説明

新規GLP−1融合ペプチド、その製造及び利用

本発明は、GLP−1の活性及び生体内での強化された安定性、特に、ジペプチジルペプチダーゼIVに対する耐性を有する、新規な融合ペプチドを提供する。上記融合ペプチドは、N末端側に、GLP−1(7−35、7−36又は7−37)配列を構成要素(I)として含み、C末端側に、少なくとも9アミノ酸のペプチド配列、その機能的なフラグメント、変異体又は誘導体を構成要素(II)として含んでいる。構成要素(II)は、好ましくは、天然IP2(介在ペプチド2)のホモログの全長又は部分である。好適な態様は、GLP−1(7−35、36若しくは37)/IP2−ホモログ/GLP−1(7−35、36若しくは37)又はGLP−2の配列を含んでいる。上記融合ペプチドは、改変された細胞において又は合成的に製造され得、例えば、糖尿病タイプI若しくはII、アポトーシス関連疾病、又は神経変性障害のような様々な疾病又は障害の治療用薬剤を調製するために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、伸長されたC末端を有し、エンドペプチダーゼIVによる不活性化に対して耐性を有し、形質転換された動物細胞において高い水準で発現され得、かつ例えば糖尿病タイプIIの治療において有用な、新規なGLP−1融合ペプチドに関するものである。
【0002】
グルカゴン遺伝子はよく研究されている遺伝子である(例えばWhite, J.W. et al., 1986 Nucleic Acid Res. 14(12) 4719-4730を参照のこと)。高分子量の前駆体分子であるプレプログルカゴン分子は、膵臓α細胞並びに空腸及び大腸L細胞において合成される。プレプログルカゴンは、180アミノ酸長のプロホルモンであり、その配列は、グルカゴンに加えて、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)及びグルカゴン様ペプチド−2(GLP−2)という、関連した構造の二つの配列を含んでいる。プレプログルカゴン分子では、GLP−1及びGLP−2の間に、17アミノ酸のペプチド配列(より正確に言えば、15アミノ酸の配列にC末端のRR切断部位が付加したもの)である介在ペプチド2(IP2)がある。IP2の配列(上記前駆体分子において、GLP−1及びGLP−2の間に位置している)は、通常、GLP−1の第37番目のアミノ酸の後ろでタンパク質分解的に切断される。従って、プレプログルカゴン分子は、細胞及び環境に依存して、処理を受けていない形態の37アミノ酸のペプチドであるGLP−1(1−37)を含む、様々なペプチドに切断される。一般に、上記処理は、膵臓及び腸において行われる。GLP−1(1−37)の配列は、さらにタンパク質分解的に切断されて、処理された形態の31アミノ酸である活性型GLP−1(7−37)、又はGLP−1(7−36)アミドになり得る。即ち、GLP−1(7−37)という表示は、上記親ペプチドであるGLP−1のN末端から数えて第7番目から(第7番目を含む)第37番目まで(第37番目を含む)のアミノ酸残基からなる問題のフラグメントを意味する。GLP−1(7−36)アミド及びGLP−1(7−37)のアミノ酸配列は、下記式(I)により与えられる(配列番号43)。
【0003】
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−X (I)
上記式(I)は、XがNH2のとき、GLP−1(7−36)アミドを示し、XがGly−OHのとき、GLP−1(7−37)を示す。
【0004】
GLP−1は、消化管ホルモンであり、β細胞においてアデニル酸シクラーゼ及びプロテインキナーゼの活性を促進する働きを有する、最も強力な内在性のインスリン分泌性因子である。生理的には、上部の腸からの胃抑制ポリペプチドとともに、血糖値を下げる内分泌ホルモンとして働く。即ち、GLP−1は、食物の摂取に応じて分泌され、例えば胃、肝臓、膵臓及び脳への複合的な効果を有しており、それらは一斉に血糖を調整する。その結果、グルカゴン様ペプチドGLP−1(7−37)アミド及びそのアミド化されていないアナログであるGLP−1(7−37)は、その炭水化物代謝への強力な作用及び糖尿病タイプIIを含む糖尿病の処置への適用可能性により、相当な注目を集めている。糖尿病タイプIIは、インスリンが存在していても細胞が適切な反応を示さないことから、インスリン抵抗性として特徴付けられている。このことは、糖尿病タイプIよりも、より複雑な問題となる。糖尿病タイプIIは、その症状が典型的には軽症であり(ケトアシドーシス無し)、散発性であるために、診断されるまで、何年もの間、患者に認識されないことがある。しかし、認識されなかった糖尿病タイプIIは、腎不全及び冠状動脈性心臓病を含む深刻な合併症が発生し得る。これは、罹患率及び死亡率の増加を招く。
【0005】
GLP−1(7−36)アミド又はGLP−1(7−37)は血清中における寿命が短い。これらのペプチドは、ジペプチジル・ペプチダーゼIV(DPP−IV)によって第8番目の残基と第9番目の残基との間が切断される。切断されたペプチドは不活性となる。そのため、外から投与されたGLP−1は非常に短命であり、治療への適用において、限られた有用性しか有さない。
【0006】
自然に存在するGLP−1(GLP−1(7−37))のアナログであって、(DPP−IVに対して)安定しているものを合成するための様々な試みが行われている。特に、生体ではAlaである第8番目の残基が、他の残基、例えばGly、Ser又はThr、に置換された(Burcelin, R., et al. (1999) Metabolism 48, 252-258)。Gly8又はG8アナログは、合成された分子として、又、変異ポリペプチドを分泌するように遺伝学的に改変された細胞株により製造されたものとして、頻繁に試験された(Burcelin, R., et a1 (1999) Annals of the New York Academy of Sciences 875: 277-285)。生物学的な活性を損なわずに生体における安定性を向上させることを目的として、様々な改変がGLP−1(7−37)に導入されている。しかし、付随する問題のために、これらの手法はいかなる治療上の有効性も獲得していない。
【0007】
国際公開公報WO第9953064号パンフレットにおいて、ソレンスは、公衆が利用可能な不死化された細胞株から初代培養株を分化させた細胞まで様々なタイプの細胞に対して組み込むことができる、多量体の、GLP−1発現カセットを作り出すための手法を開示している。例では、哺乳類の中枢神経系から得られた、EGF応答性のニューロスフィア、bFGF応答性の神経前駆幹細胞を含んでいるが、行われた実施例では、ハムスターの乳児の肝臓(BHK)細胞を用いている。移植された形質移入細胞は、首尾よく糖尿病のマウスを処理し、糖尿病でないマウスと実質的に同等の血糖値調節が行われたと記載されている。しかし、この種の移植技術は、糖尿病患者に対する日常的な治療に適合するものではない。
【0008】
外因的に血糖値を安定化させるための他のアプローチとして、インクレチンミメティックスとして知られる新たな種類の薬剤が、糖尿病タイプIIの治療のために研究されている。エクセナチド(バイエッタ(登録商標))は、アメリカドクトカゲの唾液において見出された天然の化合物を合成したものである。臨床試験において、インクレチンミメティックス(エクセナチド)は、血糖値の低減及びβ細胞機能マーカーの改善を示している。しかし、エクセナチドは、ヒトインクレチンホルモンであるグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)の一部の効果しか示さない。
【0009】
以上をまとめると、現時点において、GLP−1に基づいて血糖値を下げ得る、換言すれば、GLP−1について知られている有利な効果の全範囲、例えば肥満体患者の胃内容物排出速度の低減又はインスリン刺激作用により、生理学的な濃度において、栄養素の循環器系への流入率を強力に低減させるその作用、を反映した治療を提供する有効な糖尿病タイプIIの治療法は知られていない。従って、本発明の目的は、生理学的に活性であり、タンパク質分解に対して耐性のGLP−1に基づくペプチド分子を提供することである。
【0010】
本発明は、N末端側に、GLP−1(7−35、7−36又は7−37)配列を構成要素(I)として含み、かつC末端側に、少なくとも9アミノ酸のペプチド配列、その機能的なフラグメント、変異体又は誘導体を構成要素(II)として含んでいる融合ペプチドに関しており、ここで、構成要素(II)は、電荷を帯びたアミノ酸の特異なパターンによって特徴付けられる。ここで、構成要素(II)は天然に生じたIP2−配列のホモログであって、自身のN末端(例えば、リンカー配列を介して又は直接に)を介して、天然のIP2配列のホモログである構成要素(II)のC末端に結合されている。ホモログとは、天然に生じたIP2から派生した配列であって、かつIP2と所定の配列相同性を共有している配列を意味する。さらに、当該ホモログは、構成要素(I)に対するIP2と同様な作用を示し、これにより、例えば、構成要素(I)の血漿での安定性を強化する。概して、当該ホモログは、一般式(A)にてその概要を示す、負の電荷を帯びたアミノ酸の所定のパターンを反映している。
【0011】
本発明は、結果としてもたらされる本発明のペプチドが、生体内でのタンパク質分解、特にエンドペプチダーゼIVのタンパク質分解活性に対して保護されているという知見に基づくものである。少なくとも二つの構成要素(I)及び(II)を有する本発明のペプチドは、GLP−1の生物学的活性を示すと同時に、C末端の伸長(elongation)により、その構成要素(I)としてのGLP−1に安定性を与える。
【0012】
ここで用いられる用語「発明のペプチド」は、ここで定義された融合ペプチド、その変異体、アナログ、フラグメント、又は誘導体であり、これらの組み合わせ、例えば、融合ペプチドから派生したフラグメント、アナログ、又は変異体、も含まれる。ここで用いられる用語「GLP−1ペプチド」は、GLP−1(7−35、36又は37)を意味し、ここで「修飾されたGLP−1ペプチド」は、任意のGLP−1のアナログ、GLP−1の誘導体、GLP−1の変異体、又はGLP−1のフラグメントを意味することが意図され、GLP−1(7−35、36又は37)の誘導体のフラグメント、アナログ又は変異体をその範疇に含んでおり、本発明のペプチドの構成要素(I)及び(III)の何れかに存在し得る。ここで用いられる用語「GLP−2ペプチド」は、GLP−2(1−33、34又は35)を意味し、ここで「修飾されたGLP−2ペプチド」は、任意のGLP−2のアナログ、フラグメント、又は変異体、GLP−2の誘導体、又はGLP−2アナログの誘導体を意味することが意図され、GLP−2(1−33、34又は35)の誘導体のフラグメント、アナログ又は変異体をその範疇に含んでいる。変異体、アナログ、フラグメント及び誘導体は、修飾されていない配列、例えばGLP−1(7−35、36又は37)又はGLP−2(1−33、34又は35)、に対する修飾として類別される。本発明の意義の範囲内において、任意の変異体、アナログ、フラグメント又は誘導体は、機能的であるべきであり、例えば、改変されていないGLP−1ペプチドと同じ又は類似した生物学的作用を奏すべきである。
【0013】
好ましくは、本発明のペプチドは、融合ペプチド又はその変異体、アナログ、フラグメント若しくはその誘導体であり、ここで、構成要素(I)は、配列番号1に対し、少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%の配列相同性を有する配列を含んでいる。配列番号1は、哺乳動物間で厳密に保存されている、GLP−1(7−37)(31アミノ酸長)の天然のアミノ酸配列を示す。
【0014】
本発明に係る融合ペプチド(又は、より一般化して、融合ペプチドのアナログ、フラグメント、変異体もしくは誘導体を含む、任意の本発明に係るペプチド)の二番目の構成要素(構成要素(II))は、典型的には、βターン様構造を形成するか又はしない、しかしながら好ましくはβターン構造を形成する、少なくとも9個のアミノ酸長の配列を含んでいる。βターン構造は、タンパク質又はペプチドの典型的な二次構造要素の一つである。βターン構造は、典型的には4つのアミノ酸から形成され、当該βターン構造は、ペプチド又はタンパク質の主鎖の方向を反転させる。構成要素(II)のアミノ酸配列は、少なくとも9個のアミノ酸を含み、好ましくは少なくとも二つの負に帯電した残基を含む(生理学的なpH条件下において)。これら負に帯電した残基は、好ましくはアスパラギン酸(apartate)、又はグルタミン酸、又はその側鎖においてカルボキシル機能を持つ、自然界では生じない人工アミノ酸でありえる。これら少なくとも二つの負に帯電した残基は、連続した順番で位置してもよく(例えば、EE,DD,DE,ED,EED,EEE,EDE,DEE,DDD,DDE,DED,EDD,DDDD,EEEE,EDEE,EEDE,EEED,DDDE,DDEE等のモチーフに示される)、又は、本発明の融合ペプチドのC末端側構成要素(II)内の任意のところに位置してもよい。上記融合ペプチドのN末端側構成要素は、それゆえ、一般式(A)に基づきうる、
−NH2−(X1b−Y1a−X2b−Y2a−X3bc−COOH (A)
ここで、Y1及びY2は、上記した負の電荷を帯びたアミノ酸であり、
X1、X2及びX3は負の電荷を帯びたアミノ酸を除く任意のアミノ酸であり、
a及びbは0から15であり、ここでaはX1、X2及びX3において同一でも異なっていてもよく、
bはY1及びY2において同一でも異なっていてもよく、
cは1から5であり、
ここで、Y2がE(グルタミン酸)でかつY2においてaが2である場合に、
(i)Y1がEである場合に、Y1におけるaは0又は2ではなく、又は、(ii)X2(b>=1)は、V、A、又はP(バリン、アラニン、又はプロリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は、(iii)X3(b>=1)は、L又はV(ロイシン、又はバリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は(iv)Y1がEでかつY1においてaが2である場合にcは1ではない。
【0015】
すなわち、上記式(A)は、Y2がEでかつY2においてaが2である場合の唯一の例外を除き、その一般的な特性を維持している。そして、この場合には、上記一般式は次の例外の何れかに従う。(i)Y1がEである場合に、Y1におけるaは0又は2ではなく、又は、(ii)X2(b>=1)は、V、A、又はP(アラニン、又はプロリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は、(iii)X3(b>=1)は、L又はV(ロイシン、又はバリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は(iv)Y1がEでかつY1においてaが2である場合にcは1ではない。換言すれば、上記一般式(A)は、Y2がE(グルタミン酸)でかつY2においてaが2である場合には、上記したこれら4つの例外の何れか一つに従う。上記した例外の(ii)及び(iii)は、X2の最もC末端側の残基がVでもPでもAないか、又は、X3の最もN末端側の残基がLでもVでもない、という態様を排除することを意味する。特に、b(X2又はX3において)が1である場合は、X2又はX3がそれぞれV/P/A又はL/Vになりえない。
【0016】
X1、X2、X3、Y1及びY2の何れかにおけるa及びbが>1であれば、上記式では、X1、X2、X3、Y1及びY2の全てが広範なアミノ酸残基を表し得、ここに開示するように、当該アミノ酸残基は異種の残基から構成されうる。すなわち、a及び/又はbが>1の場合、X1、X2、X3、Y1及びY2が、単調なアミノ酸の広がりのみを限定的に表すことは意味しない。例えば、X1、X2、又はX3は、任意の順番に配列したアミノ酸から構成される任意のアミノ酸配列(負の電荷を帯びた残基は含まない)を表しうる。
【0017】
ある好ましい態様では、Y1においてaが0の場合に、Y2においてa>=2である、又はその逆である。代わりに、Y1においてaが1の場合に、典型的には、Y2においてaは>=1である。好ましい態様では、Y1においてaが0、1、又は2、それぞれで、Y2においてaは>=2であり、好適にはY2においてaは2、3、又は4である。それゆえに、構成要素(II)の配列を、当該配列が、少なくとも9個、10個、又は11個のアミノ酸を持つ配列であり、かつ、好ましくは30個未満のアミノ酸を持ち、より好ましくは20個未満のアミノ酸を持ち、さらにより好ましくは15個未満のアミノ酸を持ち、ここで、少なくとも2個のアミノ酸が負の電荷を帯びたアミノ酸であり、好ましくは2から5個のアミノ酸が負の電荷を帯びたアミノ酸である、ように選択することが好ましい。さらに好ましくは、構成要素(II)は、負の電荷を帯びた少なくとも2個のアミノ酸を連続して含み、例えば、その配列中に、DD,EE,DE,ED,DED,DDD,EEE,EDD,EDE,EED,DDE,DEE,DDDD等のモチーフを含む。
【0018】
好ましい態様では、特に、Y1及びY2におけるaが0で無い場合に、X2において、1<=b=<5であることで特徴付けられる。好ましくは、X1及びX3におけるbが0ではなく、より好ましくはbが>1と<6との間であり、より好ましくはbが>1と<=4との間であり、最も好ましくはbが2、3、又は4である。Y1におけるaが0の場合、X1におけるbとX2におけるb(両者の合計)は好ましくは>1と<10との間であり、より好ましくは>4と<10との間である。Y2のaが0の場合、X2におけるbとX3におけるb(両者の合計)は好ましくは>1と<10との間であり、より好ましくは>4と<10との間である。Y1及びY2におけるaが互いに独立して>=1、好ましくはaが>=1と<=4との間である場合、X2におけるbは典型的には>=2と<=5との間であり、好ましくは3、4、又は5である。Y1及びY2におけるaが互いに独立して>=1、好ましくは>=1と<=4との間である場合に、X1及びX3のbは好ましくは互いに独立して>=2と<=5との間であり、より好ましくは3、4又は5である。
【0019】
X2におけるbが0で無い場合、X2用に選択される残基は、好ましくは脂肪族の側鎖を持つ任意のアミノ酸から選択され、より好ましくはF,W,V,L,I,及びAから選択される。
【0020】
負に帯電したアミノ酸残基(これらは、例えば、Y1及びY2用に選択される)は、好ましくはD(アスパラギン酸)及びE(グルタミン酸)である。X1、X2、及びX3における好ましいアミノ酸残基は、例えば、Ala(A),Gly(G),Ser(S),Val(V),Thr(T),Pro(P),Arg(R),Lys(K)及びHis(H)から選択される。
【0021】
本発明の好ましい態様では、本発明の融合ペプチドの構成要素(II)は、天然のIP2の配列に対する配列相同性として、好ましくは20%を越え、かつ同時に40%未満を示し;より好ましくは少なくとも20%であり、より好ましくは少なくとも30%でありかつ50%未満を示し;より好ましくは少なくとも20%であり、より好ましくは少なくとも30%であり、さらにより好ましくは少なくとも40%であり、かつ60%未満を示し;より好ましくは少なくとも20%であり、より好ましくは少なくとも30%であり、さらにより好ましくは少なくとも40%であり、さらにより好ましくは少なくとも50%でありかつ70%未満を示し;さらにより好ましくは少なくとも20%であり、より好ましくは少なくとも30%であり、さらにより好ましくは少なくとも40%であり、さらにより好ましくは少なくとも50%であり、さらにより好ましくは少なくとも60%であり、かつ80%未満であることを示す。最も好ましくは、本発明の融合ペプチドの構成要素(II)は、天然のIP2の配列に対して、少なくとも70%(かつ、例えば、80%未満)の配列相同性を示す。さらにより好ましくは、構成要素(II)は、当該天然のIP2の配列に一致するものではない。
【0022】
他の好ましい態様では、構成要素(II)は、少なくとも一つの正に帯電した残基を含む(生理学的な条件下で)。正に帯電した上記残基は、好ましくは、アルギニン(R)、リジン(K)、又はヒスチジン(H)、又は正に帯電した側鎖機能を持つ他の(非天然の)任意のアミノ酸、から選択されうる。構成要素(II)に関しては、2個から4個の正に帯電した残基を含むことがさらに好ましい。正に帯電した残基の数には関係なく、これら残基は、構成要素(II)内の任意の場所に位置しうる。構成要素(II)中に、正に帯電したアミノ酸が一個を越えて生じている場合、これらアミノ酸は、構成要素(II)内に連続した順番で存在するか、又は様々な位置に存在しうる。上記式(A)に関して、bが1又はbが>1の場合、X1、X2及び/又はX3はR、K、又はHであることが好ましく、上記式(A)に関して、X1b(b>1)、X2b(b>1)、及び/又は、X3b(b>1)ストレッチにより形成されるアミノ酸のストレッチ(stretches)は、正に帯電した残基を少なくとも一つ、好ましくは一つを越えて、例えば、正に帯電した残基を2個又は3個、含むことが好ましい。
【0023】
他の好ましい態様において、構成要素(II)は、自身の配列中に、少なくとも一つのプロリン又はアラニンを含む。プロリン残基は、βターンを形成する4量体アミノ酸配列中に一般的に見られるアミノ酸である。プロリン残基(P)は、典型的には、上記融合ペプチドの構成要素(II)中に生じる4量体性のβターン配列における、2番目又は3番目の位置に位置する。すなわち、bが4又は>4の場合、X1又はX2により形成されるアミノ酸のストレッチは、好ましくは少なくとも一つのP残基を含む。
【0024】
一般式(A)によりカバーされ、かつ構成要素(II)中に含まれる好ましいアミノ酸モチーフは、DFP(EE)A,DFP(EE)I,DFP(EE)L,DFP(EE)T,DFP(EE)S,DFP(EE)G,P(EE)SAI,P(EE)TAI,P(EE)LAI,P(EE)IAI,P(EE)AAI,P(EE)GAI,G(EE)VAI,T(EE)VAI,A(EE)VAI,L(EE)VAI,S(EE)VAI,M(EE)VAI,F(EE)VAI,IA(EE)A,IA(EE)T,IA(EE)S,IA(EE)G,IA(EE)P,IA(EE)V,IA(EE)M,IA(EE)W,IA(EE)Y,又はIA(EE)F、である。上記言及した全てのモチーフは、(EE)のコアに代えて、例えば、(DD)、(DE)、(ED)、(EED)、(EEE)、(EDE)、(DEE)、(DDD)、(DDE)、(DED)、(EDD)、(DDDD)、(EEEE)、(EDEE)、(EEDE)、(EEED)、(DDDE)、(DDEE)等、の変異体を示しうる。これらのモチーフは、構成要素(II)の配列中の任意の場所に位置しうる。構成要素(II)は、少なくとも9アミノ酸からなるアミノ酸配列を形成することが好ましくありえ、好ましくは、9個から15個又は9個から12個のアミノ酸からなり、少なくとも上記モチーフを少なくとも一つ含み、結果的に上記モチーフを二つ、例えば、連続した順番で、又は性質を問わない1から4個のアミノ酸により分断された状態で含む。
【0025】
発明の融合物は、典型的には、その構成要素(II)中に、9から30アミノ酸長の配列、好ましくは9から20アミノ酸長の配列、さらに最も好ましくは9又は10又は11から15アミノ酸長の配列を持つ。概して、構成要素(II)において、より短い配列が、より長い配列と比較してGLPレセプターへの結合活性がより優れているために、好ましい場合がありえる。これは必須条件ではないが、構成要素(II)の上記配列は、負の電荷を持つ残基を少なくとも二つ生じることで、pH7において正味で負の電荷を持つことが好ましい場合がある。又は、概要を上記したように、正に帯電した残基を追加的に持つことで、正味で中性の電荷を持つこともありえる。
【0026】
本発明の融合ペプチドの構成要素(II)は、構成要素(I)のC末端に連結したペプチド配列である。構成要素(I)のC末端に連結する、構成要素(II)の最もN末端側の残基は、AA,XA,AX,RR,RX,XR,KK,KX,及びXKからなる群より選択される配列モチーフを示し、ここでXは任意のアミノ酸(天然に生じた、又は修飾された非天然アミノ酸)を表す。代わりに、構成要素(II)の最もN末端側の残基は、また、EE,EX,XE,DE,ED,DD,XD,DXからなる群より選択され得、ここでXは同様に任意のアミノ酸(天然に生じた、又は修飾された非天然アミノ酸)を表す。
【0027】
発明の融合ペプチドの構成要素(II)内に生じる好ましいモチーフには、配列番号25(DFPEEVA)に示す配列モチーフに対する配列相同性が20%を越える、より好ましくは30%を越える、より好ましくは40%を越える、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に80%未満の配列が含まれ、ここで、典型的には、当該配列モチーフ中のアミノ酸P及び/又はアミノ酸V及び/又はアミノ酸Aは、任意のアミノ酸配列により置換されており、ここで、P、V、及び/又はAは好ましくは、A,G,T,V,S,R, K,I,L,C、及びHから選択されるアミノ酸により置換される。特に好ましくは、構成要素(II)が、配列番号22(RRDFPEEVAI) 又は配列番号26(AADFPEEVAI)に示す配列に対する配列相同性が20%を越える、より好ましくは30%を越える、より好ましくは40%を越える、そしてさらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に85%未満であり、好ましくは80%未満である融合ペプチドであって、天然(ヒト又はマウス)の全長IP−2(介在ペプチド2)配列の部分配列を含むものである。ここで、典型的には、配列番号22又は配列番号26におけるアミノ酸P及び/又はアミノ酸V及び/又はA及び/又はIは、任意のアミノ酸により置換され、好ましくはA,G,T,V,S,R,K,I,L,C及びHにより置換される。配列番号26と配列番号22とは、N末端(RR)残基が(AA)にて置換されることで互いに異なっている。構成要素(II)中に含まれるより強く好ましい配列は、より長いIP−2の部分アミノ酸配列の誘導体である。これらは例えば、配列番号23(RRDFPEEVAIVEEL)又は配列番号24(RRDFPEEVAIAEEL)に対する配列相同性が、20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に95%未満又は90%未満であり、より好ましくは85%未満であり、さらにより好ましくは80%未満である、配列である。ここで、典型的には、配列番号23又は配列番号24におけるアミノ酸A(配列番号24の11番目の位置)、P、L及び/又はアミノ酸V(両配列の8番目の位置)は、任意のアミノ酸により置換され、好ましくはA,G,T,V,S,R,K,I,L,C及びHにより置換される。上記融合ペプチドの構成要素(II)中に含まれる要素として最も好ましいのは、配列番号2(RRDFPEEVAIVEELG)又は配列番号3(RRDFPEEVAIAEELG)に対する配列相同性が20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に、95%未満又は90%未満であり、より好ましくは85%未満であり、さらにより好ましくは80%未満である、配列である。ここでまた、アミノ酸A(配列番号3の11番目の位置)、配列番号2又は配列番号3におけるP、L及び/又はアミノ酸Vは、典型的には任意のアミノ酸により置換され、好ましくはA,G,T,V,S,R,K,I,L,C及びHにより置換される。本発明の融合ペプチドの構成要素(II)中に含まれる上記配列は、少なくとも20%、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に、95%未満又は90%未満であり、より好ましくは85%未満であり、さらにより好ましくは80%未満の配列相同性をもつこれら(以下に示す配列)のホモログであるという条件に従う限り、配列番号27(AADFPEEVAIVEEL)、配列番号28(AADFPEEVAIAEEL)、配列番号29(AADFPEEVAIVEELG)、及び配列番号30 (AADFPEEVAIAEELG)から派生するものでもまたありえる。ここで、構成要素(II)は、典型的には、このパラグラフで開示した置換を伴う配列を含む。好ましくは、上記した任意の配列番号により与えられた構成要素(II)は、負に帯電した残基における修飾は含まない。すなわち、与えられた相同性は、上記した配列における上記負に帯電したコア(複数のコア)を変化させるものではない。代替的な態様では、上記した配列番号における上記負に帯電したコア(複数のコア)は、その負に帯電した残基が、他の負に帯電した残基によって置換されることによってのみ修飾されうる。
【0028】
典型的には、上記した配列番号2,3,22,23,24,25,26,27,28,29及び30の配列は、好ましくは、本出願の権利から除外される。さらに、上記の配列に対する配列相同性が少なくとも80%であるホモログもまた、好ましくは、本出願の権利から除外される。
【0029】
本出願において、用語「相同性」は、参照する一つの配列との関係で上記配列が比較されることを指し、かつ相同性パーセントはこれら配列同士を比較することにより決定される。例えば、二つのアミノ酸配列の相同性パーセントを決定する場合、これら配列はまず、続いて行われる配列比較を可能とするべく、互いに相関性を持たせるように配列される(アラインメント)。結果として、例えば、第一番目のアミノ酸配列中に複数のギャップが導入され得、そしてこの残基は、第二のアミノ酸配列の対応する位置と比較されうる。第一のアミノ酸配列中における所定の位置が、第二の配列中の所定の位置と同一の残基により占められている場合、その位置においてこれら二つの配列は同一である。二つの配列間の相同性パーセントは、同一の位置の数を当該配列により除算する関数で表される。例えば、ある特定のアミノ酸配列の配列相同性は、所定の長さを持つ参照するアミノ酸配列との比較において推定される。そして、この相同性パーセントは、当該参照するアミノ酸配列との関係において相対的に示される。それゆえ、手始めに例えば、100残基長を有する参照するアミノ酸配列と50%の配列相同性を持つアミノ酸配列とは、参照するアミノ酸配列の部分(50残基長)と完全に同一な、50残基長のアミノ酸配列を表しうる。しかしながら、これは、50%の相同性を持つ100残基長を有するアミノ酸配列をも表しうる。すなわち、参照するアミノ酸配列の全長に対して50%同一のアミノ酸を持つというケースを表しうる。これに代えて、アミノ酸配列は、200残基長を有するアミノ酸配列であって、その100残基長を有するアミノ酸配列の部分においては100残基長を有する参照するアミノ酸配列と完全に同一である、ものでもありえる。他のアミノ酸配列も、当然にこれらの基準を等しく満たしている。
【0030】
二つの配列間の相同性のパーセントは、数学的なアルゴリズムを用いて実行することができる。好ましいが、これに限定されない数学的なアルゴリズムであって二つの配列の比較に使用可能なものの例示として、Karlinらのアルゴリズムがある(Karlin et al. (1993), PNAS USA, 90:5873-5877)。そのようなアルゴリズムは、当該アルゴリズムを用いて本発明の配列に対して所望する相同性/同一性を持つ配列を同定することができる、いわゆる(N)BLASTプログラム中に組み込まれている。上記のアラインメントを行った後、権利請求した配列中に占める上記残基のパーセントとして、相関性の数を表すことにより、同一性のパーセントが計算される。
【0031】
構成要素(II)は、このパラグラフで記述したホモログのコピーを一以上含んでいてもよく、例えば、2.3又はさらに多数のコピーを含んでいてもよい。
【0032】
上記のホモログは、好ましくは、配列番号2,3,22,23,24,26,27,28,29,30の置換誘導体、すなわち、置換に対応した修飾が導入されたものである。
【0033】
さらに、本発明のペプチドは、配列番号8(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIAEELG)、配列番号12(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIVEELG)、配列番号31(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGAADFPEEVAIAEELG)、配列番号32(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFAEEVAIAEELG)、配列番号33(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDAAAAVAIAEELG)、配列番号34(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGAADAAAAVAIAAALG)、配列番号35(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFP)、配列番号36(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVA)、配列番号37(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIAEELGRRHAC)、配列番号38(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGAADFPEEVAIVEELG)、配列番号39(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFAEEVAIVEELG)、配列番号40(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDAAAAVAIVEELG)、配列番号41(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGAADAAAAVAIVAALG)、配列番号42(HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRGRRDFPEEVAIVEELGRRHAC)からなる群より選ばれる親配列に由来するホモログを含んでいることが好ましく、上記ホモログは、上記親配列に対して、好ましくは95%未満または90%未満、より好ましくは85%未満、さらに好ましくは80%未満の配列相同性を有し、且つ同時に、20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え且つさらに好ましくは50%を超える配列相同性を有している。上記親配列に由来する典型的な本発明の誘導体は特定の改変パターンを示し、(AEEL)および/または(PEEV)モチーフを提示するこれらの上記配列は、これらのモチーフのどちらか1つのいずれか1つの位置、またはこれらのモチーフの両方において、少なくとも1つの改変(置換)を有している。従って、上記ホモログは、本明細書において開示されたような置換、例えば、その他のアミノ酸によるアミノ酸A、L、PまたはVの変換、またはD残基によるE残基の1つまたは両方の変換を有していてもよい。これらの態様の全てにおいて、GLP−1(7−37)は、いずれのリンカー配列も有さず、そのC−末端を介して、天然のIP2配列の相同体である構成要素(II)に対して結合される。
【0034】
GLP−1(7−35、36又は37)が、それを必要とする任意の患者に投与された場合、GLP−1(7−35、36又は37)の不安定性は、その保護されていない3次元構造に起因することを、本発明者らは独自に見出した。生体内において、プロテアーゼはGLP−1(7−35、36又は37)分子を切断し、その生理学的な活性を急速に消失させる。GLP−1(7−35、36又は37)のC末端にペプチドの配列を連結させることにより、GLP−1(7−35、36又は37)の構造は、酵素的な分解に対して安定性を獲得する。このような安定性の獲得は、C末端の付加的なペプチド配列(本発明に係る融合ペプチドの構成要素(II)に含まれている)が折り曲がっている場合、例えば、βターン構造が存在するような一次構造を有しており、構成要素(II)に堅牢性を付与している場合に、特に顕著となる。しかしながら、本発明のペプチドの構成要素(II)におけるβターン構造は、構成要素(I)のGLP−1配列の、酵素的な分解に対する安定化のために必ずしも必要というわけではない。それ故に、本発明の融合ペプチドの構成要素(II)は、構成要素(I)の内部での構造的改変をも引き起こし得、これにより、本発明の融合ペプチドを酵素的な分解から保護し得る。本発明のペプチドは、そのC末端の伸長されたペプチド(例えば、βターン構造要素を含んでいる)の効能によって、DPP−IVによる不活性化に対して向上した抵抗性を有することが見出されている。C末端のペプチドは、そのターゲットとする細胞内のその受容体に作用する前には、GLP−1(7−35、36又は37)配列から切断されないか、又は、生体内において、GLP−1(7−35、36又は37)を形成するように酵素的に切断され得る。GLP−1受容体の部位に結合する本発明のペプチドの厳密な形状によらず、本発明のペプチドは、活性のあるインスリン分泌性の化合物としての働きを奏する。
【0035】
構成要素(II)に含まれるに好適と考えられるペプチド配列は、そのβターン要素を導く一次構造により、例えば、分光学的な手法、円偏光二色性分析、その他の当業者に公知な方法を用いて、容易に適宜特定することができる。
【0036】
構成要素(II)及び構成要素(I)は、直接連結されていてもよいし、リンカー配列を介して連結されていてもよい。好ましくは、両構成要素は、互いに直接連結されている。それらがリンカー(又はスペーサー)を介して連結されている場合、当該リンカーはペプチドリンカーであることが好ましい。ペプチドリンカーは、典型的には、1から10のアミノ酸長を有しており、好ましくは、1から5の、なお好ましくは1から3のアミノ酸長を有しており、又いくつかの場合において、リンカー配列は、なお長い11から50のアミノ酸を含む配列であり得る。ペプチドリンカーは、様々なアミノ酸配列から構成され得る。好ましくは、ペプチドリンカーは、連結される構成要素間に構造的な柔軟性を導入する。構造的な柔軟性は、例えば、様々なグリシン又はプロリン残基を含むペプチドを用いることにより達成され、好ましくは、少なくとも30%、より好ましくは、少なくとも40%、なおさらに好ましくは、少なくとも60%のプロリン及びグリシンをリンカー配列内に含む。ペプチドリンカーは、具体的な配列によらず、好ましくは、免疫学的に不活性であり得る。
【0037】
本発明の好ましい態様において、本発明のペプチド、即ち、上述した融合ペプチドは、構成要素(II)のC末端及び/又は構成要素(I)のN末端の何れかに連結する第3の構成要素(構成要素(III))を含む。好ましくは、構成要素(III)は、構成要素(II)のC末端に位置する。構成要素(III)が(そのC末端を介して)構成要素(I)のN末端に連結するか、又は、(そのN末端を介して)構成要素(II)のC末端に連結するかによらず、結合は、直接的、又はリンカー配列を介した間接的なものであり得る。上記リンカー配列については、上述した構成要素(I)及び構成要素(II)を結合するリンカーについての開示において説明されている。一般的に、構成要素(III)は、少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでおり、好ましくは、少なくとも10個の付加的なアミノ酸残基を含んでおり、より好ましくは、少なくとも20個、又は少なくとも30個のアミノ酸残基を含んでいる。機能の観点から言えば、構成要素(III)は、本発明のペプチドの安定性をさらに増強することを目的としている。構成要素(III)は、GLP−1(7−37)の生物学活性とほぼ同程度である本発明のペプチドの生物学的活性を阻害しないことが期待されている。
【0038】
好ましくは、本発明の構成要素(III)は、少なくとも4個の、好ましくは、少なくとも10個の、より好ましくは、少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を、例えば、配列番号4及び5に示されるマウス又はヒトのアイソフォームのような、任意の哺乳動物の個体のGLP−2のアイソフォーム(他の、哺乳動物において、自然に存在するGLP−2の変異体)の配列のN末端に含んでいる。GLP−2は、プログルカゴン内に存在し、炭水化物代謝に関与する。構成要素(I)に含まれる生物学的に活性な配列(GLP−1ペプチド)と同様、構成要素(III)は、GLP−2の自然に存在する形態のアナログ、変異体又は誘導体を含んでいてもよい。他の局面において、構成要素(III)は、少なくとも4個の、好ましくは、少なくとも10個の、より好ましくは、少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を、同様に、全ての哺乳動物のアイソフォーム、又は(本明細書において記載したような)、その全ての機能的な変異体、アナログ若しくは誘導体を含む、GLP−1(7−37)のN末端配列に含んでいてもよい。一般に、構成要素(III)は、GLP−1ペプチド、又は、本明細書において示すような、本発明のペプチドの構成要素(I)に適合するような、改変されたGLP−1ペプチドの任意の形態を含んでいてもよい。さらに他の局面において、構成要素(III)は、GLP−1(7−37)及びGLP−2のキメラ形態を含んでいてもよい。キメラ形態は、GLP−1(7−37)とGLP−2(又は両方のフラグメント、アナログ、変異体若しくは誘導体)とを互いに結合させることにより作り出すことができ、続いて、このキメラ形態は構成要素(III)として本発明のペプチドに導入される。好ましくは、上記キメラ形態は、一つに連結された、GLP−1(7−37)の部分配列及びGLP−2の部分配列から構成される。例えば、上記キメラ形態は、GLP−1のN末端の5から30個のアミノ酸及びGLP−2のC末端の5から30個のアミノ酸、又はその逆の構成であり得、又例えば、GLP−1(7−37)の第7又は第8番目から第22、第23、第24、第25、第26、第27又は第28番目までのアミノ酸、及び、GLP−2のアミノ酸配列の第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23又は第24から、例えばC末端までであり得る。
【0039】
もし、自然に存在する形態のGLP−2又はGLP−1(7−37)のそれぞれの改変体が、構成要素(III)として用いられた場合、構成要素(III)は、好ましくは、配列番号4若しくは5に示される配列か、配列番号1に示される配列か、又は、配列番号4若しくは5に示されるか、配列番号1に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有する配列を含んでいる。これらの好適な配列に対する変異、例えば、側鎖の修飾又はペプチド主鎖の改変に起因するもの等も、(本明細書において「変異体」に関連する部分のように)本発明の構成要素(III)として包含される。
【0040】
他の実施形態において、構成要素(III)は、上述したような配列を複数個含んでいる。例えば、構成要素(III)は、少なくとも2つの、好ましくは、2、3、又は4コピーのGLP−1(7−37)及び/若しくはGLP−2、又は、少なくとも2コピーの、配列番号1、4若しくは5に示される配列に対して少なくとも80%の相同性を有する配列を含んでいてもよい。又、構成要素(III)は、少なくとも1コピー以上の、上述したような、例えば、最終的には、GLP−1(7−37)及び/若しくはGLP−2又はその、少なくとも80%の配列上の相同性を有する改変のキメラ形態のバリエーションを形成する、GLP−1(7−37)又はGLP−2のキメラ形態を含んでいてもよい。本発明の範囲内では、又、二つ以上の、好ましくは二つの構成要素(III)を含んでいてもよく、それらは、例えば、(1)そのN末端により、構成要素(II)のC末端に連結されており、(2)そのC末端により、構成要素(I)のN末端にリンカーを介して又は直接連結されている。もし二つの構成要素(III)が供給されている場合、それらは同一であってもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0041】
従って、3つの構成要素(I)、(II)および(III)を含む本発明の融合ペプチドは、特に好ましい。これらの構成要素の全てを含む四つの具体的な態様は、以下の配列番号6(N−GLP−1(7−37)−−RR−GLP−1(7−37)−C、本明細書においてマウスCM1とも称される)、配列番号7(N−GLP−1(7−37)−IP2(マウス)−RR−GLP2−C、本明細書においてマウスCM2とも称される)、配列番号10(N−GLP−1(7−37)−IP2(ヒト)−RR−GLP−1(7−37)−C、ヒトCM1とも称される)、および配列番号11(N−GLP−1(7−37)−IP2(ヒト)−RR−GLP−2−C)、本明細書においてヒトCM2とも称される)に由来するホモログからなる群から選択され、上記ホモログは、前述の配列番号を与えられる天然のIP2配列のホモログ(構成要素(I))によって特徴付けられる。相同な特徴(IP2のホモログ)に関しては、本明細書における構成要素(II)についての開示が引用される。配列番号6、7、10又は11に係る各態様のそれぞれの構成要素(I)は、GLP−1(7−37)であり、構成要素(III)(これらの各態様において、構成要素(II)のC末端に結合されている)は、GLP−1(7−37)又はGLP−2である。RRリンカーは、IP2ホモログ(構成要素(II))を構成要素(III)に結合する。
【0042】
好ましい態様において、本発明の融合ペプチドは、典型的には、融合ペプチドのサブユニットと共有結合する少なくとも一つのポリマー成分を含んでいる。本発明の意味において、「複合された」とは、「化学的に結合された」ことを意味することが意図される。「化学的に結合された」とは、共有結合又は非共有結合を介して結合されたことを意味することが意図される。共有結合が好適ではあるが、上記ポリマー成分は、又、共有結合なく複合化すること、例えば水素結合又は静電気的な相互作用、疎水的な相互作用等、を介して、上記融合ペプチドと連結されてもよい。上記融合ペプチド及び上記ポリマーを含んだ複合体全体を、以降、「複合体」又は「複合分子」と称する。
【0043】
少なくとも2つの構成要素(I)および(II)の本発明のペプチドと合成ポリマーとを有する複合体は、GLP−1の生物学的活性を示し、且つ同時に、C−末端伸長によって、GLP−1の構成要素(I)として、GLP−1に安定性を与える。従って、ポリマーへの融合ペプチドの複合によって、GLP−1の生体内安定性はかなり向上する。
【0044】
ここで用いられる上記ポリマーは、生理学的に許容されるポリマーであり得る。このようなポリマーには、水溶液に溶解又は懸濁され得、薬学的に有効な量の上記融合ペプチドを投与したときに哺乳動物に与える悪影響、例えば副作用、を有さないポリマーが包含される。本発明において使用される、生理学的に許容されるポリマーは、特に限定されない。上記ポリマーは、合成されたもの、又は天然に生じたポリマー(天然ポリマー、例えばタンパク質)であってもよい。ポリマーの詳細な態様については後述する。
【0045】
1、2、又は3つのポリマー成分、好ましくは1つのポリマー成分が、上記融合ペプチドのサブユニットに共有結合により結合して、本発明の複合分子を形成し得る。但し、特定の態様では、融合ペプチドのサブユニット当たり、3つ以上のポリマー成分が供給されていてもよい。上記ポリマー成分は、上記融合ペプチドの構成要素(I)若しくは(II)の何れか、又は双方と、共有結合してもよい。少なくとも一つの上記ポリマー成分が、構成要素(II)に結合することが好ましい。1つ以上のポリマー成分が構成要素(I)に結合する場合には、当該ポリマー成分は、N末端、又は、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン若しくはアルギニン残基の側鎖に結合することが好適である。好適には、構成要素(I)が有する、Thr11、Thr13、Asp15、Ser17、Ser18、Tyr19、Glu21、Lys26、Glu27、Lys34、Arg36残基の一つ以上の側鎖が、結合のために使用される。天然に存在するIP2の配列が構成要素(II)として用いられる場合、そのArg、Glu、及びAsp残基の一つ以上の残基が、その側鎖において、ポリマー成分により修飾される。
【0046】
ポリマー、特にPEG、をN末端に結合することは、上記複合分子の精製に有益である。また、ポリマーがN末端に結合することにより、他の任意の残基、例えば他の任意のリジン残基、へポリマーがランダムに結合することと比較して、生物学的活性がよりよく保存されると考えられる。よって、好適な態様では、少なくとも一つのポリマー成分が、融合タンパク質のN末端に位置する。PEG化(PEGylation)を用いる場合、本発明のペプチドに含まれる、末端、側鎖のカルボキシル基、又は、リジンのイプシロンアミノ基のPEG化は、酸化に対する耐性を与えるが、これもまた本発明の範疇に含まれる。
【0047】
本発明に係る融合ペプチドにおいて用いられるポリマーは、慣用されている方法を用いて、下記式に示すモノマーを重合することにより調製され得る。
【0048】
【化1】

【0049】
上記式において、R18は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、及びCOOR22基(R22は、水素原子及び炭素数1〜4のアルキル基である)から選択され;R19は、水素原子、ハロゲン原子、及び炭素数1〜4のアルキル基から選択され;
20は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、及びCOOR22基(R18及びR20は両方ともCOOR22基ではない)から選択され;並びに
21は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、モノ−若しくはジ−アルキル(炭素数1〜20)アミノカルボニル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリ−ルオキシカルボニル基、炭素数1〜20のアラルキルオキシカルボニル基、炭素数6〜20のアリ−ルアミノカルボニル基、炭素数7〜20のアラルキルアミノ基、ヒドロキシル基、又は炭素数2〜10のアシルオキシ基であり、これらの基は何れも、ハロゲン原子、アルコキシ基、オリゴアルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミン基(モノ−又はジ−アルキルアミノ基及びトリアルキルアンモニウム基を含む)、カルボキシル基、スルホニル基、ホスホリル基、ホスフィノ基(モノ−又はジ−アルキルホスフィン基及びトリアルキルホスホニウム基を含む)、双性イオン基、並びにヒドロキシ基から選択される置換を、一つ以上有し得る。
又は、R21及びR20、若しくはR21及びR19は、一緒に−CONR23COを形成し得る(R23は、炭素数1〜20のアルキル基である)。
【0050】
エチレン性不飽和モノマーは、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリオキサゾリン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、又は、HPMAコポリマーから選択されるポリマーを形成するために重合され得る。又は、上記ポリマーは、例えば、ポリエステル、ポリアセタール、ポリ(オルトエステル)、ポリカーボネート及びポリアミドのような、酵素的又は加水分解的な分解に感受性のものであり得る。
【0051】
上記ポリマーは、ホモポリマー又は上述した成分の少なくとも二つのコポリマーであり得る。上記コポリマーは、ブロック共重合体又はランダム共重合体であり得る。
【0052】
特に好適なポリマーの具体例としては、これらに限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー等のポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオール、ポリオレフィンアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシアルキルメタクリルアミド、ポリヒドロキシエチレンメタクリレートのようなポリヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリサッカライド、ポリ([α]−ヒドロキシ酸)、ポリビニルアルコール、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモーフォリン)、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルアセテート、ポリ乳酸グリコール酸、ポリ乳酸、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、ポリウレタン、ポリシアル酸、三酢酸セルロース、硝酸セルロース、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
更なる具体的なポリマーとしては、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、ポリ(乳酸−グリコール酸)(PLGA)コポリマー、ポリ(N−ビニルピロリドン−アクリル酸−gPEG)(VAP)、N−ビニルピロリドンとアクリル酸とのコポリマー、及びN−ビニルピロリドンと無水マレイン酸とのコポリマーが挙げられる。
【0054】
本発明のペプチドは、様々な変形態様を生じうる。このような変形態様は以下に開示され、詳細に説明される。
【0055】
本明細書において、用語「塩」は、カルボキシル基の塩と、上述した融合ペプチド、そのアナログ、フラグメント、誘導体又は変異体のアミノ基の酸付加塩との両方について言及される。カルボキシル基の塩としては、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、第2鉄、又は亜鉛の塩等のような、公知の手法により形成された無機塩、及び、例えばエタノールアミン等のアミン、アルギニン、リジン、ピペリジン、プロカイン等との塩のような、同様に形成された有機塩基との塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸又は硫酸のような鉱酸との塩、及び、例えば、酢酸又はシュウ酸のような有機酸との塩が挙げられる。当然に、これらの任意の塩は、本発明に係るペプチドの生物学的な活性、即ち循環器系への栄養の流入率を低減させる能力、を保持する。上述したように、塩の形態のペプチドは、薬学的な製剤内に含有され得る。
【0056】
本発明に係る融合ペプチドの「フラグメント」は、上記分子の任意の部分集合、即ち、より短いが、所望の生物学的活性を保持するペプチドについて言及される。フラグメントは、上記分子(即ち、融合ペプチド又は任意の構成要素)の何れかの末端からアミノ酸を除去し、インクレチンとしてのその特性からもたらされる結果を試験することにより、調製され得る。ポリペプチドのN末端及び/又はC末端の何れかから、一度に、一つのアミノ酸を除去するプロテアーゼは公知であり、所望の生物学的活性を保持するフラグメントの決定に必要なのは、単なる通常の実験操作である。このように、フラグメントは、ペプチド末端におけるアミノ酸、及び/又はペプチド配列中に位置するアミノ酸の除去によるものであり得る。
【0057】
さらに、抗糖尿病タイプII活性を有する本発明のペプチドは、融合ペプチドそのもの、そのアナログ、変異体、塩、機能的な誘導体、及び/又はフラグメントであり、本発明のペプチドに隣接する付加的なアミノ酸残基をさらに含有し得る。結果得られる分子が、プロテアーゼに対する抵抗性又は安定性、及びインクレチンとしての活性を保持する限り、任意の上記のような隣接する残基が、主たるペプチドの基本的又は新規な特徴、例えば膵臓細胞への影響に影響を及ぼすか否かを、通常の実験により決定することができる。特定の配列について言及するとき、用語「実質的に」「からなる」は、特定された本発明のペプチドの基本的及び新規な特徴に影響を及ぼさない付加的な隣接する残基が存在し得ることを指す。この用語は、上記特定された配列中における置換、削除又は付加を意味しない。
【0058】
本発明における「変異体」は、上記において規定された本発明のペプチドの全体又はそのフラグメントと実質的に同一の分子を指す。変異ペプチドは、公知の手法を用いた変異ペプチドの直接的な化学合成により首尾よく調製され得る。当然に、そのような本発明のペプチドの変異体は、同様の抗糖尿病性、例えば、天然に生じた相当するGLP−1ペプチドのようなインスリン刺激活性、を有する。
【0059】
他の局面において、上記において定義されたペプチドのアミノ酸配列の変異体は、合成された誘導体をコードするDNAsにおける突然変異によって調製され得る。例えば、この変異体は、上記アミノ酸配列中の残基の削除、又は残基の挿入もしくは置換を含む。また、最終コンストラクトが所望の活性を有する限りにおいて、最終コンストラクトに辿りつくよう、削除、挿入及び置換は任意に組み合わせてもよい。言うまでもなく、変異体ペプチドをコードするDNAで作られ得る突然変異はリーディングフレームを変更してはならず、好ましくはmRNAの二次構造を生成し得る相補的な領域を作り出さない。
【0060】
本発明において、上記で定義されたペプチドの「アナログ」は、分子全体、又は分子の活性フラグメントのいずれかと非常に類似している非天然の分子を意味する。上記アナログは、相当する天然に生じたGLP−1ペプチドと同様の活性を示し得る。
【0061】
本発明において、本発明のペプチドで生成され得る置換のタイプは、異なる種類のホモログのタンパク質/ペプチド間でのアミノ酸交換頻度の解析を基にしてもよい。上記解析に基づくことによって、本明細書における保存置換は、以下に示す5つのグループのうち1つに含まれる交換として定義され得る。
【0062】
I.非極性もしくはわずかに極性で小型の脂肪族残基であるAla、Ser、Thr、Pro、Gly;II.負電荷を帯びた極性残基及びそのアミドであるAsp、Asn、Glu、Gln;III.正電荷を帯びた極性残基であるHis、Arg、Lys;IV.非極性で大型の脂肪族残基であるMet、Leu、Ile、Val、Cys;V.大型の芳香族残基であるPhe、Try、Trp。
【0063】
上述のグループの範囲内において、以下の置換は「より高度に保存」されるとみなされる。すなわち、Asp/Glu;His/Arg/Lys;Phe/Tyr/Trp;Met/Leu/Ile/Valである。半保存的置換は、上述したグループ(I)〜(IV)のうち2つの間での交換として定義されており、上記(I)、(II)及び(III)を含むスーパーグループ(A)、又は上記(IV)及び(V)を含むスーパーグループ(B)に限られる。置換は、遺伝的にコードされるアミノ酸に限定されるものではなく、まして自然に存在するアミノ酸に限定されるものではない。
【0064】
概して、本発明のペプチドのアナログもしくは変異体もまた、例えば溶解度の改善を意図してなされたアミノ酸の置換(疎水性アミノ酸と親水性アミノ酸との置き換え)を含む。本発明のペプチドに含まれるGLP−1ペプチドの変異体/アナログ(本発明のペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)に含まれる)の一態様において、(改変された)GLP−1ペプチドは、GLP−1ペプチドの第7番目、第8番目、第11番目、第12番目、第16番目、第22番目、第23番目、第24番目、第25番目、第27番目、第30番目、第33番目、第34番目、第35番目、第36番目又は第37番目の位置で1つ以上置換されていることが特徴である。一例として示すように、次の用語[Arg34−GLP−1(7−37)]は、第34番目の位置に天然に含まれるリジンが、アルギニンと置換されているGLP−1のアナログを表す。
【0065】
具体的には、本発明のポリペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)は、GLP−1(7−35、36又は37)の変異体及びアナログを含んでいてもよく、GLP−1(7−35、36又は37)としては、例えば、Gln9−GLP−1(7−37)、D−Gln9−GLP−1(7−37)、アセチル−Lys9−GLP−1(7−37)、Thr16−Lys18−GLP−1(7−37)、及びLys18−GLP−1(7−37)、Arg34−GLP−1(7−37)、Lys38−Arg26−GLP−1(7−38)−OH、Lys36−Arg26−GLP−1(7−36)、Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26,34−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg26−Lys38−GLP−1(7−38)、Arg34−Lys38−GLP−1(7−38)、Ala37−Lys38−GLP−1(7−38)及びLys37−GLP−1(7−37)が挙げられる。
【0066】
本発明の別の態様において、本発明のポリペプチドは、下記式(II)に示されるアミノ酸配列を含んでいる改変されたGLP−1ペプチドを、構成要素(I)又は(III)として含む(配列番号44)。
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37 (II)
上記式(II)において、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンを指し;Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1−アミノシクロブチル)カルボン酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボン酸又は(1−アミノシクロオクチル)カルボン酸を指し(この中でもGlyが特に好ましい);Xaa16は、Val又はLeuを指し;Xaa18は、Ser、Lys又はArgを指し;Xaa19は、Tyr又はGlnを指し;Xaa20は、Leu又はMetを指し;Xaa22は、Gly、Glu又はAibを指し;Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgを指し;Xaa25は、Ala又はValを指し;Xaa26は、Lys、Glu又はArgを指し;Xaa27は、Glu又はLeuを指し;Xaa30は、Ala、Glu又はArgを指し;Xaa33は、Val又はLysを指し;Xaa34は、Lys、Glu、Asn又はArgを指し;Xaa35は、Gly又はAibを指し;Xaa36は、Arg、GlyもしくはLys、又はアミドもしくは存在しないことを指し;Xaa37は、Gly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は存在しないことを指す。
【0067】
本発明の別の実施形態において、本発明のペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)は、下記式(III)のアミノ酸配列を含んでいる改変されたGLP−1ペプチドを含む(配列番号45)。
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Xaa18−Tyr−Leu−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Ala−Xaa26−Glu−Phe−lle−Xaa30−Trp−Leu−Val−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37 (III)
上記式(III)において、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンを指し;Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1−アミノシクロブチル)カルボン酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボン酸を指し;Xaa18は、Ser、Lys又はArgを指し;Xaa22は、Gly、Glu又はAibを指し;Xaa23は、Gln、Glu、Lys又はArgを指し;Xaa26は、Lys、Glu又はArgを指し;Xaa30は、Ala、Glu又はArgを指し;Xaa34は、Lys、Glu、又はArgを指し;Xaa35は、Gly又はAibを指し;Xaa36は、ArgもしくはLys、アミド又は存在しないことを指し;Xaa37は、Gly、Ala、GluもしくはLys、アミド又は存在しないことを指す。
【0068】
本発明の特に好ましい態様において、本発明のペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)は、GLP−1(7−35)、GLP−1(7−36)、GLP−1(7−36)−アミド、GLP−1(7−37)又はその変異体、アナログもしくは誘導体から選択される、(改変された)GLP−1ペプチドを含む。また、本発明のペプチドは、その構成要素(I)及び/又は(III)中に、上記GLP−1ペプチドにおける第8番目のAib残基又は第7番目のアミノ酸残基を有し、当該アミノ酸残基がD−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン及び4−ピリジルアラニンからなる群より選択される、改変されたGLP−1ペプチドを含んでいることが好ましい。
【0069】
タンパク質におけるアミノ酸置換の生成例として、本発明において使用されるアナログを取得するために用いることのできるものは、例えば、米国再発行特許発明第33,653号、米国特許第4,959,314号、米国特許第4,588,585号及び米国特許第4,737,462号(マークら);米国特許第5,116,943号(ケートら);米国特許第4,965,195号(ネイメンら);及び米国特許第5,017,691号(リーら)に示される公知の方法のいずれかのステップ、ならびに米国特許第4,904,584号(ショーら)に示されるリジンが置換されたタンパク質を含む。
【0070】
好ましくは、上記において定義され、構成要素(I)及び/又は(III)に含まれるような変異体もしくはアナログは、「天然の」配列、例えば、GLP−1(7−37)もしくはGLP−2、又は天然の前駆体配列に対して通常70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%の配列相同性を有するその生物学的に活性なフラグメントと同様の核酸配列を有し得る。構成要素(II)は、天然のIP2及び/又は相当する一般式(A)に対して通常95%未満、より好ましくは90%未満、さらにより好ましくは80%未満の相同性があるアミノ酸配列を有しているIP2のホモログである。上記変異体又はアナログは、天然のGLP−1の生物学的活性を保持する。より好ましくは、融合ペプチドの全体(構成要素(I)、(II)及び(III)、又は構成要素(I)及び(II)、からなる)は、天然の前駆体配列に対して少なくとも80%の配列相同性を有し、少なくとも90%の配列相同性を有し、又最も好ましくは少なくとも95%の配列相同性を有し得る。特定のペプチドが、規定された長さの参照ペプチドに対して特定の割合の相同性を有しているとみなされる場合、相同性の割合は参照ペプチドに相対的である。それゆえ、100アミノ酸長の参照ポリペプチドと50%の同一性があるペプチドは、参照ポリペプチドの50アミノ酸長部分と完全に同一である50アミノ酸のポリペプチドになり得る。それはまた、全長に亘って参照ポリペプチドと50%の同一性がある100アミノ酸長のポリペプチドにもなり得るだろう。当然ながら、他のポリペプチドも同じ基準を兼ね備え得る。本明細書において使用される場合において、用語「配列相同性」は、上記配列が以下のように比較されていることを意味する。配列は、ジェネティックコンピューティンググループ(Genetic Computing Group's)のGAP(国際的な配列プログラム)バージョン9を用いて、デフォルト(BLOSUM62)マトリックス(−4〜+11の値)と、−12のギャップ開始ペナルティー(ギャップの一番目の0のため)及び−4のギャップ拡張ペナルティー(ギャップに連続的に0をそれぞれ付加するごとに)とによりアラインメントする。アラインメント後、相同性の割合は、特許請求の範囲に記載されたアミノ酸配列の合計のうち、一致した数を割合として表わすことによって算出される。
【0071】
融合ペプチドの誘導体、又はそのアナログ、フラグメントもしくは変異体もまた、本発明に包含される。用語、本発明のペプチドの「誘導体」は、天然に生じた共通20アミノ酸の1つが他のアミノ酸と交換されていないが改変された本発明のペプチドのみを含むものとして意図される。これに対し、遺伝的にコードされたアミノ酸は、選択された側鎖の残基、又はアミノもしくはカルボキシル基の末端残基と反応することが可能な(好ましくは共有結合修飾によって)有機誘導体化剤と反応することによって改変され得、又非天然のアミノ酸(化学合成によって作製された、例えば、遺伝コードによってコードされたアミノ酸のD−異性体、Aib(a−アミノ酪酸)、Abu(a−アミノ酪酸)、Tie(tert−ブチルグリシン)、p−アラニン、3−アミノメチル安息香酸、アントラニル酸)、もしくは天然のアミノ酸(遺伝コードによってコードされていない、例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸塩、オルニチン、ホスホセリン、D−アラニン及びD−グルタミン)を導入することによって改変され得、又別のペプチド骨格配列によるペプチド骨格の修飾によって改変され得る。
【0072】
以下に、本発明のペプチドのアミノ酸における好ましい修飾(上記において規定されたように、融合ペプチドの変異体、アナログ、又はフラグメントも含む)について開示する。なお、この修飾は、例えば、構成要素(I)、(II)及び/又は(III)に位置づけられた、本発明のペプチドの任意の位置(任意のアミノ酸)において起こり得る。
【0073】
システイニル残基が、本発明のペプチドの任意の形態(例えば、本発明のペプチドのアナログ)において存在している場合、カルボキシルメチルもしくはカルボキシアミドメチル誘導体を生じさせるために、通常は当該システイニル残基を、クロロ酢酸もしくはクロロアセトアミドなどのアルファ−ハロアセテート(及び相当するアミン)と反応させる。また、システイニル残基は、ブロモトリフルオロアセトン、アルファ−ブロモ−ベータ−(5−イミダゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルリン酸、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル−2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリ安息香酸塩、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化される。
【0074】
ジエチルプロカルボン酸塩はヒスチジル側鎖に対して比較的特異的に作用するので、本発明のペプチド中のヒスチジル残基は、pH5.5−7.0でジエチルプロカルボン酸塩と反応することによって誘導体化され得る。また、パラブロモフェナシル臭化物も有用である。この反応は好ましくはpH6.0の0.1Mカルボン酸ナトリウム中で行なわれる。特に、本発明のペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)に含まれているような、GLP−1(7−37)のN−末端ヒスチジン残基(His7)は、スズキら(Diabetes Res.; Clinical Practice 5 (Supp. 1): S30 (1988))によって示されているように、GLP−1ペプチドのインシュリン分泌性の活性にとって非常に重要である。同様に、本発明のペプチドは、アルキル基もしくはアシル基(炭素数1〜6)によって、構成要素(I)及び/又は(III)の一部としての、GLP−1のHis−7において改変され得、又はHisと機能的に同等の炭素数5〜6の環構造との置き換えによって改変され得る。好ましい修飾は、His7のアミノ末端又はそのヒスチジル側鎖での疎水性成分の導入である。
【0075】
本発明のペプチドのリジニル及びアミノ末端残基は、例えばコハク酸又は他のカルボン酸の無水物と反応され得る。これら物質による誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる作用がある。本発明のペプチド中のリジン残基に含まれるイプシロンアミノ基の(炭素数12〜18)修飾によって、循環器系における半減期は増加する。アルギニル残基は、例えば、1個又は数個の従来の試薬(中でもフェニルグリオキサル、及びニンヒドリン)との反応によって、改変され得る。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基のpKa値が高いため、この反応はアルカリ性の環境において行なう必要がある。さらに、これら試薬はアルギニンイプシロン−アミノ基と同様に、リジン基と反応し得る。
【0076】
チロシル残基の特異的な修飾自体は、広く研究されている。通常、N−アセチルイミダゾル及びテトラニトロメタンは、それぞれO−アセチルチロシル種及びe−ニトロ誘導体を生成するために使用され得る。
【0077】
カルボキシル側の基(アスパルチル又はグルタミル)は、例えば、1−シクロヘキシル−3−[2−モルフォリニル−(4−エチル)]カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R’N−C−N−R’)との反応によって選択的に修飾される。
【0078】
さらに、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換され得る。
【0079】
グルタミニル及びアスパラギニル残基は、対応するグルタミル及びアスパルチル残基へデアミド化され得る。別の局面において、これらの残基は、弱酸性の環境下でデアミド化され得る。これら残基のいずれかの形態も本発明の範疇に包含される。デアミド化が本発明のペプチドの直接的なタンパク質分解的切断において、生理学的な重要性を有し得るのであれば、デアミド化された本発明のペプチドは、プロテアーゼもしくはペプチターゼ酵素によってタンパク質分解感受性が改変されてもよい。生合成された本発明のペプチドは、一定の保存環境下で分解することが指摘されており、その結果、本発明のペプチド中の1つ以上の位置でデアミド化する。本発明のペプチド中のメチオニン残基は、酸化(主としてスルホキシド)の影響を受け易い。上述した他の誘導体のように、デスアミド化された本発明のペプチド及び/又はスルホキシド化された本発明のペプチドは、十分な生物学的活性を示すために用いられ得る。
【0080】
アルファ−アミノ酸を含有する残基の誘導体化に適した他の試薬には、メチルピコリニミデート;ピリドキサルリン酸;ピリドキサル;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイオスレア;2,4−ペンタンジオン;及びグリオキシル酸との反応で触媒されたトランスアミナーゼなどのイミドエステルが含まれる。
【0081】
本発明のペプチド(それらのカルボキシ基(C−末端)及びそれらのアミン基(N−末端)を有する)の末端アミノ酸の残基(上述に示したカルボキシもしくはアミドアミノ酸側鎖と同様に)は、適切なアミノもしくはカルボキシル保護基によって、保護された形態(例えば、アミド基によるC末端)及び/又は保護されていない形態において存在し得る。また、本発明のペプチドの酸付加塩が供給されてもよい。一般的な酸付加塩は、例えば、HBr、HI、又より好ましくはHClなどのハロゲン化水素酸(塩)である。
【0082】
本発明のペプチドに含まれる、末端、側鎖のカルボキシル基、又はリジンのイプシロン−アミノ基のPEG化(PEGylation)は、酸化に対する耐性を与えるが、これもまた本発明の範疇に含まれる。
【0083】
本発明のペプチドの誘導体を生じる他の修飾は、本発明のペプチドと共有結合し得る炭水化物及び/又は脂質に基づく。その修飾では、脂質及び/又は炭水化物と、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミンもしくはチロシン、又はそれらの反応性側鎖の部分を介してグルタミン酸塩もしくはアスパラギン酸塩とが結合することが好ましい。また、別の局面において、炭水化物及び/又は脂質は、本発明のペプチドの末端部分と連結し得る。さらに、本発明のペプチドは、本発明のペプチドを安定化し得、及び/又は体液中で(特に血液中で)本発明のペプチドの輸送特性を改善する役目を果たし得る、機能的に異なるペプチド又はタンパク質部分と結合し得る。適切なペプチド又はタンパク質は、例えばアルブミン、トランスフェリンなどが挙げられ、本発明のペプチドと直接結合される(構成要素IVのように)か、又はペプチド又は有機リンカー配列(上記を参照のこと)を介して結合される。好ましくは、これらペプチド又はタンパク質は、本発明のペプチド末端の一つと結合される。
【0084】
本発明のペプチドの分解という問題を避けるために、本発明の別の態様では、Dアミノ酸から構成されるか、又は少なくとも部分的にDアミノ酸から構成される本発明のペプチドのレトロインベルソ異性体(retro-inverso isomer)を提供する。用語「レトロインベルソ異性体」は、配列の方向が反転するとともに、各アミノ酸残基のキラリティーが反転した、直鎖状のペプチドの異性体を意味する(例えば、Jameson et al., Nature, 368, 744-746 (1994); Brady et al., Nature, 368, 692-693 (1994)を参照のこと)。親ペプチドについて言えば、上記レトロインベルソ異性体は、通常、F−mocアミノ酸誘導体と逆のアミノ酸順序に組み立てられる。一般的に、粗ペプチドは逆相HPLCによって精製され得る。
【0085】
本発明のペプチドへ組み込まれ得る他の修飾は、ペプチド骨格の修飾に関する。好ましくは、改変された本発明のペプチドは、母核模倣である。その骨格は天然に存在する骨格とは異なる一方、その側鎖構造は本発明のペプチド又はそのフラグメント、変異体、誘導体もしくはアナログと同一である。一般的に、母核模倣は、(好ましくは)置換又は挿入のいずれかとして、1つ以上の骨格鎖部分(NH、CH、CO)の修飾を示す。置換は、例えば、(I)−NH−に代わる−O−、−S−又は−CH2−;(II)−CHR−に代わる−N−、C−アルキル−又は−BH−;(III)−CO−に代わる−CS−、−CH2−、−SOn−、−P=O(OH)−又は−B(OH)−である。本発明のペプチドにおけるペプチド模倣は、これら修飾のそれぞれの組み合わせであってもよい。特に、各グループI、II及びIIIの修飾は組み合わせ得る。ペプチド模倣において、各骨格鎖部分は修飾され得、又別の局面においては一定の数の鎖部分のみが非天然に生じた部分と交換され得る。好ましくは、−NH−、−CHR−又は−CO−いずれかからなる本発明のペプチドのすべての骨格鎖部分は、別の天然に生じたグループと交換される。本発明のペプチド骨格に含まれるアミド結合(−NH−CO−)が置換される場合(分子全体又は少なくとも一箇所で)、好ましい置換部分は、例えば、レトロインベルソ(retro-inverso)アミド結合(−CO−NH−)、ヒドロキシルエチレン(CH(OH)−CH2−)、アルケン(CH2=CH−)、カルバ(CH2−CH2−)及び/又は−P=O(OH)−CH2−などの生物等比体積の部分である。また、挿入による骨格鎖の伸張は、本発明のペプチドの母核模倣において生じ得る(例えば、C−アルファ原子の側面部分で)。C−アルファ原子のどちら側にも、例えば−O−、−S−、−CH−、−NH−が挿入され得る。
【0086】
特に好ましくは、本発明のペプチドのオリゴカルバメートペプチド骨格構造である。上記アミド結合は、カルバメート部分によって置き換えられる。保護されたN−アミノアルキルカルボン酸の単量体は、相当するアミノ酸又はアミノアルコールを経て利用可能となる。それらは、固相合成によってF−moc部分又は感光性ニトロアトリルオキシカルボニル基を用いることによって、例えば、p−ニトロフェニルエステルなどの活性エステルに変換される。
【0087】
本発明のペプチドは、概略を上述したタンパク質分解的切断に対して保護されている。本発明のペプチドは、特に、ジペプチジルアミノペプチダーゼ−IV(DPP−IV)に対して保護されている。本発明において用いられる用語「DPP−IV」は、請求項1に係るペプチドが参照される。本発明のペプチド、ならびにその誘導体、アナログ、フラグメント及び変異体は、本発明のペプチドの構成要素(I)及び/又は(III)の一部としてのGLP−1(7−35、36又は37)を、血漿ペプチターゼ(DPP−IV)に対して耐性にする。
【0088】
ジペプチジルアミノペプチダーゼIVによる分解に対するペプチドの抵抗性は、例えば、以下の分解評価によって決定することができる:分注したペプチドを、分注したジペプチジルアミノペプチダーゼとともに、37℃で4〜22時間、pH7〜8の適切な緩衝液(アルブミンが存在しない緩衝液)中でインキュベートする。トリフルオロ酢酸の添加により酵素反応が停止され、HPLC又はLC−MS分析によってペプチド分解産物が分離され定量される。この分析を実施する一つの方法は以下の通りである:上述の混合物が、Zorbax300SB−C18(30nm穴、5mm粒子)の150×2.1mmカラム上に加えられ、流速0.5ml/分、0.1%トリフルオロ酢酸中におけるアセトニトリルの線形勾配下で溶出する(0%〜100%アセトニトリル、30分間)。ペプチド及びその分解産物は、214nm(ペプチド結合)又は280nm(芳香族アミノ酸)における吸光度が計測され得、それらのピーク領域の積分により定量される。分解パターンは分離されたピークのMSスペクトルを測定可能なLC−MSを用いて測定され得る。所定の時間における損傷の無い化合物/分解された化合物の割合は、ペプチドのDPP−IVに対する安定性の評価に用いられる。
【0089】
本発明のペプチドは、当該ペプチドが、所定の時間における損傷の無い化合物の割合に基づき、GLP−1(7−37)より10倍以上安定である場合には、DPP−IVに安定であると定義される。よって、DPP−IVに安定な本発明のペプチドは、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、GLP−1(7−37)等よりも安定である。安定性は、当業者において知られる任意の方法、例えば、DPP−IVを分析されるペプチドの溶液に加え、例えば一定の時間、例えば分光法、ウェスタンブロット解析、抗体スクリーニング等により、ペプチドの分解を測定する方法によって評価されてもよい。他の観点において、本発明のペプチドは、例えばその天然のレセプター(GLP−1レセプター)に結合することによって、GLP−1(7−337)の効果を奏する化合物として定義される。好ましくは、本発明のペプチドは、GLP−1レセプターに対して、天然に存在するGLP−1ペプチドの結合親和性の少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%に相当する結合親和性を有する。結合親和性は、例えば表面プラズモン共鳴等の任意の適切な方法によって測定され得る。さらに、もし、本発明のペプチドが、その細胞外受容体への結合によって細胞内にシグナルを伝達して細胞内cAMPの形成を誘導するのであれば、それは好ましい。
【0090】
本発明のペプチドは、固相ペプチド合成技術を用いて、公知技術におけるGLP−1(7−36)アミド及びGLP−1(7−37)の生産様式と同様に、合成的に生産され得、その後、例えば、逆相HPLCカラム又は適切なクロマトグラフィー技術による単一の精製工程によって、実験室規模において精製され得る。
【0091】
しかしながら、本発明のペプチドの生産は、操作された細胞において(微生物細胞又は動物細胞株の何れかにおいて)なされることが好ましい。本発明のペプチドは、例えば慣用の分離技術を用いて、当該ペプチドを発現する細胞から単離され得る。すなわち、細胞は、例えば支持体及び栄養素を備えている適当な条件の下、インビトロにて育成され得、分泌タンパク質、すなわち本発明のペプチドは、細胞外の培地から回収される。したがって、細胞内において操作を受けた配列は、好適には、本発明のペプチドの分泌を導くリーダー配列及びシグナルペプチド配列を含む。上記細胞は、好適には、上記リーダー配列及びシグナル配列を切断可能なプロテアーゼを、内在的に、又は操作を受けた遺伝子配列により、発現する。他の形態において、本発明のペプチドをコードする、操作を受けた遺伝子配列は、上述したようなリーダー配列及びシグナルペプチド配列を含まず、それゆえに、細胞内において発現された本発明のペプチドは分泌されずに、細胞溶解を伴う処理によって細胞から回収される。このような方法では、コード配列は、培地からペプチド産物を効率的に抽出するための精製用のタグを含み得、当該タグは、単離された本発明のペプチドを遊離させるために切断され得る。
【0092】
本発明は、さらに、本発明のペプチドをコードし、融合ペプチド又はそのフラグメント、アナログもしくは変異体となる核酸を提供する。本発明のペプチドをコードする任意の核酸は、本発明に包含される。遺伝コードの縮重によって、複数個の核酸配列が本発明のペプチドをコードし得る。本発明の範疇に含まれる核酸分子は、本発明のペプチド、加えて(機能的な)ヌクレオチド配列をさらにコードする核酸もまた含んでいてもよい。本発明の好ましい態様において、そのような核酸分子は、(a)全長GLP−1アミノ酸配列(GLP−1(1−37)又は機能的なGLP−1(7−35、36又は37)配列)をコードし得、(b)(a)に対応するGLP−1配列のN−末端において、任意のプロテアーゼによる開裂配列をコードし得、(b)の上流側ではリーダー配列をコードし得る。別の好ましい態様では、(b)をコードする核酸配列の上流において、(c)核酸分子は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含み得る。他の局面においては、本発明の核酸分子は(a)の上流で融合された(c)の配列を含み得、その間に(b)のリーダー配列をコードするいかなる配列も含まない。好適には、リーダー配列及びシグナルペプチド配列は、プレプログルカゴンと非相同である。
【0093】
本発明は、本発明の核酸(分子)、及び本発明の核酸(分子)を発現する他の機能的な構成要素を含んでいるベクターをさらに提供する。概して、本発明の核酸(分子)は、プロモーター配列と結合し得、最終的には他の調節配列(例えば、エンハンサー配列)と結合される。複製のため、プラスミドは複製の開始起点を含み得る。本発明のベクターがトランスフェクトされる細胞を選択する手段として、1つ以上の抗生物質抵抗性遺伝子(例えば、カナマイシン、アンピシリン)がベクターに与えられ得る。ベクターは、細菌由来のプロモーター、抗生物質抵抗性遺伝子遺伝子及び当該遺伝子由来のプロモーター、ならびに哺乳動物細胞中で複製及び発現する抗生物質抵抗性遺伝子、を含むプラスミドであり得る。さらに、本発明は、上述の前駆体タンパク質を翻訳可能であり、細胞外から導入された本発明のDNAを含んでいるホスト細胞を提供する。ホスト細胞は、原核細胞又は真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)のいずれかであり得る。好適には、ホスト細胞は胚幹細胞ではない。
【0094】
本発明のさらに他の側面によれば、構成要素(I)及び(II)、並びに最終的には構成要素(III)を包含する本発明のペプチドを投与することによる、動物の治療方法、好適にはヒトの治療方法が提供される。グルコース代謝に関連する疾病又は疾患の治療又は予防に用いられる製品の製造における本発明のペプチドの使用もまた提供される。グルコース性障害の非限定的な例としては、例えば、真性糖尿病タイプI又はタイプII(NIDDM)、インシュリン耐性、体重障害、又はそれらに関連する疾病又は疾患等が包含される。ここで、上記体重障害又は関連する疾患には、肥満、体重超過関連疾患、満腹感による調節の欠如、血漿中のインシュリンレベルの低下、血糖値の増加、又は膵臓β細胞量の減少が包含される。好適には、タイプII糖尿病(NIDDM)の治療用の薬剤の製造のための、本発明のペプチドの使用が本明細書において開示される。このように、本発明は、本発明に係るペプチドの使用、例えば、患者の体重の減少、患者の満腹感の低減、食後における患者の血漿中のインシュリンレベルの増加、患者の空腹時血糖値の減少、患者における膵臓β細胞量の増加、又は、患者における糖尿病タイプI又はIIの治療に関するものである。
【0095】
他の疾病又は疾患にかかる患者も、同様に、本発明のペプチド、すなわち、融合ペプチド、又はそのアナログ、フラグメント、変異体もしくは誘導体によって治療され得る。本発明のペプチドは、神経変性障害及びそれに関連する疾病又は疾患の治療、ならびに、アポトーシスに関連する障害及び疾病又は疾患の治療用の薬剤の調製のために使用され得る。これらの障害を治療するための本発明のペプチドの使用は、以下によって結果を得る:サイクリックAMP第2メッセンジャー経路に共役するGLP−1受容体は、げっし類及びヒトの脳全体に発現している。脳における受容体の分布の化学構成は、食物の摂取及び有害なストレスへの応答の制御におけるGLP−1の中心的な役割と単に相関をしているだけではない。GLP−1受容体とのGLP−1との結合は、神経分化誘導特性を示し、培養神経細胞において、グルタミン酸により誘導されたアポトーシス及び酸化による損傷からの保護を提供する。その上、GLP−1は、培養細胞において、アミロイドβタンパク質前駆体のプロセシングを調節する作用が示され、更に、投与量依存的に、生体内において、脳におけるアミロイドβタンパク質を減少させる。それゆえ、GLP−1は、又、中枢神経系の制御因子としても知られる。生理学的に活性なGLP−1の生物学的な活性を模倣する本発明のペプチドは、例えば、アルツハイマー病(AD)及び他の他の中枢神経又は末梢神経変性疾患(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アレキサンダー病、アルパース病、毛細管拡張性失調症、カナバン病、コケイン症候群、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、サンドホフ病、ピック病、脊髄小脳失調症、シルダー病、色素性網膜炎、小脳オリーブ変性症、及びパーキンソン病)の治療に対して治療上の適合性を有する。
【0096】
さらに、生理学的に活性なGFP−1は、様々な細胞に対する抗アポトーシス効果、例えばGLP−1は、単離されたばかりのヒト・ランゲルハンス島又は他の細胞型の量及び機能を保存するために効果的であることが示されている。すなわち、生物学的に活性な、本発明のペプチドは、細胞又は組織のアポトーシスにより引き起こされる障害の治療に用いられ得る。本明細書において用いられる場合、用語「アポトーシス」はプログラムされた細胞死(PCD)のことを意味する。この細胞死は、特に限定されないが、核のヘテロクレマチンの凝縮、細胞収縮、細胞質凝縮などの特性によって特徴づけられ、アポトーシスの後期に、エンドヌクレアーゼが媒介となり、細胞のDNAを個々のフラグメントに分離される。アポトーシスが生じている細胞のDNAを電気泳動分析すると、個々のDNAフラグメントの特徴的な「はしご」が見られ得る。「アポトーシスが介在する疾病又は疾患」又は「アポトーシスが関連する疾病又は疾患」とは、すなわち、その発現又は発達(例えば、進行)が、不適切な、すなわち具体的には、過剰なアポトーシスもしくは細胞死、又は減少されたアポトーシスもしくは細胞死(例えば、T−細胞、造血細胞、肝細胞、神経細胞、及び/又は癌細胞の死)と関係しているか、もしくは調節されている、任意の疾病、障害、又は感染を含む。
【0097】
アポトーシスが関連する疾病の例としては、虚血性疾患(再潅流障害を除く)、神経変性疾患、末梢神経損傷、再生不良性貧血、肝臓障害、及びHIV感染を含む。虚血性疾患の例としては、心筋梗塞、狭心症、及び鬱血性心不全、ならびに脳血管障害(脳卒中、くも膜下出血、脳梗塞及び脳血栓症など)などを含む。
【0098】
さらに、アポトーシスが介在する疾病又は障害の例としては、特に限定されないが、感染性の疾病又は疾患、免疫性の疾病又は疾患、炎症性の疾病又は疾患、肝臓損傷もしくは障害(肝細胞の損傷もしくは障害を含む)がもたらす疾病又は疾患、例えば、ウイルス誘発性の急性肝障害もしくは慢性肝障害及び自己免疫性肝炎、線維症、急性肝不全もしくは慢性肝不全を含む免疫関連の肝臓障害など様々な肝臓障害、肝炎(例えば、HBV、HCV、劇症肝炎、アルコール性肝炎、胆汁うっ滞性肝炎、ウィルソン病、及び自己免疫性肝炎)、ならびに移植による拒絶反応(例えば、肝臓移植による拒絶反応)、を含む。
【0099】
炎症性又は免疫機構の疾病又は障害の例としては、特に限定されないが、敗血症、播種性血管内凝固、ウイルス感染、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、白血球接着不全症II症候群、腹膜炎、慢性閉塞性肺疾患、肺炎症、喘息、急性虫垂炎、腎炎、アミロイド症、慢性気管支炎、類肉腫症、皮膚硬化症、狼瘡、多発性筋炎、ライター症候群、乾癬、骨盤内炎症性疾患、炎症性乳腺疾患、眼窩炎症疾患、免疫不全症(例えば、代表的な免疫不全であるHIV、先天性X染色体連鎖小児低ガンマグロブリン血症、一過性低ガンマグロブリン血症、選択的IgA欠損症、慢性皮膚粘膜カンジダ症、重症複合型免疫不全症)及び自己免疫性疾病又は障害を含む。
【0100】
自己免疫性疾病又は障害の例としては、多発性硬化症、インスリン依存型糖尿病、関節炎(例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症)、重症筋無力症、心筋炎、ギラン・バレー症候群、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎、乾癬、シェーグレン症候群、円形脱毛症、クローン病、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、アレルギー、皮膚エリテマトーデス、皮膚硬化症、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、癩性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、特発性両側進行性感音難聴(idiopathic bilateral progressive sensorineural hearing loss)、再生不良性貧血、真正赤血球性貧血、特発性血小板減少症(idiopathic thrombocytopenia)、多発性軟骨症、ヴェグナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スチーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、扁平苔癬、グレーヴス眼病、類肉腫症、肝臓硬変症(例えば、原発性胆汁性肝硬変症)後部ブドウ膜炎及び間質性肺線維症を含む。
【0101】
本発明のペプチドの使用は、体外から投与され、単離された本発明のペプチドを含む組成物の生産を目的としてもよい。得られた組成物は、さらに上述した障害の治療に用いら得る。本明細書において開示される障害は、本発明のホスト細胞、核酸(分子)、又はベクター、より正確に言えば、これら障害の治療のための薬剤の調製に用いられ得る本発明のホスト細胞、核酸(分子)、又はベクターによっても治療され得る。
【0102】
本発明のペプチド配列を活性成分として含む製剤の調製は、一般的に周知であり、本明細書において援用される米国特許第4,608,251号、第4,601,903号、第4,599,231号、第4,599,230号、第4,596,792号、及び第4,578,770号が例示される。典型的には、このような製剤は、水溶液又は懸濁液として注射可能に調製され、好適には水を含む(水性系)か又は乳化され得る。用語「水性系」は、少なくとも50%(w/w)の水を含む製剤として定義付けられる。同様に、用語「水溶液」は、少なくとも50%(w/w)の水を含む溶液として定義付けられる。用語「水性懸濁液」は、少なくとも50%(w/w)の水を含む懸濁液として定義付けられる。
【0103】
静脈、皮膚若しくは皮下注射又は患部への注射のために、活性成分は、発熱物質が除かれ、好適なpH、等張性及び安定性を有する、非経口投与において許容される水溶液の形態であり得る。液体の薬学的組成物は、概して、水等の液体媒体を含む。好適には、上記液体媒体には、生理的食塩水、デキストロース−エタノール若しくは他のサッカライド溶液、又は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はこれらの組み合わせのようなグリコール類が含まれ得る。さらなる例としては、リンガー液又は乳酸化リンガー液のような他の等張性媒体がある。
【0104】
例えば、本発明は、上記本発明に係る化合物の水溶液及び緩衝液を含む薬学的な製剤に関するものである。なお、上記化合物は0.1mg/ml以上の濃度で含まれ、上記製剤は約2.0〜10.0のpH、好ましくは約7.0〜8.5のpHを有する。好ましくは、上記製剤のpHは、本発明に係る化合物の等電点から少なくとも1pHユニット離れており、より好ましくは、本発明に係る化合物の等電点から少なくとも2pHユニット離れている。
【0105】
また、注射前の液体において、溶液又は懸濁液に適した固形物の形態が調製され得る。上記薬学的な製剤はフリーズドライ製剤であり得、そこへ医者もしくは患者によって使用前に溶媒及び/又は希釈液が加えられる。言い換えれば、一旦調製された上記製剤は、直ちに患者へ投与されるのではない。より正確に言えば、以下の調製、すなわち凍結状態で保存するか、又は液体の形態もしくは患者への投与に適した他の形態に後で作り変えることを目的とした乾燥形態で保存するためにパッケージ化される。別の態様において、上記薬学的な製剤は、事前にいかなる溶解をすることもなく、直ちに使用できる乾燥製剤(例えば、フリーズドライ又はスプレードライ)である。よって、「乾燥形態」とは、液体の薬学的組成物又は薬学的な製剤が、凍結乾燥法(例えば凍結乾燥;例えばWilliams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38: 48-59を参照のこと)、噴霧乾燥法(Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U. K. ), pp. 491-676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18: 1169-1206; and Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11: 12-20を参照のこと)、又は空気乾燥法(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25: 459-470; and Roser (1991) Biopharm. 4: 47-53)のいずれかによって乾燥されることが意図される。液体状の薬学的組成物の保存期間中、ポリペプチドによる凝集体構造はこのポリペプチドの生物活性に悪影響を及ぼし得、その結果、薬学的組成物の治療効果の損失をもたらす。さらに、上記ポリペプチドを含有する薬学的組成物が投与製剤によって投与されるとき、凝集体構造は、管組織、膜組織又は心臓の閉塞などの別の問題をもたらし得る。
【0106】
本発明のペプチドの薬学的な製剤には、他の成分を含み得る。この付加成分は、潤滑剤、乳化剤、酸化防止剤、充てん剤、pH緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液又はマレイン酸緩衝液)、保存料、界面活性剤、安定化剤、張度調製剤、偽の製剤(cheating agents)、金属イオン、疎水性媒体、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、ゼラチン又はタンパク質)及び/又は両性イオン(例えば、ベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジン及びヒスチジンなどのアミノ酸)を含んでいてもよい。
【0107】
本発明の製剤に用いられる安定化剤については、好ましくは高分子量ポリマー又は低分子化合物の群から選択されればよい。本発明のさらなる実施形態において、上記安定化剤としては、ポリエチレングリコール(例えば、PEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ−ヒドロキシセルロースもしくはその誘導体(例えば、HPC、HPC−SL、HPC−L及びHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコリック酸及び2−メチルチオエタノールなどの含硫物質、並びに種々の塩(例えば、塩化ナトリウム)が挙げられる。これら特定の安定化剤は、それぞれ本発明の別の態様の構成要素となる。また、上記薬学的組成物は、組成物中で薬学的に活性なポリペプチドの安定性をさらに強める、付加安定化剤を含み得る。本発明に特に関係する安定化剤は、特に限定されないが、メチオニン酸化に対して上記ポリペプチドを保護するメチオニン及びEDTA、並びに凍結融解又は人工的なせん断に伴う凝集に対して上記ポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤を含む。
【0108】
本発明の製剤に用いられる界面活性剤については、好ましくは洗浄剤、エトキシル化キャスターオイル、ポリグリコリル化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック重合体(例えば、プルロニー(Pluronie)F68、ポロキサマー(poloxamer)188及び407、トリトンX−100などのポロキサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、星型PEO、アルキル化誘導体及びアルコキシル化誘導体などのポリオキシエチレン誘導体及びポリエチレン誘導体(例えば、Tween−20、Tween−40、Tween−80及びBrij−35などのTween)、ポリオキシエチレンヒドロキシステアリン酸、モノグリセリドもしくはエトキシル化されたその誘導体、ジグリセリドもしくはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチン及びリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノラミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール及びスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)及びリソリン脂質(例えば、パルミトイルリソホスファチジル−L−セリン、及びエタノラミン、コリン、セリンもしくはスレオニンの1−アシル−sn−グリセロ−3−リン酸エステル)及びアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、リソホスファチジルのアルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、及びホスファチジルコリン(例えば、リソホスファチジルコリンのラウロイル誘導体及びミリストイル誘導体)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び親水性の頭部、すなわち、コリン、エタノラミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、及び正電荷を帯びたDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リソホスファチジルセリン及びリソホスファチジルスレオニン、及びグリセロリン脂質(例えばケファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピランソイド(galactopyransoide))、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えば、タウロ−ジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸、及びその炭素数6〜12の塩(例えば、オレイン酸及びカプリル酸)、アクリルカルニチン及び誘導体、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンのN’X−アシル化誘導体、側鎖がアシル化されたリジンの誘導体、又はリジン、アルギニンもしくはヒスチジンの何れかの組み合わせを含んでいるジペプチドのN−アセチル化されたアルギニン誘導体、及び天然もしくは酸性アミノ酸、天然アミノ酸及び2つの荷電アミノ酸の何れかの組み合わせを含むトリペプチドのN−アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号〔577−11−7〕、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号〔128−49−4〕、ドキュセートカリウム、CAS登録番号〔7491−09−0〕)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸又はその誘導体、胆汁酸及びその塩及びグリシン又はタウリン複合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N−ヘキサデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸、一価の陰イオン界面活性剤(アルキル−アリル−スルホン酸)、両性イオン界面活性剤(例えば、N−アルキル−N、N−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホン酸、3−コラミド(-cholamido)−1−プロピルジメチルアンモニオ−1−プロパン−スルホン酸)、陽イオン界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えば、セチル−トリメチルアンモニウム臭化物、セチルピリジニウム塩化物)、非イオン界面活性剤(例えば、ドデシル−D−グルコピラノシド)、エチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続した付加から生じる四官能性ブロック重合体であるポロキサミン(例えば、テトロン酸(Tetronic's)が挙げられ、又、上記界面活性剤は、イミダゾリン誘導体の群もしくはその混合物から選択され得る。これら特定の界面活性剤は、それぞれ本発明の別の実施形態の構成要素となる。薬学的組成物における界面活性剤の使用は、当業者に公知である。説明の便宜のため、レミントン:The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照のこと。
【0109】
薬学的に利用可能な保存料については、好ましくはフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、メチルp−ヒドロキシ安息香酸、プロピルp−ヒドロキシ安息香酸、2−フェノキシエタノール、ブチルp−ヒドロキシ安息香酸、2−フェニルエタノール、ベンジルアルコール、エタノール、クロロブタノール、及びチオメロサル(thiomerosal)、ブロノポル(bronopol)、安息香酸、イミドゥレア(imidurea)、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp−ヒドロキシ安息香酸、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネジン(chlorphenesine)(3p−クロルフェノキシプロパン−1,2−ジオール)又はその混合物が挙げられる。
【0110】
等張剤については、好ましくは塩(例えば、塩化ナトリウム)、糖もしくは糖アルコール、アミノ酸(例えば、L−グリシン、L−ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、またはその混合物からなる群から選択される。例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、水溶性スターチ、ヒドロキシエチルスターチ、及びカルボキシメチルセルロース−Naを含む、単糖類、二糖類、もしくは多糖類などのいずれかの糖、又は水溶性グルカゴンが用いられ得る。糖アルコールは、少なくとも1つの−OH基を有する炭素数4〜8の炭化水素と定義されており、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラシチトール(galacititol)、ズルシトール、キシリトール及びアラビトールを含む。ある態様において、上記糖アルコールの添加物はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。糖又は糖アルコールが液体製剤に可溶であり、本発明の方法によって達成される安定効果に悪影響を及ぼさない限り、その使用量は限定されない。
【0111】
偽の製剤(cheating agents)については、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸及びアスパラギン酸の塩、並びにその混合物から選択されることが好ましい。
【0112】
緩衝液については、好ましくは酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、二水素リン酸ナトリウム、リン酸一水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ヘペス(hepes)、バイシン(bicine)、トリシン(tricine)、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、又はその混合物が挙げられる。これら特定の緩衝液は、それぞれ本発明の別の態様の構成要素となる。
【0113】
本発明の薬学的なペプチドを含有する薬学的組成物における上述したすべての添加剤の使用、特に、同じ濃度範囲に関しては当業者に公知である。説明の便宜のため、レミントン:The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995を参照のこと。
【0114】
本発明のペプチドを含有する上記製剤は、従来通り注射によって(例えば、皮下(subcutaneously)、皮内、皮下(subdermally)、もしくは筋内のいずれかに)非経口で投与される。本発明のペプチドの非経口投与に適した組成物は、例えば、国際公開公報第03/002136号パンフレットに開示されているように調製されてもよい。
【0115】
他の投与形態に適した付加製剤は坐薬を含み、場合によっては、経口製剤、口腔製剤、舌下製剤、腹腔内製剤、膣内製剤、肛門製剤及び頭蓋内製剤を含む。坐薬に関しては、従来の結合剤及び担体を含んでいてもよく、例えば、ポリアルカレングリコール又はトリグリセリドが挙げられる。なお、上記坐薬は、この有効成分を0.5%〜10%の範囲、好ましくは12%で含む混合物から形成され得る。経口製剤は、通常使用される賦形剤として、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、スターチ、マグネシウムステアリン酸、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含む。これらの組成物は、懸濁液、タブレット、ピル、カプセル、持続型遊離製剤または粉剤の形態で摂取されるとともに、10〜95%、好ましくは25〜70%の有効成分を含む。
【0116】
上述したように、さらなる薬学的方法が、活性の持続期間を制御するために用いられてもよい。制御された遊離調製は、本発明のペプチドを複合するか、又は吸収するために、ポリマーを使用することによって達成され得る。活性成分(ペプチド)の制御された輸送は、適切なマクロ分子(例えばポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン、ビニルアセテート共重合体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び硫酸プロタミン)、マクロ分子の濃度、及び結合方法を選択することによって行なわれる。この指導は、Remington's Pharmaceutical Sciencesに開示されているため、参照のこと。制御された遊離調製により活性の持続期間を制御するために取り得る別の方法は、本発明のペプチドを、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレンビニル酢酸共重合体などの高分子材料の粒子の中に組み込むものである。
【0117】
本発明のペプチドは、中性又は塩の形態として形成され得る。本発明のペプチドは、多数の有機塩基及び無機塩基、並びに有機酸及び無機酸のいずれかと反応して(付加)塩(例えば、上記ペプチドの遊離アミノ基と形成される)を形成するために、十分に酸性もしくは十分に塩基性であればよい。酸付加塩を形成するために一般的に用いられる酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、並びに酒石酸、asp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、マンデル酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸である。上記塩の一例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、へキシン−1,6−ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩を含む。また、遊離カルボキシル基と形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン及びプロカインなどの有機塩基由来であってもよい。本発明のペプチドの酸付加塩、カルボン酸塩、低級アルキルエステル及びアミドは、国際公開公報第91/11457号パンフレット(1991);欧州特許出願第0733644号(1996);及び米国特許出願第5,512,549号(1996)に従って形成すればよい。
【0118】
本発明のペプチド配列を含んでいる製剤は、投与製剤と同じ方法で投与される。投与量は、治療される患者によって決まる(例えば、患者の病気の深刻さ)。適切な投与範囲は、(たとえ1〜10mgの範囲内でより多くの量が意図されるにしても)例えば、約0.1μg〜2000μg(例えば、約0.5μg〜1000μgの範囲、好ましくは1μg〜500μgの範囲、特に好ましくは10μg〜100μgの範囲など)の好ましい範囲を有する治療投与量につき、ほぼ数100マイクログラム程度である。
【0119】
例えば付加賦形剤(例えば、グリシン及びマンニトール、又は他の添加剤)を加えた本発明のペプチドを含有する製剤は、バイアル(vials)のように凍結乾燥された形態で市販され得る。バイアルを希釈する手順は提供されるので、患者は製剤の投与前に、製品を所望の濃度に作り変えることができる。また、本発明の製剤は、他公知の方法(例えば、予めシリンジ充填されるような方法など)で市販され得る。
【0120】
本発明は、添付の実施例においてさらに説明される。
【0121】
〔実施例〕
〔実施例1〕
遺伝子コンストラクトの作製
GLP−1(7−37)の配列をコードするcDNAは、図1aに示すようにHincII及びEcoRI部位を含む配列において、合成的に合成した。別途、図1bに示されるように、GLP−1(7−37)、IP2並びにSfoI、EcoRI及びXbaIの制限酵素認識部位をコードする配列を含むcDNAを合成した。GLP−1の直接の分泌経路のために、ストロメライシン3の異種シグナル配列(ACC番号 NM_005940)を用いた。それゆえ、ストロメライシンのシグナル及びリーダー配列をコードするこのcDNAは、ヒトRNAからの逆転写酵素PCRによって増幅され、図1a又は図1bのコンストラクトと共に、図1c及び図1dのそれぞれに示すコンストラクトを形成するために使用された。
【0122】
図1eのコンストラクトを形成するために、図1aのコンストラクトのHincII/EcoRIフラグメントを図1dの配列のSfo1部位の中にクローンした。同様に図1fに示されるコンストラクトを製造するために、真核性の発現プラスミドのEcoR1部位の中に図1dのEcoR1フラグメントをクローンした。また、図1gに示されるコンストラクトを形成するために、図1bに示されるコンストラクトのHincII/XbaIフラグメントを図1dに示されるコンストラクトのSfoI/XbaI部位の中にクローンした。図1hは、短縮した内因性イントロン配列により遮断された、ストレプトマイシンのリーダー及びシグナル配列をコードし、ヒトGLP−1(7−37)、IP2及びGLP−2(1−35)の配列と融合され、コドンが最適化された配列を合成したものを示す。図1hのコンストラクトのDNA配列は配列番号16であり、配列番号15も翻訳されたペプチドの配列を示している。
【0123】
また、図1i及び1jの配列を合成した。そして、これらを、図1hの線形化したNael/BssHII配列の中に、図1jのNael/BssHIIフラグメントをクローニングすることによって、図1kに示される配列を形成するために用いた。図1kのコンストラクトのDNA配列は配列番号14であり、配列番号13も翻訳されたペプチドの配列を示している。図1hの配列のBssHIIによる消化及び再連結によって図1lのコンストラクトを形成した。図1lのコンストラクトのDNA配列は配列番号18であり、配列番号17も翻訳されたペプチドの配列を示している。図1hの線形化したAfel/BssHII配列の中に、図1iの配列のAfel/BssHIIフラグメントをクローンすることによって、図1mのコンストラクトを形成した。図1mのコンストラクトのDNA配列は配列番号20であり、配列番号19も翻訳されたペプチドの配列を示している。
【0124】
上述したコンストラクトは当業者が通常の技術を用いることにより製造してもよい。一般式(I)によって規定されるようなIP2相同体(構成要素(II)としての)を有する本発明の別の融合ペプチドは、同じように構築され得る。それ故、本発明の融合ペプチドは、構成要素(II)として、配列(RR)DFLEEVAIAEELG,(RR)DFIEEVAIAEELG,(RR)DFPEEVAIAEEIG,(RR)DFLEEVAIAEEIGを有するように構築された。
【0125】
〔実施例2〕
GLP−1ペプチドのウエスタンブロット解析
様々なGLP−1ペプチドを、固相(syn)、又は、E.coli(rec)を用いた組み換えにて合成的に生産した。GLP−1ペプチド(配列番号1を31ng、及び配列番号6、配列番号7、配列番号8をそれぞれ10ng)を10%〜20%の勾配SDS PAGEにて分離し(120V、90分間)、半乾燥ブロッティング(2.0mA/cm2、60分間)によりPVDF膜(Immobilon−P Membran 0.45μm Millipore IPVH 00010)に転写した。メタノール固定及びブロッキング(3%(w:v)BSA、0.1%(v:v)Tween−20を含むTBS)の後、膜を1μg/mlの抗GLP−1抗体(HYB 147−12、Antibodyshop)を用いて、4℃ o/nにて免疫ブロットした。洗浄、及び0.02μg/mlの検出抗体(Anti Mouse IgG, HRP conjugated, Perkin Elmer PC 2855−1197)を用いた、室温にて4時間のインキュベーションの後、化学蛍光検出にてタンパク質の位置を明らかにした。図2は表されたペプチドのウエスタンブロットを示す。次の値が得られた:配列番号1、GLP−1(7−37)に相当する(ID1syn)は、31aa、3.3kD;配列番号8、GLP−1(7−37)−IP2に相当する(ID8syn、CM3)は、46aa、5.1kD;配列番号7、GLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP−2に相当する(ID7rec、CM2)は、83aa、9.4kD;配列番号6、GLP−1(7−37)−IP2−RR−GLP−1(7−37)に相当する(ID6syn、CM1)は、79aa、8.7kD。
【0126】
〔実施例3〕
GLP−1CMペプチドのインビトロヒト血漿安定性
合成GLP−1ペプチド(配列番号1syn、配列番号6syn、配列番号7rec、配列番号8syn)を濃度20ng/mlにて、ヒト血漿と共に、37℃、5%CO2にて3時間培養した。血漿のジペプチジルペプチダーゼ活性はDPP−IV阻害剤(#DPP4,Biotrend)を用いて阻害した。活性GLPはGLP−1(Active)ELISA(#EGLP−35K, Biotrend)を用いて測定した。
【0127】
野生型のGLP−1(7−37)(配列番号1)に対して、配列番号6、配列番号7及び配列番号8の本発明の伸張されたGLP−1ペプチドのC末端は、有意に、ヒト血漿中において、インビトロで安定であった(図3)。コントロール(右手側)としてDDP−IVを加えた実験から得られた結果を示す。GLP−1活性はコントロールの実験において完全に維持されていた。
【0128】
〔実施例4〕
インビトロバイオアッセイ
サイクリックAMP生産
RIN−5F(ラット島細胞腫、ECACC No. 95090402)細胞を、24穴プレートにて、4日間、70%集密になるまで育てた。細胞をDMEM(E15−009、PAA)で2度洗浄した後、1% HSA(Aventis)、0.2mM IBMX(858455、Sigma)及び供試ペプチドを加えた0.5mlDMEM(E15−009、PAA)に加えた。25℃で20分間インキュベートした後、PBSで細胞を2回洗浄した。細胞のcAMPを0.5% TritonX−100を含む0.1N HClを加えることによって抽出した。サイクリックAMPをcAMP(低pH)EIA(Cat.DE0355、R&D)を用いて定量した。刺激のために3×10-8Mの配列番号1、配列番号6syn、配列番号6rec、配列番号7rec、配列番号8synを用いた。
【0129】
結果を図4に示す。GLP−1が存在しない状態における基本的な生産量を100%のcAMP生産とした。GLP−1はGプロテイン共役型の受動態に結合し、cAMP生産を刺激する。全ての供試分子において細胞cAMP生産が増加している。
【0130】
〔実施例5〕
インビトロ生物活性
11週齢のタイプII糖尿病マウス(C57BL/Ks−Leprdb/db、Harlan)を、午前9時及び午後5時の1日に2回、5μgのペプチドを皮下注射する処置をした(1グループあたりn=5)。血糖値は処置前(0日)及びGLPCMペプチドを処置した後(2日、4日、7日、10日)、午前10時に一晩の絶食期間の日測定した。データは0日目の血糖値の測定値と相対的に表した。
【0131】
試験に供された全ての本発明のペプチド(配列番号6(合成又は組み換え)及び配列番号7(合成又は組み換え))は抗高血糖効果を有している。最も良い結果は組み替え配列番号6(CM1)及び合成配列番号8(CM3)より得られた。図5(y軸)は処置の相対的な効果を示している。0日目の血糖値を1とした。未処置動物は血糖値が増加し続け、本発明のペプチドで処置された動物は、ここでは大雑把に表示しているが、長期にわたり血糖値が減少し続けた。
【0132】
〔実施例6〕
GLP1CMペプチドのインビトロ血漿安定性の測定(動態学的試験法)
インキュベーションバッファー(50mMトリエタノールアミン−HCl(pH7,8)、0.2%HSA)における、CM3、アラニン置換型CM3アナログ(CM3−ANA01、CM3−ANA02、CM3−ANA03)、C−末端短縮型CM3アナログ(CM3−ANA06、CM3−ANA07)又はC−末端伸長型CM3アナログ(CM3−ANA09)からの1μMペプチドの一定分量は、10%ヒト血漿を用いて、37°C且つ5%CO2において0時間、3時間、6時間及び9時間インキュベートされた。ジペプチジルペプチダーゼ活性は、DPPIV阻害剤(#DPP、Biotrend)の添加によって停止され、且つ活性型GLP−1レベルは、GLP−1(活性型)ELISA(#EGLP−35K、Linco)を用いて測定された。結果は、少なくとも2つの独立した実験における三つ組みからの結果である。
【0133】
GLP−1のC−末端に付加された少なくとも9つのアミノ酸を有する本発明のペプチドは、CM3(マウス、GLP−1(7−37)−IP2)及び構成要素(II)(IP2)において改変された配列を有するこれらの誘導体、すなわち、CM3−ANA01、CM3−ANA01、CM3−ANA02、CM3−ANA03、CM3−ANA05、CM3−ANA07、CM3−ANA07である。ペペプチドGLP−1及びCM3−ANA06は、コントロール物質又は標準物質を示す。
【0134】
図6は、活性型GLP−1の活性部分(active portion)を、0時間の値に対する%(0h=100%)として示す。GLP−1は、9時間血漿暴露後、たった9%を有する最も悪い血漿中安定性を有していることは明らかである。CM3−ANA01は、9時間経過後、84%原料を有する最も良い安定性値を示す。本発明のペプチドは、9時間後に少なくとも30%において残留物を有し、一方、より短い伸長を有するペプチドはこれらの値に届かない。上記動態から、試験された物質のための活性型GLP−1を0時間の値に対して80%まで分解するために必要とされる時間(DT80:80%分解時間)が決定され得る。
【0135】
【表1】

【0136】
本発明の物質は、標準物質と比較して、かなり長いインビトロ血漿中安定性を示す。いずれの理論に縛られることなく、GLP−1のC−末端伸長は立体障害を導入し、これらのアナログがDPPIVの活性部位に入ることを防ぎ、且つこのようにして分解を免れる。一方、より短い標準物質は、GLP−1安定性のためのこの保護効果を示さない。この仮説は、ペプチドCM3−ANA06(36aa)、CM3−ANA07(40aa)及びCM3(46aa)の累積的なC−末端伸長の安定性が連続して増加することによって支持される。それにもかかわらず、この現象は純粋のアミノ酸の数にのみに依存しないことが、CM3のIP2領域におけるアラニン置換によって示されている。CM3に類似した同数のアミノ酸を有するCM3−ANA03ペプチドは、CM3と比較して大いに低下された安定性を有している。一方、同様に46アミノ酸からなるCM3−ANA01は、CM3よりも高い血漿中安定性を有している。これは、アミノ酸の数以外に、さらなる立体効果が安定性に影響を及ぼし得ることを示唆している。特定の構造に起因する、GLP−1のC−末端におけるIP2を含む伸長又はIP2とある程度の相同性を有する伸長を有するペプチドが特に好ましく、N−末端領域がDPPIVの活性部位に入ることを妨げることができる。
【0137】
〔実施例7〕
インビトロ研究−免疫原性
試験物質CM1の潜在的免疫原性を解明するために、パラビオサイエンス(フローニンゲン、ドイツ)において、マウスの研究が行われた。上記試験は、22日に渡って5回の反復注射(70μgペプチド/投与、静脈注射)を受けるBALB/cマウスにおいて行われた(n=5)。
【0138】
後述する図において示されるように、CM1synは毒性を誘導せず、且つ最小のT−細胞抗体反応及び抗体力価を誘導した。副生成物(ペプチドの純度はちょうど95%)の免疫学的作用は排除され得ない。図7は、CM1synの潜在的免疫原性作用の評価のための研究を表す。左手側(図7A)において、T−細胞リコール反応試験の結果が示される。処理マウス及びコントロールマウスの脾臓が外植され、T−細胞は単離され且つ抗原の量を増加させることによって刺激された。増殖性のリコール反応が測定される。右手側(図7B)において、動物の免疫血清における抗原特異的IgG抗体力価が測定された。
【0139】
〔実施例8〕
糖尿病マウスにおける投与量−有効性研究
2時間の絶食期間の後、Rj−db(db/db)系統における糖尿病C57BL/KsJマウスは、GLP−1、CM1、CM3、CM3−ANA01及びエキセンディン−4の5つの異なる濃度を用いて処理された。第6グループは生理食塩水のみを用いて処理された。1グループあたり7匹の動物が処理された。注射の直前、注射後1時間及び4時間に、血中グルコースは尾部出血から測定された。
【0140】
図8(図8A(GLP−1)、図8B(CM1)、図8C(CM3)及び図8D(CM3−ANA01))に従って、結果は投与量−反応曲線において示される。全試験物質について、グラフは、異なる濃度についての開始の値に対する血中グルコースの比率を用いて作成された。基礎値との比較における減少率として、1時間の測定値を用いて投与量反応曲線を作成する事によって、異なる試験物質のためのED50値が測定された。GLP−1、CM3−ANA01、CM3rec及びエキセンディン−4のED50値を評価するために、モーガン−マーサ−フローディン(MMF)モデルが用いられ、CM1のために、リチャードモデルが用いられた。2つのモデルは、投与量反応測定に適するシグモイド適合モデルである。全てのペプチドのために、血中グルコースの減少率から血漿グルコースED50値(1回の皮下注射投与量μg/マウス)が測定された。これらは、表1においてまとめられている。
【0141】
【表2】

【0142】
ED50値から推定されるように、GLP−1アナログであるCM1、CM3及びCM3−ANA01は、20倍を越えるインビトロ生物活性を示す。これは、恐らく、血漿中安定性が増強された結果である。
【0143】
試験された全てのペプチドは、少なくとも最も高い濃度に関して、高血糖db/dbマウスにおける血中グルコースレベルの有意な減少をもたらす。1.1−3.0nmolペプチドの一回の皮下注射後の血漿グルコースにおける減少(対コントロール)は、表2においてまとめられる。表2は試験物質のグルコース低下作用(対コントロール)を示す。血漿グルコースにおける減少及び対応する有意な水準は、ペプチド注射後1時間(@1h)及び4時間(@4h)の時間与えられる。違いは、ペプチドの長期間有効性において観察された。エキセンディン−4及びCM3のみが4時間後の血中グルコースレベルの有意な減少を示した。
【0144】
【表3】

【0145】
〔実施例9〕
db/dbマウスの長期間処理
n=12のRj−db(db/db)系統におけるC57BL/KsJマウスを用いる4つのグループが調査された:
グループA 1日1回、賦形剤(0.9%生理食塩水)を用いた処理
グループB 1日1回、24nmol/kg試験物質1:CM1recを用いた処理
グループC 1日1回、24nmol/kg試験物質2:CM3−ANA01を用いた処理
グループD 1日1回、24nmol/kg標準物質エキセンディン−4(当業者に周知であり承認されている(しかし、エキセンディン−4はGLP−1アナログではない))を用いた処理。
【0146】
ペプチド又は賦形剤は、午後2時から午後3時の間に、背中の皮膚のひだにおいて1日1回皮下投与される(グループA−D)。投薬計画は18週間続けられた。12〜18週まで、グループあたり12匹の動物の内6匹において、処理は1日に2回行われた。
【0147】
マウスの様々なパラメーター、すなわち、健康状態(1)、体重(2)、飼料消費(3)、血中グルコース(4)、グルコース負荷試験(5)、インスリン情報(6)、糖化ヘモグロビン(7)、病理学(8)、及びT細胞の再刺激(9)が調査された。
【0148】
健康状態(1)は全てのグループにおいて良好であり、処理の副作用は見られなかった。
【0149】
体重(2)は、処理18週後に、すべての処理グループにおいてより減少した(図9)。CM3−ANA01グループにおいて、相対的な体重増加は有意に減少している。図9Aは、db/dbマウスの体重における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表す。グループあたり12匹の動物の平均値が曲線で表される。図9Bは、db/dbマウスの体重における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表す。122日処理後、グループあたり12匹の動物の相対的な体重増加が曲線で表される。試験物質CM3−ANA01を用いた処理(グループB)のみが有意により少ない体重増加を示した(p<0.001)。
【0150】
飼料消費(3)は、コントロールと比較したCM1及びCM3−ANA01グループにおいて有意により低下した。図10は、122日の処理期間のdb/dbマウスの毎週の飼料消費における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表す。マウスあたりの相対的な飼料消費は、グループB及びCにおいて有意に減少する(p<0.001)。
【0151】
血中グルコース(4)レベルは、様々な状態において測定された。非絶食時血中グルコースレベル(ペプチド注射後1時間)、すなわち非絶食時血中グルコースレベルにおける生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用は図11Aにおいて示される。血中グルコースは、24nmol/kgの濃度における生理食塩水(A)又はペプチドCM1(B)、CM3−ANA01(C)若しくはエキセンディン(D)の皮下注射後1時間の尾部出血から測定された。コントロールと比較して、皮下ペプチド注射後1時間の非絶食時血中グルコースレベルはグループBにおいて55%、グループCにおいて51%及びグループDにおいて60%まで減少する(図11B)。処理グループにおける血中グルコース減少は、極めて有意である(p<0.0001)。
【0152】
絶食時血中グルコースレベル(ペプチド注射後18時間)、すなわち絶食時血中グルコースレベルにおける生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用は図11Cにおいて示される。血中グルコースは、試験物質の皮下注射後18時間、12時間一晩絶食後の尾部出血から測定された。ペプチド注射後18時間の絶食時血中グルコースレベルは、CM1及びCM3−ANA01グループにおいて減少する。
【0153】
腹腔内グルコース負荷試験(5)(IPGTT)は、グループA−Dのマウスにおける処理の8週間後に実施された。12時間絶食動物の基礎血中グルコース値(0分)は尾部出血によって測定され、その後、試験物質の皮下注射及び20%グルコース溶液(kgあたり1gグルコース)の腹腔内注射を行った。血中グルコースは、グルコース注射後15分、30分、45分、60分、90分及び120分においてさらに測定された。全ての処理グループにおいてグルコース負荷の有意な正常化が示された(図12A)。図12Aにおいて、生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の8週後の腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の間の絶対的な血中グルコースレベルが示される(それぞれのグループ(n=12)の平均)。
【0154】
血中グルコース負荷試験の図12Aによって提示されたデータの他の提示は、図12Bにおいて与えられる。生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の8週後の腹腔内グルコース負荷試験(IPGTT)の間の相対的な血中グルコースレベルは、開始時血中グルコースレベル(100%)において正規化した。
【0155】
インスリンレベル(6)は12時間一晩絶食期間後のマウスから測定された。処理の18週後に、処理グループの全てのマウスは、非処理コントロールよりも有意により多くのインスリンを産生する。図13は、0.9%生理食塩水(グループA)、CM1ペプチド(グループB)、CM3−ANA01ペプチド(グループC)又はエキセンディン−4(グループD)を用いた18週処理後のマウスにおける血清インスリンレベルに関するデータを提示する。採取後直ちに、血液試料は、インスリン分解を回避するためのプロテアーゼ阻害剤の混合物を用いて処理された。血清は、インスリンマウス超高感度ELISA(Cat.#EIA−3440、DRG)を用いてインスリンに関して分析された。有意性は、スチューデントt−検定を用いて測定された。
【0156】
糖化ヘモグロビン(7)は、赤血球(RBC)において、過剰の血漿中グルコースがヘモグロビンに結合することによって形成される。赤血球は、120日の寿命を有するので、糖化ヘモグロビンの測定は、グルコース制御の長期間の指標を与え、且つ血漿中グルコースレベルよりもよい指標として考えられる。全血は後眼窩洞から採取され、且つ糖化ヘモグロビンレベルを測定するために酵素的HbA1c試験キット(#DZ121A、Diazyme)を用いて解析された。パラメーターとして糖化ヘモグロビンを用いると、全ての処理グループにおいて増加における有意な減少が見られた。
【0157】
図14Aは、生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の6週、12週及び18週後の全血試料における糖化ヘモグロビン(GHb)の相対的な増加を示す。図14Bは、生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の18週後の全血試料における糖化ヘモグロビン(GHb)の相対的な増加を示す。グループあたりの全ての動物(n=12)の平均値が与えられる。全ての処理グループの糖化ヘモグロビンレベルの増加は、コントロールよりも有意により低下している。
【0158】
処理されたマウスの病理学(8)が実施された。剖検は、膵臓の体積を除いて、非処理グループAと比較した処理グループの臓器における違いを示さなかった。膵臓重量が測定され、且つ全ての処理グループにおいて極めて有意により重くなっていることが明らかにされた。図15は、0.9%生理食塩水(グループA、n=11)、CM1ペプチド(グループB、n=12)、CM3−ANA01ペプチド(グループC、n=12)又はエキセンディン−4(グループD、n=12)を用いた処理の18週後の動物の乱切(scarification)の日において測定された膵臓重量を示す。
【0159】
試験された物質の潜在的免疫学的作用を評価するために、IV型免疫原性(9)がT細胞再刺激によって調べられた。このために、グループあたり8匹の動物の脾臓が外植、T細胞は単離され、且つ異なる濃度の対応する試験物質を用いて再刺激された。非処理コントロールと比較して、ペプチド再刺激されたT細胞の増殖における有意な増加は見出されなかった。図16は、異なる濃度の試験物質CM1(図16A)及びCM3−ANA01(図16B)並びに標準物質エキセンディン−4(図16C)に対する脾臓細胞のインビトロリコール反応を表す。非放射性細胞増殖分析(細胞増殖ELISA、BrdU、化学発光法)を用いて、50μg/mlにおいて開始する3倍希釈の試験物質CM1及びCM3−ANA01並びに標準物質エキセンディン−4に対するグループAからDのマウスの脾臓細胞のインビトロリコール反応が、個々のマウスの三つ揃いにおいて測定された。刺激指数(SI)は、それぞれのペプチドの存在における反応とペプチドの非存在における反応との商として算出された。それぞれの処理グループ及びコントロールグループの平均値±標準偏差は示される(グループA:n=3、グループB:n=6、グループC:n=7、グループD:n=6)。平均値の算出のために、5μg/mlConAを用いたポジティブコントロール培養において6.5を超えるSIを有するマウスのみが分析された。
【0160】
糖尿病マウスにおける長期間の研究は、本発明のC−末端伸長型ペプチドの有効性をさらに支持する。試験された全てのパラメーター(体重、飼料消費、血中グルコースレベル、糖化ヘモグロビン、グルコース負荷、インスリン分泌、膵臓重量)において、C−末端伸長型ペプチドは有意な治療作用を示した。内因的に生じる配列とC−末端伸長型CellMedペプチドとの相同性を考慮に入れると、これらの本発明のペプチドは、非哺乳類のエキセンディン−4と比較した免疫原性の点から見て、有利であることが示された。マウスにおける免疫原性研究からのデータは、CM1ペプチドの臨床的に関連する免疫原性がないことを支持する。
【0161】
(配列表)
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR G
配列番号:1
RRDFPEEVAI VEELG
配列番号:2
RRDFPEEVAI AEELG
配列番号:3
HADGSFSDEM NTILDNLAAR DFINWLIQTK ITDRK
配列番号:4
HADGSFSDEM STILDNLATR DFINWLIQTK ITDKK
配列番号:5
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IAEELGRRHA
EGTFTSDVSS YLEGQAAKEF IAWLVKGRG
配列番号:6
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IAEELGRRHA
DGSFSDEMST ILDNLATRDF INWLIQTKIT DKK
配列番号:7
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IAEELG
配列番号:8
MAPAAWLRSA AARALLPPML LLLLQPPPLL ARALPPDVHH LHAERRGPQP
WHAALPSSPA PAPATQEAPR PASSLRPPRC GVPDPSDGLS ARNRQKR
配列番号:9
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IVEELGRRHA
EGTFTSDVSS YLEGQAAKEF IAWLVKGRG
配列番号:10
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IVEELGRRHA
DGSFSDEMNT ILDNLAARDF INWLIQTKIT DRK
配列番号:11
HAEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR GRRDFPEEVA IVEELG
配列番号:12
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg
M A P A A W L R S A A A R A
51 ccctgctgcc acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg
L L P P M L L L L L Q P P P L L
101 gcccgggccc tgcccccggt gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg
A R A L P P
151 ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc ccagcggcgt atccggacgc
201 caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc catgtgccgg
251 tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta
351 ggcctgacca gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct
D V H H L
401 gcacgccgag aggcgcggcc ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca
H A E R R G P Q P W H A A L P S S
451 gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg cccccaggcc tgccagcagc
P A P A P A T Q E A P R P A S S
501 ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg gcctgagcgc
L R P P R C G V P D P S D G L S A
551 tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
R N R Q K R H A E G T F T S D V S
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg
S Y L E G Q A A K E F I A W L V
651 aagggcaggg gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga
K G R G R R D F P E E V A I V E E
701 gctgggccgg cgacacgccg agggcacctt cacctccgac gtgagcagct
L G R R H A E G T F T S D V S S Y
751 acctggaggg ccaggccgcc aaggagttca tcgcctggct ggtgaagggc
L E G Q A A K E F I A W L V K G
801 aggggctgag cgcgc
R G *
配列番号:13
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg ccctgctgcc
61 acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg gcccgggccc tgcccccggt
121 gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc
181 ccagcggcgt atccggacgc caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc
241 catgtgccgg tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta ggcctgacca
361 gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct gcacgccgag aggcgcggcc
421 ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg
481 cccccaggcc tgccagcagc ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg
541 gcctgagcgc tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg aagggcaggg
661 gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga gctgggccgg cgacacgccg
721 agggcacctt cacctccgac gtgagcagct acctggaggg ccaggccgcc aaggagttca
781 tcgcctggct ggtgaagggc aggggctgag cgcgc
配列番号:14
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg
M A P A A W L R S A A A R A
51 ccctgctgcc acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg
L L P P M L L L L L Q P P P L L
101 gcccgggccc tgcccccggt gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg
A R A L P P
151 ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc ccagcggcgt atccggacgc
201 caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc catgtgccgg
251 tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta
351 ggcctgacca gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct
D V H H L
401 gcacgccgag aggcgcggcc ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca
H A E R R G P Q P W H A A L P S S
451 gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg cccccaggcc tgccagcagc
P A P A P A T Q E A P R P A S S
501 ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg gcctgagcgc
L R P P R C G V P D P S D G L S A
551 tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
R N R Q K R H A E G T F T S D V S
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg
S Y L E G Q A A K E F I A W L V
651 aagggcaggg gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga
K G R G R R D F P E E V A I V E E
701 gctgggccgg cgacacgccg acggcagctt cagcgacgag atgaacacca
L G R R H A D G S F S D E M N T I
751 tcctggacaa cctggccgcg cgcgacttca tcaactggct gatccagacc
L D N L A A R D F I N W L I Q T
801 aagatcaccg atcggaagtg agcgcgctga tatc
K I T D R K *
配列番号:15
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg ccctgctgcc
61 acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg gcccgggccc tgcccccggt
121 gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc
181 ccagcggcgt atccggacgc caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc
241 catgtgccgg tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta ggcctgacca
361 gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct gcacgccgag aggcgcggcc
421 ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg
481 cccccaggcc tgccagcagc ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg
541 gcctgagcgc tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg aagggcaggg
661 gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga gctgggccgg cgacacgccg
721 acggcagctt cagcgacgag atgaacacca tcctggacaa cctggccgcg cgcgacttca
781 tcaactggct gatccagacc aagatcaccg atcggaagtg agcgcgctga tatc
配列番号:16
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg
M A P A A W L R S A A A R A
51 ccctgctgcc acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg
L L P P M L L L L L Q P P P L L
101 gcccgggccc tgcccccggt gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg
A R A L P P
151 ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc ccagcggcgt atccggacgc
201 caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc catgtgccgg
251 tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta
351 ggcctgacca gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct
D V H H L
401 gcacgccgag aggcgcggcc ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca
H A E R R G P Q P W H A A L P S S
451 gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg cccccaggcc tgccagcagc
P A P A P A T Q E A P R P A S S
501 ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg gcctgagcgc
L R P P R C G V P D P S D G L S A
551 tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
R N R Q K R H A E G T F T S D V S
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg
S Y L E G Q A A K E F I A W L V
651 aagggcaggg gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga
K G R G R R D F P E E V A I V E E
701 gctgggccgg cgacacgccg acggcagctt cagcgacgag atgaacacca
L G R R H A D G S F S D E M N T I
751 tcctggacaa cctggccgcg cgctga tat c
L D N L A A R *
配列番号:17
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg ccctgctgcc
61 acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg gcccgggccc tgcccccggt
121 gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc
181 ccagcggcgt atccggacgc caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc
241 catgtgccgg tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta ggcctgacca
361 gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct gcacgccgag aggcgcggcc
421 ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg
481 cccccaggcc tgccagcagc ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg
541 gcctgagcgc tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg aagggcaggg
721 acggcagctt cagcgacgag atgaacacca tcctggacaa cctggccgcg cgctgatatc
配列番号:18
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg
M A P A A W L R S A A A R A
51 ccctgctgcc acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg
L L P P M L L L L L Q P P P L L
101 gcccgggccc tgcccccggt gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg
A R A L P P
151 ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc ccagcggcgt atccggacgc
201 caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc catgtgccgg
251 tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta
351 ggcctgacca gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct
D V H H L
401 gcacgccgag aggcgcggcc ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca
H A E R R G P Q P W H A A L P S S
451 gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg cccccaggcc tgccagcagc
P A P A P A T Q E A P R P A S S
501 ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg gcctgagcgc
L R P P R C G V P D P S D G L S A
551 tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
R N R Q K R H A E G T F T S D V S
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg
S Y L E G Q A A K E F I A W L V
651 aagggcaggg gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga
K G R G R R D F P E E V A I V E E
701 gctgggctga gcgcgc
L G *
配列番号:19
1 gatatccacc atggcccccg ccgcctggct gaggagcgcc gccgccaggg ccctgctgcc
61 acccatgctg ctgctgctgc tgcagccccc acctctgctg gcccgggccc tgcccccggt
121 gagtgcccgc cactcgccgt ccgctcctcg ctgagggggc gccgggcacg cgggctgggc
181 ccagcggcgt atccggacgc caagaaacca gagagccagc cagatgccaa agggccctgc
241 catgtgccgg tgccctttcc ctctccattt gccctgccac acagtgggct ggggttgcac
301 gtgtgtttgc tgacaggcca catctctaac tgtgggccat gtggacctta ggcctgacca
361 gaccctcatg tcttcctcct tcccaggacg tgcaccacct gcacgccgag aggcgcggcc
421 ctcagccctg gcacgccgcc ctgccaagca gccctgcccc tgccccagcc acccaggagg
481 cccccaggcc tgccagcagc ctgaggccac ccaggtgcgg cgtgcctgat ccctccgatg
541 gcctgagcgc tcggaatcgg cagaagaggc acgccgaggg caccttcacc tccgacgtga
601 gcagctacct ggagggccag gccgccaagg agttcatcgc ctggctggtg aagggcaggg
661 gccgcaggga cttccctgag gaggtggcca tcgtggagga gctgggctga gcgcgc
配列番号:20
HGEGTFTSDV SSYLEGQAAK EFIAWLVKGR G
配列番号:21
RRDFPEEVAI
配列番号:22
RRDFPEEVAI VEEL
配列番号:23
RRDFPEEVAI AEEL
配列番号:24
Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala
配列番号:25
Ala Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile
配列番号:26
Ala Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Val Glu Glu Leu
配列番号:27
Ala Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu
配列番号:28
Ala Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Val Glu Glu Leu Gly
配列番号:29
Ala Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu Gly
配列番号:30
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Ala
Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu Gly
配列番号:31
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Ala Glu Glu Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu Gly
配列番号32
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Ala Ala Ala Ala Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu Gly
配列番号:33
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Ala
Ala Asp Ala Ala Ala Ala Val Ala Ile Ala Ala Ala Leu Gly
配列番号:34
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Pro
配列番号:35
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala
配列番号:36
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Ala Glu Glu Leu Gly Arg Arg
His Ala Cys
配列番号:37
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Ala
Ala Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Val Glu Glu Leu Gly
配列番号:38
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Ala Glu Glu Val Ala Ile Val Glu Glu Leu Gly
配列番号:39
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Ala Ala Ala Ala Val Ala Ile Val Glu Glu Leu Gly
配列番号:40
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Ala
Ala Asp Ala Ala Ala Ala Val Ala Ile Val Ala Ala Leu Gly
配列番号:41
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Gly Arg
Arg Asp Phe Pro Glu Glu Val Ala Ile Val Glu Glu Leu Gly Arg Arg
His Ala Cys
配列番号:42
His Ala Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Ser Tyr Leu Glu Gly
Gln Ala Ala Lys Glu Phe Ile Ala Trp Leu Val Lys Gly Arg Xaa
配列番号:43(式(I))
Xaa Xaa Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Xaa Ser Xaa Xaa Xaa Glu Xaa
Xaa Ala Xaa Xaa Xaa Phe Ile Xaa Trp Leu Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
配列番号:44(式(II))
Xaa Xaa Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Val Ser Xaa Tyr Leu Glu Xaa
Xaa Ala Ala Xaa Glu Phe Ile Xaa Trp Leu Val Xaa Xaa Xaa Xaa
配列番号:45(式(III))
【図面の簡単な説明】
【0162】
【図1】aはGLP17-37を表し、bはHincII−GLP17-37−IP2を表し、cはストロ−GLP17-37を表し、dはストロ−GLP17-37−IP2を表し、eはストロ−GLP17-37−IP2−GLP17-37を表し、fはストロ−GLP17-37−IP2−11aaを表し、gはストロ−GLP17-37−IP2(4x)−11aaを表し、hは配列番号16を表し、iはB1を表し、jはB2を表し、kは配列番号14を表し、lは配列番号18を表し、mは配列番号20を表す図である。
【図2】ペプチドのウェスタンブロットを表す図である。
【図3】GLP1ペプチドの血漿中安定性(インビトロ試験)を表すグラフである。
【図4】サイクリックAMP生産を表すグラフである。
【図5】db/dbマウスの相対的な空腹時血糖値を表すグラフである。
【図6】インビトロ血漿中安定性を表すグラフである。
【図7】AはT−細胞想起応答(recall response)試験の結果を表すグラフであり、Bは動物の免疫血清における抗原特異的IgG抗体力価を表すすグラフである。
【図8】血漿グルコースの変化を表すグラフである。
【図9】Aは、db/dbマウスの体重における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表し、Bは、db/dbマウスの体重における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表すグラフである。
【図10】122日の処理期間のdb/dbマウスの毎週の飼料消費における生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の作用を表すグラフである。
【図11】Aは非空腹時血糖値を表し、Bはコントロールに対する血糖値の減少を表し、Cは空腹時血糖値を表すグラフである。
【図12】Aは腹腔内グルコース負荷試験を表し、Bは腹腔内グルコース負荷試験(相対値)を表すグラフである。
【図13】0.9%生理食塩水(グループA)、CM1ペプチド(グループB)、CM3−ANA01ペプチド(グループC)又はエキセンディン−4(グループD)を用いた18週処理後のマウスにおける血清インスリンレベルに関するデータを提示するグラフである。
【図14】Aは、生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の6週、12週及び18週後の全血試料における糖化ヘモグロビン(GHb)の相対的な増加を表し、Bは、生理食塩水(A)、CM1(B)、CM3−ANA01(C)又はエキセンディン(D)を用いた処理の18週後の全血試料における糖化ヘモグロビン(GHb)の相対的な増加を表すグラフである。
【図15】0.9%生理食塩水(グループA、n=11)、CM1ペプチド(グループB、n=12)、CM3−ANA01ペプチド(グループC、n=12)又はエキセンディン−4(グループD、n=12)を用いた処理の18週後の動物の乱切(scarification)の日において測定された膵臓重量を表すグラフである。
【図16】異なる濃度の試験物質CM1(図20A)及びCM3−ANA01(図20B)並びに標準物質エキセンディン−4(図20C)に対する脾臓細胞のインビトロリコール反応を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端側に、式II
Xaa7−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Xaa16−Ser−Xaa18−Xaa19−Xaa20−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Xaa25−Xaa26−Xaa27−Phe−Ile−Xaa30−Trp−Leu−Xaa33−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37,
(ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8は、Ala、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1−アミノシクロブチル)カルボン酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボン酸であって、Glyが特に好ましく;Xaa16はVal又はLeuであり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa19はTyr又はGlnであり;Xaa20はLeu又はMetであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa25はAla又はValであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa27はGlu又はLeuであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa33はVal又はLysであり;Xaa34はLys、Glu、Asn又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg、Gly若しくはLys若しくはアミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu、Pro、Lys、アミド又は欠損している)、
又は、式III
Xaa7−Xaa8−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Xaa18−Tyr−Leu−Glu−Xaa22−Xaa23−Ala−Ala−Xaa26−Glu−Phe−lle−Xaa30−Trp−Leu−Val−Xaa34−Xaa35−Xaa36−Xaa37,
(ここで、Xaa7は、L−ヒスチジン、D−ヒスチジン、デスアミノ−ヒスチジン、2−アミノ−ヒスチジン、3−ヒドロキシ−ヒスチジン、ホモヒスチジン、N−アセチル−ヒスチジン、a−フルオロメチル−ヒスチジン、a−メチル−ヒスチジン、3−ピリジルアラニン、2−ピリジルアラニン又は4−ピリジルアラニンであり;Xaa8はAla、Gly、Val、Leu、Ile、Lys、Aib、(1−アミノシクロプロピル)カルボン酸、(1−アミノシクロブチル)カルボン酸、(1−アミノシクロペンチル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘキシル)カルボン酸、(1−アミノシクロヘプチル)カルボン酸、又は(1−アミノシクロオクチル)カルボン酸であり;Xaa18はSer、Lys又はArgであり;Xaa22はGly、Glu又はAibであり;Xaa23はGln、Glu、Lys又はArgであり;Xaa26はLys、Glu又はArgであり;Xaa30はAla、Glu又はArgであり;Xaa34はLys、Glu又はArgであり;Xaa35はGly又はAibであり;Xaa36はArg若しくはLys、アミド又は欠損しており;Xaa37はGly、Ala、Glu若しくはLys、アミド又は欠損している)
に示される配列を構成要素(I)として含み、かつ、
C末端側に、一般式(A)に示される、少なくとも9アミノ酸からなるペプチド配列を構成要素(II)として含む、
−NH2−(X1b−Y1a−X2b−Y2a−X3bc−COOH (A)
(ここで、Y1及びY2は負の電荷を帯びたアミノ酸であり、
X1、X2及びX3は負の電荷を帯びたアミノ酸を除く任意のアミノ酸であり、a及びbは0から15であり、ここでaはX1、X2及びX3において同一でも異なっていてもよく、bはY1及びY2において同一でも異なっていてもよく、cは1から5であり、
ここで、Y2がE(グルタミン酸)でかつY2においてaが2である場合に、
(i)Y1がEである場合にaは0又は2ではなく、又は、(ii)X2(b>=1)は、V、A、又はP(バリン、アラニン、又はプロリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は、(iii)X3(b>=1)は、L又はV(ロイシン、又はバリン)以外の任意のアミノ酸を、Y2のEに隣り合う残基として含み、又は(iv)Y1がEでかつY1においてaが2である場合にcは1ではない、
融合ペプチド。
【請求項2】
N末端側に、GLP−1(7−35、7−36または7−37)配列、又はその機能的なフラグメント、変異体若しくは誘導体を構成要素(I)として含んでいる、請求項1に記載の融合ペプチド。
【請求項3】
N末端側に、式I
His−Ala−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg−X(I),(ここで、XはNH2、又はGly−OHである)
に示される配列、又はその機能的なフラグメント、変異体若しくは誘導体を構成要素(I)として含んでいる、請求項1に記載の融合ペプチド。
【請求項4】
構成要素(I)が、配列番号1と少なくとも80%の配列相同性を持つ配列を含んでいる、請求項2又は3に記載の融合ペプチド。
【請求項5】
構成要素(II)がβターン様の構造を形成するペプチド配列である、請求項1から4の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項6】
構成要素(II)が、少なくとも一つのアラニン残基又はプロリン残基を含むペプチド配列である、請求項1から5の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項7】
構成要素(II)が、βターンを形成する特性を有する4量体、例えば、当該4量体の2番目の位置にプロリン残基を有するもの、を含むペプチド配列である、請求項1から6の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項8】
構成要素(II)が、負の電荷を帯びたアミノ酸残基を少なくとも二つ含んでいる、好ましくはEE、DD、ED及びDEモチーフからなる群より選択されるモチーフを含んでいる、請求項1から7の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項9】
構成要素(II)が、DFP(EE)A,DFPEEI,DFP(EE)L,DFPEET,DFP(EE)S,DFPEEG,P(EE)SAI,P(EE)TAI,P(EE)LAI,PEEIAI,P(EE)AAI,PEEGAI,G(EE)VAI,TEEVAI,A(EE)VAI,LEEVAI,S(EE)VAI,MEEVAI,F(EE)VAI,IAEEA,IA(EE)T,IAEES,IA(EE)G,IAEEP,IA(EE)V,IAEEM,IA(EE)W,IA(EE)Y,又はIA(EE)Fからなる群より選択される配列モチーフを含むペプチド配列であり、ここでコアモチーフ(EE)は、(DD),(DE),(ED),(EED),(EEE),(EDE),(DEE),(DDD),(DDE),(DED),(EDD),(DDDD),(EEEE),(EDEE),(EEDE),(EEED),(DDDE),及び(DDEE)からなる群より選択されるモチーフにより交換されていてもよい、請求項1から8の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項10】
構成要素(II)が、AA,XA,AX,RR,RX,及びXRからなる群より選択される自身のN末端配列モチーフにより、構成要素(I)のC末端配列に連結されたペプチド配列である、請求項1から9の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項11】
構成要素(II)が、配列番号25に示す配列モチーフ(DFPEEVA)に対して、配列相同性が20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に当該配列相同性が80%未満である配列モチーフを含むペプチド配列であって、ここで、当該配列モチーフのアミノ酸P及び/又はアミノ酸Vは概して任意のアミノ酸配列により置換されている、請求項1から10の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項12】
構成要素(II)が、配列番号22(RRDFPEEVAI)又は配列番号26(AADFPEEVAI)に対して、配列相同性が20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に当該配列相同性が85%未満であり、好ましくは80%未満であるモチーフからなる群より選択される配列モチーフを含むペプチド配列であって、ここで、配列番号22又は配列番号26のアミノ酸P及び/又はアミノ酸Vは任意のアミノ酸配列により置換されている、請求項1から11の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項13】
構成要素(II)が、配列番号23(RRDFPEEVAIVEEL)、又は配列番号24(RRDFPEEVAIAEEL)、配列番号27 (AADFPEEVAIVEEL)、及び配列番号28(AADFPEEVAIAEEL)に対して、配列相同性が20%を越え、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に当該配列相同性が95%未満又は90%未満であり、より好ましくは85%未満であり、さらにより好ましくは80%未満であるモチーフからなる群より選択される配列モチーフを含むペプチド配列であって、ここで、配列番号23、24、27、28のアミノ酸A(配列番号24の11番目の位置)、P、L、及び/又はアミノ酸V(両方の配列における8番目の位置)は任意のアミノ酸配列により置換されている、請求項1から12の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項14】
構成要素(II)が、配列番号2(RRDFPEEVAIVEELG)、配列番号3(RRDFPEEVAIAEELG)、配列番号29(AADFPEEVAIVEELG)、及び配列番号30(AADFPEEVAIAEELG)に対して、配列相同性が少なくとも20%であり、より好ましくは30%を越え、より好ましくは40%を越え、さらにより好ましくは50%を越え、かつ同時に当該配列相同性が95%未満又は90%未満であり、より好ましくは85%未満であり、さらにより好ましくは80%未満であるモチーフからなる群より選択される配列モチーフを含むペプチド配列であって、ここで、アミノ酸A、V(配列番号3又は30又は2又は29それぞれの11番目の位置)、P、L、及び/又はアミノ酸V(上記全配列における8番目の位置)は任意のアミノ酸配列により置換されている、請求項1から13の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項15】
構成要素(II)が、9から30、好ましくは9から20、最も好ましくは9から15のアミノ酸を持つペプチド配列である、請求項1から14の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項16】
構成要素(I)及び構成要素(II)が、直接連結されている、又はリンカーを介して連結されている、請求項1から15の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項17】
上記リンカーの配列が1から10アミノ酸長を持つ、請求項16に記載の融合ペプチド。
【請求項18】
上記融合ペプチドが、構成要素(II)の上記C末端、及び/又は、構成要素(I)の上記N末端、に連結された他の構成要素(III)を含んでいる、請求項1から17の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項19】
構成要素(III)は、少なくとも4つのアミノ酸残基を含み、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個又は少なくとも30個の付加的なアミノ酸残基を含む、請求項18に記載の融合ペプチド。
【請求項20】
構成要素(III)は、少なくとも4つ、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個の付加的なアミノ酸残基を、プログルカゴンにおける場合と同様にGLP−2のN末端配列に、又はGLP−1(7−37)のN末端配列に含んでいる、請求項18又は19に記載の融合ペプチド。
【請求項21】
構成要素(III)は、配列番号4に記載の配列、又は配列番号5に記載の配列、又は配列番号4又は5と少なくとも80%の配列相同性を持つ配列、を含んでいる、請求項18から20の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項22】
上記融合ペプチドは、配列番号6、配列番号7、配列番号10、及び配列番号11、又は配列番号6、7、10又は11と少なくとも80%の配列相同性を持つ配列、からなる群より選択されるペプチド配列を含んでいる、請求項18から21の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項23】
上記アミノ酸の少なくとも一つが、天然に生じたアミノ酸の側鎖での共有結合修飾によりもたらされる、上記ペプチドの主鎖での修飾によりもたらされる、NH2またはカルボキシル末端基の修飾によりもたらされる、請求項1から22の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項24】
上記アミノ酸の少なくとも一つが、脂質類、又は炭水化物類によりもたらされる、請求項23に記載の融合ペプチド。
【請求項25】
GLP−1(GLP−1(7))のN末端にあるHis残基が、そのNH2末端において及び/又はそのヒスチジン側鎖において、特に疎水性成分により化学的に修飾されている、請求項23又は24に記載の融合ペプチド。
【請求項26】
上記融合ペプチドが、構成要素(IV)として、キャリアタンパク質、特にトランスフェリン又はアルブミンを含んでいる、請求項1から25の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項27】
構成要素(I)、(II)及び/又は(III)の上記アミノ酸配列が反転しており、ここで、当該アミノ酸配列は少なくとも部分的にDアミノ酸異性体からなる、請求項1から26の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項28】
固相ペプチド合成により、請求項1から27の何れかに記載の融合ペプチドを製造する、融合ペプチドの製造方法
【請求項29】
請求項1から22、又は請求項26の何れかに記載の融合ペプチドをコードする、核酸。
【請求項30】
請求項29に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項31】
外性的に導入され、上記融合ペプチドを発現可能な請求項29に記載のDNA、特に請求項30に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項32】
請求項1から22、又は請求項26の何れかに記載の融合ペプチドを製造する方法であって、上記融合ペプチドをコードする核酸を含むように形質転換された微生物を発酵に供し、そしてタンパク質を回収する、融合ペプチドの製造方法。
【請求項33】
請求項32に記載のタンパク質を製造する方法であって、当該タンパク質が細胞外に輸送される条件下で動物細胞が培養される、タンパク質の製造方法。
【請求項34】
ヒト又は動物の治療に使用する薬剤としての、請求項1から27の何れかに記載の融合ペプチド。
【請求項35】
糖尿病タイプI又はタイプII、インスリン耐性、体重障害及びそれらに関連する疾病又は状態の治療用薬剤を製造するための、請求項1から27の何れかに記載の融合ペプチドの使用、請求項29に記載の核酸の使用、請求項30に記載のベクターの使用、又は請求項31に記載の宿主細胞の使用。
【請求項36】
神経変性障害及びそれに関連する疾病又は状態の治療用薬剤を製造するための、請求項1から27の何れかに記載の融合ペプチドの使用、請求項29に記載の核酸の使用、請求項30に記載のベクターの使用、又は請求項31に記載の宿主細胞の使用。
【請求項37】
アポトーシスに関連する傷害、疾病、又は状態の治療用薬剤を製造するための、請求項1から27の何れかに記載の融合ペプチドの使用、請求項29に記載の核酸の使用、請求項30に記載のベクターの使用、又は請求項31に記載の宿主細胞の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−521980(P2010−521980A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500137(P2010−500137)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002414
【国際公開番号】WO2008/116648
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】