説明

既存建造物の基礎免震化工法

【課題】
地震によって発生する物的被害と人的被害を最小限に抑制しようとする発明であり、比較的安価でしかも施工も容易で且つ資源循環型社会の形成に寄与する既存建造物の基礎免震化工法を提供する。
【解決手段】
本発明は、既存建造物の基礎を免震化改修しようとするものであり、既存基礎コンクリートNの下部に既存している割り石等地業部分Tを掘削・排土しその部分Rに免震基板Aを膨張コンクリートI上に載置し、埋め戻し材料は弾性を有する材料L・Mを使用し、地震時には地震エネルギーの伝播を抑制し、既存建造物の基礎を免震化するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水平方向の地震エネルギーが建造物に対して伝播する事を抑制する目的の既存建造物の基礎免震化工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を新築するに当たっては種々の免震装置の技術が広く知らせているが、既存建造物を免震化するには多額の工事費がかかっている。又、大規模建造物を免震化する技術は知られているが、一般中低層建造物の基礎を免震化する技術が求められていた。
【特許文献1】特開平11−256596
【特許文献2】特開2008−101451
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は免震化が成されていない既存建造物の基礎を安価で免震化改修し、地震の被害から国民の生命、財産を守る事が目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は前記目的を達成する為の手段として、既存基礎コンクリートの下に施されている割り石などの地業を掘削し排出した後、免震基板を既存基礎コンクリート下面に当接する様に載置し、概免震基板と支持地盤との間に出現した空洞部に膨張コンクリートを打設することにより、概免震基板が直上に押し上げられ基礎コンクリート下面に隙間なく当接する。次に室内側及び室外側の既存基礎コンクリートの周辺の掘削・排土部分に弾性材料を使用して埋め戻すことにより、地盤を伝播して来る地震エネルギーが既存基礎コンクリートに伝わる力を減少させる。又、予想を上回る規模の地震が発生し、既存建造物に強力な地震エネルギーが伝播したとしても、免震基板上面には略半円球状突起が既存基礎コンクリート下面に滑動自在に当接していることにより、免震効果が発揮される。
【発明の効果】
【0005】
本発明による既存建造物の免震化工法は、既存建造物の基礎・軸組・床・壁・屋根などの主要構造部を改修する必要は無く、安価で免震化する事が可能である。
【0006】
建造物を新築するにあたってもこの免震基板を用いた免震化工法を採用する事も可能である。
【0007】
免震基板及び弾性のある埋め戻し材料を廃棄物などをリサイクルして用いる事により、資源循環型社会の形成に寄与する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
Aは免震基板であり、基板上面Bには略半円球状突起Cが露出していることにより免震基板凹部Dが施されている。免震基板Aは割り石等地業を掘削・排土後に打設された膨張コンクリートIの上に載置されている。又、既存基礎コンクリートNの周囲の掘削・排土部分Rには室内側埋め戻し材料Mと室外側埋め戻し材料Lが埋め戻されている。
【0010】
前記の構成により成る既存建造物の基礎免震化工法を一施工実施形態に基づき説明する。
【0011】
本発明による既存建造物の基礎免震化工法は平屋建・二階建・三階建など比較的低層で軽量な建造物に適用することが可能である。
【0012】
最初に既存建造物の躯体・構造・仕上げ材及び現地盤の圧密強度・土質など周辺部を含め綿密に調査し施工方法を検討し、その既存建造物に最適な基礎免震改修の施工方法を決定する。
【0013】
一施工実施形態としては、既存建造物の支持地盤Jを室内側Oより床下点検口などより床下に侵入し掘削・排土する。次に既存の割り石等地業Tを掘削・排土する。この時点で既存建造物Qの不同沈下が発生しない様、仮支持を行いつつ安全を確認出来る範囲で掘削・排土を施工する。
【0014】
前記室内側Oの掘削・排土に平行して室外側Pより地盤Jを掘削・排土し既存の地業を取り除いた後、既存基礎コンクリート下面Sを平滑に研磨する。
【0015】
次に免震基板Aを室外側Pより既存基礎コンクリート下面Sに略半円球状突起Cが当接するように水平方向より挿入し仮載置する。
【0016】
免震基板下面Eと掘削後の地盤Jと間には空洞部Hが出現する。この空洞部Hに膨張コンクリートIを打設し、免震基板Aを既存基礎コンクリート下面Sに当接させる。
【0017】
次に既存基礎コンクリートNの室内側O及び室外側Pの掘削・排土部分Rに室内側埋め戻し材料Mと室外側埋め戻し材料Lを埋め戻し、タンパー等で転圧する。
【0018】
膨張コンクリートIと免震基板Aは共に、建築基準法を含む関係諸法令で求められている硬度をはじめとした品質のものを使用する。
【0019】
順次上記の施工を繰り返すに当たり、免震基板切欠部Fに、次の免震基板切欠部Fをかみ合わせて連接して行く。切欠部Fを順次かみ合わせて施工する事により、免震基板Aの仮載置が容易となる。
【0020】
室内側埋め戻し材料Mと室外側埋め戻し材料Lは 弾性を有するものであれば、球体、正方体、長方体、粉体、ジェル状などを問わず使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例を示す概略断面図
【図2】免震基板の一実施例を示す斜視図
【図3】免震基板の一実施例を示す長辺方向の側面図
【図4】免震基板の一実施例を示す短辺方向の側面図
【符号の説明】
【0022】
A 免震基板
B 免震基板上面
C 略半円球状突起
D 免震基板凹部
E 免震基板下面
F 切欠部
G 免震基板側面
H 空洞部
I 膨張コンクリート
J 地盤
K 掘削線
L 室外側外埋め戻し材料
M 室内側外埋め戻し材料
N 既存基礎コンクリート
O 室内側
P 室外側
Q 既存建造物躯体
R 掘削・排土部分
S 既存基礎コンクリート下面
T 既存地業部分





【特許請求の範囲】
【請求項1】

既存建造物の基礎免震化工法において、地表より既存基礎コンクリートの周囲を掘削し、既存基礎コンクリートを支持していた割り石等の既存基礎地業を掘削、排土した後に既存基礎コンクリート下面と空洞部底部との隙間に水平方向より免震基板を挿入・配置し仮支持した後に免震基板と空洞部底部との隙間に膨張コンクリートを打設し、既存基礎コンクリート下面と免震基板上面を当接させる。概免震基板は長方体などの形状を有し、既存基礎コンクリート下面に当接する免震基板上面には略半円球状突起あるいは突条が複数個あるいは複数条突出し、両端部あるいは各端部には継手機能を有した切欠部を施して成る。
この切欠部は図示の様に全面段違いにする以外に側面に凸凹を設けてその形状を組合せて接続する等の方法もあり、用途と施工上の観点から決定可能である。
左右非対称なる切欠部を施した免震基板を互いに隣接し複数枚敷設して成り、埋戻しには弾性を有する材料を使用して構成され、免震基板上面に施された略半円球状突起あるいは突条が既存基礎コンクリート下面に滑動自在に当接していることにより、地震エネルギーが周辺地盤より伝播すると免震効果を発揮することを特徴とする既存建造物の基礎免震化工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−24764(P2010−24764A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189772(P2008−189772)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(505160371)
【Fターム(参考)】