説明

新規結合剤を含む電極、並びにその製造方法及び使用方法

新規結合剤を含むリチウムイオン電気化学セル用電極組成物を提供する。新規結合剤としては、カルボン酸及びスルホン酸のリチウムポリ塩類、酸類のコポリマー類のリチウム塩類、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー類、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース及びこれらの組み合わせが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国実用新案出願第11/671,601号明細書(2007年2月6日出願)、並びに米国特許仮出願第60/911,877号公報、同第60/911,878号公報及び同第60/911,879号公報(全て、2007年4月14日出願)からの優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
新規結合剤及びこれらの組成物により作製された電極を包含する電池パックを含むリチウムイオン電気化学セル用電極組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
粉末状活性成分をポリフッ化ビニリデンのような高分子結合剤と共に混合することを伴うプロセス内にて、リチウムイオンセル用電極を製造するために、主族元素の粉末状合金及びカーボンブラックなどの導電性粉末が使用されてきた。混合成分は、高分子結合剤用溶中の分散体として調製され、金属箔基材又は集電体上へと被覆される。得られた複合電極は、金属基材に付着した結合剤中に粉末状活性成分を含有する。
【0004】
ポリフッ化ビニリデン、芳香族及び脂肪族ポリイミド類及びポリアクリレート類などの多くのポリマー類が、金属及びグラファイト系リチウムイオンセル用電極のための結合剤として使用されてきた。しかし、得られたセル内の第1サイクル不可逆容量損失は、受け入れ難いほど大きい場合があり、例えば、粉末金属材料系電極について、300mAh/g以上である。リチウムイオンセルなどの2次電気化学セルは、可逆的に充電及び放電を複数回行うことができる。リチウムイオン電池の場合、リチウムイオン電気化学セルの充電及び放電は、セルの電極のリチオ化及び脱リチオ化によって行われる。リチウムイオンセルを組み立てた際、それらは通常、正極中に過剰なリチウムイオンを含有し、負極中にリチウムイオンを含有しない。セルの初期サイクル反応(充電)中に、負極がそのリチウムイオン吸収容量に到達するまで、正極から負極へリチウムが移動する。最初の放電において、リチウムイオンは、リチオ化した負極から正極へとまた移動する。通常は、最初の充電後、負極内のリチウムイオンの全てが、負極外へ移動可能なわけではない。これにより、セル容量の不可逆的損失として知られているものがもたらされる。更なるサイクル(最初のサイクル後)によるセルの容量損失は、容量減退と呼ばれている。これは、繰り返しサイクルによる電極活物質のモルホロジー変化、繰り返しサイクル又はその他の原因による電極活物質上での絶縁膜の蓄積を含む様々な理由で生じうる。望ましいリチウムイオンセルは、初期サイクル後の不可逆容量損失が小さく、そして複数サイクル後の容量損失(減退)が小さいものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したことを考慮すると、出願者らは、第1サイクル容量損失(不可逆容量損失)が小さく、そして容量減退が小さい電極が必要とされていると考える。加えて、高い熱的安定性及び向上した安全特性を有する電極が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様においては、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、スズ、スズ合金、炭素及びこれらの組み合わせから選択される、リチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤と、を含む電極組成物を提供する。
【0007】
別の態様では、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、この粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素及びこれらの組み合わせから選択される、リチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤と、を含む負極用電極組成物であって、100%超〜約107%のカルボン酸基が中和されている、負極用電極組成物が提供される。
【0008】
更に別の態様では、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、この粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素及びこれらの組み合わせから選択される、リチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース及びこれらの組み合わせから選択される結合剤と、を含む電極組成物を提供する。
【0009】
別の態様では、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、粉末材料は、LiCoO;コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム金属酸化物;Fe;Li4/3Ti5/3;LiV;LiV;LiCo0.2Ni0.8;LiNiO;LiFePO;LiMnPO;LiCoPO;LiMn;並びにこれらの組み合わせから選択される、並びにリチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース、並びにこれらの組み合わせから選択される結合剤と、を含む正極用電極組成物が提供される。
【0010】
更に別の態様では、正極、負極、電解質を含む電気化学セルであって、電極の少なくとも1つが提供した電極組成物を含む電気化学セルが提供される。
【0011】
更なる態様では、集電体を用意することと、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料を用意することと、粉末材料は、スズ;スズ合金;炭素;LiCoO;コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム金属酸化物;Fe;Li4/3Ti5/3;LiV;LiV;LiCo0.2Ni0.8;LiNiO;LiFePO;LiMnPO;LiCoPO;LiMn;並びにこれらの組み合わせから選択される、この粉末材料とリチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤とを含む被覆を集電体に適用することと、を含む、電極の製造方法が提供される。
【0012】
最後に、別の態様では、集電体を用意することと、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料を用意することと、粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素;LiCoO;コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム金属酸化物;Fe;Li4/3Ti5/3;LiV;LiV;LiCo0.2Ni0.8;LiNiO;LiFePO;LiMnPO;LiCoPO;LiMn;並びにこれらの組み合わせから選択される、リチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース及びこれらの組み合わせから選択される結合剤とを含む被覆を集電体に適用することと、を含む、電極の製造方法が提供される。
【0013】
提供された新規結合剤を使用することにより、不可逆容量及び減退を低下させることができる。リチウムポリ塩結合剤を使用して電極を形成させることによって、これらの電極における不可逆第1サイクル容量損失を大幅に低下させることができる。提供された結合剤を使用して、従来の高分子結合剤を用いて調製した電極又はセルと比較して、減少した第1サイクル不可逆容量損失を示す電極及びセルを作製することができる。
【0014】
提供された新規結合剤は、小粒子合金粉末をベースにした電極を用いる充電式リチウムイオンセルのサイクル寿命を向上させることができる。開示された結合剤はまた、容量が向上し、容量減退が低減した充電式リチウムイオンセルの製造を可能にする。
【0015】
本願において、
「a」、「an」及び「the」は、「少なくとも1つの」と同じ意味で用いられ、記載された要素の1以上を意味する。
【0016】
「金属」とは、金属類と、元素状態又はイオン状態のいずれかにある、シリコン及びゲルマニウムなどの半金属との両方を意味する。
【0017】
「合金」とは、2種又はそれ以上の金属の混合物を意味する。
【0018】
「リチオ化する」及び「リチオ化」とは、リチウムを電極材料に加えるプロセスを意味する。
【0019】
「脱リチオ化する」及び「脱リチオ化」とは、電極材料からリチウムを除去するプロセスを意味する。
【0020】
「活性材料」とは、リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な材料を意味する。
【0021】
「充電する」及び「充電」とは、電気化学的エネルギーをセルに提供するプロセスを意味する。
【0022】
「放電する」及び「放電」とは、例えば、所望の動作を実施するためにセルを使用する際に、セルから電気化学的エネルギーを除去するプロセスを意味する。
【0023】
「正極」とは、放電プロセス中に電気化学的還元及びリチオ化が発生する電極(多くの場合、カソードと呼ばれる)を意味する。
【0024】
「負極」とは、放電プロセス中に電気化学的酸化及び脱リチオ化が発生する電極(多くの場合、アノードと呼ばれる)を意味する。そして、
「高分子電解質」とは、電解質基を備えた繰返し単位を有する、ポリマー又はコポリマーを意味する。電解質基は、水中で解離して、ポリマーを水溶性にし、帯電したものとする、塩又はポリマー端又はポリマーペンダント基のいずれかが帯電した部分である。電解質基の例としては、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸又は任意のその他酸性基の塩が挙げられる。
【0025】
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、用語「脂肪族」、「脂環式」及び「芳香族」としては、炭素及び水素のみを含有する置換及び非置換部分、炭素、水素及びその他の原子(例えば、窒素又は酸素環原子)を含有する部分、並びに炭素、水素又はその他の原子(例えば、ハロゲン原子、アルキル基、エステル基、エーテル基、アミド基、ヒドロキシル基又はアミン基)を含有し得る原子又は基で置換された部分が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】提供された電極が2325型コインセルに組み込まれた場合の実施形態の1つのサイクル性能(mAh/グラム対サイクル数)のグラフ。
【図2】提供された電極が2325型コインセルに組み込まれた場合の実施形態の別の1つのサイクル性能(mAh/グラム対サイクル数)のグラフ。
【図3】ポリアクリロニトリル(PAN)結合剤を有する提供された電極の実施形態の1つのサイクル性能(mAh/グラム対サイクル数)のグラフ。
【図4】フェノール樹脂結合剤を有する提供された電極の実施形態の1つのサイクル性能(mAh/グラム対サイクル数)のグラフ。
【図5】グルコース結合剤を有する提供された電極の実施形態の1つのサイクル性能(mAh/グラム対サイクル数)のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
数字範囲の詳細説明には、その範囲内に含まれる全ての数が包含される(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。本明細書の全ての数値は、「約」という用語を付記する修正がなされるものとする。
【0028】
負極又は正極にて使用可能な電極組成物を提供する。各種粉末材料を使用して、電極組成物を作製することができる。例示的粉末材料としては、例えば、炭素、シリコン、銀、リチウム、スズ、ビスマス、鉛、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、金、白金、パラジウム、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、モリブデン、ニオビウム、タングステン、タンタル、鉄、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、ランタニド、アクチニド又は前述の金属類若しくは半金属のうち任意のものを含有する合金、並びに当業者によく知られている、他の粉末状活性金属類及び半金属類を含有することができる。黒鉛状炭素粉末を使用して、開示された電極組成物を製造することもできる。例示的粉末は、一方向の最大長が60μm以下、40μm以下、20μm以下、あるいはそれより更に小さいものであり得る。粉末は、例えば、サブミクロン、少なくとも1μm、少なくとも2μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm、あるいはそれより大きな最大粒径を有してもよい。例えば、好適な粉末は多くの場合、1μm〜60μm、10μm〜60μm、20μm〜60μm、40μm〜60μm、1μm〜40μm、2μm〜40μm、10μm〜40μm、5μm〜20μm又は10μm〜20μmの最大寸法を有する。粉末材料は、粉末粒子内に任意のマトリックス形成剤を含有することができる。この粒子内に元々(即ち、第1リチオ化前に)存在する各相は、粒子内で他の相と接触することができる。例えば、シリコン/銅/銀合金を主成分とした粒子内では、シリコン相が銅シリサイド相及び銀又は銀合金相の両方と接触することができる。粒子内の各相は、例えば、500オングストローム未満、400オングストローム未満、300オングストローム未満、200オングストローム未満、150オングストローム未満、あるいはより小さい結晶粒度を有することができる。
【0029】
本発明にて有用な例示的シリコン含有粉末材料としては、シリコン合金が挙げられ、ここで粉末材料は、約65〜約85モル%(モルパーセント)のシリコン、約5〜約12モル%の鉄、約〜約12モル%のチタン及び約5〜約12モル%の炭素を含む。有用なシリコン合金の更なる例としては、米国特許出願公開第2006/0046144号公報(オブロヴァック(Obrovac)ら)に記載されているようなシリコン、銅及び銀又は銀合金、米国特許出願公開第2005/0031957号公報(クリステンセン(Christensen)ら)に記載されているような多相でシリコン含有の電極、米国特許出願第11/387,205号公報、同第11/387,219号公報及び同第11/387,557号公報(全てオブロヴァック(Obrovac)ら)に記載されているような、スズ、インジウム、ランタニド、アクチニド元素又はイットリウムを含有するシリコン合金、米国特許出願第11/562,227号公報(クリステンセン(Christensen)ら)に記載されているような高シリコン含有量を有する非晶質合金、及び米国特許出願第11/419,564号公報(クラウス(Krause)ら)及び国際公開第2007/044315号公報(クラウス(Krause)ら)に記載されているような負極に使用されるその他の粉末材料を含む組成物が挙げられる。
【0030】
提供される組成物において有用なその他の例示材料としては、スズ、スズ合金、炭素及びこれらの組み合わせが挙げられる。提供された組成物の実施形態中にて有用なスズ合金としては、アルミニウム、チタン、鉄、インジウム、希土類金属、イットリウム及びシリコンを挙げることができる。スズ合金は、合金の最大重量%(wt%)がスズである合金である。スズ合金がシリコンを含む場合、合金中のシリコン量は、合金中のスズの重量%より小さく、合金中のスズの80重量%未満であり、合金中のスズの70重量%未満であり、合金中のスズの60重量%未満であり、合金中のスズの50重量%未満であり、合金中のスズの25重量%未満であり、合金中のスズの10重量%未満であり、合金中のスズの5重量%未満であり、あるいはそれよりも少ない。
【0031】
本発明の電気化学セル及び電池又は電池パックの正極を製造するための有用な活性材料としては、Li4/3Ti5/3、LiV、LiV、LiCo0.2Ni0.8、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn及びLiCoOなどのリチオ化合物類、米国特許第6,964,828号明細書、同第7,078,128号明細書(ルゥ(Lu)ら)に記載されているような、コバルト、マンガン及びニッケルの混合金属酸化物を含む正極活性材料組成物、並びに米国特許第6,680,145号明細書(オブロヴァック(Obrovac)ら)に記載されているようなナノコンポジット正極活性材料が挙げられる。
【0032】
本発明の負極を製造するために有用な例示的粉末材料としては、米国特許第6,203,944号明細書及び同第6,699,336号明細書(共に、ターナー(Turner)ら)に記載されているようなもの、米国特許出願公開第2003/0211390号公報(ダーン(Dahn)ら)に記載されているようなもの、米国特許第6,255,017号明細書(ターナー(Turner))及び同第6,436,578号明細書(ターナー(Turner)ら)に記載されているようなもの、粉末、フレーク、繊維又は球状物(例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB))などの形態で存在する黒鉛状炭素、米国特許出願公開第2005/0079417(A1)号公報(キム(Kim)ら)、同第2005/0164090(A1)号公報(キム(Kim)ら)、同第2006/0088766(A1)号公報(キム(Kim)ら)及び同第2007/0166615(A1)号公報(タカムク(Takamuku)ら)に記載されているようなバナジウムを含む金属酸化物粉末、米国特許出願公開第2005/0079417号公報、同第2005/0164090号公報及び同第2006/0088766号公報(全て、キム(Kim)ら)、並びに米国特許出願公開第2007/0166615号公報(タカムク(Takamuku)ら)に記載されているようなバナジウムを含む金属酸化物粉末、これらの組み合わせ、並びに当業者によく知られている他の粉末状物質が挙げられる。前述の参考文献のそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
提供された結合剤と共に使用可能なその他の粉末状負極活性材料としては、リチウム並びに水素、リチウム及び希ガスを除く20以下の原子番号の元素の少なくとも1種と共に合金化可能な合金材料を含む活性材料が挙げられる。合金材料としては、例えば、Sn並びにNi、Cu、Fe、Co、Mn、Zn、In及びAgなどの少なくとも1種の金属を挙げることができる。原子番号が20以下の元素としては、B、C、Al、Si、P又はSを挙げることができる。負極活性材料は、リチウムがスムーズに挿入かつ抽出可能なように、低結晶質又は非晶質構造を有することができる。原子番号が20以下の元素の含有量は、約10重量%(wt%)〜約50重量%の範囲内であり得る。
【0034】
提供された負極活性材料の別の例は、スズ、コバルト及び炭素を含有し、インジウム、ニオビウム、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン及びビスマスからなる群からの少なくとも1つを更に含有する。本負極活性材料の炭素含有量は、約9.9重量%〜約29.7重量%であり、コバルト対スズとコバルトの総量の比が、約30重量%〜約70重量%である。炭素以外の第14族元素及びタリウム以外の第13族元素から選択される元素の少なくとも1種を含有する合金粉末からなる有用な負極材料も提供する。
【0035】
他の有用な負極材料は、リチウム及び炭素と共に金属間化合物を生成可能な元素を含有する反応相を含む。本反応相中、X線回折による回折ピークの半価幅は、好ましくは0.5度以上である。
【0036】
粉末状合金粒子は、導電性被覆を含むことができる。例えば、シリコン、銅及び銀又は銀合金を含有する粒子は、導電性材料層と共に被覆することができる(例えば、粒子コア内の合金組成物及び粒子シェル内の導電性材料にて)。好適な導電性材料としては、例えば、炭素、銅、銀又はニッケルが挙げられる。
【0037】
例示的粉末状合金材料は、任意の既知の手段、例えば、物理的に混合し、次に各種前駆体構成成分を合金へと粉砕することによって調製することができる。混合は、単純にブレンドすること又は溶融スピニングによることが可能である。溶融スピニングは、合金組成物を高周波電界内で溶融し、次にノズルを通して回転ホイール(例えば、銅ホイール)の表面上へと射出することができるプロセスを含む。回転ホイールの表面温度が、溶融合金の温度よりも大幅に低いために、回転ホイールの表面に接触すると、溶融物は急冷される。急冷が、電極性能に有害となり得る巨大晶子の形成を最小限に抑える。導電性被覆を用いる場合、それらは電解メッキ、化学的気相成長、真空蒸着又はスパッタリングなどの技術を用いて形成させることができる。好適な粉砕は、垂直型ボールミル、水平型ボールミル又は当業者に既知のその他粉砕技術などの各種技術を使用することにより行うことができる。
【0038】
電極組成物は、当業者によく知られている添加剤を含有することができる。電極組成物は、粉末材料から集電体への電子移動を促進するための導電性希釈剤を含むことができる。導電性希釈剤としては、炭素(例えば、負極用カーボンブラック及び正極用のカーボンブラック、一次黒鉛など)、金属、金属窒化物類、金属炭化物、金属シリサイド及び金属ホウ化物が挙げられるが、これらに限定されない。代表的導電性炭素希釈剤としては、カーボンブラック例えば、スーパーP及びスーパーSカーボンブラック(共にMMMカーボン社(MMM Carbon)、ベルギーより)、シャワニガンブラック(SHAWANIGAN BLACK)(シェヴロン・ケミカル社(Chevron Chemical Co.)、テキサス州ヒューストン(Houston))、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、グラファイト、炭素繊維及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
電極組成物は、粉末材料又は導電性希釈剤の結合剤への接着性を促進する接着促進剤を含むことができる。接着促進剤と結合剤との組み合わせは、リチオ化/脱リチオ化のサイクルの繰り返し中に、粉末材料内に発生することがある体積変化に、電極組成物がより適切に適応する手助けをすることができる。提供された結合剤は、金属類及び合金類への十分に良好な接着性を提供し、接着促進剤の添加を必要としないようにできる。使用する場合、接着促進剤結合剤の一部とすることができ(例えば、追加された官能基の形態である)、粉末材料上の被覆であることができ、導電性希釈剤に加えることができ又はこのような手段の組み合わせであることができる。接着促進剤の例としては、米国特許出願公開第2004/0058240号公報(クリステンセン(Christensen))に記載されているようなシラン類、チタネート類及びホスホネート類が挙げられる。
【0040】
提供された結合剤は、リチウムポリ塩類を含む。リチウムポリ塩類としては、リチウムポリアクリレート類(ポリメタクリレート類を含む)、リチウムポリスチレンスルホネート類及びリチウムポリスルホネートフルオロポリマー類が挙げられる。リチウムポリ塩類は、対応するアクリル酸又はスルホン酸から、酸性基を塩基性リチウムによって中和することによって入手可能である。酸性基類を中和するためには、一般に水酸化リチウムが使用される。ナトリウムなどのその他カチオン類を、イオン交換によってリチウムと置き換えることもまた、本出願の範囲内である。例えば、SKT10L(商標名ジアニオン(DIANION)にて三菱化学株式会社(Mitsubishi Chemical Industries)から入手可能)などのイオン交換樹脂を使用して、ナトリウムイオンをリチウムイオンと置換することができる。
【0041】
理論に束縛されるものではないが、リチウムポリ塩類は、粉末状活性材料を被覆し、そしてイオン導電性である層を形成させることができると考えられている。リチウムイオン電気化学セルは、リチウムイオン伝導度に依存するため、このことは、これらの結合剤を用いて作製した電極の寿命延長及び減退低減の能力を向上させる。更に、提供されたリチウムポリ塩類は、電気伝導が幾分維持されるように十分に薄く、粉末状活性材料を被覆すると考えられている。最後に、リチウムポリ塩類は、サイクルを繰り返した際に、リチウムイオン電極の早期故障に繋がることが当業者に知られている絶縁性のSEI(固体電解質界面)(solvent electrolyte interface)層の形成を抑制することができると考えられている。
【0042】
提供された結合剤は、酸(そこからポリ塩が誘導される)の酸性基(末端又はペンダント基にある)のモル当量を基準にして、少なくとも約50モル%、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約90モル%又はそれ以上のリチウムを含む。中和可能な酸性基としては、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸及び任意のその他の酸性基(ポリマー上に一般的に見出される、置換のための1個のプロトンを有する)が挙げられる。本発明にて有用な市販材料の例としては、ペルフルオロスルホン酸ポリマー類、例えば、ナフィオン(NAPHION)(デュポン社(Dupont)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))から入手可能)及び熱可塑性アイオノマーポリマー類、例えば、サーリン(SURLYN)(これもまたデュポン(DuPont)から入手可能)が挙げられる。興味のあるその他材料としては、米国特許第6,287,722号明細書(バートン(Barton)ら)に記載されるもののようなリチウムポリイミド類が挙げられる。
【0043】
リチウムポリアクリレートは、水酸化リチウムによって中和したポリ(アクリル酸)から作製することができる。本願において、ポリ(アクリル酸)は、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの誘導体からなる任意のポリマー又はコポリマーを、アクリル酸又はメタクリル酸を使用して作製されたコポリマーの、少なくとも約50モル%、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%又は少なくとも約90モル%含む。これらのコポリマー類を形成させるために使用可能な有用なモノマー類としては、例えば、1〜12個の炭素原子を持つアルキル基(分枝又は非分枝)、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、N−アルキルアクリルアミド類、N,N−ジアルキルアクリルアミド類、ヒドロキシルアルキルアクリレート類、マレイン酸、プロパンスルホネート類、などを有するアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル類が挙げられる。特に興味深いのは、特に、中和又は部分的中和後において水溶性であるアクリル酸又はメタクリル酸のポリマー類又はコポリマー類である。水溶性は通常、ポリマー若しくはコポリマーの分子量及び/又は組成物の関数である。ポリ(アクリル酸)は、高度に水溶性であり、そしてアクリル酸を大きなモル分率で含有するコポリマー類と一緒であることが好ましい。ポリ(メタクリル)酸は、特に分子量がより大きい場合に、水溶性はより小さい。
【0044】
本発明にて有用なアクリル酸及びメタクリル酸のホモポリマー類及びコポリマー類は、約10,000グラム/モル超、約75,000グラム/モル超、あるいは約450,000グラム/モル超、更にはより大きい分子量(M)を有することができる。本発明にて有用なホモポリマー類及びコポリマーは、約3,000,000グラム/モル未満、約500,000グラム/モル未満、約450,000グラム/モル未満、あるいはより小さい分子量(M)を有する。ポリマー類又はコポリマー類上のカルボン酸酸性基(Carboxylic acidic groups)は、ポリマー類又はコポリマー類を水又は別の好適な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド又は水と混和性の、その他の双極性非プロトン性溶媒の1種以上中に溶解させることによって中和することができる。ポリマー類又はコポリマー類上のカルボン酸基(アクリル酸又はメタクリル酸)は、水酸化リチウム水溶液にて滴定することができる。例えば、ポリ(アクリル酸)34重量%の水溶液は、水酸化リチウム20重量%の水溶液による滴定によって中和することができる。通常は、モル基準で、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、107%以上のカルボン酸基が、リチオ化される(水酸化リチウムで中和される)。100%超のカルボン酸基が中和される場合、これは、十分な水酸化リチウムがポリマー又はコポリマーへ添加されて、存在する過剰水酸化リチウムによって、全ての基が中和されることを意味する。
【0045】
リチウムポリスルホネートフルオロポリマー類は、対応するポリスルホン酸フルオロポリマー類から、ポリスルホン酸フルオロポリマー類を水酸化リチウムなどの塩基で中和することによって作製することができる。ポリマー上のスルホン酸基は、水酸化リチウム水溶液にて滴定することができる。例えば、ポリスルホン酸フルオロポリマー8.8%の水溶液は、水酸化リチウム20重量%の水溶液による滴定によって中和することができる。通常は、モル基準で、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は全てのスルホン酸基が、リチオ化される(水酸化リチウムで中和される)。
【0046】
本願において、ポリスルホネートフルオロポリマー類としては、スルホン酸基で終端処理されたペンダント基を有するフルオロポリマー類が挙げられる。ポリスルホネートフルオロポリマー類は、高フッ素化主鎖及びペンダント基を含むポリスルホン酸フルオロポリマー類から誘導することができ、ここで、ペンダント基は
HOS−(CFR(CFR−Z−(CFR(CFR−Z
(式中、a、b、c及びdのそれぞれは、独立して0〜3の範囲であり、c+dが少なくとも1であり、Z及びZは酸素原子又は単結合であり、そして各Rは、独立して、Fであるか又は実質的にフッ素化されているかのいずれかの、分枝又は非分枝の、1〜15個の炭素原子及び0〜4個の酸素原子をフルオロアルキル、フルオロアルコキシ又はフルオロエーテル鎖内に含有する、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ又はフルオロエーテル基)を含む。好適なペンダント基の例としては、
−OCFCF(CF)OCFCFSOH;−O(CFSOH及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0047】
フルオロポリマーの主鎖若しくはペンダント基又はその両方は、実質的に又は完全にフッ素化(ペルフルオロ化)することができる。実質的にフッ素化された主鎖又はペンダント基は、鎖の全体重量を基準にして、約40重量%以上のフッ素を含む。フルオロポリマーはまた、式−SOHを有するスルホニル末端基など、1種以上の酸性末端基を含むことができる。本発明の一実施態様では、フルオロポリマーの主鎖は、ペルフルオロ化されている。提供された組成物の幾つかの実施形態で有用であり得る他の好適なポリスルホネートフルオロポリマー類は、米国特許第6,287,722号明細書(バートン(Burton)ら)、同第6,624,328号明細書(ゲラ(Guerra))及び米国特許出願公開第2004/0116742号公報(ゲラ(Guerra))、並びに本出願人らの同時係属出願である米国特許出願第10/530,090号公報(ハンロック(Hamrock)ら)中に見出すことができる。提供された組成物の幾つかの実施形態にて有用な他の材料としては、テトラフルオロエチレン(TFE)のコポリマー類及び式FSO−CF−CF−O−CF(CF)−CF−O−CF=CFに従うコモノマーから誘導されるリチウムポリスルホネートフルオロポリマー類が挙げられる。これらは、デュポン・ケミカル社(DuPont Chemical Company)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))により、商標名ナフィオン(NAFION)として知られており、かつスルホン酸形態(即ち、FSO−末端基がHSO−へと加水分解されている)にて販売されている。
【0048】
米国特許第4,358,545号明細書及び同第4,417,969号明細書(共にエゼル(Ezell)ら)は、約22,000未満で、当量800〜1500の水和物を有するポリマー及びそのイオン交換膜を開示し、これは、実質的にフッ素化された主鎖及び式YSO−(CFR(CFR−O−主鎖に従うペンダント基を有し、式中、Yは水素又はアルカリ金属であり、R及びRは実質的にフッ素化されたアルキル基であり、cは0〜3であり、dは0〜3であり、c+dは少なくとも1である。これら材料を使用して、(中和によって)提供された組成物及び方法のいくつかの実施形態にて有用なリチウムポリスルホネートフルオロポリマー類を誘導することができる。
【0049】
リチウムポリスチレンスルホネート類は、対応するポリスチレンスルホン酸類から、ポリスチレンスルホン酸類を水酸化リチウムなどの塩基で中和することによって作製することができる。ポリマー上のスルホン酸基は、水酸化リチウムの水溶液にて滴定することができる。例えば、ポリスチレンスルホン酸5%の水溶液は、水酸化リチウム20重量%の水溶液による滴定によって中和することができる。通常は、モル基準で、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又は全てのスルホン酸基が、水酸化リチウムによって中和される。あるいは、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、ポリサイエンス社(Polysciences, Inc.)(ペンシルベニア州ウォリントン(Warrington))から、分子量70,000及び500,000の溶液として入手可能であり、そしてナトリウムは、リチウムを充填したカチオン交換樹脂を通過させることで、リチウムと交換することが可能である。分子量が約10,000〜約2,000,000のポリスチレンスルホネート類が、本発明にて有用であり得る。提供されたポリスチレンスルホネート類としては、スチレンスルホン酸のポリマー類又はコポリマー類が挙げられる。ほとんどの場合、スチレン部分のベンゼン環上には、1個のスルホン酸基が存在し得る。通常、それは環のパラ位又は3−位であり得る。スチレンのベンゼン環は更に、約1個〜約6個の炭素原子を含有する分枝又は非分枝の、アルキル又はアルコキシ基を含むその他の基で置換され得るが、これらに限定するものではない。加えて、置換基が実質的にスルホン酸基の酸性度を阻害しない限り、その他の置換が可能である。
【0050】
結合剤として有用であり得るスルホン化ポリマー類としては、ポリ(スルホン酸アリール類)例えば、ポリスチレンスルホネート、スチレンスルホネートのコポリマー類、例えばスチレンスルホネートと無水マレイン酸とのコポリマー、アクリルアミドと2−メチル−1−プロパンスルホネートとのコポリマー類、ビニルスルホネート類のホモポリマー類及びコポリマー類、アリルスルホネート類のホモポリマー類及びコポリマー類、並びにアルキルビニルベンゼンスルホネート類のホモポリマー類及びコポリマー類が挙げられる。提供された結合剤のためのその他潜在的に有用なポリマー類は、米国特許第5,508,135号明細書(レレンタール(Lelental)ら)に見出すことができる。
【0051】
別の実施形態では、合金負極組成物のためのポリアクリロニトリル系結合剤を提供する。ポリアクリロニトリル(PAN)は、空気中、200℃〜300℃の温度にて反応して、「ブラックオーロン」として知られているリボン様高分子炭素を形成させる。スキーム(I)は、ポリアクリロニトリル(PAN)の熱化学を示す。
【0052】
【化1】

【0053】
ブラックオーロンは、非常に良好な熱的及び機械的安定性を有するラダーポリマーである。ブラックオーロンを結合剤として使用して組み立てた電極は、ポリイミド(PI)を用いて作製したものと同様の電気化学的性能を有した。
【0054】
別の実施形態では、不活性雰囲気中、200℃超の温度にて硬化される、有機ポリマー類及び単純有機物質を含む、結合剤を提供する。米国特許第7,150,770号明細書及び同第7,150,771号明細書(共に、カイパート(Keipert)ら)に記載されているようなフェノール樹脂並びにグルコースなどの分子が含まれる。
【0055】
提供された結合剤は、その他の高分子材料と混合して、材料のブレンドを作製することができる。これは、例えば、結合剤の、接着性を向上させるために、伝導性を向上させるために、熱的特性を変化させるために、あるいは、他の物理的性質に影響を与えるために実施してよい。しかしながら、本発明の結合剤は、非エラストマー系である。非エラストマー系とは、結合剤が相当量の天然又は合成ゴムを含有しないことを意味する。合成ゴム類としては、スチレン−ブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムのラテックスが挙げられる。例えば、本発明の結合剤は、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、2重量%未満又はそれ以下の天然若しくは合成ゴムを含有する。
【0056】
開示されたリチウムイオンセル内で種々の電解質を用いることができる。代表的な電解質は、1種類以上のリチウム塩類及び固体、液体又はゲルの形態の電荷運搬媒体を含有する。代表的リチウム塩は、セル電極が稼動する電気化学的帯域及び温度範囲(例えば、約−30℃〜約70℃)内において安定しており、選択した電荷保持媒体に可溶で、選択したリチウムイオンセル内で良好に機能することができる。代表的リチウム塩類としては、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサラト)ボレート、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、LiC(CFSO及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的電荷担持媒体は、セルの電極が稼動する電気化学的帯域及び温度範囲内において、凍結又は沸騰することなく安定しており、適した量の電荷が正極から負極へ運搬されることが可能なだけの十分な量のリチウム塩を可溶化し、選択したリチウムイオンセル内で良好に機能することができる。代表的固体電荷担持媒体としては、高分子媒体例えば、ポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー類、ポリアクリロニトリル、これらの組み合わせ及び当業者によく知られているその他の固体媒体が挙げられる。代表的液体電荷担持媒体としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン(butylrolactone)、メチルジフルオロアセタート、エチルジフルオロアセタート、ジメトキシエタン、ジグリム(ビス(2−メトキシエチル)エーテル)、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、これらの組み合わせ及び当業者によく知られているその他の媒体が挙げられる。代表的電荷担持媒体ゲルとしては、米国特許第6,387,570号明細書(ナカムラ(Nakamura)ら)及び同第6,780,544号明細書(ノー(Noh))に記載されるものが挙げられる。電荷担持媒体の可溶化力は、好適な共溶媒を添加することによって向上することができる。代表的共溶媒としては、選択した電解質を含有するリチウムイオンセルと適合する芳香性物質が挙げられる。代表的な共溶媒としては、トルエン、スルホラン、ジメトキシエタン、これらの組み合わせ及び当業者によく知られているその他の共溶媒が挙げられる。電解質は、当業者によく知られているその他の添加剤を含むことができる。例えば、電解質は、米国特許第5,709,968号明細書(シミズ(Shimizu))、同第5,763,119号明細書(アダチ(Adachi))、同第5,536,599号明細書(アラムギール(Alamgir)ら)、同第5,858,573号明細書(エイブラハム(Abraham)ら)、同第5,882,812号明細書(ヴィスコ(Visco)ら)、同第6,004,698号明細書(リチャードソン(Richardson)ら)、同第6,045,952号明細書(カー(Kerr)ら)及び同第6,387,571号明細書(レイン(Lain)ら)、並びに米国特許出願公開第2005/0221168号公報、同第2005/0221196号公報、同第2006/0263696号公報及び同第2006/0263697号公報(全て、ダーン(Dahn)ら)に記載されるもののような、酸化還元を繰り返す化学物質(a redox chemical shuttle)を含有することができる。
【0057】
提供された電気化学セルは、正極及び負極の各々の少なくとも1つを前述したように作製し、そしてそれらを電解質内に配置することによって作製することができる。通常は、微多孔性セパレータ、例えば、セルガード(Celgard)2400微多孔性材料(セルガード社(Celgard LLC)、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))から入手可能)を使用して、負極が正極に直接接触するのを防止することができる。提供された負極及び結合剤を用いて作製した電気化学セルは、従来の結合剤を用いた負極を収容した類似のセルよりも、不可逆容量損失及び減退が減少した。
【0058】
提供されたセルは、携帯型コンピュータ類、タブレット型表示器類、携帯情報端末類、携帯電話類、モータ駆動装置類(例えば、個人用又は家庭電化製品類及び乗り物類)、機器類、照明装置類(例えば、懐中電灯類)及び加熱装置を含む様々なデバイスに使用することができる。1以上の提供された電気化学セルを組み合わせて、電池パックを提供することができる。充電式リチウムイオンセル及び電池パックの構成及び用途に関する更なる詳細は当業者によく知られている。
【0059】
以下の例示的実施例により、本発明を更に説明するが、ここでは、特に指示しない限り、すべての部分及び百分率は重量パーセント(wt%)を用いる。
【実施例】
【0060】
準備的実施例1− Si70Fe10Ti1010合金の調製
Si70Fe10Ti10は、アーク炉内にて、シリコン塊(65.461g)(アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)/99.999%、ミシシッピー州ワードヒル(Ward Hill))、鉄片(18.596g)(アルファ・エイサー社/99.97%)及びスポンジチタン(15.943g)(アルファ・エイサー社/99.7%)を溶融することによって調製した。Si70Fe10Ti10の合金インゴットを小さな塊へと砕き、ハンマーミル内で処理して、150μmの平均粒径を有する合金粉末粒子を製造した。
【0061】
Si70Fe10Ti1010合金は、Si70Fe10Ti10合金粉末(前述した)及びグラファイト(ティムレックス(TIMREX)SFG44、ティムカル社(Timcal, Ltd.)、スイス、ボディオ(Bodio))を、高運動エネルギーボールミル(シモロイアー(SIMOLOYER)、CM20−201m、ゾーズ社(ZozGmbH)、ドイツ、ヴェンデン(Wenden))内にて、反応性ボールミルを行うことによって作製した。Si70Fe10Ti10合金粉末1.4423kgのサンプル、グラファイト0.0577kg及び4.76mm直径のクロム−スチール製ボール25kgをミルに充填した。ミルを180サイクル稼動させたが、各サイクルは45秒毎分550回転(rpm)の後に15秒300rpmとした。総粉砕時間は3時間であった。粉砕中、ミルは冷水で冷却させた。
【0062】
準備的実施例2− Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末
合金組成物Si74.8Fe12.6Ti12.6は、アーク炉内にて、シリコン塊(123.31g)(アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)/99.999%、ミシシッピー州ワードヒル(Ward Hill))、鉄片(41.29g)(アルファ・エイサー社/99.97%)及びスポンジチタン(35.40g)(アルファ・エイサー社/99.7%)を溶融することによって調製した。合金インゴットを小さな塊へと砕き、ハンマーミル内で処理して、約150μmの合金粉末粒子を製造した。
【0063】
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金は、Si74.8Fe12.6Ti12.6合金粉末(2.872g)及びグラファイト(0.128g)(ティムレックス(TIMREX)SFG44、ティムカル社(TimCal Ltd)(スイス、ボディオ(Bodio)))を、スペックス・ミル(スペックス・セルチプレップグループ(Spex CERTIPREP Group)、ニュージャージー州メタチェン(Metuchen))内にて、16個のタングステンカーバイト製ボール(直径3.2mm)と共に、1時間アルゴン雰囲気中にて、反応性ボールミルを行うことによって作製した。
【0064】
準備的実施例3−リチウムポリアクリレートの調製
リチウムポリアクリレートは、水酸化リチウム水溶液をポリ(アクリル酸)水溶液へ添加することによって作製した。水酸化リチウム対カルボン酸基の異なるモル比を使用した。典型的には、水酸化リチウム20重量%水溶液及びポリ(アクリル酸)の34重量%水溶液を使用した。脱イオン水を添加して、リチウムポリアクリレートの最終溶液を10重量%固形分とした。100,000(分子量)及び250,000(分子量)のポリ(アクリル酸)は、水溶液としてアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)(ウィスコンシン州、ミルウォーキー(Milwaukee))から得た。LiOHで中和したリチウムポリアクリレート65重量%のサンプル(分子量100,000及び分子量250,000の両方)は、脱イオン水185.56g、20重量%水酸化リチウム溶液60.41g及びポリ(アクリル酸)(PAA)溶液100g(水中にて34重量%)を添加することによって調製した。64%中和された固形分10重量%のリチウムポリアクリレート溶液が得られた。2つのサンプルはそれぞれ、「PAA100k−64%リチウム塩」及び「PAA250k−64%リチウム塩」とした。
【0065】
ポリ(アクリル酸)7.21g(0.01モル)(分子量450,000)(アルドリッチ・ケミカルズから入手可能)及びLiOH・HO、4.20g(0.01モル)を、ローラー上で1時間転がすことによって、ガラスジャー内の脱イオン水300.57g中に溶解させた。得られた溶液には、2.5重量%リチウムポリアクリレートが含まれていた。
【0066】
107重量%の中和されたリチウムポリアクリレートの追加サンプルは、分子量100,000及び分子量250,000のポリマーの両方を使用し、脱イオン水149.01g及び20重量%の水酸化リチウム溶液106.01gをポリ(アクリル酸)溶液(水中にて、34重量%)100gへと添加することによって調製した。水酸化リチウムが7モル%過剰である、10重量%固形分のリチウムポリアクリレート溶液が得られた。2つのサンプルはそれぞれ、「PAA100k−107%リチウム塩」及び「PAA250k−107%リチウム塩」とした。
【0067】
準備的実施例4−リチウムポリスルホネートフルオロポリマーの調製
実施例9及び10にて使用されるリチウムポリスルホネートフルオロポリマーは、米国特許出願公開第2004/0121210号公報の実施例の項にて開示されている手順に従って合成された。コモノマーAは、この点について参照される米国特許出願公開第2004/0116742号公報及び米国特許第6,624,328号明細書(共にゲラ(Guerra))に開示されている手順に従って作製した。使用したポリスルホネートフルオロポリマーは、当量980を有した。
【0068】
上記で特定した、当量980のポリスルホン酸フルオロポリマー124.66g(8.8重量%固形分の水溶液)へ、LiOH・HO O.46g(20重量%溶液)を添加し、リチウムポリスルホネートフルオロポリマーを形成させた。
【0069】
準備的実施例5−リチウムポリスルホネート溶液
イオン交換樹脂(三菱SKT10L、ジアニオン(DIANION)からのスルホン酸基との架橋ポリスチレン、イオン交換能>1.9meq/mL)75mLを、ガラス製イオン交換カラム内へ充填した。樹脂をLiOH−HO(3倍過剰、20重量%水溶液90mL)18.0gで中和した。得られる水がpH7になるまで、過剰なLiOHを水洗した。次に、カラムに、水60mL中で希釈した分子量500,000のポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウム塩(ポリサイエンス社(Polysciences Inc.)から)3.0gを充填した。イオン交換した生成物である、ポリ(スチレンスルホン酸)リチウム塩(PSSリチウム)の水溶液(4.18重量%)を、空気圧下にてゆっくりと収集した。
【0070】
準備的実施例6−ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩の合成
ポリ(エチレン−alt−無水マレイン酸)(分子量100,000〜500,000)(アルドリッチケミカル社((Aldrich Chemical Company)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能)25.22g及びLiOH・HO 16.78g(0.04モル)を、ガラスジャー内の脱イオン水581.97g中に、1時間ローラー上で転がすことによって溶解させた。得られた溶液は、ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩を5重量%で含有していた。
【0071】
準備的実施例7−ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩の合成
ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩は、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)ナトリウム塩(1:1アクリル酸/マレイン酸、分子量50,000)(アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)から入手可能)から、水酸化リチウム溶液によって前処理したカチオン性イオン交換樹脂(SKT−20、スルホン酸形態、1.9meq/mL、三菱化学株式会社(Mitsubishi Chemicals)から入手可能)を使用したイオン交換によって作製した。樹脂75mL及びポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)ナトリウム塩の2重量%水溶液100gを使用した。得られたポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩の溶液を空気中で12時間80℃にて乾燥して、固体のポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩を得た。
【0072】
準備的実施例8−ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩の合成
ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)(分子量1,980,000、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemical)から入手可能)8.71g(0.05モル)及びLiOH・HO 4.20g(0.10モル)を、ガラスジャー内の脱イオン水173.12g中に、1時間ローラー上で転がすことによって溶解させた。得られた溶液は、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩を5重量%で含有していた。
【0073】
準備的実施例9−ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩の合成
ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)の16.07重量%水溶液(分子量2,000,000、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemical)から入手可能)38.69g(0.04モル)及びLiOH・HO 1.26g(0.04モル)をガラスジャー内の脱イオン水87.96g中に1時間ローラー上で転がすことによって溶解させた。得られた溶液は、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩を5重量%で含有していた。
【0074】
準備的実施例10−ポリ(アクリル酸)リチウム塩溶液の調製−100%中和
出発物質A:LiOH・HO(シグマ−アルドリッチ社(Sigma-Aldrich))15.258gは、電磁攪拌器を使用して蒸留水137.610gと混合した。形成させたLiOH・HO溶液は、9.98重量%であった。
【0075】
出発物質B:ポリ(アクリル酸)25重量%溶液(アルファ・エイサー社(Alfa Aesar)、平均N.M.240,000)材料A128.457gを材料B88.045g中へ添加した。混合物を一晩撹拌した。形成させた溶液は、ポリ(アクリル酸)リチウム塩結合剤の11重量%溶液である。
【0076】
電極製作
(実施例1)
KETJENブラック導電性カーボン(0.024g)(アクゾ・ノーベル・ポリマー・ケミカル社(Akzo Nobel Polymer Chemical LLC)、イリノイ州シカゴ(Chicago))及びPAA100k−64%リチウム塩(10重量%固形分水溶液1.36g)をステンレス鋼容器45mL内にて、直径13μmタングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。遊星マイクロミル(パルヴァーセット(PULVERSETTE)7モデル、フリッチュ(Fritsch)、ドイツ)内にて、速度設定1で30分間、混合を実施した。次に、Si70Fe10Ti1010粉末(1.20g)、MCMB−1028グラファイト(0.64g)(MMMカーボン(ベルギー))及び脱イオン水(0.1g)をミルに添加し、速度設定2で30分間、混合を続けた。125μmギャップを持つダイを使用して、得られた溶液を13μm厚銅箔上へと被覆した。次に、真空オーブン中、120℃にて2時間、サンプルを乾燥させた。
【0077】
(実施例2)
表1の実施例2の組成物をベースにした電極は、ミルにかけた導電性カーボン及びポリマー混合物へSi70Fe10Ti1010粉末1.84gのみを添加した以外は、実施例1で使用した手順によって調製した。ミルにかけた被覆溶液は、銅箔上へと75μmギャップを使用して被覆した。
【0078】
(実施例3)
表1の実施例3の組成物をベースにした電極は、Si70Fe10Ti1010粉末(1.20g)、SLP30−グラファイト(0.64g)(ティムレックス(TIMREX)SLP30、ティムカル社(Timcal, Ltd.)、スイス、ボディオ(Bodio))、脱イオン水(1.0g)及びPAA100k−107%リチウム塩(10重量%固形分の水溶液1.6g)を、単一工程にて速度設定2で30分間ミルにかけた以外は実施例1で使用した手順によって調製した。ミルにかけた溶液は、3μmギャップを使用して銅箔上へと広げた。
【0079】
(実施例4)
表1の実施例4の組成物をベースにした電極は、脱イオン水0.2gのみを添加した以外は、実施例3で使用したのと同一の手順によって調製した。ミルにかけた溶液は、75μmギャップを使用して銅箔上へと広げた。
【0080】
(実施例5)
表1の実施例5の組成物をベースにした電極は、脱イオン水2.5gをグラファイト及びポリ(アクリル酸)と共に、粉砕工程にて使用した以外は、実施例3で使用したのと同一の手順によって調製した。ミルにかけた溶液は、75μmギャップを使用して銅箔上へと広げた。
【0081】
(実施例6及び7)
表1の実施例6及び実施例7の組成物をベースにした電極は、実施例4で使用したのと同一の手順によって調製した。
【0082】
(実施例8)
表1の実施例8の組成物をベースにした電極は、実施例5で使用したのと同一の手順によって調製した。
【0083】
【表1】

【0084】
比較実施例1
グラファイト(1.00g)(MCMB、等級6−28、大阪ガス株式会社(Osaka Gas Co.)(日本、大阪市)、Si70Fe10Ti1010(0.1グラム)、ポリフッ化ビニリデン(キナール(KYNAR)741)溶液(N−メチルピロリジノン(NMP)中10重量%、1.0g)及びNMP(2.5g)を、実施例1に記載した遊星マイクロミル内で混合した。混合物は、実施例1にあるように、被覆し、そして乾燥させた。
【0085】
比較実施例2
Si70Fe10Ti1010粉末(2.0g)及びティムレックス(TIMREX)SFG44グラファイト(2.0g)を、実施例1で使用したマイクロミル内にて、速度設定7で30分間、混合した。本混合物(1.90g)、ポリフッ化ビニリデン(キナール(KYNAR)741)溶液(1.0g)及びNMP(3.0g)は、実施例1のマイクロミル内にて、速度設定2で1時間、混合した。混合物は、実施例1にあるように、被覆し、そして乾燥させた。
【0086】
実施例1〜8のための試験用セル作製
2325−ボタンセルに使用するために、電極被覆からディスク(16mm直径)を切り出した。各2325セルは、スペーサーとしての直径18mmの銅ディスク(900μm(36ミル)厚)、直径18mmの合金電極ディスク、1個の直径20mm微多孔性セパレータ(セルガード(Celgard)2400、セパレーション・プロダクツ・セルガード社(Separation Products, Celgard, LLC.)、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))、直径18mmリチウム(0.38mm厚リチウムリボン、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))及び直径18mm銅スペーサー(600μm厚)を収容する。電解質溶液100μL(エチレンカーボネート(EC)90重量%中、1M LiPF):ジエチレンカーボネート(DEC)(1:2 v/v)(フェロ・ケミカルズ社(Ferro Chemicals)、ルイジアナ州ザカリー(Zachary));フルオロエチレンカーボネート(FEC)10重量%(福建省革新サイエンス&テクノロジー・ディヴェロップメント(Fujian Chuangxin Science and Technology Development)、中国福建省)を混合し、電解質として使用した。電解質混合物は、モレキュラーシーブ(タイプ3A)上にて12時間以上乾燥させた。コインセルは、0.005V〜0.90Vまで、合金及び合金/グラファイト電極について一定電流250mA/gにて、そしてグラファイト電極について一定電流100mA/gにて充電及び放電した。充電中に、セルが0.90Vに到達した時点で、電池電圧を一定に保ち、電流が10mA/gに到達するまで充電を続けた。ハーフサイクルごとの終わりで、セルを開回路にて15分間保った。
【0087】
各セルの初期電荷容量は、セルの電圧が0.005Vに到達するまで充電した測定総ミリアンペア時から計算した。次に、セルは上記の通り放電した。不可逆容量損失(表2に示す)は、初期電荷容量と第一放電容量との差を初期容量で除して100を掛けることで計算した。表2のデータは、本発明の結合剤を使用して作製した負極が、ポリフッ化ビニリデン結合剤により作製した電極と比較して、より小さな不可逆容量損失を有することを示す。
【0088】
【表2】

【0089】
各セルについて5サイクル後及び50サイクル後の放電容量を表3に示す。データは、本発明の結合剤を有する負極を含有するセルが、50サイクル後、フッ化ポリビニレン結合剤で作製したものよりも、減退が少ないことを示す。
【0090】
【表3】

【0091】
比較実施例1 サイクル19での放電容量
(実施例9及び10)
組成物A−92重量%合金/グラファイト及び8重量%リチウムポリスルホネートフルオロポリマー
1.214g Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末(準備的実施例2から)
グラファイト(ティムレックス(TIMREX)SLP30、スイス、ボディオ(Bodio))0.626g
リチウムポリスルホネートフルオロポリマーの8.8重量%溶液(上記の調製から)1.82g
脱イオン水1.20g
組成物B−98重量%合金/グラファイト及び2重量%リチウムポリスルホネートフルオロポリマー
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末1.29g
グラファイト(ティムレックスSLP30)0.66g
リチウムポリスルホネートフルオロポリマーの20重量%溶液(上記の調製から)0.20g
脱イオン水1.20g
各組成物(A及びB)は独立して、4個の直径1.27cmタングステンカーバイト製ボールと共に、45mLステンレス鋼容器に充填した。次に、密閉容器を遊星マイクロミル(パルヴァーセット(PULVERSETTE)7モデル、フリッチュ(Fritsch)、ドイツ)内に置き、30分間速度2で混合した。粘稠混合物は、ギャップ150μmのノッチ付き被覆用バーを使用して、13μm厚銅箔上へ被覆した。被覆は、室温で30分間乾燥し、次に120℃減圧下にて2時間乾燥した。次に、2個のローラー間で被覆に圧力をかけて、電極を圧縮した。
【0092】
実施例9及び10のための試験セル調製
2325コインセルを使用して、半分のコインセルを調製した。全ての組成物は、組立前に乾燥させ、セルの調製は露点−70℃の乾燥室内で行った。セルは、次の組成物から、次の順番、銅箔/リチウム金属フィルム/セパレータ/電解質/セパレータ/合金組成物/銅箔にて、下から上へと組み立てた。セパレータは、セルガード(Celgard)2400微多孔性セパレータ(セルガード社(Celgard LLC)、ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))であった。電解質は、10%フルオロエチレンカーボネートを含む、90重量%・エチレンカーボネート(1M LiPF含む)対ジエチレンカーボネート(容量比1:2)(関東電化工業株式会社(Kanto Denka Kogyo Co., Ltd.)、日本、東京、から入手可能)で添加した。リチウム金属は、直径18mm(0.38mm厚のリチウムリボン、アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))であった。電解液100mLを使用して、各セルを満たした。セルは、測定前にクリンプシールした。
【0093】
組成物Aを含む負極を収容するセルを実施例9として動作させた。組成物Bを含む負極を収容するセルを実施例10として動作させた。
【0094】
実施例9及び10の試験
セルは、0.005V〜0.9V、C/4の比率、室温にて、マッコール(Maccor)サイクラーを使用してサイクルを実施した。各サイクルにおいて、セルを最初はC/4の比率で、放電終了時、トリクル電流10mA/gにて、次に開回路にて15分間休止して、放電させた。次に、セルをC/4の比率で充電し、続いて開回路にて更に15分間休止させた。セルを多くのサイクルを通して動作させ、完了したサイクル数の関数として、容量減退の程度を測定した。小さな容量減退を示すセルは、優れたサイクル寿命を有していると考えられている。結果を表4に示す。
【0095】
【表4】

【0096】
(実施例11〜13)
組成物A−96重量%合金/グラファイト及び4重量%ナトリウムポリスルホネート
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末1.27g
グラファイト(ティムレックス(TIMREX)SLP30)0.65g
ナトリウムポリスルホネート(分子量70,000、ポリサイエンス社(Polysciences)から入手可能)の5重量%溶液1.60g
脱イオン水1.20g
組成物B−96重量%合金/グラファイト及び4重量%ナトリウムポリスルホネート
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末1.27g
グラファイト(ティムレックス(TIMREX)SLP30、ティムカル社(Timcal, Ltd.)、スイス、ボディオ(Bodio))0.65g
ナトリウムポリスルホネート(分子量500,000、ポリサイエンス社(Polysciences)から入手可能)の5重量%溶液1.60g
脱イオン水1.20g
組成物C−96重量%合金/グラファイト及び4重量%ナトリウムポリスルホネート
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末1.27g
グラファイト(ティムレックス(TIMREX)SLP30、ティムカル社(Timcal, Ltd.)、スイス、ボディオ(Bodio)、CH−6743)0.65g
PSSリチウム(分子量500,000)の4.18重量%イオン水溶液(準備的実施例2)1.91g
(1.0)脱イオン水
電極の調製
各組成物(A、B及びC)は独立して、4個の直径1.27cmタングステンカーバイト製ボールと共に、45mLステンレス鋼容器に充填した。次に、密閉容器を遊星マイクロミル(パルヴァーセット(PULVERSETTE)7モデル、フリッチュ(Fritsch)、ドイツ)内に置き、30分間速度2で混合した。粘稠混合物は、ギャップ150μmのノッチ付き被覆用バーを使用して、13μm厚銅箔上へ被覆した。被覆は、室温で30分間乾燥し、次に120℃減圧下にて2時間乾燥した。次に、2個のローラー間で被覆に圧力をかけて、電極を圧縮した。
【0097】
実施例11〜13のための試験用セルの作製
2325コインセルを使用して、半分のコインセルを調製した。全ての組成物は、組立前に乾燥させ、セルの調製は露点−70℃の乾燥室内で行った。セルは、次の組成物から、次の順番、銅箔/リチウム金属フィルム/セパレータ/電解質/セパレータ/合金組成物/銅箔にて、下から上へと組み立てた。セパレータは、セルガード(Celgard)2400微多孔性セパレータであった。電解質は、10重量%フルオロエチレンカーボネートを含む、90重量%エチレンカーボネート(1M LiPF含む)対ジエチレンカーボネート(容量比1:2)(関東電化工業株式会社(Kanto Denka Kogyo Co., Ltd.)、日本、東京から入手可能)で添加した。リチウム金属は、直径18mm(0.38mm厚のリチウムリボン;アルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals))であった。電解液100mLを使用して、各セルを満たした。セルは、測定前にクリンプシールした。
【0098】
組成物Aを含む負極を収容するセルを実施例11として動作させた。組成物Bを含む負極を収容するセルを実施例12として動作させた。組成物Cを含む負極を収容するセルを実施例13として動作させた。
【0099】
実施例11〜13の試験
セルは、0.005V〜0.9V、C/4の比率、室温にて、マッコール(Maccor)サイクラーを使用してサイクルを実施した。各サイクルにおいて、セルを最初はC/4の比率で、放電終了時、リクル電流10mA/gにて、次に開回路にて15分間休止して、放電させた。次に、セルをC/4の比率で充電し、続いて開回路にて更に15分間休止させた。セルを多くのサイクルを通して動作させ、完了したサイクル数の関数として、容量減退の程度を測定した。小さな容量減退を示すセルは、優れたサイクル寿命を有していると考えられている。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
電極製作−実施例14〜23
(実施例14)
Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末(準備的実施例2から)1.267g、SLP30グラファイト0.6582g、ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩(5%固形分、水中、準備的実施例6から)1.60g及び脱イオン水1.50gを45mLステンレス鋼容器内で、4個の直径1.27cm(1/2インチ)タングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。混合は、遊星マイクロミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)モデル7)内にて、速度2で30分間行った。得られた溶液は、0.15mm(0.006インチ)のギャップダイを使用して、10μm厚銅箔上へと手で広げた。サンプルは15分間風乾して、次に、圧延し、そして真空オーブン中80℃で1時間乾燥させた。
【0102】
(実施例15)
SLP30グラファイト1.90g、ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩2.0g(5重量%固形分、水中にて、準備的実施例6)及び脱イオン水2.0gを45mLステンレス鋼容器内で、4個の直径1.27cm(1/2インチ)タングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。混合は、遊星マイクロミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)モデル7)内にて、速度2で30分間行った。得られた溶液は、0.15mm(0.006インチ)のギャップダイを使用して、10μm厚銅箔上へと手で広げた。サンプルは15分間風乾して、次に、圧延しかつ真空オーブン中80℃で1時間乾燥させた。
【0103】
(実施例16)
電極は、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩の10重量%水溶液0.80gをポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)の固体から、準備的実施例7の手順に従って調製した点を除いて、実施例15で使用したのと同一の手順を使用して作製した。
【0104】
(実施例17)
電極は、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩の10重量%溶液1.0gを、脱イオン水3.0gと共に使用した点を除いて、実施例16の手順を使用して作製した。
【0105】
(実施例18)
電極は、実施例14の手順を使用し、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩の10重量%水溶液16.0g及び脱イオン水0.20g、並びに被覆のためのギャップ0.125mm(0.005インチ)を使用して作製した。オーブン内120℃減圧下にて1時間、最終乾燥を行った。
【0106】
(実施例19)
電極は、実施例15の手順を使用し、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩の5重量%水溶液(準備的実施例8から)2.0g及び脱イオン水1.0g、並びに被覆のためのギャップ0.125mm(0.005インチ)を使用して作製した。オーブン内120℃減圧下にて1時間、最終乾燥を行った。
【0107】
(実施例20)
電極は、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩(準備的実施例9から)5重量%2.0g及び脱イオン水2.0gを使用し、実施例15の手順を使用して作製した。
【0108】
(実施例21)
電極は、ポリ(アクリル酸)リチウム塩(分子量450000)の2.5重量%水溶液2.88g及びポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩(準備的実施例9から)の5重量%0.16gを脱イオン水0.40gと共に使用し、実施例14の手順を使用して作製した。
【0109】
(実施例22)
電極は、ポリ(アクリル酸)リチウム塩(分子量450000)の2.5重量%水溶液3.60g及びポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩(準備的実施例9から)の5重量%0.20gを脱イオン水1.00gと共に使用し、実施例15の手順を使用して作製した。
【0110】
(実施例23)
電極は、SLP30に代えてSi66.4Fe11.2Ti11.211.2合金粉末、ポリ(アクリル酸)リチウム塩(分子量250000)の10重量%水溶液1.44g及びポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩(準備的実施例9参照)5重量%0.32gを脱イオン水0.40gと共に使用し、実施例15の手順を使用して作製した。
【0111】
実施例14〜23の試験用セルの調製
試験用セルは、特定速度200mA/gにて、放電(脱リチオ化)終了時に10mA/gまでトリクルダウンし、そしてハーフサイクルごとの終わりで開回路にて15分間休止させた以外は、合金電極がサイクルを実施された実施例1〜8の試験用セルの調製に使用したのと同一の手順を使用して作製した。グラファイトのみ(SLP30)を有する試験用セルを、100mA/gの速度にて、10mA/gまでトリクルダウンさせてサイクルを実施した。
【0112】
実施例14〜23の試験
実施例14〜23の電極を使用して調製した試験用セルの性能を表6に示す。データは、ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩及びポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩が、Si66.4Fe11.2Ti11.211.2合金/SLP30グラファイト複合電極及びSLP30グラファイト電極のための優れた結合剤であることを示す。ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩は、ポリ(アクリル酸)リチウム塩結合剤被覆分散体のための優れた増粘剤であり、得られた電極にて良好なサイクル性能が得られた。これら2つのポリマーは、水中にて完全に相溶性であった。
【0113】
【表6】

【0114】
電極製作−実施例24〜25及び比較実施例3
(実施例24)
LiFePO(ホステック・リチウム社(Phostech Lithium Inc.)(カナダ、ケベック州))3.60g、SP(導電性カーボンSP、大阪ガスケミカル株式会社(Osaka Gas Chemicals Co.)、日本、大阪市)0.20g、ポリ(アクリル酸)リチウム塩2.5重量%溶液8.0g(分子量450000のポリ(アクリル酸)を使用し、水中にて2.5重量%まで希釈した準備的実施例1を参照のこと)及び脱イオン水3.0gを45mLステンレス鋼容器内で、4個の直径12.7mm(0.5インチ)タングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。混合は、遊星マイクロミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)モデル7)内にて、速度2で30分間行った。得られた溶液は、0.25mm(0.010インチ)ギャップのギャップダイを使用して、13μm厚アルミニウム箔上へと手で広げた。サンプルは15分間風乾して、真空オーブン中120℃で1時間乾燥させた。
【0115】
比較実施例3
LiFePO(ホステック社(Phostech))3.60g、SP(導電性カーボンSP、大阪ガスケミカル株式会社(Osaka Gas Chemicals Co.)、日本、大阪市)0.20g、10重量%ポリビニリデン2.0g(キナール(KYNAR)471、オーシモント(Ausimont)USA社(ニュージャージー州ソロフェア(Thorofare))NMP溶液(1−メチル−2−ピロリジノン、ACS等級、アルファ・エイサー(Alfa Aesar))
及びNMP5.0gを45mLステンレス鋼容器内で、4個の直径0.125cm(0.5インチ)タングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。混合は、遊星マイクロミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)モデル7)内にて、速度2で30分間行った。得られた溶液は、0.25mm(0.010インチ)ギャップのギャップダイを使用して、13マイクロメートル厚アルミニウム箔上へと手で広げた。サンプルは、80℃にて15分間風乾し、真空オーブン中で120℃に設定して1時間乾燥させた。
【0116】
(実施例25)
LiMn(本荘ケミカル株式会社(Honjo Chemical)、日本、から入手可能)1.80g、SP(導電性カーボンSP、大阪ガスケミカル株式会社(Osaka Gas Chemicals Co.)、0.10g、ポリ(アクリル酸)リチウム塩2.5重量%水溶液4.0gを45mLステンレス鋼容器内で、4個の直径1.27cm(0.5インチ)タングステンカーバイト製ボールを使用して混合した。混合は、遊星マイクロミル(プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)モデル7)内にて、速度2で30分間行った。得られた溶液は、0.25mm(0.010インチ)ギャップのギャップダイを使用して、13μm厚アルミニウム箔上へと手で広げた。サンプルは、80℃にて15分間風乾し、真空オーブン中で120℃にて1時間乾燥させた。
【0117】
試験用セルの作製−実施例24〜25及び比較実施例3
2325−ボタンセルの電極として、16mm直径のディスクを打ち抜いた。各2325セルは、直径18mmアルミニウムスペーサー0.78mm(0.031インチ)厚、直径16mm電極、1個の直径20mm微多孔性セパレータ(セルガード(Celgard)2400)、直径18mmリチウム(0.38mm厚リチウムリボン、アルドリッチ(Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能)及び0.75mm(0.030インチ)厚の直径18mm銅スペーサーから構成される。電解質(90重量%(1EC:2DEC v/v)中1MLiPF及び10重量%FEC)100μLを使用した。溶剤は、1EC:2DEC混合物(容量で)(フェロ・ケミカルズ社(Ferro Chemicals)、ルイジアナ州ザカリー(Zachary)から)及びFEC(フルオロエチレンカーボネート)(福建省革新サイエンス&テクノロジー・ディヴェロップメント(Fujian Chuangxin Science and Technology Development)、中国福建省)から作製した。混合物は、モレキュラーシーブ(タイプ3A)上にて12時間乾燥させた。
【0118】
LiFeO電極を持つ試験用セルを2.70V〜3.80V、40mA/gの特定速度で、充電終了時に、4mA/gまでトリクルダウンしてサイクルを実施した。LiMn電極を持つ試験用セルを3.0V〜4.30V及び3.0V〜4.40V、40mA/gの特定速度で、充電終了時に、4mA/gまでトリクルダウンしてサイクルを実施した。これらの電極の性能を表7に示す。ポリ(アクリル酸)リチウム塩結合剤(実施例24)を使用したLiFePO電極を持つ試験用セルは、ポリ(フッ化ビニリデン)(キナール(KYNAR)471)結合剤を用いて作製したLiFePO電極と同様のサイクル性能を示した。しかし、セルのインピーダンスは、ポリ(アクリル酸)リチウム塩結合剤を用いた場合に低かった。ポリ(アクリル酸)リチウム塩結合剤を有するLiMn電極を持つ試験用セルは、サイクル中の良好な容量保持力を示した。これらの電極では、サイクル(25サイクルまで)の初期段階にて、容量減退が観察されたが、その後200サイクルまで、容量は安定した。金属リチウム対極を有する試験用セルでは、200サイクル後に、94%という優れた容量保持力が、観察された。
【0119】
【表7】

【0120】
電極製作−実施例26〜27及び比較実施例4〜9
80重量%活性物質(AM)、12重量%カーボンブラック及び8重量%結合剤2種類の活性物質を試験した。(1)Fe(<5μm、アルドリッチ(Aldrich))及び(2)「Fe、ボールミルにかけたもの」ボールミルプロセスは、次の通り。Fe粉末4gを、アルゴン保護下にて、直径12mm硬化ステンレス鋼ボールを混合媒体として備えた、スペックス(Spex)8000高エネルギーボールミル装置を使用して、2時間ミルにかけた。ここで使用したカーボンブラックは、スーパーSカーボンブラック(SS)(MMMカーボン(ベルギー))であった。4つの結合剤:(1)ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、(2)ポリ(アクリル酸)リチウム塩(100%中和されたもの)、(3)ポリイミド(PI)及び(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)を使用した。電極は、表8に示すようにして試験した。
【0121】
【表8】

【0122】
電極調製−実施例26〜27及び比較実施例4〜9
(実施例26)
AM 0.592g、SS 0.089g、PAA(−100%リチウム塩)溶液(11重量%水溶液、上述の方法にて作製した)0.538g及び水0.732gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を0.5時間、毎分500回で、低エネルギーボールミル(改良型スペックス(Spex)8000ミル)を使用して振盪させた。次に、形成させたスラリーは、75μm高さのノッチバーで銅箔上にキャストし、90℃空気中にて一晩乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、2.58mg/cmであった。
【0123】
(実施例27)
AM 0.503g、SS 0.075g、PAA(−100%リチウム塩)溶液(11重量%水溶液、上述の方法にて作製した)0.457g及び水1.313gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.32mg/cmであった。
【0124】
比較実施例4
AM 0.590g、SS 0.088g、PVDF溶液(N−メチルピロリジノン(NMP)中9重量%溶液)0.655g、NRC、カナダ)及びNMP 1.545gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.19mg/cmであった。
【0125】
比較実施例5
AM 0.518g、SS 0.077g、PI溶液(HDマイクロPI2525、19.6固形物重量%NMP溶液)0.263g及びNMP 1.400gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.38mg/cmであった。
【0126】
比較実施例6
AM 0.500g、SS 0.075g、CMC粉末(ダイセル(Daicel)CMC2200)0.050g及び水2.485gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.00mg/cmであった。
【0127】
比較実施例7
AM 0.515g、SS 0.077g、PVDF溶液0.572g(N−メチルピロリジノン(NMP)9重量%溶液、NRC(カナダ))及びNMP 1.562gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.07mg/cmであった。
【0128】
比較実施例8
AM 0.608g、SS 0.091g、PI溶液0.310g(HDマイクロPI2525、固形物19.6重量%NMP溶液)及びNMP 1.545gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、1.45mg/cmであった。
【0129】
比較実施例9
AM 0.500g、SS 0.075g、CMC粉末(ダイセル(Daicel)CMC2200)0.050g及び水2.565gを卵形硬化鋼バイアル瓶内に加えた。混合物を振盪させてスラリーを形成させ、次に実施例26に記載されているようにして被覆し、そして乾燥させた。典型的な活性物質使用量は、0.94mg/cmであった。
【0130】
実施例26〜27及び比較実施例4〜9のための試験用セルの調製
Fe電極は、対極及び参照電極としてのリチウム箔(FMC)ディスクを使用した2325型コインセル内で作用電極としての役割を果たす。各コインセルのために、ミクロ孔質ポリプロピレン(PP)セパレータ(セルガード(Celgard)2500)の層を使用した。使用した電解質は、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)(容積比1:2、グラント・ケミカル・フェロ・ディヴィジョン(Grant Chemical Ferro Division))90重量%:フルオロエチレンカーボネート(FEC、福建省革新(Fujian Chuangxin)(中国))10重量%の混合液中1M LiPF(ステラ(Stella)、日本)であった。コインセルは、アルゴンで充たされたグローブボックス内で、組み立てかつクリンプシールした。セルは、最初の2サイクルは、C/20でサイクルを実施し、続いて、サイクルの残りをC/5でサイクルを実施した。C率は、比容量1007mAh/gに基づいて計算した。
【0131】
実施例26及び比較実施例4〜6の手順に従って作製したFe電極についてのサイクリング結果(mAh/g対サイクル数)は、図1に示されている。
【0132】
図2は、実施例27及び比較実施例7〜9についてのサイクリングデータを示す。
【0133】
実施例28並びに比較実施例10〜11
Si60Al14FeTiInSnMm10メルトスパンリボン1.6g(米国特許出願公開第2007/0020522号公報(オブロヴァック(Obrovac)ら)の実施例2にて開示されている手順に従って作製し、200℃でアルゴン中1時間熱処理した。スーパーPカーボンブラック0.24g、PAN(アルドリッチ(Aldrich))10重量%NMP(アルドリッチ)溶液1.6g及びNMP 3.4gを、3個の9.5mm(3/8インチ)タングステンカーバイト製ボールと共に、40mLタングステンカーバイド製ミル用容器内にて、フリッチュ(Fritsch)プルヴァリセッテ(PULVERISETTE)遊星ミルを使用し、速度3に設定して1時間混合した。得られたスラリーは、190μm(0.0075インチ)ギャップを持つドクターブレードを使用してニッケル箔上へと広げた。次に、電極を80℃オーブン内に30分間置き、NMPの大部分を除去し、次に260℃オーブン内空気中で一晩硬化させた。コインセルは、リチウム対極/参照電極を備えた硬化させた電極及びEC/DEC(1:2容量比)電解質中1M LiPFを用いて組み立てた。電極の容量及びクーロン効率のプロットを図3に示す。空気中に代えてヘリウム中で硬化させたPAN結合剤を備えたSi60Al14FeTiInSnMm10電極(比較実施例11)及び20重量%(NMP中)PI結合剤(ピラリン(PYRALIN)PI2555、HDマイクロシステムズ(HD Microsystems)、ニュージャージー州パーリン(Parlin)から入手可能)を備えたSi60Al14FeTiInSnMm10電極(比較実施例12)からの結果もまた図に示す。
【0134】
(実施例29)
Si60Al14FeTiSn(Mn)10合金1.6g(米国特許出願公開第2007/0020521号公報(オブロヴァック(Obrovac)ら)の実施例1の手順を使用して作製)スーパーPカーボンブラック0.24g及びフェノール樹脂(米国特許第7,150,770号明細書(カイパート(Keipert)ら)のコラム11にて「RPR1」と称され、水で75重量%固形物まで希釈される)0.2133gをNMP 4gと混ぜ合わされ、そしてクラボウ・マゼラスター(Kurabo Mazerustar)KK−50S内で、ステップa:6−6−8、ステップb:8−5−10及びステップc:9−1−6の設定にて、混合した。スラリーは、190μm(0.0075インチ)ギャップを備えたドクターブレードを用いてニッケル箔上へと被覆し、91℃にて1時間オーブン内で乾燥させた。次に、得られた被覆を3片に分け、第1片を101℃にて16時間空気中で硬化し、第2片を200℃にて2時間空気中で硬化し、第3片を200℃にて2時間空気中で硬化し、続いて300℃にて24時間アルゴン中で硬化させた。電気化学半セル(リチウムを対極を使用)をコインセル内にて、EC/DEC 1:2電解質(1M LiPF含む)を用いて組み立てた。セルは、電圧制限5mV〜900mV、一定電流100mAにて、最初の3サイクルをサイクリングし、次に200mA/gにて後続サイクルを実施した。図4は、セルのサイクル性能を示す。300℃にてアルゴン中で硬化させた負極を含有するセルは、より低温で硬化させたセルと比較して、驚くべきほどに改善された性能を示す。
【0135】
(実施例30)
グルコース(アルドリッチ(Aldrich)、無水)1.0562gをアルミニウム秤量皿に入れ、200℃まで空気中で2時間加熱し、次に、300℃までアルゴン中で24時間加熱した。加熱後、固形物0.296gのみが、秤量皿に残っていることが見出された。このことから、グルコースは、これらの条件下で加熱後、その重量の29.6%を保持すると決定した。スラリーは、Si60Al14FeTiSn(Mn)10合金(実施例29から)2g、スーパーPカーボンブラック0.3g及びグルコース0.67gを、水及びエタノールの50/50溶液4gと組み合わせることにより調製した。スラリーをクラボウ・マゼラスター(Kurabo Mazerustar)ミキサー内で混合し、実施例29に記載されているようにして、ニッケル箔上に広げた。次に、電極を、80℃にて1時間空気中で乾燥させ、続いて200℃にて空気中で2時間加熱し、最後に300℃にてアルゴン中で24時間加熱した。上記重量喪失実験から、電極が、加熱後に、Si60Al14FeTiSn(Mn)10合金80重量%、スーパーP12重量%、グルコース固形分8重量%の組成を有するものと計算した。電気化学セルは、実施例29に記載されているようにして、組み立てて、そして試験をした。サイクル性能は、図5に示す。セルは、50サイクル後に非常に小さな容量損失である優れたサイクリングを示した。
【0136】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されることを意図するものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。引用した参照文献は全て、それらの全体が本明細書に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、
前記粉末材料は、スズ、スズ合金、炭素及びこれらの組み合わせから選択される、
リチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤と、
を含んでなる、負極用電極組成物。
【請求項2】
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、
前記粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素及びこれらの組み 合わせから選択される、
リチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤と、
を含んでなる負極用電極組成物であって、100%超〜約107%のカルボン酸基が、中和されている、負極用電極組成物。
【請求項3】
前記ポリアクリレートが、前記ポリアクリレート上の酸性基のモル量に対して少なくとも50モル%のリチウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記粉末材料が、銀、スズ、ビスマス、炭素、鉛、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、金、白金、パラジウム、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、モリブデン、ニオビウム、タングステン、タンタル、バナジウム、クロム、ジルコニウム、イットリウム、ランタニド、アクチニド及びこれらの組み合わせから選択される材料を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、
前記粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素及びこれらの組み
合わせから選択される、
リチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース及びこれらの組み合わせから選択される結合剤と、を含んでなる、電極組成物。
【請求項6】
前記リチウムスルホネートが、ポリスチレンスルホネート及びポリスルホネートフルオロポリマーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記リチウムポリスルホネートフルオロポリマーが、実質的にフッ素化された主鎖及びペンダント基を含むポリスルホン酸フルオロポリマーから誘導され、前記ペンダント基が、
HOS−(CFR(CFR−Z−(CFR(CFR−Z
(式中、a、b、c及びdのそれぞれは、独立して、0〜3の範囲であり、c+d≧1であり、Z及びZ=O又は単結合であり、そして各Rは、独立して、Fであるか又は実質的にフッ素化されているかのいずれかの、分枝鎖又は非分枝鎖の、1〜15個の炭素原子及び0〜4個の酸素原子をフルオロアルキル、フルオロアルコキシ又はフルオロエーテル鎖内に含有する、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ又はフルオロエーテル基である。)
を含む、請求項5又は6に記載の組成物。
【請求項8】
前記結合剤が、ポリ(エチレン−alt−マレイン酸)リチウム塩、ポリ(アクリル酸−コ−マレイン酸)リチウム塩、ポリ(メチルビニルエーテル−alt−マレイン酸)リチウム塩及びポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)リチウム塩から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記粉末材料が、銀、スズ、ビスマス、炭素、鉛、アンチモン、ゲルマニウム、亜鉛、金、白金、パラジウム、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、モリブデン、ニオビウム、タングステン、タンタル、鉄、銅、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、イットリウム、ランタニド、アクチニド及びこれらの組み合わせから選択される材料を更に含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記粉末材料が、約65〜約85モル%のシリコン、約5〜約12モル%の鉄、約5〜約12モル%のチタン及び約5〜約12モル%の炭素を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粉末材料が、黒鉛状炭素を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料と、
前記粉末材料は、LiCoO;コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム金 属酸化物;Fe;Li4/3Ti5/3;LiV;LiV; LiCo0.2Ni0.8;LiNiO;LiFePO;LiMnPO; LiCoPO;LiMn;並びにこれらの組み合わせから選択される、
リチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース、並びにこれらの組み合わせから選択される結合剤と、
を含んでなる、正極用電極組成物。
【請求項13】
請求項1〜12に記載の組成物を含む少なくとも1つの電極を含む、電気化学セル。
【請求項14】
請求項13に記載のセルを少なくとも1つ含む、電池パック。
【請求項15】
集電体を用意することと、
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料を用意することと、
前記粉末材料は、スズ;スズ合金;炭素;LiCoO;コバルト、マンガン及びニ ッケルを含むリチウム金属酸化物;Fe;Li4/3Ti5/3;LiV ;LiV;LiCo0.2Ni0.8;LiNiO;LiFeP O;LiMnPO;LiCoPO;LiMn;並びにこれらの組み合わ せから選択される、
前記粉末材料とリチウムポリアクリレートを含む非弾性結合剤とを含む被覆を集電体に適用することと、
を含んでなる、電極の製造方法。
【請求項16】
集電体を用意することと、
リチオ化及び脱リチオ化を受けることが可能な粉末材料を用意することと、
前記粉末材料は、スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、炭素;LiCoO; コバルト、マンガン及びニッケルを含むリチウム金属酸化物;Fe;Li4/ Ti5/3;LiV;LiV;LiCo0.2Ni0.8; LiNiO;LiFePO;LiMnPO;LiCoPO;LiMn ;並びにこれらの組み合わせから選択される、
前記粉末材料と、リチウムポリスチレンスルホネート、リチウムポリスルホネートフルオロポリマー、マレイン酸又はスルホン酸を含むコポリマーのリチウム塩、ポリアクリロニトリルポリマー、硬化フェノール樹脂、硬化グルコース及びこれらの組み合わせから選択される結合剤とを含む被覆を前記集電体に適用することと、
を含んでなる、電極の製造方法。
【請求項17】
前記被覆を適用することが、
前記粉末材料と前記結合剤の溶液とを混合して、分散体を形成させることと、
前記分散体を粉砕して、被覆可能な混合物を形成することと、
前記混合物を前記集電体上に被覆することと、
前記被覆された集電体を乾燥させることと、
を更に含む、請求項15又は16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−518581(P2010−518581A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549161(P2009−549161)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/051888
【国際公開番号】WO2008/097723
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】