説明

方法

本発明は、以下の工程(I)及び(II)を有する、処理又は改良されたポリマーの製造方法を提供する:(I)液体、添加剤及びポリマーを有する混合液を用意する工程(ここで、前記添加剤は前記液体中に分散されている);及び、(II)前記添加剤を前記ポリマーと接着させるために、工程(I)で得られた前記混合物を加熱して前記ポリマーの表面を軟化させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良又は処理されたポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーや、ポリマーを含む組成物から作られた製品に有利な特性を与えるため、該ポリマーを改良することが望ましいことが多い。ポリマー組成物は、ポリマーの機械特性を改良するため又はコスト削減のために、充填剤や添加剤を有することが多い。例えば、ポリマーは一般的に電気的に絶縁性であるが、状況によっては、導電性の改良ポリマーを提供するためにポリマーを処理することが望ましいこともある。
【0003】
従来、充填ポリマーの製造は、一般に充填剤として知られる添加剤をポリマー若しくはポリマー樹脂と混合し、その後、この混合物を融解して押し出すという2段階製法であった。その後、押し出し物を切り刻んでビーズ状にし、再融解して必要に応じて押し出すか成形し、最終生成物を製造する。
【0004】
上記方法などの従来方法は充填剤の凝集や他の問題を引き起こすことが多く、そのため、改良ポリマーはバージンポリマーに比べて機械特性の損なったものとなるという結果を生じ得る。必要とする色彩や不透明度を得るために顔料を「過剰添加」する必要性などの他の問題は、当技術分野において公知である。
【0005】
本明細書中の、見た限り先行して出版された文献のリスト及び考察は、該文献が当技術分野の状態の一部である又は共通の一般知識であるという認識として必ずしも受け入れられるべきものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のある目的は、ポリマーを改良、処理又は充填する代替法を提供することである。また、本発明の他の目的は、上述した1又は複数の問題点に対処することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下(I)〜(II)の工程を有する、処理又は改良されたポリマーの製造方法を提供する:
(I)液体、添加剤及びポリマーを有する混合物であって、前記添加剤は前記液体中に分散している混合液を用意する工程;及び
(II)前記添加剤を前記ポリマーに接着させるために、工程(I)で得られた前記混合物を加熱して前記ポリマーの表面を軟化させる工程。
【0008】
工程(I)は以下(i)〜(iii)の工程を有してもよい:
(i)添加剤と液体を混合する工程;
(ii)前記添加剤を前記液体中に分散させる工程;及び
(iii)前記工程(ii)の生成物とポリマーを有する混合物を用意する工程。
【0009】
工程(iii)は、前記ポリマーを工程(ii)で製造された混合物中に添加する工程を有してもよく、工程(ii)で製造された混合物を前記ポリマーに添加する工程を有してもよい。前記ポリマーはニートであっても液体中に存在してもよい。
【0010】
工程(I)は以下の工程を有してもよい:
(a)前記ポリマーと前記添加剤とを前記液体に添加する工程;及び
(b)前記添加剤を前記液体中に分散させる工程。
【0011】
工程(a)において、前記ポリマーと前記添加剤とを前記液体に同時に添加してもよく、順に添加してもよい。
【0012】
錯誤防止のために詳述するならば、本発明の方法において、前記添加剤は工程(I)の後且つ工程(II)の前に前記液体から除去されない。つまり、前記添加剤は工程(ii)又は工程(b)の後に前記液体から除去されない。
【0013】
本明細書で用いられる「添加剤」とは、前記軟化したポリマーに接着して、該ポリマーの特性を変えることの出来るあらゆる材料を意味するために用いられる。一般的に、当該添加剤は、ポリマーを軟化させるのに用いられる熱及び圧力条件下で安定である(すなわち、当該添加剤はこれらの条件下で分解しない、又は、これらの条件下で変化しない。)。しかしながら、「前駆体添加剤」を用いることも出来ると考えられる。このことは、所望の特性を有する添加剤を生み出すために、本発明の方法において用いられる条件下で変化、反応、又は分解する添加剤を用いてもよいことを意味する。添加剤(又は前駆体添加剤及び生成中の添加剤(additive in generates))は、本発明の方法において用いられる条件下でポリマーと有害な方法で反応してはならず、理想的には前記改良されたポリマーが用いられる条件下又は環境下でポリマーと反応してはならない。
好適な添加剤は当技術分野においてよく知られており、当技術分野において充填剤と呼ばれることもある。いかなる好適な添加剤又は充填剤を用いてもよい。好適な添加剤の例としては無機粒子状物質及び有機粒子状物質が挙げられるが、これらに限定されることはない。「粒子状物質」とは、前記液体に溶解しない固体材料を意味する。
【0014】
好適な添加剤には従来の補強材及び充填剤が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0015】
好適な無機粒子状物質の例としては、カーボンブラック、グラファイト(黒鉛)、膨張黒鉛(expanded graphite)、酸化黒鉛、カーボンファイバー(炭素繊維)、(例えば、ショートカーボンファイバー(炭素短繊維))、ホウ素繊維、カーボンナノチューブ、金属粒子(例えば、銅若しくはアルミニウム粒子)、遷移金属酸化物(例えば、TiO2)若しくはアルカリ土類金属酸化物(例えば、MgO2、MgO))などの金属酸化物粒子、ガラス短若しくは長繊維、天然のモンモリロナイト、有機的に改良されたモンモリロナイト、粘土、ゼオライト、方沸石(analcime)、菱沸石(chabazite)、輝沸石(heulandite)、ソーダ沸石(natrolite)、フィリップサイト、束沸石(stilbite)、雲母片、無機充填剤、セラミック粒子若しくは繊維(例えば、シリカ)が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0016】
有機含有粒子状物質の例としては、有機染料や有機フォトクロミックが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0017】
好適な添加剤を機能の点から分類してもよい。例えば、以下の分類の添加剤から選択される添加剤を用いてもよい:UV安定剤、抗酸化剤、顔料、染料、核形成剤(nucleating agents)、結晶化促進剤、難燃剤(flame retardants)、衝撃改質剤、導電性添加剤(conducting additives)、かぶり防止剤(anti−fogging agents)、光学的光沢剤(optical brighteners)、香料、防かび剤、酸化抑制剤(oxidation retardant)、光安定剤、熱安定剤、フロー促進剤(flow promoters)、潤滑剤、離型剤(mould release agents)、ポリマーの表面エネルギーを改善する添加剤(例えば、ポリマーの濡れ性を変える添加剤)。
【0018】
好適な添加剤には、チョークやタルクなどの不活性物質も含まれる。不活性物質には、改良されたポリマーに特定の性質を付与しない物質が含まれる。そのような添加剤は充填剤(bulking agents)であると考えられる。そのような不活性添加剤及び充填剤(bulking agents)は、単独で又は他の添加剤と組み合わせて用いることが出来る。
【0019】
好適な添加剤のリストに掲げた例から理解されるように、添加剤は導電性、半導体性又は絶縁性であり得る。導電性とは、添加剤が約10-1S/cmよりも大きな伝導度を有することを意味する。半導体性とは、添加剤が約10-9〜約10-1までの伝導度を有することを意味する。絶縁性とは、添加剤が約10-9S/cmよりも小さな伝導度を有することを意味する。錯誤防止のために詳述するならば、これらの伝導度は室温(約20℃)で得られる値である。
【0020】
添加剤は、本発明の方法の工程(I)、より詳しくは工程(i)及び(ii)又は工程(a)及び(b)において液体に添加され分散した後は、全体として粒子形状であることは必須ではない。全体として又は部分的に前記液体に溶解した添加剤(例えば、フォトクロミック染料や一般的な塩(NaCl))を用いることが出来る。
【0021】
本発明の好ましい態様においては、添加剤は、液体に添加されて溶解した後に粒子形状である。つまり、添加剤は前記液体に溶解せず、懸濁液状で前記液体に分散している。
【0022】
添加剤が前記液体に溶解する場合、該添加剤が完全に溶解することは必須ではない。すなわち、前記液体が添加剤で飽和し、さらに懸濁化された添加剤粒子をも有していてもよい。一般的に、可溶性添加剤を用いた場合には、工程(ii)の後、該添加剤は液体の飽和点以下のレベルで前記液体中に存在する。
【0023】
添加剤の組み合わせを用いてもよい。すなわち、1種以上の添加剤を用いてもよい。複数の添加剤を用いる場合、添加剤の組み合わせ及びその割合は、改良ポリマーの特性を最適化するように選択できる。
【0024】
2種以上の添加剤を用いる場合、それらの添加剤は、工程(ii)が行われる前に、工程(i)において同時又は連続して液体に添加することが出来る。あるいは、1種の添加剤を用いて工程(i)及び(ii)を実行した後に、さらに1種以上の添加剤を導入するために上記工程を繰り返すことが出来る。
【0025】
工程(a)及び(b)を用い、2種以上の添加剤を用いる場合には、これらの添加剤は、工程(b)が行われる前に、工程(a)において同時又は連続して液体に添加することが出来る。あるいは、1種の添加剤を用いて工程(a)及び(b)を実行した後に、さらに1種以上の添加剤を導入するために上記工程を繰り返すことが出来る。この状況において、ポリマーを複数繰り返される工程(a)のうちたった1回の工程(a)で導入してもよく、ポリマーの一部を複数繰り返される工程(a)のそれぞれで導入してもよい。
【0026】
添加剤の粒径は特に制限されない。添加剤の粒径は、ポリマー粒子の平均直径の約20%以下の平均直径を有することが好ましく、ポリマー粒子の平均直径の約10%〜約15%の平均直径を有することがより好ましい。本発明はナノサイズの添加剤粒子を用いることが特に好ましいが、それより大きなサイズの添加剤粒子を用いてもよい。
【0027】
いかなる好適な液体を本方法に用いてもよい。好適な液体は、本方法で用いられる条件下で、ポリマー若しくは添加剤と反応したり、ポリマー若しくは添加剤の有害な分解を引き起こすことはなく、該ポリマーを軟化させるのに好適な温度及び圧力で液体のままである。
【0028】
一般的に、該液体はポリマーが溶解しない液体である。
【0029】
典型的には、本発明の方法に好ましく用いられる液体は、濾過、蒸発及び/又は空気乾燥などの固体から液体を除去する標準的な手法を用いた後に乾燥した改良ポリマーを残すために、反応混合液から比較的容易に除去され得る液体である。特に好適な液体は、200℃以下の沸点を有する液体であり、さらに好ましくは150℃以下、最も好ましくは110℃以下の沸点を有する液体である。
【0030】
該液体は有機液体であってもよく、極性であっても非極性であってもよい。好適な有機液体としては、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びクロロホルムが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0031】
水溶性の液体を用いてもよい。水を該液体として用いてもよい。本発明の方法において蒸留水を用いる必要はないが、蒸留水を用いてもよい。水道水(例えば、飲用水)を用いてもよい。
【0032】
本発明の方法に好ましく用いられる液体は水である。
【0033】
前記添加剤と前記液体の質量割合は、幅広い制限の中で変えることが出来る。しかしながら、添加剤が液体に可溶でない場合には、前記添加剤と前記液体との質量割合が前記液体中で前記添加剤の懸濁液を形成するのに適していることが重要である。懸濁液の形成に関し、添加剤と液体の全質量の割合(%)として、添加剤の質量が約0.05若しくは約0.1質量%から約50質量%までであることが一般的であり、約0.5若しくは約1質量%から約30質量%までであることがより好ましく、約0.8質量%〜約20質量%であることがより好ましく、例えば約9質量%〜約10質量%、例えば約1質量%、約2質量%、約3質量%、約4質量%若しくは約5質量%が好ましい。これらの範囲内の質量割合は、添加剤が(少なくとも部分的に)液体に溶解する場合にも好ましいが、この状況下において最も好適な質量割合は添加剤の溶解性などの要因に依存し得ると理解されるであろう。
【0034】
添加剤と液体の組み合わせは、使用される分散手段に適したコンシステンシー(粘稠度)であればいかなるコンシステンシーを有していてもよい。例えば、超音波処理を分散に用いる場合には、液体と添加剤の組み合わせはスラリーのコンシステンシーを有していてもよく、あるいは低濃度の添加剤を有する液体を用いてもよい。
【0035】
特定の方法において用いられる添加剤の量は、該添加剤粒子のサイズを含む多くの要因に依存すると理解されるであろう。一般的には、質量の観点から、該添加剤粒子の平均直径が小さい場合には、必要とする添加剤粒子の量も少ないであろう。
【0036】
液体にポリマーを液体中に浸すために、更に液体を必要としてもよいとも理解されるであろう。(もし必要があれば)必要とされる追加的に加えられる液体の量は、使用するポリマーの量などの複数の要因に依存するであろう。
【0037】
前記工程(I)、より詳しくは前記工程(ii)又は(b)において、添加剤を液体中に分散させるためにあらゆる好適な方法を用いることが出来る。好適な方法としては、攪拌、振とう(shaking)及び超音波分散、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい方法は、超音波分散である。例えば、超音波分散は、工程(i)で得られた混合液を工程(ii)において超音波攪拌で処理する工程を有してもよい。
【0038】
超音波分散は、ナノサイズの添加剤粒子が用いられる場合に特に好適である。
【0039】
工程(I)、例えば工程(ii)又は工程(b)は、好適な温度であればどのような温度でも行うことが出来る。一般的には好適な温度は約15℃〜約250℃であり、例えば約160℃である。例えば、この工程は周囲温度又は室温(約20℃)で行われてもよい。
【0040】
工程(I)、例えば工程(ii)又は工程(b)は、好適な圧力であればどのような圧力でも行うことが出来る。一般的には、この工程は、大気圧(約1.013×105N/m2)又は周囲圧力で行われる。しかしながら、より高い圧力を用いてもよく、例えば、約3気圧(約3.039×105N/m2)までの圧力を用いてもよい。
【0041】
工程(I)、例えば工程(ii)又は工程(b)の目的の1つは、前記添加剤粒子の凝集を防止することである。液体中に粒子状の添加剤を導入した後、個々の粒子間の相互作用により該添加剤が凝集体を形成する傾向がある。従って、工程(I)、例えば工程(ii)又は工程(b)の目的は、粒子状の添加剤を液体全体に実質的に均一に分散させること、並びに、凝集を減らす又は凝集を実質的に排除してしまうことである。
【0042】
当業者であれば、粒子状の添加剤が該液体全体に渡って十分均一に分散しているかどうか、及び凝集が十分に減少したかどうか容易に決定出来るであろう。例えば、超音波処理の分野における経験者であれば、粒子の塊(クラスター)を十分に分離するのに用いるパラメーターを知っているであろう。添加剤の粒子が均一に分散していること及び/又は凝集が減少したことを確認するために、懸濁液中の粒子サイズを分析する公知の方法を用いてもよい。
【0043】
工程(I)、つまり工程(ii)又は工程(b)で得られた混合液は、前記液体中の前記添加剤の実質的に均質な若しくは実質的に均一な混合液であることが好ましい。
【0044】
例えば前記液体と前記粒子状の添加剤との間の相互作用が粒子間の相互作用よりも実質的に弱いいくつかの例において、又は凝集体の形成がより起こりやすい他の例において、化学的手段により凝集体の形成を減少又は防止することが必要であってもよい。
【0045】
前記液体中における前記添加剤の分散を促進するために、必要に応じて、1種以上の表面活性剤を用いることが出来る。用いる界面活性剤の性質は、前記添加剤及び前記液体に依存する。好適な界面活性剤としては、イオン性及び非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好適な非イオン性界面活性剤としては、ポリイソブチレン、ポリジメチルシロキサン、及びジメチルシロキサンとビニルアセタートとの共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
界面活性剤を用いる場合、前記工程(I)において該界面活性剤を他の成分と同時に又は連続的に前記混合液に添加してもよい。例えば、前記界面活性剤を工程(ii)の前に若しくは工程(ii)中に添加してもよく、工程(a)中に若しくは工程(a)の後に添加してもよい。
【0047】
添加剤粒子を分散させるため及び/又は凝集体を減らすために、イオン強度又はpHを変える方法を代替的に又は追加的に用いてもよい。
【0048】
本発明の方法において、あらゆる熱可塑性ポリマーを用いることが出来る。「熱可塑性」という用語は広く用いられ、本発明の分野において容易に理解されるものであり、加熱されると軟化し、成形可能で溶接可能になる材料を意味するために用いられる。一般的に、熱可塑性材料は、特性を大きく変化させることなく繰り返し熱により軟化し、冷却させることが出来る。
【0049】
本発明の方法において、単一のモノマーから誘導されるポリマー及び共重合体(コポリマー)を用いてもよく、ポリマーブレンドであってもよい。
【0050】
本発明において用いられてもよい熱可塑性プラスチックの例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS);アクリル酸;セルロイド;セルロースアセタート;エチレン−ビニルアセタート(EVA);エチレンビニルアルコール(EVAL);FEP、PFA、CTFE、ECTFE、ETFEを含むフルオロプラスチック(PTFEs);ロノマー(lonomers);カイデックス(Kydex);アクリル酸/PVCアロイ(登録商標);液晶ポリマー(LCP);ポリアセタール(POM又はAcetal);ポリアクリラート(Acrylic);ポリアクリロニトリル(PAN又はAcrylonitrile);ポリアミド(PA又はNylon);ポリアミド−イミド(PAI);ポリアリールエーテルケトン(PAEK又はKetone);ポリブタジエン(PBD);ポリブチレンテレフタラート(PBT);ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE);ポリエチレンテレフタラート(PET);ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタラート(PCT);ポリカーボナート(PC);ポリヒドロキシアルカノアート(PHAs);ポリケトン(PK);ポリエステル;コポリエステル;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン(PB)、ポリメチルペンテン(PMP)及びオレフィン系のコポリマーなどのポリオレフィン;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド(PEI);ポリエーテルスルホン(PES);ポリエチレンクロリナート(PEC);ポリイミド(PI);ポリ乳酸(PLA);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリフタルアミド(PPA);ポリスチレン(PS);ポリスルホン(PSU);ポリビニルクロリド(PVC);ポリビニリデンクロリド(PVDC);スペクトラロン(Spectralon);可塑化デンプン(plasticised starches);ポリヒドロキシブチラート(PHB);及びポリビニルアルコール(PVA又はPVOH)。
【0051】
本発明に用いられる好ましいポリマーとしては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブロックコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルアセタート)、ポリカーボナート、ポリカプロラクトン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、キトサン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(ブチルテレフタラート)、ポリ(エチルメタクリレート)、超高分子量ポリエチレンが挙げられる。特に好ましいポリマーとしては、ナイロン、ポリビニルクロリド、ポリカプロラクトン、スチレン−ビニルアセタートジブロックコポリマー、並びに、ポリプロピレン、ポリエチレン及びオレフィン系のコポリマーなどのポリオレフィンが挙げられる。
【0052】
本発明は、周囲温度で固体のポリマー(例えば、約30℃よりも大きいガラス転移温度及び/又は融点を有するポリマー)を改良するのに特に好適である。特に断りがない限り、本明細書において「前記ポリマー」又は「ポリマー」とは周囲温度で固体のポリマーを包含するものとする。ポリマーは、粉末状又は粒子形状で用いられることが好ましく、例えば、粉末として又はペレット若しくは顆粒形状で用いられることが好ましい。しかしながら、これは必須ではない。前記ポリマーが工程(III)中に融解される場合(つまり、前記ポリマーが融点以上に加熱される場合)、必ずしも粉末又は粒子形状のポリマーを用いなくともよい。また、予備成形された又は完成したポリマーを、本発明の方法に用いてもよい。一般的に、予備成形された若しくは完成したポリマーを用いる場合には、該ポリマーの表面特性を改良するため、又は、当該予備成形された若しくは完成したポリマーの表面の全て若しくは一部にコーティングを施すために、本発明の方法を用いる。
【0053】
本明細書全体を通じて、「ポリマー」という用語が本発明の方法に関連して用いられる場合には、この用語を「ポリマー粉末」又は「ポリマー粒子」に置き換え得るものと理解されるであろう。これは、これらの形状のポリマーを用いることが本発明の好ましい態様であるためである。
【0054】
「予備成形されたポリマー」とは、完成した生成物となるためにさらに処理する必要がある、部分的に形成した生成物を意味する。「完成したポリマー」とは、ポリマーから製造された完成品を意味する。
【0055】
本発明で用いられるポリマーの分子量は重要ではなく、幅広い制限の中で変えることが出来る。非限定的な例として、本発明は約103〜約106の分子量を有するポリマーを使用するのに適している。ただし、この範囲外の分子量を有するポリマーを用いてもよい。
【0056】
ポリマー粉末を用いる場合、該ポリマー粒子のサイズは幅広い範囲内で変えることが出来る。例えば、約1nm〜約5cm、より好ましくは約10nm〜約2cm、さらにより好ましくは約30nm〜約1cm、例えば約60μm〜約1cmで変えることが出来る。
【0057】
当該ポリマー粉末は、加熱される前は非結晶質、半結晶質又は結晶質であってもよい。
【0058】
本発明の方法は、単一のポリマー及びポリマー混合物に適用できる。例えば、単一のポリマーを有するポリマー粉末を用いてもよい。あるいは、同じ組成であるが分子量の異なるポリマーを有するポリマー粉末を用いてもよい。あるいは、該ポリマー粉末は化学的に異なる2種以上のポリマーを有してもよい。2種以上のポリマーを用いる場合、本発明の方法において用いられる条件下で互いに反応しないように当該2種以上のポリマーを選択しなければならない。
【0059】
本発明の方法は、充填剤又は添加剤を既に有するポリマーに添加剤を導入するために用いることができると考えられる。しかしながら、本発明の方法において用いられるポリマーは、ニートポリマー、バージンポリマー又はニートポリマーとバージンポリマーとの混合物であることが好ましい。これは、前記ポリマー又は混合物は、本発明の方法で処理される前に添加剤又は充填剤の導入によって改良されていないことが好ましいことを意味する。特に、本発明の方法において用いられる該ポリマー又は混合物は、本発明の方法の工程で処理される前にカーボンブラックを有さないことが好ましい。この点に関し、2種の添加剤(例えばカーボンブラックと他の添加剤)を有する改良ポリマーを製造することが望まれる場合には、本発明の方法を用いてこれらの添加剤の両方を前記ポリマー又は混合物に導入することが好ましい。この状況において、1種の添加剤を導入するために本発明の方法の工程を用い、その後別の添加剤を導入するために(必要に応じて)本発明の方法の工程を繰り返してもよい。あるいは、前記添加剤の全てをまとめて導入してもよい。
【0060】
工程(iii)において、前記ポリマーを工程(ii)の生成物に添加する場合には、該ポリマー全てを1回の添加で導入することも出来るし、徐々に導入することも出来る。同様に、工程(ii)の生成物を前記ポリマーに添加する場合には、工程(ii)の生成物全てを1回で添加することも出来るし、徐々に導入することも出来る。
【0061】
前記ポリマーは、工程(ii)で得られた混合液にそのまま添加してもよく、工程(ii)で得られた混合液に添加する前に、液体(好ましくは工程(i)で用いたのと同じ液体)中に懸濁してもよい。
【0062】
工程(II)において、工程(I)で得られた混合液を加熱して、前記ポリマーを軟化させる。一般的に、前記ポリマーがゆっくり加熱されるか急速に加熱されるかは重要ではない。これは、工程(ii)において分散を助けるために前記液体と前記添加剤の混合液が加熱されている場合には、工程(iii)において既に加熱された混合液に前記ポリマーを組み込むことが出来ること、又は、工程(ii)の混合液を工程(iii)の前に加熱することが出来ることを意味する。
【0063】
工程(iii)及び工程(b)において、前記ポリマーは前記混合液に分散することが好ましい。攪拌若しくは振とう又はこれらの組み合わせなどの当技術分野において公知の好適な方法を用いてこれを行うことが出来る。前記ポリマーが前記液体中に実質的に均質に分散することが最も好ましい。
【0064】
工程(iii)又は工程(b)は、好適な温度であればどのような温度でも行うことが出来る。一般的に好適な温度は約15℃〜約250℃又は約160℃までである。工程(iii)は、周囲温度でも(又は周囲温度未満でも)行うことが出来る。例えば、この工程は周囲温度で行われてもよく、室温(約20℃)で行われてもよい。
【0065】
工程(I)において生成される前記混合液中における前記ポリマーと前記添加剤の質量割合は、該ポリマー及び添加剤の性質に少なくとも部分的に依存し、改良ポリマーに対する所望の特性などの要因にも依存するであろう。従って、前記添加剤と前記液体の質量割合は、幅広い制限の中で変えてもよい。例として、ポリマー:添加剤の質量割合は、約80:20〜約99.00:0.01であってもよく、好ましくは約85:15〜99.9〜0.1であり、より好ましくは約90:10〜99:1であり、例えば約91:9、92:8、93:7、94:6、95:5、96:4、97:3又は98:2である。
【0066】
工程(II)において、前記混合液は、ポリマー表面が軟化する温度に到達してよく、前記添加剤が軟化したポリマーに接着するのに十分な時間その温度で維持される。一般的に、これは、工程(I)で得られた混合液を好適な温度に加熱し、その後、その温度で維持することを意味する。あるいは、前記ポリマーを軟化するのに十分である場合には、前記混合液を工程(I)で用いられた温度で維持することも出来る。
【0067】
工程(II)において、前記ポリマーの表面、例えばポリマー粒子、ペレット又は顆粒の表面が軟化する。あるいは、前記ポリマー(又はポリマー粉末粒子)の表面が融解すると言うことも出来る。軟化又は融解は、前記添加剤が前記ポリマーに接着出来るのに好適な程度に生ずる。
【0068】
ポリマー粒子の表面の融解は、ポリマー粒子の完全な融解とは区別されなければならない。ポリマー粒子の表面のみが融解する場合、該ポリマー粒子は分離した粒子のままである。ポリマーが完全に融解する場合には、該ポリマーは液体になり、分離した粒子は最早存在しない。ポリマー粒子は分離した粒子のままであること、すなわち、該ポリマー粒子の表面が軟化又は融解することが好ましいが必須ではない。
【0069】
前記混合液を加熱する温度を必ずしも慎重に調節する必要はない。これが必要か否かは、ポリマーの性質、添加剤の性質、及び結果として得られる改良ポリマーの目的とする特性などの多くの要因に依存する。工程(iv)で用いられる温度は、慎重に調節されなければならない場合がある。例えば、いくつか用途については、ポリマーが軟化するが融解しないことを確保することが重要である。すなわち、ポリマー粒子が分離した粒子としてとどまることを確保する必要がある。導電性の添加剤が用いられる場合に、このことが重要であることが多い。
【0070】
工程(II)において、前記混合液は一般的にポリマーの融点よりも約10℃低い温度からポリマーの融点よりも約10℃高い温度の範囲に加熱される。ポリマーの融解が望まれない状況においては、到達する最大温度が該ポリマーの融点よりも低くなるように加熱を調節する。例えば、該ポリマーの融点よりも約0.1℃〜約10℃低い温度、より好ましくは該ポリマーの融点よりも約2℃〜約8℃低い温度、例えば該ポリマーの融点よりも約5℃低い温度に調節する。
【0071】
他の用途については、少なくともポリマーが軟化する限り、ポリマーが融解するか否かは重要ではない。これらの用途については、加熱温度をそれほど厳密に調節する必要はない。しかしながら、ポリマーの融点よりも約10℃高い温度を超えない温度、より好ましくは該融点よりも5℃高い温度を超えない温度に達することが好ましい。
【0072】
一般的に、約20℃〜約300℃の温度、より好ましくは約50℃〜約250℃の温度、例えば、約70℃〜約200℃又は約100℃〜約150℃の温度が工程(II)において用いられる。しかしながら、ケブラー(Kevlar)などの特定のポリマーについては、より高い温度を必要としてもよいと理解されるであろう。ケブラーについては、これはほぼ500℃程度であると考えられる。
【0073】
工程(II)に必要な温度に到達すると、添加剤がポリマー粒子の表面に接着するのに十分な時間この温度に保たれる。この工程の時間は、液体中の添加剤の濃度や改良ポリマー粒子の所望の特性などの要因に依存するであろう。約30秒〜数時間の時間を用いてもよく、一般的には約1分〜約1時間であり、好ましくは約2分〜約30分であり、より好ましくは約5分〜約20分であり、例えば、約10分又は約15分である。
【0074】
一般的に、前記混合液は工程(II)中にかき混ぜられる。当技術分野において公知のあらゆる好適な方法を用いてもよい。好適な方法としては、攪拌、振とう(shaking)及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に、高せん断技術は工程(II)中に用いられない。つまり、低せん断技術が用いられる。80rpm未満の速度で攪拌することが好ましく、50rpm未満の速度がより好ましい。
【0075】
工程(II)は大気圧又はそれよりも高い圧力で行うことが出来る。一般的に、約1気圧〜約100気圧の圧力、例えば、約2気圧〜約90気圧又は約3気圧〜約50気圧の圧力が用いられる。ポリマーを軟化させるのに必要な温度に液体が加熱され得るように、該圧力は選択される。例えば、水は1.8気圧で250℃に加熱され得る。
【0076】
本発明の方法において製造される改良ポリマー粒子の特性は、該方法の条件(すなわち、工程(II)で用いられる時間及び/又は温度)を調節することにより調節できる。例えば、工程(II)の実行時間を長くすれば、ポリマーに接着する添加剤の量を増やすことが出来る。
【0077】
工程(II)において、分散した添加剤は軟化したポリマーに接着する。
【0078】
理論に拘束されることはないが、ポリマーと添加剤との化学反応はないと考えられる。むしろ、添加剤は軟化したポリマーの表面に物理的に埋め込まれるか捕捉される。最終的に改良ポリマーが冷却されることにより、添加剤は該ポリマーの表面により強く結合する、すなわち、本発明の方法を用いて製造される改良ポリマーにおいて、添加剤はポリマーの表面に接着又は付着すると考えられる。
【0079】
本発明の方法は、更に処理するのに好適な改良ポリマーを製造するのに必要なあらゆる工程を更に有していてもよい。
【0080】
本発明の方法で用いられる液体に懸濁した改良ポリマーを、その形状で更に処理することが出来る。しかしながら、多くの用途に関して、改良ポリマーは更なる処理が行われる前に反応混合液から回収されると考えられる。従って、工程(II)の後、改良ポリマーは一般的に反応混合液から回収される。
【0081】
改良ポリマーは、濾過(例えば、膜濾過)や遠心分離などの、当技術分野において公知の懸濁している液体から固体を取り出す方法により、液体から取り出すことが出来る。改良ポリマーが取り出される前に該液体を冷却してもよいが、これは必須ではない。
【0082】
ポリマー粒子が取り出される前に混合液を冷却する場合には、該液体はゆっくりと冷却されてもよく(例えば、熱源を除去して、該液体を周囲温度に到達させる)、急速に冷却してもよい(例えば、容器を氷浴又はドライアイス浴に入れる)。オプションとして、冷却工程中に混合液を(例えば、攪拌又は振とうにより)かき混ぜてもよい。
【0083】
液体を冷却する場合には、一般的に約15℃〜約100℃の温度、例えば約30℃〜約50℃の温度に冷却する。
【0084】
完全に冷却することなく、液体を取り出し、リサイクルし、再利用する方法も考えられる。
【0085】
改良ポリマーの乾燥が通常必要とされ、特に、本発明の方法における液体として水を用いる場合には必要とされる。ポリマー粒子を更に処理し得る前に、水の完全な除去が通常必要とされる。好適な乾燥方法としては、温風乾燥などの当技術分野で公知の標準的な方法が挙げられる。
【0086】
工程(II)においてポリマーを融解する場合には、ポリマーを冷却するときに改良ポリマーの凝集体が形成されていてもよい。この状況において、改良ポリマーが用いられ得る前に、ポリマー粒子を形成するためにポリマーの微粉砕(milling)などの更なる処理を必要としてもよい。
【0087】
一般的に、工程(II)においてポリマーが軟化するが融解しない場合には、該ポリマーは分離した粒子のままである(もちろん、工程(I)は、該ポリマーが粒子の形状であることを前提としている。)。
【0088】
本発明の方法を用いて製造された改良ポリマー粒子は、当技術分野でよく知られた方法で用いられ、処理され得る。例えば、該改良ポリマーは、射出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形、回転成形、パワーコーティング、及び膜形成などの技術を用いて処理され得る。
【0089】
理論に拘束されることはないが、本発明の方法は以下の有利な点を1つ以上提供することができる。
【0090】
ポリマーを改良する公知の方法は、高せん断混合を用いる必要があることが多い(すなわち、80rpmよりも速い速度で混合するプロセスを必要とする。)。本発明の方法においては添加剤及び/又はポリマーの分散が良いレベルで得られる(すなわち、添加剤及び/又はポリマーは液体中に実質的に均質に分散する)ため、本発明では、そのような高せん断混合を必要としない。
【0091】
本発明の工程(I)において高せん断混合を避けることが好ましいことも留意すべきである。もし混合を必要とする場合には、上記の低せん断混合が工程(I)(例えば、工程(ii)及び/若しくは工程(iii)又は工程(b))において用いられる。
【0092】
ポリマー粉末が(融解するよりもむしろ)軟化する場合、該ポリマー粉末粒子のサイズと形状は実質的に保たれており、その後、処理されたポリマーを用いて部品を製造することを容易にする。
【0093】
本発明の方法は、より効率的/効果的に添加剤をポリマーに添加することを提供できることが分かった。これは、いくつかの従来方法に比べて、必要とする添加剤の量が少なくてすむことが多いこと、及び/又は、同一の生成物を製造するのに必要な液体中の添加剤の濃度が小さくてすむこと、及び/又は、同一の技術的効果を得るのに必要な添加剤のポリマーへの接着の度合いが低くてすむことを意味する。
【0094】
従来技術よりも均一に添加剤がポリマー粒子の表面に分散するため、改良ポリマーの特性は最適化されていることが多い。
【0095】
予備実験の結果によると、本発明の方法を用いて、ポリプロプレンを改良し、先行技術の方法を用いて得られるのと同レベルの導電性を得ることができたが、この際使用した電導性の添加剤(グラファイト又はカーボンブラック)は、本明細書の背景技術の中で述べた2段階処理方法などの従来の処理方法を用いた場合の量のたった約20分の1(体積%)であった。
【0096】
本発明の方法を使用すると、一般的に、処理されたポリマー粉末の機械特性の劣化が最小限に抑えられる。これは、一般的に、処理されたポリマーをより容易に処理することができることを意味する。このことから更なる利点が派生する。本発明の方法を用いて得られる改良ポリマーから製造される生成物は、従来技術を用いて得られる改良ポリマーを用いて製造される生成物に比べて結果として得られる機械特性が改善されるため、構造的により効率的であり、従って、より小さい質量を有し得る。
【0097】
液体中に添加剤を分散させる工程を必要とするため、本発明の方法を用いることにより、添加剤粒子の凝集に関連する問題を減らすことができ、排除することさえ出来る(すなわち、工程(I)において、一般的に、液体中に添加剤が実質的に均質に分散するために、添加剤の凝集が減少する。)。
【0098】
本発明は、本発明の方法によって得られる改良ポリマーをも提供する。より詳しくは、本発明は、本発明の方法によって得られる改良ポリマー粉末を提供する。
【0099】
ある態様において、本発明は、本発明の方法によって得られる導電性及び半導体性のポリマー(電気活性ポリマーとしても知られる)を提供する。これらのポリマーは、電磁妨害を防止する及び/又は静電放電を可能にする製品を製造するために用いられても良い。そのようなポリマーを得るために、本発明の方法においては、導電性の添加剤(又は導電性の充填剤)が用いられる。
【0100】
特定の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られるカーボンナノチューブを有する改良ポリマーを提供する。そのような改良ポリマーは、歪みセンサー(strain sensors)を製造するのに便利な導電性のポリマーフィルムを形成するために用いられてもよい。
【0101】
導電性添加剤は、電磁波が通ることの出来ないバリアを提供し、電磁電荷の蓄積を防止するため、本発明の方法を用いて得られる導電性ポリマーは、電磁妨害(およそ10-2S/cm)及び静電放電(10-4S/cm)から電子部品を保護するのに用いることが出来る。そのような導電性ポリマーを用いて製造された製品には、良好な静電散逸特性を必要とする燃料供給装置の部品、シール及びガスケット、静電塗装処理され得る自動車の車体パネル、静電気が起きない床、子供のおもちゃ、プラスチック製カード、静電気防止パッケージ、EMI防止衣服が含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。そのような導電性ポリマーは、粉体塗装として使用することも出来る。
【0102】
本発明は、本発明の方法によって得られ、二酸化チタンなどのUV吸収性添加剤を有する改良ポリマーをも提供する。例えば、本発明は、二酸化チタンなどのUV吸収性添加剤を有するポリビニルクロリド(PVC)、及び、その製造方法を提供する。そのような改良ポリマーは、例えばUV劣化を起こりにくくするために、uPCV製の窓枠やドアフレームの製造に用いることが出来ると考えられる。
【0103】
他の態様において、本発明は、本発明の方法により得られ、可逆性フォトクロミック添加剤を有する改良ポリマーを提供する。例えば、本発明は、可逆性フォトクロミック添加剤を有する改良ポリメチルメタクリレート(PMMA)又はポリカプロラクトン(PCL)、及び、それらの製造方法を提供する。処理されたポリマーは、サングラスの製造に一般的に用いられる可逆性フォトクロミックレンズの製造に用いることが出来ると考えられる。
【0104】
本発明は、本発明の方法により得られる改良ポリマーを有する、上記のものなどの製品をも提供する。
【実施例】
【0105】
以下に本発明を例証する実施例を記載するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0106】
[実施例1]
100gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、10gのカーボンブラック(CB)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにDMF(200〜300g)を添加した。高分子量ポリエチレン(HMWPE)粉末を、懸濁液を有する前記CBに添加し、99:1(HMWPE:CB)の質量比でHMWPE及びCBを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で134℃に加熱し、攪拌しながら10分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いてDMFを除去し、回収したHMWPE/CB粉末をオーブンで80℃で乾燥した。
【0107】
[実施例2]
100gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、10gの膨張黒鉛(EG)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにDMF(200〜300g)を添加した。高分子量ポリエチレン(HMWPE)粉末を、懸濁液を有する前記EGに添加し、95:5(HMWPE:EG)の質量比でHMWPE及びEGを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で133℃に加熱し、攪拌しながら15分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いてDMFを除去し、回収したHMWPE/EG粉末をオーブンで80℃で乾燥した。
【0108】
[実施例3]
100gのトルエンに、10gの膨張黒鉛(EG)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにトルエン(200〜300g)を添加した。ポリビニルクロリド(PVC)粉末を、懸濁液を有する前記EGに添加し、95:5(PVC:CB)の質量比でPCV及びEGを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で105℃に加熱し、攪拌しながら20分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により30℃に冷却した。フィルターを用いてトルエンを除去し、回収したPVC/EG粉末をオーブンで50℃で乾燥した。
【0109】
[実施例4]
100gのトルエンに、10gのカーボンブラック(CB)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにトルエン(200〜300g)を添加した。ポリビニルクロリド(PVC)粉末を、懸濁液を有する前記CBに添加し、99:1(PVC:CB)の質量比でPCV及びCBを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で105℃に加熱し、攪拌しながら15分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により40℃に冷却した。フィルターを用いてトルエンを除去し、回収したポリマー粉末をオーブンで50℃で乾燥した。
【0110】
[実施例5]
100gのトルエンに、10gのカーボンブラック(CB)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにトルエン(200〜300g)を添加した。ポリビニルクロリド(PVC)粉末を、懸濁液を有する前記CBに添加し、95:5(PVC:CB)の質量比でPCV及びCBを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で106℃に加熱し、攪拌しながら15分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により40℃に冷却した。フィルターを用いてトルエンを除去し、回収したPVC/CB粉末をオーブンで50℃で乾燥した。
【0111】
[実施例6]
100gの水に、10gのカーボンブラック(CB)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらに水(200〜300g)を添加した。ナイロン12粉末を、懸濁液を有する前記CBに添加し、95:5(ナイロン12:CB)の質量比でナイロン12及びCBを有する混合液を得た。この混合液を約2気圧で235℃に加熱し、攪拌しながら20分間その温度に保った。この混合液の圧力を開放し、その後この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いて水を除去し、回収したナイロン12/CB粉末をオーブンで100℃で乾燥した。
【0112】
[実施例7]
100gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、10gのカーボンブラック(CB)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにDMF(200〜300g)を添加した。高分子量ポリエチレン(HMWPE)粉末を、懸濁液を有する前記CBに添加し、95:5(HMWPE:CB)の質量比でHMWPE及びCBを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で140℃に加熱し、攪拌しながら18分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いてDMFを除去し、回収したHMWPE/CB粉末をオーブンで50℃で乾燥した。
【0113】
[実施例8]
100gの水に、0.1gのフォトクロミック染料(photochromic dye(PD))を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら2分間、超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。前記PDは前記水に溶解した。
ポリカプロラクトン粉末(PCL)を、溶液を有する前記PDに添加し、99.8:0.2(PCL:PD)の質量比でPCL及びPDを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で70℃に加熱し、攪拌しながら20分間その温度に保った。冷却することなくフィルターを用いて水を除去し、回収したPCL/PD粉末を室温で乾燥した。
回収した粉末はUV光下でフォトクロミック特性を有していた。
【0114】
[実施例9]
100gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、2gのカーボンナノチューブ(CNT)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにDMF(200〜300g)を添加した。高分子量ポリエチレン(HMWPE)粉末を、前記CNT懸濁液に添加し、99:1(HMWPE:CNT)の質量比でHMWPE及びCNTを有する混合液を得た。この混合液を1気圧で133℃に加熱し、攪拌しながら10分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いてDMFを除去し、回収したHMWPE/CNT粉末をオーブンで50℃で乾燥した。
【0115】
[実施例10]
100gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に、3gの二酸化チタン(TiO2)(直径40nm)を添加した。この混合液を、必要に応じて冷却しながら10分間、強度の超音波(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500,300W)で処理した。
さらにDMF(200〜300g)を添加した。高分子量ポリエチレン(HMWPE)粉末を、前記TiO2懸濁液に添加し、98:2(HMWPE:TiO2)の質量比でHMWPE及びTiO2を有する混合液を得た。この混合液を1気圧で132℃に加熱し、攪拌しながら15分間その温度に保った。その後、この混合液を空冷により50℃に冷却した。フィルターを用いてDMFを除去し、回収したHMWPE/TiO2粉末をオーブンで50℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡検査により、TiO2ナノ粒子でコーティングされたHMWPE粉末を確認した。
【0116】
[テスト]
上記実施例で製造された粉末の電気伝導特性をテストするために、該粉末を圧縮成形したサンプルを製造した。
【0117】
[圧縮成形したサンプルの製造]
前記粉末を金型内に入れ、20Ton Lab Press(Modular,Manchester,UK,www.ibt−eng.com)を用いて加熱・加圧処理を行った。使用した温度は改良ポリマーの性質に依存した。HMWPEを有する改良ポリマーについては約160℃で5分間加熱し、PVCを有する改良ポリマーについては約160℃で4分間加熱し、ナイロンを有する改良ポリマーについては約210℃で5分間加熱した。
【0118】
[伝導度テスト]
4.5cm×8.5cm×0.15cmの表面を有する圧力成形したサンプルの伝導度を、室温で標準的な4点法を用いて測定した。その結果を下記表1に示す。
【0119】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有する、処理又は改良されたポリマーの製造方法:
(I)液体、添加剤及びポリマーを有する混合液であって、前記添加剤は前記液体中に分散している混合液を用意する工程;及び
(II)前記添加剤を該ポリマーに接着させるために、前記工程(I)で得られた混合液を加熱して前記ポリマーの表面を軟化させる工程。
【請求項2】
前記工程(I)が以下の工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
(i)添加剤と液体を混合する工程;
(ii)前記添加剤を前記液体中に分散させる工程;及び
(iii)前記工程(ii)の生成物とポリマーを有する混合液を用意する工程。
【請求項3】
前記工程(I)が以下の工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
(a)前記ポリマー及び前記添加剤を前記液体に添加する工程;及び
(b)前記添加剤を前記液体中に分散させる工程。
【請求項4】
前記ポリマーが粉末又はペレットの形状であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記添加剤が前記液体に不溶であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記添加剤が前記液体に可溶であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記添加剤がカーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛、酸化黒鉛、炭素短繊維、ホウ素繊維、カーボンナノチューブ、金属粒子、TiO2、MgO2、ガラス短繊維、無機充填剤、セラミック粒子若しくは繊維、天然のモンモリロナイト、粘土、及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記添加剤が、フォトクロミック添加剤、UV劣化防止添加剤、又は導電性添加剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記液体が、水、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド及びクロロホルムから選択されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記工程(ii)が超音波分散を用いて行われることを特徴とする、請求項2及び4〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ナイロン、ポリエチレン、ポリビニルクロリド、ポリカプロラクトン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ビニルアセタートジブロックコポリマー、ポリプロピレン及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記工程(iii)又は工程(b)が、前記ポリマーを前記混合液中に分散させる工程を有することを特徴とする、請求項2〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ポリマーと前記添加剤の質量割合が、約85:15〜約99:1(ポリマー:添加剤)であることを特徴とする、請求項2〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記工程(II)において、前記混合液が前記ポリマーの融点よりも約0.1〜約10℃低い温度に加熱されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記工程(II)が約1〜約3気圧の圧力で行われることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記工程(II)が約2〜約60分間行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記工程(II)の後に、前記混合液を冷却する工程を更に有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記工程(II)で得られた改良ポリマーを前記混合液から取り出す工程を更に有することを特徴とする、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、改良ポリマー。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、導電性又は半導体性ポリマー。
【請求項21】
カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は膨張黒鉛を含むことを特徴とする、請求項19又は20に記載のポリマー。
【請求項22】
ポリエチレン、ポリビニルクロリド又はナイロンを含むことを特徴とする、請求項20又は21に記載のポリマー。
【請求項23】
UV劣化防止添加剤を有することを特徴とする、請求項19に記載のポリマー。
【請求項24】
二酸化チタン及びポリビニルクロリドのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項23に記載のポリマー。
【請求項25】
可逆性フォトクロミック添加剤を含むことを特徴とする、請求項19に記載のポリマー。
【請求項26】
ポリメチルメタクリレート又はポリカプロラクトンを含むことを特徴とする、請求項25に記載のポリマー。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られるポリマーを有する製品。
【請求項28】
実質的に実施例のいずれか1つに記載されている方法。
【請求項29】
実質的に実施例のいずれか1つに記載されている改良ポリマー。

【公表番号】特表2010−539275(P2010−539275A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524575(P2010−524575)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003130
【国際公開番号】WO2009/034361
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(510071529)ラフバラ ユニヴァーシティー (2)
【Fターム(参考)】