説明

映像信号変換方法、映像信号変換装置、および色差信号補正アダプタ

【課題】映像信号を補正して他の映像信号に変換する技術を提供する。
【解決手段】まず、第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る(41)。次に、第1の映像信号から得た輝度信号と41で得られた搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する(42)。42で補正を行わないと判断した場合(Noの場合)は、補正せずに第1の映像信号から第2の映像信号に変換する(43)。42で補正を行うと判断した場合(Yesの場合)は、41で得られた搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る(44)。44で得られた補正後の搬送色信号の振幅と第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る(45)。補正後の色差信号を用いて第2の映像信号を得る(46)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号を変換する映像信号変換技術に関し、特に映像信号を補正して他の映像信号に変換する映像信号変換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映像信号変換技術の従来技術文献としては、例えば特許文献1がある。特許文献1には、コンポーネント信号からコンポジット信号に変換する場合に、常に歪みがなく、また、忠実に変換されたコンポジット信号を出力するビデオ信号変換装置が記載されている(要約参照)。また、特許文献1の「従来技術」の項には、D−1機からのコンポーネント信号を、D−2機でコンポジット信号に再変換するような処理が行なわれる場合、D−1機とD−2機とのフォーマット及び信号レベル等が異なるので、それらの変換を行なわなければならないことが記載されている。(段落0002参照)
【0003】
コンポジット信号のクロマ信号をクリップする技術の従来技術文献としては、例えば特許文献2がある。
特許文献2の「従来の技術」の項には次のことが記載されている。色差信号R−Y、及びB−Yを、それぞれ90°位相差を有するサブキャリア信号SC1、SC2にて変調し、バースト信号をミックスしてクロマ信号(B)を得、それを加算器に供給する。この加算器はクロマ信号(B)と同期信号を含んだ輝度信号(A)が加算され、コンポジットビデオ信号(C)を得る。このコンポジットビデオ信号(C)はハイクリップ回路によりハイクリップレベルα以上の信号をクリップし、(d)の信号とし、さらにロークリップ回路により、ブランキング期間以外でロークリップレベルβ以下の信号がクリップされて信号(e)となる。(段落0003、図2参照)
【0004】
特許文献2の「課題を解決するための手段」の項には、ディジタル信号処理で得た、高輝度ニー特性及び量子化のダイナミックレンジによりハイクリップレベルα及びロークリップレベルβによりクリップされた輝度信号Yと、R−Y及びB−Yの色差信号を、4倍のサブキャリア周波数のディジタル信号に変換した後、輝度信号Yと色差信号R−Y、B−Yの加算結果が前記ハイクリップレベルα以上にならないように、もしくは輝度信号Yから色差信号R−Y、B−Yの減算結果が前記ロークリップレベルβ以下にはならないように、色差信号R−YとB−Yの振幅比を制御前と制御後で同じになるように色差信号量を制御した後、R−YとB−Yの色差信号をディジタル平衡変調することによりクロマ信号を得ることが記載されている。(段落0009参照)
【0005】
上記の減算(ロークリップ)については、次のように記載されている(段落0017、図1参照)。減算器では輝度信号Yから大きい方の色差信号Cmaxが減算され、比較判定回路でロークリップレベルβと比較され、βの方が小さければ0を、βの方が大きければその差(B=β−(Y−Cmax))を出力する。そして減算器で大きい方の色差信号Cmaxから差し引くことによりロークリップする。つまり、輝度信号−色差信号がロークリップレベルβより小さくなった時は、その分だけ色差信号量を減じ、輝度信号−色差信号がβを下回らないようにしている。上記の加算(ハイクリップ)については段落0016に同様に記載されている。段落0019には、こうすることにより、2つの色差信号R−Y、B−Yのうち一方だけクリップされ、その結果、位相の回転が生ずることがなくなると記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−205445号公報
【特許文献2】特開平5−30525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ノンリニア編集機でタイトルデータやボーダーに色を付ける場合、映像信号レベルを意識することなく、RGB表現で0〜255までの色すべてを使用することができる。HD(High Definition)信号を扱うシステムでは問題ないが、その映像をダウンコンバートしてSD(Standard Definition)信号にした際に、525コンポジット信号を扱うシステムにおいては−20IREを越えてしまい、その点が水平同期信号と誤認識され、同期乱れを発生する可能性がある。
【0008】
この問題点を図1を用いて説明する。図1は100%CB(Color Bar)をダウンコンバートしたNTSCコンポジット信号である。11は輝度信号、12は色差信号であり、縦軸の単位はIREである。13は水平同期信号であり、−40IREである。14の部分の信号のレベルが下がり過ぎると、水平同期信号と誤認識され、同期乱れを発生する危険性がある。
【0009】
本発明の目的は、例えば上記のような問題を解決するために、映像信号を補正して他の映像信号に変換する技術を提供することである。また、映像信号変換の前処理として映像信号を補正する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0011】
(1)第1の映像信号から第2の映像信号へ変換する映像信号変換方法であって、前記第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1のステップと、前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2のステップと、前記補正後の搬送色信号の振幅と前記第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3のステップと、前記補正後の色差信号を用いて前記第2の映像信号を得る第4のステップと、を有する。
【0012】
(2)前記(1)において、前記第1のステップ後に、前記第1の映像信号から得た輝度信号と前記搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断し、補正を行わないと判断した場合は補正せずに前記第1の映像信号から前記第2の映像信号に変換し、補正を行うと判断した場合だけ前記第2のステップに進む。
【0013】
(3)前記(1)または(2)において、前記第2のステップにおいて、あらかじめ与えられた閾値に基づいて前記補正後の搬送色信号の振幅を決定する。
【0014】
(4)前記(1)において、前記補正が不要の輝度信号の範囲をあらかじめ決めておき、前記補正が不要の範囲である場合は、補正せずに前記第1の映像信号から前記第2の映像信号に変換し、前記補正が不要の範囲でない場合だけ、前記第1ないし第4のステップを行う。
【0015】
(5)前記(1)〜(4)において、前記第1の映像信号から得られた輝度信号および色差信号、並びに前記補正後の色差信号がピクセル単位で処理される。
【0016】
(6)第1の映像信号から第2の映像信号へ変換する映像信号変換装置であって、前記第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段と、前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段と、前記補正後の搬送色信号の振幅と前記第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段と、前記補正後の色差信号を用いて前記第2の映像信号を得る第4の手段と、を備える。
【0017】
(7)前記(6)において、前記第1の映像信号から得た輝度信号から前記第1の手段の出力の搬送色信号を差し引き、該差し引いた結果をあらかじめ与えられた閾値と比較する比較手段をさらに有し、該差し引いた結果が前記閾値を下回らない場合は、前記第1の映像信号の補正しない色差信号を用いて前記第4の手段により前記第2の映像信号を得、該差し引いた結果が前記閾値を下回る場合は、前記第3の手段の出力の補正した色差信号を用いた前記第4の手段により前記第2の映像信号を得る。
【0018】
(8)前記(7)において、前記第1の映像信号がHD映像信号であり、前記第2の映像信号がSD映像信号であり、前記第2の手段は、前記第1の映像信号から得た輝度信号から前記閾値を差し引いた値を前記補正後の搬送色信号の振幅とする。
【0019】
(9)前記(8)において、前記HD映像信号は、ノンリニア編集機により編集されたデジタルコンポーネント信号であり、前記SD映像信号は、コンポジット信号であり、
前記閾値は、信号レベルが−0.2の閾値である。
【0020】
(10)映像信号の色差信号の補正を行う色差信号補正アダプタであって、前記映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段と、前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段と、前記補正後の搬送色信号の振幅と前記映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段と、を備える。
【0021】
(11)前記(10)において、前記第1の手段と前記第2の手段の間に介在し、前記映像信号から得た輝度信号と前記第1の手段で得た搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する判断手段をさらに備え、前記判断手段が補正を行わないと判断した場合は補正せずに前記映像信号から得た色差信号を出力し、前記判断手段が補正を行うと判断した場合だけ前記第2の手段および第3の手段により得られた補正後の色差信号を出力する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、映像信号を補正して他の映像信号に変換することができる。また、映像信号変換のための前処理として映像信号を補正することができる。例えば、本発明をノンリニア編集機で出力したHD映像信号のSD映像信号への変換に応用すれば、SDシステムでカラーレベルが規定値を超えないよう色変換を行い映像信号を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態は、例えば、ノンリニア編集機で編集されたHD映像信号からSD映像信号にダウンコンバートする時などにおいて生じる問題を解決するものであり、色差信号の振幅を縮小することで、合成したコンポジット信号のレベルが−20IREを下回らないように抑えるものである。
【0024】
色差信号の振幅が大きく、NTSCコンポジット信号において−20IREを下回ってしまう場合は、色差信号の振幅を小さくして規定レベルを維持する。その概念図を図2に示す。
【0025】
図2(A)は、100%CBをダウンコンバートしたNTSCコンポジット信号の色差信号の振幅を規定レベルに維持する本発明の実施形態の映像信号変換方法を説明するための図である。11は輝度信号、12は色差信号であり、縦軸の単位はIREである。13は水平同期信号であり、レベルは−40IREである。この信号レベルは21の部分においてレベルが−20IREを下回っている。そこで、本実施形態では、21の部分において信号レベルが−20IREを下回らないように、22に示すように、色成分の振幅を縮小して、−20IREに押さえる。なお、本実施形態の映像信号変換方法では、−20IREを下回る部分21において色成分の振幅を縮小させ22とする結果、21’の部分も22’に縮小する。
【0026】
図2(B)は本実施形態の映像信号変換方法を適用した後、表現可能な信号成分をY/Cb/Crの3次元で表現したものである。Yは輝度信号であり、Cb、Crは色差信号である。23はCb軸であり、24はCr軸であり、25はY軸である。26に示すように輝度信号Yのレベルが高い部分の色差信号Cb、Crの振幅レベルは変わらないが、輝度信号Yのレベルが低い部分では、27の円で示す補正前の搬送色信号の振幅が28の円で示すように小さくなる。図中の円は縮小している部分以外は円柱で示してもよいが、図2(A)のCB信号と対比させて縮小する部分をわかりやすくするために複数の円を描いている。図2(B)はあくまで概念的なものである。
【0027】
図3は、図2(B)の27と28を、より詳細に説明するためにこの部分だけ取り出して示したものである。図3において、33はU軸であり、34はV軸である。これらは図2(B)のCb軸23、Cr軸24に対応する。図3のU、Vと図2(B)のCb、Crの関係はU=Cb/2.03、V=Cr/1.14である。図3の37、38が図2(B)の27、28に対応する。
【0028】
図3において、Iは補正前の搬送色信号であり、I’は補正後の搬送色信号である。この図に示すように、本実施形態の映像信号変換方法は、補正前の搬送色信号Iを補正後の搬送色信号I’に補正して変換するものである。したがって、補正に際しては、ある点Iが同じ位相θを保持したままI’に移動する。
【0029】
図4に、本実施形態の映像信号変換方法のフローチャートを示す。図2は、100%CBをダウンコンバートしたNTSCコンポジット信号の色差信号の振幅を規定レベルに維持する場合について示したものであるのに対して、図4に示すものは、これを一般化した第1の映像信号から第2の映像信号を得るためのフローチャートである。第1の映像信号は例えばノンリニア編集機で編集されたHD映像信号であり、第2の映像信号は例えばSD映像信号である。
【0030】
まず、ステップ41で、第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る。この搬送色信号の振幅は図3の31の長さに対応する。
【0031】
次に、ステップ42で、第1の映像信号から得た輝度信号とステップ41で得られた搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する。ステップ42で補正を行わないと判断した場合(Noの場合)は、ステップ43で、補正せずに第1の映像信号からNTSCエンコーダを用いて第2の映像信号に変換する。ステップ42で補正を行うと判断した場合(Yesの場合)だけステップ44に進む。
【0032】
ステップ42の判断としては、例えば、第1の映像信号から得た輝度信号からステップ41で得られた搬送色信号の振幅を差し引いた差が、あらかじめ与えられた閾値を下回らない場合に補正せずに第1の映像信号からNTSCエンコーダにより第2の映像信号に変換し、あらかじめ与えられた閾値を下回る場合にだけステップ44に進み補正を行う。図2に示すのはこの場合であり、ステップ42の判断において、第1の映像信号がノンリニア編集機により編集されたHDのデジタルコンポーネント信号であり、第2の映像信号がSDのコンポジット信号であり、閾値は、信号レベルが−0.2(−20IRE)の閾値である。
【0033】
ステップ42で補正を行うと判断した場合(Yesの場合)は、ステップ44で、ステップ41で得られた搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る。これは、図3の31の長さから32の長さを得ることに対応する。ステップ44では、あらかじめ与えられた閾値に基づいて補正後の搬送色信号の振幅を決定する。図2に示す場合では、第1の映像信号から得た輝度信号から閾値(信号レベルが−0.2(−20IRE)の閾値)を差し引いた値を補正後の搬送色信号の振幅としている。
【0034】
ステップ45で、ステップ44で得られた補正後の搬送色信号の振幅(図3の32の長さ)と第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角(図3のθ)を用いて補正後の色差信号を得る。
ステップ46で、補正後の色差信号を用いてNTSCエンコーダにより第2の映像信号を得る。
【0035】
図4に示す実施形態では、ステップ42で補正を行うかどうかを判断しているが、このようにせずに、色差信号のレベルにかかわらず補正が不要である輝度信号の範囲をあらかじめ決めておき、補正が不要である場合は、ステップ43で補正せずに第1の映像信号から第2の映像信号に変換し、補正が不要の範囲でない場合だけ、ステップ41〜46を行うようにしてもよい。
【0036】
また、ステップ41、ステップ44、ステップ45で行う計算をあらかじめ行い、第1の映像信号から得た輝度信号と色差信号から補正後の色差信号を得るテーブルを格納しておき、このテーブルを参照して、第1の映像信号から得た輝度信号と色差信号から、補正後の色差信号を得て、ステップ46に進むようにしてもよい。なお、あらかじめ行う計算は、ステップ41、ステップ44、ステップ45で行う計算と等価な計算であってもよい。ここで等価な計算とは、例えば、ステップ41、ステップ44、ステップ45で行う計算の計算式を変形して得た計算式を用いた計算のことである。なお、図4のステップ42の判断でNoの場合については、補正後の色差信号の代わりに、第1の映像信号から得た色差信号をそのまま用いてテーブルを作成しておく。
【0037】
また、このテーブルを使用する場合、補正が不要の輝度信号の範囲である場合は、補正せずに第1の映像信号から第2の映像信号に変換し、補正が不要の輝度信号の範囲でない場合に、テーブルを参照して、第1の映像信号から得た輝度信号と色差信号から、補正後の色差信号を得て、ステップ46に進むようにしてもよい。この場合、補正が不要となる輝度信号の範囲である場合については、テーブルを作成しなくてもよい。
また、第1の映像信号から得られた輝度信号および色差信号、並びに補正後の色差信号がピクセル単位で処理されるようにしてもよい。
【0038】
以上説明した実施形態の映像信号変換方法を実行する映像信号変換装置を図5に示す。50は映像信号変換装置である。51は第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段であり、52は第1の映像信号から得た輝度信号と搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する判断手段であり、53は搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段であり、54は補正後の搬送色信号の振幅と第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段であり、55は補正後の色差信号または補正されていない色差信号を用いて第2の映像信号を得る第4の手段である。ここで第4の手段55は、具体的にはNTSCエンコーダであり、判断手段52で補正を行うと判断した場合に第2の手段53および第3の手段54により補正された色差信号を用いて第2の映像信号を得るだけでなく、判断手段52で補正を行わないと判断した場合は補正されていない色差信号を用いて第2の映像信号を得る。
【0039】
映像信号変換装置50の判断手段52は、第1の映像信号から得た輝度信号から第1の手段51の出力の搬送色信号を差し引き、該差し引いた結果をあらかじめ与えられた閾値と比較し、該差し引いた結果が前記閾値を下回らない場合は補正せず、該差し引いた結果が閾値を下回る場合は、補正するようにしてもよい。
【0040】
また、第1の映像信号がHD映像信号であり、第2の映像信号がSD映像信号であってもよく、第2の手段53は、第1の映像信号から得た輝度信号から閾値を差し引いた値を補正後の搬送色信号の振幅とするようにしてもよい。
【0041】
また、前記HD映像信号がノンリニア編集機により編集されたデジタルコンポーネント信号であり、前記SD映像信号がコンポジット信号である場合、前記閾値は、信号レベルが−0.2の閾値とするのが好適である。
【0042】
図6に本発明の実施形態の変形例である色差信号補正アダプタを示す。60は映像信号の色差信号の補正を行う色差信号補正アダプタであり、65はNTSCエンコーダである。色差信号補正アダプタ60は図5の映像信号変換装置50から4の手段(NTSCエンコーダ)55を独立させた装置である。色差信号補正アダプタ60は、NTSCエンコーダ65による映像信号変換の前処理として、映像信号の補正を行う装置である。61は、映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段であり、62は映像信号から得た輝度信号と第1の手段51で得た搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する判断手段であり、63は搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段であり、64は補正後の搬送色信号の振幅と前記映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段である。
【0043】
色差信号補正アダプタ60は、判断手段62が補正を行わないと判断した場合は補正せずに映像信号から得た色差信号を出力し、判断手段62が補正を行うと判断した場合だけ第2の手段63および第3の手段64により得られた補正後の色差信号を出力する。このとき、色差信号と共に前記映像信号から得た輝度信号を合わせて出力してもよい。
【0044】
色差信号補正アダプタの出力はNTSCエンコーダ65に入力され、NTSCエンコーダ65により第2の映像信号に変換される。
【0045】
以上説明した映像信号変換装置や色差信号補正アダプタは、コンピュータとプログラムを用いて構成しても、電子回路等を用いて構成してもよい。また、一部をコンピュータとプログラムを用いて構成し、他の部分を電子回路等を用いて構成してもよい。
【0046】
また、映像信号変換装置や色差信号補正アダプタは、専用の装置として構成してもよいが、ノンリニア編集機やその他の機器に内蔵させてもよい。
【実施例】
【0047】
本実施形態の映像信号変換方法の実施例を以下に示す。本実施例では、ノンリニア編集機の出力のHD−SDI(High Definition - Serial Digital Interface)信号をSD映像信号にダウンコンバートする。より具体的には、ノンリニア編集機内部で扱っているデジタルコンポーネント信号Y/Cb/CrをNTSCコンポジット信号に変換する。
【0048】
デジタルコンポーネント信号Y/Cb/Crの色差信号Cb、CrからNTSCコンポジット信号を生成したとき、搬送色信号の振幅Iは
【0049】
【数1】

【0050】
と表される。この計算が図4のステップ41に対応し、(式1)のIが図3の31の長さに対応する。(式1)の1行目は図2(B)に示すCr、Cbで表記した式であり、2行目は図3に示すV、Uで表記した式である。
ここで、輝度信号Yと搬送色信号Iを合成した結果が−20IREを下回るのは
【0051】
【数2】

【0052】
が成り立つ場合である。この計算に基づく判断が図4のステップ42に対応する。(式2)が成り立たない場合(−20IREを下回らない場合)は補正せずに通常の方法で、デジタルコンポーネント信号からNTSCコンポジット信号に変換する。これが図4のステップ43に対応する。(式2)が成り立つ場合(−20IREを下回る場合)は、以下に示すように補正を行う。
−20IREを下回ってしまうと、同期乱れを起こす可能性があるため、上記の式が成り立つ場合は信号レベルが−0.2を下回らないよう
【0053】
【数3】

【0054】
となるような補正後の搬送色信号の振幅I’を求め、搬送色信号のレベル補正を行う。(式3)のI’が図3の32の長さに対応する。この計算が図4のステップ44に対応する。
元の搬送色信号の位相角θは
【0055】
【数4】

【0056】
である。(式4)のθは図3のθである。(式4)の搬送色信号の位相角θと(式3)の補正後の搬送色信号I’から補正後の色差信号Cr’、Cb’を求めると、
【0057】
【数5】

【0058】
となる。これが図4のステップ45に対応する。
最後に、(式5)で得られた補正後の色差信号Cr’、Cb’と輝度信号Yを用いてコンポジット信号を得る。これが図4のステップ46に対応する。
【0059】
すなわち、本実施例では、(式2)を満たす場合に、(式5)を得て、(式5)の補正後の色差信号Cr’、Cb’と輝度信号Yを用いてコンポジット信号を得る。このようにして得られたコンポジット信号は、図2(A)の22、図2(B)の28に示すように、色信号が縮小され、−20IRE以内に抑えられる。
【0060】
実装する場合には、上記の計算処理を毎回行うのではなく、3次元のテーブルを持ち、8ビット映像信号の輝度信号y(16≦y≦235)、色差信号u(16≦u≦240) 、v(16≦v≦240)を y、u’、v’に変換する処理をピクセル単位で行い、処理速度の向上を図っている。ここで、y、u、vは8ビットの整数値で表現した映像信号である。輝度信号yは(16≦y≦235)、色差信号uは(16≦u≦240)、vは(16≦v≦240)の範囲の値である。それらを後述の(式6)に当てはめて0≦Y≦1、−1/2≦U,V≦1/2の実数値に変換している。したがって、大文字小文字いずれも映像信号のレベルであるが、表現する範囲が異なる。
【0061】
3次元テーブルの作成方法を以下に示す。
輝度信号y、色差信号u、vにより、Y、U、Vは以下の式で表すことができる。
【0062】
【数6】

【0063】
また、HD信号から生成したNTSCコンポジット信号のレベルが−20IREを下回らないためには、
【0064】
【数7】

【0065】
を満たす必要がある。
式6、式7より、
【0066】
【数8】

【0067】
が成り立つ。
ここで、rを以下のように仮定すると、
【0068】
【数9】

【0069】
rはyの値から一意に決まるため、u’およびv’は
【0070】
【数10】

【0071】
で求めることができる。
(式9)、(式10)を用いて、輝度信号y、補正前の色差信号u、vから補正後の色差信号u’、v’を得るための計算結果を記憶装置に保持しておく。3次元のテーブルとは図7のように、y、u、vの3つの値をインデックスとする表のことである。図7の例では8×8×8であるが、本実施例では112×224×224の大きさを持つ。このテーブルの各要素に補正後のu、vの値(u’,v’)を事前に計算して格納しておく。
【0072】
実際の映像の色を補正するときは、この表をy、u、vの値で参照すると、補正後のu’、v’の値が得られるので、1ピクセルごとに計算を行なうことなく高速に結果を求めることができる。例えば、
y=16,u=16,v=16のとき、u’=96,v’=96
y=50,u=70,v=60のとき、u’=76,v’=67
が、3次元テーブルを参照することにより直ちに得られる。
【0073】
さらに、より速度を向上させるため、信号レベルが−20IREを下回らない範囲をあらかじめ適用除外として上記の処理をバイパスしている。
適用除外となる範囲は、
【0074】
【数11】

【0075】
が成り立つ場合であり、Iの最大値=√(0.5+0.5)であるから、
【0076】
【数12】

【0077】
よって、輝度信号レベルが127を超える信号に対しては計算処理の適用を除外することができる。
また、(式6)では16≦y≦235と表しているが、本実施例では(式12)の通り、y>127の範囲は適用外であるので、3次元テーブルを作成する段階で除外している。
【0078】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施形態、実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施形態、実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】HD信号をダウンコンバートしてSD信号にする際の問題点を説明するための図である。
【図2】100%CBをダウンコンバートしたNTSCコンポジット信号の色差信号の振幅を規定レベルに維持する本発明の実施形態の映像信号変換方法を説明するための図である。
【図3】図2(B)の一部分だけ取り出して示した図である。
【図4】本発明の実施形態の映像信号変換方法のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態の映像信号変換装置を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例である色差信号補正アダプタを示す図である。
【図7】3次元テーブルを説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
11…輝度信号、12…色差信号、13…水平同期信号、21…−20IREを下回ってしまう部分、22…縮小された色成分の振幅、23…Cb軸、24…Cr軸、25…Y軸、26…輝度信号Yのレベルが高い部分、27…補正前の搬送色信号の振幅、28…補正後の搬送色信号の振幅、33…U軸、34…V軸、37…補正前の搬送色信号の振幅、38…補正後の搬送色信号の振幅、50…映像信号変換装置、51…第1の手段、52…判断手段、53…第2の手段、54…第3の手段、55…第4の手段、60…色差信号補正アダプタ、65…NTSCエンコーダ、61…第1の手段、62…判断手段、63…第2の手段、64…第3の手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の映像信号から第2の映像信号へ変換する映像信号変換方法であって、
前記第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1のステップと、
前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2のステップと、
前記補正後の搬送色信号の振幅と前記第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3のステップと、
前記補正後の色差信号を用いて前記第2の映像信号を得る第4のステップと、
を有することを特徴とする映像信号変換方法。
【請求項2】
前記第1のステップ後に、前記第1の映像信号から得た輝度信号と前記搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断し、補正を行わないと判断した場合は補正せずに前記第1の映像信号から前記第2の映像信号に変換し、補正を行うと判断した場合だけ前記第2のステップに進むことを特徴とする請求項1に記載の映像信号変換方法。
【請求項3】
前記第2のステップにおいて、あらかじめ与えられた閾値に基づいて前記補正後の搬送色信号の振幅を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の映像信号変換方法。
【請求項4】
前記補正が不要の輝度信号の範囲をあらかじめ決めておき、
前記補正が不要の範囲である場合は、補正せずに前記第1の映像信号から前記第2の映像信号に変換し、
前記補正が不要の範囲でない場合だけ、前記第1ないし第4のステップを行う
ことを特徴とする請求項1に記載の映像信号変換方法。
【請求項5】
前記第1の映像信号から得られた輝度信号および色差信号、並びに前記補正後の色差信号がピクセル単位で処理されることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の映像信号変換方法。
【請求項6】
第1の映像信号から第2の映像信号へ変換する映像信号変換装置であって、
前記第1の映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段と、
前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段と、
前記補正後の搬送色信号の振幅と前記第1の映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段と、
前記補正後の色差信号を用いて前記第2の映像信号を得る第4の手段と、
を備えることを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項7】
請求項6に記載の映像信号変換装置において、
前記第1の映像信号から得た輝度信号から前記第1の手段の出力の搬送色信号を差し引き、該差し引いた結果をあらかじめ与えられた閾値と比較する比較手段をさらに備え、
該差し引いた結果が前記閾値を下回らない場合は、前記第1の映像信号の補正しない色差信号を用いて前記第4の手段により前記第2の映像信号を得、
該差し引いた結果が前記閾値を下回る場合は、前記第3の手段の出力の補正した色差信号を用いた前記第4の手段により前記第2の映像信号を得る、
ことを特徴とする映像信号変換装置。
【請求項8】
前記第1の映像信号がHD映像信号であり、
前記第2の映像信号がSD映像信号であり、
前記第2の手段は、前記第1の映像信号から得た輝度信号から前記閾値を差し引いた値を前記補正後の搬送色信号の振幅とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の映像信号変換装置。
【請求項9】
前記HD映像信号は、ノンリニア編集機により編集されたデジタルコンポーネント信号であり、
前記SD映像信号は、コンポジット信号であり、
前記閾値は、信号レベルが−0.2の閾値である、
ことを特徴とする請求項8に記載の映像信号変換装置。
【請求項10】
映像信号の色差信号の補正を行う色差信号補正アダプタであって、
前記映像信号から得た色差信号から搬送色信号の振幅を得る第1の手段と、
前記搬送色信号の振幅を補正して補正後の搬送色信号の振幅を得る第2の手段と、
前記補正後の搬送色信号の振幅と前記映像信号から得た搬送色信号の位相角を用いて補正後の色差信号を得る第3の手段と、
を備えることを特徴とする色差信号補正アダプタ。
【請求項11】
前記第1の手段と前記第2の手段の間に介在し、前記映像信号から得た輝度信号と前記第1の手段で得た搬送色信号の振幅とあらかじめ与えられた閾値から補正を行うかどうかを判断する判断手段をさらに備え、
前記判断手段が補正を行わないと判断した場合は補正せずに前記映像信号から得た色差信号を出力し、
前記判断手段が補正を行うと判断した場合だけ前記第2の手段および前記第3の手段により得られた補正後の色差信号を出力する
ことを特徴とする請求項10に記載の色差信号補正アダプタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−124646(P2009−124646A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299236(P2007−299236)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(506381153)さくら映機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】