説明

易溶性を有する固形飲料及びその製造方法

【課題】易溶性を有する固形飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】コーヒー、紅茶、日本茶、ココア、中国茶、果汁、おしるこなどのインスタント粉末飲料の原料として、デキストリンを5〜30重量%、マルトースを10〜50重量%含有し、打錠機により圧縮成型し、固形化して易溶性の固形飲料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー、紅茶、日本茶、ココア、中国茶、果汁、おしるこなどのインスタント粉末飲料を固形化した、易溶性を有する固形飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の固形飲料とは、粉末清涼飲料(コーヒー、紅茶、果汁、日本茶、中国茶、おしるこなどの嗜好飲料)及び調整ココアを、打錠機等を用いて圧縮成型することにより固形化したものである。なお、本発明においては、粉末清涼飲料と調整ココアをまとめてインスタント粉末飲料と呼ぶが、インスタント粉末飲料とは、水及び必要に応じて砂糖、乳製品等を加え、飲用に供する粉末の食品を指す。ここでいう粉末には顆粒状のものも含まれる。インスタント粉末飲料は、水、温水、牛乳、ソーダ水、豆乳などに溶解して飲用され、その簡便性、作業性と万人受けしやすいマイルドな風味から、嗜好性の高い飲料として幅広く親しまれている。従来市販されているインスタント粉末飲料においては、紅茶パウダー、インスタントコーヒー、抹茶や煎茶などの日本茶の粉末、ウーロン茶やジャスミン茶などの中国茶の粉末、ココアパウダー、果汁粉末、こし餡粉末、乾燥果肉パウダー等に加え、甘味料成分として蔗糖が主として使用される他、必要に応じてクリーミングパウダーや脱脂粉乳、全脂粉乳などの乳製品、乳化剤、食塩、香料、植物油脂、着色料、PH調整剤、塩類、酸味料、調味料などが添加されている。
インスタント粉末飲料は、例えば、インスタントコーヒーはレギュラーコーヒーのような抽出作業がなく簡便にコーヒーを作ることができる。しかしながら、インスタントコーヒーは粉末であるため、空気(酸素)や水分と接する表面積が大きいので、酸化、吸湿による風味、品質低下という問題があった。また、粉末飲料は一般的に嵩高く体積が大きくなるため、商品の包装サイズが大きくなり包装資材を多量に使うので、環境負荷が大きくなる傾向にある。さらに、単純にインスタント粉末飲料を打錠機により圧縮成型して固形化できたとしても、得られた打錠品の溶解性は非常に悪く、場合によっては溶解するまでに1〜3分間も要する事態となり、作業性の点で大きな問題が生じる。
【0003】
こうした問題を解決すべく、コーヒー粉末に水分を添加して練り状物にし、鋳型に入れて凍結乾燥して成型する方法(特許文献1)が報告されている。また、インスタントコーヒーの原料に剥離剤や崩壊剤などの添加剤を所定の割合で加え、混合攪拌した後、打錠機により圧縮成型して固形コーヒーを得る方法(特許文献2)が報告されている。さらに、ココアタブレットに関し、脂肪分が10重量%未満のココアパウダーを使用して打錠することにより機械適性を向上させるという方法(特許文献3)が報告されている。しかしながらいずれの方法においても、溶解性等は改善できたとしても嗜好飲料本来の美味しさ、風味を大きく損ねる結果となり、粉末を成型し固形化することによる付加価値は依然として得られていない現状である。
【特許文献1】特開2009−136215号公報
【特許文献2】特開2008−187959号公報
【特許文献3】特開2008−73004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで固形飲料においては、インスタント粉末飲料本来の美味しさ、風味を損なわず、ストレスを生じない程度、即ち、数10秒程度で溶解することのできる易溶性の固形飲料が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはインスタント粉末飲料の固形化に際し、デキストリンを特定量、しかも特定範囲のDE値のデキストリンをマルトースと併用することにより、嗜好飲料本来の美味しさ、風味を落とさずに打錠機等により固形化でき、さらに溶解分散性も向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち本発明の要旨は、組成物100重量%中、デキストリンを5〜30重量%、マルトースを10〜50重量%それぞれ含有することを特徴とする固形飲料に関する。好ましくは、デキストリンのDE値が8〜30であることを特徴とする固形飲料に関する。また、粉末原料を打錠機により圧縮成型することを特徴とする固形飲料の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の固形飲料は、溶解性が良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の固形飲料は、組成物100重量%中、デキストリンを5〜30重量%、マルトースを10〜50重量%含有して成る。好ましくはデキストリンにおいて、DE値が8〜30であることを特徴とする。また本発明は、粉末原料を打錠機により圧縮成型することを特徴とする製造方法を内容とする。
【0008】
本発明で用いるデキストリンとは、馬鈴薯、甘藷、キャッサバ等の芋類やトウモロコシ、米等に含まれる澱粉を酵素や酸を触媒として加水分解して得られる水溶性の糖質(炭水化物)であり、分解度に応じて様々なデキストリンが工業的に製造されている。また、デキストリンのDE値とはデキストリンにおける分解度、糖化度を数値化したものであり、一般的にDE値が高いほど分解度が高いため甘味度が高く、吸湿性が増す傾向にある。
【0009】
本発明で用いるデキストリンについては、組成物100重量%中、5〜30重量%が好ましい。使用量が5重量%より少ないと溶解性が顕著に低下する恐れがある。一方、使用量が30重量%より多いと打錠性が低下して固形化するのが困難になる恐れがある。また、上述のDE値については、8〜30のデキストリンが好ましく、1種または2種以上のデキストリンを併用することは何ら問題ない。本発明において、様々なDE値のデキストリンをマルトースと特定の比率で併用することにより、固形飲料における打錠性と溶解性のバランスを保たせることがはじめて可能となった。
【0010】
本発明で用いるマルトースとは、麦芽糖とも呼ばれ、日本古来より使われている糖質であり、工業的には澱粉に酵素を作用させて得られる。本発明で用いるマルトースは、高純度に精製された粉末品が好ましく、インスタント粉末飲料の打錠性を向上するために必須の原料であり、組成物100重量%中、10〜50重量%が好ましい。使用量が10重量%より少ないと打錠性が顕著に低下する恐れがある。一方、使用量が50重量%より多いと、相対的にデキストリンの配合量が低下するため、溶解性が低下する恐れがある。
【0011】
本発明の固形飲料には、風味のベースとなる嗜好飲料素材の他、風味を損なわない範囲であれば、従来からインスタント粉末飲料に使用されている甘味料、糖質を使用しても何ら問題ない。具体的には、DE値8未満あるいはDE値30以上のデキストリンをはじめ、ソルビトール、ラクチトール等の糖アルコール、コーンシロップ、還元澱粉糖化物、パラチノース、還元パラチノース、ぶどう糖、粉末水飴、異性化糖、オリゴ糖、果糖、乳糖、さらには、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、スクラロース、ネオテーム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。
【0012】
さらに、本発明の固形飲料においては、上述の嗜好飲料素材、甘味料、糖質の他、必要に応じて乳製品、増粘多糖類、乳化剤、食塩、香料、植物油脂、着色料、PH調整剤、塩類、アミノ酸類、酸味料、調味料、機能性素材、ビタミン類、食物繊維、賦形剤、滑沢剤、安定剤などを使用しても良い。
【0013】
本発明の固形飲料は、嗜好飲料素材として、コーヒー、紅茶の抽出液のスプレードライ粉末、フリーズドライ品、コーヒーエキス、紅茶エキス、抹茶、煎茶粉末、中国茶の粉末、粉末果汁、粉末果実エキス、こし餡、果肉粉末などの他、蔗糖(砂糖、粉糖、グラニュー糖)、乳糖、オリゴ糖、粉飴、還元水飴、パラチノース、還元パラチノース等の甘味料、その他の原料粉末を混合、あるいは更に造粒し、それらインスタント粉末飲料の原料を打錠機により圧縮成型することにより得られる。混合には、通常の粉体混合で用いられる混合機が使用できる。造粒には、流動層方式、スパイラル方式など、通常用いられる造粒機が使用できる。混合、造粒いずれについても一般的な機械であれば問題なく使用することができるが、造粒により風味が損なわれる恐れがあるため、打錠機での製造に問題がなければ造粒しない方が好ましい。
【0014】
本発明では、上述のようにして調製した粉末原料を打錠機により圧縮成型して固形飲料を得る。打錠は常法により行うことができるが、好ましくは直接打錠により行うのがよい。また、打錠条件については、湿度15〜60%、好ましくは20〜45%で、温度(摂氏)10〜30度、好ましくは20〜25度の環境条件下、打錠時の圧力としては、2〜15MPa、好ましくは3〜10MPaがよく、1個(粒)あたり1〜40g、好ましくは3〜30gの重量とすることができる。打錠機については、特に制限されないが、例えば、ロータリー打錠機及び単発打錠機等が挙げられる。このような打錠機であれば通常、原料粉末の一定量を計り取りする機能と、それを圧縮成型する機能とを備えているので好都合である。
【0015】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において部は重量部である。
【実施例】
【0016】
<固形飲料の調製>
各実施例及び比較例とも下記の表に示した配合により各種粉末原料を混合機により混合し、直接打錠により打錠を行い、本発明の固形飲料を得た。
【0017】
<溶解性評価>
本発明で得られた固形飲料を、所定量(紅茶ミックスは3粒、調整ココア及びコーヒーミックスは1粒)、300ml容ガラスビーカーに入れ、熱湯180mlを注いだ後、スパーテルで攪拌しつつ溶解または分散させ、完全に溶解または分散したときの時間(秒数)を測定した。5回繰返し行い平均値(少数第二位を四捨五入)を求めた。結果を表4に示した。なお、比較例6については、打錠性が悪く、成型できなかったため実施しなかった。
【0018】
<実施例1〜2、比較例1〜2>
表1に示した配合にて紅茶ミックス粉末原料を混合した後、1粒あたり5gを、圧縮力8MPa、直径25mm、厚さ11mmの条件で直接打錠により打錠を行った。
【0019】
【表1】

【0020】
<実施例3〜4、比較例3〜4>
表2に示した配合にて調製ココア粉末原料を混合した後、1粒あたり30gを、圧縮力6MPa、直径35mm、厚さ35mmの条件で直接打錠により打錠を行った。
【0021】
【表2】

【0022】
<実施例5〜8、比較例5〜7>
表3に示した配合にてコーヒーミックス粉末原料を混合した後、1粒あたり12gを、圧縮力10MPa、直径30mm、厚さ18mmの条件で直接打錠により打錠を行った。
【0023】
【表3】

【0024】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物100重量%中、デキストリンを5〜30重量%、マルトースを10〜50重量%それぞれ含有することを特徴とする固形飲料。
【請求項2】

デキストリンのDE値が8〜30である請求項1記載の固形飲料。
【請求項3】

粉末原料を打錠機により圧縮成型することを特徴とする請求項1、2記載の固形飲料の製造方法。



【公開番号】特開2012−170397(P2012−170397A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35337(P2011−35337)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(399110421)片岡物産株式会社 (3)
【Fターム(参考)】