説明

既製コンクリート杭の端板

【課題】上杭と下杭との接合部に曲げモーメントが加わったとき、面外方向への変形を防止することができるようにした既製コンクリート杭の端板を提供する。
【解決手段】PC鋼棒2の端部を定着するための定着孔3が周方向に沿って間隔を置いて複数設けられている既製コンクリート杭の端板1であって、その裏面における互いに隣接する定着孔3,3間に補強部材4を設けたことを特徴とする。補強部材4は、端板1に定着孔3,3間を横切るように溶接により固着された突条で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、既製コンクリート杭の端板に関し、より詳細にはPC鋼棒を介してプレストレスが導入される既製コンクリート杭の端板に関する。
【背景技術】
【0002】
プレストレスが導入される既製コンクリート杭として、PC杭(遠心力プレストレストコンクリート杭)やPHC杭(遠心力高強度プレストレストコンクリート杭)が知られている。
【0003】
図3は、一般的なPHC杭の杭端部を示している。杭コンクリート10の端部には環状の端板11が設けられている。上杭と下杭とは、この端板11どうしを外周において溶接等により接合することにより繋ぎ合わされる。この端板11には周方向に沿って複数の孔12が間隔を置いて設けられている。この孔12は杭コンクリート10の遠心成形時に、プレストレスを導入するためにコンクリート中に埋め込まれるPC鋼棒13の定着孔であり、ひょうたん型をしていることからひょうたん孔と称されている。なお、符号14は補強バンド、符号15はらせん鉄筋を示している。
【0004】
ところで、PHC杭は設計基準強度及び有効プレストレス量によって、A,B,Cの三種に分類されるが、最も強度が大きいC種では特に大径のものになると、PC鋼棒の本数が多くなる。したがって、それに応じて端板11に設けられる定着孔12の数も多くなる。このため、端板11の強度が小さくなり、地震等により上下杭の接合部に曲げモーメント及び/又は引抜き力が加わったとき、多数の定着孔12を結んでできる円周16を境界としてその内周側と外周側との間で面外方向の変形が生じることが懸念される。このため、端板11自体を厚肉にして、変形が生じないよう強度を上げること等が行われていた。
【0005】
この出願の発明の先行技術文献として、特許文献1を挙げることができる。しかし、同文献に記載の発明は、PC杭の製造時にPC鋼材を緊張することによって端板が変形するのを防止する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−249806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は上記のような技術的背景に基づいてなされたものであって、次の目的を達成するものである。
この発明の目的は、上杭と下杭との接合部に曲げモーメント等が加わったとき、面外方向への変形を防止することができるようにした既製コンクリート杭の端板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記課題を達成するために、次のような手段を採用している。
すなわち、この発明は、PC鋼棒の端部を定着するための定着孔が周方向に沿って間隔を置いて複数設けられている既製コンクリート杭の端板であって、
その裏面における互いに隣接する前記定着孔間に補強部材を設けたことを特徴とする既製コンクリート杭の端板にある。
【0009】
より具体的には、前記補強部材は、前記端板に前記定着孔間を横切るように設けられた突条からなる。この場合、前記突条は前記端板に固着されている構成を採用することができる。前記突条は前記端板の成形時に該端板と一体成形されている構成を採用することもできる。
【0010】
また、この発明は、PC鋼棒の端部を定着するための定着孔が周方向に沿って間隔を置いて複数設けられている既製コンクリート杭の端板であって、
その裏面に環状の厚肉部を設け、この厚肉部に前記定着孔を設けたことを特徴とする既製コンクリート杭の端板にある。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、端板の裏面における定着孔間に補強部材を設け、あるいは端板の裏面に環状の厚肉部を設けて、この厚肉部に定着孔を設けたので、定着孔間の部材強度が増大することから、上杭と下杭との接合部に曲げモーメント等が加わっても、端板に面外方向の変形が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態を示し、(a)は環状の端板を便宜的に長方形状に展開したものとし、その裏面の一部を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】別の実施形態を示す斜視図である。
【図3】一般的なPHC杭の杭端部を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。図1に示すように、この発明の対象となる端板1は鋼製のもので、例えばPHC杭のC種で特に大径のものに用いられる。この杭種は強度を高めるために、プレストレス導入用に多数のPC鋼棒2が用いられ、したがって端板1の周方向に沿って間隔を置いて設けられる定着孔3の数も多くなっている。
【0014】
定着孔3は前述のようにひょうたん孔と通称され、大径の円孔3aと、この円孔3aに連なる溝孔3bとを有している。溝孔3bの周囲には端板1の表面側において、すり鉢状の凹部3cが設けられている。PC鋼棒2は先端に大径の頭部2aを有し、このPC鋼棒2は端板1の裏面側から円孔3aに挿入された後、溝孔3bを通して横方向に移動され凹部3cに係合される。この状態でPC鋼棒2にプレストレスが導入される。
【0015】
端板1の裏面における互いに隣接する定着孔3,3間には、補強部材としての突条4が定着孔3,3間を横切るように端板1の半径方向に沿って設けられている。突条4は図示の実施形態では、断面円形の鋼材が用いられているが、断面角形であってもよい。この突条4は溶接により端板1の裏面に固着されている。
【0016】
上記のような端板1によれば、定着孔3,3間の端板1の厚みが部分的に増大する。したがって、上下杭の接合部に曲げモーメント等が加わった場合、多数の定着孔3を結ぶ円周(図1(a)のA−A線と一致する)を境界としてその内周側Iと外周側Oとの間で面外方向への曲げ変形が生じるのを防止することができる。
【0017】
図2は、この発明の別の実施形態を示している。この実施形態では、端板1の裏面に環状の厚肉部5が設けられている。厚肉部5は(a)のように、頂部が平坦な断面台形となるように設けてもよいし、(b)のように頂部が尖った断面山形となるように設けてもよい。この厚肉部5は端板1の加工成形時にこれと一体に形成される。この厚肉部5に多数の定着孔3が設けられている。このような端板1によっても、定着孔3,3間の厚みが増すので、上記実施形態の場合と同様に曲げ変形が生じるのを防止することができる。
【0018】
上記実施形態は例示にすぎず、この発明は種々の態様を採ることができる。まず、補強部材である突条4は、定着孔3,3間の全てではなく、強度計算のうえ適宜選択された定着孔3,3間にのみ設ける場合がありうる。また、突条4は溶接により固着するのみならず、端板1を鋳造することにより端板と一体成形することもできる。さらに、端板はフラットバーを環状にベンダー加工することにより成形されるが、フラットバーの圧延の際に同時に突条を形成することも可能である。
【符号の説明】
【0019】
1:端板
2:PC鋼棒
2a:頭部
3:定着孔
4:突条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼棒の端部を定着するための定着孔が周方向に沿って間隔を置いて複数設けられている既製コンクリート杭の端板であって、
その裏面における互いに隣接する前記定着孔間に補強部材を設けたことを特徴とする既製コンクリート杭の端板。
【請求項2】
前記補強部材は、前記端板に前記定着孔間を横切るように設けられた突条からなることを特徴とする請求項1記載の既製コンクリート杭の端板。
【請求項3】
前記突条は前記端板に固着されていることを特徴とする請求項2記載の既製コンクリート杭の端板。
【請求項4】
前記突条は前記端板の成形時に該端板と一体成形されていることを特徴とする請求項2記載の既製コンクリート杭の端板。
【請求項5】
PC鋼棒の端部を定着するための定着孔が周方向に沿って間隔を置いて複数設けられている既製コンクリート杭の端板であって、
その裏面に環状の厚肉部を設け、この厚肉部に前記定着孔を設けたことを特徴とする既製コンクリート杭の端板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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