説明

昇華型画像形成装置

【課題】 昇華型画像形成装置に適した誤差拡散法を用いて、高品質な画質を実現する。
【解決手段】 記録ヘッドを用いて印画する昇華型の画像形成装置において、前記記録ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、前記記録ヘッドの温度に応じて、前記画像形成装置が安定して印画できる画像データの範囲を設定する範囲設定手段と、入力画像データに対して誤差拡散法により量子化を行う誤差拡散処理手段と、前記範囲に基づいて、前記誤差拡散処理手段による結果を制御する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華型画像形成装置に適した誤差拡散法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、またはスキャナ等の画像入力機器の進歩に伴い、画像入力機器に入力された画像を印刷出力するための画像形成装置として、昇華型画像形成装置が注目されている。
昇華型画像形成装置では一般に、感熱紙を印画用紙として用いて、主走査方向に配列された複数個の発熱体(記録ヘッド)を選択的に駆動しながら、該用紙を副走査方向に搬送する。これにより、感熱紙である印画用紙上にインクリボンに塗布された昇華性染料インクを転写し、印画用紙上にドットライン状の画像を形成する。
【0003】
昨今、蓄えた多数の写真を、1枚ずつ印刷し出力する形式から、行事ごとにまとめて印刷・冊子化する形式、いわゆるフォトブック印刷に対するニーズが増えてきている。このフォトブック印刷は、昇華型画像形成装置の新たな使い方として注目を集めている。
フォトブックは配布を目的として印刷されることが多く、ユーザは高い印画品質を求めている。今後高階調化、高解像度化などさらに高い品位の仕上がりが望まれると考えられる。
従来、入力画像データを画像形成装置が出力可能な画像データに変換するためのハーフトーン技術のうち、階調性の高いハーフトーン画像を生成する方法として誤差拡散法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−200742
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、昇華型画像形成装置において、誤差拡散法を用いた場合、次のような問題点がある。
【0006】
通常、昇華型画像形成装置では、画像データの階調値が0の場合でも、数十パルスほどのパルス値を持つドットデータに変換する。この数十パルスほどのパルス値を最低転写パルスと呼ぶ。昇華型画像形成装置では、最低転写パルス値以下は、インクや紙メディアが非常に不安定な領域であり、転写不良、しわ、かすれ、箔切れなどが発生しやすい。そこで、出力値ができるだけ最低転写パルス値以下にならないよう制御し、不安定な領域における印画を低減する必要がある。また、不安定な領域は、画像形成装置や記録ヘッドの温度によって変動する。画像形成装置および記録ヘッドの温度が高い場合は、最低転写パルス値を低くする一方、温度が低い場合は、最低転写パルス値を高くすることで紙送り方向の書き出しを急峻にするように制御している。しかし、入力された画像データに対して誤差拡散法を行った場合、出力値が最低転写パルス値以下に変換される可能性がある。この場合、色のかすれ、未転写など著しい画質の劣化を生じてしまう。(図2)
これに対し特許文献1には、入力された画像データの階調値ごとに最適な拡散係数を選択する誤差拡散法が開示されている。
【0007】
しかしながら、昇華画像形成装置では、温度によりインクの散布特性が変わるため、階調値との相関が薄く、誤差拡散法による効果を得にくい。
本発明は前記課題に鑑みなされたもので、昇華型画像形成装置において適切な誤差拡散法を用いて、高品質な画質を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、記記録ヘッドを用いて印画する昇華型の画像形成装置において、前記記録ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、前記記録ヘッドの温度に応じて、前記画像形成装置が安定して印画できる画像データの範囲を設定する範囲設定手段と、入力画像データに対して誤差拡散法により量子化を行う誤差拡散処理手段と、前記範囲に基づいて、前記誤差拡散処理手段による結果を制御する制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
昇華型画像形成装置において適切な誤差拡散法を用いて、高品質な画質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】昇華型画像形成装置のシステム構成を示すブロック図
【図2】昇華型画像形成装置における誤差拡散法の問題点を示す概念図
【図3】実施例におけるCPUおよびヘッド制御ASICの処理および処理の相関を示すシーケンス図
【図4】実施例1における誤差拡散処理を示すブロック図
【図5】実施例2における誤差拡散処理を示すブロック図
【図6】実施例3における誤差拡散処理を示すブロック図
【図7】実施例における誤差拡散係数および係数を保持するルックアップテーブルを示す図
【図8】実施例における誤差拡散係数群および係数群を保持するルックアップテーブルを示す図
【図9】実施例における誤差拡散係数群を保持する拡散係数テーブルを示す図
【図10】昇華型形成装置における画像データの読み出しから印刷処理までを示す概念図
【図11】昇華型画像形成装置における画像処理の全体構成を示すブロック図
【図12】昇華型画像形成装置におけるCPUおよびヘッド制御ASICの処理および処理の相関を示すシーケンス図
【図13】昇華型画像形成装置における温度補正処理を示す概念図
【図14】昇華型画像形成装置における温度補正処理に用いられるパルス有効範囲を記憶したルックアップテーブルを示す概念図
【図15】昇華型画像形成装置における温度補正処理に用いられるパルス開始点を記憶したルックアップテーブルを示す概念図
【図16】昇華型画像形成装置における誤差拡散処理を示すブロック図
【図17】誤差拡散処理を示すブロック図
【図18】昇華型画像形成装置における誤差拡散処理の拡散係数値を示す図
【図19】昇華型画像形成装置における誤差拡散係数および係数を保持するルックアップテーブルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
まず、図1を用いて本実施形態に係る昇華型画像形成装置における記録ヘッドとヘッド制御ASICの構成と動作を説明する。
【0012】
図1は、画像形成装置においてプリント用データを印画するための全体構成を示すブロック図である。CPU4は、画像形成装置のシステム制御や演算処理を司る。画像処理部5は、カメラ等から受け取った画像データや、SDカードから取得した画像データを処理する。画像処理部5は、取得した画像データに対して解凍等の各種画像処理を行い、印画用の画像データを作る。
FLASHROM9は画像形成装置のシステム制御用プログラムを格納している。SDRAM10は画像データの一時的な保存や、データ処理の作業用に用いられる。SDカード11は、データファイルを保存しておくための記録媒体である。
【0013】
カードコネクタ12は、SDカード11を画像形成装置に装着するためのコネクタである。LCD13は、撮影画像や操作メニューを表示する。LCDドライバ14は、LCDを駆動するドライバである。また、通信制御部6は、接続されるカメラ等の機器との通信を制御する。操作部7は、ユーザによる指示入力が行われる。ヘッド制御ASIC3は、画像処理部5から出力された画像データを電気信号に変換し、記録ヘッド2に出力する。そして、記録ヘッド2は電気信号を熱エネルギーに変換し、印画紙(不図示)に記録を行う。ヘッド温度センサ8は、記録ヘッドの温度を計測する。環境温度センサ1は、周囲の環境温度を測定する。また、インクリボン残量計15は、リボンの残量検知に用いられる。
【0014】
図1の構成は、昇華型画像形成装置の一般的なシステム構成である。
図10は、昇華型画像形成装置における画像データの印刷処理を行う際の概念図である。図10におけるSDカード101、CPU102、ヘッド制御ASIC103、記録ヘッド104はそれぞれ、図1におけるSDカード11、CPU4に、ヘッド制御ASIC3、記録ヘッド104に対応する。SDカード101から読み出された入力画像データに対し、CPU102は補正等の処理を行い、補正後データをヘッド制御ASIC103におくる。ヘッド制御ASIC103は補正後データを受け取った後、さらに補正を行い記録ヘッド104に送る通電パターンに変換する。通電パターンを受け取った記録ヘッド104は通電、発熱し、インク105を印画紙106に転写させて、印画処理が行われる。
【0015】
前述のとおり、入力画像データに対する補正等の画像処理は、CPU102とヘッド制御ASIC103により2段階に分けて行われる。図11を用いて、昇華型画像形成装置における入力画像データに対する画像処理方法をより詳細に説明する。JPEG解凍111から各種補正114までは図10におけるCPU102、γ補正115からドットデータ生成119まではヘッド制御ASIC103にて行われる。
【0016】
まず、カードメディア(不図示)からJPEG形式の画像データを受け取ると、JPEG解凍111はJPEGの伸張処理を行う。
伸張された画像データは、輝度信号Y、ブルーの色差信号U,レッドの色差信号Vの3つの情報によって色を表す色差信号YUVからなる色情報を有する。色変換112は、このYUV信号からなる画像データを昇華型画像形成装置が印画可能なYMCの画像データに変換する。YMCの画像データは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を表すデータである。
リサイズ処理112は、この変換されたYMCそれぞれの画像データに対してリサイズ処理を行う。リサイズ率は、ユーザがユーザーインターフェース(不図示)などから入力した値が用いられる。次に赤目、顔検知、シーンの判別などを含む各種補正114が行われる。
【0017】
つづいてγ補正115は、CMYの画像データが示す階調値からパルス値への変換を行う。変換にはγテーブルを利用する。ここでは、記録ヘッド104の発熱特性に合わせて画像データの階調性が調整される他、記録ヘッド104の温度、周囲の環境温度に応じて同じ色合いが保証されるように次に示す処理を行っている。
図13、図14、図15を用いてγ補正115の処理を詳細に説明する。図13は、γ補正115の概要を示している。通常、昇華型画像形成装置では、画像データの階調値が0の場合でも、数十パルスほどのパルス値を持つドットデータに変換される。これは記録ヘッドに通電し続けることで、昇華型画像形成装置において不安定な領域での印画を低減するためである。
【0018】
本実施例では、画像データにおける階調値が0の時に対応するパルス値を最低転写パルスSpと呼ぶ。最低転写パルスSpは、本実施例における昇華型画像形成装置が安定して印画出力できる領域の下限値であり、記録ヘッドや環境の温度に依存する。転写するパルス値ができる限り最低転写パルスSpを下回らないように、γ補正をする。最低転写パルスSpは、図15に示すルックアップテーブルを用いて設定される。最低転写パルスSpは、環境温度およびヘッド温度の組み合わせに対応して決められる。
【0019】
256階調の画像データを1024階調のドットデータに変換する場合、まず、図13(a)のγテーブルを図1のFLASHROM9から読み出し、最低転写パルスSpを始点にして該γテーブルを正規化する。図13(b)のγテーブルは、図13(a)を正規化して得られた記録ヘッドの発熱特性を示したものである。このときに、実際に安定して転写可能なパルス範囲である転写パルス有効範囲Vpは、最低転写パルスSpとの和が、最大パルス数1024になるように設定される。つまり、転写パルス有効範囲Vpとは、本実施例における昇華型画像形成装置が安定して印画できる画像データの範囲である。本例では、転写パルス有効範囲Vpはあらかじめ計算され図14に示すようにルックアップテーブルに格納されている。転写パルス有効範囲Vpは、図14に示すルックアップテーブルを用いて設定される。転写パルス有効時間Vpは、最低転写パルスSpと同様に、環境温度とヘッド温度の組み合わせに対応して決められる。
なお、図14と図15に示すルックアップテーブルは、図1のFLASHROM9にあらかじめ保持しておく。
【0020】
以上のとおり、γ補正115は、図1における環境温度センサ1およびヘッド温度センサ8が測定した結果に基づいて、転写パルス有効範囲Vp,最低転写パルス Spを確定し、昇華型画像形成装置の温度条件に適した図13(b)のγテーブルを生成し、γ補正する。
γ補正115された後、熱履歴補正116では、過去の通電履歴から温度上昇を推定して、ラインごとに補正を行う。昇華型画像形成装置では記録ヘッド104の通電により基板等が蓄熱するため、蓄熱現象に応じて、記録ヘッドへの通電時間を補正し、発熱温度を一定にする。
各種補正114までは、画素単位または面単位にて行われるが、γ補正115及び熱履歴補正116は、ライン単位で処理が行われる。本実施例では、各種補正114まで行われたデータを図1のSDRAM10に一時的に保存し、ヘッド制御ASIC3の要求を受けてラインごとにデータを送る構成をとる。
熱履歴補正116から出力された画像データは、エッジ強調117にてエッジ強調処理が行われ、誤差拡散処理118にて誤差拡散処理が行われる。誤差拡散処理118については、図16、17,18,19を用いて詳細に説明する。エッジ強調処理117および誤差拡散処理118は、画素単位に行われる。
【0021】
図16では、エッジ強調117から受け取った画像データを入力画像データとし、ドットデータ生成119に対する出力を出力画像データとしている。
【0022】
まず、加算器164は、注目画素に対して周囲画素から拡散された量子化誤差を入力画像データに加算する。量子化器161は、量子化誤差を加算された画像データに対して量子化を行う。減算器162は、量子化器161の入力値と出力値の差分を求め、量子化誤差を導出する。拡散フィルタ163は、量子化誤差に対して図18に示す拡散係数を乗算する。図18(a)は、注目画素181の周囲の画素に対応する拡散係数C1、C2、C3、C4を有する。導出された注目画素の量子化誤差を、周囲の画素に拡散する役割を持つ。実際は、図18(b)のように係数が設定されている。
【0023】
また、本実施例における誤差拡散処理に用いられる拡散係数は、ルックアップテーブル中に保持された複数の係数から、入力画像データの階調値に応じて選択する構成をとってもよい。図17に誤差拡散処理の構成の一部を示す。図17の量子化器171、減算器172、拡散係数フィルタ173、加算器174は、図16と同じ構成であるため説明を省略する。係数LUT175には、図19(a)のような拡散係数C1,C2,C3,C4の組み合わせである拡散係数群Cbが、図19(b)に示すように階調値ごとに保持されている。1つの拡散係数フィルタのみを用いた誤差拡散処理では、近傍画素への誤差の配分割合が常に一定であるため、出力画像上にノイズ模様が発生してしまうことがある。そこで、複数の拡散係数フィルタを用意し、階調値ごとに選択して誤差を拡散することにより、注目画素における誤差の周辺画素への配分割合が一定にならないようにしている。入力画像データの階調値に対応した拡散係数群Cbを選択することで、よりよい誤差拡散の効果を得ることが可能である。以上、誤差拡散118について説明した。
最後にドットデータ生成119が行われ、図1の記録ヘッド2に対する通電パターンが作られる。
【0024】
以上の処理111〜119の説明を実際の印画シーケンスにあてはめ、図12を用いて説明する。ここでは、Yの画像データに対する処理を用いてステップS121からステップS140の流れを説明する。ステップS121からステップS140の処理は、Y,M,C面および保護膜面で行われる為、1枚の印画物に対して、計4回繰り返される。
【0025】
図12は、昇華型画像形成装置におけるCPU4の処理およびヘッド制御ASIC3の処理と、各処理の相関を示すシーケンス図である。前述のとおり、画像処理は、CPU4とヘッド制御ASIC3の2段階に分けて行われる。ステップS121からステップS124は、図11における処理111から114と同じため説明を省略する。ステップS125にて、いったんY面の画像データを図1のSDRAM10に書き出す。ステップS126において、環境温度センサ1が環境温度を測定し、ステップ S127においてヘッド温度センサ8は記録ヘッド2の温度を測定する。
【0026】
その後、ステップS128、ステップS129において最低転写パルスSpおよび転写パルス有効範囲Vpが導出される。最低転写パルスSpと転写パルス有効範囲Vpをもとに、ステップS130において1次元のγテーブルが生成され、SDRAM10へ書き込まれる。ステップS131にて、SDRAM10に書き込まれたγテーブルがCPUからヘッド制御ASICへ転送され、ステップS132にてヘッド制御ASIC3内のレジスタ(不図示)に書き込みが行われる。ステップS133にてY面のデータがCPU4からヘッド制御ASIC3に転送され、ヘッド制御ASIC3にて順次処理される。ステップS134からステップS138は図11における処理115から119と同じため説明を省略する。
【0027】
最後にステップS139において、CPUからヘッド制御ASICに対して通電要求を発行し、ステップS140にてヘッドの通電が開始され、CPUはステップS141において、次に処理するM面の処理が開始する。以上の処理は、Y,M,C面および保護膜面で行われる為、1枚の印画物に対して、計4回繰り返される。
【0028】
(実施例1)
以下、図3および図4、図7、図8、図9を用いて、実施例のひとつを詳細に説明する。前述の実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
図3は、実施例1に係る昇華型画像形成装置のCPU4の処理およびヘッド制御ASIC3の処理と、各処理の相関を示すシーケンス図である。
【0029】
ステップS31からステップS37は、図12における処理S121からS131と同じであるため説明を省略する。ステップS38において、最低転写パルスSpが、ステップS40にて転写パルス有効範囲Vpが導出される。ステップS39、ステップS40において、CPU4は最低転写パルスSpおよび転写パルス有効範囲Vpをヘッド制御ASIC3へ転送し、ヘッド制御ASIC3内のレジスタ(不図示)に各値が記憶される。ステップS42において、記憶された最低転写パルスSpと転写パルス有効範囲Vpに基づいて、1次元のγテーブルが生成され、SDRAM10へ書き込まれる。ステップS43からステップS48の処理は、図12における処理S131からS136までと同じであるため省略する。
ステップS49にて誤差拡散処理が行われる。図4はステップS49を行う構成を詳細に記したブロック図である。
図4では、エッジ強調を行うステップS48から出力されたデータを入力画像データとし、ドットデータ生成S50に対する出力を出力画像データとしている。
【0030】
まず、量子化器42は、量子化器42に入力された画像データに対して、画素ごとに量子化を行う。減算器43は、量子化器42における入力値と出力値の差分を求め、量子化誤差を導出する。量子化補正手段41は、量子化器42による量子化結果に対して補正値を加算し、量子化器からの出力値が最低転写パルスSp以下にならないように制御する。量子化補正手段41は、図3のステップS38で求められた最低転写パルスSpの値を保持し、最低転写パルスSpに合わせて補正値を決定する。その後、量子化誤差は、拡散フィルタ44により周辺画素に対して拡散される。拡散フィルタ44で使用される拡散係数は、係数LUT45から読み出される。
【0031】
各々の拡散係数および注目画素との相関は、図18と同じ構成のため説明を省略する。係数LUT45には、図7のようにC1からC4の係数が拡散係数群Cb[i]に保持されている。iは、パルス値を示し、従来手法とは異なりパルス値に対応して係数が保持されている。また、拡散係数群Cbは、図8、図9に示すように温度ごとに拡散係数群Cnとして格納されており、環境温度およびヘッド温度別に保持されているとする。そこで、ヘッド制御ASIC内のレジスタ(不図示)に保持された最低転写パルスSp、転写パルス有効範囲Vp、環境温度、ヘッド温度に応じて係数LUT45から最適な拡散係数フィルタを選択する。加算器46は入力画像データに拡散された誤差を加算し、誤差拡散が行われる。本処理は、画素単位に行われる。
環境や記録ヘッドの温度条件と、最低転写パルスSp,転写パルス有効範囲Vpに対応した拡散係数フィルタを選択することで、よりよい誤差拡散の効果を得ることが可能となる。
【0032】
最後にステップS139にて、CPU4はヘッド制御ASIC3に対して通電要求を発行する。そしてステップS140にて記録ヘッドの通電が開始され、CPU側はステップS141にて次に処理するM面の処理を開始する。
ステップS121からステップS140の処理は、Y,M,C面および保護膜面で行われる為、1枚の印画物に対して、計4回繰り返される。
【0033】
以上、本実施例によれば、昇華型画像形成装置において、入力画像データに対して誤差拡散法による量子化を施しても、印画するのに安定な領域で出力することができる。これにより、不安定領域で発生しやすい未転写や色かすれなどの、画質を著しく損ねる要因を低減することができる。
【0034】
(実施例2)
実施例1では、環境や記録ヘッドの温度条件に応じて、量子化器42から出力された量子化結果に対して補正をすることで、安定して印画出力できる領域以外への出力を防いだ。実施例2では、誤差拡散法により量子化された後の画像データに対し、クリップ処理を施すことで、不安定領域における印画出力を防ぐ例について説明する。前述の実施形態および実施例と同様の構成については、詳細な説明を省略する。以下、図5を用いて、実施形態のひとつを詳細に説明する。
図5における量子化器42、減算器43、拡散フィルタ44、係数LUT45は図4に示した構成と同様のため、同じ符号を付した。
実施例2では、図5におけるクリップ処理部51以外は実施例1と同じであり、説明を省略する。
【0035】
クリップ処理部51では、各画素において量子化された後の値が最低転写パルスSpより大きく、最低転写パルスSpと転写パルス有効範囲Vpの和より小さくなるようにクリップ処理を行う。クリップ処理部51には、図3におけるステップS38,S40において求められた最低転写パルスSp、転写パルス有効範囲Vpの値が入力される。量子化器42からの出力値が最低転写パルスSpを下回らないように制御することで、印画をするのに不安定な領域における印画を防ぐことができ、良好な画質の印刷物を得ることができる。
【0036】
(実施例3)
実施例3では、誤差拡散法により量子化された後のデータに対し、正規化処理を施す例について説明する。前述の実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する。
【0037】
以下、図6を用いて、本発明の実施形態のひとつを詳細に説明する。
【0038】
図6中における量子化器42、減算器43、拡散フィルタ44、係数LUT45は図4に示した構成と同様のため、同じ符号を付した。実施例3では、図6における正規化処理部61以外は実施例1と同じであり、説明を省略する。
正規化処理部6は、各画素において量子化された後の値が最低転写パルスSpより大きく、最低転写パルスSpと転写パルス有効範囲Vpの和より小さくなるように正規化処理を行う。正規化処理部66には、図3におけるステップS38,ステップS40にて求められた最低転写パルスSp、転写パルス有効範囲Vpの値が入力される。量子化器42からの出力値が最低転写パルスSpを下回らないように正規化処理によって制御することで、印画をするのに不安定な領域における印刷を防ぐことができ、良好な画質の印刷物を得ることができる。
【0039】
[その他の実施例]
前述の実施例では、ヘッド温度および環境温度に応じて、安定して印画可能な領域の下限値を設定したが、必ずしもその両方を考慮する必要はなく、ヘッド温度のみでもよい。また、安定して印画可能な領域の下限値および範囲を設定する構成としたが、下限値と上限値を設定する構成でも同じである。
また、本発明は、上述した実施例の機能(例えば、図3、図12のフローチャートにより示される機能)を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを用いて印画する昇華型の画像形成装置において、
前記記録ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定手段と、
前記記録ヘッドの温度に応じて、前記画像形成装置が安定して印画できる画像データの範囲を設定する範囲設定手段と、
入力画像データに対して誤差拡散法により量子化を行う誤差拡散処理手段と、
前記範囲に基づいて、前記誤差拡散処理手段による結果を制御する制御手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記誤差拡散処理手段による結果が、前記範囲の下限値を下回らないように制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
さらに、前記記録ヘッドの温度に応じて、前記画像形成装置が安定して印画可能な画像データの下限値を設定する下限値設定手段を有し、
前記制御手段は、前記下限値と前記範囲に基づいて制御することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
さらに、環境温度を測定する環境測定手段を有し、
前記範囲設定手段は、前記環境温度も考慮して前記範囲を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記誤差拡散処理手段は、前記ヘッドの温度に応じて、誤差拡散法に用いられる拡散係数を選択することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記誤差拡散処理手段による結果を補正すること
を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記誤差拡散処理手段による結果に対して、クリップ処理することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記誤差拡散処理手段による結果に対して、正規化することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
記録ヘッドを用いて印画する昇華型の画像形成方法において、
前記記録ヘッドの温度を測定するヘッド温度測定工程と、
前記記録ヘッドの温度に応じて、前記画像形成装置が安定して印画できる画像データの範囲を設定する範囲設定工程と、
入力画像データに対して誤差拡散法により量子化を行う誤差拡散処理工程と、
前記範囲に基づいて、前記誤差拡散処理工程による結果を制御する制御工程と
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項10】
コンピュータ装置を制御して、請求項1から請求項8の何れか一項に記載された画像形成装置の各手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−165173(P2012−165173A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23855(P2011−23855)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】