説明

易引裂性熱可塑性樹脂積層体

【課題】最内層に軟質で粘着性のあるエチレン共重合体シーラント層が積層されているにもかかわらず、縦・横いずれの方向にも引裂直進性に優れた包装用フィルム又はシート状積層体、及び、その積層体よりなる易開封性の包装用成形体を提供する。
【解決手段】表面層と最内層の少なくとも2層から構成されるフィルム又はシート状積層体であって、最内層がエチレン共重合体層からなるものに於いて、前記最内層を構成するエチレン共重合体層の他層と接していない側の表面に、互いに交差する2方向に積層体端縁迄伸び極狭い間隔を隔てて併走する2群の筋状微細凹凸からなる模様が形成されていることを特徴とする易引裂性熱可塑性樹脂積層体、及びその積層体からなる成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層体に関し、より詳細には、開封が容易で物品の包装に好適な易引裂性のフィルム又はシート状の熱可塑性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年包装用フィルム、シート等からなる包装体には開封が容易であることが重要な機能として求められる場合が多くなってきている。
フィルム、シート等からなる包装体に易開封性を付与する方法として、例えば、包装袋等のヒートシール部にI字型やV字型のノッチを設ける方法が広く用いられている。
然し、このようなノッチを有する密閉袋は、その製造工程でノッチ屑が発生したり、ノッチの設置位置がずれると袋の密封性が損なわれる等の欠点を有し、このため最近ではノッチの形成を要しない所謂、マジックカット、ファンシーカットやポーラス加工を施す方法も行われている。
【0003】
マジックカットやファンシーカットは、ノッチの代わりに微細な傷をそれぞれ包装袋の周縁部及び折り曲げ部分に施すものである。
特許文献1には、多数の裂傷溝群が形成された脆弱領域を有するポリエチレンテレフタレート樹脂支持基材とそれに押圧積層される低密度ポリエチレン樹脂層からなる包装用積層シートの発明が開示されている。
【0004】
しかし、マジックカットやファンシーカットを施しても、フィルムの分子配向に沿わない方向に直線的に開封することは一般的にかなり困難であった。
更に、従来の易開封性包装袋では、例え、フィルムが分子配向を有するものであっても、袋の裂け目が周縁部を越えて被包装物収容スペースに達すると、裂け目が意図しない収容物の方向へ進行し、被包装物のこぼれ落ち、垂れ落ち、飛散等を生じることが往々にしてあった。
【0005】
ポーラス加工はフィルム全面に多数の微細貫通又は未貫通孔を形成し、ノッチなしでどの部位からでも縦横に関係なく開封出来るようにしたものである。
特許文献2には、YAGレーザービームを用いてハーフカット穿孔したポーラス加工積層シートの発明が開示されている。
しかし、食品等を包装する場合には、通常、包装材に防湿性が要求され、ポーラス加工は積層フィルムの最外層に施し、防湿層に穿孔が達しないようにする必要があり、加工が煩雑で手間がかかりコスト高となる問題があった。
【0006】
最近では、単層フィルムには直線的に引き裂くことの出来るものも開発され、例えば、特許文献3には引裂直進性を有する易引裂性の二軸延伸ポリエステルが提案されている。
しかし、防湿性が求められる用途には、ポリエステルフィルム単体では防湿性が充分でないため、ポリオレフィンフィルム等を組合せた積層フィルムが一般に用いられ、ガスバリア性が求められる食品、医薬品、精密電子製品等の用途にはアルミニウム箔や蒸着アルミニウム層との積層フィルムが用いられる等、包装材には単体フィルムよりむしろ積層フィルムが多く使用される。
【0007】
ところが、これら積層フィルム、シートは、前記二軸延伸ポリエステルフィルム層のような支持基材層以外に、軟質樹脂層、金属層、金属酸化物層、更には、接着剤樹脂層等が介在する場合がほとんどで、例え、支持基材のフィルム層が易裂性であっても積層される各層材の組合せ如何によっては積層体としての裂性は必ずしも充分でない場合がしばしば生じる。
特に、包装用の積層フィルム、シートで、最内層に、例えば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のようなシール特性には優れるが易引裂性に問題を有する軟質のエチレン共重合体層をシーラント層として有するものは、積層フィルム、シートとして縦方向、横方向の引裂性に問題を残すものが多く、このため、上記のようなシーラント層が積層されたものであっても縦、横方向の引裂直進性に優れた包装材用積層フィルム、シートの提供が強く望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平5−64853号公報
【特許文献2】特開平10−80971号公報
【特許文献3】特開2002−80705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は上記要望を踏まえ鋭意研究を重ねた結果、積層フィルム、シートの最内層を構成するエチレン共重合体層表面に特定形状の凹凸模様を形成させたものが上記要求に適合することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、最内層に軟質で粘着性のエチレン共重合体が積層されたものであっても、積層体として引裂直進性に優れた積層フィルム、シートを提供するにある。
又、本発明の更なる目的は、最内層にエチレン・不飽和カルボン酸共重合体等からなるシーラント層を有し、且つ、縦・横方向のいずれにもスムーズな直進引裂が可能な積層フィルム・シート等の積層体を提供するにある。
更に、本発明の他の目的は前記積層体からなる成形体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、表面層と最内層の少なくとも2層から構成されるフィルム又はシート状積層体であって、最内層がエチレン共重合体層からなるものに於いて、
前記最内層を構成するエチレン共重合体層の他層と接していない側の表面に、互いに交差する2方向に積層体端縁迄伸び極狭い間隔を隔てて併走する2群の筋状微細凹凸からなる模様が形成されていることを特徴とする易引裂性熱可塑性樹脂積層体が提供される。
【0012】
又、本発明の積層体に於いては、前記エチレン共重合体がエチレンと極性モノマーとの共重合体であることが好ましく、特にエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、それらのアイオノマーから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
更に、前記エチレン共重合体層において、その表面に形成される凹凸模様の凸部の該層内での厚みに対する凹部の該層内での厚みの割合(凹厚/凸厚)が0.1〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0014】
特に、前記凹凸模様は、その2群の筋状凹凸群が互いにほぼ直交して直線状に伸びる格子縞状凹凸模様であることが好ましい。
【0015】
本発明の積層体では、前記最内層がエチレン共重合体シーラント層である態様のものが好適である。
【0016】
本発明の積層体では、前記エチレン共重合体層表面に形成される凹凸模様が、冷却ロール表面に形成された凹凸模様の押圧転写により形成されることが好ましく、前記冷却ロールはグラビアロールであることが特に好ましい。
又、本発明によれば前記易引裂性熱可塑性樹脂積層体からなる成形体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る易引裂性熱可塑性樹脂積層フィルム、シートは最内層に例えば、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体等シール性に優れたエチレン共重合体樹脂シーラント層を備え、且つ、該シーラント層面には、例えば、微細な格子縞状凹凸模様等の特定形状の凹凸模様が形成されている。
このため、シーラント層等の粘着性を有する軟質樹脂が最内層に積層されているにも係わらず、縦、横いずれの方向にも優れた引裂直進性を示す。
又、該凹凸模様は、例えば、フィルム、シートを押出積層成形する際、その冷却ロールにグラビアロールを用い、積層フィルム、シートの冷却と同時に模様を転写することにより容易に且つ安価に形成される。
従って、易開封性密封袋等の易開封性の包装用成形体を容易に作製でき、例えば、食品、医薬品、文具、日用雑貨や精密電子製品等の易開封性密封包装容器に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について一部図面を参照して具体的に説明する。
既に述べたとおり本発明は、易引裂性の積層フィルム又はシート状積層体の発明であって、その最内層がエチレン共重合体層からなり、且つ、該層の他層と接していない側の表面に、互いに交差する2方向に走る2群の筋状微細凹凸からなる模様、典型的には、格子縞状凹凸模様が形成されていることが構成上の顕著な特徴である。
【0019】
本発明の特徴部分である最内層表面に形成される凹凸模様について、その典型例である2群の微小幅筋状凹凸群が互いにほぼ直交して伸びる格子縞状凹凸模様の形態のものについて、図1,2を引用して説明する。
図1は、グラビアロール転写により本発明の積層フィルム最内層表面に形成した格子縞状凹凸模様の一例を示す電子顕微鏡写真平面図(倍率×50)であり、図2はその横断面図である。
【0020】
図1、図2から判るように、図示した態様の模様の場合、ポリエチレンテレフタレート基材層(符号1)/ポリエチレン層(符号2)/アルミニウム層(符号3)/エチレン・メタクリル酸共重合体最内層(符号4)からなる4層構成の積層フイルムの該最内層表面に、直交する筋状凹部群により画定される輪郭が長方乃至正方形で、頂面はほぼ平面の凸部が格子状に形成され、該凹部はほぼ皿型の横断面形状を有する。
そして、このフィルムの端縁部から引裂剪断応力を加えると、該フィルムは、前記筋状凹部を伝って、その引裂方向にほぼ直進して引裂かれる。
【0021】
本発明において、この凹凸模様は必ずしも前記凸部がほぼ長方乃至正方形状の輪郭を有する格子縞状模様のものに限定される訳ではなく、又、その凹部の横断面形状は皿形に限らず、更に頂面も必ずしも平面に限定されない。
例えば、前記互いに交差する2方向が直角交差ではなく2群の筋状凹部により画定される凸部の輪郭形状が菱形、平行四辺形等で、該凹部横断面も楕円、半円形、コの字形等であっても差し支えなく、更に頂面も陵線部が丸められたものや浅く隆起した逆皿形形状でも差し支えない。
その中でも、縦方向、横方向への引裂直進性や、該凹凸模様を冷却ロール表面に形成された模様の転写により形成する場合の模様形成の容易さ等の観点から、格子縞状凹凸模様が好ましい。
【0022】
形成される格子縞凹凸模様等の模様のサイズは、フィルム、シートの幅、長さ、用途等に応じて適宜設定されるが、一般サイズのフィルム、シートでの格子縞凹凸模様の場合、一般的にはフィルム、シート面積1cm2当たり10〜5000個程度、より好ましくは100〜2000個程度の格子が形成されるサイズに設定される。
又、格子状模様の凹状筋部の幅は20〜500μm程度、より好ましくは50〜200μm程度、筋部と筋部との間隔は50〜3000μm程度、より好ましくは100〜500μm程度にそれぞれ設定されることが好ましい。
又、前記最内層において、凸部の該層内での厚みに対する凹部の該層内での厚みの割合(凹厚/凸厚)は0.1〜0.7、特に0.2〜0.6の範囲にあることが好ましい。
【0023】
最内層に、このような模様を形成する方法としては、必ずしもこれに限定されるものではないが、例えば、積層体を押出コート積層法(エクストルージョンコーティングラミネーション)により成形する工程に於いて、その押出積層樹脂の冷却に用いる冷却ロールとして、連続凹凸模様をその表面に施した、例えば、グラビアロール、エンボスロール等を用い、積層体を該ロールとゴムロールとに挟み込んで押圧することにより該積層体の最内層面に該ロール模様を転写する方法等を好適例として挙げることができる。
【0024】
前記最内層を構成するエチレン共重合体としては、エチレンと極性モノマーとの共重合体が好ましく、特にエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はエチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体或いはそのアイオノマー、エチレン・α−オレフィン共重合体等を例示することができる。
【0025】
前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体に於ける不飽和カルボン酸エステル成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等を挙げることができ、該共重合体の具体的として、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体のようなエチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体を例示することができる。
【0026】
又、エチレン・ビニルエステル共重合体に於けるビニルエステル成分としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等を挙げることができ、該共重合体の具体的としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体を例示することができる。
【0027】
前記エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はエチレン・ビニルエステル共重合体に於けるエチレン含有量は60〜99重量%、不飽和カルボン酸エステル又はビニルエステルの含有量は1〜40重量%の範囲にあることが好ましく、又メルトフローレート(MFR)は1〜200g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0028】
次に、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体に於ける不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等を挙げることができ、該共重合体の具体的としては、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体のようなエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を例示することができる。
【0029】
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体に於けるエチレン含有量は75〜99重量%、不飽和カルボン酸の含有量は1〜25重量%の範囲にあることが好ましく、又メルトフローレート(MFR)は1〜200g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0030】
又、本発明で用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、更に、他の不飽和単量体、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのような不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等が共重合されたものでも良く、このような多元共重合体として、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル多元共重合体を例示することができる。
このような多元共重合体の場合、その不飽和単量体の含有量は30重量%以下であることが好ましい。
【0031】
又、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとしては、上記の不飽和カルボン酸を含有する2元又は3元以上の共重合体を金属イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属イオンで中和した塩を例示することができる。
これら金属イオンによる中和度は1〜80%が好ましい。
又、アイオノマーとしてのメルトフローレート(MFR)は1〜200g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0032】
更に、エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が好適に用いられる。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等を例示することができる。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体に於けるエチレン含有量は80〜99モル%、α−オレフィンの含有量は1〜20モル%の範囲にあることが好ましく、又メルトフローレート(MFR)は1〜200g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0033】
本発明の最内層には、上記エチレン共重合体のうちでも、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、それらのアイオノマーから選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル多元共重合体、それらのアイオノマーが特に好ましい。
又、前記最内層の層厚さは、特に限定されないが10〜50μm(模様凸部からの層厚さ)程度が好ましい。
該最内層は、上記エチレン共重合体からなるヒートシール性能を有するシーラント層であることが好適な態様である。
【0034】
本発明の積層体に於ける外層や中間層等の前記最内層以外の各層を構成する熱可塑性樹脂に特に制限はないが、通常、支持基材層である外層には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;フッ素樹脂;ナイロン等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンエラストマー;ポリウレタン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアミドイミド等の層が用いられる。
これらの層を構成するフィルムは、必要に応じて延伸が施されていてもよい。延伸は一軸延伸又は二軸延伸のいずれでもよい。
【0035】
又、上記熱可塑性樹脂フィルムに金属、金属酸化物等を蒸着したり、樹脂をコーティングしたりすることにより製造された蒸着又は表面コートフィルム等を用いることができる。
具体例としてシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
又、上記熱可塑性樹脂フィルム以外にも各種紙、金属箔などを支持基材層である外層として使用しても良い。
【0036】
本発明の積層体には、上記熱可塑性樹脂フィルム基材層の他に、中間緩衝層や接着層として、汎用ポリオレフィン及び特殊ポリオレフィンからなる層を備えてもよい。
具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー(IO)等からなる層を有する。さらに防湿性、ガスバリア性を高める目的で中間層にアルミニウム箔層、アルミニウム蒸着層、シリカ蒸着層、アルミナ蒸着層等を備えていてもよい。
【0037】
上記本発明のフィルム又はシート状積層体を製造するには、例えば、上記熱可塑性樹脂フィルム又は透明蒸着フィルムを支持基材層(外層)とし、これに内層としてエチレン・メタクリル酸共重合体からなるシーラント樹脂を溶融押出して該支持基材層面上に積層し、該積層されたフィルム又はシート状積層体を冷却ロール(例えば、グラビアロールやエンボスロールを用いる)とゴムロールとの間に挟み込んで冷却する際、該シーラント層表面を前記冷却ロール面に圧接させてロールの表面模様をシーラント層面に転写する模様転写押出ラミネーション法により行うことができる。
【0038】
上記積層体の積層構成例としては、例えば、
PET、ナイロン(NY)、紙等の支持基材層/表面模様形成エチレン・メタクリル酸共重合体シーラント層、
支持基材層/ポリエチレン(PE)層等の中間層/シーラント層、
支持基材層/ポリエチレン層(中間層)/Al箔又はAl蒸着膜層(中間層)/シーラント層、
支持基材層/アルミナ蒸着膜層(中間層)/シーラント層、
表面コート支持基材層/シーラント層、
等を挙げることができる。
【0039】
このような本発明のフィルム・シート状積層体は各種方法により、包装体、容器、容器蓋等の成形体を製造することができる。
製造された成形体は、引裂直進性を要する易開封性の包装用成形体等に用いることができ、具体的には食品、文具、日用雑貨や精密電子製品等の易開封性密封包装袋および容器等に好適に用いられる。
また、前記易開封性包装用成形体等のヒートシール部には、I字型やV字型のノッチあるいは、マジックカットやファンシーカット等を施すことにより、本発明の効果がより発現されやすい。
【実施例】
【0040】
「実施例1」
2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm、以下同じ)にポリエチレン(PE)樹脂層(15μm)を積層し、該ポリエチレン樹脂層表面にアルミニウム(Al)層(7μm)を形成した積層フィルム(層構成:PET(12)/PE(15)/Al(7))を用意した。
この積層フィルムのAl層上に、溶融したエチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:10.5重量%、MFR:8.0g/10分)をTダイ押出(樹脂温度:290℃、加工速度:80m/分)して積層した(平均層厚さ20μmと30μmの2種類作製)。
そしてこの押出の際、冷却ロールとしてグラビアロール(硬化クローム社製、95線、深度110μm)を用い、該押出積層直後の積層フィルムをグラビアロール(冷却ロール)とゴムロールの間に挟み込んで該積層フィルムのエチレン・メタクリル酸共重合体層表面に図1,図2に示した格子縞状凹凸模様を転写形成させた(冷却ロール/ゴムロール間の押圧力(Nip圧力):2kg/cm)。
得られた層構成[PET(12)/PE(15)/Al(7)/エチレン・メタクリル酸共重合体(20又は30)]の積層フィルムにMD方向(樹脂流れ方向)とTD方向(MDと垂直方向)の剪断応力を加えて引裂き、その際のそれぞれの引裂強度(N/mm)を測定(JIS K7128-1準拠、トラウザー法)した。
結果を表1に示した。
【0041】
「実施例2」
冷却時のロール間Nip圧力を4kg/cmとした以外は実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、同様に引裂強度を測定した。
結果を表1に示した。
【0042】
「比較例1」
実施例1に於ける冷却用グラビアロールをマットロール(硬化クローム社製、深度6μm)に替えた以外は実施例1と同様にして積層フィルム(エチレン・メタクリル酸共重合体層表面はマット面転写)を作製し(Nip圧力2kg/cm)、同様に引裂強度を測定した。
結果を表1に示した。
【0043】
「比較例2」
実施例2のグラビアロールを比較例1と同じマットロールに替えた以外は実施例2と同様にして積層フィルムを作製し(Nip圧力4kg/cm)、同様に引裂強度を測定した。
結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

引裂強度; MD方向(樹脂流れ方向)/TD方向(MDと垂直方向)
Nip圧; 冷却ロール/ゴムロール間の押圧力(kg/cm
【0045】
グラビアロールを用いた実施例1および実施例2の方が、内層厚みがいずれの場合も、比較例1および比較例2と比べて、引裂強度が大幅に改良された結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の積層体最内層表面に形成される凹凸模様の一例を示す電子顕微鏡写真図(平面図)。
【図2】図1に示した凹凸模様の横断面写真図
【符号の説明】
【0047】
1.PET支持基材層
2.ポリエチレン樹脂中間層
3.Al層
4.エチレン・メタクリル酸共重合体最内層
5.模様の凹部断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層と最内層の少なくとも2層から構成されるフィルム又はシート状積層体であって、最内層がエチレン共重合体層からなるものに於いて、前記最内層を構成するエチレン共重合体層の他層と接していない側の表面に、互いに交差する2方向に積層体端縁迄伸び極狭い間隔を隔てて併走する2群の筋状微細凹凸からなる模様が形成されていることを特徴とする易引裂性熱可塑性樹脂積層体。
【請求項2】
前記エチレン共重合体がエチレンと極性モノマーとの共重合体からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記エチレンと極性モノマーとの共重合体がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、それらのアイオノマーから選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記エチレン共重合体層において、その表面に形成される凹凸模様の凸部の該層内での厚みに対する凹部の該層内での厚みの割合(凹厚/凸厚)が0.1〜0.7の範囲にある請求項1〜3の何れかに記載の積層体。
【請求項5】
前記2群の筋状凹凸群が互いにほぼ直交する直線状に伸び、格子縞状凹凸模様を形成する請求項1〜4の何れかに記載の積層体。
【請求項6】
前記最内層を構成するエチレン共重合体層がシーラント層である請求項1〜5の何れかに記載の積層体。
【請求項7】
前記凹凸模様が、冷却ロール表面に形成された凹凸模様の押圧転写により形成されたものである請求項1〜6の何れかに記載の積層体。
【請求項8】
前記冷却ロールがグラビアロールである請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の積層体からなる成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−255459(P2009−255459A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109518(P2008−109518)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】