説明

新規縮合多環化合物及びそれを有する有機発光素子

【課題】 本発明の目的は、赤色領域で発光し、正孔注入性の高い新規縮合多環化合物を提供することである。また、本発明の他の目的は、高効率、高色純度の赤色有機発光素子を提供できることである。
【解決手段】 下記一般式[1]で示されることを特徴とする有機化合物を提供する。
【化1】


[1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規縮合多環化合物およびこれを有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一対の電極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有する素子である。これら一対の電極から電子および正孔を注入することにより、有機化合物層中の発光性有機化合物の励起子を生成し、該励起子が基底状態にもどる際に光を放出する。
有機発光素子は有機エレクトロルミネッセンス素子、あるいは有機EL素子とも呼ばれる。
有機発光素子の最近の進歩は著しく、低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化が可能である。
【0003】
これまでに新規な赤色発光する有機化合物の創出が盛んに行われている。しかしながら、さらに高色純度、高効率の有機発光素子を提供するにあたり、前記化合物の創出が必要とされている。
【0004】
特許文献1には、赤色発光材料として縮合多環化合物a−1が開示されている。
【0005】
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−330295号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の縮合多環化合物a‐1は赤色領域で発光するが、発光効率及び色純度は十分ではない。
【0008】
本発明は高色純度、高発光量子収率で赤色発光し、電子注入性が高い新規縮合多環化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
よって本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする新規縮合多環化合物を提供する。
【0010】
【化2】


[1]
【0011】
一般式[1]において、
R1、R6、R7、R12は、水素原子、アルキル基またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アリール基は、アルキル基及びフッ素原子を置換基として有してよい。
R2乃至R5、R8乃至R11は、水素原子、アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高色純度、高発光量子収率で赤色発光し、電子注入性が高い新規縮合多環化合物を提供できる。また、それを有する高色純度、高効率の赤色有機発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る積層型有機発光素子の一例の模式図である。
【図2】本実施形態に係る有機発光素子と有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とする新規縮合多環化合物である。
【0015】
【化3】


[1]
【0016】
一般式[1]において、
R1、R6、R7、R12は、水素原子、アルキル基またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アリール基は、アルキル基及びフッ素原子を置換基として有してよい。
【0017】
アリール基が有するアルキル基は炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、iso‐プロピル基、t‐ブチル基が特に好ましい。
R2乃至R5、R8乃至R11は、水素原子、アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
R1、R6、R7、R12に設けられるアルキル基は、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましい。
R1、R6、R7、R12に設けられるアリール基は、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
R2乃至R5、R8乃至R11に設けられるアルキル基は、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、iso−プロピル基が特に好ましい。
【0018】
本発明に係る新規縮合多環化合物は、高色純度、高量子収率で赤色発光し、LUMOが低い。
【0019】
このため、本発明に係る化合物を有機発光素子の発光材料として用いた場合に、電子注入性が向上するため、有機発光素子の発光効率が高い。
【0020】
ここで、LUMOが低くなるということは、LUMOが真空準位から遠ざかることであり、LUMO値は小さくなることと同じである。また、LUMOが低いとは、LUMOが浅いと表現することもできる。
【0021】
したがって、本発明に係る化合物を有することにより、高効率、高色純度の赤色有機発光素子を提供することができる。
【0022】
(本発明に係る例示化合物A1と縮合多環化合物a−1との比較)
本発明に係る例示化合物A1と、特許文献1に記載の縮合多環化合物a−1を比較して説明する。
【0023】
【化4】


A1
【0024】
【化5】


a−1
【0025】
本発明に係る縮合多環化合物であるA1と特許文献1に記載の縮合多環化合物a−1は、ともに赤色領域での発光を有する。
【0026】
本発明に係る縮合多環化合物A1と縮合多環化合物a−1の発光スペクトルを実施例1に記載した方法と同様に測定したところ、そのピーク波長はそれぞれ606nmと597nmであった。
【0027】
なお、本実施形態における赤色領域での発光とは、希薄トルエン溶液中の発光スペクトルのピーク波長が580以上630nm以下の領域のことである。
【0028】
高色純度の赤色発光とは、600以上620nm以下の発光領域であることが好ましい。
【0029】
本発明に係る縮合多環化合物A1および他の例示化合物は、600以上630nm以下の領域内の発光であるため、縮合多環化合物a−1より高色純度の赤色発光が可能である。
【0030】
また、本発明に係る縮合多環化合物A1は、縮合多環化合物a−1よりも約1.3倍発光量子収率が高い。
【0031】
トルエン希薄溶液中の発光量子収率を測定したところ、本発明に係る例示化合物A1が0.79であり縮合多環化合物a−1が0.62であった。
【0032】
これは、本発明に係る縮合多環化合物は、分子の有効共役長が母骨格の長軸方向に大きく、遷移双極子モーメントが大きいためである。
【0033】
したがって、本発明に係る縮合多環化合物A1を有機発光素子に用いた場合、縮合多環化合物a−1のものよりも高効率な発光を得ることができる。
【0034】
また、本発明に係る縮合多環化合物A1の方が縮合多環化合物a−1よりも、LUMOが低いので、電子注入性が高い。
【0035】
本発明に係る縮合多環化合物A1は、分子内のフルオランテン部位にある5員環を3個有している。一方、縮合多環化合物a−1は分子内のフルオランテン部位にある5員環2個しか有していない。
【0036】
フルオランテン部位にある5員環は電子不足であるため、電子受容性が高くなり、LUMOが低くなる。
【0037】
これにより、5員環の数が多い本発明に係る縮合多環化合物A1の方が、より電子受容性が高く、よりLUMOが低い。
【0038】
LUMOが低い化合物を有機発光素子の発光材料に用いた場合、発光材料への電子注入性が高いので、素子の駆動電圧の低電圧化が期待できる。また、発光層内に電子が閉じ込められるので、高効率化、長寿命化が可能である。
【0039】
本発明に係る縮合多環化合物A1と縮合多環化合物a−1とに関して、下記の方法で分子軌道計算を行ったところ、LUMOの計算値も上記のことを示唆していることがわかった。表1に、LUMOの計算結果を示した。
【0040】
したがって、本発明に係る例示化合物A1を有機発光素子に用いた場合、縮合多環化合物a−1のものよりも低電圧、長寿命で高効率な発光を得ることができる。
【0041】
上記より、高量子収率で電子注入性が高い本発明に係る縮合多環化合物A1は、縮合多環化合物a−1よりも低電圧化、長寿命化、高効率化した有機発光素子を得ることができる。
【0042】
本発明に係る新規縮合多環化合物は、有機発光素子の発光材料に好ましく用いることができる。
【0043】
なお、上記では、本発明に係る縮合多環化合物A1を一例に挙げて比較したが、本発明は分子内に5員環が3個有しているため上記特性は本発明に係る新規縮合多環化合物のすべてに当てはまると考えられる。
【0044】
【表1】

【0045】
尚、分子軌道計算は以下に示す量子化学計算法を用いて行った。
【0046】
分子軌道計算では以下の手法を用いてLUMOを求めることを行った。
【0047】
上記に示した分子軌道計算は、現在広く用いられているGaussian03(Gaussian 03,Revision D.01,M.J.Frisch,G.W.Trucks,H.B.Schlegel,G.E.Scuseria,M.A.Robb,J.R.Cheeseman,J.A.Montgomery,Jr.,T.Vreven,K.N.Kudin,J.C.Burant,J.M.Millam,S.S.Iyengar,J.Tomasi,V.Barone,B.Mennucci,M.Cossi,G.Scalmani,N.Rega,G.A.Petersson,H.Nakatsuji,M.Hada,M.Ehara,K.Toyota,R.Fukuda,J.Hasegawa,M.Ishida,T.Nakajima,Y.Honda,O.Kitao,H.Nakai,M.Klene,X.Li,J.E.Knox,H.P.Hratchian,J.B.Cross,V.Bakken,C.Adamo,J.Jaramillo,R.Gomperts,R.E.Stratmann,O.Yazyev,A.J.Austin,R.Cammi,C.Pomelli,J.W.Ochterski,P.Y.Ayala,K.Morokuma,G.A.Voth,P.Salvador,J.J.Dannenberg,V.G.Zakrzewski,S.Dapprich,A.D.Daniels,M.C.Strain,O.Farkas,D.K.Malick,A.D.Rabuck,K.Raghavachari,J.B.Foresman,J.V.Ortiz,Q.Cui,A.G.Baboul,S.Clifford,J.Cioslowski,B.B.Stefanov,G.Liu,A.Liashenko,P.Piskorz,I.Komaromi,R.L.Martin,D.J.Fox,T.Keith,M.A.Al−Laham,C.Y.Peng,A.Nanayakkara,M.Challacombe,P.M.W.Gill,B.Johnson,W.Chen,M.W.Wong,C.Gonzalez,and J.A.Pople,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2004).を用いて、DFT基底関数6−31+G(d)の計算手法を使った。
【0048】
(本発明に係る有機化合物の例示)
本発明に係る縮合多環化合物の具体例を以下に示す。しかし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0049】
【化6】

【0050】
【化7】

【0051】
【化8】

【0052】
(例示化合物の性質)
本発明に係る縮合多環化合物の具体例をA群乃至D群に示した。
【0053】
A群乃至D群までの全ての化合物にメチル基、エチル基、iso−プロピル基、t−ブチル基、フェニル基及びフッ素基の少なくともいずれかが置換している。
【0054】
その目的は、スタック抑制のためと、発光波長を調整するためである。スタック抑制は、上記置換基を基本骨格に対して多く設けるほどその効果が高い。
【0055】
発光波長の調整は、色純度を向上させることはもちろん、有機発光素子とカラーフィルターを組み合わせて用いる場合にも重要な役割を果たす。
【0056】
A群乃至C群の化合物は、全て炭化水素で構成されているので、熱安定性および電気化学的安定性が高い。
【0057】
有機発光素子の駆動中、素子内ではジュール熱が発生し、有機化合物は酸化還元が繰り返されるという環境にあるため、化合物の安定性は重要な特性である。
【0058】
A群は、一般式[1]において、置換基がフェニル基のみからなる化合物群である。フェニル基同士の炭素‐炭素結合の方が、アルキル基の炭素‐炭素結合よりも結合解離エネルギーが高い。
【0059】
これにより、本発明に係る縮合多環化合物の基本骨格に対して、フェニル基を設ける方がアルキル基を設けるよりも結合解離エネルギーが高い。
【0060】
したがって、基本骨格に設ける置換基が、フェニル基である方がアルキル基よりも分子の熱安定性が高い。これにより、置換基がフェニル基のみからなるA群は、本発明に係る縮合多環化合物の中で熱安定性が高い。
【0061】
B群は、一般式[1]において、置換基がアルキル基のみからなる化合物群である。B群に挙げたアルキル基はアリール基よりも分子量が小さい。これにより、置換基がアルキル基のみからなる化合物の方が昇華温度は低くなる。
【0062】
したがって、B群は、本発明に係る化合物の中で昇華温度が低い化合物群である。
【0063】
C群は、一般式[1]において、置換基としてフェニル基とアルキル基との両方を設けた化合物群である。上記のように、フェニル基はアルキル基よりも熱安定性が高い。
【0064】
さらに、フェニル基はアルキル基を有するため、スタックを抑制する効果が高いので好ましい。
【0065】
D群は、一般式[1]において、R1、R6、R7、R12のいずれかにフッ素原子が置換されたフェニル基を有する化合物群である。フッ素基を導入すると、分子間スタックを軽減することが期待できる。
【0066】
これは、フッ素原子の電気陰性度が非常に高いので分子内で大きく分極し、その電気的反発により分子間の距離が広がるためである。
【0067】
また、フッ素基は、分子間スタックを軽減するようなアルキル基やフェニル基に比べて分子量が小さい。そのため、フッ素原子によりスタック抑制をした化合物は、アルキル基を設けた化合物よりも昇華温度が低い。
【0068】
したがって、D群は本発明に係る化合物の中で分子間スタック抑制の効果が大きく、かつ昇華温度も低い。
【0069】
置換基の置換位置とその種類に関して、本発明に係る新規縮合多環化合物は、例示化合物として挙げた置換位置以外にアリール基やアルキル基などの置換基を設けても同様の効果が得られる。
【0070】
(有機発光素子の説明)
次に本実施形態に係る有機発光素子を説明する。
【0071】
本実施形態に係る有機発光素子は一対の電極である陽極と陰極とそれらの間に配置される有機化合物層とを有し、この有機化合物層が一般式[1]で示される有機化合物を有する素子である。
【0072】
本実施形態に係る有機発光素子が有する有機化合物層は、単層であっても複数層であっても構わない。複数層とは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、エキシトンブロック層等から適宜選択される層である。もちろん、前記群の中から複数を選択し、かつそれらを組み合わせて用いることができる。
【0073】
さらに、発光層は単層であっても積層であっても良い。例えば、白色発光素子の場合、有機発光素子は複数の発光層を有し、その発光層それぞれが異なる色を発することで、素子として白色を発する素子が挙げられる。
【0074】
本実施形態に係る白色を発する有機発光素子が有する複数の発光層のうちの一層は一般式[1]で示される縮合多環化合物を有するので、赤色を発する発光層である。
【0075】
上記複数の発光層のうちの赤色を発する発光層以外の発光層が赤色とは異なる色を発するので、素子全体では、白色を発する。すなわち、赤色と他の色との混色によって白色を発する素子である。
【0076】
他にも発光層は単層であって、複数の発光材料を有することで白色を発することもできる。
【0077】
本実施形態に係る白色を発する有機発光素子の形態には、以下に示すような発光層の構成が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
(1)単層:青、緑および赤色の発光材料を含む素子
(2)積層:水色および黄色の発光材料を含む素子
(3)2層:青色発光層と緑および赤色の発光材料を含む発光層、または赤色発光層と青および緑色の発光材料を含む発光層との積層素子
(4)2層:水色発光層と黄色発光層との積層素子
(5)3層:青色発光層と緑色発光層と赤色発光層の積層素子
図1は、本実施形態に係る白色有機発光素子の一例として、上記(5)の発光層を有する素子構成の一例を示した断面模式図である。本図では3色の発光層を有する有機発光素子が図示されている。構造の詳細を以下に説明する。
【0078】
この有機発光素子は、ガラス等の基板上に、陽極1、正孔注入層2、正孔輸送層3、青色発光層4、緑色発光層5、赤色発光層6、電子輸送層7、電子注入層8、陰極9を積層させた素子構成である。ただし、青、緑、赤色発光層の積層は順不同でも良い。
【0079】
また、発光層は積層される形態に限られず、横並びに配置されてもよい。横並びとは、横並びに配置された発光層はいずれも正孔輸送層および電子輸送層に接するように配置されることである。
【0080】
また、発光層は、一の色を発光する発光層の中に他の色を発する発光層のドメインを形成する形態でもよい。
【0081】
複数の発光層のうちの少なくともいずれかひとつの発光層が本発明に係る縮合多環化合物を有する。この発光層は赤色を発する発光層であることが好ましい。
【0082】
本実施形態が示す白色を発する有機発光素子の一例は、複数の発光層のうちの赤色を発する発光以外の発光層の発光と赤色の発光とが混色することで白色を発する有機発光素子である。
【0083】
複数の発光層は、発光部が複数の発光層を有しているということもできる。
【0084】
白色を発する有機発光素子を得る場合、青色発光材料は特に限定されないが、フルオランテン骨格またはアントラセン骨格を有する発光材料が好ましい。
【0085】
また、緑色発光材料は特に限定されないが、フルオランテン骨格やアントラセン骨格を有する発光材料が好ましい。
【0086】
本発明の一般式[1]で表される縮合多環化合物を発光層のホスト材料またはゲスト材料として用いることができる。特にゲスト材料として用いた場合、580nmから660nmの領域に発光ピークを持つ赤領域に発光する高効率の発光素子を提供する。
【0087】
青色発光層の発光材料および緑色発光層の発光材料は、特に限定されないがフルオランテン骨格またはアントラセン骨格を有する化合物を用いることが好ましい。
【0088】
発光層のゲスト材料として好ましく用いることができる。ゲスト材料はドーパント材料とも呼ぶことができる。
【0089】
ここで、ホスト材料とは発光層を構成する化合物の中で最も重量比が大きい材料であり、ゲスト材料とは発光層を構成する化合物の中で重量比がホスト材料よりも小さく主たる発光をする材料である。
【0090】
また、アシスト材料とは発光層を構成する化合物の中で重量比がホスト材料よりも小さく、ゲスト材料の発光を助ける材料である。アシスト材料は、第2ホストと呼ぶこともできる。
【0091】
本発明に係る縮合多環化合物は、赤色発光するゲスト材料として用いることができる。これを用いた有機発光素子が全体として発する色は、特に限定されず、赤色発光であっても良いし、白色発光であっても良い。
【0092】
なお、本実施形態に係る縮合多環化合物をゲスト材料として用いる場合、ホスト材料に対するゲスト材料の濃度は0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
【0093】
また、本発明に係る縮合多環化合物は、正孔注入層に用いることもできる。HOMOが高いので、陽極から有機化合物層への正孔の注入を助けるためである。
【0094】
本発明に係る縮合多環化合物のHOMOが高いことは、LUMOが低いことと赤色発光を発することに起因する。赤色を発する化合物はバンドギャップが小さいので、LUMOが低いことと合わせると化合物のHOMOが高いことがわかる。
【0095】
本実施形態に係る有機発光素子は本発明に係る縮合多環化合物以外にも、必要に応じて従来公知の正孔注入性材料あるいは輸送性材料あるいはホスト材料あるいはゲスト材料あるいは電子注入性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用することができる。これら材料は低分子であっても高分子であってもよい。
【0096】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0097】
正孔注入性材料あるいは正孔輸送性材料としては、正孔移動度が高い材料であることが好ましい。正孔注入性能あるいは正孔輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0098】
ホスト材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレン誘導体、縮合環芳香族化合物(例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、クリセン誘導体、など)、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体、有機イリジウム錯体、有機プラチナ錯体等)およびポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0099】
ホスト化合物としては、具体的な構造式を表2に示す。ホスト化合物は表4に示す構造式を有する誘導体である化合物であってもよい。またそれ以外に、縮環化合物(例えばフルオレン誘導体、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体等)、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機亜鉛錯体、及びトリフェニルアミン誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0100】
【表2】

【0101】
電子注入性材料あるいは電子輸送性材料としては、ホール注入性材料あるいはホール輸送性材料のホール移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入性能あるいは電子輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機アルミニウム錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0102】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体あるいはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物である。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーでもよい。これらの電極物質は単独で使用してもよいし複数併用して使用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0103】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、チタニウム、マンガン、銀、鉛、クロム等の金属単体が挙げられる。あるいはこれら金属単体を組み合わせた合金も使用することができる。例えば、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム等が使用できる。酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で使用してもよいし、複数併用して使用してもよい。また、陰極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0104】
本実施形態に係る有機発光素子において、本実施形態に係る縮合多環化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。
【0105】
例えば、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させてスピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の塗布法により層を形成する。
【0106】
ここで真空蒸着法や溶液塗布法等によって層を形成すると、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れる。また塗布法で形成する場合は、適当なバインダー樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0107】
上記バインダー樹脂としては、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
また、これらバインダー樹脂は、ホモポリマー又は共重合体として1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【0109】
(本実施形態に係る有機発光素子の用途)
本実施形態に係る有機発光素子は、表示装置や照明装置に用いることができる。他にも電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライトなどに用いることができる。
【0110】
表示装置は本実施形態に係る有機発光素子を表示部に有する。この表示部は複数の画素を有する。この画素は本実施形態に係る有機発光素子と発光輝度を制御するためのスイッチング素子の一例としてTFT素子を有する。スイッチング素子は、この有機発光素子の陽極または陰極と薄膜トランジスタのドレイン電極またはソース電極とが接続されている。
【0111】
表示装置はPC、ヘッドマウントディスプレイ、携帯電話等の画像表示装置として用いることができる。表示される画像は、二次元画像、三次元画像を問わない。
【0112】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された画像を表示部に出力する画像出力装置でもよい。
【0113】
画像出力装置は、画像入力部をCCDセンサ等の撮像素子とし、撮像光学系を有するデジタルカメラであってもよい。
【0114】
表示装置は、出力されている画像に触れることで入力できる入力機能を有していてもよい。例えば、タッチパネル機能等が挙げられる。
【0115】
また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0116】
本実施形態に係る有機発光素子は照明装置に用いられてもよい。この照明装置は、本実施形態に係る有機発光素子と有機発光素子に接続されたインバータ回路とを有する。インバータ回路とは、交流電圧を直流電圧に変換する回路を指す。
【0117】
本実施形態に係る照明装置の照明光の色は、白色でも、昼白色でも、その他の色でもよい。
【0118】
白色を発する場合は、有機発光素子の発光部が複数の発光層を有し、本発明の化合物が赤色を発し、その他の層が赤色以外を発することで、素子として白色を発する。
【0119】
図2は、本実施形態に係る有機発光素子とそれに接続されたTFT素子とを有する表示装置の断面模式図である。
【0120】
この表示装置は、ガラス等の基板10とその上部にTFT素子又は有機化合物層を保護するための防湿膜11が設けられている。また符号12は金属のゲート電極12である。符号13はゲート絶縁膜13であり、14は半導体層である。
【0121】
TFT素子17は半導体層14とドレイン電極15とソース電極16とを有している。TFT素子17の上部には絶縁膜18が設けられている。コンタクトホール19を介して有機発光素子の陽極20とソース電極16とが接続されている。
【0122】
本実施形態に係る表示装置はこの構成に限られず、陽極または陰極のうちいずれか一方とTFT素子ソース電極またはドレイン電極のいずれか一方とが接続されていればよい。
【0123】
有機化合物層21は本図では多層の有機化合物層を1つの層の如く図示をしているが複数層であってよい。陰極22の上には有機発光素子の劣化を抑制するための第一の保護層23や第二の保護層24が設けられている。
【0124】
本実施形態に係る有機発光素子はスイッチング素子の一例であるTFT素子により発光輝度が制御される。有機発光素子を複数面内に設けることでそれぞれの発光輝度により画像を表示することができる。
【0125】
本実施形態に係る有機発光素子が有するスイッチング素子は、TFT素子に限られず、トランジスタやMIM素子、Si基板等の基板上にアクティブマトリクスドライバーを形成し、その上に有機発光素子を設けて制御する形態であってもよい。
【0126】
これは精細度によって選択され、たとえば1インチでQVGA程度の精細度の場合はSi基板上に有機発光素子を設けることが好ましい。
【0127】
本実施形態に係る有機発光素子を用いた表示装置を駆動することにより、良好な画質で、長時間表示にも安定な表示が可能になる。
【実施例】
【0128】
(実施例1)
[例示化合物A1の合成]
【0129】
【化9】

【0130】
E1 2.42g(11.5mmol)、E2 3.00g(11.5mmol)をエタノール(40ml)に溶解させ、70度に加熱した。そこに、エタノール(5ml)に溶解させた水酸化カリウム645mg(11.5mmol)を滴下した。
【0131】
その溶液を70度で3時間撹拌した。冷却後、水とメタノールの混合溶液を加え、ろ過し、メタノールで洗浄した。このろ過物を乾燥させることで、黒色の固体E3 4.50g(収率90%)を得た。
【0132】
トルエン(80ml)溶媒を脱気した後、E3 4.00g(9.19mol)、E4 1.76g(12.9mmol)を溶解させた。
【0133】
そこに、亜硝酸イソアミル1.72ml(12.9mmol)を加え、110度で5時間撹拌した。冷却後、反応溶液をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;トルエン)を行い、濃縮した。
【0134】
この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ヘプタン:トルエン=5:1)を行い、濃縮した。これをメタノールで分散洗浄を行い、ろ過後、乾燥することで、黄色の個体E5 3.78g(収率85%)を得た。
【0135】
トルエン(25ml)溶媒を脱気した後、E5 3.0g(6.21mmol)、E6 1.8ml(12.4mmol)、PdCl(PPh(II)435mg(0.62mmol)、トリエチルアミン2.58ml(18.6mmol)を加え90度で3時間攪拌を行った。
【0136】
冷却後、メタノールを加え、ろ過した。このろ過物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ヘプタン:トルエン=1:1)を行い、濃縮した。これをメタノールで分散洗浄を行い、ろ過後、乾燥することで、黄色の個体E7 2.21g(収率67%)を得た。
【0137】
【化10】

【0138】
トルエン(50ml)溶媒を脱気した後、E3 1.39g(3.19mol)、E8 1.0g(3.83mmol)を溶解させた。そこに、亜硝酸イソアミル0.55ml(4.15mmol)を加え、110度で4時間撹拌した。
【0139】
冷却後、反応溶液をそのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;トルエン)を行い、濃縮した。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ヘプタン:トルエン=3:1)を行い、濃縮した。
【0140】
これをメタノールで分散洗浄を行い、ろ過後、乾燥することで、黄色の個体E9 1.7g(収率88%)を得た。
【0141】
【化11】

【0142】
トルエン(16ml)、エタノール(8ml)、20%炭酸ナトリウム水溶液の混合溶媒を脱気した後、E7 960mg(1.81mmol)、E9 1.0g(1.65mmol)、Pd(PPh(0)114mg(0.1mmol)を加え90度で4時間攪拌を行った。
【0143】
冷却後、トルエンで抽出を行い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;ヘプタン:クロロホルム=3:1)を行い、トルエンとエタノールで再結晶した。ろ過後、乾燥することで、黄色の個体E10 830mg(収率54%)を得た。
【0144】
E10 830mg(0.16mmol)をジクロロメタン(5ml)に溶解させ、そこにトリフルオロ酢酸(1ml)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート0.1ml(0.81mmol)を室温で加えた。
【0145】
その溶液に、DDQ 73mg(0.32mmol)を室温で加え2時間撹拌した。その後、フェロセン 60mg(0.32mmol)を加え室温で1時間撹拌した。その後、メタノールを加えろ過し、ろ過物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(移動相;クロロホルム)による精製を行った。
【0146】
濃縮後、メタノールで分散洗浄することにより、紫色の固体E11(例示化合物A1) 126mg(収率84%)を得た。
【0147】
質量分析法により、E11(例示化合物A1)のM+である929を確認した。
【0148】
例示化合物A1についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は606nmであった。装置は日立製分光光度計U−3010を用いた。
【0149】
(実施例2)
[例示化合物A2の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を下記に示す化合物E12、E13に変えることで、例示化合物A2を合成した。
質量分析法により、例示化合物A2のM+である1097を確認した。
例示化合物A2についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は610nmであった。装置は日立製分光光度計U−3010を用いた。
【0150】
【化12】

【0151】
(実施例3)
[例示化合物B1の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を以下の化合物E14に、E2を以下の化合物E15に変えることで、例示化合物B1を合成した。
質量分析法により、例示化合物B1のM+である877を確認した。
また、実施例1と同様にして例示化合物B1についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は613nmであった。
【0152】
【化13】

【0153】
(実施例4)
[例示化合物B4の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を以下の化合物E14、E16に、E2を以下の化合物E15、E17に変えることで、例示化合物B4を合成した。
質量分析法により、例示化合物B4のM+である849を確認した。
また、実施例1と同様にして例示化合物B4についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は615nmであった。
【0154】
【化14】

【0155】
(実施例5)
[例示化合物C2の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を以下の化合物E14、E18に変えることで、例示化合物C2を合成した。
質量分析法により、例示化合物C2のM+である1086を確認した。
また、実施例1と同様にして例示化合物C2についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は608nmであった。
【0156】
【化15】

【0157】
(実施例6)
[例示化合物C8の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を以下の化合物E14、E18に、化合物E2を以下の化合物E15に変えることで、例示化合物C8を合成した。
質量分析法により、例示化合物C8のM+である1170を確認した。
また、実施例1と同様にして例示化合物C8についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は617nmであった。
【0158】
【化16】

【0159】
(実施例7)
[例示化合物D2の合成]
実施例1と同様にして、化合物E1を以下の化合物E14、E19に変えることで、例示化合物D2を合成した。
質量分析法により、例示化合物D2のM+である897を確認した。
また、実施例1と同様にして例示化合物D2についてトルエン希薄溶液中、室温での発光スペクトルを測定したところ、最大発光波長は608nmであった。
【0160】
【化17】

【0161】
(実施例8)
本実施例では、基板上に順次陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極が設けられた構成の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚120nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。
【0162】
このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
正孔注入層(30nm) F1
正孔輸送層(10nm) F2
発光層(30nm) ホスト F3(重量比 99.5%)、ゲスト:A1 (重量比 0.5%)
電子輸送層(30nm) F4
電子注入層(1nm) LiF
金属電極層(100nm) Al
【0163】
【化18】

【0164】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして印加電圧をかけたところ、電圧が4.6V時の発光効率は9.5cd/Aで、C.I.E.色度座標が(0.68,0.30)の赤色発光が観測された。
また、4500cd/mの初期輝度で駆動させたところ、1000時間経過しても10%未満の輝度劣化であった。
【0165】
(実施例9)
実施例8と同様にして、ゲストのA1をC2に変えた有機発光素子を作製した。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして印加電圧をかけたところ、電圧が4.6V時の発光効率は10.1cd/Aで、C.I.E.色度座標が(0.68,0.31)の赤色発光が観測された。
また、4500cd/mの初期輝度で駆動させたところ、1000時間経過しても10%未満の輝度劣化であった。
【0166】
(実施例10)
実施例8と同様にして、ゲストのA1をD2に変えた有機発光素子を作製した。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして印加電圧をかけたところ、電圧が4.5V時の発光効率は11.5cd/Aで、C.I.E.色度座標が(0.68,0.31)の赤色発光が観測された。
また、4500cd/mの初期輝度で駆動させたところ、500時間経過しても10%未満の輝度劣化であった。
【0167】
(実施例11)
本実施例では、基板上に順次陽極/正孔注入層/正孔輸送層/赤色発光層/緑色発光層/青色発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極が設けられた構成の白色有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
ガラス基板上に、陽極としてITOをスパッタ法にて膜厚120nmで製膜したものを透明導電性支持基板(ITO基板)として使用した。
【0168】
このITO基板上に、以下に示す有機化合物層及び電極層を、10−5Paの真空チャンバー内で抵抗加熱による真空蒸着によって連続的に製膜した。このとき対向する電極面積は3mmになるように作製した。
正孔注入層(30nm) G1
正孔輸送層(10nm) G2
赤色発光層(15nm) ホスト1 G5(重量比 98.5%)、ホスト2 G7(重量比 1.0%)、ゲスト:C2(重量比 0.5%)
緑色発光層(5nm) ホスト G5(重量比 99.5%)、ゲスト:G7(重量比 5.0%)
青色発光層(20nm) ホスト G5(重量比 95.0%)、ゲスト:G6(重量比5.0%)
電子輸送層(30nm) G4
電子注入層(1nm) LiF
金属電極層(100nm) Al
【0169】
【化19】

【0170】
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして印加電圧をかけたところ、C.I.E.色度座標が(0.32,0.35)の白色発光が観測された。
【0171】
(実施例12)
実施例11と同様にして、ゲストのC1をD2に変えた有機発光素子を作製した。
得られた有機発光素子について、ITO電極を正極、Al電極を負極にして印加電圧をかけたところ、C.I.E.色度座標が(0.32,0.35)の白色発光が観測された。
【0172】
(結果と考察)
以上のように、本発明に係わる新規縮合多環化合物は赤色発光し、高色純度、高効率の赤色有機発光素子を提供できる。
また、他の発光色の発光材料と組み合わせることで白色発光素子を提供できる。
【符号の説明】
【0173】
4 赤色発光層
5 緑色発光層
6 青色発光層
17 TFT素子
20 陽極
21 有機化合物層
22 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されることを特徴とする縮合多環化合物。
【化1】


[1]
一般式[1]において、
R1、R6、R7、R12は、水素原子、アルキル基またはアリール基からそれぞれ独立に選ばれる。
前記アリール基は、アルキル基及びフッ素原子を置換基として有してよい。
R2乃至R5、R8乃至R11は、水素原子、アルキル基からそれぞれ独立に選ばれる。
【請求項2】
一対の電極と、前記一対の電極の間に配置されている有機化合物層とを有する有機発光素子であって、
前記有機化合物層は請求項1に記載の縮合多環化合物を有することを特徴とする有機発光素子。
【請求項3】
前記有機化合物層は発光層であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項4】
赤色発光することを特徴とする請求項3に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記有機化合物層は、発光部を有し、前記発光部は複数の発光層を有し、
前記複数の発光層のうちの少なくともひとつは前記縮合多環化合物を有し、
前記複数の発光層は、それぞれの発光層がそれぞれ異なる発光色を発する発光層であり、
前記異なる発光色の混色により白色を発することを特徴とする請求項2または3に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記有機化合物層は、複数の発光層を有し、
前記複数の発光層のうち前記縮合多環化合物を有する発光層は赤色を発光する発光層であり、
前記赤色を発光する発光層以外の発光層の発光色と前記赤色とが混色することで白色を発光することを特徴とする請求項2または3に記載の有機発光素子。
【請求項7】
複数の画素を有し、前記複数の画素は、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
画像情報を入力するための入力部と画像を表示するための表示部とを有し、前記表示部は複数の画素を有し、前記複数の画素は請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているスイッチング素子とを有することを特徴とする画像入力装置。
【請求項9】
請求項2乃至6のいずれか一項に記載の有機発光素子と前記有機発光素子に接続されているインバータ回路とを有することを特徴とする照明装置。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−47195(P2013−47195A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186205(P2011−186205)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】