説明

新規蛋白質及びこれを使用した薬剤の製法

【課題】TNFαの作用を中和することのできる蛋白質の提供。
【解決手段】最初のグリコシル化された形で分子量約42000ダルトンを有し、N−末端にアミノ酸配列;Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu[式中、Xaaは、水素原子、フェニルアラニン基(Phe)又はアミノ酸配列;Ala Phe、Val Ala Phe、Gln Val Ala Phe、Ala Gln Val Ala Phe、Pro Ala Gln Val Ala Phe又はLeu Pro Ala Gln Val Ala Pheを表す]を有する蛋白質、及びこの蛋白質の作用を強く低下させることなく、アミノ酸又はペプチドの好適な置換、欠失又は付加により又はグリコシド基を変化させることにより得られるムテイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の蛋白質及びその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
TNFα(Tumor-Nekrose-Factor)は、生物学的活性において広いスペクトルを有する公知の蛋白質である。これは、種々の悪性及び非悪性の細胞種に影響を与え、敗血症ショック及び組織損傷並びに腎剥離、移植、ショック肺及び脳性マラリアでは、重要な役割を果たす(Lymphokines 1987 Vol.14;Pharmaceutical Res.5,129(1988);Science 234,470(1986);Nature 330,662(1987);J.Exp.Med.166,1132(1987);Science 237,1210(1987);J.Exp.Med.166,1280(1987))。
【非特許文献1】Lymphokines 1987 Vol.14
【非特許文献2】Pharmaceutical Res.5,129(1988)
【非特許文献3】Science 234,470(1986)
【非特許文献4】Nature 330,662(1987)
【非特許文献5】J.Exp.Med.166,1132(1987)
【非特許文献6】Science 237,1210(1987)
【非特許文献7】J.Exp.Med.166,1280(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抗体を用いてTNFαの作用を中和させることができることは、公知である(欧州特許第260610号明細書)。しかしながらこの抗体は、人特有の物質ではないので、人への使用の際に免疫反応を引き起こしうる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ところで、人に起因し、TNFαの作用を中和することのできる蛋白質が発見された。
【0005】
本発明の目的は、分子量約42000ダルトン及びN−末端にアミノ酸配列;
Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
[式中、Xは、水素原子、フェニルアラニン基(Phe)又はアミノ酸配列;Ala Phe、Val Ala Phe、Gln Val Ala Phe、Ala Gln Val Ala Phe、Pro Ala Gln Val Ala Phe又はLeu Pro Ala Gln Val Ala Pheを表す]を有する蛋白質及びそのムテイン(Muteine)である。
【0006】
ムテインとは、プロテイン鎖中のアミノ酸又はペプチドの好適な交換、欠失又は添加により得られ、これらの処置により新規の蛋白質の作用が著しく弱められることはない蛋白質である。ムテインは、グリコシド基の変形によっても得ることができる。
【0007】
ここに記載の新規蛋白質は酸性特性を有し、その等電点は、pH2〜5である。これは、特異的にTNFαと結合し、トリプシンによる消化は、困難であるか又は不可能である。
【0008】
新規蛋白質は、例えば熱のある、即ち体温が約38℃以上の患者の尿から単離することができる。このために尿を先ず濃縮し、これは、例えば逆浸透又は限外濾過により行うことができる。このようにして得られた透析残分を、引き続いてイオン交換−及び親和性クロマトグラフィーにより精製する。
【0009】
この蛋白質は、卵巣癌の患者の人間の腹水液からも得られる。
【0010】
蛋白質の精製は公知法、例えば親和性−又はイオン交換クロマトグラフィーにより行うことができる。
【0011】
そうして得られた蛋白質は、アミノ酸配列中のN−末端で不均一である。アミノ酸は7個まで欠けていて良い。そのような不均一性は、身体特有の蛋白質の場合には異例ではなく、例えばγ−インターフェロンの場合にも現われる。
【0012】
エンドグリコシダーゼを用いての処理により、この蛋白質は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動でのその走行特性を変え、このことは、糖基の離脱に起因する。
【0013】
前記蛋白質は、尿及び腹水液中に1〜100μg/lの濃度で存在する。この蛋白質を、薬学上の目的のために大量に提供するために、公知の遺伝子工学的方法(Maniatis,T.et al:Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,N.Y.,1982参照)を利用した。この目的のためには、先ず新規蛋白質に関する遺伝情報を確認し、相応する核酸を単離すべきである。そのために、純粋蛋白質をジチオトレイトールで還元し、ついで遊離のSH−基の誘導化のためにヨードアセトアミドを添加し、引き続きそうして処理された蛋白質をブロムシアン、続いてトリプシンを用いて小さいペプチドに開裂させる。ペプチドの分離は、逆相クロマトグラフィーにより行う。この精製されたペプチドのうちの1個のN−末端シークエンシングは、配列:Val Phe Cys Thr Lysを示した。更にこの蛋白質は、次の3個の他のペプチド配列を有する:Gly Val Tyr Thr Ser、Ile Cys Thr Cys Arg Pro Gly Tyr及びPro Gly Thr Glu Thr Ser Asp Val Val Cys Lys Pro Cys Ala Pro Gly Thr Phe Ser Xab Thr Thr Ser Ser Asp Ile Cys Arg Pro(ここでXabは、おそらくグリコシル化されている、未知のアミノ酸である)。
【0014】
存在するペプチド配列は、相応するオリゴヌクレオチドの合成により、人間のゲノムからの又は相応するc−DNA−バンク(Bank)からの遺伝子の明白な同定を、配列特異的なフィルターハイブリッド形成により可能とする。
【0015】
次いでそうして得られた蛋白質に関する遺伝情報は、表現のために、公知法により種々の宿主細胞、例えば真核細胞、酵母、枯草菌又は大腸菌中にもたらされ、かつそのようにして蛋白質を得ることができる。その際、真核細胞中にグリコシル化された形の蛋白質が生じる。
【0016】
アミノ酸又はペプチドの交換、欠失又は添加により新規蛋白質から誘導されるムテインは、有利に遺伝子工学的方法により製造される。
【0017】
新規蛋白質は、良好なTNFα−抑制作用を示し、従って体液中のTNFα濃度が高まる疾病、例えば敗血症ショックの治療のために使用することができる。更にこれらは、次の疾病に使用できる:アレルギー、自己免疫病、リュウマチ性疾患、ショック肺、炎症性の骨疾病、血液凝固障害、火傷並びに移植後の合併症。
【実施例】
【0018】
例1
TNFα−抑制作用の測定
TNFαの生物学的活性をマウス細胞系L929(J.Biol.Chem.260,2345(1
985))及び人間細胞系MCF7の溶解(Lyse)により測定した。TNFα抑制作用の測定の実験の際に、TNFαの濃度を、細胞の少なくとも50%が溶解するように選択した。
【0019】
TNFα結合蛋白質を有する上澄を、1:2ステップ(Schritt)で、微量滴定プレート
中で希釈した。この溶液(0.05ml)に人間−もしくはマウス−TNFα(120pg/ml)各々0.05mlを添加した。引き続いてアクチノマイシンD 2μg/mlを含有する媒体0.1ml中のL929−細胞 50000の添加を行った。ふ化器中で37℃で20〜24時間のインキュベーションの後に、細胞を固定し、クリスタルヴァイオレットで着色した。TNFα−結合蛋白質の不在下で、TNFα及びLT(リンフォトキシン)は、細胞を溶かした。これらは着色の間にすすぎ落した。TNFα−結合蛋白質を有する上澄の保護効果は、残存する完全な細胞の着色性により示された。
【0020】
細胞毒性作用の抑制は、人間−TNFαにたいしても、少々弱いが人間−LTにたいしてもみられるが、マウス−TNFαではみられなかった。
【0021】
例2
尿からの蛋白質単離
熱(≧38℃)のある患者から集めた尿40lを、透析残分流の容量が2.5lに濃縮されるまで、ヘモフロウ F60瀘筒(Hemoflow(R) F60 Patrone;Fa.Fresenius)を通して濾過させた。
【0022】
引き続いてこの透析残分に、洗浄のために20mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)各々2.5lを4回添加し、かつ濾過を各々出発容量の2.5lになるまで続けた。
【0023】
そうして得られた一連の蛋白質、茶色に着色された透析残分を、ファルマツィア社のS−セファロース(S-Sepharose(R);Fa.Pharmacia:カラム:φ=5cm、l=17cm)を介してクロマトグラフィーにかけた。カラムは、装入の前に、20mM燐酸ナトリウム緩衝液、pH5.5(=緩衝液I)10カラム容量(SV)で平衡させ、透析残分を装入した。緩衝液I 3SVで後洗浄し、20mM燐酸ナトリウム緩衝液、pH6.5(=緩衝液II)3SVで溶出させると、有価生成物が得られた。
【0024】
更に精製するために、このフラクションを、緩衝液III(20mM燐酸ナトリウム、140mMNaCl、pH7.2)10SVで平衡させたTNF−親和性カラム(例4、φ=1.5cm、l=10cm)上に注いだ。装入後に緩衝液III 3SVで後洗浄し、カラムでの溶出によるTNF−結合蛋白質フラクションを、0.58%酢酸及び140mMNaClからなる緩衝液IV40mlで洗浄した。
【0025】
純粋蛋白質の単離のために、TNF−親和性カラムの溶出液をモノ Q−カラム HR5/5(MONO Q-Saeule HR5/5;Fa.Pharmacia)で分離した。そのために先ず溶出液を0.1nNaOHでpH12.0に調節した。
【0026】
カラムを20mM燐酸ナトリウム緩衝液、pH12.0(緩衝液V)11SVで平衡させた。pHを調整したTNF−親和性カラム溶出液10mlを装入し、緩衝液V 4.4SVで洗浄した。引き続き20mM燐酸ナトリウム、pH7.5で溶出させた。
【0027】
不純物を更に除去するために、0.1NHClでpH2.0に調節された20mM酢酸緩衝液(緩衝液VI) 7SVでモノ Q−カラムを洗浄した。
【0028】
その後、カラムを20mM酢酸5〜6SV、20mMNHCl−緩衝液、pH2.0(0.1nHClで調整、緩衝液VII)で更に溶出させた。1〜2SVにより不純物を含有する280nmでUV−活性なバンド(Band)を溶出させ、更に1〜2SVにより新規蛋白質を溶出させた。純粋蛋白質の更なる量は、100mMNaClに調整された緩衝液VII1〜2SVの後溶出により達成されうる。
【0029】
蛋白質は、そうしてゲル電気泳動の純度>90%で得られた。尿1lから蛋白質約1〜10μgを得ることができる。
【0030】
例3
人間の腹水液からの蛋白質単離
卵巣癌の患者の穿刺液として得られる、少し混濁した稀液性の腹水液2.5lを3000gで30分間遠心分離機にかけた。上澄を10%燐酸でpH7.2に調整し、グルタルジアルデヒドで架橋されたTNF−セファロース(Sepharose(R))−カラム(φ=1.5cm、l=3cm;例4参照)上に添加した。このカラムを緩衝液III50mlで平衡させ、かつ装入後、緩衝液III150mlで後洗浄した。TNF−結合蛋白質を緩衝液IV30mlで溶出させた。
【0031】
更に精製するために、溶出液を10%HClでpH3.0に調整し、20mM酢酸(pH3.0)で平衡させたクロマトグラフィーカラム(Mono S HR 5/5,Fa.Pharmacia)上に注いだ。装入後、20mM酢酸(pH3.0)10mlで後洗浄し、引き続いてTNF−結合蛋白質を20mM酢酸(pH3.0)6部及び50mM燐酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)4部からなる緩衝液混合物4mlを用いる溶出により溶出させた。溶出液のpH値を制御し、場合によってはpH6.5に後調整した。
【0032】
この溶出液を燐酸ナトリウム緩衝液pH6.0(緩衝液VIII)で平衡させたクロマトグラフィーカラムモノ Q HR 5/5上に注いだ。各々緩衝液VIII 6ml及び20mM酢酸、5mMNaCl、pH2.2 6mlで洗浄後に、20mM酢酸、150mM NaCl、pH2.0(緩衝液IX)6mlを用いて蛋白質をカラムから溶出させた。
【0033】
この溶出液の同定により、これが、(N−末端配列の不均一を除き)例2により得られた蛋白質と同じものであることが判明した。
【0034】
例4
TNF−親和性カラムの製造
a)BrCN−セファロースでのTNFのカップリング
BrCN−セファロース(BrCN-Sepharose(R);Fa.Pharmacia)7.5gを水30ml中に懸濁させた。膨潤時間30分後にBrCN−セファロース(BrCN-Sepharose(R))−ゲル懸濁液を先ず1mMHCl−溶液500mlで、次いで0.1MNaHCO、0.5MNaCl、pH8.3で洗浄した。
【0035】
緩衝液(0.1MNaHCO、0.5MNaCl、pH8.3)41ml中に溶かされたTNF136mgを、このゲル懸濁液に添加した。反応バッチを室温で2時間振り混ぜ、かつTNF−セファロース(TNF-Sepharose(R))を3000U/分で遠心分離した。ゲル物質を緩衝液40mlで洗浄した。
【0036】
上澄の蛋白質測定からカップリング収率>90%が得られた。
【0037】
BrCN−セファロース(BrCN-Sepharose(R))の過剰の活性基のブロッキングのために、ゲル懸濁液に緩衝液(0.1MNaHCO、0.5MNaCl、1Mエタノールアミン、pH8.3)40mlを添加し、引き続いて室温で1時間振り混ぜ、次いでエタノールアミンを緩衝液(0.1MNaHCO、0.5MNaCl、pH8.3)3×40mlを用いて洗い流した。
【0038】
b)グルタルジアルデヒドを用いるTNF−セファロース(TNF-Sepharose(R))の架橋
a)により製造されたTNF−セファロース(TNF-Sepharose(R))ゲル懸濁液20mlを緩衝液(20mM燐酸ナトリウム、140mMNaCl、pH8.0)25mlで2度洗浄した。この懸濁液を同じ緩衝液40ml中に入れ、25%グルタルジアルデヒド溶液1.6mlを添加した。室温で1時間振り混ぜた後に、懸濁液を遠心分離させ、緩衝液(20mM燐酸ナトリウム、140mMNaCl、1Mエタノールアミン、pH8.0)25mlを添加した。再び1時間振り混ぜ、引き続いてTNF−セファロース(TNF-Sepharose(R))懸濁液をクロマトグラフィーカラム(φ=1.5cm、l=10cm)中に充填した。
【0039】
このカラムは、緩衝液(20mM燐酸ナトリウム、140mMNaCl、pH7.2)100ml及び0.58%酢酸+140mMNaCl 50mlで洗浄後に親和性クロマトグラフィーのために使用可能であった。
【0040】
例5
蛋白質の同定
a)分子量及び純度
分子量及び純度の測定のために、例2もしくは3により得られた蛋白質2μgに、還元性及び非還元性条件下で、15%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を施した(Nature 227,680(1970))。公知の一連の標準蛋白質との比較により、両方の方法による新規蛋白質が、クマシーブルーでの着色後に、分子量約42000ダルトンの均一なバンドであることが判明した。
【0041】
他のバンドを認識することはできなかった。従ってこの蛋白質の純度は、≧90%でありうる。
【0042】
この蛋白質は、明白な青−紫に着色されたバンドとして確認される。
【0043】
b)N−末端シークエンシング
例2により得られた蛋白質10μg(≒250pMol)を気相シーケンサーを用いてN−末端で数回シークエンシングした。
【0044】
N−末端配列分析は、同類の副配列の出現に基づき、N−末端アミノ酸配列の不均一性を示唆した。次の主配列を確認した:
配列1a
Phe Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu。
その他に、気相シークエンシングではN−末端でアミノ酸6個が延長された
配列2a
Leu Pro Ala Gln Val Ala Phe Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
及びN−末端でアミノ酸1個が減少された
配列3a
Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Gluが確認された。
【0045】
同様に例3の蛋白質中では次の主配列が確認された:
配列1b
Leu Pro Ala Gln Val Ala Phe Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu(約10%)
配列2b
Pro Ala Gln Val Ala Phe Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu(約45%)
配列3b
Ala Gln Val Ala Phe Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu(約45%)。
【0046】
d)トリプシンでの処理
新規蛋白質20μgをpH8.5で次のように処理した:
1.0.1MNaHCO−緩衝液pH8.5中に溶かしたトリプシン0.5μgの添加;37℃で16時間のインキュベーション2.0.1%SDS−0.1MNaHCO−緩衝液pH8.5中に溶かしたトリプシン0.5μgの添加;SDS−含有率0.1%まで溶液を調整;37℃で16時間のインキュベーション。
【0047】
このように処理された蛋白質を、15%SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で、出発蛋白質と比較して分析した。蛋白質の減成は、確認できなかった。
【0048】
例6
脱グリコシル化
例2により得られたモノQ−溶出液(≒0.1mg/蛋白質ml)0.1mlを1MNaOHでpH7.2に調整した。引き続いてグリコペプチダーゼ F(Fa.Boehringer Mannheim)10単位を添加した。37℃で6時間のインキュベーション後に、更に酵素10単位を添加した。更に反応時間16時間後にバッチ50μlを凍結乾燥させ、15%SDS−ゲル中で未処理の蛋白質と比較して分析した。酵素で処理された蛋白質は、未処理の試料と比較すると、約3kD小さい分子量を示した。更にバッチ25μlを、例1に記載のように、TNFα抑制作用に関して検査した。TNFα抑制作用は、糖分の脱離後にも完全に保持されていた。
【0049】
例7
抗体製造
例2及び3で単離された蛋白質を、ポリクロナール抗体の製造のためにイエウサギに注射した。抗体の反応性及び特異性をELISAを用いて検査した。そのためにELISA−プレート(ELISA-Platte;Fa.Costar)を、抑制剤−もしくは対照蛋白質1μg/0.0
5M炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6) mlの溶液で被覆し、非特異性結合を1%BSA/PBSで飽和させ、かつ種々の希釈血清と共にインキュベートした。結合された抗体の検査をビオチニル化された抗−ウサギ−IgG及びストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ並びにTMB−基質を用いて行った。個々のインキュベーションの間に各々0.05%トゥイーン((R)Tween)−20/PBSで3回洗浄した。2MHSOを用いる停止の後に、450nmにおける光学密度を測定した。
【0050】
例8
体液中の蛋白質検出
種々の体液中のTNFα結合蛋白質の検出のために、サンドイッチ−ELISA(sandwich-ELISA)を使用した。そのためにELISA−プレート(ELISA-Platte;Fa.Costar)をTNF(5μg/0.05M炭酸ナトリウム緩衝液 pH9.6 ml)で被覆した。1%BSA/PBSで飽和させた後、検査すべき試料、例えばリウマチ患者の髄液と共にインキュベートした。検出を、例7に記載の抗−抑制剤−抗体及びビオチニル化された抗−ウサギ−IgG/ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ/TMB−基質を用いて行った。個々のインキュベーションの間に各々0.05%トゥイーン((R)Tween)−20/PBSで3回洗浄した。2MHSOの添加後に、450nmにおける吸光を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDSゲル電気泳動で測定する際に分子量約42000ダルトンを有し、かつN−末端にアミノ酸配列;
Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
[式中、Xaaは、水素原子、フェニルアラニン基(Phe)又はアミノ酸配列;Ala Phe、Val Ala Phe、Gln Val Ala Phe、Ala Gln Val Ala Phe、Pro Ala Gln Val Ala Phe又はLeu Pro Ala Gln Val Ala Pheを表す]を有するTNFα−抑制作用を有する蛋白質のTNFα−抑制作用を強く低下させることなく、アミノ酸又はペプチドの好適な置換、欠失又は付加により又はグリコシド基を変化させることにより得られるムテイン。
【請求項2】
a.オリジナルなグリコシル化形でSDSゲル電気泳動で測定する際に約42000ダルトンの分子量を有し、
b.特異的にTNFαを結合し、
c.トリプシンにより分解されず、かつ
d.発熱患者の尿から又は卵巣ガン患者の腹水液から、逆浸透又は限外濾過、および次いでイオン交換クロマトグラフィーおよびTNF親和性カラム上での親和性クロマトグラフィーにより単離される;
N−末端にアミノ酸配列;
Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
[式中、Xaaは、水素原子、フェニルアラニン基(Phe)又はアミノ酸配列;Ala Phe、Val Ala Phe、Gln Val Ala Phe、Ala Gln Val Ala Phe、Pro Ala Gln Val Ala Phe又はLeu Pro Ala Gln Val Ala Pheを表す]を有するTNFα−抑制作用を有する蛋白質、及びこの蛋白質のTNFα−抑制作用を強く低下させることなく、アミノ酸又はペプチドの好適な置換、欠失又は付加により又はグリコシド基を変化させることにより得られるムテイン。
【請求項3】
脱グリコシル化された形の請求項1又は2記載の蛋白質。
【請求項4】
そのムテインがその蛋白質のTNFα−抑制作用を強く低下させることなく、アミノ酸又はペプチドの付加により又はグリコシド基を変化させることにより得られる請求項1から3までのいずれか1項記載の蛋白質。
【請求項5】
ムテインがN末端配列にアミノ酸配列;
Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
[式中、Xaaは前記のものを表す]を有する、請求項4記載の蛋白質。
【請求項6】
SDSゲル電気泳動で測定する際に分子量約42000ダルトンを有し、N−末端にアミノ酸配列;
Xaa Thr Pro Tyr Ala Pro Glu Pro Gly Ser Thr Cys Arg Leu Arg Glu
[式中、Xaaは、水素原子、フェニルアラニン基(Phe)又はアミノ酸配列;Ala Phe、Val Ala Phe、Gln Val Ala Phe、Ala Gln Val Ala Phe、Pro Ala Gln Val Ala Phe又はLeu Pro Ala Gln Val Ala Pheを表す]を有するTNFα−抑制作用を有する蛋白質を製造する方法において、発熱患者の尿又は卵巣ガン患者の腹水液の濃縮、および引き続くこのようにして得られた残分のイオン交換クロマトグラフィーおよび親和性クロマトグラフィーによる精製からなるTNFα−抑制作用を有する蛋白質の製法。
【請求項7】
得られたTNFα−抑制作用を有する蛋白質を更に、TNFα−抑制作用を強く低下させることなく、アミノ酸又はペプチドの好適な置換、欠失又は付加により又はグリコシド基の変化により、変化させることからなる請求項6記載の製法。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載の蛋白質を含有する、体液中のTNFαの濃度が上昇している疾患を治療するための薬剤。
【請求項9】
疾患がアレルギー、自己免疫病、リュウマチ性疾患、ショック肺、炎症性の骨疾病、血液凝固障害、又は移植後の合併症である請求項8記載の薬剤。

【公開番号】特開2007−84554(P2007−84554A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287790(P2006−287790)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【分割の表示】特願2005−123073(P2005−123073)の分割
【原出願日】平成2年5月4日(1990.5.4)
【出願人】(502159343)アボット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】Abbott GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Ring 2, D−65205 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】