説明

映像表示装置及びレーダ装置

【課題】必要な領域にのみ信号処理を行って、場所に応じた的確な情報を取得可能な映像表示装置を提供する。
【解決手段】レーダ指示器は、表示部と、マウスと、レーダ映像生成部と、を備える。表示部は、レーダアンテナが受信したエコー信号に基づくレーダ映像を表示する。マウスは、レーダ映像が表示される領域から一部の領域を選択する操作が可能である。レーダ映像生成部は、マウスにより選択された領域である選択領域と、選択領域以外の領域と、で異なる信号処理を行ってレーダ映像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、レーダ映像を生成して表示する映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1から5までに示すように、複数のレーダアンテナから受信したエコー信号に基づいてレーダ映像を生成して表示するレーダ装置が知られている。
【0003】
特許文献1から3までが開示するレーダ装置は、2つのレーダアンテナを備えており、2種類のエコー信号がレーダ指示器に入力される。レーダ装置は、入力されたエコー信号に基づいてレーダ映像をそれぞれ生成する。そして、レーダ装置は、一方のレーダ映像のうち所定範囲を示す部分と、他方のレーダ映像のうち所定範囲以外を示す部分と、を合成することで、表示用のレーダ映像を生成する構成になっている。
【0004】
特許文献4は、2つのレーダアンテナに基づいてそれぞれ生成されたレーダ映像を画素単位で交互に出力して表示用のレーダ映像を生成する構成等を開示する。
【0005】
特許文献5が開示するレーダ装置は、2つのレーダアンテナに基づいて、自船を中心としたレーダ映像をそれぞれ生成する。また、ユーザは、自船からの距離又は自船から見た方位を指定して所定の領域を指定することができる。レーダ装置は、ユーザが指定した領域には一方のレーダ映像を出力し、それ以外の領域には他方のレーダ映像を出力することにより、表示用のレーダ映像を生成する。
【0006】
このように、複数のレーダアンテナに基づいてレーダ映像を生成することにより、各レーダアンテナが探知不能な領域を補い合うことができるので、探知能力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−105071号公報
【特許文献2】特開昭62−105072号公報
【特許文献3】特開昭62−201384号公報
【特許文献4】特許第3131450号公報
【特許文献5】特開2006−300722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、レーダ映像にノイズが含まれていたり、レーダ映像に多数のエコーが表示されてエコーの形状が分かりにくかったりする場合は、適切な信号処理をエコー信号に対して行うことが必要となる。
【0009】
例えば、ノイズを除去する処理(信号レベルを抑圧する処理)を行うことにより、レーダ映像に表示されたノイズを除去(又は低減)することができる。しかし、信号レベルを抑圧することによって、ユーザにとって必要な信号も抑圧されてしまうおそれがある。
【0010】
また、エコーの輪郭を抽出する処理を行うことにより、エコーの形状を分かり易くすることができる。しかし、エコーがあまり存在しない領域については、エコーの輪郭を抽出することでエコーの輪郭以外が見えなくなって、エコーが目立たなくなることがある。
【0011】
このように、エコー信号に対する信号処理は、必要な領域にのみ行うことが望ましい。しかし、従来のレーダ装置においては、任意の範囲を選択してノイズを除去する処理を行うといった柔軟な対応を行うことができなかった。
【0012】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、必要な領域にのみ信号処理を行って、場所に応じた的確な情報を取得可能な映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の映像表示装置が提供される。即ち、この映像表示装置は、表示部と、選択操作部と、センサ映像生成部と、を備える。前記表示部は、センサによって得られた信号に基づいて生成される映像であるセンサ映像を表示する。前記選択操作部は、センサ映像が表示される領域から一部の領域を選択する操作が可能である。前記センサ映像生成部は、前記選択操作部により選択された領域である選択領域と、前記選択領域以外の領域と、で異なる信号処理を行ってセンサ映像を生成する。
【0015】
これにより、選択された一部の領域に異なる信号処理を適用することで、場所に応じた的確な情報を得ることができる。
【0016】
前記の映像表示装置においては、前記選択操作部は、前記選択領域の大きさを変更する操作、及び前記選択領域を動かす操作のうち少なくとも一方が可能であることが好ましい。
【0017】
これにより、ユーザは、信号処理が必要な領域の変化に選択領域を容易に追従させることができる。
【0018】
前記の映像表示装置においては、前記選択操作部は、前記表示部に表示されるポインタを動かす操作が可能であり、当該ポインタによるドラッグ操作によって、前記選択領域の大きさの変更及び前記選択領域の移動のうち少なくとも一方が可能であることが好ましい。
【0019】
これにより、ユーザは、直感的な操作で選択領域を変更することができる。また、数値入力によって選択領域を変更する構成と比較して、素早く選択領域を変更することができる。
【0020】
前記の映像表示装置においては、前記選択領域が矩形であることが好ましい。
【0021】
これにより、画面の上下方向と左右方向との大きさを指定して所望の大きさの選択領域を形成することが可能となる。
【0022】
前記の映像表示装置においては、前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、輪郭を抽出する処理を行うことが好ましい。
【0023】
これにより、例えば複数の物標が隣接している領域に上記の信号処理を行うことで、物標の形状が把握し易くなる。一方、その他の領域については、輪郭のみが表示されて物標が目立たなくなることを防止できる。
【0024】
前記の映像表示装置においては、前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、移動中の物標を示す信号のみを抽出する処理を行うことが好ましい。
【0025】
これにより、例えば複数の物標が隣接している領域に上記の信号処理を行うことで、注目する必要性の高い物標(移動中の物標)を抽出して表示することができる。一方、その他の領域については、移動中でない物標についても表示することができる。
【0026】
前記の映像表示装置においては、前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、スキャン相関処理を行うことが好ましい。
【0027】
これにより、例えばノイズが多い領域にスキャン相関処理を行うことで、ノイズを抑圧することができる。一方、その他の領域については、高速で移動する物標があっても表示することができる。
【0028】
前記の映像表示装置においては、前記センサ映像生成部は、前記選択領域とそれ以外の領域とで、信号の調整レベルを異ならせる処理を行うことが好ましい。
【0029】
これにより、例えば信号レベルの小さなノイズが発生している領域においては、所定の調整レベルを設定することで、ノイズを消去(又は目立たなく)することができる。一方、その他の領域については、信号レベルが小さい物標等についても表示することができる。
【0030】
前記の映像表示装置においては、前記表示部は、センサ映像と重畳させて他の映像を表示可能であり、前記選択領域及びそれ以外の領域のうち何れか一方の領域に、センサ映像及び前記他の映像が重畳された映像を表示するとともに、他方の領域に、前記他の映像を表示せずにセンサ映像を表示することが好ましい。
【0031】
これにより、他の映像(例えば地図及び海図)に記号及び線等が細かく記載されている場合、この領域(重畳したときにセンサ映像が見にくくなる領域)にセンサ映像のみを表示する処理を行うことで、物標の位置及び形状等を容易に確認することができる。
【0032】
前記の映像表示装置においては、前記選択領域として複数の領域を選択可能であることが好ましい。
【0033】
これにより、互いに離れて存在する複数の領域と、それ以外の領域と、で行う信号処理を異ならせることができる。従って、様々な状況に対応可能な映像表示装置が実現できる。
【0034】
前記の映像表示装置においては、センサ映像の表示領域の縮尺又は向きが変更された場合に、それに対応して、前記選択領域の位置及び形状のうち少なくとも何れか一方が変化することが好ましい。
【0035】
これにより、センサ映像の表示領域の縮尺又は向きが変更した場合に、選択領域を再設定する手間を省くことができる。
【0036】
前記の映像表示装置においては、センサ映像は、単一の前記センサによって得られた信号に基づいて生成されることが好ましい。
【0037】
これにより、単一のセンサから得られた信号に異なる信号処理を行って、それらの結果を比較することができる。
【0038】
本発明の第2の観点によれば、前記の映像表示装置と、センサ映像としてのレーダ映像を生成するためのエコー信号を取得するレーダアンテナと、を備えるレーダ装置が提供される。
【0039】
これにより、上記の効果を発揮するレーダ装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーダ装置のブロック図。
【図2】選択ウインドウを移動したときの表示部の画面を示す図。
【図3】選択ウインドウを移動したときの表示部の画面の別の例を示す図。
【図4】選択ウインドウを拡大したときの表示部の画面を示す図。
【図5】レーダ映像の縮尺を変更したときの表示部の画面を示す図。
【図6】海図とレーダ映像とを重畳して表示可能な第1変形例に係る表示部の画面を示す図。
【図7】第2変形例に係るレーダ装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本実施形態に係るレーダ装置1のブロック図である。本実施形態のレーダ装置1は、漁船等の船舶に備えられる舶用レーダであり、主に他船等の物標の探知に用いられる。
【0042】
図1に示すように、本実施形態のレーダ装置1は、アンテナユニット10と、レーダ指示器(映像表示装置)20と、を備えている。
【0043】
アンテナユニット10は、船舶の所定の位置に取り付けられている。このアンテナユニット10は、レーダアンテナ(センサ)11と、送受信部12と、を備えている。
【0044】
レーダアンテナ11は、指向性の強いパルス状電波を送信するとともに、物標からのエコー(反射波)を受信できるように構成されている。この構成で、レーダアンテナ11がパルス状電波を送信してからエコーを受信するまでの時間を測定することにより、自船から物標までの距離rを知ることができる。また、レーダアンテナ11は水平面内で360°回転可能に構成され、パルス状電波の送信方向を変えながら(レーダアンテナ11の角度を変化させながら)電波の送受信を繰り返し行うように構成されている。この構成により、自船周囲の平面上の物標を360°にわたり探知することができる。なお、以下の説明では、パルス状電波を送信してから次のパルス状電波を送信するまでの動作を「スイープ」と称することがある。
【0045】
なお、このパルスレーダに代えて、CW(continuous wave)レーダやパルスドップラーレーダを用いても良い。また、上記の構成に代えて、レーダアンテナを回転させない構成のレーダ装置を用いても良い。例えば、全周方向にアンテナ素子を有する構成のレーダ装置や、前方等の特定の方向のみを探知するレーダ装置等は、レーダアンテナを回転させる必要がない。
【0046】
送受信部12は、レーダアンテナ11が受信したエコー信号をサンプリングし、デジタル化したエコー信号(受信データ)をレーダ指示器20へ出力するように構成されている。
【0047】
レーダ指示器20は、スイープメモリ21と、座標変換部22と、レーダ映像生成部(センサ映像生成部)23と、マウス24と、表示部25と、を備えている。
【0048】
スイープメモリ21は、受信データを1スイープ分リアルタイムで記憶することができるバッファメモリである。スイープメモリ21には、1スイープの間にサンプリングされた前記受信データが、時系列順で記憶されている。従って、スイープメモリ21から受信データを読み出すときの読出しアドレスに基づいて、当該受信データに対応する物標(エコー源)までの距離rを求めることができる。また、レーダアンテナ11には図略の方位センサが取り付けられており、この方位センサの検出結果(物標の地球基準の方位θ)もスイープメモリ21へ送信されている。従って、スイープメモリ21から受信データを読み出す際は、当該受信データに対応する物標の位置を、極座標(r,θ)で得ることができる。
【0049】
座標変換部22は、極座標で表現されるスイープライン上の点(r,θ)を、XY直交座標系での画素の位置(X,Y)に変換する。XY直交座標系に変換された受信データは、レーダ映像生成部23に出力される。
【0050】
レーダ映像生成部23は、座標変換部22から入力された受信データに基づいて、所定の信号処理を行った後に、レーダ映像(センサ映像)を生成する。レーダ映像生成部23は、図1に示すように、第1信号処理部31と、第2信号処理部32と、第1画像メモリ33と、第2画像メモリ34と、データ選択部35と、を備える。また、レーダ装置1は、図1に示すマウス24の他、図略の操作キー等を備えており、レーダ映像生成部23等に対して各種操作及び指示が可能となっている。
【0051】
第1信号処理部31及び第2信号処理部32は、座標変換部22から入力された受信データに様々な信号処理を行うことが可能である。第1信号処理部31及び第2信号処理部32が実行可能な信号処理としては、例えば、輪郭抽出処理、移動物標抽出処理、ゲイン調整処理、及びスキャン相関処理等がある。第1信号処理部31及び第2信号処理部32は、上記の信号処理のうち、前記操作キー等によりユーザに指定された信号処理を行う。ここで、ユーザは、第1信号処理部31と、第2信号処理部32とで、異なる信号処理が行われるように設定する。なお、「異なる信号処理が行われる」とは、第1信号処理部31にある信号処理を行うように設定し、第2信号処理部32に対しては特に信号処理を行わないように設定した場合も含まれるものとする。
【0052】
輪郭抽出処理とは、エコーの輪郭のみを抽出する処理である。例えば複数のエコーが隣接している領域等に輪郭抽出処理を行うことで、エコーの形状が把握し易くなる。しかし、例えばエコーがあまり存在しない領域については、エコーの輪郭以外が見えなくなることから、エコーが目立たなくなることがある。
【0053】
移動物標抽出処理とは、レーダ映像の時間推移に基づいて、移動中の物標を他の物標と区別して、当該移動中の物標を示すエコー信号のみを抽出する処理である。例えば複数のエコーが隣接している領域にこの処理を行うことで、注目する必要性の高いエコー(移動中の物標)を抽出して表示することができる。
【0054】
ゲイン調整処理とは、設定された調整レベルに応じて、表示画面上に表示するエコー信号の信号レベルを調整する処理である。この調整を行うことにより、設定した調整レベルよりも高い信号レベルのエコー信号のみを表示することができる。そのため、適切な調整レベルを設定してゲイン調整処理を行うことにより、海面反射等のノイズを抑圧することができる。しかし、信号レベルを抑圧することによって、ユーザにとって必要な信号も抑圧されてしまうおそれがある。なお、第1信号処理部31と第2信号処理部32とでこの調整レベルを異ならせる場合も、上述の「異なる信号処理が行われる」に該当するものとする。
【0055】
スキャン相関処理とは、最新のエコー信号と過去のエコー信号との相関をとることにより、時間的に安定して検出される信号(過去の信号との相関性が高い信号)は残しつつ、時間的にランダムに変動する信号(過去のエコー信号との相関性が低い信号)を抑圧する処理である。例えば、他船、ブイ及び陸地等を示すエコーは、時間的に安定して検出される信号である。一方、海面反射に基づくエコーは、時間的にランダムに変動する信号である。従って、エコー信号に対して上記スキャン相関処理を行うことにより、海面反射に基づく信号のみを抑圧することができる。しかし、他船が高速で移動していると、当該他船からのエコーはスキャン毎に異なる位置で検出されることとなり、見かけ上は信号が安定していないように見えてしまう。このため、スキャン相関処理を行うと高速移動物標のエコーが抑圧されてしまう。
【0056】
以上のように、エコー信号に対して行う信号処理は、それぞれメリット・デメリットがあり、画面全体に対して同一の処理を行うよりも、特定の領域に対して他と異なる処理をすることで、ユーザにとって必要な新たな情報が取得できる場合もある。
【0057】
第1画像メモリ33は、第1信号処理部31による信号処理済みの受信データをラスタ形式の二次元画像として記憶できるように構成されている。第2画像メモリ34は、第1画像メモリ33と同様に、第2信号処理部32による信号処理済みの受信データをラスタ形式の二次元画像として記憶できるように構成されている。
【0058】
以上のように、本実施形態のレーダ装置1は、アンテナユニット10(レーダアンテナ11)からのエコー信号について異なる信号処理が行われた2つのレーダ映像を記憶する構成である。
【0059】
データ選択部35は、2つの画像データのうち、ユーザによって選択された領域(画素)については、第1画像メモリ33に記憶されたレーダ映像を出力し、それ以外の領域(画素)については、第2画像メモリ34に記憶されたレーダ映像を出力する構成である。データ選択部35は、このようにして生成したレーダ映像を、ラスタスキャン式のカラー表示装置として構成された表示部25に表示する。
【0060】
これにより、選択された一部の領域に異なる信号処理を適用することができるので、場所に応じた的確な情報を得ることができる。なお、以下の説明では、「ユーザによって選択された領域」を「選択領域」と称することがある。
【0061】
次に、選択領域の作成及び操作方法について説明する。図2は、選択ウインドウ41を移動したときの表示部25の画面を示す図である。図3は、選択ウインドウ41を移動したときの表示部の画面の別の例を示す図である。図4は、選択ウインドウ41を拡大したときの表示部25の画面を示す図である。
【0062】
ユーザは、前記選択領域を作成する場合、図略の操作キー等を用いて所定の操作を行い、選択領域を作成する指示を行う。そして、ユーザは、マウス24のドラッグ操作によって選択領域の左上隅と右下隅を選択して、レーダ映像が表示される領域から矩形状の領域を選択する。この操作により、表示部25には、図2に示す選択ウインドウ41が作成される。また、選択ウインドウ41の作成は、操作キー等を用いて、上下方向の大きさ及び左右方向の大きさ等を指定して行うこともできる。なお、選択領域は複数指定して、複数の選択ウインドウ41を表示部25に表示させることも可能である。
【0063】
選択ウインドウ41は、タイトル部41aと、ウインドウ部41bと、で構成されている。タイトル部41aは、選択ウインドウ41の上端に形成され、選択ウインドウの名称等が記述されている。ウインドウ部41bは、タイトル部41aの下側に形成されている。このウインドウ部41b内には、前記第2画像メモリ34に記憶されたレーダ映像が表示される。一方、選択ウインドウ41の外側の領域には、前記第1画像メモリ33に記憶された画像データが表示される。
【0064】
つまり、第1信号処理部31が行う信号処理を指定せず、第2信号処理部32が輪郭抽出処理を行うようにユーザが指示した場合、図2に示すように、ウインドウ部41b内のエコーについては、当該エコーの輪郭のみが表示され、選択ウインドウ41以外の領域については、輪郭だけでなく全部のエコーが表示される。
【0065】
また、ユーザは、マウス24を操作することにより、選択ウインドウ41の移動、拡大、及び縮小が可能である。具体的には、ユーザは、選択ウインドウ41のタイトル部41aをドラッグすることにより、当該選択ウインドウ41を所定の位置に移動させることができる(図2を参照)。また、適宜の設定又は操作を行うことにより、移動前の選択ウインドウ41内の表示のまま、当該選択ウインドウ41を移動させることも可能である(図3を参照)。これにより、例えば、同じ領域の輪郭抽出処理前のエコーと輪郭抽出処理後のエコーとを並べて表示して比較することができる。また、ユーザは、選択ウインドウ41の上側又は下側の端部をドラッグすることにより、選択ウインドウ41の上下方向の大きさを変化させることができる。また、ユーザは、選択ウインドウ41の右側又は左側の端部をドラッグすることにより、選択ウインドウ41の左右方向の大きさを変化させることができる。更に、ユーザは、選択ウインドウ41の下側の隅部をドラッグすることにより、選択ウインドウ41の上下方向及び左右方向の大きさを1回の操作で変化させることができる(図4を参照)。
【0066】
ユーザは、このようにして選択ウインドウ41の作成及び操作を行って、レーダ映像が表示される領域から一部の領域を選択する。なお、例えば予め選択ウインドウ41の初期サイズ及び初期位置が設定されており、その後ユーザの操作によって所望の選択領域を指定する構成であっても良い。
【0067】
そのため、上記特許文献5のように、所定の範囲を選択するために距離及び方位を入力する手間が掛からない。また、上記特許文献5の構成は、入力する内容がレーダ映像のどの部分を示すかが直感的には分からないのに対し、本実施形態では直感的な操作が可能である。
【0068】
次に、レーダ装置の縮尺(レンジ)が変更された場合の選択ウインドウ41の挙動について図5を参照して説明する。図5は、レーダ映像の縮尺を変更したときの表示部25の画面を示す図である。
【0069】
本実施形態のレーダ装置1は、縮尺の変更が可能に構成されている。例えば縮尺を大きくすることにより、エコーの詳細な形状を確認することができる。そして、本実施形態では、図5に示すように、レーダ映像の表示領域の縮尺が変更された場合に、その変更に対応するように、選択領域の位置及び形状が自動的に変化するように構成されている。なお、本実施形態では、縮尺が変更された場合だけでなく、例えば船舶の回頭によりレーダ映像の向きが変化した場合にも、それに応じて選択領域の位置が自動的に変化する構成となっている。
【0070】
次に、図6を参照して、上記実施形態の第1変形例を説明する。図6は、海図とレーダ映像とを重畳して表示可能な第1変形例に係る表示部25の画面を示す図である。なお、本変形例及び後述の第2変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0071】
図6に示す第1変形例は、自船の周囲の海図情報を外部から受信可能に構成されている。そして、受信した海図とレーダ映像とを重畳して表示部25に表示可能な構成である(図6(a)を参照)。図6(a)においては、陸地が斜線で表現されており、海がドットで表現されている。また、この海図には、画面の中央部のやや上方等に多数のブイが表示されている。レーダ映像は、この海図上に重ねられるようにして表示される。
【0072】
本変形例では、レーダ映像生成部23は、所定以上の信号レベルのエコーを抽出し、抽出したエコー以外の領域を透過させる処理を行う。これにより、信号レベルが所定以上の領域についてはエコーを表示しつつ、エコーの信号レベルが弱い領域(又はエコーが存在しない領域)については海図を表示することができる。
【0073】
また、本変形例では、第1信号処理部31又は第2信号処理部32のうち一方に、所定以上の信号レベルのエコーを抽出し、抽出したエコー以外の領域を単色(例えば黒色、図面では紙面色)で塗りつぶす(透過させない)処理を行わせることが可能である。これにより、選択ウインドウ41内においてレーダ映像及び海図が重畳された映像を表示するとともに、選択ウインドウ41外において、海図を表示せずにレーダ映像を表示することができる。従って、例えば第2信号処理部32にこの処理を行わせ、画面の中央部のやや上方(ブイが多くてエコーが見にくい領域)に選択ウインドウ41を合わせることにより、エコーを見易く表示することができる(図6(b)を参照)。
【0074】
次に、図7を参照して、第2変形例を説明する。図7は、第2変形例に係るレーダ装置のブロック図である。
【0075】
第2変形例は、レーダ映像生成部23の構成が上記実施形態と異なっている。具体的には、本変形例のレーダ映像生成部23aは、データ分割部51と、第1信号処理部52と、第2信号処理部53と、画像メモリ54と、を備える。また、マウス24による選択領域の指定はデータ分割部51に出力される。
【0076】
データ分割部51は、座標変換部22から受信したデータのうち、選択領域に対応するデータを第2信号処理部53へ出力するとともに、選択領域以外に対応するデータを第1信号処理部52へ出力する。
【0077】
第1信号処理部52及び第2信号処理部53では、上記で説明した信号処理が行われる。つまり、上記実施形態では、第1信号処理部31及び第2信号処理部32がそれぞれレーダ表示領域の全体に対して信号処理を行う。これに対し、本変形例では、第1信号処理部52は選択領域以外の領域についてのみ信号処理を行い、第2信号処理部53は選択領域のみに信号処理を行う構成である。そして、第1信号処理部52及び第2信号処理部53は、信号処理済の受信データを画像メモリ54に出力して、1つの画像データ(レーダ映像)を生成する。
【0078】
以上に説明したように、本実施形態のレーダ指示器20は、表示部25と、マウス24と、レーダ映像生成部23と、を備える。表示部25は、レーダアンテナ11によって得られたエコー信号に基づいて生成されるレーダ映像を表示する。マウス24は、レーダ映像が表示される領域から一部の領域を選択する操作が可能である。レーダ映像生成部23は、マウス24により選択された領域である選択領域と、選択領域以外の領域と、で異なる信号処理を行ってレーダ映像を生成する。
【0079】
また、本実施形態では、マウス24を操作することで、選択ウインドウ41の拡大、縮小、位置変更等を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態では、信号処理として、輪郭抽出処理、移動物標抽出処理、ゲイン調整処理、及びスキャン相関処理を行う。そして、選択ウインドウ41内側と外側とで、行われる信号処理の種類(信号処理のレベルが異なる場合も含む)を異ならせる。
【0081】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0082】
上記実施形態及び変形例では、レーダ指示器20は、単一のレーダアンテナ11によって得られた信号に基づいて生成されるレーダ映像を表示する構成であるが、複数のレーダアンテナによって得られた信号に基づいてレーダ映像が生成される構成であっても良い。
【0083】
第1変形例において、レーダ映像と海図とを重畳させて表示させる例を示したが、重畳させる映像は海図に限られず、例えば、AIS情報及びTT情報等を示す映像と重畳させる構成でも良い。
【0084】
第1信号処理部31及び第2信号処理部32等が行う信号処理は上記で示した例に限られず、異なる信号処理が行われる限り、他の信号処理を行う構成であっても良い。また、例えば、選択ウインドウ41の内側と外側とで表示率(拡大率、縮尺)を異ならせる場合も、「異なる信号処理が行われる」に該当するものとする。
【0085】
選択ウインドウ41の移動及び大きさの変更は、マウス24に代えて例えばトラックボールのドラッグ操作等で行う構成であっても良い。また、操作キー等の入力によって選択ウインドウ41の移動及び大きさの変更が可能な構成であっても良い。
【0086】
上記では、レーダ映像の表示領域が矩形状である例を説明したが、それ以外の形状、例えば円形の表示領域の表示部25を備える構成であっても良い。
【0087】
選択ウインドウ41及びウインドウ部41bは矩形状に限られず、例えば円形であっても良い。
【0088】
複数の選択ウインドウを表示可能な構成であって、選択ウインドウが示す領域毎に異なる信号処理が行われる構成であっても良い。例えば、上記実施形態の構成に加えて第3信号処理部を備えるとともに第2選択ウインドウを表示可能であって、第3信号処理部の信号処理の結果得られた映像を第2選択ウインドウ内に表示する構成を採用することができる。なお、信号処理部の数及び選択ウインドウの数をより多くしても構わない。
【0089】
第1信号処理部31及び第2信号処理部32に、複数種類の信号処理を行わせても良い。例えば、第1信号処理部31で輪郭抽出処理及びスキャン相関処理を行い、第2信号処理部32で移動物標抽出処理を行う構成とすることができる。
【0090】
本発明は、船舶用レーダ装置に限られず、航空機等の他の移動体に搭載される構成であっても良い。また、灯台等に設置され、移動体の位置等を監視するレーダ装置であっても良い。また、レーダ装置以外にも、例えばソナーにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 レーダ装置
11 レーダアンテナ(センサ)
20 レーダ指示器(映像表示装置)
23 レーダ映像生成部(センサ映像生成部)
24 マウス(選択操作部)
25 表示部
41 選択ウインドウ
41a タイトル部
41b ウインドウ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサによって得られた信号に基づいて生成される映像であるセンサ映像を表示する表示部と、
センサ映像が表示される領域から一部の領域を選択する操作が可能な選択操作部と、
前記選択操作部により選択された領域である選択領域と、前記選択領域以外の領域と、で異なる信号処理を行ってセンサ映像を生成するセンサ映像生成部と、
を備えることを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の映像表示装置であって、
前記選択操作部は、前記選択領域の大きさを変更する操作、及び前記選択領域を動かす操作のうち少なくとも一方が可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の映像表示装置であって、
前記選択操作部は、前記表示部に表示されるポインタを動かす操作が可能であり、当該ポインタによるドラッグ操作によって、前記選択領域の大きさの変更及び前記選択領域の移動のうち少なくとも一方が可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記選択領域が矩形であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、輪郭を抽出する処理を行うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、移動中の物標を示す信号のみを抽出する処理を行うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記センサ映像生成部は、前記選択領域及びそれ以外の領域の一方においてのみ、スキャン相関処理を行うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記センサ映像生成部は、前記選択領域とそれ以外の領域とで、信号の調整レベルを異ならせる処理を行うことを特徴とする映像表示装置。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記表示部は、センサ映像と重畳させて他の映像を表示可能であり、前記選択領域及びそれ以外の領域のうち何れか一方の領域に、センサ映像及び前記他の映像が重畳された映像を表示するとともに、他方の領域に、前記他の映像を表示せずにセンサ映像を表示することを特徴とする映像表示装置。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
前記選択領域として複数の領域を選択可能であることを特徴とする映像表示装置。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
センサ映像の表示領域の縮尺又は向きが変更された場合に、それに対応して、前記選択領域の位置及び形状のうち少なくとも何れか一方が変化することを特徴とする映像表示装置。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載の映像表示装置であって、
センサ映像は、単一の前記センサによって得られた信号に基づいて生成されることを特徴とする映像表示装置。
【請求項13】
請求項1から12までの何れか一項に記載の映像表示装置と、
センサ映像としてのレーダ映像を生成するためのエコー信号を取得するレーダアンテナと、
を備えることを特徴とするレーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247320(P2012−247320A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119667(P2011−119667)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】