説明

方向転換装置

【課題】 物品の方向性(向き)を一定の方向に合せる方向転換を、安定して行なうことができる方向転換装置を提供する。
【解決手段】 個々に動力源を備えた複数の搬送手段を並列に配置した搬送路と、前記複数の搬送手段の搬送速度を、方向転換させる必要がある搬送物が搬入されると搬送手段の搬送速度に速度差をつけて駆動し、搬送物を方向転換させ、方向転換終了後、複数の搬送手段の搬送速度を同じ速度に戻し、方向転換後の姿勢を保持したまま搬出する速度制御手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菓子類が収納された比較的小形・軽量な菓子容器等を、次工程の作業内容等に応じて搬送姿勢(方向性)を変換する方向転換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、菓子工場等において、菓子類を収納した菓子容器(物品)をダース単位で段ボール箱(カートン)に収納する場合、菓子容器の向きを揃えて収納する。
製造ラインから連続して搬出される菓子容器を、搬送工程中に向きを揃える方法として、搬送路内にガイドやストッパを配置し、このガイドやストッパに菓子容器を接触させて方向転換する方法が一般的に採用されている。しかし、この方法はガイドやストッパに物品を接触させる為、物品に衝撃が作用し、物品が損傷するという問題点を有する。
【0003】
又、上記したガイドやストッパによる方向転換方式の場合、直方体のように方向性が区別できる物品において、横向きの状態(搬送方向に対し長手方向が直交する状態)から縦向きの状態(搬送方向に沿って長手方向が平行な状態)に方向転換させることはできるものの、物品が縦向きで搬送されてくる場合は、これをバラツキなく横向きの状態に安定して方向転換することは困難であるという問題点を有する。
【0004】
そこで、上記した接触型の方向転換方式が有する問題点を解決するものとして、搬送路上にガイドやストッパ等が存在しない方向転換方式が開発提案されている。
そのものは、ローラコンベヤからなる左右少なくとも一対の対称な斜行コンベヤを相接するように配置し、左右の斜行コンベヤ間で物品の搬送速度を異ならせることにより、物品を斜行コンベヤ間の境界へと送り出す駆動力を異ならせて、物品を斜行コンベヤ間の境界で蛇行ないしは回転させるというものである(特許文献1参照)。
【0005】
又、物品が跨って載ることができる並列に配列された2列の搬送コンベヤ(ローラコンベヤ、ベルトコンベヤの何れでも可)を備え、その各列の搬送コンベヤは、個別に速度制御可能な複数のコンベヤを搬送方向に縦列配置して構成し、方向転換すべき物品が搬入されると、その物品が載る範囲の左右のコンベヤの速度に速度差をつけて駆動し、方向転換するというものがある(特許文献2参照)。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された整列装置は、左右の斜行コンベヤの搬送速度が異なることで物品には複雑な運動が生じ、物品は境界上を蛇行ないしは回転し、左右に並んで搬送される物品の何れか一方が前方に押し出され、物品は一列に整列されるが、各物品の向きは不揃いである。即ち、特許文献1に記載の整列装置は、左右の斜行コンベヤの搬送速度に速度差をつけた状態で連続運転し、それにより左右から送り込まれる物品を境界上で蛇行、回転させて略一列に整列させるだけで、その整列される各物品の向きを一定の方向に合わせるということはできない。
【0007】
又、特許文献2に記載の方向転換装置は、個別に速度制御可能な複数のコンベヤを搬送方向に縦列配置し、方向転換させるべき物品が搬入されると、その物品が乗る領域の左右のコンベヤの速度に速度差をつけるもので、速度差をもった速度制御の対象とされるコンベヤ列を順次下流側に移動させる必要がある。又、方向性(向き)が不揃いで搬入される物品を、方向性を合わせる方向転換については全く記載がない。更に、左右のコンベヤの速度に速度差をつけたままだと、搬送物が方向転換しすぎる等、不安定で不統一な姿勢で下流側へ流す可能性が大きく、上流から下流側に向かって速度制御可能なコンベヤを搬送方向に縦列配置する必要があり、構成が複雑で、方向転換装置の機長も長くなるという問題点を有する。
【0008】
【特許文献1】特許第3611432号公報
【特許文献2】特開平11−322059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、物品の方向性(向き)を一定の方向に合せる方向転換を、安定して行なうことができる方向転換装置を提供することにある。
又、他の目的は搬送物に任意の回転角度をつけることができる方向転換装置を提供することにある。
更に、他の目的は機長が短くて安定した方向転換が可能な方向転換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する為に本発明の方向転換装置は、個々に動力源を備えた複数の搬送手段を並列に配置した搬送路と、前記複数の搬送手段の搬送速度を、方向転換させる必要がある搬送物が搬入されると搬送手段の搬送速度に速度差をつけて駆動し、搬送物を方向転換させ、方向転換終了後、複数の搬送手段の搬送速度を同じ速度に戻し、方向転換後の姿勢を保持したまま搬出する速度制御手段と、を設けたことを特徴とする(請求項1)。
前記搬送路を構成する搬送手段の形態は、ローラコンベヤ、ベルトコンベヤの何れでもよく、又、並列配置する台数は、二台若しくは三台が好適である。
【0011】
上記手段によれば、複数の並列配置された搬送手段に跨って供給された搬送物は、複数の搬送手段における搬送速度の速度差により方向転換(回転)される。そして、所定の方向転換が完了した後は、複数の搬送手段の搬送速度が速度差の無い同一の速度に制御されるため、搬送物は方向転換後の姿勢(方向性)を保持したまま搬出される。
【0012】
前記搬送路を二台のローラコンベヤで構成し、そのコンベヤを構成する搬送ローラは夫々のコンベヤ上の搬送物が両ローラコンベヤの境界線上に集まるように傾斜配置すると共に、下流側に向かって漸次水平状態に切り替え配置し、供給された搬送物の重心が両搬送手段の境界線上に位置するようにする(請求項2)。
【0013】
上記手段によれば、搬送物は両搬送手段の境界線上に集まり、搬送物の重心が該境界線上に位置することで、速度差による方向転換は安定して行なわれる。しかも、両ローラコンベヤの搬送ローラは下流側に向かって漸次水平状態に切り替え配置されているため、方向転換後の速度差を無くした同一速度による排出、乗り移りを、平行ローラによって安定よく行うことができる。
【0014】
前記搬送手段のローラコンベヤは、ローラ軸の両側部が軸受で支持された一般的な両端支持のコンベヤでもよいが、並列配置するローラコンベヤの対向する搬送ローラの端側が開放された片持ち支持構造とし、開放側とは反対側に磁石を利用した非接触型の駆動機構を配置した構成としてもよい(請求項3)。
【0015】
上記手段によれば、並列配置するローラコンベヤの境界線を挟む搬送ローラの端部を接触しないぎりぎりの位置まで近付けて配置でき、しかも各搬送ローラを駆動回転する駆動機構を磁石を利用した非接触型とすることで、前記した傾斜配置のローラ軸の駆動をスムーズに行うことができると共に、従来の他の摩擦駆動に比べ、低発塵、メンテナンスフリー、静音、及び高速運転が可能となる。
【0016】
又、前記速度制御手段としては、例えば、搬送路の上流側に設置し搬送物の搬入姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記姿勢検出手段からの該搬送物の検出データ(搬送物の種類、方向性等)を取り込み、演算を行うメインコントローラと、該メインコントローラの演算処理で算出された速度変更指令を各搬送手段のモータに出力するモータコントローラで構成することができる(請求項4)。そして、姿勢検出手段としては、一般的にカメラを使用することができ、速度変更指令のデータとしては、各モータの回転速度、回転時間のデータ等が挙げられる(請求項5)。又、メインコントローラは、中央処理装置(CPU)、メモリ、タイマ、カウンタ等で構成し、動作プログラムはメモリに格納する。
【0017】
上記手段によれば、方向転換装置に供給される搬送物の種類と直前の姿勢(方向性)が姿勢検出手段で検出され、その検出した搬送物の種類と搬入時の姿勢に関するデータ、及び目的の方向転換後の姿勢とから、方向転換に必要な回転角度量と、回転方向(時計回り方向又は反時計回り方向)を算出し、そのデータに基づいてメインコントローラが演算処理し、両搬送手段のモータの回転速度、回転時間等のデータがモータコントローラに出力され、夫々のモータの速度が制御される。即ち、搬入直前の姿勢を検出して、目的の姿勢に方向転換するための回転角度と回転方向を算出し、それに基づき両搬送手段の回転速度と回転時間を演算処理し、そのデータをモータコントローラに送ってモータを制御する為、搬送物に任意の回転角度をつける方向転換が可能である。
【0018】
また、前記搬送路を構成する搬送手段は、ベルトコンベヤで構成してもよい(請求項6)。その場合、並列配置するベルトコンベヤの台数は、二台若しくは三台とし、三台の場合は搬送物の重心が位置する真中のベルトコンベヤはベルト幅を狭くし、両側のベルトコンベヤの速度差で方向転換が行われるようにする。
更に、前記複数の搬送手段の速度差による方向転換、及び方向転換完了後の速度差を無くす速度制御は、前記した時間管理による速度制御に替えて、複数の搬送手段の境界線上に、搬送面と対向してカメラを配置し、そのカメラが撮影した画像を処理してモータの制御信号を出力するようにしてもよい(請求項7)。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方向転換装置は請求項1記載の構成により、搬送物をガイド等に接触させること無く、安定した方向転換を行なうことができ、方向転換後の搬送物を安定した姿勢で、搬出コンベヤ(下流側)へ乗り移らせることができる。
そして、請求項2記載の構成とした場合は、搬送路に供給された搬送物は左右のローラコンベヤのローラの傾斜により両コンベヤの境界線上に寄せられ、搬送物の重心が前記境界線上に位置する。それにより、両コンベヤの速度差による方向転換も略重心を中心として行われ、安定した方向転換が可能となる。従って、長方形のような方向性のある搬送物が、縦向きで搬入されてくる場合でも、横向きへの方向転換をバラつきなく安定して行うことができる。
【0020】
又、請求項3記載の構成とした場合は、搬送路を構成する二台のローラコンベヤの対向端を接近させて配置できるため、両コンベヤ間の隙間を最小限にでき、しかも非接触型の駆動機構により高速運転が可能で、処理能力の増大を計ることができる。
更に、請求項4、5記載の構成とした場合は、搬送物の搬入姿勢(方向性)と目的の方向転換後の姿勢(方向性)とから、方向転換に必要な回転角及び回転方向を算出し、それに基づいて両コンベヤの回転速度、運転時間を制御するため、搬送物を任意の姿勢(方向性)に方向転換することが可能である。
【0021】
また、請求項6記載の構成により、ローラコンベヤからなる方向転換装置と同様、安定した方向転換を行なうことができる。
更に、請求項7記載の構成とした場合は、搬送物の姿勢を検出して速度制御を行うため、確実に方向転換を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る方向転換装置の一例を図面に基づいて説明する。
図1は、方向転換装置を構成する複数の搬送手段からなる搬送路を二台のローラコンベヤで構成した形態を示し、図中、Aは方向転換装置、Bは前記方向転換装置Aに搬送物Wを供給するために上流側に連設配置した搬入コンベヤ、Cは方向転換装置Aの下流側に連設配置した搬出コンベヤである
【0023】
方向転換装置Aは、個々に動力源(モータ)を備えた二台のローラコンベヤ1,1’を並列に配置して構成した搬送路A1と、その搬送路A1を構成する二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度を制御する速度制御手段A2とで構成されている。
【0024】
搬送路A1を構成する二台のローラコンベヤ1,1’は、対向する搬送ローラの内側端を開放させた片持ち支持構造のローラコンベヤで、その開放端側と反対側(外側)に磁石を利用した非接触型の駆動機構2が配置され、更に両ローラコンベヤ1,1’の搬送ローラは搬送物Wが両ローラコンベヤ1,1’の境界線上(搬送路A1の幅方向の略中心線上)に寄るように、搬送方向上流側から下流側に向かって傾斜状態から漸次水平状態に切り替え配置されている。
【0025】
上記ローラコンベヤ1,1’の構成を詳細に説明すると、図3に示すように搬送ローラ1aを取付けたローラ軸1bを、架台3上に起立固定した軸受ホルダ1cで片持ち支持し、前記軸受ホルダ1cより外側に突出するローラ軸1bに、駆動機構2を構成する従動磁気車(マグネットリング)2aが嵌合固着され、こうした搬送ローラ1aが図1に示すように傾斜状態から水平状態に漸次切り替え配置されている。
そして、各ローラ軸1bの端部に取付けられた従動磁気車2aの下方には、該従動磁気車2aと対応する位置に駆動磁気車2bを固着した駆動軸2cが非接触状態で交差配置され、駆動軸2cはモータ2dによって駆動回転されるように構成されている。尚、モータ2dから駆動軸2cへの動力伝達は、ベルト、チェーン、歯車列を用いた動力伝達機構等、何れでもよいものである。又、駆動軸2cに固着する駆動磁気車2bは、図示する従動磁気車2a毎に個別対応する短筒形態に限らず、全ての従動磁気車2aをカバーする長軸一本物としてもよい。この非接触型の駆動機構を備えたコンベヤについては、特許第2683317号公報(特開平7−177725号)を参照されたい。
【0026】
上記二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度を制御する速度制御手段A2は、搬送路A1の上流側、具体的には搬入コンベヤBの搬送面上方に設置し、搬送物Wの搬入姿勢を検出する姿勢検出手段4と、その姿勢検出手段4から該搬送物Wの検出データ(搬送物の種類、方向性等)を取り込み、演算を行うメインコントローラ5と、該メインコントローラ5からの速度変更指令を受信してローラコンベヤ1,1’のモータ2dの速度を制御するモータコントローラ6,6’とで構成されている。
そして、上記速度制御手段A2による二台のローラコンベヤ1,1’の速度差で搬送物Wを方向転換させる位置は、少なくとも搬送物Wが搬入コンベヤBから方向転換装置Aの搬送路A1に完全に乗り移った後に行われるようにする。この速度差をつけた運転の開始位置は、タイマによる時間管理、或いは搬送路A1の所定位置側方又は上方にセンサを設置し、そのセンサが搬送物を検知することで行うようにするなど何れでもよい。
【0027】
方向転換装置Aに供給される搬送物Wの搬入姿勢を検出する姿勢検出手段4としてはカメラを使用し、そのカメラが撮影した搬送物Wの画像から、その搬送物が方向転換する必要のある搬送物である場合は、予め入力設定されている方向転換後の姿勢(方向性)から方向転換に必要な回転角度量、及び回転方向(時計回り方向又は反時計回り方向)が決定される。尚、姿勢検出手段4のカメラは搬送面に向けて垂下固定してもよいが、図2に示すように移動する搬送物Wを追従撮影できるように搬入コンベヤBの搬送方向に沿って所定範囲揺動可能に構成してもよい。
【0028】
メインコントローラ5は、中央処理装置(CPU)5aと前記中央処理装置(CPU)5aが実行する各種プログラムを記憶するROMと、中央処理装置(CPU)5aが動作或いは実行する為の搬送物Wに関するデータ等を記憶するRAM等のメモリ5bとタイマ5c、カウンタ5d等で構成されている。
そして、このメインコントローラ5は前記した姿勢検出手段4からの信号を取り込んで演算処理を行い、速度変更指令をモータコントローラ6,6’に出力する。
その速度変更指令としては、モータ2dの回転速度、回転時間等のデータである。
【0029】
モータコントローラ6,6’は、搬送路A1を構成する二台のローラコンベヤ1,1’にそれぞれ装備されているモータ2dの速度を個々に制御するもので、マイクロコンピュータ及びモータ駆動回路を内蔵する。マイクロコンピュータは、中央処理装置(CPU)、メモリ、カウンタを備え、メモリには方向転換処理用のプログラムデータが記憶されており、中央処理装置(CPU)はメモリに記憶された前記プログラムデータに基づいてモータ駆動回路を介してモータ2dを速度制御する。そして、搬送物Wの回転角度量に応じて両コンベヤ1,1’の速度差が決定される。
速度差は、二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度に速度差をつけないときの標準速度Vに対し、二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度をそれぞれV+α,V、或いはV+α,V−α、V−α,V(但し、0≦α)等、設定することができる。尚、標準速度Vに対してプラス・マイナスするα値は同一の値、或いは異なる値でもよい。α値を同じとした場合は、搬送物相互の中心間距離を一定に保って方向転換、搬送することができる。又、一方のコンベヤの搬送速度を標準速度Vに固定し、他方のコンベヤの搬送速度をV+αまたはV−αとする場合、α値は搬送物Wの重量、大きさ等に応じて決定される。
【0030】
前記姿勢検出手段4が配置される搬入コンベヤBは、図1及び図2に示すように二台のベルトコンベヤ7,7’を縦一列に連設配置して構成され、そうした搬入コンベヤBが幅方向の中心を方向転換装置Aにおける搬送路A1の幅方向の中心線(二台のローラコンベヤ1,1’の境界線)上に合せて配置されている、それにより、搬送物Wは方向転換装置Aの搬送路A1を構成する二台のローラコンベヤ1,1’に跨って載せられる。そして、方向転換装置Aの手前側に位置するベルトコンベヤ7の上方に前記姿勢検出手段4のカメラが設置されている。
【0031】
又、二台のベルトコンベヤ7,7’の連設箇所の側方には搬送物Wの有無を検出するセンサ8が設置されており、これによりベルトコンベヤ7,7’の作動が制御され、搬送物Wの搬送間隔が調整されるようになっている。即ち、方向転換装置Aの搬送路A1内に搬送物Wが同時に複数個載らないように調整される。又、前記センサ8は、高さの異なる搬送物Wでも検出できるように、鉛直方向に所定の間隔をおいて複数個(図面では2個を示す)設置されている。尚、搬入コンベヤBはベルトコンベヤに限らず、ローラコンベヤでもよい。又、方向転換装置Aにおける搬送路A1の幅方向中央線上に搬送物Wの重心を合致させて搬入する手段として、搬入コンベヤ上に搬送方向を規制するガイド等を設けて行うようにしてもよい。
【0032】
次に、前記した方向転換装置Aの動作を図5に基づいて説明する。本実施例では、長方形の搬送物Wを縦向きで搬入し、これを時計回り方向に90度回転させて横向きに方向転換する場合について説明する。尚、長方形の搬送物Wの方向性を示す為に、搬送物Wの頭側には斜線を表示する。
(a):方向転換装置Aの上流側に配置した搬入コンベヤBで、搬送物Wの搬送間隔が調整され、且つ方向転換装置Aの搬送路A1の幅方向略中央部に搬入される。そして、この搬入コンベヤBのベルトコンベヤ7を通過する際、上方に設置した姿勢検出手段4のカメラで搬送物Wが撮影され、搬送物Wの種類、方向性(頭側が先か後か)が検出される。
【0033】
(b):方向転換装置Aに搬入される搬送物Wに関するデータが速度制御手段A2のメインコントローラ5に入力されると、メインコントローラ5はメモリ5bに記憶してある搬送物Wに関するデータを読み出し、方向転換の可否を判断し、搬送物Wが方向転換させる必要の無いものである場合は、方向転換装置Aの搬送路A1を構成する二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度を同じ速度とするよう、夫々のコンベヤ1,1’のモータコントローラ6,6’に信号を出力する。そして、モータコントローラ6,6’の制御でローラコンベヤ1,1’の各モータ2dは同じ回転速度に制御される。それにより、方向転換の必要のない搬送物Wは、重心を略両コンベヤ1,1’の境界線上に位置させた状態で、搬入された方向性を維持してそのまま下流側に搬送され、搬出コンベヤCに排出される。尚、方向転換装置Aの二台のローラコンベヤ1,1’は夫々のコンベヤの搬送ローラ1aが搬送物の重心が境界線上に寄るように傾斜されている為、方向転換装置Aに搬入される搬送物はセンタリングされて搬送される。
【0034】
(c):方向転換装置Aに搬入される搬送物Wが方向転換させる必要があるものとメインコントローラ5で判断されると、該メインコントローラ5に入力されたデータに基づいて演算処理を行い、搬送物Wを所定の姿勢に方向転換させるための回転角度量と、回転方向を算出し、それに基づいて二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度に速度差をつける演算処理が行われ、それぞれのローラコンベヤ1,1’のモータ2dを制御するモータコントローラ6,6’に回転速度、回転時間等のデータが出力される。即ち、方向転換装置Aの始端側から終端側に向かって所定距離の位置に搬送物Wが到達したら速度差をつけた運転が行われ、その速度差運転時間経過後は同速運転に戻す。それにより、二台のローラコンベヤ1,1’が速度差をつけて駆動し、搬送物Wは回転される。図示の実施例では、目的の姿勢が搬送物Wの頭側が搬送方向に向かって右側となる横向きであるため、搬送物Wを時計回り方向に90度回転させなければならない。その為、搬送物Wを回転させる速度差運転は、搬送方向に向かって右側のローラコンベヤ1の搬送速度を標準速度Vに固定し、左側のローラコンベヤ1’の搬送速度をV+αとすることで、搬送物Wは両コンベヤ1,1’の境界線上に位置する重心(O)を中心として回転し、予め設定された速度差運転の時間経過で搬送物Wは目的の姿勢に方向転換される。尚、図示は目的の方向転換する姿勢が右横向きであるため時計回り方向の回転について説明したが、目的の方向転換の姿勢が左横向きである場合は、搬送方向に向かって左側のローラコンベヤ1’の速度を標準速度Vに固定し、右側のローラコンベヤ1の搬送速度をV+αとすることで、反時計回り方向の回転で方向転換される。即ち、目的の姿勢と搬入時の姿勢とから、最も効率良く方向転換できる方向が決定され、それに基づいて速度制御が行われる。
【0035】
(d):方向転換装置Aを構成する二台のローラコンベヤ1,1’を速度差をつけて駆動し、所定時間経過により方向転換が完了すると二台のローラコンベヤ1,1’の速度差は解除され、二台のローラコンベヤ1,1’の搬送速度は同じ速度Vに制御される。それにより、方向転換された搬送物Wは、その方向転換後の姿勢を維持したまま同じ速度で駆動する二台のローラコンベヤ1,1’で下流側に搬送され、搬出コンベヤCに排出される。
【0036】
図6は、方向転換装置A’を構成する搬送路A1を、二台のベルトコンベヤ9,9’で構成した形態を示し、その二台のベルトコンベヤ9,9’は対向するベルトの内側端を接触しない範囲で接近させて並列配置されている。そして、夫々のコンベヤ9,9’に装備されたモータ10は前示実施例と同様、速度制御手段A2によって個々に速度制御され、方向転換させる必要がある搬送物Wは、両コンベヤ9,9’の速度差運転、及び方向転換後の同速運転により、方向転換されて排出される。
尚、ベルトコンベヤ9,9’の場合は、前示実施例におけるローラコンベヤ1,1’と比べて摩擦抵抗が大きい為、搬送物Wの重心Oが両コンベヤ9,9’の境界線上に位置するように搬入することが必要である。その為に、上流側に配置する搬入コンベヤBに搬入の方向を規制するガイド等を配置すると有効である。
【0037】
上記方向転換装置A’は、ベルトコンベヤ9,9’を二台並列配置して構成した形態を示したが、搬送路A1の幅方向中央部に細幅のベルトコンベヤを配置し、その両脇にベルトコンベヤ9,9’を並列配置して構成してもよい。この場合は、中央の細幅のベルトコンベヤ内に搬送物の重心を位置させて搬送し、方向転換させる。
【0038】
本発明の方向転換装置は、上記したように搬送路A1に搬送物Wが完全に乗り移った時点で速度差運転による方向転換を行い、所定の姿勢に方向転換が完了した後、速度差運転を解除して同速運転を行うため、方向転換を安定して行なうことができると共に、方向転換後の姿勢を維持したまま搬送排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の方向転換装置は、並列配置したコンベヤ相互の速度差を利用して搬送物を回転させ、所定の方向転換をさせた後はコンベヤ相互の速度差を無くして同速運転し、方向転換後の姿勢(方向性)を維持したまま搬送できるため、商品を方向性を揃えて箱詰する生産ラインに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る方向転換装置の一例を示す一部切欠平面図。
【図2】同一部切欠正面図。
【図3】図2の(3)−(3)線に沿える縦断拡大側面図。
【図4】方向転換システムの電気的構成を示すブロック図。
【図5】(a)〜(d)は方向転換の動作を示す説明図。
【図6】方向転換装置の他の例を示し、(a)は正面図、(b)は平面図。
【符号の説明】
【0041】
A、A’…方向転換装置 A1…搬送路
A2…速度制御手段 B…搬入コンベヤ
C…搬出コンベヤ 1,1’…ローラコンベヤ
1a…搬送ローラ 2…駆動機構
2d…モータ 4…姿勢検出手段
5…メインコントローラ 6,6’…モータコントローラ
9,9’…ベルトコンベヤ W…搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々に動力源を備えた複数の搬送手段を並列に配置した搬送路と、
前記複数の搬送手段の搬送速度を、方向転換させる必要がある搬送物が搬入されると搬送手段の搬送速度に速度差をつけて駆動し、搬送物を方向転換させ、方向転換終了後、複数の搬送手段の搬送速度を同じ速度に戻し、方向転換後の姿勢を保持したまま搬出する速度制御手段と、
を設けたことを特徴とする方向転換装置。
【請求項2】
前記搬送路を二台のローラコンベヤで構成し、そのコンベヤを構成する搬送ローラは搬送方向上流側から下流側に向かって傾斜状態から漸次水平状態に切り替え配置し、供給された搬送物の重心が両搬送手段の境界線上に位置するようにしたことを特徴とする請求項1記載の方向転換装置。
【請求項3】
前記搬送手段のローラコンベヤは、対向する搬送ローラの端側が開放された片持ち支持構造で、搬送ローラの反対側に磁石を利用した非接触型の駆動機構を配置したことを特徴とする請求項2記載の方向転換装置。
【請求項4】
前記速度制御手段は、搬送路の上流側に設置し搬送物の搬入姿勢を検出する姿勢検出手段と、前記姿勢検出手段からの該搬送物の検出データを取り込み、演算を行うメインコントローラと、該メインコントローラの演算処理で算出された速度変更指令を各搬送手段のモータに出力するモータコントローラとからなることを特徴とする請求項1記載の方向転換装置。
【請求項5】
前記姿勢検出手段がカメラで、メインコントローラが出力する速度変更指令が、各モータの回転速度、回転時間のデータであることを特徴とする請求項4記載の方向転換装置。
【請求項6】
前記搬送路を、複数台のベルトコンベヤを並列に配置して構成したことを特徴とする請求項1記載の方向転換装置。
【請求項7】
前記複数の搬送手段の速度差による方向転換、及び方向転換完了後の速度差を無くす速度制御は、複数の搬送手段の境界線上に、搬送面と対向してカメラを配置し、そのカメラが撮影した画像を処理してモータの制御信号を出力することを特徴とする請求項4乃至6の何れか1項記載の方向転換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−327758(P2006−327758A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153878(P2005−153878)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(391019289)マルヤス機械株式会社 (32)
【Fターム(参考)】