説明

施肥装置

【課題】圃場の形状・寸法にかかわらず、効率性の高い走行経路の設定ができるとともに、走行経路の設定を行いながら連続的に施肥できるようにする。
【解決手段】第1設定点P1と第2設定点P2とを結ぶ基準線L0を設定する制御と、基準線L0と対向する平行な第2枕地走行経路L12を設定する制御と、第2枕地走行経路L12上に第3設定点P3を設定する制御と、第3設定点P3を設定することにより第2枕地走行経路L12の位置を設定する制御と、設定された第2枕地走行経路L12の位置に基づいて、第1枕地走行経路L11と第2枕地走行経路L12の間の距離を算出するとともに、第1枕地走行経路L11と第2枕地走行経路L12の間の施肥範囲B1中で施肥されてない範囲を算出し、枕地走行経路L1と内側走行経路L2を備えた走行経路Lを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムによる位置情報に基づいて走行経路を設定する機能を有する施肥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位システムによる位置情報に基づいて走行経路を設定する機能を有する施肥装置は、下記特許文献1に開示されているように、圃場の長辺及び短辺等の圃場形状・寸法データや作業行程幅データ等を入力することで、走行経路を設定するものが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されているように、圃場の外縁部(枕地)に沿って走行することで位置情報を取得し、その後、この位置情報及び入力された各種データに基づいて、外縁部の内側に走行経路を自動設定するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−234204号公報
【特許文献2】特開2005−176741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の従来技術によると、前述した各種データを入力することにより、圃場の大きさにかかわらず、正確な走行経路を設定することができる。しかしながら、特許文献1の従来技術では、前述の圃場の形状や寸法をあらかじめ測定する必要があるため、走行経路の設定作業において効率性が低く、特に、形状や寸法の異なる圃場毎に走行経路を設定するには、不利であった。
【0006】
特許文献2の従来技術は、圃場の外縁部に沿って施肥しながら走行することで位置情報を取得し、この位置情報及び入力された各種データに基づいて、外縁部の内側に走行経路を自動設定するようになっているため、圃場の形状や寸法にかかわらず走行経路を設定することができる。しかしながら、特許文献2の従来技術では、位置情報の取得後に走行を停止して各種データの入力を行うようになっているため、この各種データの入力時に施肥作業におけるタイムラグとなり、連続的な施肥を行うという点において効率性が低いものであった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、圃場の形状・寸法にかかわらず、効率性の高い走行経路の設定ができること、走行経路の設定を行いながら連続的に施肥できること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による施肥装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
圃場に設定された施肥範囲全域に設定された量で肥料を散布する肥料散布部と、前記肥料散布部を移動させる走行体と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記走行体の位置情報を設定する位置情報設定部と、前記走行体の位置情報に基づいて、前記圃場の枕地を含む前記施肥範囲全域に施肥できるように前記走行体の走行経路を設定する走行経路設定制御部と、を備え、前記走行経路設定制御部は、前記走行経路における第1枕地走行経路上に第1設定点及び第2設定点を設定することで、前記第1設定点と前記第2設定点とを結ぶ基準線を設定する制御と、前記基準線と対向する平行な第2枕地走行経路を設定する制御と、前記第2枕地走行経路上に第3設定点を設定する制御と、前記第3設定点を設定することにより前記第2枕地走行経路の位置を設定する制御と、設定された前記第2枕地走行経路の位置に基づいて、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の距離を算出するとともに、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の前記施肥範囲中で施肥されてない範囲を算出し、且つ前記施肥されてない範囲の距離を等分して、該等分した位置に前記基準線と平行な内側走行経路を設定する制御と、をするものであることを特徴とする。
【0010】
圃場に設定された施肥範囲全域に施肥できるように施肥装置の走行経路を設定する走行経路設定方法であって、枕地の走行中において、第1枕地走行経路上に第1設定点を設定するステップと、前記第1枕地走行経路上に第2設定点を設定するステップと、前記第1設定点と前記第2設定点とを結ぶ基準線を設定するステップと、前記基準線と対向する平行な第2枕地走行経路を設定するステップと、前記第2枕地走行経路上に第3設定点を設定するステップと、前記第3設定点を設定することにより前記第2枕地走行経路の位置を設定するステップと、設定された前記第2枕地走行経路の位置に基づいて、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の距離を算出するステップと、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の前記施肥範囲中で施肥されてない範囲を算出するステップと、前記施肥されてない範囲の距離を等分するステップと、前記等分した位置に前記基準線と平行な内側走行経路を設定するステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、圃場の枕地を走行しながら、第1設定点〜第3設定点を設定することで、枕地の内側に内側走行経路を設定するようにしているので、圃場の形状・寸法にかかわらず、効率性の高い走行経路の設定ができるとともに、走行経路の設定を行いながら連続的に施肥できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の施肥装置の構成を示すブロック図。
【図2】走行経路を示す経路図。
【図3】制御部の構成を示すブロック図。
【図4】走行経路を設定する方法を示すコンピュータプログラムのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に説明する肥料散布部は、肥料の散布幅を調節できる肥料散布部(スパウト式、及びスピンナ式を含む)や、肥料の散布幅が固定されているライムソーワを含む。
【0014】
以下に説明する走行体は、前述の肥料散布部を牽引又は支持或いは載置して走行する走行体や肥料散布部を一体に備えた走行車(自走式肥料散布装置)を含む。
【0015】
以下に説明する枕地は、圃場の外縁部に任意の幅に設定された部位である。この枕地は、走行体が圃場に出入りしたり、旋回したりするために確保されるものである。
【0016】
以下に説明する第1設定点は、第1枕地走行経路上であって、第2設定点の手前の地点であればよく、例えば、走行体の走行開始地点が挙げられる。第2設定点は、第1枕地走行経路上であって、第1設定点との間に基準線を設定できる地点であればよく、また、第3設定点は、基準線と対向する平行な第2枕地走行経路上の地点であればよい。具体的には、前記第2設定点が、前記第1枕地走行経路と交差する第3枕地走行経路への方向転換開始点であり、前記第3設定点が、前記第3枕地走行経路から前記第2枕地走行経路への方向転換終了点であることが好ましい。
【0017】
走行経路設定制御部は、更に、前記第2枕地走行経路と前記基準線に隣接する前記内側走行経路とにわたる第4枕地走行経路を設定する制御と、前記第4枕地走行経路から前記内側走行経路への方向転換経路を設定する制御と、を備えていることが好ましい。
【0018】
走行経路設定制御部は、更に、前記等分した位置を複数設定するとともに、前記内側走行経路を複数設定したとき、該複数の内側走行経路が平行に連続するように、隣り合う前記内側走行経路を繋ぐ内側方向転換経路を設定する制御を備えていることが好ましい。
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る施肥装置を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本実施形態の施肥装置Aの構成を示すブロック図である。施肥装置Aは、肥料を散布する肥料散布部1と、肥料散布部1を支持して走行する走行体2と、衛星測位システム(以下「GPS」という)による位置情報に基づいて、施肥装置Aの位置情報を設定する位置情報設定部3と、各種情報の入力や電源ON/OFFする入力部4と、施肥装置Aを誘導するための表示部5と、位置情報設定部3で設定された位置情報及び入力部4に入力された各種情報に基づいて、圃場Bの施肥範囲B1(図2参照)全域に施肥できるように、施肥装置Aの走行経路L(図2参照)を設定するとともに、設定された走行経路Lや案内等を表示部5に画像として映す制御をする制御部6と、を備えている。
【0021】
肥料散布部1は、走行体2と一体となって走行するとともに、走行体2の駆動軸からPTO(Power Take Off)軸(図示せず)を介して取り出される駆動力により作動して肥料を散布する周知の形態のものであり、あらかじめ設定された散布幅で肥料を散布するようになっている。この肥料散布部1は、ブロードカスタやライムソーワが例示できる。
【0022】
位置情報設定部3は、GPS衛星(図示せず)からの位置情報を受信する受信部(図示せず)、受信した位置情報を得て処理する受信機(図示せず)等を備えており、受信した位置情報に基づいて施肥装置Aの現在位置を設定するようになっている。この位置情報設定部3で設定された位置情報は、逐次、制御部6に送信されるようになっている。
【0023】
入力部4は、走行経路Lを設定するための第1設定点P1〜第3設定点P3(図2参照)を設定するスイッチ(図示せず)や肥料散布部1の散布幅情報等を入力するテンキーパッド(図示せず)、表示部5の操作するスイッチ(図示せず)等を備えており、各種作業に対応して操作するようになっている。この入力部4は、走行体2の運転席等のオペレータ(図示せず)が操作し易い場所に設けることが好ましい。
【0024】
表示部5は、設定された走行経路Lや案内等を表示することで、オペレータに対して施肥装置Aの現在の状況を視認させるようになっている。表示部5は、入力部4の付近で、走行体2の運転席(図示せず)等のオペレータ(図示せず)が視認し易い場所に設けることが好ましい。
【0025】
制御部6は、送信された位置情報や入力された各種情報に基づいて、施肥装置Aの走行経路Lを設定する制御、表示部5に設定された走行経路Lや案内等を表示部5に画像として表示する制御をするようになっている。また、肥料散布部1の散布幅等を設定する制御をするようになっている。
【0026】
図2は、圃場Bの施肥範囲B1に設定された施肥装置Aの走行経路Lを示す経路図である。本実施形態では、施肥範囲B1に枕地B2が含まれており、走行経路Lは、枕地B2に設定される枕地走行経路L1と、この枕地走行経路L1の内側に設定される内側走行経路L2とから構成されている。
【0027】
枕地走行経路L1は、矩形の圃場Bの外縁部B3〜B6に沿う第1枕地走行経路L11〜第4枕地走行経路L14から構成され、内側走行経路L2は、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23と、第4枕地走行経路L14から第1内側走行経路L21へ方向転換する方向転換経路L24と、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23を平行に連続するように繋ぐ内側方向転換経路L25とから構成されている。
【0028】
このような枕地走行経路L1及び内側走行経路L2からなる走行経路Lは、枕地B2を走行しながら、第1設定点P1、第2設定点P2、第3設定点P3を順次入力・設定することで、この第1設定点P1〜第3設定点P3の設定情報、位置情報設定部3から受信した位置情報、あらかじめ入力された肥料散布部1の散布幅情報に基づく制御部6の制御によって設定されるようになっている。
【0029】
尚、本実施形態の内側走行経路L2は、3本の第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23を有するものとして例示しているが、これは、圃場Bの大きさや肥料散布部1の散布幅によって増減する。
【0030】
図3は、制御部6の構成を示すブロック図である。制御部6は、受信部6A、記憶部6B、基準線設定制御部6C、走行経路設定制御部6D、散布幅設定制御部6E、CPU(図示せず)と、を備えている。
【0031】
受信部6Aは、位置情報設定部3からの位置情報、入力部4からの第1設定点P1〜第3設定点P3の設定情報及び散布幅情報を受信し、受信した位置情報、設定情報、散布幅情報を記憶部6Bに出力するように制御されている。
【0032】
受信部6Aは、施肥装置Aの動作中、常に位置情報設定部3からの位置情報を受信するとともに、受信した位置情報を逐一記憶部6Bに出力させるように制御されている。また、この受信部6Aから出力される位置情報は、記憶部6Bにおいて更新(上書き)するように制御されている。
【0033】
ここでは、第1設定点P1を、第1枕地走行経路L11の走行開始地点に設定し、第2設定点P2を、第1枕地走行経路L11から外縁部B4に沿う第3枕地走行経路L13への方向転換開始地点に設定し、第3設定点P3を、第3枕地走行経路L13から外縁部B5に沿う第2枕地走行経路L12への方向転換終了地点に設定している。第1設定点P1、第2設定点P2、第3設定点P3の設定位置は、例示した地点に限定されない。
【0034】
記憶部6Bは、前述のCPUが実行する各種プログラムや、各種アプリケーションプログラム、及び各種データ等を記憶したROMを備えている。又、位置情報、設定情報、散布幅情報、演算結果等を一時的に記憶するRAM等を備えている。そして、このROM及びRAMから、基準線設定制御部6C、走行経路設定制御部6D、散布幅設定制御部6E、の各種要求に基づく各種プログラムや各種データの出し入れが行われる。
【0035】
基準線設定制御部6Cは、記憶された第1設定点P1情報及び第2設定点P2情報に基づいて、第1枕地走行経路L11上に第1設定点P1と第2設定点P2とを結ぶ基準線L0を設定するように制御するものであり、設定された規準線L0情報を記憶部6Bに出力するように制御するものである。
【0036】
走行経路設定制御部6Dは、第1枕地走行経路L11〜第4枕地走行経路L14と、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23と、方向転換経路L24と、内側方向転換経路L25とを設定する制御をするものである。具体的には、記憶された肥料散布部1の散布幅と、施肥装置Aの走行に伴って逐一変化する位置情報設定部3からの位置情報とに基づいて設定するとともに、設定された第1枕地走行経路L11情報〜第4枕地走行経路L14情報と、第1内側走行経路L21情報〜第3内側走行経路L23情報と、方向転換経路L24情報と、内側方向転換経路L25情報を記憶部6Bに出力するように制御するものである。
【0037】
散布幅設定制御部6Eは、入力部4から入力された肥料散布部1の肥料散布幅情報に基づいて、肥料散布部1に指定された肥料散布幅で肥料散布させるように制御するものである。
【0038】
第1枕地走行経路L11は、施肥装置Aが圃場Bの外縁部B3に沿って走行することにより設定される。ここで設定される第1枕地走行経路上において、第1設定点P1と第2設定点P2とが設定されるとともに、この第1設定点P1と第2設定点P2とを結ぶ基準線L0が設定される。また、第1枕地走行経路L11は、外縁部B3のほぼ全長にわたる距離で設定されている。ここで、基準線L0は、第1枕地走行経路L11上に設定される第1設定点P1と第2設定点P2とを結ぶ直線であって、第1枕地走行経路L11を構成する直線ではない。
【0039】
第2枕地走行経路L12は、基準線L0が設定されると同時に、この基準線L0と対向する平行な線として設定される。第2枕地走行経路L12は、外縁部B5に沿う位置に設定されているが、この第2枕地走行経路L12の位置は、第2枕地走行経路L12上で第3設定点P3を設定することで決定されるようになっている。すなわち、施肥装置Aを外縁部B4に沿う第3枕地走行経路L13から第2枕地走行経路L12を設定しようとする外縁部B5への方向転換終了地点に第3設定点P3を設定することによって、外縁部B5に沿う位置に、基準線L0と平行な第2枕地走行経路L12が設定されるようになっている。
【0040】
第3枕地走行経路L13は、施肥装置Aが外縁部B3と交差する外縁部B4に沿って走行することにより設定される。また、第3枕地走行経路L13は、外縁部B4のほぼ全長にわたる距離で設定されている。
【0041】
第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23は、第3設定点P3を設定することで設定されるようになっている。具体的には、第3設定点P3が設定されると、第1枕地走行経路L11と第2枕地走行経路L12との距離を、記憶された第1枕地走行経路L11と第2枕地走行経路L12との位置に基づいて算出する。第1枕地走行経路L11と第2枕地走行経路L12との距離が算出されると、この距離の内、肥料散布がされていない範囲の距離を肥料散布部1の散布幅に基づいて算出する。そして、この肥料散布がされていない範囲の距離を等分するように計算し、この等分した位置に、基準線L0と平行な第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23が設定されるようになっている。
【0042】
このような制御により、第1枕地走行経路L11と第1内側走行経路L21との間、第2枕地走行経路L12と第3内側走行経路L23との間、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23との間を、すべて同間隔に設定することができる。この間隔は、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23含み、第1枕地走行経路L11と、第2枕地走行経路L12との間で施肥するときに、各走行経路間で施肥される肥料の端部のオーバーラップ量を調整して、部分的に施肥量が多くなったり、少なくなったりすること防止し、平均的に施肥できるように設定されている。
【0043】
第4枕地走行経路L14は、施肥装置Aが外縁部B6に沿って走行することにより設定され、この第4枕地走行経路L14の端部の位置が、内側走行経路方向L2へ方向転換したときに、第1内側走行経路L21に至らせることができる位置となるように設定される。
【0044】
第4枕地走行経路L14が設定されたときに、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23の両端部P4、P5の位置が、記憶された肥料散布部1の散布幅に基づいて、この散布幅の端部L30と同じ位置となるように設定される。すなわち、第3枕地走行経路L13及び第4枕地走行経路L14に沿って施肥された肥料と、第1内側走行経路L21〜第4内側走行経路の両端部で施肥される肥料とのオーバーラップする量を調整して、部分的に施肥量が多くなったり少なくなったりすることを防止して、平均的に施肥できるようになっている。
【0045】
また、第4枕地走行経路L14が設定されたときに、この第4枕地走行経路L14の端部P6(方向転換開始地点)と第1内側走行経路L21の端部P4(方向転換終了地点)とを繋ぐ方向転換経路L24が設定される。この方向転換経路L24に沿って施肥装置Aを走行させることによって、第4枕地走行経路L14から第1内側走行経路L21に連続して施肥することができる。
【0046】
内側方向転換経路L25は、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23が設定されると、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23の端部P4、P4及び端部P5、P5を繋いで、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23を平行に連続させる内側方向転換経路L25が設定されるこの内側方向転換経路L25に沿って施肥装置Aを走行させることによって、施肥装置Aを第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23に確実に移動させることができる。
【0047】
このような施肥装置Aは、設定された枕地走行経路L1及び内側走行経路L2からなる走行経路L、受信した位置情報に基づく施肥装置Aの現在位置、記憶された各種案内等が表示部5に表示され、表示された各種情報をオペレータが視認しながら、施肥装置Aを走行させて施肥作業を行うことで、正確な施肥作業を行うことができる。
【0048】
図4は、走行経路設定制御部6Dが走行経路Lを設定する方法を示すコンピュータプログラムのフローチャートである。このプログラムは、施肥装置Aを起動(走行体2のエンジンを始動及び/又は入力部を電源ON)することにより起動するプログラムである(ステップS1)。
【0049】
施肥装置Aの起動後、施肥装置Aを圃場Bの外縁部B3の枕地B2に沿って走行させて第1枕地走行経路L11を設定する(ステップS2)。この第1枕地走行経路L11上に第1設定点P1を設定する(ステップS3)。このステップS3では、走行体2を走行させながら第1設定点P1を設定する操作をしてもよいし、走行前に第1設定点P1を設定する操作をしてもよい。この第1枕地走行経路L11上に、第1設定点P1から離間した位置に第2設定点P2を設定する(ステップS4)。第2設定点P2が設定されると、第1設定点P1と第2設定点P2とを結ぶ基準線L0が設定される(ステップS5)。
【0050】
この基準線L0は、外縁部B5に沿う位置に設定される第2枕地走行経路L12及び第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23として利用される。
【0051】
第2枕地走行経路L12は、施肥装置Aを外縁部B3と交差する外縁部B4に沿って走行させて第3枕地走行経路L13を設定し(ステップS6)、この第3枕地走行経路L13から第2枕地走行経路L12を設定しようとする外縁部B5への方向転換終了地点に第3設定点P3を設定する(ステップS7)ことによって、外縁部B5に沿う位置に、第3設定点P3を始端とするとともに、基準線L0と平行な第2枕地走行経路L12が設定される(ステップS8)。
【0052】
第3設定点P3が設定されると、基準線L0(第1枕地走行経路L11)と第2枕地走行経路L12との距離を、設定された基準線L0と第2枕地走行経路L12との位置に基づいて算出する(ステップS9)。更に、ステップS10で算出された距離の内、施肥されてない範囲の距離を肥料散布部1の散布幅に基づいて算出する(ステップS10)。ステップS11で算出された距離を等分するように計算し(ステップS11)、等分した位置に基準線L0と平行な第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23が自動的に設定される(ステップS12)。
【0053】
ステップS13の時点において施肥装置Aは走行が継続されており、施肥装置Aが外縁部B3と平行な外縁部B5に沿って走行することにより第4枕地走行経路L14が設定される(ステップS13)。
【0054】
第4枕地走行経路L14が設定されると、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23の両端部P4、P5の位置が、記憶された肥料散布部1の散布幅に基づいて、第3枕地走行経路L13及び第4枕地走行経路L14を走行する施肥装置Aの肥料散布部1における散布幅の端部L30と同じ位置となるように設定される(ステップS14)。
【0055】
更に、第4枕地走行経路L14が設定されると、第4枕地走行経路L14の端部P6(方向転換開始地点)と第1内側走行経路L21の端部P4(方向転換終了地点)とを繋ぐ方向転換経路L24が設定される(ステップS15)。更に、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23が設定されると、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23の端部P4、P4及び端部P5、P5を繋いで、第1内側走行経路L21〜第3内側走行経路L23を平行に連続させる内側方向転換経路L25が設定される(ステップS16)。そして、この内側方向転換経路L25が設定されるとプログラムが終了する(ステップS17)。
【0056】
このように、施肥装置Aを施肥・走行させながら第1設定点P1、第2設定点P2、第3設定点P3を順次入力・設定することで、施肥装置Aが枕地B2の全域を走行できるように案内する枕地走行経路L1と、施肥装置Aが枕地B2の内側を往復しながら走行できるように案内する内側走行経路L2からなる走行経路Lを設定することができる。
【0057】
第1設定点P1〜第3設定点P3、端部P4、P5、P6の設定は、手動操作設定、自動設定、手動操作設定と自動設定の組み合わせによる設定のいずれでもよい。また、内側走行経路L2の最終経路(実施形態では第3内側走行経路L23)の最終地点(実施形態では端部P5に相当する地点)において、施肥作業が終了したことを視覚的或いは聴覚的に報知するようにしてもよい。施肥作業終了を報知することによって、例えば、過走行による肥料の撒き過ぎ等を防止することができる。
【0058】
尚、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0059】
A:施肥装置
1:肥料散布部(肥料散布部)
2:走行体(走行体)
3:位置情報設定部
B:圃場
B1:施肥範囲
B2:枕地
P1:第1設定点
P2:第2設定点
P3:第3設定点
L:走行経路
L0:基準線
L1:枕地走行経路
L2:内側走行経路
L11:第1枕地走行経路
L12:第2枕地走行経路
L13:第3枕地走行経路
L14:第4枕地走行経路
L21:第1内側走行経路
L22:第2内側走行経路
L23:第3内側走行経路
L24:方向転換経路
L25:内側方向転換経路
6D:走行経路設定制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設定された施肥範囲全域に設定された量で肥料を散布する肥料散布部と、前記肥料散布部を移動させる走行体と、衛星測位システムによる位置情報に基づいて、前記走行体の位置情報を設定する位置情報設定部と、前記走行体の位置情報に基づいて、前記圃場の枕地を含む前記施肥範囲全域に施肥できるように前記走行体の走行経路を設定する走行経路設定制御部と、を備え、前記走行経路設定制御部は、前記走行経路における第1枕地走行経路上に第1設定点及び第2設定点を設定することで、前記第1設定点と前記第2設定点とを結ぶ基準線を設定する制御と、前記基準線と対向する平行な第2枕地走行経路を設定する制御と、前記第2枕地走行経路上に第3設定点を設定する制御と、前記第3設定点を設定することにより前記第2枕地走行経路の位置を設定する制御と、設定された前記第2枕地走行経路の位置に基づいて、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の距離を算出するとともに、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の前記施肥範囲中で施肥されてない範囲を算出し、且つ前記施肥されてない範囲の距離を等分して、該等分した位置に前記基準線と平行な内側走行経路を設定する制御と、をするものであることを特徴とする施肥装置。
【請求項2】
前記第2設定点が、前記第1枕地走行経路と交差する第3枕地走行経路への方向転換開始点であり、前記第3設定点が、前記第3枕地走行経路から前記第2枕地走行経路への方向転換終了点であることを特徴とする請求項1記載の施肥装置。
【請求項3】
前記走行経路設定制御部は、更に、前記第2枕地走行経路と前記基準線に隣接する前記内側走行経路とにわたる第4枕地走行経路を設定する制御と、前記第4枕地走行経路から前記内側走行経路への方向転換経路を設定する制御と、をするものであることを特徴とする請求項1又は2記載の施肥装置。
【請求項4】
前記走行経路設定制御部は、更に、前記等分した位置を複数設定するとともに、前記内側走行経路を複数設定したとき、該複数の内側走行経路が平行に連続するように、隣り合う前記内側走行経路を繋ぐ内側方向転換経路を設定する制御をするものであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の施肥装置。
【請求項5】
圃場に設定された施肥範囲全域に施肥できるように施肥装置の走行経路を設定する走行経路設定方法であって、枕地の走行中において、第1枕地走行経路上に第1設定点を設定するステップと、前記第1枕地走行経路上に第2設定点を設定するステップと、前記第1設定点と前記第2設定点とを結ぶ基準線を設定するステップと、前記基準線と対向する平行な第2枕地走行経路を設定するステップと、前記第2枕地走行経路上に第3設定点を設定するステップと、前記第3設定点を設定することにより前記第2枕地走行経路の位置を設定するステップと、設定された前記第2枕地走行経路の位置に基づいて、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の距離を算出するステップと、前記第1枕地走行経路と前記第2枕地走行経路の間の前記施肥範囲中で施肥されてない範囲を算出するステップと、前記施肥されてない範囲の距離を等分するステップと、前記等分した位置に前記基準線と平行な内側走行経路を設定するステップと、を備えていることを特徴とする走行経路設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−120449(P2012−120449A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271490(P2010−271490)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000107653)株式会社IHIスター (36)
【Fターム(参考)】