましい。
【0072】
上記光学記録層は薄膜として形成され、その厚さは、通常、0.001〜10μmが適当であり、好ましくは0.01〜5μmの範囲である。
【0073】
また、本発明の光学記録材料中において、上記一般式(I)で表される化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、10〜100質量%が好ましい。上記光学記録層は、光学記録層中に上記一般式(I)で表される化合物を50〜100質量%含有するように形成されることが好ましく、このような化合物含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、上記一般式(I)で表される化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で50〜100質量%含有するのがさらに好ましい。
【0074】
本発明の光学記録材料に含まれる上記固形分は、該光学記録材料から有機溶媒等の固形分以外の成分を除いた成分のことであり、該固形分の含有量は、上記光学記録材料中、0.01〜100質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0075】
本発明の光学記録材料は、本発明の化合物の他に、必要に応じて、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、オキソノール系化合物、スクアリリウム系化合物、インドール化合物、スチリル系化合物、ポルフィン系化合物、アズレニウム系化合物、クロコニックメチン系化合物、ピリリウム系化合物、チオピリリウム系化合物、トリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、テトラヒドロコリン系化合物、インドフェノール系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、キサンテン系化合物、チアジン系化合物、アクリジン系化合物、オキサジン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ローダミン系化合物等の、通常光学記録層に用いられる化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類;界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、本発明の光学記録材料は、一重項酸素等のクエンチャーとして芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分中、0〜50質量%の範囲となる量で使用される。
【0076】
このような光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光および読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの樹脂、ガラスなどが用いられる。また、その形状は、用途に応じ、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものを使用できる。
【0077】
また、上記光学記録層上には、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等により保護層を形成することもできる。
【実施例】
【0078】
以下、製造例及び実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
下記製造例1〜3は、上記一般式(I)で表される化合物を得るための原料であるエテン化合物の製造例を示し、実施例1〜7は、上記一般式(I)で表される化合物の製造例を示す。実施例8〜15は、実施例1及び3で得られた本発明の化合物を用いた本発明の光学フィルターの作成例を示す。
また、下記実施例16〜22は、実施例1〜7で得られた本発明の化合物を用いた本発明の光学記録材料及び光学記録媒体の実施例を示し、比較例1は、本発明の化合物とは異なる構造の化合物を用いた光学記録材料及び光学記録媒体の例を示す。また、下記評価例1では、実施例2、5、6及び7で得られた本発明の化合物及び比較化合物について耐光性の評価を行い、下記評価例2では、実施例16〜20で得られた光学記録媒体について、短波長レーザによる記録及び再生の適否の評価を行った。
【0079】
〔製造例1〜3〕エテン化合物の製造
以下に示す合成方法を用いて、エテン化合物1(ビス(N,N−ジエチルアミノフェニル)エテン)、エテン化合物2(ビス(メトキシフェニル)エテン)及びエテン化合物3(ビス(N−メチルインドリル)エテン)を合成した。得られた化合物の同定は、1H−NMR分析により行った(〔表1〕参照)。
【0080】
(合成例)
ケトン化合物49.9mmolをトルエン40gに溶解し、メチルマグネシウムブロミド64.4mmolの1.0mol/lテトラヒドロフラン溶液を加えて1時間加熱還流した。酢酸17g及び水17gを混合したものを滴下し、さらに1時間加熱還流した。室温に冷却後、油水分離を行なった。有機層を無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、溶媒を留去して、残さを再結晶により精製して、目的のエテン化合物を得た。
【0081】
【表1】

【0082】
〔実施例1〜5〕上記一般式(I)で表される化合物のPF6塩の製造
以下に示す合成方法を用いて、化合物No.1〜No.3、No.13及びNo.15のPF6塩を合成した。得られた化合物の同定は、IR分析及び1H−NMR分析により行った(〔表3〕及び〔表4〕参照)。〔表2〕に、得られた化合物の収率並びに特性値[溶液状態での光吸収特性(λmax、及びλmaxにおけるε)、融点及び分解点]の測定結果を示す。
なお、〔表2〕において、分解点は10℃/分の昇温速度における示差熱分析の質量減少開始温度である。
【0083】
(合成例)化合物No.1〜No.3、No.13及びNo.15のPF6塩の合成
ホルムアミド誘導体23.8mmolに、氷冷下でオキシ塩化リン7.5mmolを滴下し、氷冷下で1時間撹拌した。続いて、氷冷下で、製造例1〜3で得られたエテン化合物5.0mmolをそれぞれ加え、100℃で3時間撹拌した。KPF6の43.5mmolを加えて混合した後、水100ml及び酢酸エチル100mlを加えて油水分離を行なった。有機層を無水硫酸マグネシウムにより乾燥し、溶媒を留去して、残さをカラムクロマトグラフィー又は再結晶により精製して、目的物である化合物No.1〜No.3、No.13及びNo.15のPF6塩を得た。
【0084】
〔実施例6及び7〕化合物No.2及びNo.3のクエンチャーアニオン塩の合成
製造例1及び2で得られたエテン化合物5.0mmolを、それぞれアセトン20mlに溶解し、化学式〔C〕で示されるアニオンのトリエチルアミン塩5.0mmolをアセトン122mlに溶解したものを滴下して、さらにアセトン20mlを加えて3時間加熱還流した。室温まで冷却後、反応物を水800mlに滴下し、室温で13時間撹拌した。析出した固体をろ別し、乾燥させて目的物である化合物No.2及びNo.3のクエンチャーアニオン塩をそれぞれ得た。
【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
〔実施例8〕光学フィルターの作成1
下記の配合にて塗工液を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#9により塗布した後、100℃で3分乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚10μmのフィルム層を有する光学フィルター(化合物No.1の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxが495nmで半値幅が67nmであった。
【0089】
(配合)
スミペックス LG 2.5g
(住友化学(株)製アクリル系樹脂バインダー、樹脂分40質量%)
化合物No.1のPF6塩 2mg
メチルエチルケトン 2.5g
【0090】
〔実施例9〕光学フィルターの作成2
下記の配合にて粘着剤溶液を調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該粘着剤溶液をバーコーター#30により塗布した後、100℃で10分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にフィルム上に厚さ約10μmの粘着剤層を有する光学フィルター(化合物No.1の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが495.5nmで半値幅が67.5nmであった。
【0091】
(配合)
化合物No.1のPF6塩 2.0mg
アクリル系粘着剤(デービーボンド5541:ダイアボンド社製) 20g
メチルエチルケトン 80g
【0092】
〔実施例10〕光学フィルターの作成3
下記の配合をプラストミルで260℃にて5分間溶融混練した。混練後、直径6mmのノズルから押出し水冷却ペレタイザーで色素含有ペレットを得た。このペレットを、電気プレスを用いて250℃で0.25mm厚の薄板(化合物No.1の含有量2.0mg/m2)に成形した。この薄板について、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmaxが495.5mで半値幅が67.4nmであった。
【0093】
(配合)
ユーピロンS−3000 100g
(三菱瓦斯化学(株)製;ポリカーボネート樹脂)
化合物No.1のPF6塩 0.01g
【0094】
〔実施例11〕光学フィルターの作成4
下記の配合にてUVワニスを調製し、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該UVワニスをバーコーター#9により塗布した後、80℃で30秒乾燥させた。その後、赤外線カットフィルムフィルター付き高圧水銀灯にて紫外線を100mJ照射し、硬化膜厚約5μmのフィルター層を有する光学フィルター(化合物No.1の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で吸収スペクトルを測定したところ、λmax495.5nmで半値幅が67.6nmであった。
【0095】
(配合)
アデカオプトマーKRX−571−65 100g
(旭電化工業(株)製UV硬化樹脂、樹脂分80質量%)
化合物No.1のPF6塩 0.5g
メチルエチルケトン 60g
【0096】
[実施例12]光学フィルターの作成5
下記の配合にて塗工液を調製し、易密着処理した188ミクロン厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、該塗工液をバーコーター#9により塗布した後、100℃で3分間乾燥させ、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に膜厚約10μmのフィルム層を有する光学フィルター(化合物No.1の含有量2.0mg/m2)を得た。この光学フィルターについて、日本分光(株)製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが495nmで半値幅が67.3nmであった。
【0097】
(配合)
ポリエスターTP−220 100g
(日本合成化学製ポリエステル樹脂)
化合物No.1のPF6塩 1.0g
メチルエチルケトン 60g
【0098】
〔実施例13〕光学フィルターの作成6
化合物No.1のPF6塩の2mgに替えて化合物No.3のPF6塩の2mgを用いた以外は実施
例1と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターを日本分光(株) 製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが490.0nmで半値幅が65.6nmであった。
【0099】
〔実施例14〕光学フィルターの作成7
化合物No.1のPF6塩の2mgに替えて化合物No.13のPF6塩の2mgを用いた以外は実施例1と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターを日本分光(株) 製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが505.0nmで半値幅が69.2nmであった。
【0100】
〔実施例15〕光学フィルターの作成8
化合物No.1のPF6塩の2mgに替えて化合物No.15のPF6塩の2mgを用いた以外は実施例1と同様にして光学フィルターを作成し、得られた光学フィルターを日本分光(株) 製紫外可視近赤外分光光度計V−570で測定したところ、λmaxが434.0nmで半値幅が56.8nmであった。
【0101】
本発明の上記一般式(I)で表される化合物を使用した実施例8〜15の光学フィルターは、特定の波長(380〜550nm)にシャープな吸収を有しており、画像表示装置、特にプラズマディスプレイ用の光学フィルターとしての性能に優れることが明らかである。
【0102】
〔実施例16〜22〕光学記録材料及び光学記録媒体の製造
上記の実施例1〜7で得た化合物それぞれを、化合物の濃度が濃度1.0質量%となるように2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液に溶解して、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液として実施例16〜22の光学記録材料をそれぞれ得た。チタンキレート化合物(T−50:日本曹達社製)を塗布、加水分解して下地層(0.01μm)を設けた直径12cmのポリカーボネートディスク基板上に、上記の光学記録材料をスピンコーティング法にて塗布して、厚さ100nmの光学記録層を形成し、実施例16〜22の光学記録媒体No.1〜No.7をそれぞれ得た。
【0103】
〔比較例1〕
化合物No.1のPF6塩に替えて下記比較化合物No.1を用いた以外は、上記実施例16と同様にして、比較例1の光学記録材料を作製し、該光学記録材料を用いて比較例1の光学記録媒体を得た。
【0104】
【化14】

【0105】
〔評価例1−1〜1−8並びに比較評価例1−1及び1−2〕上記一般式(I)で表される化合物の耐光性評価
実施例2、5、6及び7で得られた化合物No.2並びに化合物No.15のPF6塩及びNo.2並びにNo.3のクエンチャーアニオン塩、及び比較化合物1について、耐光性評価を行なった。
まず、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに本発明の化合物を、1質量%となるように溶解して2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール溶液を調製し、得られた溶液を、20×20mmのポリカーボネート板上に2000rpm、60秒でスピンコーティング法により塗布して、試験片を作成した。評価は、該試験片に55000ルクスの光を照射し、それぞれ24時間、48時間照射した後、照射前のUV吸収スペクトルのλmaxでの吸光度残率を測定することにより行なった。尚、〔表5〕において、併用物としては、下記[化15]に示すジイモニウム化合物を用いた。結果を〔表5〕に示す。
【0106】
【表5】

【0107】
【化15】

【0108】
[表5]から明らかなように、本発明の上記一般式(I)で表される化合物は、照射48時間後においても吸光度残存率が高く、ジイモニウム化合物を併用した場合においても、照射48時間後においても吸光度残存率の低下は見られなかった。一方、比較化合物は、照射24時間後において吸光度残存率の低下が見られ、また照射48時間後において著しい吸光度残存率の低下が見られた。さらに、比較化合物とジイモニウム化合物を併用した場合は、照射24時間後、照射48時間後ともに吸光度残存率の低下が見られ、耐光性は良好でなかった。
【0109】
[評価例2−1〜2−5]
実施例16〜20で得られた光学記録媒体No.1〜No.5について、UVスペクトル吸収を測定した。結果を〔表6〕に示す。
【0110】
【表6】

【0111】
〔表6〕から明らかなように、本発明の光学記録材料により形成された光学記録層を有する光学記録材媒体は、UVスペクトル吸収において380〜550nm近くにλmaxを示し、いずれの光学記録媒体も、380〜420nmのレーザ光により記録が可能であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】

(式中、環A及び環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環又は複素環を表し、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、R1とR2とは連結して環を形成していてもよく、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよく、Anq-はq価のアニオンを表し、qは、1又は2であり、pは電荷を中性に保つ係数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(II)で表される化合物。
【化2】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、m及びnは、それぞれ独立に、1〜5の整数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【請求項3】
下記一般式(III)で表される化合物。
【化3】

(式中、R1、R2、Anq-、q及びpは、上記一般式(I)と同じであり、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、ニトロ基、アミノ基、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数2〜20の複素環基を表し、R13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基又は下記一般式(IV)で表される置換基を表し、s及びtは、それぞれ独立に、1〜5の数であり、上記炭素原子数1〜8のアルキル基中のメチレン基は、−O−又は−CH=CH−で置き換えられていてもよい。)
【化4】

(式中、Ra〜Riは、各々独立に、水素原子、水酸基又は炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、該アルキル基中のメチレン基は−O−又は−CO−で置換されていてもよく、Zは、直接結合又は置換基を有してもよい炭素原子数1〜8のアルキレン基を表し、該アルキレン基中のメチレン基は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されていてもよく、Mは、Fe、Co、Ni、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Mo、Os、Mn、Ru、Sn、Pd、Rh、Pt又はIrを表す。)
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学フィルター。
【請求項5】
粘着剤層を含む多層構造を有し、上記化合物が該粘着剤層に含有されていることを特徴とする請求項4記載の光学フィルター。
【請求項6】
画像表示装置用である請求項4又は5記載の光学フィルター。
【請求項7】
上記画像表示装置がプラズマディスプレイである請求項6記載の光学フィルター。
【請求項8】
請求項1〜3の何れかに記載の化合物を少なくとも一種含有することを特徴とする光学記録材料。
【請求項9】
基体上に、請求項8記載の光学記録材料から形成された光学記録層を有することを特徴とする光学記録媒体。

【公開番号】特開2007−327032(P2007−327032A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42375(P2007−42375)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】