説明

易開封性のシール可能なPLAフィルム

本発明は、ベース層と少なくとも一つのカバー層から製造された多層生分解性フィルムに関する。該フィルムは低減された継目強度を有しており、容器のカバーフィルムとして使用できる。本発明によるフィルムでシールされた容器は、従来フィルムでシールされたものよりも容易に開封することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ベース層及び少なくとも一つの易開封性(peelable)トップ層からできた易開封性の二軸延伸フィルムに関する。本発明はさらに、該フィルムの製造法並びにその使用にも関する。
【0002】
熱可塑性プラスチック製のフィルムは、食品及びその他の包装品の包装に大規模に使用されている。包装分野における新開発は、例えばポリ乳酸(PLA)のような生分解性ポリエステル製のフィルムに関する。これらの種類のフィルムは、再生可能な原料を基にし、堆肥化によって処分できるので、特に環境に優しいと考えられている。しかしながら、これらの材料は、包装フィルムに大規模に導入されているポリエチレン又はポリプロピレンのようなオレフィン系ポリマーとは根本的に異なる。また、ポリエステルフィルムからの技術移転も、同一又は類似の方策がPLAフィルムでは所望の効果を発揮しないことが多いため、成功しないことが多い。
【0003】
熱可塑性ポリマー製の包装フィルムの成功は、良好な光学的及び機械的性質のほかフィルムの簡単な溶接適性又はシール適性にある。シール可能なポリオレフィンフィルムは一般的に、フィルムのベース層のポリマーより低い結晶融点を有するオレフィンポリマーでできたトップ層を有している。PLAフィルムは、一般的に部分結晶性PLAのベース層上に非晶質(アモルファス)のPLAポリマーのシール層を有する。シールするにはフィルムを互いに重ねて、結晶融点の10〜20℃下、又はPLAポリマーのガラス転移温度の20〜40℃上、すなわちトップ層が完全には融解しない温度まで加熱する。達成されるシール層の接着性は、十分なシール継目強度(sealed seam strength)を保証するために少なくとも1.5〜2N/15mmになるべきである。
【0004】
シールされた継目は多くの場合、フィルム自体よりも高い機械的強度を有するので、シールされたフィルム包装を開封しようとすると、包装が破れて開いたり継目に沿って破壊されるだけでなく、裂け目がフィルムそのものに入ってその進行が制御できなくなる。継目のこの種の開封は凝集破壊と呼ばれる。このため、ポリオレフィンフィルムではシール可能な原料の代わりにいわゆる易開封性のトップ層もフィルム表面に適用されている。易開封性のトップ層は一方で良好なシール特性を提供するだけでなく、シールされた材料を破壊することなく制御された様式でシール継目を開封する可能性も提供する。
【0005】
そのようなポリオレフィン性の易開封性トップ層は、自身に対して及び従来のシール可能なトップ層、例えばプロピレンコポリマー及び/又はターポリマー製のトップ層に対してだけでなく、プロピレンホモポリマー製の表面に対しても非常に良くシールする。従って、これらのフィルムは、プロピレンホモポリマー製容器用のリッドファスナー(lid fastener)として使用することも可能であるし、例えばヨーグルトポットなどのようなリッドキャッチ(lid catch)付き容器にポリプロピレン製の単一物質包装を提供することも可能である。
【0006】
このような性質の特徴はPLAフィルム用にも考案されている。PLAフィルムをそのような剥離(ピール)用に導入すると同時にこのセグメントにおける生分解性の利点を生かすためである。シール可能なPLAフィルムは一般的に非常に高いシール継目強度、例えば6〜7N/15mmを有している。そのため、シールされた継目方向に包装を制御開封することは、通常2.5〜3.5N/15mmの範囲のコポリマー又はターポリマーのシール層が配置されたポリオレフィン系のシール用フィルムと比較すると難しい。このため、包装が制御されずに破れて開くような前述の凝集破壊がPLAフィルムでは起こりやすい。従って、PLAフィルムを剥離用フィルムとして使用するならばPLAフィルムの改質が絶対的に必要である。易開封性を付与するための改質が有益な生分解性に悪影響を与えるようなことがないように留意すべきである。当然のことながら、高い透明性及び光沢といった良好な光学的性質、及び良好な加工挙動はもとより機械的性質もすべて保持されるべきである。
【0007】
本発明の目的は、環境に優しい包装及びその他の用途用のフィルム、例えばPLAのような再生可能な原料から製造できるフィルム、環境に優しい様式で処分でき、良好な剥離性を有するフィルムの製造にある。良好な透明性及び高光沢値だけでなく良好な加工挙動並びに良好な機械的性質も用途によっては必要とされる。
【0008】
本発明の目的は、PLAベース層と少なくとも3μmの厚さを有する少なくとも一つのPLAトップ層Aからできた多層二軸延伸フィルムによって達成される。該フィルムは、トップ層Aを85〜120℃の範囲の温度でそれ自身に対してシールした後のシール継目強度1〜7N/15mmを有する。また、このシールはシール圧10N/cm及びシール時間500m秒の下で行われる。
【0009】
剥離用フィルムとして使用する場合、シール用フィルムを容器に付着させるときのシール継目の十分な緊密性を保証するために少なくとも2.5μmの厚いPLAトップ層が本発明に必須であることがわかった。シール層が薄すぎる場合(2.5μm未満)、シール端部の不規則をすべて平らにならすことができるとは限らず、シール層はシール継目の全領域で容器端と十分な接触が得られるとは言えない。このような欠点は、包装品の漏れ及び接着悪化をもたらす。>3μmの厚いシール層を有するPLAフィルムは、85〜120℃の温度範囲内でシール継目強度1〜7N/15mm、好ましくは1〜5N/15mmが達成されると、良好な易開封性を有することがわかった。このようにして、十分なシール継目強度を有する一方、同時にシール層の制御された分離も可能になる。驚くべきことに、このようなシール性は、非晶質PLAポリマー製の厚いトップ層が制御剥離を不可能にするような実質的に高いシール継目強度を有している場合でも、PLAトップ層を有するフィルムに対して付与することができる。厚いトップ層におけるシール継目強度がこのように高いと、シール継目の開封が、あまりに強い力を要したり包装を開封するのにユーザーが実際は必要とすべきでない別の道具を用いなければならないなど、複雑になる。力ずくで開封しようとしてカバーフィルム自体の破れが生じ、フィルムを部分品(ピース)に制御剥離できなくなるケースが発生する。他方、結晶性PLA製のトップ層は、言及した温度範囲ではシールしない。すなわち85〜130℃の全範囲におけるシール継目強度は0.5N/15mm未満である。
【0010】
本発明によるシール可能な易開封性トップ層は、一般的に少なくとも二つの異なるポリマーA及びBの混合物からできている。ポリマーAは、少なくとも一つの脂肪族ヒドロキシカルボン酸でできた生分解性ポリマーであり、ポリマーBはポリマーAとは異なる生分解性ポリマーである。
【0011】
易開封性トップ層は80〜<100重量%、好ましくは85〜<99重量%の、成分A及びBのポリマー混合物を含有する。本発明の意味において‘混合物’とは、成分の機械的混合物又はブレンドを意味し、機械的混合物は各成分から製造される。一般に、このために、各成分は小さいサイズの圧縮成形品、例えばレンズ、ボール、又はロッド状の顆粒として一緒に注入され、機械的に混合される。本発明の意味において‘ブレンド’とは、各成分の合金様組成物であり、もはや元の成分に分別することはできない。ブレンドは均質物質のような性質を有しており、それに相応して適切なパラメーターによって特徴付けすることができる。
【0012】
混合物の成分A及びBの比率(重量比)は広い範囲内で変動しうる。成分A及びBの比率は好ましくはA:B=30:70〜A:B 80:20、好ましくはA:B=40:60〜A:B 70:30の範囲、特にA:B=50:50にある。
【0013】
成分Aは非晶質の脂肪族ヒドロキシカルボン酸であり、以後PHC(ポリヒドロキシカルボン酸)と呼ばれる。これによってPHCは脂肪族ヒドロキシカルボン酸の重合単位で構成されるホモポリマー又は混合重合体と理解される。本発明に適切なPHCのうち、ポリ乳酸類が特に適切である。これらは以後PLA(ポリ乳酸)と呼ばれる。同様に、PLAという用語も、乳酸単位だけからなるホモポリマーと、化合物中に主として乳酸単位(>50%)をその他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸と共に含有する混合重合体の両方の意味を持つと理解される。
【0014】
脂肪族モノ、ジ又はトリヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸(PHC)のモノマーとして特に適切である。又はむしろそれらの二量体環状エステルが適切である。そのうちD又はL型の乳酸が好適である。適切なPLAは、例えばCargill Dow社のポリ乳酸(NatureWorks(登録商標))である。ポリ乳酸の製造は先行技術から公知であり、乳酸の二量体環状エステルであるラクチド(1,4−ジオキサン−3,6−ジメチル2,5−ジオン)の接触開環重合によって実施される。このためPLAはポリラクチドと呼ばれることが多い。PLAの製造は、以下の公報:米国特許第5,208,297号、米国特許第5,247,058号又は米国特許第5,357,035号に記載されている。
【0015】
適切な非晶質ポリ乳酸はD及びL乳酸単位を含有する。この点において、80〜98%、好ましくは82〜95%のL乳酸単位、それに相応して2〜20重量%、好ましくは5〜18重量%のD乳酸単位を含有するPLAポリマーが特に好適である。結晶化度を低減するためにさらに高濃度のD乳酸単位をコノモマーとして含有させてもよい。適切であれば、ポリ乳酸は、乳酸のほかに様々な脂肪族ポリヒドロキシカルボン酸単位をコモノマーとして相応の量で有することができる。例えば、グリコール酸単位、3−ヒドロキシプロパン酸単位、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロパン酸単位又はヒドロキシカルボン酸の高級同族体である。
【0016】
軟化点範囲60〜150℃、好ましくは65〜140℃、及びメルトフローインデックス(2.16Nの荷重及び190℃でのDIN測定53735)1〜50g/10分、好ましくは1〜30g/10分を有する乳酸ポリマー(PLA)が好適である。PLAの分子量は、少なくとも10000〜500000(数平均)、好ましくは50000〜300000(数平均)の範囲にある。ガラス転移温度Tgは、40〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲にある。適切なPLAは、例えばCargill Dow社のポリ乳酸4060D(NatureWorks(登録商標))である。
【0017】
成分Bは生分解性ポリマーグループのポリマーである。従って、これには炭水化物(デンプン、糖、セルロースなど)、生分解性ポリエステル(例えば、グリコール、ブタンジオール、アジピン酸及びテレフタル酸などのような脂肪族、環状又は芳香族ジオールとジカルボン酸のコポリエステル)又はタンパク質、又はPHC層のシール性を低減するようなその他の生分解性物質が関わりうる。同様に、二つ又はいくつかの生分解性物質の混合物も関係しうる。
【0018】
適切な市販物質は、例えばBASF社のEcoflex製品又はNovamont社のMater−Biである。Ecoflexは生分解性の静的な(static)脂肪族−芳香族コポリエステルである。Mater−Biは、デンプン及び生分解性ポリエステルをその主成分として含有する生分解性ブレンドである。
【0019】
実施例に記載のECOFLEX F BX 7011は、モノマーの1,4−ブタンジオール、アジピン酸及びテレフタル酸のコポリエステルで、融点範囲110〜120℃(DSCの手段による測定)及び溶融粘度2.7〜4.9g/10分(190℃、2.16kg)を有する。
【0020】
記載の実施例で使用されているMater−Biは、軟化点範囲65〜153℃(DSCの手段による測定)及び溶融粘度10g/10分(160℃、5kg)を有する。
本発明によるフィルムは多層で、少なくともベース層と少なくとも一つの易開封性トップ層を含む。適切であれば、更なるトップ層をフィルムの反対側に付着させることもできる。この第二のトップ層は同様に易開封性にしてもそれ以外の編成にしてもよい。さらに、ベース層とトップ層(一つ又は複数)の間に追加の片面又は両面中間層を付着させることも可能で、それによって4又は5層フィルムが得られる。
【0021】
本発明の意味においてベース層は最大の層厚を有する層で、一般的に全フィルム厚の40%超〜98%、好ましくは50〜90%を構成する。トップ層はフィルムの外層を形成する層である。中間層は当然ながらベース層とトップ層の間に付着される。
【0022】
フィルムのベース層は、一般的に、層の重量に対して少なくとも70〜<100重量%、好ましくは85〜99重量%の、少なくとも一つのヒドロキシカルボン酸のポリマーを含有する。ベース層にとって適切なポリマーは、乳酸単位だけからなるポリ乳酸、及び化合物中に主として乳酸単位(>50%)をその他の脂肪族ヒドロキシジカルボン酸又はその他のジカルボン酸と共に含有する混合重合体である。
【0023】
軟化点範囲100〜170℃、好ましくは120〜160℃、及びメルトフローインデックス(2.16Nの荷重及び190℃でのDIN測定53735)1〜25g/10分、好ましくは1〜15g/10分を有する結晶性乳酸ポリマー(PLA)をベース層の原料として使用する。PLAの分子量は、少なくとも10000〜500000(数平均)、好ましくは50000〜300000(数平均)の範囲にある。ガラス転移温度Tgは、40〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲にある。D乳酸のL乳酸に対する比率(D:L)は従って<10:90の範囲にある。適切なPLAのタイプは、例えばCargill Dow社のポリ乳酸4032D又は4042D(NatureWorks(登録商標))である。
【0024】
本発明の意味において透明フィルムは、ASTM−D 1003−77による光透過率が75%超、好ましくは90%超のフィルムである。易開封性トップ層はフィルムの曇りを引き起こさない、又は引き起こしたとしても実質的でない程度である。
【0025】
ベース層並びにフィルムのその他の層(易開封性の装備されたトップ層を含む)は、さらに、中和剤、安定剤、滑剤及びフィラーのような従来の添加剤を含有することができる。それらは、ポリマー又はポリマー混合物に溶融直前に都合よく添加される。例えばエルカ酸アミド又はグリセリンモノステアレートのような内部滑剤は、プロセスを補助するために添加される。
【0026】
基本的には、フィルムの白色又は不透明の態様を易開封性トップ層の片面又は両面に施すこともできる。これらの態様の場合、顔料及び/又は空胞形成用フィラーをベース層に加える。TiOが顔料として好適で、10重量%まで、好ましくは1〜8重量%の量で添加される(各場合ともベース層に対して)。空胞形成用フィラーは好ましくはシクロオレフィンコポリマーで、一般的にベース層の重量に対して0.5〜30重量%の量で添加される。これについての詳細はDE 101 21 150(引用によって本明細書に援用する)に記載されている。
【0027】
フィルムの総厚は広い範囲内で変動しうるが、意図する用途に応じて方向付けされる。本発明によるフィルムの好適な態様は、4〜200μmの総厚を有し、8〜150μm、特に10〜100μmが好適である。必要な場合に存在する中間層(一つ又は複数)の厚さは、一般的に互いに独立して0.5〜15μmになり、1〜10μm、特に1〜8μmが好適である。所望による第二のトップ層(一つ又は複数)は他の層とは独立して選ばれ、各場合好ましくは0.1〜5μm、特に0.2〜3μmの範囲にある。与えられた値はそれぞれ中間層又はトップ層に関する。ベース層の厚さは、フィルムの総厚と付着されたトップ及び中間層(一つ又は複数)の厚さの差によって相応的に与えられる。従って総厚と同様、広い範囲内で変動しうる。
【0028】
基本的に、本発明によるフィルムの二軸延伸の態様が好適である。しかしながら、易開封性トップ層は、一方向のみ、例えば縦方向のみ又は横方向のみに延伸された多層フィルム、又はどの方向にも延伸されていない、すなわちいわゆる無延伸キャストフィルムにも付着させることができる。
【0029】
本発明はさらに、本発明による多層フィルムをそれ自体公知の共押出法に従って製造する方法にも関する。これについては、以下で二軸延伸フィルムの例を基にして詳細に説明する。
【0030】
この方法の範囲内で、手順は、フィルムの層に対応する溶融物(一つ又は複数)をフラットダイを通して共押出する。このようにして得られた多層フィルムを一つ又はいくつかの硬化用ローラーに引き取り、その後フィルムを二軸延伸する。二軸延伸されたフィルムをヒートセットし、適切であれば、処理したい表面層にコロナ又は火炎処理をする。
【0031】
従って、易開封性トップ層の成分A及びBは、押出プロセスに予備調製されたブレンドとして送られることも顆粒混合物として送られることもある。
二軸延伸は一般的に連続的に実施される。この点において、延伸は好ましくは最初に縦方向(すなわち走行方向=MD方向)、次に横方向(すなわち走行方向に直角=TD方向)に実施される。これによって分子鎖の配向がもたらされる。縦方向の延伸は、好ましくは所望の延伸比に応じて異なる速度で動く2個のローラーの助けを借りて実施される。横方向の延伸には適当なクリップフレームが一般的に使用される。フィルム製造の更なる説明は、フラットフィルム押出とその後の連続延伸の例を基にして行う。
【0032】
溶融物(一つ又は複数)をフラットダイ(シートダイ)を通してプレスし、プレスされたフィルムを一つ又はいくつかの送出しローラーに引き取る。ローラーの温度は10〜60℃、好ましくは20〜40℃で、そこで冷却されて硬化する。
【0033】
次に、このようにして得られたフィルムを、押出方向に対して縦及び横に延伸する。縦方向の延伸は、好ましくは延伸ローラーのローラー温度40〜130℃、好ましくは50〜100℃で実施される。所望の延伸比に応じて異なる速度で速く動く2個のローラーの補助があると都合がよい。横方向の延伸は、好ましくは50〜130℃、好ましくは60〜120℃で相応のクリップフレームの助けを借りて実施される。縦方向の延伸比は1.5〜4の範囲で変動しうる。空胞形成用フィラーを含有するベース層を持つフィルムの製造では2〜5の高い縦方向の延伸比が好適であるが、透明なベース層を持つフィルムは好ましくは1.5〜3.5の範囲で延伸される。横方向の延伸比は3〜10、好ましくは4〜7の範囲にある。
【0034】
フィルムの延伸に続いてはヒートセット(熱処理)である。フィルムを60〜150℃でおよそ0.1〜10秒間収斂状態で保持する(収斂25%まで)。その後、フィルムは従来方式で巻取り装置で巻き取られる。
【0035】
適切な場合、フィルムは更なる性質を付与するためにコーティングすることもできる。典型的なコーティングは、バリア、接着増進、滑り改良又は剥離作用のあるコーティングである。適切であれば、これらの追加のコーティングは、横方向の延伸の前に水性分散液の手段によってインラインコーティングによって又はオフラインで塗布できる。これらのコーティングは易開封性トップ層の反対側に塗布される。
【0036】
以下の測定法を用いてフィルムの特性分析を行った。
シール継目強度及び剥離強度
これを測定するために、2個の15mm幅のフィルムストリップを易開封性の側を内側にして互いに重ね、80〜110℃の温度範囲でシール時間0.5秒及びシール圧10N/cmでシールした(装置:Brugger Type NDS、シールジョー(sealing jaw)で片側を加熱)。シール継目強度を測定するために、剥離層をこのように15mmの幅で自身に対してシールする。その際、シールされていない端部をシール部分の上部に放置しておく。これらの端部をZwich社製の機械的強度測定装置に搭載する。シール継目を15mmの幅まで引き裂くのに要する最大力をシール継目強度又は剥離力と呼ぶ。
曇り
曇りはASTM−D 1003に準じて決定する。
【0037】
次に本発明を例示的態様に基づいて説明する。
実施例1:
厚さ約50μmの透明三層PLAフィルムを、押出とその後の縦及び横方向への段階的延伸によって製造する。ベース層は、NatureWorks社製のおよそ160℃の融点を有するほぼ100%のポリ乳酸(4042D)から成っていた。該層はさらに安定剤及び中和剤を従来量で含有していた。易開封性のシール可能なトップ層は、成分Aとして60重量%のNatureWorks社製の非晶質のシール可能な原料(4060D)と40重量%のNovamount社製の生分解性原料(Mater−Bi KE 03B)を含有していた。
【0038】
各操作ステップの製造条件は:
押出:温度170〜200℃
送出しローラーの温度:60℃
縦方向延伸:温度:68℃
縦方向延伸比:2.0
横方向延伸:温度:88℃
横方向延伸比(有効):5.5
固定:温度:130℃
収斂:10%
このようにして、特徴的な光沢を有する二軸延伸透明フィルムを得た。フィルムの性質は表に示す。易開封性トップ層は3.6μmの厚さ、反対側のトップ層は2μmの厚さ、ベース層はそれに相応して44.4μmの厚さを有していた。
実施例2:
押出とその後の縦及び横方向への段階的延伸によって厚さ約50μmの透明三層PLAフィルムを製造した。ベース層は、NatureWorks社製のおよそ160℃の融点を有するほぼ100%のポリ乳酸(4042D)から成っていた。該層はさらに安定剤及び中和剤を従来量で含有していた。易開封性のシール可能なトップ層は、40%のNatureWorks社製の非晶質のシール可能な原料(4060D)(成分A)と60重量%のNovamount社製の生分解性原料(Mater−Bi KE 03B)(成分B)を含有していた。各操作ステップの製造条件は実施例1と同一であった。実施例1と対比して、シール可能なトップ層の厚さは今度は5.5μmであった。従来層の厚さは実施例1に対応した。
実施例3:
押出とその後の縦及び横方向への段階的延伸によって厚さ約50μmの透明三層PLAフィルムを製造した。ベース層は、NatureWorks社製のおよそ160℃の融点を有するほぼ100重量%のポリ乳酸(4032D)から成っていた。該層はさらに安定剤及び中和剤を従来量で含有していた。易開封性のシール可能なトップ層は、60%の成分A、すなわちNatureWorks社製の非晶質のシール可能な原料(4060D)と40重量%のBASF ECOFLEX F BX 7011の生分解性原料を含有していた。
【0039】
各操作ステップの製造条件は実施例1と同一であり、フィルムは実施例1に記載したのと同じ層厚を有していた。
比較例1
押出とその後の縦及び横方向への段階的延伸によって厚さ約50μmの透明三層PLAフィルムを製造した。ベース層は、NatureWorks社製のおよそ160℃の融点を有するほぼ100%のポリ乳酸(4032D)から成っていた。該層はさらに安定剤及び中和剤を従来量で含有していた。易開封性のシール可能なトップ層は、100%のNatureWorks社製の非晶質のシール可能な原料(4060D)(成分A)を含有し、生分解性の成分Bは含有しなかった。トップ層の厚さは〜4μmになった。
【0040】
各操作ステップの製造条件は実施例1と同一であり、実施例2によるフィルムも実施例1と同じ層厚を有していた。
表1
【0041】
【表1】

【0042】
表2
【0043】
【表2】

【0044】
実施例によるフィルムは、シール継目の開封時、フィルムの凝集破壊又は制御されない破れを起こすことなく、見事に剥離できる。比較例によるフィルムは、シール継目を剥離しようとしている最中に事実上破壊された、すなわち引き裂かれた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース層と少なくとも一つの易開封性トップ層からできた多層フィルムであって、トップ層は30〜80重量%の少なくとも一つの脂肪族ヒドロキシカルボン酸の非晶質ポリマーAと20〜70重量%のAとは異なる生分解性ポリマーBとを含有し、トップ層は少なくとも3μmの厚さ及び85〜120℃の温度範囲で自身に対するシール継目強度が1〜7N/15mmのシールにおいて易開封性のトップ層を有し、シールはシール時間0.5秒及びシール圧10N/cmで行われることを特徴とする多層フィルム。
【請求項2】
非晶質ポリマーがD及びL乳酸単位からできていることを特徴とする、ベース層及び少なくとも一つのトップ層からできた多層不透明二軸延伸フィルム。
【請求項3】
非晶質ポリマーが5〜18重量%のD乳酸単位を有するポリ乳酸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
ポリマーBがデンプン、セルロース又は分解性ポリエステルであることを特徴とする、請求項1〜3の1項に記載のフィルム。
【請求項5】
易開封性トップ層が、ポリマーA及びBのポリマー混合物を80重量%以上100重量%未満含有することを特徴とする、請求項1〜4の1項に記載のフィルム。
【請求項6】
易開封性トップ層の厚さが3〜10μmになることを特徴とする、請求項1〜5の1項に記載のフィルム。
【請求項7】
易開封性トップ層の反対側に別のトップ層が付着されていることを特徴とする、請求項1〜6の1項に記載のフィルム。
【請求項8】
フィルムが透明であることを特徴とする、請求項1〜7の1項に記載のフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8の1項に記載のフィルムの包装フィルムとしての使用。
【請求項10】
請求項1〜8の1項に記載のフィルムの蓋フィルムとしての使用。

【公表番号】特表2009−531201(P2009−531201A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502000(P2009−502000)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/052221
【国際公開番号】WO2007/113077
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(504422379)トレオファン・ジャーマニー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (17)
【Fターム(参考)】