説明

新規化合物、重合性組成物、カラーフィルタ、及びその製造方法、固体撮像素子、並びに、平版印刷版原版

【課題】波長365nm及び405nmの光に対する感度が高く、加熱経時による膜物性低下を抑制しうる硬化膜を形成可能な光重合性組成物を提供することにある。
【解決手段】(A)芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環と、該縮合環に結合する、カルボニル基に直接結合したオキシム基を有し、該カルボニル基を含んで形成される環構造と、を有するオキシム系重合開始剤、及び、(B)重合性化合物を含有する重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、該重合性化合物に含まれる新規化合物、該重合性化合物を用いてなるカラーフィルタ及びその製造方法、該カラーフィルタを備える固体撮像素子、並びに、平版印刷版原版に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性組成物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものがある。このような光重合性組成物は、光を照射されることによって重合硬化するため、光硬化性インキ、感光性印刷版、カラーフィルタ、各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
また、光開始剤としては、例えば、光の照射により酸を発生し、発生した酸を触媒とする他の態様もある。具体的には、発生した酸を触媒とする色素前駆体の発色反応を利用して、画像形成、偽造防止、エネルギー線量検出のための材料に用いられ、或いは、発生した酸を触媒とする分解反応を利用した半導体製造用、TFT製造用、カラーフィルタ製造用、マイクロマシン部品製造用等のポジ型レジストなどに用いられる。
【0004】
近年、特に短波長(例えば、365nm及び405nm)の光源に感受性を有する光重合性組成物が種々の用途から望まれており、そのような短波長の光源に対して優れた感度を示す化合物、例えば、光重合開始剤に対する要求が高まってきている。しかしながら、一般的に、感度に優れた光重合開始剤は安定性に欠けることから、感度向上と同時に保存安定性も満たす光重合開始剤が望まれている。
【0005】
そこで、光重合性組成物に用いられる光重合開始剤として、オキシムエステル誘導体が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。しかし、これらの公知のオキシムエステル化合物は、波長365nm、波長405nmに対する吸光度が低いため、感度の観点で未だ満足のいくものではなかった。
また、光重合性組成物としても、保存安定性に優れると共に、365nm、405nmなどの短波長の光に対して優れた感度を有するものが望まれているのが現状である。
【0006】
更に、オキシム化合物を含有するカラーフィルタ用の着色感放射線性組成物が開示されている(例えば、特許文献7参照)が、保存安定性、及び短波長の光に対する感度に関しては、未だ不十分であった。
また、カラーフィルタ用の着色感放射線性組成物においては、パターン形成後の色相の再現性が新しい課題となっており、経時により着色性が変化する問題の改善が強く望まれていた。
【0007】
一方、イメージセンサー用カラーフィルタは、CCDなどの固体撮像素子の高集光性、かつ、高色分離性による画質向上のため、カラーフィルタの高着色濃度・薄膜化への強い要求がある。高着色濃度を得るために色材を多量に添加すると、2.5μm以下の微細な画素パターンの形状を忠実に再現するには感度が不足してしまい、全体的にパターンの欠落が多発する傾向がある。なお、この欠落をなくすためには、より高エネルギーの光照射が必要なため、露光時間が長くなり、製造上の歩留まり低下が顕著になる。
以上のことからも、カラーフィルタ用の着色感放射線性組成物に関しては、色材(着色剤)を高濃度で含有しつつも良好なパターン形成性を得る必要があるという点から、感度が高いことが望まれているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4255513号明細書
【特許文献2】米国特許第4590145号明細書
【特許文献3】特開2000−80068号公報
【特許文献4】特開2001−233842号公報
【特許文献5】特開2006−342166号公報
【特許文献6】特開2007−231000号公報
【特許文献7】特開2005−202252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第1の目的は、波長365nm及び405nmの光に対する感度が高く、且つ、加熱経時による着色が抑制された硬化膜を形成可能な重合性組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、高感度で硬化し、良好なパターン形成性を有し、支持体との密着性に優れた着色パターンを形成し、現像後の後加熱時にも優れたパターン形状を有し、カラーフィルタの着色領域形成に用いられる重合性組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、上記カラーフィルタの着色領域形成に用いられる重合性組成物を用いてなる、パターン形状が良好であり、支持体との密着性に優れた着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び、該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法、更には、該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することにある。
本発明の第4の目的は、上記重合性組成物を用いた高感度で画像形成しうる平版印刷版原版を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、前記重合性組成物に好適に用いられる新規なオキシム化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、新規な特定構造を有するオキシム化合物を用いることで、波長365nm及び405nmの光に対し良好な吸光度を有し、かつ、保存安定性にも優れる光重合性組成物が得られるとの知見を得た。前記課題を解決するための具体的手段を以下に示す。
【0011】
<1> (A)芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環と、該縮合環に結合する、カルボニル基に直接結合したオキシム基を有し、該カルボニル基を含んで形成される環構造と、を有するオキシム系重合開始剤、及び、(B)重合性化合物を含有する重合性組成物。
<2> 前記(A)オキシム系重合開始剤が、下記一般式(1)で示される化合物である<1>に記載の重合性組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
前記一般式(1)中、Arは芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示す。
【0014】
<3>前記(A)オキシム系重合開始剤が、下記一般式(1A)又は一般式(1B)で示される化合物である前記<1>又は<2>に記載の重合性組成物。
【0015】
【化2】

【0016】
前記一般式(1A)及び一般式(1B)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は複素環基を示し、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示し、mは0又は1を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。
<4> 前記一般式(1A)及び一般式(1B)におけるRが、下記一般式(2)で示される置換基である前記<3>に記載の重合性組成物。
【0017】
【化3】

【0018】
前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、モルホリノ基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はアルキルセレノ基を示す。
【0019】
<5> さらに(C)着色剤を含有する前記<1>〜<4>のいずれかに記載の重合性組成物。
<6> 前記(C)着色剤が顔料であり、さらに(D)顔料分散剤を含有する前記<5>に記載の重合性組成物。
【0020】
<7> 前記(C)着色剤が、黒色着色剤である前記<5>又は<6>に記載の重合性組成物。
<8> カラーフィルタの着色領域形成に用いられる前記<5>〜<7>のいずれかに記載の重合性組成物。
【0021】
<9> 支持体上に、前記<8>に記載の重合性組成物を用いて形成された着色領域を有するカラーフィルタ。
<10> 支持体上に、前記<8>に記載の重合性組成物を塗布して光重合性組成物層を形成する工程と、前記光重合性組成物層を、マスクを介して露光する工程と、露光後の前記光重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
【0022】
<11> 前記<9>に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
<12> 支持体上に、前記<1>〜<5>のいずれかに記載の重合性組成物を含む感光層を有する平版印刷版原版。
<13> 下記一般式(1A)又は下記一般式(1B)で示される化合物。
【0023】
【化4】

【0024】
前記一般式(1A)及び一般式(1B)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は複素環基を示し、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示し、mは0又は1を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、波長365nm及び405nmの光に対する感度が高く、保存安定性に優れ、更に、加熱経時による着色が抑制された硬化膜を形成可能な重合性組成物、及び該重合性組成物に好適に用いられるオキシム化合物を提供することができる。
また本発明によれば、保存安定性に優れ、高感度で硬化し、良好なパターン形成性を有し、支持体との密着性に優れた着色パターンを形成し、現像後の後加熱時にも優れたパターン形状を有し、カラーフィルタの着色領域形成に用いられる重合性組成物を提供することができる。
さらにまた、上記カラーフィルタの着色領域形成に用いられる重合性組成物を用いてなる、パターン形状が良好であり、支持体との密着性に優れた着色パターンを備えたカラーフィルタ、及び、該カラーフィルタを高い生産性で製造しうる製造方法、更には、該カラーフィルタを備えた固体撮像素子を提供することができる。
さらには、上記重合性組成物を用いた高感度で画像形成しうる平版印刷版原版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の重合性組成物は、(A)芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環と、該縮合環に結合する、カルボニル基に直接結合したオキシム基を有し、該カルボニル基を含んで形成される環構造と、を有するオキシム系重合開始剤(以下適宜、特定オキシム化合物と称する場合がある。)、及び、(B)重合性化合物、を含有することを特徴とする。
【0027】
本発明の特定オキシム化合物は、光により分解し、重合性化合物の重合を開始、促進する光重合開始剤としての機能を有する。特に、該特定オキシム化合物は365nmや405nmの光源に優れた感度を有するため、光重合性組成物において光重合開始剤として用いた場合に優れた効果を発揮する。
以下、本発明の重合性化合物に含まれる各成分について説明する。
【0028】
本発明における特定オキシム化合物は、芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環を有する化合物であるが、該縮合環としては、好ましくは、芳香環及び複素環から選択される2個〜10個が縮環した縮合環であり、より好ましくは、2個〜7個が縮環した縮合環であり、更に好ましくは3個〜5個が縮環した縮合環である。
【0029】
該縮合環を構成する芳香環としては、ベンゼン環、5員〜6員複素芳香環等を挙げることができ、炭素数6〜30の芳香環が好ましく、より好ましくは、炭素数10〜25であり、更に好ましくは、炭素数12〜20の芳香環である。
【0030】
前記芳香環としては、具体的には、例えば、ベンゼン、ビフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントラセン、ピロール、ナフタセニレン、インデン、アズレン、クメン、フルオレン、メシチレン、フラン等が挙げられ、ベンゼン、ビフェニレン、ナフタレン、アントラセンがより好ましい。
【0031】
該縮合環を構成する複素環とは、少なくとも1個の窒素、酸素、硫黄、又はリン原子などのヘテロ原子を、環構造を構成する原子として含む環をいう。
複素環としては、好ましくは、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子を含む芳香族或いは脂肪族の複素環であり、より好ましくは、窒素原子又は酸素原子を含む芳香族或いは脂肪族の複素環であり、更に好ましくは、窒素原子を含む芳香族或いは脂肪族の複素環である。
【0032】
複素環としては、具体的には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ピペラジン、ピラン、クロマン、イミダゾール、チアゾール、ピラゾール、モルホリン、カルバゾール、チアンスレン、ジヒドロフェナジン、ジベンゾチオフェン等があげられ、ピロール、フラン、チオフェン、カルバゾール、チアンスレン、ジヒドロフェナジン、ジベンゾチオフェンが好ましく、チオフェン、カルバゾール、チアンスレン、ジヒドロフェナジン、ジベンゾチオフェンがより好ましく、チオフェン、カルバゾール、ジベンゾチオフェンが更に好ましい。
【0033】
本発明における特定オキシム化合物は、芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環を有するが、該縮合環を形成しうる環として、上記した芳香環及び複素環以外に、脂肪族性の炭化水素環を挙げることができる。即ち、該特定オキシム化合物に含まれる縮合環は、前記芳香環及び複素環から選択される2以上の環に加え、脂肪族性の炭化水素環を含んで構成されてもよい。
【0034】
前記縮合環に含まれうる脂肪族性の炭化水素環としては、炭素数3〜20の炭化水素環が挙げられ、炭素数4〜15の炭化水素環が好ましく、炭素数5〜12の炭化水素環がより好ましく、炭素数5〜7の炭化水素環が更に好ましい。
炭化水素環の員数は、3〜12であり、好ましくは4〜10であり、より好ましくは5〜8であり、更に好ましくは5〜7である。
【0035】
特定オキシム化合物における縮合環としては、芳香環及び複素環から選択される2個〜10個が縮環した縮合環、特には、これらが3個〜5個が縮環した縮合環であることは前記したとおりであるが、さらに、脂肪族性の炭化水素環を含む場合には、芳香環及び複素環から選択される環と脂肪族炭化水素環との合計で2個〜5個の環構造が縮合したものであることが好ましい。
【0036】
本発明の特定オキシム化合物は、上記縮合環に加え、該縮合環に結合する、オキシム基を含む環構造を有する。縮合環に結合する環構造としては、カルボニル基に隣接するオキシム基を含み、オキシム基と直接結合するカルボニル基を構成する炭素原子を、環を構成する炭素原子として含む環構造である。
すなわち、前記オキシム基を含む環構造においては、その核となる環構造が、カルボニル基を構成する末端炭素と、オキシム基を構成する炭素とを含む環構造であり、このカルボニル基を構成する炭素とオキシム基を構成する炭素とは該環構造上で隣接している。
オキシム基を有する環構造は、前記した縮合環と縮合により結合してなる脂肪族炭化水素環であることが好ましい。該縮合環上、オキシム基の置換位置としては、近接する芳香族環のα位、β位又はγ位であり、好ましくは、β位である。
【0037】
特定オキシム化合物としては、前記縮合環及びオキシム基とカルボニル基とを含む環構造を有する化合物であれば特に制限はないが、なかでも、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0038】
【化5】

【0039】
前記一般式(1)中、Arは芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示す。
【0040】
一般式(1)において、Arで示される芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環とは、前記した縮合環と同義であり、好ましい範囲も同様である。
なお、本明細書において、前記芳香環、複素環、アシル基、スルホニル基、及び後述するアルキル基は、特に指定しない限り、さらに置換基を有するものであってもよい。
以下に、種々の縮合環を有する一般式(I)で表される化合物の例を挙げる。ここに示すように、Arは、ヘテロ原子を含んでもよい5員環及び6員環が2つ又は3つ縮合してなる縮合環であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などの置換基を有するものであってもよい。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
一般式(1)において、Rがアシル基を表す場合の、置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数2〜20のアシル基が好ましく、より好ましくは、炭素数2〜12のアシル基であり、更に好ましくは、炭素数2〜7のアシル基である。
【0044】
具体例としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、トリフルオロメチルカルボニル基、ペンタノイル基、ベンゾイル基、トルイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、4−メチルスルファニルベンゾイル基、4−フェニルスルファニルベンゾイル基、4−ジメチルアミノベンゾイル基、4−ジエチルアミノベンゾイル基、2−クロロベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メトキシベンゾイル基、2−ブトキシベンゾイル基、3−クロロベンゾイル基、3−トリフルオロメチルベンゾイル基、3−シアノベンゾイル基、3−ニトロベンゾイル基、4−フルオロベンゾイル基、4−シアノベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基等が挙げられる。
【0045】
上記具体例の中でも、アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましく、アセチル基、ベンゾイル基がより好ましい。
【0046】
がスルホニル基を表す場合の、スルホニル基としては、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基が挙げられ、なかでも、アルキルスルホニル基、及び、アルキルスルホニル基におけるアルキル基の水素原子の一部がハロゲン原子に置きかわったハロゲン化アルキルスルホニル基が好ましく、さらに好ましくは、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子に置きかわったフルオロアルキルスルホニル基である。
具体例としては、ノナフルオロブタンスルホニル基、パーフルオロオクタンスルホニル基などが挙げられる。
【0047】
これらのなかもで、高感度化の点から、一般式(1)におけるRは、アシル基がより好ましく、具体的には、アセチル基、プロピオイル基、ベンゾイル基、トルイル基が好ましい。
【0048】
一般式(1)中、nは、0〜2を表すが、0又は1が好ましく、0がより好ましい。即ち、オキシム基と直接結合するカルボニル基を含んで構成される環構造は、5員環から7員環であり、5員環及び6員環が好ましく、5員環であることがさらに好ましい態様である。
【0049】
一般式(1)中、Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子で表されるが、高感度化の観点から酸素原子、窒素原子、硫黄原子がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。
【0050】
更に、前述した置換基を有してもよい芳香環、置換基を有してもよい複素環、置換基を有してもよいアシル基は、更に他の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
一般式(1)における各置換基にさらに導入可能な置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、トリメチルアンモニウミル基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(1)で表される特定オキシム化合物としては、下記一般式(1A)又は(1B)で示される化合物であることがより好ましい。
なお、検討の結果、下記一般式(1A)又は(1B)で示される化合物は、新規化合物であることを見出した。下記一般式(1A)又は(1B)で示される構造を有する新規オキシム化合物は、以下に詳述するように、光重合開始剤として極めて有用である。
【0053】
【化8】

【0054】
前記一般式(1A)及び一般式(1B)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は複素環基を示し、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示し、mは0又は1を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。
【0055】
前記一般式(1A)及び一般式(1B)におけるR、X及びnは、前記一般式(1)におけるR、X及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0056】
一般式(1A)及び(1B)におけるR及びRで表されるアルキル基、アリール基及び複素環基はさらに置換基を有していてもよい。
【0057】
及びRがアルキル基を表す場合の置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられる。
【0058】
上記具体例の中でも、エチル基、2−エチルヘキシル基、イソペンチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエチル基、シクロヘキシルメチル基、t−ブチルメチル基、がより好ましく、エチル基、2−エチルヘキシル基、イソペンチル基、エトキシエチル基、シクロヘキシルメチル基が更に好ましい。
【0059】
及びRがアリール基を表す場合の置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30の芳香環が好ましく、炭素数6〜20の芳香環がより好ましく、炭素数6〜10の芳香環が更に好ましい
具体的には、フェニル基、o−、m−、p−トリル基がより好ましく、o−トリル基が更に好ましい。
【0060】
複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子を有する芳香族或いは脂肪族の複素環基が挙げられる。
好ましい具体例としては、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピラニル基、イミダゾリル基、ピペリジル基、モルホリニル基、チオキサントリル基が挙げられ、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピラニル基、イミダゾリル基が好ましく、チエニル基、ピリジル基、フリル基がより好ましい。
【0061】
また上記一般式(1A)及び一般式(1B)におけるRとしては、下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0062】
【化9】

【0063】
一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、モルホリノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はアルキルセレノ基を示す。それぞれの置換基は、導入可能な場合にはさらに置換基を有していてもよい。
【0064】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられるが、フッ素、臭素がより好ましく、臭素が更に好ましい。
【0065】
及びRにおける置換基を有していてもよいアルキル基及び置換基を有していてもよいアリール基としては、一般式(1A)及び(1B)においてR及びRで表されるアルキル基及びアリール基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0066】
及びRがアルコキシカルボニル基を表す場合の、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基が好ましく、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が更に好ましい。
【0067】
及びRがアリールオキシカルボニル基を表す場合の、置換基を有してもよいアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル基、1−ナフチルオキシカルボニル基、2−ナフチルオキシカルボニル基が好ましく、フェノキシカルボニル基が更に好ましい。
【0068】
及びRがアシルオキシ基を表す場合の、置換基を有していてもよいアシルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基が好ましい。
【0069】
及びRがアルコキシ基を表す場合の、置換基を有していてもよいアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基が好ましい。
【0070】
なお、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基としては、下記式で表されるものがより好ましい。
【0071】
【化10】

【0072】
上記各式中、Yは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表し、pは0〜5の整数を表し、qは0又は1を表す。R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、Zは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。R14はアルキル基、又はハロゲン原子を表し、rは0〜4の整数を表す。
【0073】
上記各式中、Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を表す。nが2の場合、複数存在するRは同じでも異なっていてもよい。
Rがアルキル基を表す場合のアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が最も好ましい。
Rが芳香環基を表す場合の芳香環基としては、アリール基、複素芳香環基などが挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基等が好ましく、フェニル基、ナフチル基がより好ましく、フェニル基が最も好ましい。
【0074】
一般式(1A)及び(1B)で表される特定オキシム化合物の好ましい組合せは、Rがメチル基、エチル基、プロピル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基、イソペンチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、又は、フェノキシエチル基であり、Rがフェニル基、o−、m−、p−トリル基、チエニル基、ピリジル基、又は、フリル基であり、Rがアセチル基、又は、ベンゾイル基であり、Rが単結合(即ちn=0)、−CH−、−(CH−、 −CH(CH)−又は −CH(Ph)−であり、Xが酸素原子又は硫黄原子であり、mが1である。
より好ましい組合せは、Rがエチル基、イソペンチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、又は、フェノキシエチル基であり、Rがフェニル基、o−トリル基、チエニル基、ピリジル基、又は、フリル基であり、Rがアセチル基であり、Rが−CH−、−(CH−、 −CH(CH)−、又は、−CH(Ph)−であり、Xが酸素原子又は硫黄原子であり、mが1である。
更に好ましい組合せは、Rがエチル基、イソペンチル基、又は、エトキシエチル基であり、Rがo−トリル基であり、Rがアセチル基又はベンゾイル基であり、Rが−CH−、−(CH−、−CH(CH)−、又は、−CH(Ph)−であり、Xが酸素原子または硫黄原子であり、mが1である。
【0075】
一般式(1A)、(1B)で表される新規化合物の一般的な合成スキームは下記のように表される。
すなわち、α位にメチレン部位を有する環状ケトンを塩基存在下、亜硝酸エステルと反応させることでオキシムを得ることができる。またこのオキシムに対して塩基存在下、カルボン酸クロリド又はスルホン酸クロリドと反応させることにより、一般式(1A)、(1B)で表されるオキシムエステルを得ることができる。
なお、下記式中、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。
【0076】
【化11】

【0077】
以下、本発明の特定オキシム化合物の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−105)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化12】

【0079】
【化13】

【0080】
【化14】

【0081】
【化15】

【0082】
【化16】

【0083】
【化17】

【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
【化20】

【0087】
【化21】

【0088】
【化22】

【0089】
【化23】

【0090】
【化24】

【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
【化28】

【0095】
【化29】

【0096】
【化30】

【0097】
上記例示化合物(A−1)〜(A−105)の中でも、365nmにおけるモル吸光係数向上の観点から、(A−1)から(A−18)、(A−24)から(A−59)、(A−81)から(A−89)が好ましく、(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−4)、(A−8)、(A−9)、(A−10)、(A−11)、(A−15)、(A−16)、(A−17)、及び、(A−18)がより好ましい。
なお、上記例示化合物のうち、(A−1)〜(A−18)、(A−38)〜(A−53)、(A−57)〜(A−59)、(A−66)〜(A−74)、(A−83)〜(A−87)、(A−90)〜(A−105)は新規化合物である。
【0098】
本発明における特定オキシム化合物は、350nm〜500nmの波長領域に極大吸収波長を有する。より好ましくは、360nm〜480nmの波長領域に吸収波長を有するものを挙げることができる。特に、365nm及び405nmにおける吸光度が高い。
上述した特定オキシム化合物は、365nmにおけるモル吸光係数が5000以上であることを特徴とする。また、特定オキシム化合物の365nm、又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、5000〜300,000であることが好ましく、10000〜300,000であることがより好ましく、20,000〜200,000であることが更に好ましい。
このように、特定オキシム化合物は、従来のオキシム系の化合物に比して、長波長領域に吸収を有する。したがって、365nmや405nmの光源で露光した際に、優れた感度を示すことになる。したがって、特定オキシム化合物を含有する本発明の重合性組成物は、高感度で硬化することがわかる。
【0099】
本明細書における特定オキシム化合物のモル吸光係数は、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用いて0.01g/Lの濃度で測定した値をいう。
【0100】
本発明に係る特定オキシム化合物のうち、前記一般式(1)で表されるオキシム化合物は、例えば、以下に示すスキームに従って合成することができるが、この方法に限定されるものではない。下記式におけるX、Y,及びRは既述の通りである。
下記スキームにおいて、出発物質であるカルボン酸は市販品のものもあるが、適切な化合物として市販品がない場合には、ヘテロアリール化合物とハロゲン化エステルとのウィリアムソンエーテル合成と、引き続いて水酸化ナトリウムなどを用いた加水分解により容易に合成することができる。
酸を用いたアシル化環化は、メタンスルホン酸中95℃で加熱攪拌することで完結する。環化は5〜7員環であれば効率よく進行する。オキシム化は塩基存在下、0℃で亜硝酸エステルと反応させることでオキシムを得ることができる。またこのオキシムに対して塩基存在下、0℃〜室温でカルボン酸クロリド又はスルホン酸クロリドと反応させることにより、対応するオキシムエステルを得ることができる。なお、下記スキームにおいて、X及びRはそれぞれ前記一般式(1)に示すものと同義であり、Yは塩素原子である。
【0101】
【化31】

【0102】
本発明における特定オキシム化合物は、既述の本発明の重合性組成物に加え、その光重合開始機能を利用して、以下に示す用途の硬化性材料にも適用することができる。
即ち、例えば、以下に例示する印刷インク材料(例えば、スクリーン印刷インク用、オフセットもしくはフレキソ印刷インク用、UV硬化インク用)、木材又は金属に対する、白色もしくは有色仕上げ用材料、粉末コーティング材料(特に、紙、木材、金属又はプラスチックに対するコーティング材料用)、建築物のマーキング用や道路マーキング用材料、写真複製手法用として、ホログラフ記録の記録材料、画像記録材料、有機溶媒もしくは水性アルカリで現像できる印刷版原版の記録層用材料、スクリーン印刷マスクの製造のための日光硬化性コーティング用材料、歯科充填用組成物、接着剤、感圧接着剤、積層用樹脂材料、液体及び乾燥薄膜双方のエッチングレジスト用材料、はんだレジスト用材料、電気めっきレジスト用材料、永久レジスト用材料、プリント回路板や電子回路用の光構成性誘電体用材料、様々な表示用材料、光学スイッチ用材料、光学格子(干渉格子)形成用材料、光回路の製造用材料、大量硬化(透明成形用型でのUV硬化)又はステレオリトグラフィ手法による三次元的物品の製造用材料(例えば、米国特許第4,575,330号明細書に記載されるような材料)、複合材料(例えば、所望であれば、ガラス繊維及び/又はその他の繊維ならびに他の助剤を含み得るスチレン系ポリエステル)その他の厚層組成物の製造用材料、電子部品及び集積回路のコーティング又は密封のためのレジスト用材料、光ファイバー形成用材料、光学レンズ(例えば、コンタクトレンズもしくはフレネルレンズ)製造のためのコーティング用材料、医用機器、補助具又はインプラントの製造や、例えば、ドイツ国特許第19,700,064号及び欧州特許第678,534号公報に記載のようなサーモトロピック特性を有するゲルの製造用材料などの各種の用途が挙げられる。
【0103】
また、本発明に係る特定オキシム化合物は、例えば、オキシムエステルがアシル基からなる場合には、ラジカル開始剤として機能するが、例えば、オキシムエステルがスルホニル基からなる場合には、エネルギー線、特に光の照射により酸を発生することも可能である。そのため、その発生した酸を触媒とする他の用途にも適用することができ、具体的には、発生した酸を触媒とする色素前駆体の発色反応を利用した画像形成、偽造防止、エネルギー線量検出のための材料、更には、発生した酸を触媒とする分解反応を利用した半導体製造用、TFT製造用、カラーフィルタ製造用、マイクロマシン部品製造用等のポジ型レジスト材料にも利用することができる。
【0104】
以上のように、本発明に係る特定オキシム化合物は光重合開始剤として用いることが可能であるため、重合性化合物と併用することで、光により重合硬化する重合性組成物(本発明の重合性組成物)に適用することが好ましい。
【0105】
本発明の光重合性組成物は、前記(A)特定オキシム化合物、及び、後述する(B)重合性化合物を含んで構成されるが、(A)特定オキシム化合物の機能により、波長365nmや405nmの光に対する感度が高く、保存安定性に優れ、更に、加熱経時による着色を抑制しうる硬化膜を形成することが可能である。この詳細な機構は不明であるが、本発明に係る(A)特定オキシム化合物は、その分子構造に起因して、光を吸収し、開裂した際のラジカル再結合が抑制されるため、発生ラジカル量が多く高感度化を達成することができるものと考えられる。また、ラジカル再結合が抑制されるために、加熱経時においては、特定オキシム化合物の分解生成物同士の反応が抑えられ、その反応に由来する着色が抑制されるものと考えられる。
即ち、イミノ基のα位にカルボニル基が存在する本発明の化合物によれば、着色要因となるイミノラジカルが引き続いてニトリルまで分解するため、露光後の着色が抑制される。また、環状化することによりイミノラジカルの分解効率が向上しており、ラジカル同士の再結合が効率よく抑制されているために、着色抑制に有効であると考えられる。
【0106】
本発明において、本発明の重合性組成物により形成された硬化膜の加熱経時による着色を評価するためには、色差ΔEabを用いればよい。ここで、色差ΔEabは、大塚電子(株)製MCPD−3000で測定することができる。
評価の際の条件としては、まず、本発明の重合性組成物を超高圧水銀灯プロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)、若しくは、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)(365nm)で10mJ/cm〜2,500mJ/cmの範囲の種々の露光量で露光し、硬化膜を形成する。そして、所望により現像を行った後、硬化膜を200℃で1時間加熱する。
この硬化膜の加熱前後の色差ΔEabを測定することで、硬化膜の加熱経時による着色状態を評価することができる。
本発明の光重合性組成物によれば、加熱前後の色差ΔEabを5以下とすることができる。
【0107】
以下に、本発明の光重合性組成物について、カラーフィルタの着色領域形成等に好適に用いうる重合性組成物(1)〔以下適宜、カラーフィルタ用光重合性組成物と称する。〕、及び、平版印刷版原版の感光層形成等に好適に用いうる重合性組成物(2)を例に詳細に説明するが、本発明の重合性組成物の用途は、既述のように、これらに限定されるものではない。
【0108】
−重合性組成物(1)−(カラーフィルタ用光重合性組成物)
カラーフィルタ用光重合性組成物は、カラーフィルタに用いる着色領域を形成する目的で使用されることから、(A)特定オキシム化合物。(B)重合性化合物に加え、(C)着色剤を含有する。以下、カラーフィルタ用光重合性組成物を構成する各成分について述べる。
〔(1)−(A)特定オキシム化合物〕
重合性組成物(1)が含有する(A)特定オキシム化合物は、組成物中、重合開始剤として機能する。(A)特定オキシム化合物の詳細は既述の通りである。
重合性組成物(1)における特定オキシム化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し0.5〜40質量%が好ましく、1〜35質量%がより好ましく、1.5〜30質量%が更に好ましい。
特定オキシム化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
(他の光重合開始剤)
重合性組成物(1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、前記特定オキシム化合物以外の公知の光重合開始剤を併用してもよい。この場合において、公知の光重合開始剤は、特定オキシム化合物の50質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
併用可能な光重合開始剤は、光により分解し、後述する重合性化合物の重合を開始、促進する化合物であり、波長300〜500nmの領域に吸収を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、有機ハロゲン化化合物、オキシジアゾール化合物、カルボニル化合物、ケタール化合物、ベンゾイン化合物、アクリジン化合物、有機過酸化化合物、アゾ化合物、クマリン化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、ビイミダゾール系化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、アシルホスフィン(オキシド)化合物が挙げられる。
【0110】
〔(1)−(B)重合性化合物〕
重合性組成物(1)に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0111】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0112】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0113】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0114】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0115】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0116】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0117】
CH=C(R)COOCHCH(R)OH (A)
(ただし、一般式(A)中、R及びRは、それぞれ、H又はCHを示す。)
【0118】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0119】
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0120】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、光重合性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、光重合性組成物に含有される他の成分(例えば、光重合開始剤、着色剤(顔料、染料)等、バインダーポリマー等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体などの硬質表面との密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0121】
重合性組成物(1)における重合性化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜20質量%がより好ましく、0.3〜15質量%が更に好ましい。
重合性化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0122】
〔(1)−(C)着色剤〕
重合性組成物(1)は(C)着色剤を含有することができる。着色剤を含有することにより、所望色の着色重合性組成物を得ることができる。
なお、重合性組成物(1)は、短波長の光源である365nmや405nmの光源に優れた感度を有する本発明の(A)重合開始剤である特定オキシム化合物を含有するため、着色剤を高濃度に含有する場合にも高感度に硬化することができる。
【0123】
重合性組成物(1)において用いられる着色剤は特に限定されるものではなく、従来公知の種々の染料や顔料を1種又は2種以上混合して用いることができ、これらは光重合性組成物の用途に応じて適宜選択される。本発明の光重合性組成物をカラーフィルタ製造に用いる場合であれば、カラーフィルタの色画素を形成するR、G、B等の有彩色系の着色剤(有彩色着色剤)、及びブラックマトリクス形成用に一般に用いられている黒色系の着色剤(黒色着色剤)のいずれをも用いることができる。
前記(A)特定オキシム化合物を含有する本発明の光重合性組成物は、露光量が少なくても高感度に硬化することができるため、光を透過し難い黒色着色剤を含有する光重合性組成物に、特に好ましく用いることができる。
【0124】
以下、重合性組成物(1)に適用しうる着色剤について、カラーフィルタ用途に好適な着色剤を例に詳述する。
有彩色系の顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができる。また、無機顔料であれ有機顔料であれ、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく細かいものの使用が好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均粒子径は、0.01μm〜0.1μmが好ましく、0.01μm〜0.05μmがより好ましい。
【0125】
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0126】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性の窒素原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性の窒素原子をもつ顔料は重合性組成物(1)中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、感光性重合成分と顔料との親和性の良さが影響しているものと推定される。
【0127】
本発明において好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
【0128】
C.I.ピグメント イエロー 11, 24, 108, 109, 110, 138, 139, 150, 151, 154, 167, 180, 185,
C.I.ピグメント オレンジ36, 71,
C.I.ピグメント レッド 122, 150, 171, 175, 177, 209, 224, 242, 254, 255, 264,
【0129】
C.I.ピグメント バイオレット 19, 23, 32,
C.I.ピグメント ブルー 15:1, 15:3, 15:6, 16, 22, 60, 66,
C.I.ピグメント ブラック 1
【0130】
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
また、ブラックマトリックス用の顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン単独又は混合が用いられ、カーボンブラックとチタンブラックとの組合せが好ましい。また、カーボンブラックとチタンブラックとの質量比は、分散安定性の観点から、100:0〜100:60の範囲が好ましい。
【0131】
またブラックマトリックス用顔料としてチタンブラックを用いることもできる。以下にチタンブラック分散物について詳述する。
チタンブラック分散物とは、色材としてチタンブラックを含有する分散物のことである。
重合性組成物にチタンブラックを、予め調製されたチタンブラック分散物として含むことでチタンブラックの分散性、分散安定性が向上する。
以下、チタンブラックについて説明する。
【0132】
−チタンブラック−
本発明で用いうるチタンブラックとは、チタン原子を有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007−302836号公報に示されるような撥水性物質での処理も可能である。
【0133】
チタンブラックの粒子の粒子径は特に制限は無いが、分散性、着色性の観点から、3〜2000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nmであり、更に好ましくは、20〜200nmである。
【0134】
チタンブラックの比表面積は、特に限定がないが、かかるチタンブラックを撥水化剤で表面処理した後の撥水性が所定の性能となるために、BET法にて測定した値が通常5〜150m/g程度、特に20〜100m/g程度であることが好ましい。
【0135】
チタンブラックの市販品の例としては例えば、三菱マテリアル社製チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M−C、13R、13R−N、赤穂化成(株)ティラック(Tilack)Dなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0136】
重合性組成物(1)において、着色剤が染料である場合には、組成物中に均一に溶解した状態の着色組成物を得ることができる。
重合性組成物(1)に含有される着色剤として使用できる染料は、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用として公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系等の染料が使用できる。
【0137】
また、水又はアルカリ現像を行うレジスト系の場合、現像により光未照射部のバインダー及び/又は染料を完全に除去するという観点では、酸性染料及び/又はその誘導体が好適に使用できる場合がある。
その他、直接染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、アゾイック染料、分散染料、油溶染料、食品染料、及び/又は、これらの誘導体等も有用に使用することができる。
【0138】
酸性染料は、スルホン酸やカルボン酸等の酸性基を有するものであれば特に限定されないが、有機溶剤や現像液に対する溶解性、塩基性化合物との塩形成性、吸光度、組成物中の他の成分との相互作用、耐光性、耐熱性等の必要とされる性能の全てを考慮して選択される。
以下に、酸性染料の具体例を挙げる。
例えば、acid black 24;acid blue 23,25,29,62,80,86,87,92,138,158,182,243,324:1;acid orange 8,51,56,63,74;acid red 1,4,8,34,37,42,52,57,80,97,114,143,145,151,183,217;acid violet 7;acid yellow 17,25,29,34,42,72,76,99,111,112,114,116,184,243;acidgreen 25等の染料及びこれらの染料の誘導体が好ましい。
また、上記以外の、アゾ系、キサンテン系、フタロシアニン系の酸性染料も好ましく、C.I.Solvent Blue 44、38;C.I.Solvent orange 45;Rhodamine B、Rhodamine 110等の酸性染料及びこれらの染料の誘導体も好ましく用いられる。
【0139】
なかでも、着色剤としては、トリアリルメタン系、アントラキノン系、アゾメチン系、ベンジリデン系、オキソノール系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、アンスラピリドン系から選ばれる着色剤であることが好ましい。
【0140】
重合性組成物(1)において使用しうる着色剤は、染料、若しくは、顔料であることが好ましい。とりわけ、平均粒子径(r)が、20nm≦r≦300nm、好ましくは25nm≦r≦250nm、特に好ましくは30nm≦r≦200nmを満たす顔料が望ましい。このような平均粒子径rの顔料を用いることにより、高コントラスト比であり、かつ高光透過率の赤色及び緑色の画素を得ることができる。ここでいう「平均粒子径」とは、顔料の一次粒子(単微結晶)が集合した二次粒子についての平均粒子径を意味する。
また、本発明において使用しうる顔料の二次粒子の粒子径分布(以下、単に「粒子径分布」という。)は、(平均粒子径±100)nmに入る二次粒子が全体の70質量%以上、好ましくは80質量%以上であることが望ましい。
【0141】
前記した平均粒子径及び粒子径分布を有する顔料は、市販の顔料を、場合により使用される他の顔料(平均粒子径は通常、300nmを越える。)と共に、好ましくは分散剤及び溶媒と混合した顔料混合液として、例えばビーズミル、ロールミル等の粉砕機を用いて、粉砕しつつ混合・分散することにより調製することができる。このようにして得られる顔料は、通常、顔料分散液の形態をとる。
【0142】
重合性組成物(1)に含有される着色剤の含有量としては、光重合性組成物の全固形分中、30質量%〜95質量%であることが好ましく、40質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が更に好ましい。
着色剤の含有量を上記範囲とすることで、重合性組成物(1)によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られる。また、光硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができるため、アルカリ現像の際の現像ラチチュードが狭くなることを防止することができる。
すなわち、本発明における重合開始剤である(A)特定オキシム化合物は、光吸収効率が高いことから、光重合性組成物中に着色剤を高濃度に含有する場合であっても、高感度で重合、硬化することができ、他の重合開始剤を用いた場合と比較し、顕著に感度向上効果が発揮される。
【0143】
〔(1)−(D)顔料分散剤〕
重合性組成物(1)が(C)着色剤としてチタンブラックや有機顔料などの顔料を含有する場合、該顔料の分散性を向上させる観点から、さらに(D)顔料分散剤を添加することが好ましい。
【0144】
本発明に用いうる顔料分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0145】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0146】
本発明に用いうる顔料分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050、4010、4165(ポリウレタン系)、EFKA4330、4340(ブロック共重合体)、4400、4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。
【0147】
これらの顔料分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0148】
重合性組成物(1)における(D)顔料分散剤の含有量としては、(C)着色剤である顔料100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部であることが更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料100質量部に対して、質量換算で5〜100部の範囲が好ましく、10〜80部の範囲であることがより好ましい。
また、顔料誘導体を併用する場合、顔料誘導体の使用量としては、顔料100質量部に対し、質量換算で1〜30部の範囲にあることが好ましく、3〜20部の範囲にあることがより好ましく、5〜15部の範囲にあることが特に好ましい。
【0149】
重合性組成物(1)において、(C)着色剤としての顔料を用い、(D)顔料分散剤をさらに用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤及び分散剤の含有量の総和が、重合性組成物を構成する全固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0150】
重合性組成物(1)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
以下、重合性組成物(1)が含有しうる任意成分について説明する。
【0151】
〔(1)−増感剤〕
重合性組成物(1)は、ラジカル開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、前記した(A)特定オキシム化合物に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0152】
重合性組成物(1)に用いられる増感剤としては、以下に列挙する化合物類に属しており、且つ、300nm〜450nmの波長領域に吸収波長を有するものが挙げられる。
即ち、例えば、多核芳香族類(例えば、フェナントレン、アントラセン、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、9,10−ジアルコキシアントラセン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、チオキサントン類(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、クロロチオキサントン)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、フタロシアニン類、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、アクリジンオレンジ、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)、ケトクマリン、フェノチアジン類、フェナジン類、スチリルベンゼン類、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン類、カルバゾール類、ポルフィリン、スピロ化合物、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、ミヒラーズケトンなどの芳香族ケトン化合物、N−アリールオキサゾリジノンなどのヘテロ環化合物などが挙げられる。
【0153】
重合性組成物(1)における増感剤のより好ましい例としては、下記一般式(e−1)で表される化合物が挙げられる。
【0154】
【化32】

【0155】
前記一般式(e−1)中、Aは硫黄原子又はNR50を表し、R50はアルキル基又はアリール基を表し、Lは隣接するA及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51及びR52はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R51及びR52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0156】
また、重合性組成物(1)に含有しうる好ましい増感剤としては、上記増感剤の他、下記一般式(II)で表される化合物、及び後述する一般式(III)で表される化合物から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらは一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0157】
【化33】

【0158】
一般式(II)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、一価の置換基を表し、R13、R14、R15及びR16は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の置換基を表す。nは0〜5の整数を表し、n’は0〜5の整数を表し、n及びn’が両方とも0となることはない。nが2以上である場合、複数存在するR11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。n’が2以上である場合、複数存在するR12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、一般式(II)において二重結合による異性体については、どちらかに限定されるものではない
【0159】
一般式(II)で表される化合物の好ましい具体例を以下に例示する。
なお、本明細書においては、化学式は簡略構造式により記載することもあり、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。
【0160】
【化34】

【0161】
【化35】

【0162】
前記一般式(III)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環又はヘテロ環を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R23)−を表し、Yは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R23)−を表す。R21、R22、及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、A、R21、R22、及びR23は、それぞれ互いに結合して、脂肪族性又は芳香族性の環を形成してもよい。
【0163】
前記一般式(III)において、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。R21、R22及びR23が一価の非金属原子を表す場合、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルケニル基、置換若しくは非置換の芳香族複素環残基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、置換若しくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
以下、前記一般式(III)で表される化合物の好ましい具体例を示す。
【0164】
【化36】

【0165】
重合性組成物(1)中における増感剤の含有量は、深部への光吸収効率と開始剤の分解効率の観点から、固形分換算で、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0166】
〔(1)−共増感剤〕
重合性組成物(1)は、更に共増感剤を含有することも好ましい。
本発明において共増感剤は、(A)特定オキシム化合物や前記増感剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、或いは、酸素による(B)重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
【0167】
このような共増感剤の例としては、アミン類、例えば、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等;チオール及びスルフィド類、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等;アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等);特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等);特公昭55−34414号公報記載の水素供与体;特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0168】
これら共増感剤の含有量は、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、重合性組成物(1)の全固形分の質量に対し、0.1質量%〜30質量%の範囲が好ましく、1質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、0.5質量%〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0169】
また、重合性組成物(1)は、共増感剤として、チオール化合物を含有することが好ましい。
重合性組成物(1)に含有しうるチオール化合物としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0170】
【化37】

【0171】
前記一般式(IV)中、Xは、硫黄原子、酸素原子又は−N(R43)−を表し、R43は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数6〜13のアリール基を表す。R41及びR42は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基、ニトロ基、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、アセチル基、又はカルボキシル基を表し、また、R41、R42及びこれらが結合している二重結合を併せてベンゼン環を形成してもよく、R41及びR42が結合している二重結合は、水素添加されていてもよい。
【0172】
以下、本発明に用いうるチオール化合物の好ましい具体例を、溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)への溶解度と共に示す。
なお、本明細書においては、化学式は簡略構造式により記載することもあり、特に元素や置換基の明示がない実線等は、炭化水素基を表す。また、下記具体例において、Meはメチル基を表す。
【0173】
【化38】

【0174】
【化39】

【0175】
【化40】

【0176】
重合性組成物(1)がチオール化合物を含有する場合、その含有量としては、重合成長速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、重合性組成物の全固形分の質量に対し、0.5質量%〜30質量%の範囲が好ましく、1質量%〜25質量%の範囲がより好ましく、3質量%〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0177】
〔(1)−バインダーポリマー〕
重合性組成物(1)においては、皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、更にバインダーポリマーを使用することができる。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭54−92723号公報、特開昭59−53836号公報、特開昭59−71048号公報に記載されているもの、すなわち、カルボキシル基を有するモノマーを単独或いは共重合させた樹脂、酸無水物を有するモノマーを単独或いは共重合させ酸無水物ユニットを加水分解若しくはハーフエステル化若しくはハーフアミド化させた樹脂、エポキシ樹脂を不飽和モノカルボン酸及び酸無水物で変性させたエポキシアクリレート等が挙げられる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4−カルボキシルスチレン等が挙げられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
また、同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0178】
アルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、先にあげたモノマー以外の他のモノマーを用いることもできる。他のモノマーの例としては、下記(1)〜(12)の化合物が挙げられる。
【0179】
(1)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、ビニルアクリレート、2−フェニルビニルアクリレート、1−プロペニルアクリレート、アリルアクリレート、2−アリロキシエチルアクリレート、プロパルギルアクリレート等のアルキルアクリレート。
【0180】
(3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、ビニルメタクリレート、2−フェニルビニルメタクリレート、1−プロペニルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−アリロキシエチルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、ビニルアクリルアミド、ビニルメタクリルアミド、N,N−ジアリルアクリルアミド、N,N−ジアリルメタクリルアミド、アリルアクリルアミド、アリルメタクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0181】
(5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0182】
(10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(12)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特開2002−309057号公報、特開2002−311569号公報等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0183】
これらの中で、側鎖にアリル基やビニルエステル基とカルボキシル基を有する(メタ)アクリル樹脂及び特開2000−187322号公報、特開2002−62698号公報に記載されている側鎖に二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂や、特開2001−242612号公報に記載されている側鎖にアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂が膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0184】
また、特公平7−12004号公報、特公平7−120041号公報、特公平7−120042号公報、特公平8−12424号公報、特開昭63−287944号公報、特開昭63−287947号公報、特開平1−271741号公報、特開平11−352691号公報等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーや、特開2002−107918号公報に記載される酸基と二重結合を側鎖に有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、欧州特許993966号明細書、欧州特許1204000号明細書、特開2001−318463号公報等に記載の酸基を有するアセタール変性ポリビニルアルコール系バインダーポリマーは、膜強度、現像性のバランスに優れており、好適である。
更にこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0185】
重合性組成物(1)で使用しうるバインダーポリマーの重量平均分子量としては、好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
これらのバインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0186】
バインダーポリマーの含有量は、重合性組成物(1)の全固形分中、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
【0187】
〔(1)−重合禁止剤〕
重合性組成物(1)においては、重合性組成物の製造中或いは保存中において、(B)重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0188】
熱重合防止剤の添加量は、重合性組成物(1)の全固形分に対し約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0189】
〔(1)−密着向上剤〕
重合性組成物(1)においては、形成された硬化膜の支持体などの硬質表面との密着性を向上させるために、密着向上剤を添加することができる。密着向上剤としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0190】
シラン系カップリング剤としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく挙げられ、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0191】
密着向上剤の添加量は、重合性組成物(1)の全固形分中0.5質量%〜30質量%が好ましく、0.7質量%〜20質量%がより好ましい。
【0192】
〔(1)−希釈剤〕
重合性組成物(1)は、希釈剤として、種々の有機溶剤を用いてもよい。
ここで使用する有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。
本発明の重合性組成物における有機溶剤に対する固形分の濃度は、2質量%〜60質量%であることが好ましい。
【0193】
〔(1)−その他の添加剤〕
更に、重合性組成物(1)に対しては、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、可塑剤、感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、重合性化合物とバインダーポリマーとの合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0194】
以上、重合性組成物(1)は、(A)特定オキシム化合物を含むことから、高感度で硬化し、かつ、保存安定性も良好であり、更に、加熱経時させた場合の着色を抑制することができる。また、重合性組成物(1)を硬質材料表面に適用して硬化させた場合には、該表面に対して高い密着性を示す。
このような重合性組成物(1)は、着色剤を大量に含有する場合でも、高感度でパターン形成が可能であり、基板との密着性に優れる点、形成された着色硬化膜が、繰り返し加熱或いは光照射を受けても着色、変色が抑制されることから、特に、カラーフィルタの着色領域を形成するのに有用であり、本発明の重合性組成物(1)は、カラーフィルタ用光重合性組成物として用いることが好ましい。
【0195】
−重合性組成物(2)−〔感光性平版印刷版原版用光重合性組成物〕
本発明の光重合性組成物は、パターン状の露光により露光領域が高感度で硬化して強固な被膜を形成することから、平版印刷版原版の感光層の形成に有用である。
以下、本発明の光重合性組成物を平版印刷版原版の感光層に適用する場合の好ましい態様について述べる。
〔(2)−(A)特定オキシム化合物〕
重合性組成物(2)が含有する特定オキシム化合物は、組成物中、重合開始剤として機能しうる。本態様における(A)特定オキシム化合物は、既述のものである。
重合性組成物(2)における(A)特定オキシム化合物の含有量は、該組成物の全固形分に対し0.5質量%〜40質量%が好ましく、1質量%〜35質量%がより好ましく、1.5質量%〜30質量%が更に好ましい。
特定オキシム化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0196】
(他の重合開始剤)
重合性組成物(2)においても、本発明の効果を損なわない範囲において、前記特定オキシム化合物以外の他の公知の重合開始剤を併用してもよい。
他の重合開始剤としては、例えば、(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)チオ化合物、(e)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(f)ケトオキシムエステル化合物、(g)ボレート化合物、(h)アジニウム化合物、(i)メタロセン化合物、(j)活性エステル化合物、(k)炭素ハロゲン結合を有する化合物等が挙げられる。より具体的には、例えば、特開2006−78749号公報の段落番号[0081]〜[0139]、等に記載される重合開始剤が挙げられる。
【0197】
〔(2)−(B)重合性化合物〕
重合性組成物(2)が含有する(B)重合性化合物としては、重合性組成物(1)にて既述した付加重合性化合物が同様に好ましいものとして挙げられる。
【0198】
これらの、付加重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な感材の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば次のような観点から選択される。
【0199】
感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と、強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感光スピードや、膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。
【0200】
また、感光層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。感光層中の付加重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じたり、感光層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感材成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じたり等の問題を生じうる。
【0201】
これらの観点から、付加重合性化合物の含有量は、重合性組成物(2)の全固形分に対して5質量%〜80質量%が好ましく、より好ましくは25質量%〜75質量%である。
また、これらの付加重合性化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0202】
〔(2)−バインダーポリマー〕
重合性組成物(2)は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。
【0203】
バインダーポリマーとしては、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」は特に限定的ではなく、いずれを使用してもよい。好ましくは水現像又は弱アルカリ水現像を可能とする、水又は弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。
【0204】
線状有機高分子重合体は、光重合性組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水又は有機溶剤現像剤の仕様に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号各公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等が挙げられる。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体が挙げられる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
また、特開2006−301565号公報における一般式(i)で表されるバインダーポリマーもまた好適な例として挙げることができる。
【0205】
バインダーポリマーは、重合性組成物(2)中に任意な量で混和させることができる。画像強度等の点からは、感光層を構成する全固形分に対して、好ましくは30質量%〜85質量%の範囲である。また、前記付加重合性化合物とバインダーポリマーとは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0206】
また、好ましい実施様態において、バインダーポリマーは実質的に水不溶でアルカリに可溶なものが用いられる。これにより、現像液として環境上好ましくない有機溶剤を用いないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。この様な使用法においてはバインダーポリマーの酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4meq/g〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は3,000〜50万の範囲である。より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
【0207】
〔(2)−増感剤〕
重合性組成物(2)は、(A)特定オキシム化合物等の重合開始剤とともに増感剤を含有することが好ましい。本発明において用いうる増感剤としては、分光増感色素、光源の光を吸収して重合開始剤と相互作用する染料又は顔料などが挙げられる。
好ましい分光増感色素又は染料の例としては、例えば、例えば、特開2006−78749号公報の段落番号[0144]〜[0202]、等に記載されるものが挙げられる。
【0208】
また、重合性組成物(2)に適用しうる増感剤としては、重合性組成物(1)の説明において既述したものも挙げられる。
【0209】
増感剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合性組成物(2)中の全重合開始剤と増感色素のモル比は100:0〜1:99であり、より好ましくは90:10〜10:90であり、最も好ましくは80:20〜20:80である。
【0210】
〔(2)−共増感剤〕
重合性組成物(2)には、感度を一層向上させる、或いは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
【0211】
共増感剤の例としては、硬重合性組成物(1)の説明において既述したものも挙げられる。また、これらの他、特開平6−250387号公報に記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)等も挙げられる。
【0212】
共増感剤を使用する場合には、重合性組成物(2)に含有される重合開始剤の総量100質量部に対して、0.01質量部〜50質量部使用するのが適当である。
【0213】
〔(2)−重合禁止剤〕
重合性組成物(2)は、該組成物の製造中或いは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0214】
熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0215】
〔(2)−(C)着色剤〕
更に、感光層の着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。多くの染料は光重合系感光層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては例えばフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
【0216】
〔(2)−その他の添加剤〕
更に、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
【0217】
可塑剤としては例えばジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0218】
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加もできる。
このような重合性組成物(2)を支持体上に塗布して感光層を形成することで、本発明の平版印刷版原版が得られる。本発明の平版印刷版原版については後述する。
【0219】
なお、重合性組成物(1)及び重合性組成物(2)として、本発明の重合性組成物の好ましい用途と、それぞれの用途に適した代表的な組成を述べたが、本発明の重合性組成物の用途はこれらに限定されず、重合硬化する種々の材料に好適に使用され、その設計に応じて、構成成分の添加量、その他の添加剤を種類と量などを調整して用いられる。
他の用途としては、例えば、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合材料、印刷インキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、カラーフィルタ用光重合性組成物、ブラックマトリクス用レジスト、プリント基板用レジスト、半導体製造用レジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト等、絶縁材、ホログラム材料、導波路用材料、オーバーコート剤、接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤等が挙げられ、これら種々の用途に利用することができる。
【0220】
[カラーフィルタ及びその製造方法]
次に、本発明のカラーフィルタ及びその製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物〔前記重合性組成物(1)〕を用いてなる着色パターンを有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0221】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物〔前記重合性組成物(1)〕を塗布して着色重合性組成物層を形成する工程(以下、適宜「重合性組成物層形成工程」と略称する。)と、前記重合性組成物層を、パターン状に露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の前記重合性組成物層を現像して未露光部を除去し、着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含むことを特徴とする。
【0222】
具体的には、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を、直接又は他の層を介して支持体(基板)上に塗布して、重合性組成物層を形成し(重合性組成物層形成工程)、所定のマスクパターンを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させ(露光工程)、現像液で現像することによって(現像工程)、各色(3色或いは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、本発明のカラーフィルタを製造することができる。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0223】
〔重合性組成物層形成工程〕
重合性組成物層形成工程では、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を塗布して着色重合性組成物からなる層を形成する。
【0224】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0225】
支持体上への本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物の塗布方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の塗布方法を適用することができる。
【0226】
カラーフィルタ用光重合性組成物の塗布膜厚としては、0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましく、0.2μm〜3μmが更に好ましい。
また、固体撮像素子用のカラーフィルタを製造する際には、カラーフィルタ用光重合性組成物の塗布膜厚としては、解像度と現像性の観点から、0.35μm〜1.5μmが好ましく、0.40μm〜1.0μmがより好ましい。
【0227】
支持体上に塗布されたカラーフィルタ用光重合性組成物は、通常、70℃〜110℃で2分〜4分程度の条件下で乾燥され、着色重合性組成物層が形成される。
【0228】
〔露光工程〕
露光工程では、前記重合性組成物層形成工程において形成された重合性組成物層をパターン状に露光する、パターン露光は、通常、マスクを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させる方法で行われるが、目的に応じて走査露光によるパターン露光が行割れる場合もある。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、i線等の紫外線が好ましく用いられ、高圧水銀灯がより好まれる。照射強度は5mJ/cm〜1500mJ/cmが好ましく10mJ/cm〜1000mJ/cmがより好ましく、10mJ/cm〜800mJ/cmが最も好ましい。
【0229】
〔現像工程〕
露光工程に次いで、アルカリ現像処理(現像工程)を行い、露光工程における光未照射部分をアルカリ水溶液に溶出させる。これにより、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は20秒〜90秒である。
【0230】
現像液に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0231】
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、上述した、着色重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0232】
以上説明した、着色光重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により硬化工程)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0233】
[固体撮像素子]
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えることを特徴とする。
本発明のカラーフィルタは、本発明のカラーフィルタ用光重合性組成物を用いているため、形成された着色パターンが支持体基板との高い密着性を示し、硬化した組成物は耐現像性に優れるため、露光感度に優れ、露光部の基板との密着性が良好であり、かつ、所望の断面形状を与える高解像度のパターンを形成することができる。従って、液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCD素子やCMOS等に好適である。つまり、本発明のカラーフィルタは、固体撮像素子に適用されることが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、例えば、CCDを構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0234】
[平版印刷版原版]
続いて、本発明の平版印刷版原版について説明する。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に本発明の重合性組成物(2)を含む感光層を有することを特徴とする。
本発明の平版印刷版原版を用いて印刷版を形成するには、本発明の重合性組成物(2)を、直接又は他の層を介して平版印刷版用支持体上に塗布して、光重合性組成物層を形成して平版印刷版原版を得て、該平版印刷版原版の感光層をパターン状に露光することで、露光部分だけを硬化させ、現像液で未露光領域を現像することによって、残存する感光層が印刷用のインク受容層となり、感光層が除去されて親水性の支持体が露出した領域が湿し水の受容領域となり、平版印刷版を得ることができる。
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて、保護層、中間層等の他の層を有してもよい。本発明の平版印刷版原版は、感光層に本発明の重合性組成物を含むことにより、感度が高く、経時安定性及び耐刷性に優れる。以下、本発明の平版印刷版原版を構成する各要素について説明する。
【0235】
<感光層>
感光層は、本発明の光重合性組成物を含む層である。具体的には、本発明の光重合性組成物の好適な態様の一つである前記重合性組成物(2)を、感光層形成用の組成物(以下、適宜、「感光層用組成物」と称する。)として用い、該組成物を含む塗布液を支持体上に塗布、乾燥して感光層を形成することができる。
【0236】
感光層用組成物を支持体上に塗布する際には、該組成物に含有させる各成分を、種々の有機溶剤に溶かして使用する。溶媒は、溶解性を考慮して適宜選択することができる。
塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0237】
感光層の支持体への塗布量は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響しうるもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するためいずれも好ましくない。
本発明の主要な目的である走査露光用平版印刷版原版用の感光層としては、塗布量は乾燥後の質量で0.1g/m〜10g/mの範囲が適当である。より好ましくは0.5g/m〜5g/mである。
【0238】
<支持体>
本発明の平版印刷版原版における支持体としては、表面が親水性の支持体が好ましい。親水性の支持体としては、平版印刷版に使用される従来公知の親水性支持体を制限なく使用することができる。
好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度に優れた表面を提供できるアルミニウム板は特に好ましい。
【0239】
アルミニウムの表面を有する支持体の場合には、粗面化(砂目立て)処理、珪酸ナトリウム、弗化ジルコニウムカリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、或いは陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
【0240】
アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸、硝酸等の電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。
【0241】
更に、粗面化したのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号公報に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、若しくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸又はそれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
さらに、陽極酸化処理を行った後に、シリケート処理などの親水化処理を行うことができる。また、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体及び共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)若しくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。
【0242】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版においては、感光層上に、更に、保護層を有することが好ましい。
保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られている。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0243】
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71モル%〜100モル%加水分解され、分子量が質量平均分子量で300から2400の範囲のものを挙げることができる。
【0244】
更に、保護層に他の機能を付与することもできる。例えば、露光に使う、350nmから450nmの光の透過性に優れ、かつ500nm以上の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料等)の添加により、感度低下を起こすことなく、セーフライト適性を更に高めることができる。
【0245】
〔他の層〕
その他、感光層と支持体との密着性向上や、未露光感光層の現像除去性を高めるための層を設けることを可能である。
例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物を感光層に添加したり、これらの化合物を含む下塗り層を支持体と感光層との間に設けたりすることにより、支持体と感光層との密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能である。
他方、ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーを感光層に添加したり、これらの化合物を含む下塗り層を設けたりすることにより、非画像部の現像性が向上し、耐汚れ性の向上が可能となる。
【0246】
〔製版〕
平版印刷版原版は、通常、画像露光して、露光部の感光層を硬化した後、現像液で感光層の未露光部を除去し、画像形成することで製版され、平版印刷版が得られる。
【0247】
本発明の平版印刷版原版に適用しうる露光方法は、公知の方法を制限なく用いることができる。本発明においては、(A)特定オキシム化合物を光重合開始剤として用いることから、望ましい露光光源の波長は350nmから450nmであり、具体的にはInGaN系半導体レーザーが好適である。
露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。また、感光層成分は、高い水溶性のものを使用することで、中性の水や弱アルカリ水に可溶とすることもできるが、このような構成の平版印刷版は印刷機上に装填後、機上で露光−現像するといった、湿式現像を経ることなく印刷可能な、所謂機上現像方式に適用することもできる。
【0248】
350〜450nmの入手可能なレーザー光源としては、ガスレーザー、固体レーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
なかでも、AlGaInN半導体レーザー(市販InGaN系半導体レーザー400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
【0249】
また、走査露光方式の平版印刷版露光装置としては、露光機構として内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式があり、光源としては上記光源から目的応じて選択し、利用することができる。
【0250】
本発明の平版印刷版原版に好適な現像液としては、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ溶液の濃度が0.1質量%〜10質量%、好ましくは0.5質量%〜5質量%になるように添加される。
【0251】
また、このようなアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号明細書及び同第3615480号明細書の各明細書に記載されているものを挙げることができる。
更に、特開昭50−26601号公報、同58−54341号公報、特公昭56−39464号公報、同56−42860号公報の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0252】
その他、平版印刷版原版の製版プロセスにおいては、必要に応じ、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面を加熱してもよい。このような加熱により、感光層中の画像形成反応が促進され、感度や耐刷性の向上や、感度の安定化といった利点が生じ得る。更に、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うことも有効である。通常現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。150℃以下であると、非画像部にかぶりの問題が生じない。現像後の加熱には非常に強い条件を利用する。通常は200℃〜500℃の範囲である。200℃以上であると十分な画像強化作用が得られ、500℃以下の場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題が生じない。
【実施例】
【0253】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準であり、「%」は、「質量%」である。
【0254】
まず、実施例に用いる特定オキシム化合物(特定化合物1〜特定化合物9)、及び、比較例に用いる比較化合物(比較化合物1〜比較化合物4)の詳細を示す。
【0255】
【化41】

【0256】
【化42】

【0257】
【化43】

【0258】
なお、前記表中に示される比較化合物1(商品名:IRGACURE OXE 01)及び比較化合物2(商品名:IRGACURE OXE 02)の構造は以下の通りである。
【0259】
【化44】

【0260】
上記一覧中の特定オキシム化合物である特定化合物1〜特定化合物9を以下に示す方法で合成した。
(合成例1:特定オキシム化合物である特定化合物1の合成)
1.出発物質である化合物Aの合成
4−ヒドロキシカルバゾール100g(0.546mol)をアセトン1Lに溶解させた。これに炭酸カリウム150.6g(1.09mol)とブロモ酢酸エチル100.2g(0.600mol)を一括添加して穏やかに5時間還流させた。1N塩酸2Lに晶析させろ過することで化合物(A)を134.5gで得た。
得られた化合物(A)30g(0.114mol)を、NMP2Lに溶解させ、85%水酸化カリウム30.1g(0.456mol)とヨウ化ナトリウム20.5g(0.137mol)を加えた。この反応液にエチルブロミド14.9g(0.137mol)を滴下して3時間50℃で攪拌した。この反応液を1N塩酸に滴下して、固体を濾取して40℃で5時間乾燥させることで化合物(A)を得た。
得られた化合物(A)を27.0gをメタンスルホン酸270mLに溶解させると、淡い茶色から黒褐色に溶液が変化する。これを95℃で3時間攪拌する。蒸留水1.5Lに晶析させ、固体を濾取したのち、NMP300mLに溶解させさらに蒸留水1.5Lに晶析させると73%収率で黄色固体である化合物(A)を得た。
得られた化合物(A)10.0gをクロロベンゼン200mLに加え、50℃で溶解させるとオレンジ色の透明液体となった。これに塩化アルミニウム10.5gを加えて10分間攪拌した後、o−トルイル酸クロリド6.1gを10分間かけて滴下した。3時間50℃で加熱攪拌したのち、冷1N塩酸1Lに滴下し、水層をデカントして除去したのちヘキサン200mLを加えて攪拌すると茶色の固体が析出する。これを濾取し水とメタノールで洗浄して、50℃で5時間乾燥させて、化合物Aを60%収率で得ることができた。
以下に、化合物Aの合成スキームを示す。
【0261】
【化45】

【0262】
2.特定化合物1の合成
上記のようにして得られた化合物A(1.0g、2.71mmol)をTHFに懸濁させ、0℃に冷却した。この懸濁液にt−ブトキシカリウム(0.36g、3.25mmol)を添加し室温下で1時間攪拌した。その間、化合物Aは溶解し、反応液は濃赤色となった。イソペンチルニトレート(0.38g, 3.25mmol)を加えてさらに1時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、1N塩酸水で洗浄したのち、硫酸マグネシウムと活性炭で脱水、脱色操作を行なった。酢酸エチル溶液をヘキサンに再沈殿させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製して化合物Bを0.21gで得た。
下記化合物B(0.3g、0.74mmol)を5mlのピリジンに溶解し、0℃に冷却してアセチルクロライド(0.87g、1.11mmol)を滴下後、室温に昇温して2時間攪拌した。反応液を0℃に冷却した1N塩酸水150mlに滴下し、析出した結晶をメタノールでリスラリー精製して下記構造の特定化合物1(収量0.11g)を得た。
【0263】
【化46】

【0264】
得られた特定化合物1の構造はNMRにて同定した。
(1H−NMR 400MHz 重クロロホルム):8.65(s,1H),8.20(dd,1H,J=8.4、1.5Hz),7.85(d, 1H、J=8.4Hz)、7.58(d,1H,J=8.7Hz),7.42−7.26(m,5H),4.49(q, 2H、J=7.2Hz)2.38(s,3H),2.29(s,3H).1.55(t,3H,7.2Hz)
特定化合物1の365nmにおけるモル吸光係数を記述の方法にて測定したところ、酢酸エチル中で5200であった。
【0265】
(合成例2:特定オキシム化合物である化合物2の合成)
1.化合物Cの合成
前記化合物Aの合成方法において用いたブロモ酢酸エチルをブロモ酪酸メチルに変更した以外はすべて同様の合成方法で化合物Cを合成した。
2.特定化合物2の合成
得られた化合物C(2.0g、5.03mmol)をTHFに溶解させ、0℃に冷却した。この懸濁液にt−ブトキシカリウム(0.68g、6.04mmol)を添加し室温下で1時間攪拌した。その間、化合物Cは溶解し、反応液は濃赤色となった。イソペンチルニトレート(0.71g,6.04mmol)を加えてさらに1時間攪拌した。酢酸エチルで抽出し、1N塩酸水で洗浄したのち、硫酸マグネシウムと活性炭で脱水、脱色操作を行なった。酢酸エチル溶液をヘキサンに再沈殿させ、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製して化合物Dを0.71gで得た。
上記化合物D(0.7g、1.64mmol)を5mlのピリジンに溶解し、0℃に冷却してアセチルクロライド(0.19g、2.46mmol)を滴下後、室温に昇温して2時間攪拌した。反応液を0℃に冷却した1N塩酸水150mlに滴下し析出した結晶を2−プロパノールでリスラリー精製することで下記構造の特定化合物 2(収量0.43g)を得た。
【0266】
【化47】

【0267】
得られた特定化合物2の構造はNMRにて同定した。
(1H−NMR 400MHz 重クロロホルム):8.87(s,1H),8.07(d,1H,J=7.8Hz),7.92(d,1H,J=7.8Hz)7.43−7.27(m,5H),7.15(d,1H,J=7.8Hz),4.67(t、2H、J=5.7Hz),4.41(q,2H,J=6.8Hz),3.40(t、2H、J=5.7Hz)、2.36(s,3H),2.27(s,3H),1.47(t,3H,J=6.8Hz).
【0268】
特定化合物2の365nmにおけるモル吸光係数を前記と同様にして測定したところ、酢酸エチル中で17800であった。
【0269】
なお、上記の合成例1〜合成例2と同様にして、前記一覧に記載の特定オキシム化合物である特定化合物3〜特定化合物9を合成した。
即ち、特定化合物3は、前記合成例1で用いた化合物(A)に代えて、化合物(A)の合成途上で得られる化合物(A)を出発物質として用いる他は、合成例1と同様の方法で合成される。
特定化合物4は、前記合成例2において、中間体である化合物(C)の合成に用いたo−トルイル酸クロリドに代えて、p−ブロモベンゾイルクロリドを用いること以外は合成例2と同様にして合成される。
特定化合物5は、前記合成例2において、中間体である化合物(C)の合成に用いたo−トルイル酸クロリドに代えてp−フルオロベンゾイルクロリドを用い、その後、モルホリンでフッ素を置換する工程を行った以外は、合成例2と同様の方法で合成される。
特定化合物6〜特定化合物9は、前記と同様の方法で合成可能である。
【0270】
(合成例3:例示化合物(A−62)の合成)
前記特定化合物1の合成法において、出発物質である化合物Aの合成に用いた4−ヒドロキシカルバゾールに換えて、2−ヒドロキシカルバゾールを用いた以外はすべて合成例1と同様の操作により、前記一般式(1B)に包含される下記記例示化合物(A−62)を得た。
【0271】
【化48】

【0272】
(合成例4:例示化合物(A−69)の合成)
前記特定化合物2の合成法において、出発物質である化合物Cの合成に用いた4−ヒドロキシカルバゾールに換えて、2−ヒドロキシカルバゾールを用いた以外はすべて合成例2と同様の操作により、前記一般式(1B)に包含される下記記例示化合物(A−69)を得た。
【0273】
【化49】

【0274】
[実施例1−1]
<光重合性組成物1の調製及び評価>
光重合性組成物1を以下のように調製し、その感度を評価した。
特定オキシム化合物として前記特定化合物1を0.08mmol、ラジカル重合性化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレートを1g、バインダー樹脂としてポリメチルメタクリレート(Aldrich社製、分子量c.a.996000)1g、及び、溶剤としてシクロヘキサノン16gを含有する均一な組成物を調製した。
得られた重合性組成物1を塗液として用い、これをガラス板上にスピンコーターにて塗工して、40℃で10分間乾燥し、1.5μmの膜厚の塗工膜を形成した。この塗工膜上に21√2ステップタブレット(大日本スクリーン製造(株)製のグレイスケールフィルム)を置き、ウシオ電機(株)製の500mWの高圧水銀ランプの光を、熱線カットフィルターを介して30秒間露光した後、トルエン中に60秒間含浸させて現像処理を行った。
ステップタブレットに対応した完全に硬化して不溶化した段数を感度として評価したところ、感度は7段であった。
なお、感度段数は数字が大きいほど感度が高いことを示す。
【0275】
[実施例1−2〜実施例1−9、及び比較例1−1〜比較例1−4]
実施例1−1において、特定オキシム化合物として用いた特定化合物1:0.08mmolを、前記一覧に示した各化合物(特定化合物2〜特定化合物9及び比較化合物1〜比較化合物4):各0.08mmolにそれぞれ置き替えた他は、実施例1−1と全く同一の操作で光重合性組成物2〜光重合性組成物13をそれぞれ調製し、実施例1−1と同様にして感度段数を評価した。
実施例1−1〜1−9、及び比較例1−1〜比較例1−4の評価結果を下記表1に示す。
【0276】
【表1】

【0277】
[実施例2−1]
〔1.着色光重合性組成物A−1の調製〕
カラーフィルタ形成用光重合性組成物として、着色剤(顔料)を含有するネガ型の着色光重合性組成物A−1を調製し、これを用いてカラーフィルタを作製した。
【0278】
1−1.顔料分散液(P1)の調製
顔料としてC.I.ピグメント グリーン36と、C.I.ピグメント イエロー219との30/70(質量比)混合物40質量部、分散剤としてBYK2001〔Disperbyk :ビックケミー(BYK)社製、固形分濃度45.1質量%〕10質量部(固形分換算約4.51質量部)、及び、溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル150質量部からなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、顔料分散液(P1)を調製した。
【0279】
得られた顔料分散液(P1)について、顔料の平均粒径を動的光散乱法により測定したところ、200nmであった。
【0280】
1−2.着色光重合性組成物A−1(塗布液)の調製
下記組成A−1の成分を混合して溶解し、着色光重合性組成物A−1を調製した。
【0281】
<組成A−1>
・顔料分散液(P1) 600質量部
・アルカリ可溶性樹脂 200質量部
(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート
共重合体、mol比:80/10/10、Mw:10,000)
・多官能性単量体:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 60質量部
・特定オキシム化合物:特定化合物1 60質量部
・溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1,000質量部
・界面活性剤(商品名:テトロニック150R1、BASF社) 1質量部
・γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン 5質量部
【0282】
〔2.カラーフィルタの作製〕
2−1.着色光重合性組成物層の形成
上記により得られた顔料を含有する着色光重合性組成物A−1をレジスト溶液として、550mm×650mmのガラス基板に下記条件でスリット塗布した後、10分間そのままの状態に保持し、真空乾燥とプレベーク(prebake)(100℃80秒)を施して光重合性組成物塗膜(着色光重合性組成物層)を形成した。
【0283】
(スリット塗布条件)
塗布ヘッド先端の開口部の間隙:50μm
塗布速度:100mm/秒
基板と塗布ヘッドとのクリヤランス:150μm
塗布厚(乾燥厚):2μm
塗布温度:23℃
【0284】
2−2.露光、現像
その後、2.5kWの超高圧水銀灯を用いて、着色光重合性組成物層をパターン状に露光した。露光後の着色光重合性組成物層の全面を、有機系現像液(商品名:CD、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)の10%水溶液で被い、60秒間静止した。
【0285】
2−3.加熱処理
その後、着色光重合性組成物層上に純水をシャワー状に噴射して現像液を洗い流し、次いで、220℃のオーブンにて1時間加熱した(ポストベーク)。これにより、ガラス基板上に着色パターンを有するカラーフィルタを得た。
【0286】
〔3.性能評価〕
着色光重合性組成物の保存安定性及び露光感度、着色光重合性組成物を用いてガラス基板上に着色パターンを形成した際の現像性、得られた着色パターンの加熱経時での着色、基板密着性、パターン断面形状及び後加熱パターン断面形状について、下記のようにして評価した。評価結果をまとめて表2に示す。
【0287】
3−1.着色光重合性組成物の保存安定性
着色光重合性組成物を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0288】
3−2.着色光重合性組成物の露光感度
着色光重合性組成物を、ガラス基板上にスピンコート塗布後、乾燥して膜厚1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpmで5秒の後、800rpmで20秒とし、乾燥条件は100℃で80秒とした。次に、得られた塗膜を、線幅2.0μmのテスト用のフォトマスクを用い、超高圧水銀灯を有すプロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)により、10mJ/cm〜1600mJ/cmの種々の露光量で露光した。次に、60%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、露光後の塗膜を、25℃、60秒間の条件で現像した。その後、流水で20秒間リンスした後、スプレー乾燥しパターニングを完了した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0289】
3−3.現像性、パターン断面形状、基板密着性
「2−3.加熱処理」においてポストベークを行った後の基板表面及び断面形状を、光学顕微鏡及びSEM写真観察により通常の方法で確認することにより、現像性、基板密着性、強制加熱経時での着色変化、及びパターン断面形状の評価を行った。評価方法の詳細は以下の通りである。
【0290】
<現像性>
露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった
×:未露光部に、残渣が著しく確認された
【0291】
<基板密着性>
基板密着性は、パターン欠損が発生しているか否かを観察し、下記基準に基づいて評価した。
−評価基準−
○:パターン欠損がまったく観察されなかった
△:パターン欠損がほとんど観察されなかったが、一部分欠損が観察された
×:パターン欠損が著しく多く観察された
【0292】
<強制加熱経時での着色評価>
露光、及び現像後の光重合性組成物層(着色パターン)を、ホットプレートで200℃、1時間加熱し、下記基準に基づいて加熱前後の色差ΔEabを、大塚電子(株)製MCPD−3000で評価した。
−評価基準−
○:ΔEab≦5
△:5<ΔEab<8
×:ΔEab≧8
【0293】
<パターン断面形状>
形成されたパターンの断面形状を観察して評価した。パターンの断面形状は、矩形が最も好ましく、順テーパーが次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
<後加熱パターン断面形状>
「2−3.加熱処理」においてポストベークを行った後形成されたパターンの断面形状を観察して評価した。パターンの断面形状は矩形が最も好ましく、順テーパーが次に好ましい。逆テーパーは好ましくない。
【0294】
[実施例2−2〜2−17、比較例2−1〜2−3]
実施例2−1での着色光重合性組成物A−1の調製に用いた組成A−1において、特定化合物1(特定オキシム化合物)60質量部を下記表2に示される各化合物及び量に代え、実施例2−10〜2−17については、更に、増感剤、共増感剤を下記表2に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例2−1と同様にして、着色光重合性組成物A−2〜A−17及びA’−1〜A’−3を調製し、カラーフィルタを得た。更に、実施例2−1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0295】
【表2】

【0296】
前記表2、及び、下記表3〜表8において、「重合開始剤」欄中の「特定化合物」欄の数値1〜9は、特定化合物1〜特定化合物9を示し、「比較化合物」欄の数値1〜3は、比較化合物1〜比較化合物3を示す。
前記表2中に示される、増感剤の種類A1〜A3、共増感剤の種類F1〜F3、及びLD−5は、以下に示す化合物である。
【0297】
【化50】

【0298】
表2の結果から、特定オキシム化合物(特定化合物1〜特定化合物9)を含有する各実施例の着色光重合性組成物は保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの着色光重合性組成物は露光感度が高く、カラーフィルタの着色パターンの形成に用いた際の現像性に優れ、得られた着色パターンの加熱経時での着色がなく、また、基板密着性、パターン断面形状及び後加熱パターン断面形状のいずれにも優れていることが判る。
【0299】
[実施例3−1]
〔1.レジスト液の調製〕
下記組成の成分を混合して溶解し、レジスト液を調製した。
−レジスト液の組成−
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
19.20質量部
・乳酸エチル 36.67質量部
・樹脂 30.51質量部
〔メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸/メタクリル酸−2−ヒドロキシ
エチル共重合体(モル比=60/22/18)の40%PGMEA溶液〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合性化合物)
12.20質量部
・重合禁止剤(p−メトキシフェノール) 0.0061質量部
・フッ素系界面活性剤 0.83質量部
(F−475、大日本インキ化学工業(株)製)
・光重合開始剤 0.586質量部
〔TAZ−107(トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤)、
みどり化学(株)製〕
【0300】
〔2.下塗り層付シリコンウエハー基板の作製〕
6inchシリコンウエハーをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハー上に前記レジスト液を乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハー基板を得た。
【0301】
〔3.着色光重合性組成物B−1の調製〕
下記組成B−1の化合物を混合して溶解し、着色剤(染料)を含有する着色光重合性組成物B−1を調製した。
【0302】
<組成B−1>
・シクロヘキサノン 80質量部
・着色剤 C.I.Acid Blue 108 7.5質量部
・着色剤 C.I.ソルベントイエロー162 2.5質量部
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 7.0質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 2.5質量部
・グリセロールプロポキシレート 0.5質量部
〔数平均分子量Mn:1,500、モル吸光係数ε=0〕
【0303】
〔4.着色光重合性組成物B−1(塗布液)の保存安定性評価〕
着色光重合性組成物B−1を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。結果を下記表3に示す。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0304】
〔5.着色光重合性組成物B−1によるカラーフィルタの作製及び評価〕
前記3.で調製した着色光重合性組成物B−1を、前記2.で得られた下塗り層付シリコンウエハー基板の下塗り層上に塗布し、光硬化性の塗布膜を形成した。そして、この塗布膜の乾燥膜厚が0.9μmになるように、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長でパターンが2μm四方のIslandパターンマスクを通して10〜1600mJ/cmの露光量で照射した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハー基板をスピン・シャワー現像機〔DW−30型、(株)ケミトロニクス製〕の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハー基板上に着色パターンを形成した。
【0305】
着色パターンが形成されたシリコンウエハー基板を真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハー基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
以上のようにして、基板上に着色パターンが形成されたカラーフィルタを得た。
【0306】
<露光感度、及びパターンサイズ>
露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
またその際の、測長SEM「S−9260A」(日立ハイテクノロジーズ(株)製)を用いて、着色パターンのサイズを測定した。パターンサイズが2μmに近いほど、硬化性が充分で感度が良好であることを示す。
結果を下記表3に示す。
【0307】
<現像性、加熱経時での着色、基板密着性、パターン断面形状、後加熱パターン断面形状の評価>
現像性、加熱経時での着色、基板密着性、パターン断面形状及び後加熱パターン断面形状の評価は、実施例2−1に対して行った評価方法及び評価基準に基づいて行った。結果を下記表3に示す。
【0308】
[実施例3−2〜3−17、比較例3−1〜3−3]
実施例3−1において、着色光重合性組成物B−1の調製に用いた組成B−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)2.5質量部を下記表3に示される各化合物及び量に代え、更に実施例3−10〜実施例3−17については、下記表3に示される増感剤、共増感剤を下記表3に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例3−1と同様にして、着色光重合性組成物B−2〜B−17及びB’−1〜B’−3を調製し、カラーフィルタを得た。更に、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表3に示す。
【0309】
【表3】

【0310】
前記表3に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0311】
[実施例3−18]
下記組成C−1の化合物を混合して溶解し、着色剤(顔料)を含有する着色光重合性組成物C−1を調製した。
【0312】
<組成C−1>
・3−エトキシプロピオン酸エチル〔溶剤〕 17.9質量部
・着色剤 C.I.PigmentRed 254の分散液 26.7質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・着色剤 C.I.PigmentYellow 139の分散液 17.8質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 3.5質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 0.5質量部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体 2.0質量部
(モル比=70/30)
【0313】
[実施例3−19〜3−34、比較例3−4〜3−6]
実施例3−18において、着色光重合性組成物C−1の調製に用いた組成C−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)0.5質量部を、下記表4に示される各化合物及び量に代え、更に、実施例3−27〜実施例3−34については、下記表4に示される増感剤及び共増感剤を下記表4に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例3−18と同様にして、着色光重合性組成物C−2〜C−17及びC’−1〜C’−3を調製した。
【0314】
得られた各着色光重合性組成物について、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表4に示す。
【0315】
【表4】

【0316】
なお、前記表4に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0317】
[実施例3−35]
下記組成D−1の化合物を混合して溶解し、着色剤(顔料)を含有する着色光重合性組成物D−1を調製した。
【0318】
<組成D−1>
・3−エトキシプロピオン酸エチル〔溶剤〕 17.9質量部
・着色剤 C.I.PigmentRed 254の分散液
33.34質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・着色剤 C.I.PigmentYellow 139の分散液
22.23質量部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・ラジカル重合性モノマー(重合性化合物) 2.5質量部
〔ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトール
ヘキサアクリレートとの3:7の混合物〕
・特定化合物1(特定オキシム化合物) 0.5質量部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体 2.0質量部
(モル比=70/30)
【0319】
[実施例3−36〜実施例3−51、比較例3−7〜比較例3−9]
実施例3−35において、着色光重合性組成物D−1の調製に用いた組成D−1中の特定化合物1(特定オキシム化合物)0.5質量部を、下記表5に示される各化合物及び量に代え、更に、実施例3−44〜実施例3−51については、下記表5に示される増感剤及び共増感剤を下記表5に示される種類及び量で加えた以外は、すべて実施例3−35と同様にして、着色光重合性組成物D−2〜D−17及びD’−1〜D’−3を調製した。
【0320】
得られた各着色光重合性組成物について、実施例3−1と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0321】
【表5】

【0322】
なお、前記表5に示される、増感剤A1〜A3、共増感剤F1〜F3、及びLD−5は前記した化合物である。
【0323】
表3〜表5の結果から、特定オキシム化合物(特定化合物1〜特定化合物9)を含有する各実施例の着色光重合性組成物は保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの着色光重合性組成物は露光感度が高く、カラーフィルタの着色パターンの形成に用いた際の現像性に優れ、得られた着色パターンの加熱経時での着色がなく、また、基板密着性、パターン断面形状及び後加熱パターン断面形状のいずれにも優れていることが判る。
また、表5に明らかなように、顔料の含有量が多い場合であっても、優れた露光感度を有することが分かる。
【0324】
[実施例4−1〜4−38、比較例4−1〜4−12]
〔黒色光重合性組成物の調製〕
<カーボンブラック分散液Aの調製>
下記組成1を二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。この際の分散物の粘度は70,000mPa・sであった。
その後、この分散物に下記組成2を添加し、3,000rpmの条件でホモジナイザーを用いて3時間攪拌した。得られた混合溶液を、0.3mmジルコニアビーズを用いた分散機(商品名:ディスパーマット GETZMANN社製)にて4時間微分散処理を施して、カーボンブラック分散液A(以下、CB分散液Aと表記する。)を調製した。この際の、混合溶液の粘度は37mPa・sであった。
【0325】
(組成1)
・平均一次粒径15nmカーボンブラック(PigmentBlack7) 23質量部
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45%溶液 22質量部
(BzMA/MAA=70/30 Mw:30,000)
・ソルスパース5000(ゼネカ社製) 1.2質量部
【0326】
(組成2)
・ベンジルメタアクリレート/メタアクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート45%溶液 22質量部
(BzMA/MAA=70/30 Mw:30,000)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200質量部
【0327】
<チタンブラック分散液Aの調製>
下記組成3を二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。この際の分散物の粘度は40,000mPa・sであった。
なお、高粘度分散処理の前にニーダーで30分混練することを行ってもよい。
【0328】
(組成3)
・平均一次粒径75nmチタンブラック13M−C 39質量部
(三菱マテリアルズ(株)製)(ピグメント ブラック35)
・ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 8質量部
(BzMA/MAA=70/30、Mw:30,000、固形分40質量%)
・ソルスパース5000(ゼネカ社製) 1質量部
【0329】
得られた分散物に、下記成分4を添加し、3,000rpmの条件でホモジナイザーを用いて3時間攪拌した。得られた混合溶液を、0.3mmジルコニアビーズを用いた、分散機(商品名:ディスパーマット GETZMANN社製)にて4時間微分散処理を施して、チタンブラック分散液A(以下、TB分散液Aと表記する。)を得た。
この際の、混合溶液の粘度は7.0mPa・sであった。
【0330】
(組成4)
・ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液 8質量部
(BzMA/MAA=70/30Mw:30,000、固形分40質量%)
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 200質量部
【0331】
<黒色光重合性組成物E−1〜E−18、及びE’−1〜E’−6の調製>
下記組成E−aの成分を攪拌機で混合して黒色光重合性組成物E−1〜E−18、及びE’−1〜E’−6を調製した。
【0332】
(組成E−a)
・メタクリレート/アクリル酸共重合体(アルカリ可溶樹脂) 1.6質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.3質量部
・エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート 0.8質量部
・前記CB分散液A、又は前記TB分散液A 24質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
・エチル−3−エトキシプロピオネート 8質量部
・下記表6に記載の化合物:特定オキシム化合物又は比較化合物
下記表6に記載の量
・共増感剤:前記F3 添加なし、又は0.1質量部
【0333】
<黒色光重合性組成物E−19〜E−38、及びE’−7〜E’−12の調製>
下記組成E−bの成分を攪拌機で混合して黒色光重合性組成物E−19〜E−38、及びE’−7〜E’−12を調製した。
【0334】
(組成E−b)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 2.3質量部
・前記CB分散液A、又は前記TB分散液A 24質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 10質量部
・エチル−3−エトキシプロピオネート 8質量部
・下記表7に記載の化合物:特定オキシム化合物又は比較化合物
下記表7に記載の量
・共増感剤:前記F3 添加なし、又は0.1質量部
【0335】
〔評価〕
上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を用いて、以下のような評価を行った。その結果を表6及び表7にまとめて示す。
【0336】
−露光感度評価−
まず、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の露光感度を、下記の方法で求めて、評価した。
【0337】
黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を用いて、塗布後に表面温度120℃で120秒間ホットプレートでの加熱処理後の膜厚が1.0μmになるようにスピンコートの塗布回転数を調整し、シリコンウエハー上に均一に塗布して1.0μmの塗膜を得た。
次いで、i線ステッパー、FPA−3000iS+(キャノン(株)製)を使用して、10nmのL&S(ラインアンドスペース)のパターンが描かれてあるマスクを介して、100〜5,100mJ/cmの範囲の露光量を、100mJ/cmの刻みで変化させて照射した。
照射後に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)0.3%水溶液を用いて、23℃にて60秒間パドル現像を行い、その後、純水を用いて20秒スピンシャワーにて、リンスを行い、更に純水にて水洗を行った。その後、付着した水滴を高度のエアーで除去し、基板を自然乾燥させ、黒色画像パターンを得た。
得られた各着色画像パターンについて、光学顕微鏡を用いて下記の基準で評価した。
【0338】
上記の露光工程において光が照射された領域の現像後の膜厚が、露光前の膜厚100%に対して95%以上であった最小の露光量を測定し、これを露光感度として評価した。
露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0339】
−保存安定性(経時安定性)評価−
また、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の保存安定性(経時安定性)について、下記の方法で評価した。
即ち、黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12を室温で1ヶ月保存した後、異物の析出度合いを下記判定基準に従って目視により評価した。
−判定基準−
○:析出は認められなかった。
△:僅かに析出が認められた。
×:析出が認められた。
【0340】
−現像性評価−
更に、上記のようにして得られた黒色光重合性組成物E−1〜E−38、及びE’−1〜E’−12の現像性について、下記の方法で評価した。
即ち、上記感度評価の際の露光工程において、光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無を観察し、現像性を評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
○:未露光部には、残渣がまったく確認されなかった
△:未露光部に、残渣がわずかに確認されたが、実用上問題のない程度であった
×:未露光部に、残渣が著しく確認された
【0341】
【表6】

【0342】
【表7】

【0343】
表6及び表7に明らかなように、特定オキシム化合物を含有する各実施例の黒色光重合性組成物は、保存安定性(経時安定性)に優れたものであることが判る。また、これらの黒色光重合性組成物は比較例に比べ露光感度が高く、また、未露光部の現像性に優れることから、少ない露光量であっても良好な黒色パターン(着色パターン)を形成しうることが判る。
【0344】
[実施例5]
<フルカラーのカラーフィルタの作製>
前記実施例4−1で作製した黒色画像パターンをブラックマトリックスとし、該ブラックマトリックス上に、前記着色光重合性組成物A−1を用いて、実施例3−1に記載の方法と同じ要領で1.6×1.6μmの緑色(G)の着色パターンを形成した。
さらに、前記着色光重合性組成物A−1について、顔料(C.I.ピグメント グリーン36と、C.I.ピグメント イエロー219との30/70〔質量比〕混合物)のみを、青色顔料(C.I.ピグメント ブルー15:6とC.I.ピグメント バイオレット23との30/70〔質量比〕混合物)と赤色顔料(C.I.ピグメント レッド254)とにそれぞれ変更した他は同様にして青色(B)、赤色(R)の着色光重合性組成物を調製した。
上記基板にまず、緑色(G)光重合性組成物A−1で実施したのと同様にして1.6×1.6μmの青色(B)、赤色(R)パターンを順次形成して固体撮像素子用のカラーフィルタを作製した。
【0345】
得られたフルカラーのカラーフィルタについて、実施例2−1と同じ方法で、黒色画像パターンとRGB各色の着色パターン、それぞれの断面形状及び基板密着性について評価したところ、いずれのパターンも矩形であり、またいずれもパターン欠損が無く、基板密着性に優れていることがわかった。
【0346】
[実施例6]
<固体撮像素子の作製>
実施例5にて得られたフルカラーのカラーフィルタを固体撮像素子に組み込んだところ、該固体撮像素子は、高解像度で、色分離性に優れることが確認された。
【0347】
[実施例7−1〜7−15、比較例7−1〜7−4]
<支持体の作製>
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を8号ナイロンブラシと800メッシュのパミストンの水懸濁液を用い、その表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で、水洗後、20%HNOで中和洗浄、水洗した。このアルミニウム板を、VA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ0〜45μm(Ra表示)であった。ひき続いて、アルミニウム板を30%のHSO水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、33℃、20%H2SO4水溶液中で、砂目立てした面に陰極を配置して、電流密度5A/dmにおいて50秒間陽極酸化したところ、厚さが2.7g/mであった。
以上のようにして、平版印刷版原版用の支持体A−1を得た。
【0348】
<感光層の形成>
得られた支持体上に、下記組成の感光層用塗布液を、乾燥塗布量が1.4g/mとなるように塗布し、95℃で乾燥し、感光層を形成した。
【0349】
−感光層用塗布液組成−
・付加重合性化合物(表8に記載のM、N、又はO) 0.80質量部
・バインダーポリマー(表8に記載のB1、B2、又はB3) 0.90質量部
・増感剤(表8に記載のA1、A2、又はA3) 添加なし又は0.10質量部
・下記表8に記載の化合物:特定オキシム化合物、比較化合物又はLD−5
0.05質量部
・共増感剤(表8に記載の前記F2又は前記F3) 添加なし又は0.25質量部
・フッ素系界面活性剤 0.02質量部
(メガファックF−177:大日本インキ化学工業(株)製)
・熱重合禁止剤 0.03質量部
(N−ニトロソヒドロキシルアミンアルミニウム塩)
・ε型の銅フタロシアニン分散物 0.2質量部
・メチルエチルケトン 16.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 16.0質量部
【0350】
<保護層の形成>
得られた感光層上に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度550)の3質量%の水溶液を乾燥塗布質量が2g/mとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥して保護層を形成した。
【0351】
以上のようにして、実施例の平版印刷版原版及び比較例の平版印刷版原版を得た。
【0352】
<製版>
平版印刷版原版に対して、以下の露光・現像処理を行った。
【0353】
(露光)
平版印刷版原版を、波長405nmのバイオレットLD(FFEI社製バイオレットボクサー)で50μJ/cmの露光量で、4,000dpiにて175線/インチの条件でベタ画像と1〜99%の網点画像(1%刻み)を走査露光した。
【0354】
(現像)
下記現像液1及びフィニッシングガム液「FP−2W」(富士フイルム(株)製)を仕込んだ自動現像機(富士フイルム製LP−850P2)で標準処理を行った。プレヒートの条件は版面到達温度が100℃、現像液温は30℃、現像液への浸漬時間は約15秒であった。
【0355】
現像液1は下記組成よりなり、pHは25℃で11.5であり、導電率は5mS/cmであった。
【0356】
−現像液1の組成−
・水酸化カリウム 0.15g
・ポリオキシエチレンフェニルエーテル(n=13) 5.0g
・キレスト400(キレート剤) 0.1g
・水 94.75g
【0357】
[評価]
実施例及び比較例の平版印刷版原版の、感度、保存安定性及び形成された画像部の耐刷性について、下記の方法で評価した。結果を表8にまとめて記載する。
【0358】
1.感度の評価
平版印刷版原版を、上記の条件で露光し、その直後に上記の条件にて現像して画像形成を行い、その際の50%網点の面積%を網点面積測定器(グレタグーマクベス)で測定した。数字が大きいほど感度が高いことを示す。
【0359】
2.画像部耐刷性試験
印刷機として、ローランド社製「R201」を使用し、インキとして大日本インキ化学工業(株)製の「GEOS−G(N)」を使用して、平版印刷版原版を用い印刷を行った。ベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数によって耐刷性を調べた。数字が多いほど耐刷性がよいことを示す。
【0360】
3.強制経時変化量(保存安定性)の評価
平版印刷版原版の各々を、合紙とともにアルミクラフト紙で密閉し、60℃で4日放置したものを用いた以外は、感度評価時とすべて同じ方法で網点面積測定を行った。次に、60℃、4日放置有りの網点面積と60℃、4日放置無しの網点面積との差を取り、強制経時による網点変動(Δ%)を測定した。この数字の絶対値が小さいほど強制経時による影響が少ないこと、すなわち保存安定性が高いことを示す。
【0361】
【表8】

【0362】
表8中、「付加重合性化合物」欄におけるM、N、O、及び、「バインダーポリマー」欄におけるB1、B2、B3の詳細は、下記のとおりである。なお、下記B3は、MDI/HMDIの共重合体〔モル比80/20〕と、下記構造のDMPAとPPG(m=3)とTEGとの共重合体〔モル比52/22/26〕との混合物である〔混合比50/50(モル比)〕。
【0363】
【化51】

【0364】
表8から明らかなように、本発明の特定オキシム化合物を感光層に含有する実施例7−1〜7−15の平版印刷版原版は、高感度で、保存安定性、及び耐刷性に優れたものであることが判る。
一方、比較例7−1〜7−4の平版印刷版原版では、感度及び耐刷性のいずれもが実施例の平版印刷版原版よりも劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環と、該縮合環に結合する、カルボニル基に直接結合したオキシム基を有し、該カルボニル基を含んで形成される環構造と、を有するオキシム系重合開始剤、及び、(B)重合性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項2】
前記(A)オキシム系重合開始剤が、下記一般式(1)で示される化合物である請求項1に記載の重合性組成物。
【化1】



前記一般式(1)中、Arは芳香環及び複素環から選択される2以上を含んで形成される縮合環を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示す。
【請求項3】
前記(A)オキシム系重合開始剤が、下記一般式(1A)又は一般式(1B)で示される化合物である請求項1又は請求項2に記載の重合性組成物。
【化2】



前記一般式(1A)及び一般式(1B)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は複素環基を示し、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示し、mは0又は1を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。
【請求項4】
前記一般式(1A)及び一般式(1B)におけるRが、下記一般式(2)で示される置換基である請求項3に記載の重合性組成物。
【化3】



前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、チオール基、アミノ基、モルホリノ基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はアルキルセレノ基を示す。
【請求項5】
さらに(C)着色剤を含有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記(C)着色剤が顔料であり、さらに(D)顔料分散剤を含有する請求項5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記(C)着色剤が、黒色着色剤である請求項5又は請求項6に記載の重合性組成物。
【請求項8】
カラーフィルタの着色領域形成に用いられる請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項9】
支持体上に、請求項8に記載の重合性組成物を用いて形成された着色領域を有するカラーフィルタ。
【請求項10】
支持体上に、請求項8に記載の重合性組成物を塗布して重合性組成物層を形成する工程と、
前記重合性組成物層を、パターン状に露光する工程と、
露光後の前記重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、
を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
【請求項12】
支持体上に、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の重合性組成物を含む感光層を有する平版印刷版原版。
【請求項13】
下記一般式(1A)又は下記一般式(1B)で示される化合物。
【化4】



前記一般式(1A)及び一般式(1B)中、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又は複素環基を示し、Rはアシル基又はスルホニル基を示す。Rは、−(CHR)n−を表し、Rは水素原子、アルキル基又は芳香環基を表し、nは0〜2の整数を示し、mは0又は1を示す。Xは炭素原子、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を示す。

【公開番号】特開2010−185072(P2010−185072A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296230(P2009−296230)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】