説明

既製杭、基礎杭構造

【課題】垂直荷重、引抜き力、水平力のバランスが取れた高支持力の基礎杭構造を簡易に提供する。
【解決手段】既製杭1は、下端部2に環状突起10A、10Bを有するコンクリート部3の環状突起10Aの上方(中間部、上部)に、鋼管15を嵌装してなる。鋼管15の下端16は、コンクリート部3の段差部5に係止し、鋼管15の外表面と小ストレート部6の外表面とは面一である。軸部22の下方に拡大根固め部23形成した杭穴21を掘削し、杭穴21内に、既製杭1を沈設し、拡大根固め部23内に、環状突起10A、10B、鋼管15の下端16を位置させて、基礎杭構造30とする(a)。鋼管15の下端部に円盤状突起20をつけることもできる(b)(c)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、SC杭とコンクリート杭の特徴を活かした基礎杭、およびこの基礎杭を杭穴内に埋設した基礎杭構造に関する。
【背景技術】
【0002】
(1) 杭穴内に既製杭を埋設してなる基礎杭構造では、1本の杭の長さは10m程度が限界であり、一般に上杭と下杭とを接合して、既製杭を構成していた。この場合、上杭には杭頭部での水平荷重を考慮して、曲げ耐力が大きな杭、例えば、いわゆるSC杭(鋼管を巻いたコンクリート杭)、いわゆるPRC杭(PC鋼棒に並列して異形鉄筋を埋設したコンクリート杭)を使用していた。一般にこれらの杭は高価であるため、曲げ耐力をあまり必要としない下杭には、一般的なコンクリート杭を使用していた。
【0003】
(2) また、最近、所定品質・形状寸法の仕様で杭穴の根固め部を築造し、杭穴内に、下端部に凸凹等を設けたコンクリート製の既製杭を埋設して、根固め部に、その凹凸部等を位置させる基礎杭構造が提案されていた。この基礎杭構造の場合、従来のコンクリート製の既製杭で凹凸等の無い円筒杭を使用した場合に比べて、約2倍の高い先端支持力を発現させることができた。
【0004】
一般に、複数の既製杭を上下に連結した継ぎ杭の場合、端板(接合)が同径である必要があったため、杭穴の根固め部に位置する既製杭の外径と、根固め部より上方に位置する既製杭の外径が同径となっていた。この場合、根固め部で必要とされる各種耐力・強度を基準にして既製杭の外径を設計した場合、上方に位置する既製杭の外径もこれと同径になるため、必要とされる垂直荷重に対する耐力・水平荷重に対する耐力の面から、上方に位置する既製杭で、外径が不足する問題点があった。
【0005】
(3) このような問題点を解決するために、発明者等は既に、コンクリート杭の途中で外径を変化させ、下端部が小径で、外径調節部を経て、上部が大径の既製杭を提案している(特許文献1)。この発明では、既製杭の外径調節部を根固め部内に位置させ、根固め部内では、小径の既製杭の部分が位置し、根固め部の上方には既製杭の大径の部分が位置する基礎杭構造となり、既製杭の全長に亘り鉛直耐力(圧縮強度)を満足させ、かつ鉛直支持力を確保させることができた。そして、その基礎杭構造は市場でも認められてきた。
【0006】
また、コンクリート杭をベースとして、鋼材を用いて凸凹等を形成した基礎杭を使用して、その基礎杭を杭穴内に埋設して、鋼材を用いた凸凹等を杭穴の根固め部に位置させて、基礎杭構造を構成する発明も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−97635
【特許文献2】特開2000−45274
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(1) 前記従来の技術の内、引用文献1の場合、例えば、既製杭の内、上方に使用する既製杭(上杭)にいわゆるSC杭(鋼管で被覆したコンクリート杭)を使用した場合に、SC杭部部分で高い鉛直耐力、水平耐力、引張耐力を確保できた。この場合、根固め部に位置する既製杭はコンクリート杭を使用するので、杭穴の根固め部で発揮する支持力を更に高くする場合に、根固め部に位置するコンクリート杭の外径を大きくする(杭肉厚を厚くする)ことにより、鉛直耐力を増強する必要があった。しかし、コンクリート杭の外径を大きくすることにより、鉛直支持力を増強する方法には限度があり、更なる高支持力化には対応できないことも考えられる。
【0008】
また、下杭をコンクリート製の既製杭とした場合には、引抜き耐力が小さいため、引き抜き耐力が高い上杭とのバランスの悪い基礎杭構造となっていた。
【0009】
従って、杭下端部を根固め部に埋設して使用する下杭の鉛直耐力および引抜き耐力の増強が必要であった。
【0010】
(2) また、引用文献2の場合、下杭として鋼材を使用した鋼管杭等を用いて杭材自身の鉛直耐力および引抜き耐力を増強することを実現させていた。しかし、鋼材の複雑な凸凹形状の加工を必要し、この加工の為には高い技術力を要し、簡易に製造することが難しかった。よって、高支持力に耐えるような高強度の下杭を、安定して製造・供給することができず、かつ、鋼材を多く使用するため既製杭の杭材費用が高価となり過ぎ、コスト削減が難しく、汎用性が劣る問題点もあった。
【0011】
従って、鉛直耐力、水平耐力、引抜き耐力をバランス良く満たし、かつ、経済性の良い基礎杭構造の実現が課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
既製杭に作用する水平力を鋼管で負担し、根固め部内には、コンクリート製の突起で対処できる構造としたので、前記問題点を解決した。
【0013】
即ちこの発明は、コンクリート製の杭本体の下端部が所定軸径で形成され、当該下端部に異形凹凸部が形成され、前記杭本体の少なくとも上部の全部又は一部を長さLの鋼管で被覆したことを特徴とする既製杭である。
【0014】
また、前記において、杭本体で、鋼管を被覆していない部分の外径と、鋼管を被覆した部分の外径とを異なる径で形成したことを特徴とする既製杭である。また、前記において、根固め部を有する杭穴内に埋設して使用する既製杭であって、前記既成杭の下端部が前記杭穴の根固め部に位置するように構成した既製杭である。また、深さ方向に1つ以上の強度増強部を有する杭穴内に埋設して使用する既製杭であって、鋼管の下端が、前記杭穴の強度増強部内に位置するように、前記鋼管を構成した既製杭である。
【0015】
また、他の発明は、所定軸径を有する複数の単位杭を上下に接合してなる既製杭であって、少なくとも1本の単位杭は、外周の全部又は一部を鋼管で被覆して構成し、少なくとも1本の単位杭は、外周の全部又は一部に異形凹凸部を形成して構成したことを特徴とする既製杭である。また、前記において、上下に位置する単位杭の軸径を異なる径で形成したことを特徴とする既製杭である。
【0016】
また、根固め部を有する杭穴内に既製杭を埋設して構成する基礎杭構造において、前記既製杭は、所定軸径を有する複数の単位杭を上下に接合して構成し、前記単位杭の内、少なくとも1本の単位杭は、全部又は一部の外周を鋼管で被覆して構成し、少なくとも1本の単位杭は、異形凹凸部を形成して構成したことを特徴とする基礎杭構造である。
【0017】
また、前記において、少なくとも1つの異形凹凸部を杭穴の根固め部内に位置させることを特徴とする基礎杭構造である。また、前記において、杭穴と既製杭との間に杭周固定液層を形成し、該杭周固定液層の所定の深さに強度増強部を形成し、1つ又は複数の鋼管の上端又は下端位置、単位杭の接合位置、異形凹凸部位置の各位置の一部又は全部を前記強度増強部に埋設したことを特徴とする基礎杭構造である。
【0018】
更に、根固め部を有する杭穴内に既製杭を埋設して構成する基礎杭構造において、杭穴と既製杭との間に杭周固定液層を形成し、該杭周固定液層の所定の深さに強度増強部を形成し、前記既製杭は、コンクリート製の杭本体の少なくとも上部を長さLの鋼管で被覆すると共に、前記コンクリート製の杭本体で、前記鋼管の上端又は下端に近接して異形凹凸部を形成して、前記異形凹凸部及び前記鋼管の上端又は下端を、前記根固め部内又は強度増強部内に、埋設したことを特徴とした基礎杭構造である。
【0019】
前記における「異形凹凸部」とは、周囲の表面形状とは異なる凹部又は凸部、あるいは凹部と凸部の組合せを指す。更に、径を変化させた段差も含む。要は、鉛直支持力を増強するために下方に向けた面を形成し、また、引抜力を増強させるために上方に向けた面が形成されていれば良い。
【0020】
また、前記における「強度増強部」は、主に先端支持力を発揮する支持地盤に対応した深さで杭穴に形成される根固め部である。根固め部では、杭穴軸部に比して富配合のセメントミルクを充填し固化させて根固め層を形成する。この場合、根固め部は杭穴軸部より拡大掘削して拡大根固め部とすることが望ましいが、杭穴軸部と同径とすることもできる。
【0021】
また、「強度増強部」は先端支持力を発揮させる地盤に至る深さより浅い位置に中間支持層がある地盤では、中間支持層に対応させて、杭穴内に杭穴軸部に比して富配合のセメントミルクを充填し固化させて、「強度増強部」とすることもできる。この場合、富配合のセメントミルクを充填し固化させて、さらに、その深さでの杭穴径を周囲より大径に形成することもできる。また、セメントミルクは富配合とすることが望ましいがその深さでの杭穴径を周囲より大径に形成すれば、セメントミルクの配合は周囲の杭周固定液と同等とすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
杭本体の下端部に異形凹凸部を形成し、根固め部内に異形凹凸部を位置させれば、根固め部内に杭穴底に向けた下面又は地上に向けた上面を形成できるので、固化した根固め液層の機能を充分に発揮させて、既製杭に作用する垂直荷重又は引抜き力を有効に負担できる。更に、既製杭の上部を鋼管で覆ったので、既製杭に大きな水平力が作用した場合にでも上部を鋼管で覆った既製杭部で充分に対応できる。
【0023】
従って、バランスの良い高支持力の基礎杭構造を実現でき、少ない本数又は小さな口径で、従来同様の杭基礎の耐力を達成できる。
【0024】
また、コンクリート製の異形凹凸部であるので、根固め部内では根固め液との相性が良く、固化した根固め液層内にコンクリート製の異形凹凸部から効率よく力を伝搬することができる。
【0025】
また、鋼管の下端部に突起を形成した場合には、引抜き力に対して、既製杭上部の鋼管部のみで負担することができ、既製杭下部のコンクリート部では引抜き力の影響が小さくなるため、コンクリート部については簡易な形態とする事が可能となる。更に、既製杭自体の引抜耐力を増強できるため、支持力、水平力、引抜き力など、バランスの取れた高耐力基礎杭構造が可能となる。
【0026】
また、鋼管の下端部に突起を形成し、鋼管の下端部を杭穴の根固め部内に位置させた場合には、既製杭下端部のコンクリート部が完全に根固め部内に埋設され、コンクリート部は固化した根固め液に補強されることとなり、コンクリート部の強度は大幅に向上する。したがって、上部の鋼管部の性能を充分に発揮できる既製杭構造により、バランスの取れた高耐力基礎杭構造が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(1) この発明の既製杭は、コンクリート製の杭本体の下端部を外径Dで形成し、下端部以外(上部、中間部)の外径Dで形成する(D≦D)。外径Dの部分に環状突起(異形凹凸部)を形成する。環状突起は、外径Dとの段差部(径が変化している部分)に隣接して構成する。杭本体の外径Dの部分は、長さLだけ存在し、その部分に長さLで外径Dの鋼管を被覆して、この発明の既製杭を構成する。前記の外径Dの部分の位置、すなわち鋼管を被覆した部分は、通常は水平耐力の強化が求められるので、杭本体の下端部以外に配置されるが、杭本体の下端部に配置することもできる。
【0028】
(2) (1)において、杭本体の外径Dで、鋼管を被覆した部分の外径Dで、D<Dとして、鋼管の外径D=Dとすれば、鋼管の外径と杭本体の下端部の外径を同一として、表面に段差をなくすことができる。この場合には、杭の長さ方向で、異形凹凸部を除いて同径に形成されるので、埋設時の抵抗が少なく、埋設後の径変化部分で、応力の集中が生じるおそれが少ない。
【0029】
しかし、D≠D として杭本体(コンクリート部分)の下端部外周と鋼管の外周とに段差を形成することもできる。また、杭本体(コンクリート部分)を、D=Dとして、杭本体の径を上下で同径として、杭本体に段差を形成せずに、杭本体の下端部外周と鋼管の外周とに段差を形成とすることもできる。
【0030】
(3) 既製杭の下端部、即ち、異形凹凸部は、根固め部内に位置させるように、設置することが望ましい。根固め部内は富配合のセメントミルクを充填して固化する根固め層が形成される。根固め層内に異形凹凸部が位置することにより、既製杭に作用した鉛直荷重が効率よく根固め層に伝わり、より大きな支持力を発揮できる。即ち、既製杭に鉛直荷重が作用した場合、異形凹凸部の下方に向けた面から、斜め下方に向けて荷重が分散的に根固め層の底面に伝わるからである。
【0031】
従って、異形凹凸部は拡大根固め部内に位置させることが好ましいが、中間に支持層が位置する地盤では、杭穴の中間支持層付近の深さに強度増強部(根固め部と同等又は若干強度落ちる配合のセメントミルクを充填する。径は杭穴軸部同じ又は拡大する)を形成して、その中間支持層内に異形凹凸部を位置させることもできる。
【0032】
また、異形凹凸部に形成される上方に向けた面が、同様に引抜力に作用する。
【0033】
(4) 異形凹凸部として、環状突起を形成したが、断続的な突起とすることもでき、また下端部軸部に凹部又は溝を形成することもできる。要は、下端部軸部の表面より突出し、あるいは凹んだ構造の下端部軸部と径が異なる部分が形成され、これにより下方に向けた面(鉛直荷重支持用)、上方に向けた面(引抜力支持用)が形成されていれば良い。
【0034】
(5) 鋼管の長さLは、鋼管の下端が杭穴の根固め部内に位置させるように、設定することが望ましい。根固め部内は富配合のセメントミルクを充填して固化して根固め層を形成する。鋼管の下端は応力が集中しやすい傾向があるので、根固め層内に位置することにより、応力集中(とりわけ曲げ応力)の影響を受けることなく、既製杭から根固め層に鉛直荷重を確実に伝達できる。
【0035】
また、中間に支持層が位置する地盤で、杭穴の中間支持層付近の深さに強度増強部を形成した場合、鋼管の下端を強度増強部内に位置させることもできる。
【0036】
(6) 既製杭は、1本の既製杭から上記(1)の発明を構成するが、あるいは複数の単位既製杭を上下に連結して形成することもできる。この場合、上下に位置する単位杭の軸径を異なる径で形成することもでき、環状突起の有無、鋼管の被覆の有無など選択して、各深さで求められる既製杭の機能に応じて選択して、バランスの良い基礎杭構造を構成できる。
【0037】
要は、複数の単杭を上下に連結して既製杭を構成する場合には、地盤に応じて、杭穴内で、1箇所又は複数個所に強度増強部を形成するので、この強度増強部に対応させて、鋼管を取り付けし、あるいは異形凹凸部を形成すればよい。強度増強部に配置によっては、総ての単杭に鋼管を形成し、あるいは異形凹凸部を形成する場合もある。
【0038】
(7) (1)で、前記鋼管は、主に曲げ応力及びせん断応力に対して作用するので、少なくとも上端部を被覆してあればよく、中間部、下端部は、必要に応じて断続的に複数枚の鋼管で被覆することもできる。
【0039】
(8) (1)のように、下端部軸径Dと鋼管の外径をDとして同一としたが(図3(b))、
被覆した鋼管の外径<杭本体の下端部の軸径
のように、異なる径で形成することもできる。杭本体の下端部には鋼管で被覆されないので、一般に鋼管より大径に形成することがバランス上望ましいが、逆に、
杭本体の下端部の軸径<被覆した鋼管の外径
とすることもできる。
【0040】
(9) 前記のようにして構成した既製杭を予め掘削した杭穴内に(又は杭穴を掘削しながら杭穴内)に埋設して、基礎杭構造を構成する。杭穴の先端部に根固め部(強度増強部)を形成する場合には、既製杭の環状突起(異形凹凸部)及び鋼管の下端は、杭穴の根固め部内に位置させる。
【0041】
また、杭穴の軸部(上部又は中間部)には杭周固定液(一般に根固め液より貧配合のセメントミルク)が充填されるが、例えば、中間深さに比較的堅い中間支持層がある地盤では、その中間支持層に対応させて、セメントミルクを根固め層と同程度又若干落ちる配合として、強度増強部とすることもできる。
【0042】
また、複数の異形凹凸部を形成した場合には、全部が根固め部又は他の強度増強部に位置させることが望ましいが、少なくとも1つの異形凹凸部を位置させれば目的は達成される。
【0043】
また、鋼管の上端又は下端、即ち既製杭の表面で鋼管とコンクリートの継ぎ目部分も、一般に応力が集中するおそれがあるので、根固め部又は他の強度増強部に位置させることが望ましい。
【実施例1】
【0044】
図面に基づきこの発明の実施例を説明する。
【0045】
[1]既製杭1の構成
【0046】
(1) 環状突起10、10を形成する凹部を有する型枠(図示していない)内に、長さL、外径Dの鋼管11を設置して、必要なPC鋼棒、鉄筋を配置して、コンクリートを打設して、遠心成形して、この発明の既製杭1を構成する(図1(a))。
【0047】
(2) この既製杭1は、下端部2に環状突起(異形凹凸部)10A、10Bを有するコンクリート部3の環状突起(上側)10Aの上方(中間部、上部)に鋼管15を嵌装した構造となっている。コンクリート部3は、鋼管15を取り付けたストレート部4、鋼管15の下端16が係止した段差部5、段差部5と環状突起10Aの間の小ストレート部6、環状突起10A、10Bの間の小ストレート部7、環状突起10Bの下方の小ストレート部8から構成される。
【0048】
鋼管15の下端16は、コンクリート部3の段差部5に係止し、鋼管15の外表面と小ストレート部6の外表面とは面一に形成されている。
【0049】
(3) 環状突起10は、環状突起10A、10Bの2つが、下端2aからH、Hの位置に、放射方向の長さ(出の長さ)Lで、形成されている。また、環状突起は、上下がテーパー状に形成され、傾斜上面11、傾斜下面12を夫々形成してある。
【0050】
(4) 尚、図中18、19は、夫々上下の端板である。
【0051】
(5) また、例えば、
鋼管の外径D = 60cm
環状突起の外径「D+2×L」= 75cm
環状突起10Aの高さH= 150cm
貴環状突起10Bの高さH= 50cm
環状突起の間隔「H−H」= 100cm
で形成されている。
【0052】
[2]基礎杭構造30の構成
【0053】
(1) 軸部22の下方に拡大根固め部23形成した所定の杭穴21を掘削する(図1(a))。
【0054】
(2) 杭穴21内に、既製杭1を沈設し、拡大根固め部23内に、2つの環状突起10A、10B、鋼管15の下端16(コンクリート部2の段差部5)が位置するように設置する。この際、杭穴21の拡大根固め部23内には根固め液が、杭穴21の軸部22には、杭周固定液が夫々充填されている。根固め液及び杭周固定液が固化発現したならば、この発明の基礎杭構造30を構成する。基礎杭構造30は、既製杭1の環状突起10A、10B及び鋼管15の下端部(段差部5周辺)が根固め液が固化した根固め層25内に、既製杭1の鋼管15が杭周固定液が固化した杭周固定液層26内に埋設される。
【0055】
(3) 根固め液層26の根固め液は、掘削泥土と置換したコンクリート、モルタル、セメントミルク、あるいは掘削泥土とセメントミルク等とを撹拌混合して、構成する。
【0056】
また、根固め液層26は、固化した後、既製杭1に垂直荷重が作用した際に、環状突起10A、10Bの傾斜下面12、12及び/又は既製杭1の底2aからせん断力が伝搬して、根固め液層26が破壊されるまで(せん断力の伝搬方向に沿って亀裂が生じるまで)、より多くの荷重を負担できる。根固め液層26を構成する根固め液はこのような作用を可能とする程度の固化強度となるように、調整されている。通常、根固め液層26の根固め液の固化強度は、支持地盤の地盤強度と略同一としてある。
【0057】
(4) また、基礎杭構造30の基礎杭1に引抜力が作用した場合、垂直荷重と同様に、根固め液層26内の環状突起10A、10Bの傾斜上面11、11から斜め上方に向けてせん断力が伝搬して、根固め液層26が破壊されるまで、より多くの引抜力を負担できる。
【0058】
(5) また、地震時等で、基礎杭構造30の既製杭1の杭頭部に水平荷重が作用した場合、既製杭1はコンクリート部3の外周が鋼管15で被覆されているので、これを充分に負担できる。また、この際、鋼管15を被覆していない部分、即ち鋼管15の下端16より下方は、根固め液層26内に位置し、固化根固め液に覆われているので、水平荷重の影響を受けることが少なく、基礎杭構造30の全体として、充分な耐水平力を有する。
【0059】
[3]他の実施例
【0060】
(1) 前記実施例において、環状突起を2つ形成したが、少なくとも1つ形成してあれば、可能である。また、環状突起を2つ以上形成した場合、根固め液層内でせん断力を有効に伝搬させる必要から、環状突起の間隔(H−H)は、各環状突起10、10の下面12、12から斜め下方、または環状突起10、10の上面11から斜め上方へのせん断力の伝搬が重ならないような長さで形成する。
【0061】
(2) 前記実施例において、鋼管15の下端部に円盤状突起20、20を形成して基礎杭構造30とすることもできる(図2(b)(c))。円盤状突起20は、鋼管15の下端16に溶接し(図2(b))、あるいは下端16から距離Lを空けて上方に溶接することもできる(図2(c))。
【0062】
また、この場合、既製杭1を遠心成形する際に、予め鋼管15にドーナッツ状の鋼板(またはドーナツ状の鋼板を半割りした2つ)を溶接しておくこともでき、あるいは遠心成型後に、鋼管15の所定位置にドーナッツ状の鋼板を溶接を溶接して形成することができる。
【0063】
また、いずれの場合でも円盤状突起20は、杭穴21の根固め液層26内に位置するように、既製杭1を埋設して基礎杭構造30を構成し、環状突起10A、10Bと同じ機能を発揮する(図1(b)(c))。
【0064】
(3) また、前記実施例において、コンクリート部3に段差部5を形成して、鋼管15面と小ストレート部6の表面とを面一に形成したが、段差部5を省略して、ストレート部4と小ストレート部6とを連続的に形成することもできる(図示していない)。
【0065】
(4) また、前記実施例において、既製杭1は単独で使用したが、既製杭1を下杭として、通常のSC杭を上杭として連結して、杭穴21内に埋設して、基礎杭構造30とすることもできる(図示していない)。
【実施例2】
【0066】
前記実施例1では、既製杭1を単杭としたが、この実施例では、上下杭を連結して既製杭1を構成する。
【0067】
[1]既製杭1の構成
【0068】
(1) この実施例の既製杭1は、上杭32と下杭33とを連結継手34で接合して構成する(図3(b))。
【0069】
(2) 上杭32は、コンクリート基体3(外径D)の周囲を鋼管15(長さL、外径D、内径D)で被覆し、上下に鋼製の端板18、41を設置して構成したいわゆるSC杭である。下端板41の外周に接合用の嵌合溝43が形成されている。上杭32は長さL、外径Dで形成されている。
【0070】
(3) 下杭33は、長さLのコンクリート杭で、外周に2つの環状突起10A、10Bを形成してあり、上下に上端板42、下端板19を取り付けてある。環状突起10A、10Bは、前記実施例1と同様で、下端33aからH、Hの位置で、放射方向の長さ(出)Lで、2つ形成されている。また、上端板42の外周に嵌合溝43を形成してある。
【0071】
また、上杭33は、上端板42と環状突起10Aの間の小ストレート部6、環状突起10A、10Bの間の小ストレート部7、環状突起10Bの下方の小ストレート部8を有する。
【0072】
(4) 連結継手34は、上杭32、下杭33の外周面(下端板41、上端板42)に密着できる内面を有する継手本体35の外面に円盤状突起36を突設して構成する。連結継手34の内面に、上下杭32、33を重ねた状態の嵌合溝43、43に、対応して、これに嵌合できる嵌合突起37、37を形成してある。
【0073】
また、連結継手34は、円周方向に分割された3つの継手片34a、34aから構成する。従って、継手本体35は、3つの継手本体片35a、35aから構成し、円盤状突起36は、3つの円盤状突起片36a、36aから、夫々構成する。
【0074】
(5) 下杭33の上方に、上杭32を重ね、重ねた部分に連結継手片34a、34aを、継手本体片35a、35aの嵌合突起37、37を嵌合溝43、43に嵌挿しながら取付ける。各連結継手片34a、34aと上杭32、各連結継手片34a、34aと下杭33、を夫々溶接すると共に、必要ならば、重ねた連結継手片34a、34aを相互を溶接して連結して、上下杭32、33を連結継手片34a、34aを介して一体に接合する。以上のようにして、この発明の既製杭1を構成する(図2(a)(b))。
【0075】
(6) この実施例では、下杭32を用意しておけば、任意の長さLのSC杭を組み合わせれば、この発明の既製杭1を構成できるので、使用する構築現場の地盤状況に応じて、対処が容易である。
【0076】
[2]基礎杭構造30の構成
【0077】
(1) 実施例1と同様に、軸部22の下方に拡大根固め部23形成した所定の杭穴21を掘削し、杭穴21内に、既製杭1を沈設する(図3(a))。
【0078】
2つの環状突起10A、10Bを含む下杭33、連結用継手34、上杭32の下端部は、杭穴21の拡大根固め部23内に位置し、拡大根固め部23内の根固め液が固化発現後、根固め液層内に埋設される。また、上杭32の中間部及び上部は、杭周固定液が充填された杭穴21の軸部22に位置し、杭周固定液層内に埋設され、基礎杭構造30を構成する(図3(a))。
【0079】
(3) 基礎杭1に垂直荷重、引抜力、水平力が作用した場合の作用効果は、前記実施例1(特に図1(a)(b)、図2(a)(b)の実施例)と同様である。
【0080】
(4) 上杭32と下杭33の連結は、構築現場で行い、あるいは予め工場で連結することもできる。
【0081】
[3]他の実施例
【0082】
(1) 前記実施例において、円盤状突起36を有する連結継手を使用したが、円盤状突起を有しない通常の連結継手を使用することもできる。この場合、従来の無溶接の連結継手を使用することもできる(いずれも図示していない)。また、連結継手を使用せず、溶接のみで上下杭32、33を接合することもできる(図示していない)。
【0083】
(2) 他の実施例は、実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】(a)〜(c)は、この発明の実施例の基礎杭構造の正面図である。
【図2】(a)〜(c)は、この発明の実施例の既製杭で、図1の基礎杭構造に対応した縦断面図である。
【図3】この発明の他の実施例で、(a)は基礎杭構造の正面図、(b)は既製杭の縦断面図である。
【図4】図3(b)のA部拡大図で、(a)は接合前、(b)は接合後を夫々表す。
【図5】図3(b)のB−B断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 既製杭
2 既製杭の下端部
3 既製杭のコンクリート部
5 コンクリート部の段差部
10、10A、10B 環状突起(異形凹凸部)
11 環状突起の傾斜上面
12 環状突起の傾斜下面
15 鋼管
16 鋼管の下端
18 端板(上)
19 端板(下)
20 円盤状突起
21 杭穴
22 杭穴の軸部
23 杭穴の拡底部
24 杭穴の根固め部
25 根固め液層
26 杭周固定液層
30 基礎杭構造
32 上杭
33 下杭
34 連結継手
35 連結継手の継手本体
36 連結継手の円盤状突起
37 連結継手の嵌合突起
41 上杭の下端板
42 下杭の上端板
43 端板の嵌合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の杭本体の下端部が所定軸径で形成され、当該下端部に異形凹凸部が形成され、前記杭本体の少なくとも上部の全部又は一部を長さLの鋼管で被覆したことを特徴とする既製杭。
【請求項2】
杭本体で、鋼管を被覆していない部分の外径と、鋼管を被覆した部分の外径とを異なる径で形成したことを特徴とする請求項1に記載の既製杭。
【請求項3】
根固め部を有する杭穴内に埋設して使用する既製杭であって、前記既成杭の下端部が前記杭穴の根固め部に位置するように構成したことを特徴とする請求項1〜2記載の既製杭。
【請求項4】
深さ方向に1つ以上の強度増強部を有する杭穴内に埋設して使用する既製杭であって、鋼管の下端が、前記杭穴の強度増強部内に位置するように、前記鋼管を構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の既製杭。
【請求項5】
所定軸径を有する複数の単位杭を上下に接合してなる既製杭であって、
少なくとも1本の単位杭は、外周の全部又は一部を鋼管で被覆して構成し、少なくとも1本の単位杭は、外周の全部又は一部に異形凹凸部を形成して構成したことを特徴とする既製杭。
【請求項6】
上下に位置する単位杭の軸径を異なる径で形成したことを特徴とする請求項5記載の既製杭。
【請求項7】
根固め部を有する杭穴内に既製杭を埋設して構成する基礎杭構造において、前記既製杭は、所定軸径を有する複数の単位杭を上下に接合して構成し、前記単位杭の内、少なくとも1本の単位杭は、全部又は一部の外周を鋼管で被覆して構成し、少なくとも1本の単位杭は、異形凹凸部を形成して構成したことを特徴とする基礎杭構造。
【請求項8】
少なくとも1つの異形凹凸部を杭穴の根固め部内に位置させることを特徴とする請求項7記載の基礎杭構造。
【請求項9】
杭穴と既製杭との間に杭周固定液層を形成し、該杭周固定液層の所定の深さに強度増強部を形成し、1つ又は複数の鋼管の上端又は下端位置、単位杭の接合位置、異形凹凸部位置の各位置の一部又は全部を前記強度増強部に埋設したことを特徴とする請求項7記載の基礎杭構造。
【請求項10】
根固め部を有する杭穴内に既製杭を埋設して構成する基礎杭構造において、杭穴と既製杭との間に杭周固定液層を形成し、該杭周固定液層の所定の深さに強度増強部を形成し、前記既製杭は、コンクリート製の杭本体の少なくとも上部を長さLの鋼管で被覆すると共に、前記コンクリート製の杭本体で、前記鋼管の上端又は下端に近接して異形凹凸部を形成して、前記異形凹凸部及び前記鋼管の上端又は下端を、前記根固め部内又は強度増強部内に、埋設したことを特徴とした基礎杭構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−39955(P2007−39955A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224758(P2005−224758)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】