説明

既存建築物の制震補強工法および制震補強構造物

【課題】廉価であって工期がかからず、広い用地を必要としない制震補強工法を提供する。
【解決手段】制震補強工法は、集合住宅12の外壁の面方向に並行する第1鉄骨枠14を住宅12の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、第1鉄骨枠14の少なくとも1階層分ずつを住宅12の外壁13に固定手段を介して順次固定して住宅12の外壁13と第1鉄骨枠14とを一体化し、第1鉄骨枠14から住宅12の外壁13の面外方向へ張り出す第2鉄骨枠15を住宅12の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、第2鉄骨枠15の少なくとも1階層分ずつを第1鉄骨枠14に順次連結するとともに、住宅12の震動を吸収する制震補強ブレース17を第1および第2鉄骨枠14,15の内側に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨枠と制震手段とを使用した既存建築物の制震補強工法および制震補強構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
既存建築物の外壁からその面外方向へ所定距離離間した位置に階層状の耐震架構を、既存建築物と耐震架構とが水平力を分担するように建造した後、既存建築物と耐震架構とをバイパスする連結部分を介してその耐震架構を既存建築物に連結する既存建築物の耐震補強工法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−203220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の耐震補強工法では、既存建築物の外壁からその面外方向へ所定距離離間した位置に、それ自体が震動に対する強度の耐震性を有する耐震架構を建造し、連結部分を介してその耐震架構を既存建築物に連結する工法であり、耐震架構の建造にコストがかかることはもちろん、耐震架構の建造に多数の工数を必要とするから、耐震架構を廉価に構築することができないのみならず、耐震架構を利用した耐震構造物の工期を短縮することが難しい。また、既存建築物の外壁からその面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を建造するから、耐震架構を建造するために広範囲な用地が必要となり、用地確保が困難な既存建築物に施工することができない。
【0005】
本発明の目的は、廉価であって工期がかからず、広い用地を必要としない制震補強工法および制震補強構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる制震補強工法は、鉄骨柱と鉄骨梁とから作られて既存建築物の外壁の面方向に並行する第1鉄骨枠を該既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、第1鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを既存建築物の外壁に固定手段を介して順次固定して該既存建築物の外壁と該第1鉄骨枠とを一体化するとともに、既存建築物の震動を吸収する制震手段を第1鉄骨枠の内側に設置する。
【0007】
本発明の制震補強工法の一例としては、鉄骨柱と鉄骨梁とから作られて第1鉄骨枠から既存建築物の外壁の面外方向へ張り出す第2鉄骨枠を該既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、第2鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを第1鉄骨枠に順次連結するとともに、制震手段を第2鉄骨枠の内側に設置する。
【0008】
本発明の制震補強工法の他の一例としては、既存建築物の1階部分に構築される第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部を地中に建て込まれた基礎に連結する。
【0009】
本発明の制震補強工法の他の一例としては、制震手段として制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかを使用する。
【0010】
本発明にかかる制震補強構造物は、鉄骨柱と鉄骨梁とから形成されて既存建築物の外壁の面方向に並行し、既存建築物の外壁に固定手段を介して固定されて該既存建築物の複数階層と一体になった複数の第1鉄骨枠と、鉄骨柱と鉄骨梁とから形成されて第1鉄骨枠から既存建築物の外壁の面外方向へ張り出し、第1鉄骨枠に連結されてそれら第1鉄骨枠と一体になった複数の第2鉄骨枠と、第1鉄骨枠の内側と第2鉄骨枠の内側とに設置されて既存建築物の震動を吸収する制震手段とのうち、少なくとも第1鉄骨枠と該第1鉄骨枠の内側に設置された制震手段とを有する。
【0011】
本発明の制震補強構造の一例としては、既存建築物の1階部分に構築される第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部が地中に建て込まれた基礎に連結されている。
【0012】
本発明の制震補強構造の他の一例としては、制震手段が制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかである。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる制震補強工法によれば、既存建築物の外壁の面方向に並行する第1鉄骨枠を既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、その第1鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを既存建築物の外壁に固定手段を介して順次固定して既存建築物の外壁と第1鉄骨枠とを一体化するから、既存建築物の外壁から面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を構築する従来技術の耐震補強工法と異なり、制震補強構造物の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物を施設することができる。制震補強工法は、制震補強構造物を施設するための広範囲な用地を別途確保する必要はなく、用地確保が困難な既存建築物にも制震補強構造物を施設することができる。この制震補強工法は、既存建築物の震動を減衰する制震手段を第1鉄骨枠の内側に設置することで、既存建築物の外壁の面方向に並行する震動が第1鉄骨枠の内側に設置された制震手段に吸収され、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を有効に抑制することができる。
【0014】
第1鉄骨枠から既存建築物の外壁の面外方向へ張り出す第2鉄骨枠を既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、第2鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを第1鉄骨枠に順次連結するとともに、制震手段を第2鉄骨枠の内側に設置する既存建築物の制震補強工法は、第2鉄骨枠を順次構築しつつその第2鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを第1鉄骨枠に順次連結するから、既存建築物の外壁から面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を構築する従来技術の耐震補強工法と異なり、制震補強構造物の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物を施設することができる。制震補強工法は、制震補強構造物を施設するための広範囲な用地を別途確保する必要はなく、用地確保が困難な既存建築物にも制震補強構造物を施設することができる。この制震補強工法は、既存建築物の震動を減衰する制震手段を第2鉄骨枠の内側に設置することで、既存建築物の外壁の面内方向と面外方向との震動が第2鉄骨枠の内側に設置された制震手段に吸収され、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を有効に抑制することができる。
【0015】
既存建築物の1階部分に構築される第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部を地中に建て込まれた基礎に連結する制震補強工法は、第1鉄骨枠や第2鉄骨枠が鉄骨柱を介して基礎に支持されるから、震動時にそれら鉄骨枠が不用意に遊動することはなく、震動時にそれら鉄骨枠の内側に設置された制震手段の制震機能が十分に機能し、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0016】
制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかを使用する制震補強工法は、既存建築物に生じた震動を第1鉄骨枠と第2鉄骨枠とに設置されたそれらブレースに吸収させることができ、それらブレースを利用して既存建築物に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0017】
本発明にかかる制震補強構造物によれば、既存建築物の外壁の面方向に並行する複数の第1鉄骨枠と、第1鉄骨枠から既存建築物の外壁の面外方向へ張り出す複数の第2鉄骨枠と、第1鉄骨枠の内側と第2鉄骨枠の内側とに設置された制震手段とのうち、少なくとも第1鉄骨枠と第1鉄骨枠の内側に設置された制震手段とを有し、それら第1鉄骨枠が既存建築物の外壁に固定手段を介して固定されて既存建築物の複数階層と一体になった構造であるから、既存建築物の外壁から面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を構築する従来技術の耐震補強構造と異なり、制震補強構造物の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物を施設することができる。また、それら第2鉄骨枠が第1鉄骨枠に連結されて第1鉄骨枠と一体になった構造である制震補強構造物は、第1鉄骨枠および第1鉄骨枠の内側に設置された制震手段のみを有する制震補強構造物と同様に、制震補強構造物の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物を施設することができる。制震補強構造物は、それを施設するための広範囲な用地を別途確保する必要はなく、用地確保が困難な既存建築物にも施設することができる。この制震補強構造物は、既存建築物の震動を減衰する制震手段が第1鉄骨枠の内側に設置されることで、既存建築物の外壁の面方向に並行する震動が第1鉄骨枠の内側に設置された制震手段に吸収され、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を有効に抑制することができる。また、既存建築物の震動を減衰する制震手段が第2鉄骨枠の内側に設置されることで、既存建築物の外壁の面内方向と面外方向との震動が第2鉄骨枠の内側に設置された制震手段に吸収され、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を有効に抑制することができる。
【0018】
既存建築物の1階部分に構築される第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部が地中に建て込まれた基礎に連結された制震補強構造物は、第1鉄骨枠や第2鉄骨枠が鉄骨柱を介して基礎に支持されるから、震動時にそれら鉄骨枠が不用意に遊動することはなく、震動時にそれら鉄骨枠の内側に設置された制震手段の制震機能が十分に機能し、制震手段を利用して既存建築物に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0019】
制震手段が制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかである制震補強構造物は、既存建築物に生じた震動を第1鉄骨枠と第2鉄骨枠とに設置されたそれらブレースに吸収させることができ、それらブレースを利用して既存建築物に生じた震動を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一例として示す制震補強構造物の正面図。
【図2】図1の制震補強構造物の側面図。
【図3】図1の制震補強構造物の上面図。
【図4】1個の制震補強構造物の拡大斜視図。
【図5】1個の第1鉄骨枠の拡大正面図。
【図6】1個の第2鉄骨枠の拡大正面図。
【図7】制震補強ブレースによる震動減衰機能の説明図。
【図8】制震補強ブレースによる震動減衰機能の説明図。
【図9】制震補強ブレースによる震動減衰機能の説明図。
【図10】制震補強ブレースによる震動減衰機能の説明図。
【図11】他の一例の制震補強ブレースを設置した第1鉄骨枠の正面図。
【図12】他の一例の制震補強ブレースを設置した第2鉄骨枠の正面図。
【図13】他の一例の制震補強ブレースを設置した第1鉄骨枠の正面図。
【図14】他の一例の制震補強ブレースを設置した第2鉄骨枠の正面図。
【図15】他の一例の制震補強ブレースを設置した第1鉄骨枠の正面図。
【図16】他の一例の制震補強ブレースを設置した第2鉄骨枠の正面図。
【図17】鉄骨ブレースを設置した第1および第2鉄骨枠の斜視図。
【図18】鉄骨ブレースを設置した第1および第2鉄骨枠の斜視図。
【図19】鉄骨ブレースを設置した第1および第2鉄骨枠の斜視図。
【図20】一例として示す制震補強工法の施工手順の説明図。
【図21】一例として示す制震補強工法の施工手順の説明図。
【図22】一例として示す制震補強工法の施工手順の説明図。
【図23】図20から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図24】図21から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図25】図22から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図26】図23から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図27】図24から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図28】図25から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図29】図26から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図30】図27から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図31】図28から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図32】図29から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図33】図30から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図34】図31から続く制震補強工法の施工手順の説明図。
【図35】図23から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図。
【図36】図24から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図。
【図37】図25から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
制震補強構造物の一例を示す図1等の添付の図面を参照し、本発明に係る既存建築物の制震補強工法および制震補強構造物の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の制震補強構造物10の側面図であり、図3は、図1の制震補強構造物10の上面図である。図4は、1個の制震補強構造物10の拡大斜視図であり、図5は、1個の第1鉄骨枠14の拡大正面図である。図6は、1個の第2鉄骨枠15の拡大正面図である。図1〜図4では、上下方向を矢印A(図1,2,4のみ)、横方向を矢印B(図1,3,4のみ)で示し、前後方向を矢印C(図2,4のみ)で示す。なお、図5では、繋ぎ鋼材16の図示を省略している。
【0022】
制震補強構造物10は、基礎杭11(新設基礎)と、6階建て集合住宅12(既存建築物)の外壁13の面方向に並行する複数の第1鉄骨枠14と、第1鉄骨枠14から住宅12の外壁13の前後方向前方(面外方向)へ張り出す複数の第2鉄骨枠15と、第1および第2鉄骨枠14,15を結ぶ繋ぎ鋼材16と、制震補強ブレース17とから形成されている。なお、既存建築物として、6階建てRC構造物であってラーメン構造の中層の集合住宅12を例示しているが、既存建築物を例示の住宅12に限定するものではなく、商業ビルや庁舎、官舎、校舎、駅舎等の制震補強の対象となるあらゆる建築物が含まれる。既存建築物の階層や横方向スパンにも特に限定はなく、中層のみならず、低層や高層、超高層であってもよい。さらに、ラーメン構造のみならず、壁式構造や外殻構造、メガストラクチャアであってもよい。
【0023】
基礎杭11(新設基礎)は、住宅12の外壁13から前後方向前方へ所定寸法離間した地中に建て込まれている。それら第1鉄骨枠14は、住宅12の外壁13に沿って上下方向と横方向とへ連なっている。1個の第1鉄骨枠14は、図4,5に示すように、横方向へ所定寸法離間対向して縦方向へ延びる第1および第2鉄骨柱18A,18B(H鋼)と、縦方向へ所定寸法離間対向して横方向へ延びる第1および第2鉄骨梁19A,19B(H鋼)とから作られている。それら第1鉄骨枠14は、集合住宅12の1階から最上階、あるいは1階から途中階に対応して構築され、住宅の1階に構築された1階部分第1鉄骨枠14〜6階に構築された6階部分第1鉄骨枠14から形成されている。
【0024】
鉄骨梁19の横方向中央部には、繋ぎ鋼材16の第1端部を固定するプレート20が取り付けられている。上下方向へ隣り合う第1鉄骨枠14どうしは、鉄骨梁19を共有し、横方向へ隣り合う第1鉄骨枠14どうしは、鉄骨柱18を共有する。具体的に1階部分第1鉄骨枠14と2階部分第1鉄骨枠14とでは、住宅12の1階の天井と2階の床とに並行する鉄骨梁19を共有し、横方向に隣り合う第1鉄骨枠14どうしでは、住宅12の柱に並行する鉄骨柱18を共有している。
【0025】
第1鉄骨枠14の鉄骨柱18および鉄骨梁19には、縦横方向へ延びる複数の鉄筋(図示せず)が配置され、その外周全域にコンクリート21が巻き立てられている。第1鉄骨枠14を形成する鉄骨柱18は、住宅12の外壁13と枠14との間(前後方向)に延びるアンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅12の外壁13(住宅の柱)に固定されている。第1鉄骨枠14を形成する鉄骨梁18は、住宅12の外壁13と枠14との間(前後方向)に延びるアンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅12の外壁13(住宅の梁)に固定されている。
【0026】
アンカーボルト22の一方の端部は、住宅12の外壁13(柱や梁)に形成されたアンカーホール(図示せず)に打ち込まれ、アンカーホールに充填された接着剤によってアンカーホールに固定されている。アンカーボルト22の他方の端部は、鉄骨柱18と鉄骨梁19とに巻き立てられたコンクリート21に打ち込まれ、コンクリート21に固定されている。第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22とコンクリート21とによって住宅12の外壁13(住宅の柱および梁)と一体になっている。
【0027】
なお、図示はしていないが、鉄骨柱18の上下方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨柱18とアンカーボルト22とを連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨柱18とを一体化してもよい。また、鉄骨梁19の横方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨梁19とアンカーボルト22とを連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨梁19とを一体化してもよい。この場合、鉄骨柱18には、あらかじめアンカーボルト挿通孔がその長さ方向へ所定のピッチで形成され、鉄骨梁19には、あらかじめアンカーボルト挿通孔がその長さ方向へ所定のピッチで形成されている。第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と一体化される。
【0028】
第1鉄骨枠14の鉄骨柱18は、鉄筋の配置下にその外周全域がコンクリート21に包被されることで、鉄筋鉄骨コンクリート柱(SRC)になっている。第1鉄骨枠14の鉄骨梁19は、鉄筋の配置下にその外周全域がコンクリート21に包被されることで、鉄筋鉄骨コンクリート梁(SRC)となっている。その結果、第1鉄骨枠14は第1鉄筋鉄骨コンクリート枠となる。なお、第1鉄骨枠14は、集合住宅12の制震補強に有効な個数が設置されていればよく、住宅12のすべての階層に構築する必要はなく、また、横方向に隣接する個数についても特に限定はない。
【0029】
それら第2鉄骨枠15は、住宅12の外壁13に並行して上下方向へ連なるとともに、横方向へ所定寸法離間して並んでいる。それら第2鉄骨枠15は、集合住宅12の1階から最上階、あるいは1階から途中階に対応して構築され、住宅12の1階に構築された1階部分第2鉄骨枠15〜6階に構築された6階部分第2鉄骨枠15から形成されている。
【0030】
1個の第2鉄骨枠15は、図4,6に示すように、前後方向へ所定寸法離間対向して上下方向へ延びる第1および第2鉄骨柱23A,23B(H鋼)と、上下方向へ所定寸法離間対向して前後方向へ延びる第1および第2鉄骨梁24A,24B(H鋼)とから作られている。住宅12の1階に構築された第2鉄骨枠15の第2鉄骨柱23Bの下端部は、地中に建て込まれた基礎杭11に連結されている。第1および第2鉄骨梁24A,24Bは、第1および第2鉄骨柱23A,23Bの間に位置し、第1および第2鉄骨柱23A,23Bに溶接によって連結されている。第2鉄骨枠15は、第1鉄骨枠14と一体になっている。鉄骨柱23Bの上下方向両端部には、繋ぎ鋼材16の第2端部を固定するプレート25が取り付けられている。
【0031】
第1鉄骨枠14と第2鉄骨枠15とは、鉄骨柱18A,18B,23Aを共有し、第1鉄骨枠14の第1および第2鉄骨柱18A,18Bが第2鉄骨枠15の第1鉄骨柱23Aとなる。上下方向へ隣り合う第2鉄骨枠15どうしは、鉄骨梁24を共有する。具体的に1階部分第2鉄骨枠15と2階部分第2鉄骨枠15とでは、住宅12の1階の天井と2階の床とに並行する鉄骨梁24を共有している。第2鉄骨枠15は、集合住宅12の制震補強に有効な個数が設置されていればよく、住宅12のすべての階層に構築する必要はなく、また、横方向に隣接する個数についても特に限定はない。
【0032】
なお、集合住宅12の立地条件や震動耐力によっては、第2鉄骨枠15を構築する必要が全くない場合があり、制震補強構造物10において、第1鉄骨枠14のみを構築し、第2鉄骨枠15を構築しない場合もある。この場合、繋ぎ鋼材16の取り付けも行われない。
【0033】
繋ぎ鋼材16は、震動時に第2鉄骨枠15の変形(ねじれや座屈)を阻止する機能を有する。繋ぎ鋼材16は、その断面形状が円形の鋼材であり、第1鉄骨枠14の鉄骨梁19の中央部と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23Bとの間に設置され、斜め方向へ延びている。1個の鉄骨枠14には、図4に示すように、一対(2本)の繋ぎ鋼材16が取り付けられている。繋ぎ鋼材16の鉄骨梁19側に位置する第1端部には、鉄骨梁19に固定する固定プレート26が取り付けられ、繋ぎ鋼材16の鉄骨柱23B側に位置する第2端部には、鉄骨柱23Bに固定する固定プレート27が取り付けられている。繋ぎ鋼材16の第1端部は、固定プレート26を介して鉄骨梁19のプレート20に固定されている。繋ぎ鋼材16の第2端部は、固定プレート27を介して鉄骨柱23Bのプレート25に固定されている。それらプレート20,26どうしおよびそれらプレート25,27どうしは、ボルトおよびナット(図示せず)によって連結されている。
【0034】
制震補強ブレース17は、第1鉄骨枠14の内側と第2鉄骨枠15の内側とに設置されている。第1鉄骨枠14では、一対の制震補強ブレース17が横方向へ対称形に設置されている。第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17の一方は、図5に示すように、第1鉄骨柱18Aと第1鉄骨梁19Aとの交差部28または交差部28の近傍(鉄骨柱18Aと鉄骨梁19Aとのいずれか、または、交差部28を含む鉄骨柱18Aまたは鉄骨梁19A)から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め上方へ延びる第1アーム29と、第2鉄骨梁19Bの中央部から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め下方に延びる第2アーム30と、第1鉄骨柱18Aと第2鉄骨梁19Bとの交差部31または交差部31の近傍(鉄骨柱18Aと鉄骨梁19Bとのいずれか、または、交差部31を含む鉄骨柱18Aまたは鉄骨梁19B)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー32(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。
【0035】
第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17の他方は、第2鉄骨柱18Bと第1鉄骨梁19Aとの交差部33または交差部33の近傍(鉄骨柱18Bと鉄骨梁19Aとのいずれか、または、交差部33を含む鉄骨柱18Bまたは鉄骨梁19A)から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め上方へ延びる第1アーム34と、第2鉄骨梁19Bの中央部から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め下方に延びる第2アーム35と、第2鉄骨柱18Bと第2鉄骨梁19Bとの交差部36または交差部36の近傍(鉄骨柱18Bと鉄骨梁19Bとのいずれか、または、交差部36を含む鉄骨柱18Bまたは鉄骨梁19B)から斜め下方へ延びる油圧ダンパー37(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。
【0036】
第1アーム29,34と第2アーム30,35とは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム29,34は、交差部28,33または交差部28,33の近傍に固定されたガセットプレート38,39に回転支承40(ピン)を介して回転可能に取り付けられた外端部41と、回転ヒンジ42(連結部材)に回転可能に連結された内端部43と、それら端部41,43の間に延びる円柱状の中間部44とを有する。ガセットプレート38,39は、鉄骨柱18A,18Bや鉄骨梁19Aに固定(溶接)されている。
【0037】
第2アーム30,35は、第2鉄骨梁19Bの中央部に固定されたガセットプレート45に回転支承46(ピン)を介して回転可能に取り付けられた外端部47と、回転ヒンジ42に回転可能に連結された内端部48と、それら端部47,48の間に延びる円柱状の中間部49とを有する。ガセットプレート45は、鉄骨梁19Bに固定(溶接)されている。第1アーム29,34と第2アーム30,35とは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0038】
油圧ダンパー32,37は、シリンダ50およびロッド51から形成されている。シリンダ50の端部は、交差部31,36または交差部31,36の近傍に固定されたガセットプレート52,53に回転支承54(ピン)を介して回転可能に取り付けられている。ロッド51の端部は、回転ヒンジ42に回転可能に連結されている。ガセットプレート52,53は、鉄骨柱18A,18Bや鉄骨梁19Bに固定(溶接)されている。油圧ダンパー37は、第1および第2アーム29,34,30,35(回転ヒンジ42)の動作に追従しつつ、ロッド51の伸縮によって第1および第2アーム29,34,30,35の変形(回転ヒンジ42の回転変位量)を吸収し、第1鉄骨枠14の震動を減衰する。
【0039】
第2鉄骨枠15に設置された制震補強ブレース17は、図6に示すように、第2鉄骨柱23Bと第1鉄骨梁24Aとの交差部55または交差部55の近傍(鉄骨柱23Bと鉄骨梁24Aとのいずれか、または、交差部55を含む鉄骨柱23Bまたは鉄骨梁24A)から第2鉄骨枠15の中央に向かって斜め上方へ延びる第1アーム56と、第1鉄骨柱23Aと第2鉄骨梁24Bとの交差部57または交差部57の近傍(鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Bとのいずれか、または、交差部57を含む鉄骨柱23Aまたは鉄骨梁24B)から第2鉄骨枠15の中央に向かって斜め下方に延びる第2アーム58と、第1鉄骨柱23Aと第1鉄骨梁24Aとの交差部59または交差部59の近傍(鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとのいずれか、または、交差部59を含む鉄骨柱23Aまたは鉄骨梁24A)から斜め上方へ延びる油圧ダンパー60(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。
【0040】
第1アーム56と第2アーム58とは、それらの長さ寸法が同一であってもよく、それらの長さ寸法が異なっていてもよい。第1アーム56は、交差部55または交差部55の近傍に固定されたガセットプレート61に回転支承62(ピン)を介して回転可能に取り付けられた外端部63と、回転ヒンジ64(連結部材)に回転可能に連結された内端部65と、それら端部63,65の間に延びる円柱状の中間部66とを有する。ガセットプレート61は、鉄骨柱23Bや鉄骨梁24Aに固定(溶接)されている。
【0041】
第2アーム58は、交差部57または交差部57の近傍に固定されたガセットプレート67に回転支承68(ピン)を介して回転可能に取り付けられた外端部69と、回転ヒンジ64に回転可能に連結された内端部70と、それら端部69,70の間に延びる円柱状の中間部71とを有する。ガセットプレート67は、鉄骨柱23Aや鉄骨梁24Bに固定(溶接)されている。第1アーム56と第2アーム58とは、所定の角度で連結されてトグル機構を構成している。
【0042】
油圧ダンパー60は、シリンダ72およびロッド73から形成されている。シリンダ72の端部は、交差部59または交差部59の近傍に固定されたガセットプレート74に回転支承75(ピン)を介して回転可能に取り付けられている。ロッド73の端部は、回転ヒンジ64に回転可能に連結されている。ガセットプレート74は、鉄骨柱23Aや鉄骨梁24Aに固定(溶接)されている。油圧ダンパー60は、第1および第2アーム56,58(回転ヒンジ64)の動作に追従しつつ、ロッド73の伸縮によって第1および第2アーム56,58の変形(回転ヒンジ64の回転変位量)を吸収し、第2鉄骨枠15の震動を減衰する。
【0043】
図7,8は、第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17による震動減衰機能の説明図である。図7,8では、住宅12の図示を省略し、第1鉄骨枠14(第1鉄筋鉄骨コンクリート枠)とそれに設置された制震補強ブレース17のみを拡大して示す。図7,8に基づいて、制震補強ブレース17による震動減衰の原理を説明すると、以下のとおりである。なお、それら各制震補強ブレース17が互いに協働して平均的な増幅倍率を発生するようにダンパー32,37の伸長倍率が設定されている(略線形的に増幅するように設定されている)。
【0044】
地震等によって集合住宅12に震動が生じ、その震動が住宅12から第1鉄骨枠14に伝わる。住宅12が横方向左方へ水平変形したとすると、図7に矢印X1で示すように、第1鉄骨枠14も横方向左方へ水平変形する。ただし、第1および第2鉄骨柱18A,18Bの伸縮を無視して第1および第2鉄骨梁19A,19Bが水平変形したものとする。
【0045】
第1鉄骨枠14が横方向左方へ水平変形すると、第1鉄骨枠14の内側に設置された制震補強ブレース17の第1アーム29,34および第2アーム30,35が回転支承40,54を中心として回転運動を行う。それらアーム29,30,34,35が回転運動すると、回転支承40,54の水平変位量によって回転ヒンジ42の回転変位量が増幅されて大きくなる。このように、回転支承40,54の小さな変位量が回転ヒンジ42の大きな回転変位量に変換され、小さい変位量×大きな力=大きな変位量×小さな力という関係が成立する。ゆえに、油圧ダンパー32,37のロッド51が大きく伸縮して第1鉄骨枠14の震動が熱に変換され、それによって第1鉄骨枠14の震動が減衰されるとともに、それと同時に第1鉄骨枠14を介して住宅12の震動が抑制される。
【0046】
次に、住宅12が横方向右方へ水平変形したとすると、図8に矢印X2で示すように、第1鉄骨枠14も横方向右方へ水平変形する。ただし、第1および第2鉄骨柱18A,18Bの伸縮を無視して第1および第2鉄骨梁19A,19Bが水平変形したものとする。第1鉄骨枠14が横方向右方へ水平変形すると、第1鉄骨枠14の内側に設置された制震補強ブレース17の第1アーム29,34および第2アーム30,35が回転支承40,54を中心として回転運動を行う。それらアーム29,30,34,35が回転運動すると、回転支承40,54の水平変位量によって回転ヒンジ42の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー32,37のロッド51が大きく伸縮して第1鉄骨枠14の震動が熱に変換され、それによって第1鉄骨枠14の震動が減衰されるとともに、それと同時に第1鉄骨枠14を介して住宅12の震動が抑制される。このように、油圧ダンパー32,37のロッド51の伸縮によって住宅12に発生した横方向の震動が効果的に低減される。
【0047】
図9,10は、第2鉄骨枠15に設置された制震補強ブレース17による震動減衰機能の説明図である。図9,10では、住宅12の図示を省略し、第2鉄骨枠15(第2鉄筋鉄骨コンクリート枠)とそれに設置された制震補強ブレース17のみを拡大して示す。図9,10に基づいて、制震補強ブレース17による震動減衰の原理を説明すると、以下のとおりである。地震等によって集合住宅12に震動が生じ、その震動が住宅12から第2鉄骨枠15に伝わる。住宅12が前後方向前方へ水平変形したとすると、図9に矢印Y1で示すように、第2鉄骨枠15も前後方向前方へ水平変形する。ただし、第1および第2鉄骨柱23A,23Bの伸縮を無視して第1および第2鉄骨梁24A,24Bが水平変形したものとする。
【0048】
第2鉄骨枠15が前後方向前方へ水平変形すると、第2鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17の第1アーム56および第2アーム58が回転支承62,68を中心として回転運動を行う。それらアーム56,58が回転運動すると、回転支承62,68の水平変位量によって回転ヒンジ64の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー60のロッド73が大きく伸長して第2鉄骨枠15の震動が熱に変換され、それによって第2鉄骨枠15の震動が減衰されるとともに、それと同時に第2鉄骨枠15を介して住宅12の震動が抑制される。
【0049】
次に、住宅12が前後方向後方へ水平変形したとすると、図10に矢印Y2で示すように、第2鉄骨枠15も前後方向後方へ水平変形する。ただし、第1および第2鉄骨柱23A,23Bの伸縮を無視して第1および第2鉄骨梁24A,24Bが水平変形したものとする。第2鉄骨枠15が前後方向後方へ水平変形すると、第2鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17の第1アーム56および第2アーム58が回転支承62,68を中心として回転運動を行う。それらアーム56,58が回転運動すると、回転支承62,68の水平変位量によって回転ヒンジ64の回転変位量が増幅されて大きくなり、油圧ダンパー60のロッド73が大きく収縮して第2鉄骨枠15の震動が熱に変換され、それによって第2鉄骨枠15の震動が減衰されるとともに、それと同時に第2鉄骨枠15を介して住宅12の震動が抑制される。このように、油圧ダンパー60のロッド73の伸縮によって住宅12に発生した前後方向の震動が効果的に低減される。
【0050】
図11は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第1鉄骨枠14の正面図であり、図12は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第2鉄骨枠15の正面図である。なお、第1および第2鉄骨枠14,15は図5,6に示すそれらと同一であるから、図5,6の第1および第2鉄骨枠14,15と同一の符号を付すことで、それらの説明は省略する。第1鉄骨枠14(第1鉄筋鉄骨コンクリート枠)では、一対の制震補強ブレース17が横方向へ対称形に設置されている。
【0051】
第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17は、図11に示すように、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Bとの交差部31,36から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め下方へ延びる第1ブレース76と、鉄骨梁19Bの中央部から第1鉄骨枠14の中央に向かって斜め下方に延びる第2ブレース77と、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとの交差部28,33または交差部28,33の近傍(鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとのいずれか、または、交差部28,33を含む鉄骨柱18A,18Bまたは鉄骨梁19A)から水平方向(横方向)へ延びる油圧ダンパー78(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。第1および第2ブレース76,77の先端部79とダンパー78の先端部80とは、ピン81(回転支承)を介して回転可能に連結されている。第1ブレース76の基端部82は、交差部31,36に連結され、第2ブレース77の基端部83は、鉄骨梁19Bの中央部に連結されている。ダンパー78の基端部84は、交差部28,33または交差部28,33近傍に固定(溶接)されたガセットプレート85にピン86(回転支承)を介して回転可能に取り付けられている。ダンパー78は、シリンダ87およびロッド88から形成されている。
【0052】
第2鉄骨枠15に設置された制震補強ブレース17は、図12に示すように、鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Bとの交差部57から第2鉄骨枠15の中央に向かって斜め下方へ延びる第1ブレース89と、鉄骨柱23Bと鉄骨梁24Aとの交差部90から第2鉄骨枠15の中央に向かって斜め下方へ延びる第2ブレース91と、鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとの交差部59または交差部59の近傍(鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとのいずれか、または、交差部59を含む鉄骨柱23Aまたは鉄骨梁24A)から水平方向(横方向)へ延びる油圧ダンパー92(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。第1および第2ブレース89,91の先端部93とダンパー92の先端部94とは、ピン95(回転支承)を介して回転可能に連結されている。第1ブレース89の基端部96は、交差部57に連結され、第2ブレース91の基端部97は、交差部90に連結されている。ダンパー92の基端部98は、交差部59または交差部59近傍に固定されたガセットプレート99にピン100(回転支承)を介して回転可能に取り付けられている。ダンパー92は、シリンダ101およびロッド102から形成されている。
【0053】
図11,12の制震補強ブレース17は、第1鉄骨枠14が矢印X1,X2で示す横方向へ水平変形し(図7,8参照)、第2鉄骨枠15が矢印Y1,Y2で示す前後方向へ水平変形すると(図9,10参照)、第1および第2ブレース76,77,89,91がピン81,94を中心として回転運動を行う。それらブレース76,77,89,91が回転運動すると、ピン81,94の回転変位量によってダンパー78,92のロッド88,102が水平方向へ伸縮して第1および第2鉄骨枠14,15の震動が熱に変換され、それによって第1および第2鉄骨枠14,15の震動が減衰される。図11,12の制震補強ブレース17を取り付けた場合、地震等によって集合住宅12から第1および第2鉄骨枠14,15に伝わった震動が制震補強ブレース17によって減衰され、それにともなって住宅12に生じた震動が抑制される。
【0054】
図13は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第1鉄骨枠14の正面図であり、図14は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第2鉄骨枠15の正面図である。なお、第1および第2鉄骨枠14,15は図5,6に示すそれらと同一であるから、図5,6の第1および第2鉄骨枠14,15と同一の符号を付すことで、それらの説明は省略する。第1鉄骨枠14(第1鉄筋鉄骨コンクリート枠)では、一対の制震補強ブレース17が横方向へ対称形に設置されている。
【0055】
第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17には、図13に示すように、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとの交差部28,33または交差部28,33の近傍(鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとのいずれか、または、交差部28,33を含む鉄骨柱18A,18Bまたは鉄骨梁19A)から鉄骨梁19Bの中央部に向かって斜め方向へ延びる油圧ダンパー103(震動エネルギー吸収ダンパー)が利用されている。ダンパー103の一方の端部104は、交差部28,33または交差部28,33近傍に固定されたガセットプレート105にピン106(回転支承)を介して回転可能に連結されている。ダンパー103の他方の端部107は、鉄骨梁19Bの中央部に固定されたガセットプレート108にピン109(回転支承)を介して回転可能に連結されている。ダンパー103は、シリンダ110およびロッド111から形成されている。
【0056】
第2鉄骨枠15に設置された制震補強ブレース17は、図14に示すように、鉄骨柱23Bと鉄骨梁24Aとの交差部55または交差部55の近傍(鉄骨柱23Bと鉄骨梁24Aとのいずれか、または、交差部55を含む鉄骨柱23Bまたは鉄骨梁24A)から鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Bとの交差部57または交差部57の近傍(鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Bとのいずれか、または、交差部57を含む鉄骨柱23Aまたは鉄骨梁24B)に向かって斜め方向へ延びる油圧ダンパー112が利用されている。ダンパー112の一方の端部113は、交差部55または交差部55近傍に固定されたガセットプレート114にピン115(回転支承)を介して回転可能に連結され、ダンパー112の他方の端部116は、交差部57または交差部57近傍に固定されたガセットプレート117にピン118(回転支承)を介して回転可能に連結されている。ダンパー112は、シリンダ119およびロッド120から形成されている。
【0057】
図13,14の制震補強ブレース17は、第1鉄骨枠14が矢印X1,X2で示す横方向へ水平変形し(図7,8参照)、第2鉄骨枠15が矢印Y1,Y2で示す前後方向へ水平変形すると(図9,10参照)、ダンパー103,112がピン106,109,115,118を中心として回転運動を行う。ダンパー103,112が回転運動すると、ピン106,109,115,118の回転変位量によってダンパー103,112のロッド111,120が伸縮して第1および第2鉄骨枠14,15の震動が熱に変換され、それによって第1および第2鉄骨枠14,15の震動が減衰される。図13,14の制震補強ブレース17を取り付けた場合、地震等によって集合住宅12から第1および第2鉄骨枠14,15に伝わった震動が制震補強ブレース17によって減衰され、それにともなって住宅12に生じた震動が抑制される。
【0058】
図15は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第1鉄骨枠14の正面図であり、図16は、他の一例の制震補強ブレース17を設置した第2鉄骨枠15の正面図である。なお、第1および第2鉄骨枠14,15は図5,6に示すそれらと同一であるから、図5,6の第1および第2鉄骨枠14,15と同一の符号を付すことで、それらの説明は省略する。第1鉄骨枠14(第1鉄筋鉄骨コンクリート枠)や第2鉄骨枠15(第2鉄筋鉄骨コンクリート枠)では、一対の制震補強ブレース17が横方向へ対称形に設置されている。
【0059】
第1鉄骨枠14に設置された制震補強ブレース17は、図15に示すように、鉄骨柱18Aと鉄骨梁19Aとの交差部28から鉄骨梁19Bの中央部に向かって斜め上方へ延びる第1ブレース121と、鉄骨柱18Bと鉄骨梁19Aとの交差部33から鉄骨梁19Bの中央部に向かって斜め上方へ延びる第2ブレース122と、鉄骨梁19Bの中央部に取り付けられた弾性変形可能な複数の弾性ダンパー123(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。第1および第2ブレース121,122の下端部124は、交差部28,33に固定(溶接)されている。第1および第2ブレース121,122は、それらの上端部125が互いに連結されている。それら弾性ダンパー123は、鉄骨梁19Bの中央部とそれらブレース121,122の上端部125との間に配置され、鉄骨梁19Bの中央部と上端部125とを連結する。
【0060】
第2鉄骨枠15に設置された制震補強ブレース17には、図16に示すように、鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとの交差部59から鉄骨梁24Bの中央部に向かって斜め上方へ延びる第1ブレース126と、鉄骨柱23Bと鉄骨梁24Aとの交差部55から鉄骨梁24Bの中央部に向かって斜め上方へ延びる第2ブレース127と、鉄骨梁24Bの中央部に取り付けられた弾性変形可能な複数の弾性ダンパー128(震動エネルギー吸収ダンパー)とから形成されている。第1および第2ブレース126,127の下端部129は、交差部55,59に固定(溶接)されている。第1および第2ブレース126,127は、それらの上端部130が互いに連結されている。それら弾性ダンパー128は、鉄骨梁24Bの中央部とそれらブレース126,127の上端部130との間に配置され、鉄骨梁24Bの中央部と上端部130とを連結する。
【0061】
図15,16の制震補強ブレース17は、第1鉄骨枠14が矢印X1,X2で示す横方向へ水平変形し(図7,8参照)、第2鉄骨枠15が矢印Y1,Y2で示す前後方向へ水平変形すると(図9,10参照)、第1および第2鉄骨枠14,15の水平変位量に応じて弾性ダンパー123,128が弾性変形し、第1および第2鉄骨枠14,15の震動が熱に変換され、それによって第1および第2鉄骨枠14,15の震動が減衰される。図15,16の制震補強ブレース17を取り付けた場合、地震等によって集合住宅12から第1および第2鉄骨枠14,15に伝わった震動が制震補強ブレース17によって減衰され、それにともなって住宅12に生じた震動が抑制される。
【0062】
図17〜図19は、一例として示す鉄骨ブレース131を設置した第1および第2鉄骨枠14,15の斜視図である。図17〜図19では、一方の第2鉄骨枠15の図示を省略している。なお、第1および第2鉄骨枠14,15は図5,6に示すそれらと同一であるから、図5,6の第1および第2鉄骨枠14,15と同一の符号を付すことで、それらの説明は省略する。
【0063】
図17に示す第1および第2鉄骨枠14,15には、互いに交差して斜め方向へ延びる一対の鉄骨ブレース131が設置されている。それら鉄骨ブレース131は、それらの交差部でピン132を介して回転可能に連結されている。第1鉄骨枠14に設置された鉄骨ブレース131は、その上端部が鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Bとの交差部31,36に連結(溶接)され、その下端部が鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとの交差部28,33に連結(溶接)されている。第2鉄骨枠15に設置された鉄骨ブレース131は、その上端部が鉄骨柱23A,23Bと鉄骨梁24Bとの交差部57,90に連結(溶接)され、その下端部が鉄骨柱23A,23Bと鉄骨梁24Aとの交差部55,59に連結(溶接)されている。
【0064】
図18に示す第1および第2鉄骨枠14,15には、互いに対向して斜め方向へ延びる一対の鉄骨ブレース131が設置されている。第1鉄骨枠14に設置された鉄骨ブレース131は、その下端部が鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとの交差部28,33に連結(溶接)され、その上端部が鉄骨梁19Bの中央部に連結(溶接)されている。第2鉄骨枠15に設置された鉄骨ブレース131は、その下端部が鉄骨柱23A,23Bと鉄骨梁24Aとの交差部55,59に連結(溶接)され、その上端部が鉄骨梁24Bの中央部に連結(溶接)されている。
【0065】
図19に示す第1および第2鉄骨枠14,15には、互いに対向配置された一対の鉄骨ブレース131が設置されている。第1鉄骨枠14に設置された鉄骨ブレース131は、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Aとの交差部28,33から斜め上方へ延びる第1ブレース131Aと、鉄骨梁19Bの中央部から斜め下方へ延びる第2ブレース131Bと、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Bとの交差部31,36から斜め下方へ延びる第3ブレース131Cとから形成されている。第1ブレース131Aの下端部は交差部28,33に連結(溶接)され、第2ブレース131Bの上端部は鉄骨梁19Bの中央部に連接(溶接)され、第3ブレース131Cの上端部は交差部31,36に連結(溶接)されている。第1〜第3ブレース131A〜131Cは、それらの自由端部が重なり合った状態で連結(溶接)されている。
【0066】
第2鉄骨枠15に設置された鉄骨ブレース131は、鉄骨柱23A,23Bと鉄骨梁24Aとの交差部55,59から斜め上方へ延びる第1ブレース131Aと、鉄骨梁24Bの中央部から斜め下方へ延びる第2ブレース131Bと、鉄骨柱23A,23Bと鉄骨梁24Bとの交差部57,90から斜め下方へ延びる第3ブレース131Cとから形成されている。第1ブレース131Aの下端部は交差部55,59に連結(溶接)され、第2ブレース131Bの上端部は鉄骨梁24Bの中央部に連接(溶接)され、第3ブレース131Cの上端部は交差部57,90に連結(溶接)されている。第1〜第3ブレース131A〜131Cは、それらの自由端部が重なり合った状態で連結(溶接)されている。図17〜図19の鉄骨ブレース131を取り付けた場合、地震等によって集合住宅12から第1および第2鉄骨枠14,15に伝わった震動が鉄骨ブレース131によって低減され、それにともなって住宅12に生じた震動が抑制される。
【0067】
それら図示の制震補強構造物10は、基礎杭11と、集合住宅12(既存建築物)の外壁13の面方向に並行する複数の第1鉄骨枠14と、第1鉄骨枠14から住宅12の外壁13の面外方向へ張り出す複数の第2鉄骨枠15と、繋ぎ鋼材16と、第1鉄骨枠14の内側と第2鉄骨枠15の内側とに設置された制震補強ブレース17または鉄骨ブレース131とから形成され、それら第1鉄骨枠14が住宅12の外壁13にアンカーボルト22(固定手段)とコンクリート21(固定手段)とを介して固定されて住宅12の複数階層と一体になり、それら第2鉄骨枠15が第1鉄骨枠14に連結されて第1鉄骨枠14と一体になった構造であるから、住宅12の外壁13から面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を構築する従来技術の耐震補強構造と異なり、制震補強構造物10の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物10を施設することができる。
【0068】
制震補強構造物10は、それを施設するための広範囲な用地を別途確保する必要はなく、用地確保が困難な集合住宅12にも施設することができる。この制震補強構造物10は、住宅12に生じた震動を減衰する制震補強ブレース17(制震手段)または震動を低減する鉄骨ブレース131(制震手段)が第1鉄骨枠14の内側と第2鉄骨枠15の内側とに設置されることで、住宅12の外壁13の面方向に並行する震動が第1鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131に吸収され、住宅12の外壁13の面内方向と面外方向との震動が第2鉄骨枠14の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131に吸収されるから、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して住宅12に生じた震動を有効に抑制することができる。
【0069】
制震補強構造物10は、集合住宅12の1階部分に構築される第2鉄骨枠15の鉄骨柱23の下端部が地中に建て込まれた基礎杭11に連結され、第1鉄骨枠14や第2鉄骨枠15が鉄骨柱23を介して基礎杭11に支持されるから、震動時にそれら鉄骨枠14,15が不用意に遊動することはなく、震動時にそれら鉄骨枠14,15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能が十分に機能し、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して住宅12に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0070】
制震補強構造物10は、震動時における第2鉄骨枠15の変形(ねじれや座屈)を防止する一対の繋ぎ鋼材16が第1鉄骨枠14の鉄骨梁19と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23との間に設置され、震動時の第2鉄骨枠15の変形による制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能の低下を防ぐことができるから、震動時に第2鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能が十分に機能し、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して集合住宅12に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0071】
図20〜図22は、一例として示す制震補強工法の施工手順の説明図である。図20では集合住宅12を正面から示し、図21では住宅12を上面から示すとともに、図22は住宅12を側面から示す。それら図では、上下方向を矢印A(図20,21のみ)、横方向を矢印B(図20,22のみ)で示し、前後方向を矢印C(図21のみ)で示す。制震補強工法の説明では、第1鉄骨枠14の内側と第2鉄骨枠15の内側とに設置された制震補強ブレース17として、第1アーム29,34と第2アーム30,35とが所定の角度で連結された図4〜図6に示すトグル機構を例として説明する。なお、制震補強ブレース17としては、トグル機構に替えて図11〜図16に示すブレース17を使用することもできる。また、制震補強ブレース17に替えて図17〜図19に示す鉄骨ブレース131を使用することもできる。制震補強工法によって制震補強構造物10が施設された集合住宅12の完成図は図1〜図3に図示のとおりである。
【0072】
この制震補強工法では、図20〜図22に示すように、集合住宅12の外壁13から前後方向前方へ所定距離離間した地面に複数の基礎杭11(新設基礎)を建て込む。基礎杭11は、住宅12の外壁13に沿って横方向へ所定距離離間して並ぶ。住宅12の外壁13に上下方向と横方向とへ所定間隔で複数のアンカーホール(図示せず)を開け、そのアンカーホールにアンカーボルト22を打設するとともに、横方向へ所定距離離間対向して上下方向へ延びる複数本の鉄骨柱18(H鋼)を住宅12の外壁13に沿って設置する。アンカーボルト22は、住宅12の外壁13のうちの鉄骨柱18の設置箇所に対向する位置と後記する鉄骨梁19の設置箇所に対向する位置とに取り付けられる。アンカーボルト22は、アンカーホールに充填された接着剤によってアンカーホールに固定され、上下方向と横方向とへ所定間隔で並ぶ。
【0073】
第1および第2アーム29,34,30,35や油圧ダンパー32,37の端部を取り付けるガセットプレートを鉄骨柱18の上下方向へ所定寸法離間した位置に固定(溶接)する。図示はしていないが、上下方向と横方向とへ延びる複数本の鉄筋をそれら鉄骨柱18に配筋する。なお、鉄骨柱18は、住宅12の2階部分までの長さである。鉄骨柱18の長さは住宅12の2階部分に限定されず、鉄骨柱18は最小で住宅12の1階部分までの長さのそれを使用することができ、最大で住宅12の4階部分までの長さのそれを使用することができる。
【0074】
なお、鉄骨柱18(H鋼)を設置した後、図示はしていないが、鉄骨柱18の上下方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨柱18とアンカーボルト22と連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨柱18とを一体化してもよい。この場合、鉄骨柱18には、あらかじめアンカーボルト挿通孔がその長さ方向へ所定のピッチで形成されている。
【0075】
図23は、図20から続く制震補強工法の施工手順の説明図であり、図24は、図21から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。図25は、図22から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。基礎杭11を建て込み、住宅12の外壁13に沿ってそれら鉄骨柱18を設置した後、図23〜図25に示すように、住宅12の1階部分の床の位置、住宅12の1階部分の天井(2階部分の床)の位置、住宅12の2階部分の天井の位置(3階部分の床)に、上下方向へ所定距離離間対向して横方向へ延びる3本の鉄骨梁19を架け渡し、鉄骨柱18に鉄骨梁19を連結し、住宅12の1階部分および2階部分に対応する第1鉄骨枠14を構築する。上下方向と横方向とへ延びる複数本の鉄筋(図示せず)をそれら鉄骨梁19に配筋するとともに、後記する繋ぎ鋼材16の第1端部を固定するプレート20を鉄骨梁19の横方向中央部に接合(溶接)する。
【0076】
第1鉄骨枠14から前後方向前方へ所定距離離間した位置(基礎杭11と同位置)に、横方向へ所定距離離間対向して上下方向へ延びる複数本の鉄骨柱23を設置しつつ、それら鉄骨柱23の下端部を基礎杭11に連結する。繋ぎ鋼材16の第2端部を固定するプレートを鉄骨柱23の上下方向へ所定寸法離間した位置に接合(溶接)する。次に、横方向へ所定距離離間対向して前後方向へ延びる複数本の鉄骨梁24を鉄骨柱23(23A)と鉄骨柱23(23B)との間に設置し、それら鉄骨梁24を鉄骨柱23に連結し、住宅12の1階部分および2階部分に対応する第2鉄骨枠15を構築する。それら第2鉄骨枠15は、第1鉄骨枠14に連結されることで枠14と一体になる。
【0077】
住宅12の1階部分および2階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築した後、第1鉄骨枠14の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム29,30,34,35を所定の角度で取り付け、第2鉄骨枠15の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム56,58を所定の角度で取り付ける。
【0078】
住宅12の1階部分および2階部分の第1鉄骨枠14では、鉄骨柱18と鉄骨梁19との交差部28,33または交差部23,33の近傍(鉄骨柱18と鉄骨梁19とのいずれか、または、交差部28,33を含む鉄骨柱18または鉄骨梁19)に固定されたガセットプレート38,39に回転支承40(ピン)を介して第1アーム29,34の外端部41を回転可能に取り付けるとともに、鉄骨梁19の中央部に固定されたガセットプレート45に回転支承46(ピン)を介して第2アーム30,35の外端部47を回転可能に取り付け、第1および第2アーム29,30,34,35の内端部43,48を回転ヒンジ42(連結部材)に回転可能に連結する(図4,5参照)。
【0079】
住宅12の1階部分および2階部分の第2鉄骨枠15では、鉄骨柱23と鉄骨梁24との交差部55または交差部55の近傍(鉄骨柱23と鉄骨梁24とのいずれか、または、交差部55を含む鉄骨柱23または鉄骨梁24)に固定されたガセットプレート61に回転支承62(ピン)を介して第1アーム56の外端部63を回転可能に取り付けるとともに、鉄骨柱23と鉄骨梁24との交差部57または交差部57の近傍(鉄骨柱23と鉄骨梁24とのいずれか、または、交差部57を含む鉄骨柱23または鉄骨梁24)に固定されたガセットプレート67に回転支承68(ピン)を介して第2アーム58の外端部69を回転可能に取り付け、第1および第2アーム56,58の内端部65,70を回転ヒンジ64(連結部材)に回転可能に連結する(図4,6参照)。
【0080】
住宅12の1階部分および2階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築し、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に第1および第2アーム29,30,34,35,56,58を取り付けた後、横方向へ所定距離離間対向して上下方向へ延びる複数本の鉄骨柱18(H鋼)を既設の第1鉄骨枠15の鉄骨柱18の上端部に配置し(継ぎ足し)、鉄骨柱18の上端部と鉄骨柱18の下端部とを連結する。上下方向と横方向とへ延びる複数本の鉄筋(図示せず)を継ぎ足した鉄骨柱18に配筋するとともに、鉄骨柱18の上下方向へ所定寸法離間した位置にガセットプレートを接合(溶接)する。継ぎ足された鉄骨柱18は住宅12の2階部分から6階部分までの長さ(住宅12の4階部分の長さ)であり、端に位置する柱18は住宅12の2階部分から4階部分までの長さ(住宅12の2階部分の長さ)である。
【0081】
なお、鉄骨梁19(H鋼)を架け渡した後、図示はしていないが、鉄骨梁19の横方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨梁19とアンカーボルト22とを連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨梁19とを一体化してもよい。この場合、鉄骨梁19には、あらかじめアンカーボルト挿通孔がその長さ方向へ所定のピッチで形成されている。住宅12の1階部分および2階部分の第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と一体化される。また、鉄骨柱18を継ぎ足した後、その鉄骨柱18の上下方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨柱18とアンカーボルト22と連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨柱18とを一体化してもよい。
【0082】
図26は、図23から続く制震補強工法の施工手順の説明図であり、図27は、図24から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。図28は、図25から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。鉄骨柱18を継ぎ足した後、住宅12の3階部分の天井(4階部分の床)の位置、住宅12の4階部分の天井(5階部分の床)の位置、住宅12の5階部分の天井(6階部分の床)の位置、住宅12の6階部分の天井の位置に、上下方向へ所定距離離間対向して横方向へ延びる4本の鉄骨梁19(H鋼)を架け渡し、鉄骨柱18に鉄骨梁19を連結し、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14を構築する。上下方向と横方向とへ延びる複数本の鉄筋(図示せず)をそれら鉄骨梁19に配筋するとともに、繋ぎ鋼材16の第1端部を固定するプレート20を鉄骨梁19の横方向中央部に接合(溶接)する。
【0083】
第1鉄骨枠14から前後方向前方へ所定距離離間した位置(基礎杭11と同位置)であって第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23B)の上端部に、横方向へ所定距離離間対向して上下方向へ延びる複数本の鉄骨柱23(H鋼)を配置し(継ぎ足し)、鉄骨柱23の上端部と継ぎ足した鉄骨柱23の下端部とを連結する。繋ぎ鋼材16の第2端部を固定するプレートを鉄骨柱23の上下方向へ所定寸法離間した位置に接合(溶接)する。継ぎ足された鉄骨柱23は住宅12の4階部分までの長さであり、端に位置する柱23は住宅12の2階部分までの長さである。横方向へ所定距離離間対向して前後方向へ延びる複数本の鉄骨梁24を鉄骨柱23(23A)と鉄骨柱23(23B)との間に設置し、それら鉄骨梁24を鉄骨柱23に連結し、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第2鉄骨枠15を構築する。それら第2鉄骨枠15は、第1鉄骨枠14に連結されることで枠14と一体になる。
【0084】
住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築した後、第1鉄骨枠14の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム29,30,34,35を所定の角度で取り付け、第2鉄骨枠15の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム56,58を所定の角度で取り付ける。
【0085】
住宅12の3階部分〜6階部分の第1鉄骨枠14では、鉄骨柱18と鉄骨梁19との交差部28,33または交差部23,33の近傍(鉄骨柱18と鉄骨梁19とのいずれか、または、交差部28,33を含む鉄骨柱18または鉄骨梁19)に固定されたガセットプレート38,39に回転支承40(ピン)を介して第1アーム29,34の外端部41を回転可能に取り付けるとともに、鉄骨梁19の中央部に固定されたガセットプレート45に回転支承46(ピン)を介して第2アーム30,35の外端部47を回転可能に取り付け、第1および第2アーム29,30,34,35の内端部43,48を回転ヒンジ42(連結部材)に回転可能に連結する(図4,5参照)。
【0086】
住宅12の3階部分〜6階部分の第2鉄骨枠15では、鉄骨柱23と鉄骨梁24との交差部55または交差部55の近傍(鉄骨柱23と鉄骨梁24とのいずれか、または、交差部55を含む鉄骨柱23または鉄骨梁24)に固定されたガセットプレート61に回転支承62(ピン)を介して第1アーム56の外端部63を回転可能に取り付けるとともに、鉄骨柱23と鉄骨梁24との交差部57または交差部57の近傍(鉄骨柱23と鉄骨梁24とのいずれか、または、交差部57を含む鉄骨柱23または鉄骨梁24)に固定されたガセットプレート67に回転支承68(ピン)を介して第2アーム58の外端部69を回転可能に取り付け、第1および第2アーム56,58の内端部65,70を回転ヒンジ64(連結部材)に回転可能に連結する(図4,6参照)。
【0087】
次に、第1鉄骨枠14の鉄骨梁19の中央部と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23B)との間に繋ぎ鋼材16を設置する。繋ぎ鋼材16は、鉄骨梁19の中央部と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23B)との間において斜め方向へ延びている。繋ぎ鋼材16は、1個の鉄骨枠14に対して一対のそれらが設置される。繋ぎ鋼材16の第1端部に取り付けられた固定プレート26を鉄骨梁19に取り付けられたプレート20に固定し、繋ぎ鋼材16の第2端部に取り付けられた固定プレート27を鉄骨柱23に取り付けられたプレート25に固定する。それらプレート20,25,26,27どうしは、ボルトとナットとによって連結されている(図4参照)。
【0088】
なお、鉄骨梁19(H鋼)を架け渡した後、図示はしていないが、鉄骨梁19の横方向へ並ぶ複数のアンカーボルト挿通孔にアンカーボルト22の端部を挿通するとともに、アンカーボルト22の端部に形成された螺子溝にナットを嵌め込み、鉄骨梁19とアンカーボルト22とを連結し、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と鉄骨梁19とを一体化してもよい。住宅12の3階部分〜6階部分の第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22を介して住宅12の外壁13と一体化される。
【0089】
図29は、図26から続く制震補強工法の施工手順の説明図であり、図30は、図27から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。図31は、図28から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築し、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に第1および第2アーム29,30,34,35,56,58を取り付けた後、住宅12の1階部分と2階部分とに対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリートを打設するための型枠(図示せず)を組み、その型枠にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外す。
【0090】
アンカーボルト22は、一方の端部がアンカーホールに充填された接着剤によってアンカーホールに固定され、他方の端部が鉄骨柱18と鉄骨梁19とに巻き立てられたコンクリート21に支持され、コンクリート21に固定される。第1鉄骨枠14を形成する鉄骨柱18は、住宅12の外壁13と鉄骨柱18との間(前後方向)に延びるアンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅12の外壁13(住宅12の柱)に固定され、第1鉄骨枠14を形成する鉄骨梁19は、住宅12の外壁13と鉄骨梁19との間(前後方向)に延びるアンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅の外壁13(住宅12の梁)に固定される。その結果、住宅12の1階部分と2階部分とに対応する第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22およびコンクリート21によって住宅12の外壁13(住宅12の柱および梁)と一体になる。第1鉄骨枠14を形成する鉄骨柱18や鉄骨梁19は、その外周全域がコンクリート21に包被され、鉄筋鉄骨コンクリート柱18(SRC)、鉄筋鉄骨コンクリート梁19(SRC)となる。その結果、第1鉄骨枠14は第1鉄筋鉄骨コンクリート枠14となる。
【0091】
図32は、図29から続く制震補強工法の施工手順の説明図であり、図33は、図30から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。図34は、図31から続く制震補強工法の施工手順の説明図である。住宅12の1階部分と2階部分とに対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリート21を巻き立て、第1鉄骨枠14と住宅12の外壁13とを一体化した後、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリートを打設するための型枠(図示せず)を組み、その型枠にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外す。住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅12の外壁13(住宅12の柱および梁)と一体になる。
【0092】
住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリート21を巻き立て、第1鉄骨枠14と住宅12の外壁13とを一体化した後、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に制震補強ブレース17を形成する油圧ダンパー32,37,60を取り付ける。第1鉄骨枠14では、鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Bとの交差部31,36または交差部31,36の近傍(鉄骨柱18A,18Bと鉄骨梁19Bとのいずれか、または、交差部31,36を含む鉄骨柱18A,18Bまたは鉄骨梁19B)に固定されたガセットプレート52,53に回転支承54(ピン)を介してダンパー32,37の外端部を回転可能に取り付けるとともに、ダンパー32,37の内端部を回転ヒンジ42(連結部材)に回転可能に連結する(図4,5参照)。
【0093】
第2鉄骨枠15では、鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとの交差部59または交差部59の近傍(鉄骨柱23Aと鉄骨梁24Aとのいずれか、または、交差部59を含む鉄骨柱23Aまたは鉄骨梁24A)に固定されたガセットプレート74に回転支承75(ピン)を介してダンパー60の外端部を回転可能に取り付けるとともに、ダンパー60の内端部を回転ヒンジ64(連結部材)に回転可能に連結する(図4,6参照)。図20〜図34に示す施工手順が終了すると、図1〜図3に示す制震補強構造物10が完成する。
【0094】
図35は、図23から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図であり、図36は、図24から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図である。図37は、図25から続く制震補強工法の施工手順の他の一例の説明図である。住宅の1階部分および2階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築し、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に第1および第2アーム29,30,34,35,56,58を取り付けた後、第1鉄骨枠14の鉄骨梁19の中央部と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23B)との間に繋ぎ鋼材16を設置する。繋ぎ鋼材16の第1端部に取り付けられた固定プレート26を鉄骨梁19に取り付けられたプレート20に固定し、繋ぎ鋼材16の第2端部に取り付けられた固定プレート27を鉄骨柱23に取り付けられたプレート25に固定する。次に、住宅12の1階部分と2階部分とに対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリートを打設するための型枠(図示せず)を組み、その型枠にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外す。
【0095】
アンカーボルト22は、一方の端部がアンカーホールに充填された接着剤によってアンカーホールに固定され、他方の端部が鉄骨柱18と鉄骨梁19とに巻き立てられたコンクリート21に支持され、コンクリート21に固定される。住宅12の1階部分と2階部分とに対応する第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22(固定手段)およびコンクリート21(固定手段)によって住宅12の外壁13(住宅12の柱および梁)と一体になる。第1鉄骨枠14を形成する鉄骨柱18や鉄骨梁19は、その外周全域がコンクリート21に包被され、鉄筋鉄骨コンクリート柱18(SRC)、鉄筋鉄骨コンクリート梁19(SRC)となる。その結果、第1鉄骨枠14は第1鉄筋鉄骨コンクリート枠14となる。
【0096】
住宅12の1階部分および2階部分に対応する第1鉄骨枠14と住宅12の外壁13とを一体化した後、住宅12の3階部分の天井(4階部分の床)の位置、住宅12の4階部分の天井(5階部分の床)の位置、住宅12の5階部分の天井(6階部分の床)の位置、住宅12の6階部分の天井の位置に、上下方向へ所定距離離間対向して横方向へ延びる4本の鉄骨梁19(H鋼)を架け渡し、鉄骨柱18に鉄骨梁19を連結し、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14を構築する。上下方向と横方向とへ延びる複数本の鉄筋(図示せず)をそれら鉄骨梁19に配筋するとともに、繋ぎ鋼材16の第1端部を固定するプレート20を鉄骨梁19の横方向中央部に接合(溶接)する。
【0097】
第1鉄骨枠14から前後方向前方へ所定距離離間した位置(基礎杭11と同位置)であって第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23B)の上端部に、横方向へ所定距離離間対向して上下方向へ延びる複数本の鉄骨柱23(H鋼)を配置し(継ぎ足し)、鉄骨柱23の上端部と継ぎ足した鉄骨柱23の下端部とを連結する。繋ぎ鋼材16の第2端部を固定するプレート25を鉄骨柱23の上下方向へ所定寸法離間した位置に接合(溶接)する。継ぎ足された鉄骨柱23は住宅12の4階部分までの長さであり、端に位置する柱23は住宅12の2階部分までの長さである。横方向へ所定距離離間対向して前後方向へ延びる複数本の鉄骨梁24を鉄骨柱23(23A)と鉄骨柱23(23B)との間に設置し、それら鉄骨梁24を鉄骨柱23に連結し、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第2鉄骨枠15を構築する。それら第2鉄骨枠15は、第1鉄骨枠14に連結されることで枠14と一体になる。
【0098】
住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築した後、第1鉄骨枠14の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム29,30,34,35を所定の角度で取り付け、第2鉄骨枠15の内側に制震補強ブレース17の第1および第2アーム56,58を所定の角度で取り付ける。次に、第1鉄骨枠14の鉄骨梁19の中央部と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23(23A)との間に繋ぎ鋼材16を設置する。なお、アーム29,30,34,35や繋ぎ鋼材16の設置手順は図26〜図31に示すそれと同一であるから、図26〜図31およびそれら図に基づいた説明を援用することで、その詳細な説明は省略する。
【0099】
住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1および第2鉄骨枠14,15を構築し、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に第1および第2アーム29,30,34,35,56,58を取り付けた後、住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリートを打設するための型枠(図示せず)を組み、その型枠にコンクリートを打設し、コンクリートを所定期間養生した後、型枠を外す。アンカーボルト22は、一方の端部がアンカーホールに充填された接着剤によってアンカーホールに固定され、他方の端部が鉄骨柱18と鉄骨梁19とに巻き立てられたコンクリート21に支持され、コンクリート21に固定される。
【0100】
住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14は、アンカーボルト22およびコンクリート21によって住宅12の外壁13(住宅12の柱および梁)と一体になる。住宅12の3階部分〜6階部分に対応する第1鉄骨枠14の外周にコンクリート21を巻き立て、第1鉄骨枠14と住宅12の外壁13とを一体化した後、第1および第2鉄骨枠14,15の内側に制震補強ブレース17を形成する油圧ダンパー32,37,60を取り付ける(図31〜図33援用)。それら施工手順が終了すると、図1〜図3に示す制震補強構造物10が完成する。
【0101】
それら図示の制震補強工法は、集合住宅12(既存建築物)の外壁13の面方向に並行する第1鉄骨枠14を住宅12の2階層分ずつまたは4階層分ずつ構築(少なくとも1階層分ずつ構築)しつつ、その第1鉄骨枠14の2階層分ずつまたは4階層分ずつ(少なくとも1階層分ずつ)を住宅12の外壁13にアンカーボルト22(固定手段)とコンクリート21(固定手段)とを介して順次固定して住宅12の外壁13と第1鉄骨枠14とを一体化し、第1鉄骨枠14から住宅12の外壁13の面外方向へ張り出す第2鉄骨枠15を住宅12の2階層分ずつまたは4階層分ずつ構築(少なくとも1階層分ずつ構築)しつつ、その第2鉄骨枠15の2階層分ずつまたは4階層分ずつ(少なくとも1階層分ずつ)を第1鉄骨枠14に順次連結するから、住宅12の外壁13から面外方向へ所定距離離間した位置に強固な耐震架構を構築する従来技術の耐震補強工法と異なり、制震補強構造物10の構築にコストがかからず、少ない工数で短期間に制震補強構造物10を施設することができる。
【0102】
制震補強工法は、制震補強構造物10を施設するための広範囲な用地を別途確保する必要はなく、用地確保が困難な集合住宅12にも制震補強構造物10を施設することができる。この制震補強工法は、住宅12に生じた震動を減衰する制震補強ブレース17(制震手段)または震動を低減する鉄骨ブレース131(制震手段)を第1鉄骨枠14の内側と第2鉄骨枠15の内側とに設置することで、住宅12の外壁113の面方向に並行する震動が第1鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131に吸収され、住宅12の外壁13の面内方向と面外方向との震動が第2鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131に吸収されるから、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して住宅12に生じた震動を有効に抑制することができる。
【0103】
制震補強工法は、集合住宅12の1階部分に構築される第2鉄骨枠15の鉄骨柱23の下端部を地中に建て込まれた基礎杭11に連結することで、第1鉄骨枠14や第2鉄骨枠15が鉄骨柱23を介して基礎杭11に支持されるから、震動時にそれら鉄骨枠14,15が不用意に遊動することはなく、震動時にそれら鉄骨枠14,15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能が十分に機能し、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して住宅12に生じた震動を確実に抑制することができる。
【0104】
制震補強工法は、震動時における第2鉄骨枠15の変形(ねじれや座屈)を防止する一対の繋ぎ鋼材16を第1鉄骨枠14の鉄骨梁19と第2鉄骨枠15の鉄骨柱23との間に設置することで、震動時の第2鉄骨枠15の変形による制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能の低下を防ぐことができるから、震動時に第2鉄骨枠15の内側に設置された制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131の制震機能が十分に機能し、制震補強ブレース17や鉄骨ブレース131を利用して集合住宅12に生じた震動を確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0105】
10 制震補強構造物
11 基礎杭(基礎)
12 集合住宅(既存建築物)
13 外壁
14 第1鉄骨枠(第1鉄筋鉄骨コンクリート枠)
15 第2鉄骨枠
16 繋ぎ鋼材
17 制震補強ブレース
18 鉄骨柱(鉄筋鉄骨コンクリート柱)
19 鉄骨梁(鉄筋鉄骨コンクリート梁)
21 コンクリート(固定手段)
22 アンカーボルト(固定手段)
23 鉄骨柱
24 鉄骨梁
29 第1アーム
30 第2アーム
32 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
34 第1アーム
35 第2アーム
37 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
56 第1アーム
58 第2アーム
60 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
76 第1ブレース
77 第2ブレース
78 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
89 第1ブレース
91 第2ブレース
92 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
103 油圧ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
121 第1ブレース
122 第2ブレース
123 弾性ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
126 第1ブレース
127 第2ブレース
128 弾性ダンパー(震動エネルギー吸収ダンパー)
131 鉄骨ブレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱と鉄骨梁とから作られて既存建築物の外壁の面方向に並行する第1鉄骨枠を該既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、前記第1鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを前記既存建築物の外壁に固定手段を介して順次固定して該既存建築物の外壁と該第1鉄骨枠とを一体化するとともに、前記既存建築物の震動を吸収する制震手段を前記第1鉄骨枠の内側に設置する既存建築物の制震補強工法。
【請求項2】
鉄骨柱と鉄骨梁とから作られて前記第1鉄骨枠から前記既存建築物の外壁の面外方向へ張り出す第2鉄骨枠を該既存建築物の少なくとも1階層分ずつ構築しつつ、前記第2鉄骨枠の少なくとも1階層分ずつを前記第1鉄骨枠に順次連結するとともに、前記制震手段を前記第2鉄骨枠の内側に設置する請求項1記載の既存建築物の制震補強工法。
【請求項3】
前記既存建築物の1階部分に構築される前記第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部を地中に建て込まれた基礎に連結する請求項2記載の既存建築物の制震補強工法。
【請求項4】
前記制震手段として、制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかを使用する請求項1ないし請求項3いずれかに記載の既存建築物の制震補強工法。
【請求項5】
鉄骨柱と鉄骨梁とから形成されて既存建築物の外壁の面方向に並行し、前記既存建築物の外壁に固定手段を介して固定されて該既存建築物の複数階層と一体になった複数の第1鉄骨枠と、鉄骨柱と鉄骨梁とから形成されて前記第1鉄骨枠から前記既存建築物の外壁の面外方向へ張り出し、前記第1鉄骨枠に連結されてそれら第1鉄骨枠と一体になった複数の第2鉄骨枠と、前記第1鉄骨枠の内側と前記第2鉄骨枠の内側とに設置されて前記既存建築物の震動を吸収する制震手段とのうち、少なくとも前記第1鉄骨枠と該第1鉄骨枠の内側に設置された前記制震手段とを有する制震補強構造物。
【請求項6】
前記既存建築物の1階部分に構築される前記第2鉄骨枠の鉄骨柱の下端部が、地中に建て込まれた基礎に連結されている請求項5記載の既存建築物の制震補強構造物。
【請求項7】
前記制震手段が、制震補強ブレースと鉄骨ブレースとのうちのいずれかである請求項5または請求項6に記載の既存建築物の制震補強構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−102498(P2011−102498A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258063(P2009−258063)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000235543)飛島建設株式会社 (132)
【Fターム(参考)】