説明

既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置および案内方法と既設埋設管の更新方法

【課題】 既設埋設管破砕用カッタヘッドを振れ回りを防止しつつ、計画線に沿わせて確実に前進させることができる案内装置を提供する。
【解決手段】 本発明の案内装置100によれば、上下方向揺動手段60および水平方向揺動手段70を用いて揺動部材40を揺動させることにより、既設埋設管1に係合している係合体30を基準として、この揺動部材40の後端に接続されているカッタヘッド7を所望の位置に案内して位置決めし、固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に既設埋設管および周囲の地盤を掘削するカッタヘッドの進行方向を案内する装置に関し、より詳しくは、掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッドが半径方向に大きくずれようとする場合や既設埋設管の進路が曲がっている場合においても、計画線どおりに新しい埋設管を埋設できるようにカッタヘッドの進行方向を正確に案内する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道等を含む各種用途に供される地中埋設管は、経年変化によって老朽化が進むため、適切な時期に新しい埋設管(更新管)に交換する必要がある。
この場合、既設埋設管が埋設されている個所の地盤を地表面から開削して既設埋設管を掘り出した後に新たな管を吊り込んで埋設し直す方法、あるいは図10に示したように地表面に掘設した立坑から水平方向に掘進しつつ既設埋設管を撤去して更新管に交換する方法が用いられる。
【0003】
図10に示した従来の既設埋設管更新方法においては、既設埋設管1を更新管2に交換するべく地表面Gに発進坑3を掘設するとともに、この発進坑3の底部に推進機4を設置する。
そして、推進機4の駆動モータおよび減速機5によってスクリュコンベア6およびその先端に設けられているカッタヘッド7を一体に回転駆動し、カッタヘッド7の面板から突設されている掘削ビット8により既設埋設管1を破砕しつつその周囲の地盤を掘削する。 さらに、破砕した既設埋設管1の破片および掘削した周囲の地盤の土砂は、スクリュコンベア6およびケーシング9によって移送し、発進坑3側に取り出して地表面G側に除去する。
これと同時に、推進機4によってスクリュコンベア6,カッタヘッド7,更新管2,先導管10を一体に前方に推進し、既設埋設管1を更新管2に順次交換する。
【0004】
また、カッタヘッド7の進行方向にずれが生じた場合に備えて、先導管10と刃口部11との間には、複数の方向修正用油圧シリンダ12が先導管10の内側に円周方向に等間隔に並設されている。
これにより、これらの油圧シリンダ12を選択的に伸縮させて先導管10に対し刃口部11を傾斜させると、刃口部11の内周面がカッタヘッド7の外周部を半径方向内側に押すので、カッタヘッド7の進行方向を修正することができる。
【0005】
一方、カッタヘッドに先行して既設埋設管の内部を移動する案内手段によりカッタヘッドを案内し、既設埋設管の進路に沿わせてカッタヘッドを進行させる技術が提案されている(下記特許文献1,2を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平9−25787号公報
【特許文献2】特開2000−257374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、既設埋設管1の下側に基礎としての丸太やコンクリート等が配設されていると、カッタヘッド7に設けられている掘削ビット8はこれらの丸太やコンクリートを掘削することになり、カッタヘッド7に作用する掘削反力の不釣り合いが生じる。
このとき、カッタヘッド7の外周と先導管の刃口部11の内周面との間には、その円周方向の全体にわたって隙間が存在するため、カッタヘッド7が刃口部11の内側で振れ回り、その掘削性が低下することがある。
特に、カッタヘッド7の振れ回りに伴って既設埋設管1に掘削ビット8が食い込むと、カッタヘッド7の回転に連れて既設埋設管1が共回りし、既設埋設管1の破砕効率が大きく低下してしまう。
【0008】
また、カッタヘッド7に作用する掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッド7がその半径方向に大きくずれると、方向修正用油圧シリンダ12を用いた進行方向の修正ができなくなり、計画線に沿った掘削および更新管2の埋設が不能となる。
【0009】
また、上記特許文献1に記載されている技術は、既設埋設管の進路に合わせてカッタヘッドの進行方向を案内するものにすぎない。
したがって、既設埋設管の進路が曲がっている場合には、この曲がりに沿って更新管を埋設することになってしまう。
【0010】
また、上記特許文献2に記載されている技術は、カッタヘッドに先行して既設埋設管内を前進する先行体にセンサを設けるとともに、このセンサから得られる既設埋設管の曲がりや傾斜を表す信号に基づいて方向修正用油圧シリンダの作動を制御するものである。
これにより、カッタヘッドの半径方向のずれ量が方向修正用油圧シリンダによって修正可能なずれ量を上回ると、カッタヘッドの進行方向を修正できなくなってしまう。
【0011】
そこで本発明の目的は、掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッドが半径方向に大きくずれる場合や既設埋設管の進路が曲がっている場合においても、計画線どおりに新しい埋設管を埋設できるようにカッタヘッドの進行方向を正確に案内できる既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置および案内方法、さらにはそれを用いた既設埋設管の更新方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に前記既設埋設管を破砕するカッタヘッドの進行方向を案内するための装置であって、
前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管に挿入されると前記既設埋設管と上下方向および水平方向に係合する係合体と、
その前端が前記係合体に軸支されてその後端が上下方向および水平方向に揺動自在であり、かつ前記後端が前記カッタヘッドに対して揺動自在に接続される揺動部材と、
前記係合体に対して前記揺動部材を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段と、
前記係合体に対して前記揺動部材を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段と、
前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段の作動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【0013】
すなわち、請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段を用いて揺動部材を揺動させることにより、既設埋設管に係合している係合体を基準として、この揺動部材の後端に接続されているカッタヘッドを所望の位置に位置決めすることができる。
これにより、新しい埋設管を埋設する際の目標である計画線に対し、既設埋設管が上下方向あるいは水平方向に位置ずれしている場合でも、計画線に対してカッタヘッドを正確に位置合わせすることができるから、カッタヘッドを推進する際の進行方向を正確に制御することができる。
また、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段を用いて揺動部材が揺動しないように固定すれば、カッタヘッドが回転する際の振れ回りを確実に防止することができる。
【0014】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
前記カッタヘッドは、その回転軸線と同軸に前記カッタヘッドに取り付けられるとともにその外周面に前記揺動部材の後端が揺動自在に接続される、前方に開口する接続円筒を有しており、
前記接続円筒の内部には、前記カッタヘッドの位置を計測するために用いる第1の計測手段が前記カッタヘッドと同軸に配設されていることを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【0015】
すなわち、請求項2に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、既設埋設管の側からカッタヘッドを見たときに第1の計測手段を視認することができるから、カッタヘッドの位置を正確に計測することができる。
そして、カッタヘッドの計測位置に合わせて制御手段を操作し、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段を作動させて揺動部材を揺動させることによりカッタヘッド押動して、カッタヘッドが本来あるべき位置に戻すことができる。
【0016】
また、請求項3に記載した手段は、請求項2に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
前記揺動部材は、その後端が前記接続筒を水平方向に挟むように間隔を開けて互いに平行に延びる左右一対の板状部材を有していることを特徴とする請求項2に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【0017】
すなわち、請求項3に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置においては、間隔を開けて互いに平行に延びる左右一対の板状部材によって揺動部材が構成されるから、既設埋設管の側から第1の計測手段を視認するときに揺動部材が邪魔になることがない。
【0018】
また、請求項4に記載した手段は、請求項3に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
前記揺動部材の前端を前記係合体に対して軸支する支持手段をさらに備え、
前記支持手段は、前記左右一対の板状部材の前端を水平方向に延びる揺動軸によってそれぞれ軸支する、水平方向に離間して配設された左右一対の支持部を有していることを特徴とする請求項3に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【0019】
すなわち、請求項4に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置においては、水平方向に離間させて配設した左右一対の支持部によって左右一対の板状部材を支持するから、既設埋設管の側から第1の計測手段を視認するときに支持手段が邪魔になることがない。
【0020】
また、請求項5に記載した手段は、請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
前記係合体は、前記既設埋設管の内部に遊嵌される前後一対の係合部材と、これら前後一対の係合部材を前後方向に接続する接続部材とを有し、
前記前後一対の係合部材の少なくとも一方に、前記係合体の位置を計測するときに用いる第2の計測手段が設けられており、
前記制御手段は、前記第2の計測手段を用いて計測された前記係合体の位置に応じて前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置。
【0021】
すなわち、請求項5に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、既設埋設管の側からカッタヘッドを見たときに第2の計測手段を視認することができるから、係合体、したがって既設埋設管の位置を正確に計測することができる。
また、前後一対の係合部材にそれぞれ第2の計測手段を設けると、係合体、したがって既設埋設管の傾斜を正確に測定することができる。
さらに、カッタヘッドに第1の計測手段が設けられているときには、カッタヘッドに対する係合体の相対位置、したがってカッタヘッドに対する既設埋設管の相対位置を計測することができるから、カッタヘッドによる掘削がさらに進行した場合にカッタヘッドに生じる変位を前もって想定することができる。
これにより、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段を前もって作動させることができるから、計画線に対するカッタヘッドの半径方向のずれ量を最小限に抑えることが可能となる。
【0022】
また、請求項6に記載した手段は、請求項5に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置において、
前記制御手段は、前記第2の計測手段を用いて計測された前記係合体の位置に応じて、前記カッタヘッドの進行方向を修正するために前記カッタヘッド側に設けられている方向修正油圧シリンダの作動を制御することを特徴とする請求項5に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置。
【0023】
すなわち、請求項6に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置によれば、揺動部材、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段を用いたカッタヘッドの進行方向の案内に加えて、カッタヘッド側に設けられている方向修正油圧シリンダも用いることができるから、掘削反力の不釣合によってカッタヘッドがその半径方向に大きくずれようとする場合でも、そのずれを確実に抑制することができる。
【0024】
また、請求項7に記載した手段は、請求項1乃至6のいずれかに記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置を用いつつ、既設埋設管破砕用カッタヘッドを案内する方法であって、
前記カッタヘッドが前記既設埋設管を破砕するときに生じる計画線からの位置ずれ方向および位置ずれ量を計測し、
計測された前記位置ずれ方向および前記位置ずれ量に基づき、前記制御手段を介して前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段を作動させて前記揺動部材を揺動させ、 前記揺動部材の揺動により前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させて、前記計画線に対する前記カッタヘッドの位置ずれを修正することを特徴とする。
【0025】
すなわち、請求項7に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内方法は、カッタヘッドの位置ずれを修正するときに、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段により、揺動部材を上下方向および水平方向にそれぞれ揺動させ、カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させるものであるから、計画線に対するカッタヘッドの位置ずれの修正を極めて正確に制御することができる。
また、既設埋設管の内部において、案内装置が上下方向および水平方向に対して傾いた場合でも、上下方向揺動手段および水平方向揺動手段の作動制御を修正することにより、カッタヘッドの位置ずれの修正を確実に行うことができる。
【0026】
また、請求項8に記載した手段は、回転駆動されるカッタヘッドを用いて既設埋設管を破砕しつつ、新しい埋設管を推進して既設埋設管を更新する方法であって、
前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させる変位手段を備えた案内装置を前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管内に配置し、
前記カッタヘッドが前記既設埋設管を破砕するときに生じる計画線からの位置ずれ方向および位置ずれ量を計測し、
計測された位置ずれ方向および位置ずれ量に基づいて、前記案内装置により前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させて前記計画線に対する前記カッタヘッドの位置ずれを修正することを特徴とする。
【0027】
すなわち、請求項8に記載した既設埋設管の更新方法は、カッタヘッドが既設埋設管を破砕するときに生じる位置ずれを計測しつつ、案内装置によってカッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させてカッタヘッドの位置ずれを修正するものであるから、更新管を計画線に沿って正確に埋設することが可能となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、掘削反力の不釣り合いによってカッタヘッドが半径方向に大きく位置ずれする場合や既設埋設管の進路が曲がっている場合であっても、計画線どおりに新しい埋設管を埋設できるようにカッタヘッドの進行方向を正確に案内可能な既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図1乃至図9を参照し、本発明による既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置および案内方法と、それを用いた既設埋設管の更新方法の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の参照符号を用いて重複した説明を省略し、かつカッタヘッドが前進する方向を前方、カッタヘッド側から既設埋設管を見たときの水平方向を左右方向、鉛直方向を上下方向と言う。
【0030】
まず最初に図1乃至図6を参照し、本実施形態の既設埋設管破砕用ヘッドカッタの案内装置の構造について詳細に説明する。
【0031】
図1に示したように、本実施形態の案内装置100は、図10に示した従来の既設埋設管更新装置の前方において既設埋設管1の内部に配置されるとともに、その後端がカッタヘッド7に接続されてカッタヘッド7の進行を案内するものである。
なお、既設埋設管更新装置を用いて既設埋設管を更新する方法の基本的な部分は、従来と同様である。
【0032】
この案内装置100は、図2および図3に示したように、この案内装置100をカッタヘッド7の面板に接続するための接続手段20と、既設埋設管1に挿入されると既設埋設管1と上下方向および水平方向に係合する係合体30と、その前端が係合体30に軸支されてその後端が上下方向および水平方向に揺動自在であり、かつその後端が接続手段20を介してカッタヘッド7に揺動自在に接続される揺動部材40と、揺動部材40を係合体30に対して揺動自在に支持する支持手段50と、係合体30に対して揺動部材40を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段60と、係合体30に対して揺動部材40を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段70と、上下方向揺動手段60および水平方向揺動手段70の作動を制御する制御手段80と、係合体30の位置を計測するために用いる第2の計測手段90とを備えている。
【0033】
接続手段20は、図4および図5に示したように、カッタヘッド7の面板15と一体に形成され若しくは面板15に着脱自在に装着されるカッタヘッド7と同軸な支持円筒21と、この支持円筒21の内側に軸受22を介して取り付けられる接続円筒23とを有している。
そして、接続円筒23の前側外周面には、揺動部材40を前後方向に係止するための環状位置決め部材24,25が固定されている。
さらに、接続円筒23の内部には、既設埋設管1側からカッタヘッド7の位置を計測するときにターゲットとなる発光ダイオード(第1の計測手段)が、カッタヘッド7と同軸に配設されている。
【0034】
係合体30は、図2および図3に示したように、前後方向に離間している一対の環状部材31,32と、これらの環状部材31,32を接続するための接続部材33,34,35とを有している。
前後一対の環状部材31,32の外周面には、既設埋設管1の内周面と摺動する摺動部材36が、それぞれ4個ずつ円周方向に等間隔に固定されている。
なお、一対の環状部材31,32と摺動部材36との間にそれぞれ調整部材を介装することにより、さらに内径の大きい既設埋設管にも対応することができる。
また、一対の環状部材31,32の下側において水平に延びる接続部材33は幅広の厚板から構成されており、支持手段50を支持する役割を果たしている。
【0035】
揺動部材40は、図4および図5に示したように、前述した環状位置決め部材24,25の間において接続円筒23に外嵌される、その内周面が前後方向に円弧状に湾曲している円筒部材41と、この円筒部材41の外周面にその後端が固定されて互いに平行に延びる左右一対の板状部材42,43とを有している。
これらの板状部材42,43は、その前端が左右方向に水平に延びる揺動軸54a,55aによって支持手段50に軸支され、その後端が上下方向に揺動することができる。
また、進行方向左側の板状部材44の長手方向中央部には、上下方向揺動手段60の先端を取り付けるためのブラケット44が固設されている。
【0036】
支持手段50は、係合体30の接続部材33の上面と平行に延びる底板51と、この底板51が上下方向に延びる軸線の回りに揺動できるように軸支する揺動軸52とを有している。
また、底板51の左側の後端には、上下方向揺動手段60の基端を取り付けるためのブラケット53が垂設されている。
また、底板51の左右両端には、揺動部材40を構成している左右一対の板状部材42,43の前端をそれぞれ軸支するための支持部54,55が立設されている。
なお、左右一対の板状部材42,43の前端を軸支している揺動軸54a,55aは、平面視において揺動軸52を左右方向に挟む位置において各支持部54,55に挿通されている。
【0037】
上下方向揺動手段60は、前述したブラケット44,53間に取り付けられる油圧シリンダである。
そのシリンダ本体61からピストン62が突出すると揺動部材40の後端が上方に揺動し、シリンダ本体61内へとピストン62が後退すると揺動部材40の後端が下方に揺動する。
このとき、油圧シリンダ60は上下方向に対して傾斜して延びるように配設されているから、係合体30の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0038】
水平方向揺動手段70は、支持手段50の右側の支持部55に連設されているブラケット55bと、係合体30の前側環状部材31の後側内壁面に固定されているブラケット37との間に取り付けられる油圧シリンダである。
そのシリンダ本体71からピストン72が突出すると、支持手段50が揺動軸52の回りで時計方向に揺動し、揺動部材40の後端は左方に揺動する。
また、シリンダ本体71内へとピストン72が後退すると、支持手段50が揺動軸52の回りで反時計方向に揺動し、揺動部材40の後端が右方に揺動する。
このとき、油圧シリンダ70は前後方向に水平に延びるように配設されているから、係合体30の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0039】
制御手段80は、係合体30の接続部材33の前側上面に固定されており、配線81を介して地表面G側から送信される操作信号に基づいて各油圧シリンダ60,70に供給する圧油の流れを制御し、それによって揺動部材40の後端の揺動方向および揺動位置を制御する。
また、この制御手段80は、カッタヘッド7側の方向修正用油圧シリンダ12の作動も制御できるように構成することができる。
なお、この制御手段80から各油圧シリンダ60,70へと延びる油圧配管の図示は省略されている。
【0040】
第2の計測手段90は、図6および図9に示したように、係合体30を構成している前後一対の環状部材31,32の上側内周面にそれぞれ固定された発光ダイオード91,92をそれぞれ有しており、係合体30の位置を計測する際のターゲットとなる。
【0041】
次に、図1乃至図8を参照し、上述した構造を有する本実施形態の案内装置100の作動について説明する。
【0042】
図1に示したように、本実施形態の案内装置100は、既設埋設管1およびその周囲の地盤を掘削するカッタヘッド7の前方において既設埋設管1の内部に配置される。
このとき、図4および図5に示したように、揺動部材40の後端に固定されている円筒部材41が、接続手段20の接続円筒23に外嵌され、かつ前後一対の環状位置決め部材24,25の間に挟装されている。
これにより、カッタヘッド7が前進すると、後側の環状位置決め部材24によって円筒部材41、したがって揺動部材40が前方に押されるから、案内装置100の全体がカッタヘッド7と一体に前進する。
【0043】
また、カッタヘッド7側の支持円筒21と接続円筒23との間に軸受22が介装されているから、カッタヘッド7が回転しても接続円筒23が回転することはなく、したがって案内装置100がカッタヘッド7と共回りすることはない。
【0044】
さらに、円筒部材41の内周面が図示のように円弧状に湾曲しているから、カッタヘッド7に支持されている接続円筒23に対して揺動部材40は滑らかに揺動できる。
なお、この部分に球面継手を用いることもできるが、本実施形態における構造の方が安価であり、製造および交換を容易に行うことができる。
【0045】
本実施形態の案内装置100が既設埋設管1の内部を前進するときには、係合体30の摺動部材36が既設埋設管1の内壁面上を摺動する。
また、摺動部材36が取り付けられている一対の環状部材31,32が前後方向に離間しており、かつ既設埋設管1の内壁面と摺動部材36との間の隙間は小さい。
これにより、既設埋設管1の内部における係合体30のガタつきが小さいから、係合体30は既設埋設管1の内壁面と上下方向および水平方向に容易に係合し、各油圧シリンダ60,70を作動させてカッタヘッド7を変位させる際に生じる反力を既設埋設管1の内壁面に直ちに伝達することができる。
さらに、既設埋設管1の軸線に沿ってほぼ平行に延びる各油圧シリンダ60,70を、前後一対の環状部材31,32の間に配置する構造であるから、内径の小さい既設埋設管1の内部にも容易に配置することができる。
【0046】
図4および図5に示したように、更新管2を埋設する基準である計画線と既設埋設管1の軸線とが同軸であるときには、各油圧シリンダ60,70をその中立位置に固定する。 すると、揺動部材40もまた中立位置に固定されるから、カッタヘッド7を計画線と同軸に固定することができる。
これにより、掘削反力の不釣合に起因するカッタヘッド7の振れ回りを防止できるから、既設埋設管1の破砕およびその周囲の地盤の掘削を効率よく行うことができる。
【0047】
一方、図7に示したように、計画線に対して既設埋設管1が沈下している場合には、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60を伸長させることにより、揺動部材40の後端を上昇させて、カッタヘッド7を計画線と同軸に固定することができる。
これにより、掘削反力の不釣合に起因するカッタヘッド7の半径方向のずれを防止できるから、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
【0048】
同様に、例えば既設埋設管1の下側に基礎としての丸太やコンクリートが配設されていると、掘削ビット8がこれらの丸太やコンクリートを掘削する時に生じる反力により、カッタヘッド7は上方に逃げようとする。
このとき、既設埋設管1の側から発光ダイオード(第1の計測手段)26の位置を計測していて、カッタヘッド7の上方へのずれが認められると、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60を短縮方向に作動させることにより、揺動部材40の後端を降下させてカッタヘッド7に対して下向きの力を作用させ、カッタヘッド7を強制的に下方に変位させる。
これにより、カッタヘッド7の上方への逃げを防止し、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
【0049】
他方、図8に示したように、計画線に対して既設埋設管1が進行方向右側にずれている場合には、水平方向揺動手段の油圧シリンダ70を伸長させることにより、支持手段50を揺動軸52回りに時計方向に揺動させる。
すると、揺動部材40の後端が進行方向左側に移動するから、カッタヘッド7を計画線と同軸に固定することができる。
これにより、掘削反力の不釣り合いに起因するカッタヘッド7の振れ回りを防止できるから、既設埋設管1の破砕およびその周囲の地盤の掘削を効率よく行うことができる。
【0050】
同様に、例えば既設埋設管1の周囲の地盤のうち進行方向左側の部分が硬いと、カッタヘッド7は進行方向右側に逃げようとする。
このとき、既設埋設管1の側から発光ダイオード(第1の計測手段)26の位置を計測していて、カッタヘッド7の進行方向右側へのずれが認められると、水平方向揺動手段の油圧シリンダ70を伸長方向に作動させることにより揺動部材40の後端を進行方向左側に変位させ、カッタヘッド7に対して進行方向左向きの力を作用させ、カッタヘッド7を強制的に左方に変位させる。
これにより、カッタヘッド7の進行方向右側への逃げを防止し、カッタヘッド7を計画線に沿わせて前進させることができる。
【0051】
加えて、図9に示したように、計画線に対して既設埋設管1が進行方向前側に下がっている場合には、既設埋設管1の側から計測したときに、係合体30の前後の環状部材31,32にそれぞれ固定されている発光ダイオード(第2および第3の計測手段)91,92に高さのずれが生じる。
この場合には、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60を徐々に伸長させることにより、揺動部材40の後端を徐々に上昇させる。
【0052】
同様に、計画線に対して既設埋設管1が進行方向右側に傾斜している場合には、既設埋設管1の側から計測したときに、係合体30の前後の環状部材31,32にそれぞれ固定されている発光ダイオード(第2および第3の計測手段)91,92に水平方向のずれ量が変化する。
この場合には、水平方向揺動手段の油圧シリンダ70を徐々に伸長させることにより、揺動部材40の後端を徐々に進行方向左側に変位させる。
【0053】
これにより、掘削反力の不釣り合いに起因するカッタヘッド7の振れ回りを防止して、既設埋設管1の破砕およびその周囲の地盤の掘削を効率よく行うことができる。
また、掘削反力の不釣り合いに起因するカッタヘッド7の半径方向のずれを防止して、カッタヘッド7が計画線に沿って前進するようにその進行方向を案内することができる。
【0054】
さらに、既設埋設管1の側から発光ダイオード26の変位を連続時に計測していて、その単位時間あたりのずれ量が所定値を超える場合には、制御手段80は、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60および水平方向揺動手段の油圧シリンダ70の作動制御に加えて、カッタヘッド7側の方向修正用油圧シリンダ12(図1参照)の作動制御も開始する。
これにより、この案内装置100によるカッタヘッド7の進行方向の修正と、方向修正用油圧シリンダ12によるカッタヘッド7の進行方向の修正とを足し合わせることができる。
したがって、掘削反力の大きな不釣合によってカッタヘッドがその半径方向に大きくずれようとする場合でも、そのずれを確実に抑制し、計画線に沿わせてカッタヘッド7を前進させることが可能となる。
【0055】
以上、本発明に係る既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置の一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、上下方向揺動手段の油圧シリンダ60および水平方向揺動手段の油圧シリンダ70は、それぞれ一つずつ設けられている。
これに対して、各油圧シリンダ60,70を2つずつ用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第1実施形態の既設埋設管破砕用カッタヘッドを示す斜視図。
【図2】図1に示したカッタヘッドの正面図(a)および側面図(b)。
【図3】図1に示したカッタヘッドが既設埋設管を破砕する状態を示す断面図。
【図4】図1に示したカッタヘッドの作用を説明する平面図。
【図5】変形例のカッタヘッドの作用を示す平面図(a)および正面図(b)。
【図6】変形例のカッタヘッドの作用を示す平面図(a)および正面図(b)。
【図7】第2実施形態のカッタヘッドを示す正面図。
【図8】第3実施形態のカッタヘッドを示す正面図。
【図9】変形例のカッタヘッドを示す平面図。
【図10】従来の既設埋設管の更新装置を示す側面断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 既設埋設管
2 更新管
3 発進坑
4 推進機
5 駆動モータおよび減速機
6 スクリュコンベア
7 カッタヘッド
8 掘削ビット
9 ケーシング
10 先導管
11 刃口部
12 方向修正用油圧シリンダ
15 面板
20 接続手段
21 支持円筒
22 軸受
23 接続筒
24,25 環状位置決め部材
26 LED(第1の計測手段)
30 係合体
31 前側環状部材
32 後側環状部材
33,34,35 接続部材
36 摺動部材
37 ブラケット
40 揺動部材
41 円筒部材
42,43 板状部材
44 ブラケット
50 支持手段
51 底板
52 揺動軸
53 ブラケット
54,55 支持部
54a,55a 揺動軸
55b ブラケット
60 油圧シリンダ(上下方向揺動手段)
61 シリンダ本体
62 ピストン
70 油圧シリンダ(水平方向揺動手段)
71 シリンダ本体
72 ピストン
80 制御手段
91,92 発光ダイオード(第2の計測手段)
100 既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設埋設管を新しい埋設管に更新する際に前記既設埋設管を破砕するカッタヘッドの進行方向を案内するための装置であって、
前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管に挿入されると前記既設埋設管と上下方向および水平方向に係合する係合体と、
その前端が前記係合体に軸支されてその後端が上下方向および水平方向に揺動自在であり、かつ前記後端が前記カッタヘッドに対して揺動自在に接続される揺動部材と、
前記係合体に対して前記揺動部材を上下方向に揺動させる上下方向揺動手段と、
前記係合体に対して前記揺動部材を水平方向に揺動させる水平方向揺動手段と、
前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段の作動を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【請求項2】
前記カッタヘッドは、その回転軸線と同軸に前記カッタヘッドに取り付けられるとともにその外周面に前記揺動部材の後端が揺動自在に接続される、前方に開口する接続円筒を有しており、
前記接続円筒の内部には、前記カッタヘッドの位置を計測するために用いる第1の計測手段が前記カッタヘッドと同軸に配設されていることを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【請求項3】
前記揺動部材は、その後端が前記接続筒を水平方向に挟むように間隔を開けて互いに平行に延びる左右一対の板状部材を有していることを特徴とする請求項2に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【請求項4】
前記揺動部材の前端を前記係合体に対して軸支する支持手段をさらに備え、
前記支持手段は、前記左右一対の板状部材の前端を水平方向に延びる揺動軸によってそれぞれ軸支する、水平方向に離間して配設された左右一対の支持部を有していることを特徴とする請求項3に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置。
【請求項5】
前記係合体は、前記既設埋設管の内部に遊嵌される前後一対の係合部材と、これら前後一対の係合部材を前後方向に接続する接続部材とを有し、
前記前後一対の係合部材の少なくとも一方に、前記係合体の位置を計測するときに用いる第2の計測手段が設けられており、
前記制御手段は、前記第2の計測手段を用いて計測された前記係合体の位置に応じて前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段の作動を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記第2の計測手段を用いて計測された前記係合体の位置に応じて、前記カッタヘッドの進行方向を修正するために前記カッタヘッド側に設けられている方向修正油圧シリンダの作動を制御することを特徴とする請求項5に記載した既設埋設管破砕用カッタヘッド案内装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載した既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内装置を用いて、前記カッタヘッドの進行方向を案内する方法であって、
前記カッタヘッドが前記既設埋設管を破砕するときに生じる計画線からの位置ずれ方向および位置ずれ量を計測し、
計測された前記位置ずれ方向および前記位置ずれ量に基づき、前記制御手段を介して前記上下方向揺動手段および前記水平方向揺動手段を作動させて前記揺動部材を揺動させ、 前記揺動部材の揺動により前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させて、前記計画線に対する前記カッタヘッドの位置ずれを修正することを特徴とする既設埋設管破砕用カッタヘッドの案内方法。
【請求項8】
回転駆動されるカッタヘッドを用いて既設埋設管を破砕しつつ、新しい埋設管を推進して既設埋設管を更新する方法であって、
前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させる変位手段を備えた案内装置を前記カッタヘッドの前方において前記既設埋設管内に配置し、
前記カッタヘッドが前記既設埋設管を破砕するときに生じる計画線からの位置ずれ方向および位置ずれ量を計測し、
計測された位置ずれ方向および位置ずれ量に基づいて、前記案内装置により前記カッタヘッドをその半径方向に強制的に変位させて前記計画線に対する前記カッタヘッドの位置ずれを修正することを特徴とする既設埋設管の更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−249678(P2006−249678A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63844(P2005−63844)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】