説明

新規抗生物質開発のための細菌自殺経路の標的化

本発明は、抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することを阻止するかまたは部分的に阻止する作用物質を同定する方法であって、溶液中で標識した基質と潜在的作用物質とを接触させることを含み、それにより標識の検出は、抗毒素が毒素と複合体を形成することを阻止する作用物質が存在することを示す方法を提供する。また本発明は、毒素−抗毒素複合体の形成を妨害することができる作用物質を提供する。このような作用物質は、ヒト病原性細菌に対して新しい従来にない抗生物質として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、Inouyeらによる2006年3月22日に出願の「Targeting Bacterial Suicide Pathways for the Development of Novel Antibiotics」と題する米国仮出願第60/784,776号の優先権を主張するものである。本出願のすべての開示は、参考として本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、タンパク質の産生および溶解度を増強するシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、従来の標的スクリーニング法に基づかない新たな抗生物質を検索する新規の手法に関する。本手法は、共生細菌を除くすべての細菌種に見られる細菌自殺システムを利用する。
【0004】
一般に抗生物質は、細菌における細胞壁合成、DNA複製、RNA合成、タンパク質合成ならびに必須の小分子合成、例えばアミノ酸、ヌクレオチドおよびコファクターなどの生合成経路を標的にする。抗生物質による標的経路の阻害により、細菌の細胞増殖は阻害され多くの場合細胞死をもたらす。
【0005】
細菌は一般に、いわゆる毒素−抗毒素(TA)または「自殺」遺伝子システムを備えており、これは増殖調節、細胞死およびストレス条件下での休眠において重要な役割を果たすと考えられている。正常な増殖条件下で、ある毒素は同じオペロン(TAオペロン)によりコードされるその同族の抗毒素(cognate antitoxin)と安定な複合体を形成して、毒素はその細胞標的に作用する能力を失う。しかしストレス条件下において、不安定な抗毒素は細胞質中への遊離毒素の同時放出により急速に分解し、次いで特定の細胞標的に遊離毒素の毒性効果を及ぼす。
【0006】
細菌ゲノム上に存在する毒素または自殺遺伝子の数は大きく変化し、大腸菌は典型的には6つの独立したTAオペロンを含みそれぞれは一対の抗毒素とその同族の毒素をコードしているが、結核菌は約40のこのようなオペロンを含んでいる。現在までに配列決定されたすべての病原性細菌のゲノムは、宿主細胞と共に特定の環境だけに生存するクラミジアおよびマイコプラズマなどの細菌を除き、1つまたは複数のTAオペロンを含んでいる。大腸菌(E.coli)の6つのTAオペロンのうち、3つはよく特徴付けられており、RelEはリボソームのエンドリボヌクレアーゼ活性を促進するリボソーム関連因子であり、MazFおよびChpBKは、mRNAインターフェラーゼ(MIase)と呼ばれる配列特異的エンドリボヌクレアーゼとして機能する。MazFは誘導されたとき、ACA配列で細胞のmRNAを切断し、これによって細胞のタンパク質合成を、したがって細胞増殖を効果的に阻害することが示された。MazFは、その抗毒素であるMazEと安定な複合体を形成し、MazF−MazE複合体のX線構造が決定された。TA複合体は細胞に対して毒性でないため、これらは大腸菌で十分に発現し、非常に高い収量で容易に精製される。最近ではRelE−RelBおよびYoeB−YefM複合体のX線構造も決定され、毒素と抗毒素がTA複合体中でどのように相互作用するかが明らかにされた。
【0007】
大部分の細菌は、それらのゲノム中に多数の毒素または「自殺」遺伝子を含んでいる。重要なことは、これらの遺伝子から産生される毒素は、その生息場所で他の細菌を殺すことも、また感染過程で動物細胞を殺すことも意図しないことである。その代わりにこれらは細胞内で産生され、それ自体に対して毒性である。この新たな分野における最近の発展は、細菌生理学でのこれらの毒素の役割、多剤耐性の存続、病原性、バイオフィルム形成および進化に対する多くの興味深い洞察をもたらした。現在ではこれらの毒素の研究は、感染症および医科学において非常に重要な意味をもつことが明らかになっている。大部分のこれらの毒素は、オペロン中のそれらの同族の抗毒素と共に転写され(したがって、毒素−抗毒素またはTAオペロンと呼ばれる)、これらは正常な増殖条件下の細胞中で安定な複合体を形成するので、一般的にはこれらの毒素の毒性効果は発揮されない(Bayles、2003;Engelberg−Kulka et al.、2004;Hayes、2003;Rice and Bayles、2003)。しかし抗毒素の安定性はそれらの同族の毒素の安定性よりもずっと低いので、細胞の傷害または増殖阻害を生じるあらゆるストレスは、細胞における毒素と抗毒素の間の平衡に影響を及ぼし、細胞中で毒素の放出に導く。多くの議論にもかかわらず、TAオペロンによりコードされるこれらの毒素は、ストレスの性質に依存する2つの異なる方法で機能すると考えるのが最も合理的である。その1つは、DNA複製およびタンパク質合成などの特定の細胞機能を阻止することによって増殖速度を調節することである。毒素の量が抗毒素を超える大きなストレス下では、細胞増殖は完全に静止され得る。増殖調節に対するTA毒素のこの役割が、この毒素の主要な機能である可能性がある。しかしこの毒素の第2の役割は自殺に導くものであり、すなわちこの毒素自体の宿主細胞を殺すことである。特定の条件下において、TA毒素は健全集団を維持するために、高度に損傷を受けた(例えば、DNA損傷またはファージ感染)細胞を除去するように機能することができる。TAオペロンは、細胞分裂後にプラスミドを喪失した細胞を殺すポスト・セグリゲーショナル・キリング(post−segregational killing)として知られている現象において役割を果たすプラスミド中にしばしば見いだされる。したがってTA毒素は主として静菌性であり、殺菌性ではない(Gerdes et al.、2005)、しかし一定条件では細胞は復帰不能点に到達する場合があり、細胞死をもたらす(Amitai et al.、2004)。最近Engelberg−Kulkaは、大腸菌毒素の1つであるMazFは細胞死のエクセキューショナーではなく、むしろ下流のシステムを活性化するメディエーターであると提案している(Engelberg−Kulka et al.、2005)。
【0008】
現在までに多数のTAモジュールがある程度詳細に研究されており、これらはphd−docモジュールをコードするバクテリオファージ(Gazit and Sauer、1999)、kis−kid(Hargreaves et al.、2002)、peml−pemK(Zhang et al.、2004)およびccdA−ccdB(Loris et al.、1999)モジュールをコードするプラスミドならびに染色体にコードされたrelB−relE(Pedersen,et al.、2003;Takagi et al.、2005)、chpBI−chpBK(Zhang et al.、2005b)、mazE−mazF(Kamada et al.、2003;Zhang et al.、2003a;Zhang et al.、2003b)および大腸菌ゲノム由来のyefM−YoeB(Christensen et al.、2004;Kamada et al.、2005)モジュールであった。これに加えて大腸菌ゲノムはさらに2つの機能未知のTAモジュールであるdinJ−yafQおよびhipB−hipAを含んでいる。このhipB−hipAモジュールは、多剤耐性に導く存続に役割を果たすことに関与している(Keren et al.、2004;Korch et al.、2003)。興味深いことには、すべてのTAオペロンが、調節の同様な様式である抗毒素および毒素と抗毒素の複合体による自動調節を得ているようである。さらにまた、様々なストレス下で産生されことが知られている(p)ppGppが、TAオペロンの誘導に重要な役割を果たしているようである(Gerdes et al.、2005の総説を参照のこと)。これらの毒素の1つであるCcdBは、直接ジャイラーゼAと相互作用してDNA複製をブロックする(Bahassi et al.、1999;Kampranis et al.、1999)。Kidは、染色体の複製および細胞増殖に必要とされるヘリカーゼであるDnaBと相互作用することを提案している(Ruiz−Echevarria et al.、1995)。RelEは、リボソームA部位でmRNA切断を促進するリボソーム関連因子として機能しているようであり(Hayes and Sauer、2003)、PemK(Zhang et al.、2004)およびMazF(Zhang et al.、2003b)は、分解のために遊離のmRNAを標的にするようである。
【特許文献1】米国仮出願第60/784,776号
【特許文献2】米国特許第5,656,493号
【特許文献3】米国特許第5,33,675号
【特許文献4】米国特許第5,234,824号
【特許文献5】米国特許第5,187,083号
【非特許文献1】Characterization of the interactions within the mazEF addiction module of Escherichia coli.J.Biol Chem(2003)278、32300〜32306頁(Zhang et al.、2003a)
【非特許文献2】MazF cleaves cellular mRNAs specifically at ACA to block protein synthesis in Escherichia coli Mol Cell(2003)12、913〜923頁(Zhang et al.、2003b)
【非特許文献3】Interference of mRNA function by the sequence−specific endoribonuclease PemK、J.Biol Chem.(2004)、279、20678〜20684頁、(Zhang et al.、2004)
【非特許文献4】Insights into the mRNA cleavage mechanism by MazF,an mRNA interferase.J.Biol.Chem.(2005)280、3143〜3150頁(Zhang et al.、2005a)
【非特許文献5】Single protein production in living cells facilitated by an mRNA interferase Mol.Cell(2005)18、253〜261頁(Suzuki et al.、2005)
【非特許文献6】Characterization of ChpBK,an mRNA interferase from Esckerichia coli.J.Biol.Chem.(2005)280、26080〜26088頁(Zhang et al.、2005b)
【非特許文献7】Characterization of dual substrate binding sites in the homodimeric structure of Escherichia coli mRNA interferase MazF.J.Mol.Biol.(Li et al.、2005)In press
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近の多剤耐性菌の出現は、公衆衛生にとって大きな脅威である。特にバンコマイシン耐性菌の最近の発見は、バンコマイシンは多剤耐性病原体に対する最後の手段であると考えられるので重大な問題であった。したがって新たな抗生物質の開発が、特に現在利用できる従来の抗生物質の標的としてこれまでに利用されなかった新規の細胞機能を標的にする抗生物質の開発が早急に求められている。
【0010】
細菌性病原体はバイオテロリズムに用いることが可能なので、細菌自殺TAシステムなどの新規の細胞機能を標的にする強力な従来にない抗生物質を開発することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することを阻止するかまたは部分的に阻止する作用物質を同定する方法であって、溶液中で標識した基質と潜在的作用物質とを接触させることを含み、それにより標識の検出は、抗毒素が毒素と複合体を形成することを阻止する作用物質が存在することを示す方法を提供する。また本発明は、毒素−抗毒素複合体の形成を妨害することができる作用物質を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の1つの実施形態は、抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することができないように抗毒素を妨害する作用物質をスクリーンする方法である。このような作用物質は、細菌増殖を阻害する抗生物質として機能することができる。従来の抗生物質と異なり、毒素−抗毒素(「TA」)複合体形成を標的にする抗生物質は、主としてTA複合体から毒素を遊離することにより細胞増殖に相乗的な阻害効果を生じ、その結果TAオペロン発現の抑制解除に導くことが期待される。その結果さらに多くの活性毒素が細胞質中に放出され、さらに効果的な増殖阻害および最終的に細胞死を引き起こす。このことはTA複合体は、抗毒素単独でより一層効率良くTAオペロンの転写を阻害するという事実によるものである。
【0013】
ほとんどすべての細菌は、細胞中にその毒素と同族の抗毒素と安定なTA複合体を形成する毒素を含んでおり、その結果毒素が細胞にその毒性効果を及ぼすことができない。本発明は、細胞中でTA複合体を解離させて毒素を放出することができる小さな化学物質をスクリーニングするハイスループット・スクリーニングを提供する。次いで本スクリーニング技術は、本発明が包含する新規のクラスの抗生物質の検出も容易にする。
【0014】
本発明の実施形態は、その毒素が任意のmRNAインターフェレース(MIase)として機能するTAシステムを含む任意のTAシステムに破壊的な作用物質についてのスクリーニングシステムを包含する。本発明によれば、特異的な切断可能なビーコン基質は、上記の方法に従ってそれぞれのMIaseに対して合成される。したがって、その毒素がMIaseとして機能する個々のTAシステムに特異的なスクリーニングシステムが本明細書で提供される。本発明の他の実施形態は、以下に記載のように分離のためのHis−タグを有するGFP融合TA複合体を用いる非MIase毒素のスクリーニングシステムを包含する。
【0015】
したがって、本発明は抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することを阻止するかまたは部分的に阻止する作用物質を同定する方法を提供する。本発明の作用物質は、抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することができないように抗毒素を妨害するのが好ましい。そのような複合体の形成を標的にすることにより、本発明の作用物質は抗生物質の新しい従来にない形態として有用である。
【0016】
本発明の作用物質は、特定の細菌または特定のグループの細菌を特異的に標的にするものを含む。したがって本発明のスクリーニング(同定)方法は、それぞれ特定のTAシステムに対して極めて高感度、すなわち特異的である。
【0017】
作用物質は任意の分子であり得て、小分子または化学物質であるのが好ましいが、本発明は小分子に限定されない。本発明により包含され得る大きな分子には、とりわけペプチド、ポリペチド、およびタンパク質が含まれる。
【0018】
本発明の方法は、溶液中で標識した基質と潜在的作用物質とを接触させることを含む。mRNAインターフェレースとして機能する作用物質を同定するために用いた場合、1つの実施形態ではこの基質は短いDNA−RNAキメラ基質を含むことができる。このような基質は、理想的には長さが約5〜約20のヌクレオチド塩基であり、より好ましくは約12ヌクレオチド塩基である。この標識した基質は、1つの特定のまたは2つ以上の特定のTAシステムに特異的な切断可能なビーコン基質であり得る。典型的には、MIaseインヒビターは、特定の重要な塩基、すなわちMazF毒素によって切断されるrU残基リボヌクレオチドを切断する。したがってこの切断可能な基質の1つの実施形態は、rUとdA間に切断可能部位を含む修飾された基質を用いる。潜在的な作用物質は、MazFまたはその他の毒素として作用する場合にはその部位で切断するであろう。本発明の有効なプローブは、3’末端にクエンチャーを有する5’末端の蛍光である。好ましい方法において、蛍光プローブはROXであり、クエンチャーはEclipseである。切断されたとき、この蛍光プローブはクエンチャーから分離して蛍光を発する。このようなプローブまたは基質は、切断可能なビーコン基質(CBS)と呼ばれている。当分野で知られているその他のプローブを、本発明の方法と共に用い得る。標識したプローブの検出(切断されたとき)は、抗毒素が毒素と複合体を形成することを阻止する作用物質の存在を示す。
【0019】
1つの実施形態では、この基質はdGdAdTdArUdAdCdAdTdAdTdGである。別の実施形態においては、この基質は切断可能なビーコン基質(CBS−1)であり、MazE/MazF複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される。
【0020】
別の実施形態においては、この基質はdGdAdTdArUrArCdGdTdAdTdGである。別の実施形態においては、この基質は切断可能なビーコン基質(CBS−2)であり、ChpBI/ChpBK複合体形成またはYdeD/YdcE複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される。
【0021】
別の実施形態においては、この基質はdGdAdTdArUrArCdCdTdAdTdGである。別の実施形態においては、この基質は切断可能なビーコン基質(CBS−3)であり、YdcD/YdcE複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される。
【0022】
非MIaseタイプ毒素に有効な本発明の方法の別の実施形態では、この基質は緑色蛍光タンパク質(GFP)タグ付き抗毒素およびHisタグ付き毒素を含む。あるいは、この基質はHisタグ付き抗毒素およびGFPタグ付き毒素を含む。このGFPタグ付き毒素またはGFPタグ付き抗毒素は、GFPと毒素の間またはGFPと抗毒素の間に位置するリンカーを含む。本発明のリンカーは、タンパク質の任意の機能を提供するタンパク質に応じて様々な長さである。GFP融合が、TA複合体形成を阻害しないようにすべきである。適切な大きさのリンカーが、それぞれのGFP融合TA複合体に対して容易に決定され得る。
【0023】
作用物質による基質、すなわちTA複合体の解離は、Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsを用いてHisタグ付き毒素の除去後に、溶液中にGFPタグ付き抗毒素から生成したGFP蛍光シグナルを測定することにより検出される。あるいはGFPタグが抗毒素の代わりに毒素に融合し、Hisタグが毒素の代わりに抗毒素に結合する場合、TA複合体の解離は、Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsを用いてHisタグ付き抗毒素を除去後に、溶液の中のGFPタグ付き毒素から生成するGFP蛍光シグナルを測定することにより検出される。
【0024】
さらに本発明は、本発明のいずれかの方法によって同定される作用物質を提供する。したがって発明の作用物質はTA複合体の形成を妨害することができ、従来にない抗生物質として機能することができる。このTA複合体は、典型的には細菌細胞に由来する。本発明の新規の抗生物質は、ヒト病原性細菌に対するのが好ましい。
【0025】
本発明はまた、1つまたは複数の異なる従来の抗生物質と組み合わせて本発明の1つまたは複数の異なる作用物質を含む組成物を提供する。この組成物は、医薬賦形剤をさらに含む医薬組成物であり得る。
【0026】
場合によっては1つまたは複数の従来の抗生物質と組み合わせて用いられた複数の作用物質は、そのような作用物質および/または抗生物質の付加的または相乗的効果を提供する。そのような異なる作用物質は、1つの病原性細菌において複数のTA複合体(システム)に作用することができ、部分的にまたは全面的にTA複合体を阻害する。
【0027】
さらに本発明は、発明のある作用物質と病原体を接触させることを含む微生物細胞の殺傷または増殖を阻害する方法を提供する。さらに本発明は、本発明の医薬組成物のいずれかを投与することを含む感染を治療する方法を提供する。そのような感染は、結核菌、抗生物質耐性または多剤耐性菌、例えばバンコマイシン耐性菌などであり得る。本発明の方法は、バイオテロリズムに使用される病原体も包含する。
【0028】
また本発明の作用物質と細胞を接触させて、細胞を死せる代わりに細胞を休眠させることにより調節される細菌細胞の休眠を調節する方法を提供する。
【0029】
「病原体」、「微生物因子」、「感染因子」は、本明細書においてすべて交換可能に用いられて、その宿主に疾患または疾病を引き起こす生物学的因子を意味する。本明細書で用いる「感染」とは、外来種による宿主生物への侵入である。
【0030】
本発明の組成物は、経口的に、経頬的に、非経口的に、経鼻的に、経直腸的に、または局所的に投与され得る。本発明の方法で用いられる製薬担体および賦形剤は、当該分野において既知のものである。
【0031】
「インヒビター」という用語は、別の因子の作用を阻止する、低減する、ブロックする、中和するまたは打ち消す因子を表す。
【0032】
「cDNA」という用語は、酵素リバーストランスクリプターゼを用いてmRNAテンプレートから合成された1本鎖の相補的DNAまたはコピーDNAを表す。1本鎖cDNAは、多くの場合DNAフラグメント中の相補的配列または所望の遺伝子を同定するプローブとして用いられる。
【0033】
本明細書で用いる特定の核酸に関する「コードする」、「コードしている」または「コードされた」という用語は、特定のタンパク質への翻訳のために核酸中に保存された情報を表す。タンパク質をコードする核酸は、核酸の翻訳された領域内に非翻訳配列(例えば、イントロン)を含むことができるか、またはそのような介在非翻訳配列(例えば、cDNAの場合のように)を欠失することができる。タンパク質がコードされる情報は、コドンの使用により特定されている。典型的には、アミノ酸配列は「普遍的」遺伝コードを用いる核酸によってコードされている。
【0034】
当業者は、コードされた配列中の1つアミノ酸またはアミノ酸の少ないパーセンテージを変更、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペチド、またはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加は、「保存的に修飾された変異体」であり、この変更が化学的に類似のアミノ酸によるアミノ酸置換をもたらすことを認識するであろう。「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用する。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同一であるかまたは保存的に修飾されたアミノ酸配列の変異体をコードする変異体の核酸を表す。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンUUA、UUG、CUU、CUC、CUAおよびCUGは、すべてアミノ酸ロイシンをコードする。したがって、ロイシンがコドンで特定されるすべての位置において、このコドンは、コードされたポリペチドを変更することなく記載されたいずれかの対応するコドンに変更することができる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的に修飾された変異の1つの種を示す。またポリペチドをコードする本明細書におけるすべての核酸配列は、遺伝コードを参照することにより、その核酸のすべての起こりうるサイレント変異を記載している。当業者は、核酸のそれぞれコドン(通常はメチオニンに対する唯一のコドンであるAUG、および通常はトリプトファンに対する唯一のコドンであるUGGを除いて)は、修飾して機能的に同一の分子を生じることができることを認識するであろう。したがって、本発明のポリペチドをコードする核酸のそれぞれのサイレント変異は、本発明の範囲内に包含される。
【0035】
本発明は、mRNAインターフェレース・ポリペチドの活性部分、フラグメント、誘導体、変異株、および機能的変異体を、そのような活性部分、フラグメント、誘導体、および機能的変異体が、mRMAインターフェレースの生物学的特性のいずれかを保持する程度まで含んでいる。mRNAインターフェレース・ポリペチドの「活性部分」とは、完全長のポリペチドより短いが、測定可能な生物活性を保持するペプチドを意味する。mRNAインターフェレースの「フラグメント」とは、少なくとも5〜7個の連続したアミノ酸、多くの場合少なくとも約7〜9個の連続したアミノ酸、典型的には少なくとも約9〜13個の連続したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20〜30個かそれ以上の連続したアミノ酸のアミノ酸残基の領域を意味する。mRNAインターフェレースまたはそのフラグメントの「誘導体」とは、タンパク質の様々なアミノ酸配列によって修飾された、例えばタンパク質をコードする核酸を操作することによって、またはタンパク質自体を変更することによって修飾されたポリペチドを意味する。天然のアミノ酸配列のそのような誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、付加、欠失、または置換を含み得て、元のmRNAインターフェレースの必須な活性を変更し得る場合もあれば変更し得ない場合もある。
【0036】
「遺伝子」という用語は、特異的な機能的産物(すなわち、タンパク質またはRNA分子)をコードするDNAのセグメントの特定の位置に位置するヌクレオチドの秩序ある配列を表す。これはコーディングDNAの前後の領域およびエキソン間のイントロンを含むことができる。
【0037】
「誘導する」または「誘導性」という用語は、細胞を誘導物質または周囲状況に曝露することにより、その転写または合成が増加する遺伝子または遺伝子産物を表す。
【0038】
「誘導物質」または「誘導因子」という用語は、リプレッサータンパク質と結合して、もはやオペレーターに結合することができない複合体を生成する低分子量化合物または物理的な因子を表す。
【0039】
核酸を細胞に挿入することの関連において、「導入した」、「トランスフェクション」、「トランスフォーメーション」、「トランスダクション」という用語は、核酸が、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、プラスチドもしくはミトコンドリアDNA)に組み込まれ得るか、自律的なレプリコンに変換され得るか、または一過性で発現(例えば、トランスフェクトしたmRNA)され得る原核細胞または真核細胞への核酸の取り込みという意味を含む。
【0040】
「単離された」という用語は、その物質が天然に存在する環境で見いだされるような、通常はその物質に付随するかまたは相互作用する成分を実質的に含まない核酸またはタンパク質などの物質を表す。単離した物質は、場合によってはその天然の環境でその物質と共に見いだされない物質を含むか、または物質がその天然の環境に存在する場合は、物質は計画的なヒトの介入によって合成的に(非天然に)変更された。例えば「単離した核酸」は、プラスミドもしくはウイルスベクターなどのベクターに挿入されたDNA分子、または原核細胞もしくは真核細胞もしくは宿主生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を含み得る。RNAに適用した場合、「単離した核酸」という用語は、上記で定義された単離したDNA分子によってコードされたRNA分子を主として表す。あるいはこの用語は、その天然の状態(すなわち、細胞または組織で)で一般に結合している他の核酸から十分に分離されているRNA分子を表し得る。単離した核酸(DNAかそれともRNA)は、さらに生物学的または合成的な方法で直接に生成され、その生成の間に存在するその他の成分から分離された分子を表し得る。
【0041】
本明細書中で用いる「MazE」という用語は、本発明のMazFポリペチドの役割と一致する構造的相同性および配列相同性を有する、MazFならびにその活性フラグメントおよび誘導体のエンドリボヌクレアーゼ活性を中和する抗毒素の一般的なクラスを表す。
【0042】
本明細書中で用いる「MazF」という用語は、エンドリボヌクレアーゼの一般的なクラスを表し、特定の名前を持つ特定の酵素ならびに本発明のMazFポリペチドの役割と一致する構造的相同性および配列相同性を有するその活性フラグメントおよび誘導体を表す。
【0043】
本発明によって包含される酵素のファミリーは、「mRNAインターフェレース」と呼ばれる。本発明を、本発明のこの酵素のファミリーの役割と一致する構造的および機能的類似性を有する分子に拡張する。
【0044】
本明細書で用いる「核酸」または「核酸分子」という用語は、1本鎖かまたは2本鎖の任意のDNAまたはRNA分子を含み、1本鎖の場合、線状かまたは環状の形態のその相補的配列の分子を含む。核酸分子を論じる場合、特定の核酸分子の配列または構造は、5’から3’の方向に配列を与える通常の慣例に従って本明細書で記載され得る。他に限定しない限り、この用語は既知のアナログを包含する。
【0045】
「オペレーター」という用語は、遺伝子(複数可)からの上流(5’)であり、これに1つまたは複数の調節タンパク質(リプレッサーまたはアクティベーター)が結合して遺伝子(複数可)の発現を制御するDNAの領域を表す。
【0046】
本明細書で用いる「オペロン」という用語は、遺伝子発現制御のために機能的に組み込まれた遺伝的ユニットを表す。これは、1つまたは複数のポリペチド(複数可)および構造遺伝子の転写を調節することによりこれらの発現を制御する隣接部位(プロモーターおよびオペレーター)をコードする1つまたは複数の遺伝子から成っている。「発現オペロン」という用語は、転写および翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、翻訳開始シグナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどを有し得る核酸セグメントを表し、そしてこれらは宿主細胞または生物においてポリペチド・コード配列の発現を促進する。
【0047】
「作動可能に結合された」というフレーズは、プロモーターと第2の配列間の機能的結合という意味を含み、プロモーター配列は第2の配列に対応するDNA配列の転写を開始して媒介する。一般に作動可能に結合したとは、結合されている核酸配列は連続しおり、2つのタンパク質をコードする領域を結合することが必要な場合、連続していて同じ読み枠であることを意味する。
【0048】
「ポリペチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーについて述べるために本明細書において交換可能に用いられる。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的アナログであるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーに適用する。
【0049】
「PCR」という略語は、DNA量を増幅する技術であり、したがってDNAの分離、クローニングおよび配列決定をより容易するポリメラーゼ連鎖反応を表す。例えば米国特許第5,656,493号、第5,33,675号、第5,234,824号、および第5,187,083号を参照のこと、これらの各々は参考として本明細書中に組み込まれる。
【0050】
本明細書で用いる「プロモーター」という用語は、転写の開始からのDNA上流(5’)の領域という意味を含み、転写を開始するためのRNAポリメラーゼおよび他のタンパク質の認識および結合に関与する。「誘導性プロモーター」という用語は、特定の化合物すなわち、誘導物質または誘導因子の存在に応答した、または規定された外部条件、例えば高い温度に応答したプロモーターの活性化を表す。
【0051】
本明細書で用いる「調節する」という用語は、ある標準もしくは原理または抑制された、促進された、制御された、管理された、指令された、もしくは調整された状態により、阻害する、促進する、制御する、管理する、指令する、または調整する作用を表す。
【0052】
「リプレッサー」という用語は、それをオン/オフすることによって遺伝子を調節することができる、遺伝子またはオペロンの転写開始点から上流の特異的なDNA配列(オペレーター)に結合するタンパク質または因子を含む。
【0053】
「リボソームRNA」(rRNA)という用語は、すべての生きている細胞のタンパク質製造装置であるリボソームの中心的な成分を表す。これらの装置は、複数のリボソームタンパク質の存在下で、2つの入り組んだ折り畳み構造(大きいサブユニットおよび小さいサブユニット)に自己集合する。細菌、古細菌、ミトコンドリア、およびクロロプラストにおいて、小さなリボソームのサブユニットは16SrRNAを含み、大きいリボソームのサブユニットは2つのrRNA種(5Sおよび23SのリボソームRNA)を含んでおり、ここで16SのSはSvedberg単位を示す。細菌の16S、23Sおよび5SrRNA遺伝子は、典型的には一緒に転写されるオペロンとして構成されている。ゲノム中に分散したオペロンの1つまたは複数のコピーが存在し得る。真核細胞は、一般にタンデムリピートで構成されたrRNA遺伝子の多くのコピーを有する。大部分の真核生物の18SrRNAは小さなリボソームのサブユニットであり、大きいサブユニットは3つのrRNA種(5S、5.8Sおよび25S/28SリボソームRNA)を含んでいる。
【0054】
「全RNA」という用語は、メッセンジャーRNA(「mRNA」、細胞でDNAからの情報をタンパク質合成のリボソーム部位へ運び、そこで情報がタンパク質に翻訳されるRNA)、転移RNA(「tRNA」、タンパク質翻訳の間に、特異的なアミノ酸を成長するポリペプチド鎖へ転移する小さなRNA鎖;リボソームRNA(「rRNA」)、および非翻訳RNA(RNA遺伝子または小さいRNAとしても知られており、タンパク質に翻訳されないRNAをコードする遺伝子を意味している)を含む。
【0055】
「ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動」という用語はSDS−PAGEと略される。
【0056】
核酸の特定の配列の「変異体」、「突然変異体」および「誘導体」という用語は、特定の配列に密接に関連しているが、配列または構造において天然にかまたは設計により変化を有し得る核酸配列を表す。「密接に関連した」とは、その配列のヌクレオチドの少なくとも約60%、しかし多くの場合は85%を超えて、核酸配列の定義された長さに渡って整合することを意味する。密接に関連した核酸配列間の核酸配列における変化または差異は、特定の核酸配列の性質に正常な複製または複写の間に生じる配列におけるヌクレオチド変化を示し得る。その他の変化は、特定の目的のために特異的に設計し得て、配列に導入し得る。そのような特定の変化は、種々の突然変異誘発技術を用いてin vitroで実施し得る。特異的に作製されたそのような配列変異体は、本来の配列の「突然変異体」または「誘導体」として表し得る。
【0057】
当業者は同様に1個または複数個のアミノ酸置換、欠失、付加または置き換えを有するタンパク質変異体を作製できる。これらの変異体は、とりわけ(a)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存的であるかまたは非保存的アミノ酸で置換された変異体;(b)1つまたは複数のアミノ酸が添加された変異体;(c)少なくとも1つのアミノ酸が、置換基を含む変異体;(d)1つの種由来のアミノ酸残基が、保存された位置かまたは保存されていない位置で別の種において対応する残基と置換される変異体;および(d)標的タンパク質が、標的タンパク質に有用な特性、例えば抗体に対するエピトープなどを与え得る融合パートナー、タンパク質タグもしくは他の化学的部分などの別のペプチドまたはポリペチドと融合した変異体を含み得る。遺伝的(抑制、欠失、突然変異など)、化学的および酵素的技術を含むこのような変異体を得る技術は当業者に公知である。
【0058】
本明細書中で用いる、「ベクター」および「発現ベクター」という用語は、レプリコン、すなわちキャリアまたはトランスポータとして機能する任意の因子、例えばファージ、プラスミド、コスミド、バクミド、ファージまたはウイルスを表し、これに別の遺伝子配列または遺伝子因子(DNAかもしくはRNA)が複製をもたらすように結合し、配列または因子を宿主細胞へ送りむことができるようにする。
【0059】
本明細書中および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「and」および「the」は、他に明確に記載のない限り、複数の対象を含むことに注意されたい。本明細書に用いられるすべての技術的および科学的用語は同じ意味を有する。
【0060】
特に明記していない限り、本明細書において用いた技術および科学用語はすべて、本発明が属する当業者に一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと似たまたはそれと等価のいずれかの方法および材料を本発明の実施またはテストするのに用いることもできるが、好ましい方法および材料を記載する。本明細書において言及したすべての刊行物は、引用されている刊行物に関する方法および/または材料を開示して記載するために参照として本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、当業者に本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を提供するために示されており、本発明者らが本発明と見なす範囲を限定することを意図しないし、また本発明者らは、以下実験はすべてのまたは唯一の実施した実験であることも意図しない。用いられた数値(例えば、量、温度など)については、正確性を確実にするための努力がなされているが、いくつかの実験誤差および偏差が考慮に入れられるべきである。他に指示がない限り、部は重量部であり、分子量は、重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、そして圧力は大気圧または大気圧付近である。
TA複合体を妨害する潜在的作用物質のスクリーンのために、大腸菌発現系を用いて容易に発現でき精製できる多数のTA複合体がヒト病原体および大腸菌から使用されている。TA複合体の解離を検出するために、mRNAインターフェレース(MIase)毒素に対するRNA基質のビーコンタイプかまたは非MIase毒素に対するGFP融合TA複合体を用いる蛍光検出に依存する、高感度のハイスループット方法を使用することができる。
【0062】
毒素−抗毒素(TA)システム
MazE−MazF毒素−抗毒素システム
MazEF TAシステム(Aizenman et al.、1996;Kamada et al.、2003;Marianovsky et al.、2001;Zhang et al.、2003b)において、MazF毒素は安定であり、MazE抗毒素/解毒剤は不安定である。MazEの短い半減期は、ATP依存性のセリンプロテアーゼであるClpPAによる分解に起因する(Aizenman et al.、1996)。このオペロンは、MazEによるかまたはMazE−MazF複合体によってネガティブに自動調節される(Marianovsky et at.、2001;Zhang et al.、2003a)。Engelberg−Kulka(Aizenman et al.、1996)によって提案されたグアノシン−3’,5’−ビス−ピロ燐酸(ppGpp)によるその制御が盛んに議論され、ppGppは、mazEF転写を直接には調節しないが間接的にはMazFの活性化を調節する(例えば、Lonプロテアーゼを介して)ことがあり得るようである(Gerdes et al.、2005)。TAモジュールの転写および/またはmazEF mRNAの翻訳が阻害された場合、MazEはMazFよりもはるかに不安定であるので、MazEF介在性細胞成長停止が生じる。したがって、図1で示されるようにMazFは、そのMazEとの複合体から解放される。
【0063】
MazFの活性化は、重度のアミノ酸またはチミン欠乏(Sat et al.、2003)、リファンピシンおよびクロラムフェニコールのような特定の抗生物質(Sat et al.、2001)、毒性タンパク質Doc(Hazan et al.、2001)またはその他のストレス条件、例えば高い温度、酸化ストレスおよびDNA損傷(Hazan et al.、2004)によって生じる。
【0064】
MazEおよびMazFの構造と機能
MazFは、翻訳のインヒビターとして歴史的には分類されている。しかしこの阻害の標的は、本発明者らがMazFは配列特異的エンドリボヌクレアーゼであることを最近示したように、翻訳装置でなく実際にはmRNAである(Zhang et al.、2003b)。MazFは、著しい基質特異性を示す。これは1本鎖RNA(DNAまたはdsRNAでなく)で、配列ACAの主にAとC間のみを切断する。細胞のtRNAは、そのRNAの多くの二次構造のため切断から保護されるようであるが、rRNAはリボソームタンパク質とそのRNAの密接な関連のためMazFによる分解を回避するようである。したがってMazF発現は、mRNAのほぼ完全な分解を生じ、成長停止と共にタンパク質合成の激しい減少に導く(Zhang et al.、2003b)。MazFに配列類似性を有するタンパク質が、多くの細菌またはこれらの染色体外プラスミド上に認められる。PemKと呼ばれる大腸菌でR100プラスミドにコードされた毒素も、MazFの切断特異性よりも広い切断特異性を有する配列特異的エンドリボヌクレアーゼである(Zhang et al.、2004)。mRNAインターフェレース(MIases)としての、大腸菌および他の細菌におけるMazFおよびその機能的相対物。
【0065】
MazE−MazF複合体のX線構造が解明された(Kamada et al.、2003)。その解毒剤パートナーを伴わない2つの別の毒素の結晶構造と共に(Hargreaves et al.、2002;Loris et al.、1999)、この構造により、これら毒素の異なる標的および配列にもかかわらず、かなりの構造的類似性がすべて3つの毒素間に存在することが明らかとなった。2つのMazF二量体に対し1つのMazE二量体の割合で、MazF(111 aa)はMazE((82 aa)と安定な複合体を形成することを示す生化学的研究によるデータ(Zhang et al.、2003a)と一致して、MazEおよびMazF複合体のX線結晶構造は、交互のMazEおよびMazFホモ二量体から成る2:4のヘテロ六量体で構成されている(F2−E2−F2、図2A)。興味深いことには、MazEのC末端領域は、高度に負に荷電していて無秩序であり、MazFホモ二量体中の2つのMazF分子間に形成される間隙上に広がっている。MazE上の荷電した伸張部は、1本鎖RNAの構造を模倣することができ、そのRNA基質結合部位をブロックすることによりMazFのエンドリボヌクレアーゼ活性を破壊することができる(Zhang et al.、2003b)。
【0066】
TA複合体の構造的研究により、個々の毒素がその同族の抗毒素と安定な複合体を形成する仕組みについて我々の理解が非常に深まった。MazE−MazF複合体のX線構造に加えて(Kamada et al.、2003)(図2A)、RelB−RelE複合体(Takagi et al.、2005)(図2B)およびYefM−YoeB複合体(Kamada and Hanaoka、2005)の結晶構造が最近決定された。それぞれの複合体構造において、以下でさらに詳しく説明するように異なる方法で抗毒素はその同族の毒素と相互作用する。MazF−基質アナログ複合体のNMR構造およびRelBのNMR溶液構造が最近決定された。
【0067】
図2で示すように、それぞれTAシステムにおいて、毒素はTA複合体に特有なユニークな方法でその同族の抗毒素と相互作用する。したがって非常にユニークな抗生物質が、特定の病原性細菌または特定の病原性細菌グループに対してのみ開発され得る。さらにまた、病原体が1つ以上のTAシステムを有する場合、それぞれのTAシステムに対する特異的な抗生物質が開発され得る。これは、病原体に及ぼす2つの異なる抗生物質の付加的または相乗的効果をもたらすことができる。さらに従来の抗生物質と共に本提案で開発された新しい抗生物質の使用は、この抗生物質が完全に異なる細胞標的を用いるので相乗的であることが予想される。
【0068】
TA複合体形成をブロックするか、またはTA複合体を解離することができる化学物質をスクリーニングするために、高感度の方法がそれぞれのTAシステムに対して開発されるであろう。これらの方法は、ハイスループット・スクリーニングのために用いられ得る(例えば、NIH ロードマップ・イニシアティブ(NIH Roadmap Initiative)のために設立されたNIH分子ライブラリー・スクリーニングセンター(NIH Molecular Libraries Screening Center))。
【0069】
以下の刊行物(この各々は本明細書中に参照によりそれらの全体が組み込まれる)は、細菌毒素をさらに記載しており、これらはMol.Cell.のMazFに誘導された疑似休眠(quasi−dormancy)および単一タンパク質産生システムに関する論文を含む。
【0070】
Characterization of the interactions within the mazEF addiction module of Escherichia coli.J.Biol Chem(2003)278、32300〜32306頁(Zhang et al.、2003a)
【0071】
本発明者らは、機能的なMazEF複合体は、2つのMazF二量体と1つのMazE二量体から成ることを明らかにした。この複合体は、mazEFオペロンに結合することが示された。MazEはDNAに直接結合することが見い出されたが、MazFはMazEのDNA結合活性を促進した。最終的にMazEとMazF間の結合界面が、酵母ツーハイブリッド法によって定義された。本発明者らは、MazEはN末端DNA結合ドメインおよびMazFと相互作用するC末端ドメインの2つのドメインから成ると結論した。これらの結果は、MazE−MazF複合体のX線構造と一致している(Kamada et al.、2003)。
MazF cleaves cellular mRNAs specifically at ACA to block protein synthesis in Escherichia coli Mol Cell(2003)12、913〜923頁(Zhang et al.、2003b)
【0072】
無細胞系を用いて、本発明者らはMazFはタンパク質合成を阻害するが、DNA複製またはRNA合成は阻害しないことを示した。続いて本発明者らは、MazFは1鎖RNAのみに作用する配列特異的(ACA)エンドリボヌクレアーゼであることを示した。MazFはリボソームとは独立したリボヌクレアーゼとして機能し、したがってリボソーム上のA部位でmRNA切断を助ける別の大腸菌毒素であるRelEとは機能的に異なっている(Pedersen et al.、2003)。誘導後、MazFはほとんどすべての細胞のmRNAを切断して効率的にタンパク質合成をブロックする。精製したMazFは、原核生物のおよび真核生物無細胞系の両方でタンパク質合成を阻害した。この阻害は、MazFに対する不安定な抗毒素であるMazEにより解除された。したがってMazFは、特異的な配列で細胞のmRNAを切断することによりmRNAの機能を妨害して迅速に細胞成長停止に導く毒性エンドリボヌクレアーゼとして機能し、本発明者らは、このタイプのエンドリボヌクレアーゼに対して「mRNAインターフェレース」(MIase)という用語を作った。このようなエンドリボヌクレアーゼの役割は、様々な増殖条件下で細胞生理に幅広い関与を有し得る。
Interference of mRNA function by the sequence−specific endoribonuclease PemK、J.Biol Chem.(2004)、279、20678〜20684頁、(Zhang et al.、2004)
【0073】
pemI−pemK TAシステムはプラスミドR100上に存在し、大腸菌集団でポスト・セグリゲーショナル・キリングによってプラスミドを維持するのに役立つ。本発明者らは、PemKはmRNAを切断する別のMIaseであるがPemIはこの活性をブロックすることを示した。PemKは、「UAX(Xは、C、AまたはUである)」配列中のA残基の5’または3’側で選択的に1本鎖RNAのみを切断する。PemKはDnaBを介してDNA複製を阻害すると以前に考えられたが(Ruiz−Echevarria et al.、1995)、本発明者らは今、明確にPemKはMIaseであることを示した。報告されたColE1 DNA複製阻害は、ColE1 DNA複製のためのプライマーであるRNAIIに対するPemKのMIase活性によって容易に説明できる。さらにまたPemK誘導による様々な真核細胞の増殖阻害(de la Cueva−Mendez et al.、2003)も、細胞のmRNAに対するPemKのMIase活性によって説明できる。
Insights into the mRNA cleavage mechanism by MazF,an mRNA interferase.J.Biol.Chem.(2005)280、3143〜3150頁(Zhang et al.、2005a)
【0074】
XACAを含むRNA−DNAキメラ基質を用いて、MazFはACA配列の5’末端で基質(XとA間で)を切断し、1つの末端に2’、3’−環状リン酸と他の末端に遊離の5’−OH基を生じる。これらの基質を用いて、本発明者らは残基Xの2’−OH基はMazF切断のために必要不可欠であるが、すべての他の残基はデオキシリボースであり得ることを示した。
Single protein production in living cells facilitated by an mRNA interferase Mol.Cell(2005)18、253〜261頁(Suzuki et al.、2005)
【0075】
本発明者らは、MazFによるほとんどすべての細胞のmRNA分解の結果、大腸菌におけるMazFの誘導は完全に細胞増殖を阻害するが、細胞はなお完全に代謝的に活性であることを見いだした。これは、MazFのACA特異的MIase活性を利用することによって示された。本発明者らは、MazFおよびACAを欠くmRNAをコードするように設計した標的遺伝子の同時発現は、バックグラウンドの細胞のタンパク質合成が実質的に無い状態で、持続する高レベル(90%までの)の標的発現を生じることを見いだした。実質的に、本発明者らは大腸菌細胞を単一タンパク質を産生するバイオリアクターに変換し、このシステムを「単一タンパク質産生」(SPP)システムと名づけた。
【0076】
完全な細胞成長停止下で、細胞が所望の単一タンパク質をなお産生することができるというこの事実は、細胞の代謝的能力は長期間にわたり無傷であり、その結果エネルギー代謝(ATP産生)のみならずアミノ酸およびヌクレオチドに対する生合成機能も成長が停止した細胞で完全に活性であることを示している。さらにまた、転写および翻訳機構も良好に維持され完全に機能している。したがって、MazFに誘導された休眠中の細胞は、「疑似休眠」と呼ばれる新しい生理的状態下にある。この疑似休眠の発見は、細菌の病原性および多剤耐性の存続において重要な役割を果たす可能性がある新しい細菌生理学を研究するための刺激的な道を開くであろう。
Characterization of ChpBK,an mRNA interferase from Esckerichia coli.J.Biol.Chem.(2005)280、26080〜26088頁(Zhang et al.、2005b)
【0077】
ChpBKは、116個のアミノ酸性の残基から成る大腸菌ゲノムchpBIK TAモジュールでコードされる毒素である。その配列は、MazFに対して35%の同一性および52%の類似性を示す。本発明者らは、ChpBKはMazFと同じ方法でACY(U、AまたはG)においてmRNAを切断する別のMIaseであることを見いだした。
未発表の予備的結果
Characterization of dual substrate binding sites in the homodimeric structure of Escherichia coli mRNA interferase MazF.J.Mol.Biol.(Li et al.、2005)In press
カナダのトロント大学オンタリオ癌研究所の教授M.Ikura博士と共同して、本発明者らは、最近基質アナログと複合体を形成するMazF二量体のNMR構造を決定した。本発明者らは、MazFホモ二量体の凹界面に2つの基質結合部位が存在し、したがってMazFホモ二量体は、mRNAプロセシングのための2つの同一の結合部位を備えた二座エンドリボヌクレアーゼであることを示した。しかし重要な点は、結合部位の1つを占める1つMazE分子が、両方の部位の立体構造に影響を及ぼすことができ、したがってMazF MIase活性を効果的に妨害することができることである。
【0078】
結核菌の複数のmRNAインターフェレース
本発明者らは、結核菌はMazFホモログ(mt1〜mt7)をコードする少なくとも7つの遺伝子を含み、大腸菌で誘導された場合これらの4つは細胞増殖阻害を生じることを示した。本発明者らはまた、MazF−mt1、MazF−mt3およびMazF−mt6が、大腸菌MazFと同様の配列特異的mRNAインターフェレースとしての機能することを見いだした。これらの結果は、複数のmRNAインターフェレースの存在は、ヒト組織中でこの病原体の多方面にわたる休眠応答において重要であり得ることを示唆している。
【0079】
実験計画に対する理論的根拠 − 病原性細菌を含むすべての細菌は、クラミジア、マイコプラズマおよび癩菌などの偏性(obligate)細胞内病原体を除き自殺遺伝子を含んでいる(Pandey and Gerdes、2005)。特に、非常に緩慢に増殖する特定の自立性の細菌は、多数のTAシステムを有し、例えば結核菌は少なくとも38のTAシステムを有していることに注目するのは興味深い。生物兵器として用いられ得るこれらの病原性細菌の中で、炭疽菌(B.anthracis)は1つのMazF−MazE TAシステムを有し、ペスト菌は、5つの様々なTAシステムを有している。ボツリヌス菌のゲノム配列は利用できないが、その近縁の破傷風菌は少なくとも1つのPhd−Doc TAシステムを有している。これらの事実は、細菌のTAシステムは、現在利用可能な従来の抗生物質と際立って異なる新しい抗生物質の開発のための理想的な標的であることを非常に説得力をもって示唆している。
【0080】
すべてのTAシステムは、正常な増殖条件下で毒性効果が抑制されるように毒素−抗毒素複合体の形態で、最適に増殖している細胞で発現されると考えられる。図3に示すように、これまでに毒素−抗毒素複合体の3つのX線構造が解明された。驚いたことに、それぞれの組は互いに異なるユニークな複合体を形成する。しかしすべてのこれらの抗毒素は細胞のこれらの同族の毒素よりはるかに不安定であり、したがってタンパク質合成がストレス条件下でブロックされるとき、抗毒素は細胞のプロテアーゼにより消化されて細胞中に毒素を放出する。その結果細胞増殖は阻害され、これは最終的に細胞死に導く。
【0081】
したがって毒素と抗毒素の間の相互作用をブロックするあらゆる化学物質は、(1)化学物質が、その同族の毒素との複合体から抗毒素を完全にまたは部分的に放出し、放出された抗毒素は細胞のプロテアーゼによりすみやかに除去され、細胞中に遊離の毒素の放出を引き起こす、(2)毒素−抗毒素複合体は、抗毒素単独でよりもはるかに強いこれらのオペロンに対するリプレッサーであり、したがってこの化学物質の存在下でより多くの毒素および抗毒素が細胞で合成される、ならびに(3)これらの化学物質の存在下で、新たに合成された抗毒素は、これらの同族の毒素と安定な複合体を形成することができないという理由により、細菌に対する潜在的な抗生物質として役立ち得る。その結果、毒素の細胞濃度は増加して細胞増殖阻害に導くであろう。毒素−抗毒素複合体(抗毒素の除去により毒素のさらなる産生を誘導する)を標的にする抗生物質の相乗効果はユニークであり、本発明の抗生物質の特に重要な特徴である。この新しいクラスの抗生物質の別の重要な側面は、これらはそれぞれの毒素−抗毒素複合体に特異的であり得るかまたは相同のTAシステムのグループに対してのみ特異的であり得て、したがって特定の病原体に対して有効なユニークな抗生物質を開発することが可能である。
【0082】
本発明者らが以下に記載のように、大腸菌由来のすべてのTA複合体(MazF−MazE、YoeB−YefM、YafQ−DinJ、RelE−RelB、ChpBK−ChpBIおよびHipA−HipB)が分離されており、本発明者らの研究室で利用可能であり、それぞれのスクリーニング法の開発に用いるつもりである。さらに枯草菌(B.subtilis)由来のYdcE−YdcD複合体(YdcEは炭疽菌MazFホモログと96%同一である)、高病原性の大腸菌CFT073由来のHigB−HigA複合体、ファージP1由来のDoc−Phd複合体およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)由来のVapC−VapB複合体も精製され、本発明者らの研究室で容易に利用可能である。これらの10個のTA複合体は、細菌のほとんどすべての既知のTAシステムを包含しており、このいくつかはmRMAインターフェレース(MazF、ChpBKおよびYdcE)として機能するが、他のものはリボソームの固有のエンドリボヌクレアーゼ活性(RelE)を促進するか、または翻訳開始(YoeB)をブロックするリボソーム関連因子として機能する。毒性のメカニズムは、YafQ、HipA、Doc、HigBおよびVapCについては未だ決定されていない。本発明者らはまた、黄色ブドウ球菌(S.aureus)および枯草菌からMazF−MazEホモログ複合体を精製し、また結核菌からはVapC−VapB複合体を精製するつもりである。結核菌は、23個もの異なるVapC−VapB TAシステムを有している。
【0083】
本発明において、部分的または全体的にTA複合体形成を阻害する小さい化学物質、その他の分子または任意の作用物質であり得る作用物質の添加後、それぞれのTAシステムについてTA複合体から毒素の解離を検出する方法が提供される。この方法は小さい化学物質の添加後にTA複合体から放出される毒素または放出される抗毒素を検出するための蛍光プローブの使用に依存している。
【0084】
毒素と抗毒素の間の相互作用は、それらの表面上の非常に広がった領域に生じて荷電および疎水性相互作用を含んでいる(図3を参照)。したがって化学物質は2つのタンパク質間の相互作用を部分的にのみ破壊することができて部分的な阻害に導く。しかし2またはそれ以上のこれらの弱いインヒビターの添加は、これらの各々が異なる部位でTA複合体と相互作用する場合、劇的な相乗的阻害効果を生じ得る。したがってこれらの阻害化合物に基づき新しい化学物質を設計でき、これらの効果を組み合わすであろう。TA相互作用を直接に妨害するのではなく、むしろ毒素かそれとも抗毒素と結合してアロステリックな構造的変化を生じ、TA複合体から毒素および抗毒素の解離を生じる化学物質を見いだすことも可能である。
【0085】
研究I
配列特異的MIase活性を検出するための高感度基質の開発
化学物質のハイスループット・スクリーニングにおいて、MazE−MazF複合体から放出されたたとえ少量のMazFでさえも検出できる高感度基質を開発するために、十分に解析がされているMIaseであるMazFがモデルタンパク質として用いられるであろう。この目的のために本発明者らは、12塩基の短いDNA−RNAキメラ基質、dGdAdTdArUdTdAdTdGを合成した。最近本発明者らは、rU残基がMazFにより切断されるリボヌクレオチドでなければならない重要な塩基であることを示した(Zhang et al.、2005a)。MazF mRNAインターフェレース活性を検出する最も感度が高い方法を開発するために、本発明者らは5’末端に蛍光プローブおよび3’末端にクエンチャーを結合することによりこの基質を修飾した。この修飾された基質は、これがrUとdA間で切断されてクエンチャーから蛍光プローブが取り外されない限り蛍光を発さない。本発明者らは、mRNAインターフェレースに対するこのタイプの基質を切断可能ビーコン基質またはCBSと名づける。本発明者らは、5’末端修飾のためにROX(6−カルボキシル−X−ローダミン)を用い、3末端修飾のためにクエンチャーとしてEclipseを用いた(それぞれ図4AおよびB)。2つの分子間の間隔は12塩基離れおり、この間隔はEclipseが5’末端ROXの蛍光を消光するために十分である。多数の蛍光プローブの中で、本発明者らは光退色に抵抗性があり、広範囲のpHで安定なのでROXを選んだ。本発明者らは、非常に安定でありしたがってすべてのオリゴヌクレオチド脱保護反応において安全に用いることができるため、クエンチャーとしてEclipseを選んだ。さらにまたEclipseは他のクエンチャーより実質的に多くの電子を欠損しており、したがって多様な色素の良好なクエンチングを誘導する。
【0086】
方法
MazFに対する切断可能ビーコン基質(CBS)の合成 − 切断されたときにのみ(この場合はMazFによって)蛍光を発する12塩基DNA−RNAキメラビーコン基質(CBS−1)は、以下の通りであった。
【化1】

【0087】
以下の通りに合成した。すなわち、3末端修飾のためにEpoch Eclipse Quencher CPG(Epoch Biosciences,Inc.)を用いて、DNA−RNAキメラ基質をDNA/RNA合成装置(AB13400)で合成した。5’末端に対しては、アミノリンカー(C6)(ABI)を用いた。DNAセグメントに対してDNAアミダイト(Proligo)、およびRNAセグメント(rU残基)に対して、RNAアミダイト(Proligo)をオリゴヌクレオチド合成のために用いた。合成後、オリゴヌクレオチドを28%アンモニア(水で希釈した):エタノール(3:1)を用いてCPGから切断した。こうして得られた溶液を55℃で6時間インキュベートして、それぞれ塩基から保護基を除去した。反応後、ロータリーエバポレーターを用いてサンプルを乾燥した。次いでこの産物をTEA−3HF/TEA/1−NMP(4:3:6)に溶解し、溶液を65℃で6時間処理して4位のrU残基の2’OH基における保護基を除去した[TEA=トリエチルアミン、TEA−3HF=トリエチルアミン−トリス−ヒドロフルオリド、および1−NMP=1−メチル−2−ピロリドン]。脱塩後、この産物を逆相HPLCによって精製した。この段階での産物は、5’−NH−dGdAdTdArUdAdCdAdTdAdTdG−Eclipse−3’である。この産物を、弱アルカリ性条件でROX−SE(Invitrogen)で修飾した。この反応混合物を、ゲル濾過により精製して遊離のROX色素を除去した。こうして得られた産物をPAGEを用いてさらに精製して、未修飾産物からROX修飾産物を分離した。この最終的産物CBS−1を、脱塩後冷凍乾燥した。
MazFによるCBS−1切断反応 − CBS−1は上に示すようにrUとdA残基間で切断されて蛍光の放出を生じることが予想される。パイロット実験で、本発明者らは少量のCBS−1を合成し、精製したMazFを用いて切断反応を実施した。MIase反応は、下記のように実施した;5μl(5×)のMazF緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.8)、10μlの蒸留水および5μlのCBS−1溶液(2pmol/μl)を混合し、混合物を37の℃でプレインキュベートした。異なる濃度のMazF(5μl)を添加することにより反応を開始した(図5を参照)。使用した励起および発光波長は、それぞれ550nmおよび635nmであった。予備的な結果を図5に示し、これから以下のような多くの興味深い観察をすることができる。
1.12塩基のCBS−1基質は、MazFに対する適切で感度が高い基質として機能し、12塩基ヌクレオチドの5’末端および3’末端に結合したROXおよびEclipseは、それぞれMazF MIase酵素反応をブロックしないことを示す。
2.反応の初期速度とMazF濃度との間に直線関係がある。3.この反応で用いられたMazFは、トリガー因子(MazFの高い発現に用いられる低温ショック分子シャペロン)に融合されている。興味深いことに、この融合タンパク質はMazFに対する抗毒素であるMazEの非存在下で発現され得る。トリガー因子と融合した場合のMazFのこの低い毒性の理由は現在知られていない。用いたタンパク質は1回の切断反応のみを示すようであり、基質を完全に切断しない可能性がある。それにもかかわらずこの実験は、本発明者らの基質は低濃度のMazFにおいてさえもMIase活性を検出することができ、したがって潜在的な抗生物質のハイスループット・スクリーニングに用いるために適切であることを明らかに示している。これらの予備的な結果に基づいて、いかなる融合も伴わない精製したMazFを用いる実験が繰り返されるであろう。
その他のMIaseに対する特異的切断可能ビーコン基質の合成 − 現在までにMazFに加えて、さらに2つのMIaseである大腸菌K12由来のChpBK(Zhang et al.、2005b)および枯草菌由来のYdcE(Pellegrini et al.、2005)が特徴付けられた。本発明者らは、これらのMIaseに対する以下の12塩基CBS基質を合成する;
【化2】

これらのCBS基質は、上記のCBS−1に対して記載した方法に従って合成される。CBS−2はChpBKおよびYdcEの両方(しかしMazFによってではなく)によって切断され得るが、CBS−3はYdcEによってのみ切断され得る。これらの基質は特異的なMIaseを検出するために重要であり、その特異性が特徴付けられていない未知のMIaseの特性決定に用い得る。研究2で論じたように、本発明者らはYoeBおよびYafQの切断特異性を決定した後に、これらに対する新たなCBS基質を設計するつもりである。
本発明は、その毒素が任意のMIaseとして機能するTAシステムを含む任意のTAシステムに破壊的な作用物質に対するスクリーニングシステムを包含する。本発明者らが研究2からさらに多くのMIaseを見いだし、それらの特異的な切断配列を決定する場合、上記の方法に従いそれぞれのMIaseに対して特異的な切断可能ビーコン基質を合成するつもりである。このようにして本発明者らはその毒素がMIaseとして機能する個々のTAシステムに対して、特異的なスクリーニングシステムを開発することができるであろう。
【0088】
予想される問題およびそれらの解決策
図5において、使用したタンパク質は1回の切断活性を有するので、基質は完全には加水分解されていない。上記のようにこの反応の感度は精製したMazFを用いて実験を繰り返した場合、かなり改善しそうである。しかし反応が依然として改善しない場合は、これはMazFの固有の酵素的特性であるか、または使用した基質の特性であることを意味するかもしれない。後者の場合、産物の疎水性(ROXかそれともEclipse)が、MazFの2回目の結合を妨害するかもしれない。この影響を打ち消すために、本発明者らは、酵素活性に影響を与えることなく結合した反応産物を解離させることにより、基質のアクセシビリティを促進するであろう種々のマイルドな界面活性剤を反応に組み込むつもりである。
研究2
大腸菌および他の病原性細菌からの種々のTA複合体の分離
この研究において、本発明者らは非病原性および病原性細菌(表1を参照)から多数のTA複合体を分離するつもりである。
1.TA複合体を小さい化学物質のスクリーニングに用いる研究3に進む前に、本発明者らは種々の細菌からクローニングした表1のそれぞれのTAオペロンが、大腸菌で良好に発現されることを確認するつもりである。これはスクリーニングシステムを確立するのに重要である。
2.本発明者らは、まだ特徴付けられないTAシステムに対する細胞標的を決定するつもりである。前の章でMazFについて記載しているように、これは本発明者らがそれぞれのTAシステムに対するユニークな基質を開発することを可能にするであろう。
本発明者らは、大腸菌K12由来のすべて6つのTAシステム(MazF−MazE、ChpBK−ChpBI、RelE−RelB、YoeB−YefM、YafQ−DinJおよびHipA−HipB)をクローニングし、図6(表1も参照のこと)に示すように、T7発現系を用いてこれらを発現させた。すべての場合において、TA複合体は良好に発現される。すべての毒素タンパク質はHisタグ付きなので、すべてのTA複合体はMazFについて前述したように毒素をさらに精製できるNi−NTA樹脂を用いて容易に精製される(Zhang et al.、2003b)。これらの6つのTAシステムのうち、RelE(Hayes and Sauer、2003;Pedersen et al.、2003)、MazF(Zhang et al.、2003b)およびChpBK(Zhang et al.、2005b)が特徴付けられた(表1を参照)。本発明者らは残りの3つの毒素であるYoeB、YafQおよびHipAを精製し、これらの細胞標的を同定するつもりである。さらに本発明者らは、HigA−HigB複合体を高病原性大腸菌CFT073株から分離するつもりである。HigA−HigBは、ペストの病原体であるペスト菌を含む細菌における最も豊富なTAシステムの1つである。YdcE−YdcD複合体が枯草菌から報告された。炭疽菌MazFホモログは枯草菌のYdcEと93%の同一性を有し、同様にYdcDはその炭疽菌の相対物と53%の同一性を有する。したがって、YdcE−YdcD複合体形成をブロックする化学物質の全部または一部が、炭疽菌でMazF−MazEホモログ複合体形成も阻害するかもしれない。
【表1】

本発明者らはMazF−MazEホモログを、皮膚感染から生命にかかわる症状にわたる非常に多様な疾患を生じる最も一般的なヒトの病原体である黄色ブドウ球菌からも分離するつもりである。したがってまたこの病原体に対する新しい抗生物質のスクリーニングは、特にこの病原体の多剤耐性株が出現したために非常に重要である。本発明者らはまた、多数のVapC−VapB複合体を一般のヒト呼吸路病原体であるインフルエンザ菌および結核菌から分離するつもりである。後者の病原体は、異常に多くの(23個もの)TAシステムを有している。これはTAシステムがこの最も重篤なヒト病原体の休眠に重要な役割を果たし得ることを意味している。この病原体において、VapC−VapB TAシステムの完全もしくは部分的阻害を生じる化学物質を見いだすことが可能であることに留意されたい。最後に本発明者らは、ファージP1からDoc−Phd複合体を分離するつもりであり、そのホモログは別のヒト病原体であるコレラ菌に認められている。
【0089】
大腸菌のYoeBの細胞標的の特性決定
ごく最近、YefM−YoeB(2:1)複合体のX線構造が決定された(Kamada and Hanaoka、2005)。精製したYoeBを用いて、本著者らはYoeBがAまたはG残基で選択的にRNAを切断することを示し、YoeB毒性はこのエンドリボヌクレアーゼ活性に起因すると推測した。KamadaおよびHanaokaにより示されたin vitroでのデータは、Gerdesとその共同研究者により発表されたin vivoのデータと一致している(Christensen et al.,2004)。しかし以下に示すように、本発明者らの結果はYoeBのこの作用はYoeBの主な機能ではないことを明らかに示している。本発明者らの予備的なデータは、YoeBの主な標的は翻訳開始複合体であり、翻訳開始を特異的に阻害するという仮説を強く支持している。以下に記載のように、かなりの量の予備的データが得られた。
しかし追加実験により、YoeBの正確な細胞標的およびこのタンパク質による翻訳開始阻害のメカニズムが明確に同定されるであろう。
1.YoeB毒性は、原核生物に特異的である − YoeBは、後述するように別のMIaseであるYafQとは対照的に酵母菌では毒性ではない(図7)。このことは、YoeBは細菌と酵母菌間で保存されていない50Sリボソームに結合するという事実と一致する。
2.YoeBは、YoeBの誘導直後に細胞増殖および細胞のタンパク質合成をブロックする非常に強力な毒素である − アラビノース誘導性pBADベクターを用いてYoeB誘導後5分以内に、細胞の増殖(図示せず)およびタンパク質合成はほぼ完全に阻害される(図8)。対照的に、MazF(その機能がリボソームに依存していない配列特異的エンドリボヌクレアーゼ)の誘導後、長期間(少なくとも15〜20分)後まで細胞のタンパク質合成は阻害される(Zhang et al.、2003b)。
3.細胞のmRNAは、YoeB誘導後も安定である − YoeBの誘導によるタンパク質合成の突然の阻害にもかかわらず、細胞のmRNAはMazFの誘導後よりもYoeBの誘導後の方がはるかに安定である(図9)。最も重要なことは、完全長のlpp mRNAはMazFの誘導後、非常に速く(5分以内に)消失するが、かなりの量の完全長のlpp mRNAがYoeB誘導後の1時間を超えて存在する。同様の結果が、2つの無関係なmRNAであるompAおよびrpsA mRNAを用いて得られた(データは示さず)。本発明者らはまた、結核菌のYoeB(これもまた大腸菌で毒性が強く、大腸菌のYoeBに類似する)を用いて実験を行ったが、これは誘導後90分でlpp mRNAを完全には切断しなかった。
4.YoeBは翻訳開始複合体に結合する − トウプリンティング(toeprinting)実験では、YoeBの添加により、正常なトウプリンティング・バンドの上流に11塩基シフトしたトウプリンティング・バンド(開始コドンの13〜14塩基下流)を生じたことを示した。このバンドはリボソームの存在下でのみ観察することができた(図10)。注目すべきことには同じ条件下で、リボソームの非存在下でmRNAはYoeBによって切断されなかった(レーン2、図10)。
5.YoeBは50Sリボソーム結合タンパク質である − YoeBは翻訳開始複合体に結合するので(図10)、次に本発明者らはYoeBがリボソームのサブユニットの1つに特異的に結合するかどうかを調べた。本発明者らはYoeBを過剰発現している細胞からリボソームに富む抽出物を調製してリボソームをショ糖密度勾配で精製し、YoeBが無傷の70Sリボソームを含む分画に加えて50Sリボソーム・サブユニットを含む分画と共に沈降することを観察した(図11)。したがってYoeBは、in vivoではリボソームの30Sサブユニットではなく50Sに特異的に結合している。さらにまた、YoeBは70Sリボソームに結合するという事実は、これは30Sサブユニットと50Sサブユニット間の相互作用を阻害しないことを示す。
6.YoeBは、開始コドンの数塩基下流でin vivoにおけるプライマー伸長を特異的にブロックする − YoeBが翻訳開始複合体に結合することにより翻訳開始を阻害するという本発明者らの仮説は、YoeBの誘導は完全長のmRNAの蓄積を生じ、したがってプライマー伸長はmRNAの他のいずれかの位置でなく、翻訳開始コドンの近くでブロックされるだろうということを予言している。図12で見られるように、プライマー伸長は開始コドンの数塩基下流のompAおよびompF mRNAでブロックされ、重要な点は開始コドンの上流または下流のどちらにも他のいかなるバンドも検出されなかったことである。これはYoeBは翻訳開始を実際に特異的にブロックするが、開始コドンの上流および下流の切断を示すであろうエンドリボヌクレアーゼとして機能しないことを示唆している。
要約 − YoeBは、原核生物においてリボソーム50Sに結合する特異的なタンパク質合成インヒビターである。本発明者らは、in vivo(Christensen et al.、2004)およびin vitro(Kamada and Hanaoka、2005)で観察された明白なエンドリボヌクレアーゼ活性は、YoeBの固有の特性であり、これはYoeBの長期にわたる誘導後にだけか、またはin vitroでRNAを多量のYoeBと共にインキュベートする場合に検出されると推測した。本発明者らは、翻訳開始の阻害をもたらすリボソームとYoeBの相互作用の正確な分子メカニズムを研究し続けるつもりである。
実験設計と方法
本発明者らの結果は、YoeBは新しいタイプの毒素であることを明らかに示している。本発明者らは、正確な細胞標的およびYoeBによる翻訳開始阻害の分子メカニズムを未だ同定していない。本発明者らはこの目的達成のために、YoeBに取り組み続けるつもりである。
YoeBの細胞標的の同定
本発明者らは、次の2つの異なる方法を用いるつもりである。すなわち、タンパク質とタンパク質の相互作用を同定するために、本発明者らの研究室で日常的に用いている酵母ツーハイブリッド法を、大腸菌でYoeBと相互作用している1つのタンパク質または複数のタンパク質を探索するために用いるつもりである。第2の方法では、本発明者らはクライオ電子顕微鏡法(Cryo−electron microscopy)の専門家であるDaniel Wilson博士(Max−Planck Institute for Molecular Genetics)と共同研究を始めるつもりであり、博士と本発明者らは現在、50Sリボソーム・サブユニット上のDer(大腸菌における重要なGTPアーゼ)の位置を同定するために共同研究を行っている。さらにまた本発明者らは、大腸菌の無細胞系(Promega)を用いて、YoeBがポリUのような明確に定義された合成ホモポリマーを用いる翻訳伸長ではなく、翻訳開始を特異的に阻害することを確認するつもりである。ポリUは開始コドンを有していないので、tRMAfMetを必要としないポリフェニルアラニンを合成するためにポリUが無細胞系で用いられる。本発明者らの仮説が正しいならば、YoeBはポリフェニルアラニン合成を阻害しないであろう。
化学物質スクリーニングのためのYoeB−YefM複合体の使用
YoeB−YefM複合体形成を阻害する化学物質をスクリーニングするために、本発明者らは、2つの異なる方法を用いるつもりである。すなわち、1つの方法はプリンに富む配列で切断を引き起こすその弱い固有のエンドリボヌクレアーゼ活性を利用する方法(Kamada and Hanaoka、2005)であり、他の方法は研究3に記載のGFP融合技術を用いる方法である。前者の方法に関して、本発明者らはKamadaとHanaokaより示されたプリンに富むYoeB切断配列(Kamada and Hanaoka、2005)を含むCBS基質を開発するつもりである。研究1に記載のCBS基質が合成されるであろう。
Docの細胞標的の特性決定
1.細胞のmRNAの安定化 − Doc−Phd TAオペロンはファージP1からクローニングし、T7発現系を用いて良好に発現した(図6)。この複合体は大量に容易に調製されるので、本発明者らはコロンビア大学のJohn Hunt博士と共同で、このX線構造の決定を開始した。このホモログがコレラ菌のようなヒト病原体に存在する(29%の同一性と47%の相同性)ので、このTAシステムに対する化学物質のスクリーニングは重要な医学的関連を有している。さらに本発明者らの現在までの予備的な結果は、この毒素は翻訳伸長のレベルでタンパク質合成を阻害する非常に強力な増殖インヒビターであることを明らかにしている。最も重要なのは図13に見られるように、細胞のmRNAはDoc誘導の120分後でさえ分解していないことである。
2.翻訳伸長の強力なインヒビター − Docはクロラムフェニコールまたはハイグロマイシンに類似した機能をするようであり、この両方はmRNAの分解をブロックすることにより細胞でポリソームを安定化することが知られている。実際にDoc誘導2時間後のポリソームパターンは、ハイグロマイシンを添加しない場合でさえも変化しなかった[図14の右のパネル;上のパネル(ハイグロマイシンと共に)を下のパネル(ハイグロマイシン無しで)と比較する]。一方、Docの誘導がない状態でハイグロマイシンが添加されない場合(図14の左側パネルの下パネル)、ポリソームは消失した。このことはDoc毒素はクロラムフェニコールおよびハイグロマイシンの方法に類似する方法で翻訳伸長を阻害することを明らかに示している。
実験設計および方法
本発明者らは、この新しいタンパク合成インヒビターをさらに研究するつもりである。本発明者らは、現在Docタンパク質に対して抗血清を調製しており、これはDocと相互作用するリボソーム・サブユニットの同定に用いられるであろう。John Hunt博士と共同でのDoc−Phd複合体のX線構造の決定は、DocとPhd間の相互作用に関して非常に有益であり、その細胞毒性への洞察が得られるであろう。本発明者らはまた、Daniel Wilson博士と共同でリボソーム上のDocの相互作用する正確な部位の決定を始めるつもりである。YoeBについて論じたように本発明者らはまた、用いたmRNAにかかわらずDocはタンパク質合成の非常に強力な伸長インヒビターであることを確認するために無細胞系を用いるつもりである。

1.原核生物および真核生物の両方に対する一般的増殖インヒビター − 興味深いことに、図7で示すようにYafQは、MazFのように大腸菌だけでなく酵母菌に対しても増殖インヒビターとして機能するが、YoeBまたはRelEは原核生物に特異的な増殖インヒビターである。これらの結果はYafQはその標的が細菌から真核生物まで保存されているので、YoeBまたはRelEの作用メカニズムとは明白に異なる作用メカニズムを有することを示している。
2.YafQは、配列特異的なMIaseである − 本発明者らの予備的データは、MazFおよびChpBKに加えて、YafQは配列特異的エンドリボヌクレアーゼである別のMIaseであることを示している(図15)。YafQの誘導が対照(遺伝子の天然の染色体コピーからYafQのみを発現する)と比べ特異的な部位でera mRNAの切断の増強を生じるかどうかを決定するために、大腸菌BW25113細胞を非特異的遺伝子(この場合era遺伝子)を発現するIPTG誘導性プラスミドと共にアラビノース誘導性YafQプラスミドを用いて同時トランスフォームした。以下示した結果は、MazFと同様にYafQはACA配列を認識するが、このMIaseがその他の特異的配列を認識するかどうかを決定することがなお残されていることを示している。
3.DinJおよびYafQは複合体を形成する − 本発明者らは、アフィニティークロマトグラフィーを用いてYafQがDinJと安定な複合体を形成することを示した(図16)。この発現系は現在、本発明者らの共同研究者のJohn Hunt博士(コロンビア大学)によってX線結晶解析サンプルを調製するために使用されている。
実験設計および方法
本発明者らはMazFに対して実施したように、種々の天然のmRNAおよび合成RNAを用いて詳細な実験を実施してYafQ MIase活性の正確な特異性を決定するつもりである(Zhang et al.、2005a)。このように決定された切断特異性に基づき、本発明者らはYafQに対するCBS基質を合成するつもりである。

HipAは、その高分子量のために非常に変わった毒素である。すべての他の毒素は約100個のアミノ酸残基から成っているが、大腸菌K12由来のHipAは440個の残基から成っている。このhipB−hipAモジュールは、多剤耐性に導く存続性において役割を果たすことに結びつけられている。野生型大腸菌細胞集団の特定の部分が、薬剤耐性遺伝子が存在しない場合でさえもペニシリンを含む多数の抗生物質に対して耐性であることが知られている。「細菌の存続(bacterial persistence)」と呼ばれるこの現象は、抗生物質で患者を治療する際の重大な医学的問題と考えられている。表現型の転換が正常に増殖している細胞と低下した増殖速度を有する「存続(persister)」細胞間に生じるので、存続性は(遺伝的に同一である)細菌集団における先在する不均一性と連関している。興味深いことにhipA突然変異株(hipA 7、G22SおよびD291A)は、多くの異なる抗生物質に対する「存続」細胞表現型を増加させる(Moyed and Bertrand、1983)。HipAに対する細胞標的の同定は、存続表現型の分子メカニズムに対する重要な洞察を与える可能性がある。
実験設計および方法
HipA−HipB複合体は、すでに本発明者らの研究室において大腸菌で良好に発現している(図6)。この複合体のX線構造解析を開始した(コロンビア大学のJohn Hunt博士と共同で)。HipAの細胞標的を同定するために、本発明者らは最初に酵母ツーハイブリッド法を用いて、Ni−NTA樹脂上でHisタグ付きHipAを用いるプルダウン試験によってHipAと相互作用し得る細胞因子(複数可)の分離も試みるつもりである。HipAのさらなる特性決定は、上記で同定された細胞標的によって決まるであろう。HipA7変異タンパク質は細胞に致死効果を及ぼさないので、本発明者らはさらなる生化学的特性決定のために、この変異タンパク質を発現して精製するつもりである。本発明者らは、特に大腸菌におけるHipAの誘導により生じた細胞のフィラメンテーション(cellular filamentation)の表現型に興味を持っており、これはHipAが細胞分裂と直接的または間接的に(例えばDNA複製を阻害することによって)関連している可能性があることを示唆している。本発明者らは、現在研究室で作製しているHipAに対する抗血清を用いて、HipAの細胞内局在も測定するつもりである。これらの実験から得られる結果は、HipAが細胞増殖に及ぼす有毒性効果により、正確な分子機構を解明するさらなる実験的方法の重要な基礎を提供すると思われる。

HigB−HigA複合体は、すでに発現されていた(図6)。本発明者らは、直ちにYoeB、Doc、YafQおよびHipAについて前述した方法によりHigBの細胞標的の同定を続けるつもりである。このシステムは原核生物における主要なTAシステムの1つであるので、HigB−HigA複合体は研究3に記載の小分子のスクリーニングに関しても含まれるであろう。

前述したように、枯草菌由来のMazFホモログ(YdcE)および黄色ブドウ球菌由来のMazFホモログに対する小分子のスクリーニングは、炭疽菌および黄色ブドウ球菌などのグラム陽性病原体に対する新しい抗生物質の開発において重要な意味合いを有している。したがって本発明者らは、研究3のためにこれらのTA複合体をクローニングして発現するつもりである。YdcEに対するRNA切断特異性が、Pellegriniらによって決定された(Pellegrini et al.、2005)。黄色ブドウ球菌由来のMazFホモログのRNA切断特異性が、大腸菌のMazFに対して実施された(Zhang et al.、2003b)のと同様に決定されるであろう。

本発明者らは、すでにインフルエンザ菌由来のVapC−VapB複合体をクローニングして発現させた(図6)。本発明者らは、インフルエンザ菌のVapCの発現は大腸菌では致死的であることも見いだした(図示せず)。現時点ではその細胞標的は解っていない。
【0090】
実験設計および方法
インフルエンザ菌のVapCの特性決定 − 本発明者らは、すでにインフルエンザ菌由来のVapC−VapB複合体をクローニングして発現した(図6)。本発明者らは、インフルエンザ菌のVapCの発現は大腸菌に致死作用を及ぼすことも見いだした(図示せず)。しかし液体培養で細胞増殖が何世代かにわたって続き、長く延びた細胞を形成する(図示せず)。DNA複製阻害が細胞分裂をブロックして糸状の細胞の形成を引き起こすことが知られているので、このことはVapCによりDNA複製が阻害され得ることを示唆している。この適用において本発明者らは、まず最初に本発明者らのMazFの特性決定に関する論文(Zhang et al.、2003b)に記載したように、RNAに対するウラシル、DNAに対するチミジンおよびタンパク質合成に対するメチオニンの取り込みに及ぼすVapCの誘導効果を調べることにより、in vivoにおけるVapCの細胞標的を同定するつもりである。本発明者らはまた、細胞でVapCと相互作用するタンパク質(複数可)を同定するために酵母ツーハイブリッド法を用いるつもりである。本発明者らは、VapCのC末端にHisタグを有するVapC−VapB複合体を発現させるつもりなので、Ni−NTA樹脂を用いるプルダウン試験によってVapCと相互作用する可能性のある細胞因子(複数可)の分離も試みるつもりである。VapCのさらなる特性決定は、VapCの細胞標的によって決まるであろう。
【0091】
結核菌由来のVapCホモログ − 結核菌は異常に多数(23)のVapC−VapBホモログを有している。これらの系統発生的関係を図18に示す。これらのモジュールは、ヒト組織におけるこの病原体の休眠に関して重要な役割を果たす可能性があるので、小分子のスクリーニングに対してこれらの複合体を標的にする価値がある。またこの病原体は9つのMazFホモログを有しており、このすべてを本発明者らの研究室でクローニングした。これらのいくつかは大腸菌で良好に発現し、そのMIase活性が特徴付けられた(論文は評価中)。したがって本発明者らは、これらのVapC−VapBモジュールのクローニングおよび発現においていかなる問題も予見していない。本発明者らはこの系統樹の異なるブランチから、これら6つ(mt−3、mt−7、mt−14、mt−16、mt−18およびmt−22)を選択するつもりであり、これらは大腸菌でクローニングされて発現するであろう。本発明者らは、上述したようにインフルエンザ菌のVapCで得られた結果に基づいてこれらの毒性を特徴付けるつもりである。これらのTA複合体は、研究3に記載されているように小分子に対するスクリーニングのためのGFP融合タンパク質として発現されるであろう。
【0092】
研究3:TA複合体の解離を検出する高感度の一般的方法の開発
小さな化学物質による毒素−抗毒素複合体の解離は、Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsを用いるHisタグ付き毒素の除去後に、溶液中でGFPタグ付き抗毒素から発生するGFP蛍光シグナルを測定することによって検出され得る。
【0093】
GFP融合技術は、生化学研究において欠くことのできない手段になっている。しかしGFP融合タンパク質は、標的タンパク質の機能を保つためにGFPと標的タンパク質間に適切なリンカー配列を必要とすることが示されている。したがって融合タンパク質が最適に機能する異なる長さのリンカーを有するように設計されていることが、それぞれの融合タンパク質に不可欠である。適用に関して、GFP融合は抗毒素と毒素の間の複合体形成を阻害してはならない。この理由のために、本発明者らは様々な長さを有するリンカーを含むリンカーライブラリを開発した。このライブラリを用いて、本発明者らはGFP融合TA複合体の各々に対して、リンカーの最適なサイズを同定することができる。
【0094】
理論的根拠
上記の単離した大部分の毒素の細胞標的はまだ同定されていないので、本発明の方法はすべてのTAシステムに適用可能な一般的な方法である。高感度の方法でTA複合体から解離した抗毒素を検出する条件を確立することが重要である。したがって本発明の方法はGFPタグおよびHisタグを用いるスクリーニング法である。
【0095】
実験的方法
NdeIを欠くGFP遺伝子の構築 − 緑色蛍光タンパク質(GFP)は、自発的に蛍光を発するタンパク質である。GFPは任意の生物で発現させることができる、その特徴的な蛍光の励起および発光特性を維持する。これは極めて安定であることが示され、したがってそのN末端またはC末端のいずれにもタンパク質の融合を容易に許容できるため、これが所望のタンパク質に融合される場合、これは発現パターンをモニターするリポーター遺伝子として広く使われている。
【0096】
プラスミドpcDNA3−1NT−GFP−TOPOの変異したGFP遺伝子(Invitrogen)を用いるつもりである。その理由は、このGFP遺伝子は3サイクルのDNAシャッフリングによって作製され、(1)大腸菌で高い溶解性、および(2)野生型GFPよりも>40倍の蛍光の増加をもたらすからである。さらにまたこのGFP遺伝子のコドンの使用は大腸菌での発現に対して最適化される。今後このGFPタンパク質は、Cycle−3−GFPと呼ぶ。Cycle−3−GFP遺伝子は、1つのNdeI部位(塩基235〜240において;塩基1はGFPコード配列の1番目の塩基である)を有する。本発明者らは、最初にGFP遺伝子に点突然変異を導入して、テンプレートとしてpcDMA3−1NT−GFP−TOPOプラスミドを用いる部位特異的突然変異誘発によってそのアミノ酸配列を変更することなく、NdeI部位(CATATG→CACATG)を除去するつもりである。得られたプラスミドは、pGFP(ΔNdeI)と呼ぶつもりである。pcDNA3−1NT−GFP−TOPOプラスミドのGFP遺伝子は、そのコード配列の後に終止コドンを含まないことに留意されたい。
【0097】
HisタグおよびGFPタグを有するpETに基づくプラスミドの構築 − GFP遺伝子を、テンプレートとしてpGFP(ΔNdeI)プラスミドを用いるPCRによって増幅するつもりである(図19)。このPCR産物を、NdeIおよびEcoRIで消化したpET21プラスミド(Novagen)(図20A)およびEcoRIおよびNotIで消化したpET28プラスミド(Novagen)(図20B)に導入するつもりである。得られたプラスミドをpET21−GFP/HisおよびpET28−His/GFPと呼ぶつもりであり、それぞれGFP配列の下流および上流にHisタグ配列を有している。終止コドン(TAA)を、pET28−His/GFPプラスミドのGFPコード配列の後に導入してその翻訳を終了させるつもりであることに留意されたい。
【0098】
Hisタグ付き毒素遺伝子およびGFPタグ付き抗毒素遺伝子またはその逆を有するpETに基づくプラスミドの構築 − 本発明者らは、別の生物に由来するいくつかのTAオペロンを用いてpETに基づく発現プラスミドを構築するつもりである。一般に毒素遺伝子は、それらのオペロンでそれらの抗毒素遺伝子の下流に位置している。しかしhigA(抗毒素)がhigB(毒素)の下流に位置するhigB−higAオペロンなどの毒素−抗毒素の異なる配置を有するいくつかの例外が存在する。本発明者らは、HisタグまたはGFPタグが毒素−抗毒素複合体形成のその完全な特徴を維持する融合タンパク質を構築するために理想的であるかどうか知らないので、本発明者らは、(1)一般的なTAオペロン(抗毒素−毒素の順序、例えばhipB−hipA、dinJ−yafQ、yefM−yoeB、relB−relE、phd−doc、vapB−vapC、ydcD−ydcEおよび黄色ブドウ球菌のmazE−mazFホモログの順序で)に対して、His−抗毒素/毒素−GFPおよびGFP−抗毒素/毒素−His、ならびに(2)逆方向に配向したTAオペロン(毒素−抗毒素の順序、例えばhigB−higAの順序で)に対してHis−毒素/抗毒素−GFPおよびGFP−毒素/抗毒素−GFPを構築するつもりである。大腸菌のmazE−mazF、およびchpBI−chpBK遺伝子が、これらの構築から除外されていることに留意されたい(研究1を参照のこと)。
【0099】
TAオペロンのそれぞれに対して、本発明者らはEcoRI/NotIおよびNdeI/EcoRI部位を有する2つのPCRプライマー対を設計するつもりである。これらのプライマーを用いて、それぞれのTAオペロンは増幅され、それぞれEcoRI/NotIおよびNdeI/EcoRIにより消化されたpET21−GFP/HisおよびpET28−His/GFPプラスミドの両方にクローニングされるであろう。得られたプラスミドは、これらのTA複合体の精製に用いるつもりである。
【0100】
TA複合体の精製 − 上記で構築したpETに基づくTA発現プラスミドを保有するBL21(DE3)株を、合成培地で対数増殖期まで37℃でインキュベートする。TA遺伝子を、1mMのイソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を用いて4時間誘導する。細胞を遠心分離により採取し、緩衝液A[50mMのNaHPO、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール、1mMのβ−メルカプトエタノール(β−ME)]に懸濁する。細胞をフレンチプレッシャーセル(ThermoIEC、MA)で溶解し、細胞残渣および未破壊細胞を低速遠心分離により除去する。上清を0.45μmのフィルター(Millipore)を通過させ、Ni−NTAカラム(QIAGEN)にアプライする。カラムを緩衝液Aで十分に洗浄し、TA複合体を緩衝液A中150mMのイミダゾールで溶出する。サンプルを一緒にプールし、50mMのNaClおよび5mMのβ−MEを含む50mMのTris−HCl(pH8.0)緩衝液に透析する。
【0101】
GFPの蛍光シグナル測定による放出された毒素/抗毒素タンパク質の定量 − ハイスループット・スクリーニング分析法を開発する前に、毒素/抗毒素に融合したGFPの蛍光シグナルを検出する条件を確立することが重要である。本発明者らは、市販のNi−NTA Magnetic Agarose Beads(QIAGEN)を用いてこれらの複合体から解離したGFPタグ付き毒素/抗毒素を分離するつもりである。Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsは、磁性粒子を含み、アガロースビーズの表面に共有結合した強い金属キレート化ニトリロ三酢酸(NTA)基を有するアガロースビーズである。これらはニッケルでチャージ済であり、単一のチューブまたは96ウェルマイクロプレートで精製に用いることができる。この磁性ビーズは非常に小容量で用いることができ(わずか10μlで10μgのタンパク質までの精製に使用することができ)、したがって96ウェルフォーマットのハイスループット微小規模精製に好都合である。GFPタンパク質の蛍光特性は、6Mグアニジン−HCl、8M尿素または1%SDSを用いる長期にわたる処理で影響を受けない。種々のプロテアーゼ、例えば1mg/mlまでの濃度でトリプシン、キモトリプシン、パパイン、スブチリシン、サーモリシンおよびパンクレアチンを用いる長期にわたる(48時間)処理では、GFPの強度を変更できなかった(Bokman and Ward、1981)。GFPは65℃まで中性緩衝液中で安定であり、5.5から12までの広範囲のpH安定性を示す。
【0102】
それぞれのGFPタグ付きタンパク質は、その非GFPタグ付き相対物と同様の方法でその同族のタンパク質と複合体を形成する。溶液中に放出されたGFP蛍光を検出するために、Ni−NTA樹脂上に結合した同量のTA複合体を8M尿素を用いて解離する。エッペンドルフチューブ中で、緩衝液A中のNi−NTA磁性アガロースに結合したTA複合体を室温度で30分間、8M尿素で処理する。チューブを強力な磁性NdFeB(ネオジム−鉄の−ホウ素)ディスク上に置き、放出されたGFPタグ付きタンパク質をチューブ底部に引き寄せる(図21)。上清を空のチューブへ移し、本発明者らは488nmでの励起および515nmでの発光の検出により分光光度計を用いて上清の蛍光を測定するつもりである。尿素を含まない緩衝液A中のサンプルを、バックグラウンド対照として用いる。
【0103】
予期される問題に対する解決策
いくつかのGFPタグ付き毒素/抗毒素は、GFP融合に対してそれぞれのTA複合体を適切に形成しないかもしれない。この場合、本発明者らはGFPと標的タンパク質間に追加のリンカーペプチドを導入するつもりである。もう1つの留意するべき点は、GFP融合が毒素または抗毒素を不活性化するかもしれないことである。本発明者らは、すべてのGFP融合毒素の毒性を調べることによりこれらを試験するつもりであり、これらはpBADベクターに挿入することにより本出願において構築されるであろう。これらのpBAD構築物でトランスフォームした細胞が添加したアラビノースに対して感受性を示す場合、本発明者らはGFP融合は毒素の毒性に影響を及ぼさないと結論付けるであろう。同様な方法で、本発明者らは毒素−GFP融合抗毒素モジュールも同じpBADベクターに挿入するつもりである。これらのプラスミドでトランスフォームした細胞がアラビノース感受性を示す場合、特定の抗毒素に対するGFP融合は、その同族の毒素と相互作用する抗毒素の能力を無能力化する。この方法により、本発明者らはハイスループット・スクリーニングに用いることができる毒素を選択することができるはずである。これらどちらの構築物も満足できる結果を与えない場合、本発明者らは以下の方法を試みるつもりである。すなわち、(1)本発明者らは、GFPと毒素または抗毒素の間のリンカーを拡張するつもりであり、これは毒素または抗毒素とGFPの干渉を減らす可能性がある。(2)最後の手段として、本発明者らはTA複合体がマレイミド(Invitrogen)などの小さい蛍光分子を用いて共有結合的に修飾され得るように、毒素または抗毒素のC末端にシステイン残基を組み込むつもりである。
[参考文献]







【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】mazE−mazFオペロンの調節。MazEおよびMazF mRNAは、同じオペロンから合成される。1つのMazE二量体が2つのMazF二量体に結合してMazFエンドリボヌクレアーゼ活性を阻害することができ、生じたヘテロ六量体はTAオペロンをネガティブに自動調節する。MazE二量体はClpPAにより切断を受けて、TAオペロン転写を自動調節することもできるが、MazE−MazFヘテロ六量体複合体に比べはるかに弱い。MazF二量体は、MazEが結合していない場合MIaseとして機能してACA配列で特異的にmRNAを切断する(Zhang et al.、2003b)。このMazFエンドリボヌクレアーゼ活性は、細菌細胞の成長停止および最終的には細胞死をもたらす。またすべての他のTAシステムも、同様の方法でネガティブに自動調節されるようである。
【図2】毒素−抗毒素複合体のX線構造。A.MazF−MazE複合体。1つのMazE(色が薄いグレー(右側)の場合はシアン)が、2つのMazFホモ二量体(色がダークグレーおよび非常に薄いグレーの場合は、ブルーおよび淡いブルー)に結合している(Kamada et al.、2003)。B.RelE−RelB複合体。2つのRelB単量体(色が最も薄いグレー(左側)および非常に薄いグレー(右側)の場合は、イエローおよび淡いブルー)が、RelE二量体(色がグレー(左側)およびダークグレー(右側)の場合は、グリーンおよびブルー)に結合している。RelEに結合している場合、RelBは拡がった高次構造の単量体として存在する(Takagi et al.、2005)。C.YoeB−YefMヘテロ六量体複合体。2つのYefM単量体のそれぞれ(色が底部に向かってダークグレー/最も薄いグレーおよび上部に向かって薄いグレー/グレーの場合は、ブルー/淡いブルーおよびシアン/グリーン)が、1つのYoeB単量体とヘテロ三量体複合体(色が淡いグレー(左上側)および右側下に向かって中間のグレーの場合は、淡いグリーンおよびオレンジ)を形成する(Kamada and Hanaoka、2005)。
【図3】様々な毒素−抗毒素複合体のX線構造[Buts et al.(2005)Trends in Biochem.Sci.30、672〜679頁から改変]。(a)MazF−MazE(4:2)ヘテロ六量体複合体。MazFに結合した場合(グレー−ホワイト表面)、MazEは拡がった高次構造を有する2つのC末端MazF認識ドメイン(色がダークグレー(左側)およびグレー(右側)の場合は、ダークブルーおよびレッド)にはさまれた球状二量体化ドメイン(色が薄いグレーおよびより薄いグレーの場合は、淡いブルーおよびピンクである)から成る。MazFが存在しない場合、MazEのC末端ドメインは秩序付けられていないKamada et al.、2003)。(b)YoeB−YefM(1:2)ヘテロ三量体複合体。2つのYefM単量体は、1つのYoeB単量体とヘテロ三量体の複合体を形成する。1つのYefM単量体において、N末端のドメインは、完全に秩序付けられており(色がダークグレー(左側)の場合は、ダークブルー)、YoeB(グレー−ホワイト表面表示)に結合して触媒部位で立体配置の変化を誘導する。第2のYefM単量体の対応する部分(色がグレーの場合はレッド、色が無い場合は、中間色のレッド)は、第2の結合したYoeB単量体が存在しない場合は部分的にしか順序づけられていない(Kamada and Hanaoka、2005)。(c)RelE−RelB(2:2)ヘテロ四量体の複合体。RelEに結合した場合、RelBは拡がった高次構造を有する単量体として存在する。その毒素パートナーが存在しない場合、これは折り畳まれていないと推測される。2つのRelB単量体(色がダークグレー(ブルー)(左側)およびグレー(レッド)(右側)である場合はレッドおよびブルー)は、RelE二量体(グレー表面)に結合する(Takagi et al.、2005)。
【図4】蛍光プローブおよびクエンチャーの構造。A.ROX、6−カルボキシル−X−ローダミンの構造。B.Eclipseクエンチャーの構造。この化合物は、400から650nmまでの広い波長範囲にわたって蛍光をクエンチする非蛍光性分子である。
【図5】CBS−1を用いているMazF活性のアッセイ。A.CBS−1の切断。反応はテキストに記載したように実施した。蛍光は550nmにおける励起を用いて635nmで測定した。用いたMazFの量を図の左側にピコモルで示す。B.Aからのデータに基づく時間に対するMIaseの反応速度。
【図6】BL21(BE3)株におけるT7発現系を用いる毒素と抗毒素の同時発現。対数期まで増殖した細胞培養を、1mMのIPTGの存在下で37℃で4〜5時間インキュベートした。全細胞タンパク質をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた後、クーマシー・ブリリアント・ブルー染色に付した。M、タンパク質マーカー;レーン1、IPTGが存在しない場合;レーン2、BL21(DE3)/pET21phd−doc;レーン3、BL21(DE3)/pET21hipB−hipA;レーン4、BL21(DE3)/pET21dinJ−yafQ;レーン5、BL21(DE3)/pET21mazE−mazF;レーン6、BL21(DE3)/pET21yefM−yoeB;レーン7、BL21(DE3)/pET28higB−higA;レーン8、BL21(DE3)/pET21chpBI−chpBK;レーン9、BL21(DE3)/pET21vapB−vapC、およびレーン10、BL21(DE3)/pET21relB−relE。すべてのオペロンに対する3’末端の遺伝子産物、例えばDoc、HipA、YafQ、MazF、YoeB、HigB、ChpBK、VapCおよびRelEに、そのN末端に融合したHisタグを有するHigBを除き、そのC末端にHisタグを付けた。毒素および抗毒素に対応するバンドを、それぞれ緑の三角形および赤い円形で示している。MazEおよびHis−MazF(レーン5)が、この条件下で同じ位置に共に移動したことに注意すべきである。
【図7】酵母細胞における、YoeBまたはRelEでなく、YafQの発現は細胞死または成長停止を引き起こす。2−□m発現プラスミドpYES2(ガラクトースを用いて毒素発現の誘導を可能にする)を含む等量の野生型酵母細胞を、SC−uraプレート上にスポットして発現プラスミドの選択を持続した;細胞は左から右に連続希釈(1:2)した。
【図8】YoeB発現は、in vivoおよびin vitroにおける新たなタンパク質合成を阻害する。パネルA.YoeBの誘導を伴う場合と伴わない場合の、指数増殖期の大腸菌細胞への[35S]メチオニンの取り込み。等しい培養量に由来する等量の細胞溶解物をSDS−PAGEにかけた後、オートラジオグラフィーに付した。パネルB.大腸菌抽出物(Promega)に加えて次第に増量する組み換え型YoeBを用いるin vitroでの翻訳。分子量マーカーの位置を中心のレーンに示す:216、132、78、45.7、32.5、18.4および7.6kDa。
【図9】YoeBは、MazFと比べ明確に異なる反応速度論でmRNAを分解する。lpp(主要な外膜リポタンパク質)mRNAの安定性は、結核菌(MTb;上部パネル)または大腸菌(中間パネル)または大腸菌MazF(下部パネル)由来のいずれのYoeBの誘導後、続いてノーザン分析を実施した。
【図10】70SリボソームとYoeBとの相互作用は、mRNAテンプレート上のリボソームの位置をシフトする。YoeBの翻訳開始複合体に及ぼす効果を測定するトウプリンティング・アッセイ(Toeprinting assay)。mazG由来の140ntの5’mRNAフラグメントをT7 RNAポリメラーゼにより作製し、示したように70Sリボソームおよび/または開始複合体の他の成分をアセンブルするために用いた。適切な産物の位置を左に示す。「リボソーム」とは、70Sリボソームを意味し、「tRNA」とは、tRNAfMetを意味する。mazGの対応するフラグメントのDNA塩基配列決定ラダーを、プライマーが伸長を停止した配列の決定に用いて産物間の距離を測定した。
【図11】YoeBは、大きい50Sリボソーム・サブユニットと結合している。リボソーム分画を、アラビノースによって媒介されるYoeB発現(10分)を伴うまたは伴わない指数増殖期の細胞から採取し、ショ糖密度勾配遠心分離によって分離した。下部パネルは、ウエスタンブロット分析によりすぐその上のプロフィールにおいて代表的な分画で検出されるYoeBタンパク質量を反映している。右側の高いピークはショ糖勾配の上部に沈降するtRNAおよび可溶タンパク質を示す。
【図12】ompAおよびompF mRNAを用いるin vivoでのプライマー伸長実験。アラビノースの存在下でYoeBを2時間誘導した後、全RNAをプライマー伸長実験のために抽出した。示したように、プライマー伸長は開始コドン下流のompA mRNAに対して3塩基およびompF mRNAに対して6塩基でブロックされた。他のいかなるバンドも観察されなかった。開始コドン(GTA)およびシャイン−ダルガルノ配列(GGAG)はグレーで示されている(色付きの場合は、開始コドンはレッドで、シャイン−ダルガルノはブルーである)。
【図13】Doc誘導後のノーザンブロット分析。アラビノース添加によりpBADベクターを用いてdoc遺伝子を誘導した。ゲルの上部に示した誘導後の時間に、全細胞RNAを抽出して、ompA、tufAおよびompF mRNAについてノーザンブロットにより分析した。
【図14】pBADdocを保有する細胞を用いるDoc誘導を伴わない場合(左パネル)または伴う場合(右のパネル)の細胞のポリソームパターン。図11に記載されているように、アラビノース添加によるDoc誘導を伴う場合と伴わない場合のポリソームパターンを分析した。翻訳伸長反応をブロックする抗生物質であるハイグロマイシンの存在下(上部パネル)または非存在下で、ポリソームパターンを分析した。
【図15】YafQは、in vivoで部位特異的エンドリボヌクレアーゼ活性を示す。in vivoにおける一部のera遺伝子のプライマー伸長分析で、YafQによる切断の促進が認められた(YafQ誘導時点は、eraプラスミドを含むがYafQプラスミド(YafQサンプルに隣接する、0、90、120分レーン)を含まない野生型大腸菌BW25113細胞に対する赤線下の5分から120分レーンである)。時間は0.2%アラビノースを用いるpBADにおけるYafQ誘導の分を示す。era mRNAは、YafQ誘導前30分にIPTGを用いて誘導された。左側の最も遅く移動するバンドは、完全長プライマー伸長産物を示し、他の3つのバンドはera mRNA中の二次構造に起因する未熟終止を示す。真正のYafQ認識部位は、対照に比べて時間と共に増加するその分解産物として示される。別のYafQ切断部位がゲル上でさらに上部に認められるが、切断部位を決定するために別のeraプライマーの使用を必要とする。YafQに対する明白な切断部位は、ACAのようである(配列決定ラダー上に示されたその相補体)。
【図16】DinJはYafQと安定な複合体を形成する。dinJ−yafQモジュールを、HisタグをYafQのカルボキシ末端のみに添加できるようにpET発現ベクターにクローニングした。左側および右側のパネルのサンプルを、示した時間誘導し、SDS−PAGEに付してクーマシーブルーで染色した。左側のパネル由来サンプルのアフィニティークロマトグラフィー後、右側のパネルはDinJはYafQと同時精製することを示す。精製DinJ−YafQバンドが、MALTI−TOF質量分析法によって現在確認されている。
【図17】大腸菌MazFとの、枯草菌、炭疽菌、および黄色ブドウ球菌由来のMazFホモログの配列アラインメント。同一の残基は黒色のバックグラウンドであり、相同な残基はグレーのバックグラウンドである。
【図18】23の結核菌VapC(mt−1〜mt−23)の系統学的関係。ディチェロバクター・ノドサス(Dichelobacter nodosus)、レプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)およびサルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)由来のVapCも、推定上のその他の結核菌毒素であるMazJ(mt−l)およびMazJ(mt−2)と共に含まれる。
【図19】サイクルGFP(ΔNdeI)遺伝子のクローニング。GFPフラグメントは、pGFP(ΔNdeI)プラスミドを用い、5’ATCACATATGATGGCCAGCAAAGGAGAA3’および5’AATACGAATTCGCTTTTGTAGAGCTCGTC3’または5’CATGAATTCATGGCCAGCAAAGGAGAA3’および5’AATAGCGGCCGCTTAGCTTTTGTAGAGCTCGTC3’を用いるPCRによって増幅される(下線を付した配列は、制限酵素の認識部位に対応する)。
【図20】pET21−GFP/HisおよびpET28−His/GFPプラスミドの図式的マップ。(A)EcoRIおよびNotIならびに(B)NdeIおよびEcoRIが、標的遺伝子のクローニングに用いられる。星印で示された制限酵素は特有な部位でない。
【図21】Ni−NTAとHisタグ付きTA複合体間の相互作用。このタンパク質を移したとき、磁性ビーズはチューブの底部に引き寄せられ、蛍光を測定するGFPタグ付きタンパク質を放出する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗毒素がその同族の毒素と複合体を形成することを阻止するかまたは部分的に阻止する作用物質を同定する方法であって、溶液中で標識した基質と潜在的作用物質とを接触させることを含み、それにより標識の検出は、抗毒素が毒素と複合体を形成することを阻止する作用物質が存在することを示す方法。
【請求項2】
mRNAインターフェレースとして機能する作用物質を同定するために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基質が短いDNA−RNAキメラ基質を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キメラ基質が約12個の塩基を含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基質が、5’末端に蛍光プローブおよび3’末端にクエンチャーを結合することにより標識されたdGdAdTdArUdAdCdAdTdAdTdGである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光プローブがROXであり、クエンチャーがEclipseである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基質が切断可能なビーコン基質(CBS−1)である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
MazE/MazF複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記基質が、5’末端に蛍光プローブおよび3’末端にクエンチャーを結合することにより標識されたdGdAdTdArUrArCdGdTdAdTdGである請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光プローブがROXであり、クエンチャーがEclipseである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基質が切断可能なビーコン基質(CBS−2)である請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ChpBI/ChpBK複合体形成またはYdcD/YdcE複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記基質が、5’末端に蛍光プローブおよび3’末端にクエンチャーを結合することにより標識されたdGdAdTdArUrArCdCdTdAdTdGである請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記蛍光プローブがROXであり、クエンチャーがEclipseである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基質が切断可能なビーコン基質(CBS−3)である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
YdcD/YdcE複合体形成を阻止する作用物質を同定するために使用される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記基質が、GFPタグ付き抗毒素およびHisタグ付き毒素またはHisタグ付き抗毒素およびGFPタグ付き毒素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記GFPタグ付き毒素またはGFPタグ付き抗毒素が、前記GFPと前記毒素の間または前記GFPと前記抗毒素の間にリンカーを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
mRNAインターフェレースとして機能しない作用物質を検出するために使用される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記標識したAT複合体基質が解離した場合、Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsを用いてHisタグ付き毒素を除去した後に、溶液中でGFPタグ付き抗毒素から生成したGFP蛍光シグナルを測定することにより検出される請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記標識したAT複合体基質が解離した場合、Ni−NTA Magnetic Agarose Beadsを用いてHisタグ付き抗毒素を除去した後に、溶液中でGFPタグ付き毒素から生成されたGFP蛍光シグナルを測定することにより検出される請求項17に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法により同定される作用物質。
【請求項23】
毒素−抗毒素複合体の形成を妨害することができる作用物質。
【請求項24】
前記毒素−抗毒素複合体が細菌細胞中に存在する請求項22に記載の作用物質。
【請求項25】
1つまたは複数の異なる従来の抗生物質と組み合わせて、請求項22に記載の1つまたは複数の異なる作用物質を含む組成物。
【請求項26】
請求項25に記載の組成物を含み、さらに医薬賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項27】
請求項22に記載の作用物質と微生物細胞を接触させることを含む、微生物細胞を死滅させるまたはその増殖を阻害する方法。
【請求項28】
請求項26に記載の医薬組成物を投与することを含む感染を治療する方法。
【請求項29】
前記感染が結核菌(M.tuberculosis)である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記感染が抗生物質耐性菌により引き起こされる請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記抗生物質耐性菌がバンコマイシンに耐性である請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記微生物細胞がバイオテロリズムに用いられる病原体である請求項27に記載の方法。
【請求項33】
請求項22に記載の作用物質と細胞を接触させて、前記細胞を死滅させず、前記細胞を休眠させることにより細菌細胞の休眠を調節する方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図2】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−531034(P2009−531034A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501747(P2009−501747)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/064739
【国際公開番号】WO2007/109781
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508055722)ユニヴァーシティ オブ メディシン アンド デンティストリ オブ ニュージャーシィ (4)
【Fターム(参考)】