説明

映像音声入出力システム

【課題】視聴者が撮影された映像を見るとともに集音された音声を聴くことによって撮影および集音がなされた場所の様子をリアルに感じることが可能な、新規かつ改良された技術を提供する。
【解決手段】映像音声入出力システム1は、映像入力装置110と複数の音声入力装置120とを有する映像音声入力システム100と、映像出力装置210と複数の音声入力装置120のそれぞれに対応する複数の音声出力装置220とを有する映像音声出力システム200とを備える。複数の音声出力装置220は、対応する複数の音声入力装置120のそれぞれが設置されている各地点から表示面に対して垂線を引いた場合における垂線の足のそれぞれを、実物大に対する映像の縮小率または拡大率に従って映像の中心を基準として縮小または拡大させた場合に決定される各位置に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像音声入出力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、多くの観客が集まるコンサート会場やスポーツイベントが行われる会場の様子を伝えるために、会場内を撮影して取得された映像や会場内から集音して取得された音声が使用される。視聴者は、取得された映像を見ながら取得された音声を聴くことで会場の様子を知ることができる。
【0003】
視聴者が聴く音声を出力する技術には、例えば、ステレオ(stereo)や、5.1ch、6.1ch、7.1chサラウンド(Surround)等によるものがある。このような技術によれば、視聴者は会場に身を置いているような臨場感を味わいながら音声を聴くことが可能である。その他にも、音声を出力する技術には様々なものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−208318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような技術によれば、映像に音像を定位させることができないという問題があった。実際に会場にいない視聴者は、映像を見ながら映像から出力された音声を聴くことによって、会場の様子をよりリアルに感じることができる。そのときに出力される音声が映像にマッチしたものである場合には、視聴者は会場の様子をよりリアルに感じることができる。これらを満たすためには、映像に音像を定位させることが重要である。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、視聴者が撮影された映像を見るとともに集音された音声を聴くことによって撮影および集音がなされた場所の様子をリアルに感じることが可能な、新規かつ改良された技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、所定の方向に対して所定の倍率で撮影することによって映像を取得し、取得した映像を電気信号に変換し、変換後の電気信号を映像信号として取得する映像入力装置と、映像入力装置が設置された地点からの水平距離および高さが異なる複数の地点のそれぞれに設置され、周囲の振動を検知し、検知した振動を電気信号に変換し、変換後の電気信号を音声信号として取得する複数の音声入力装置と、を有する、映像音声入力システムと、表示面を有し、映像入力装置によって取得された映像信号に基づいて表示面に映像を出力する映像出力装置と、複数の音声入力装置のそれぞれに対応する複数の音声出力装置と、を有し、複数の音声出力装置は、対応する複数の音声入力装置のそれぞれが設置されている各地点から表示面に対して垂線を引いた場合における垂線の足のそれぞれを、実物大に対する映像の縮小率または拡大率に従って映像の中心を基準として縮小または拡大させた場合に決定される各位置に設置され、対応する音声入力装置によって取得された音声信号に基づいて音声を出力する、映像音声出力システムと、を備える、映像音声入出力システムが提供される。
【0008】
複数の音声出力装置は、映像の中心に向かって音声を出力することが可能な向きに設置されていることとしてもよい。
【0009】
映像音声出力システムは、複数の音声入力装置が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた時間だけ音声が出力される時刻を遅延させて、対応する複数の音声出力装置に音声を出力させる出力制御装置をさらに有することとしてもよい。
【0010】
映像音声出力システムは、複数の音声入力装置が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた音量だけ音声の音量を小さくして、対応する複数の音声出力装置に音声を出力させる出力制御装置、をさらに有することとしてもよい。
【0011】
所定の地点は、映像の中心に映っている地点であるとしてもよい。
【0012】
映像音声入力システムは、映像入力装置によって取得された映像信号と複数の音声入力装置によって取得された各音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した音声映像信号を記録媒体に記録する入力制御装置をさらに有し、映像音声出力システムは、記録媒体に記録された音声映像信号を読み出し、読み出した音声映像信号から各音声信号と映像信号とを抽出し、抽出した各音声信号を取得先の各音声入力装置に対応する各音声出力装置に出力するとともに抽出した映像信号を映像出力装置に出力する出力制御装置をさらに有し、映像出力装置は、出力制御装置によって出力された映像信号に基づいて表示面に映像を出力し、複数の音声出力装置は、出力制御装置によって出力された音声信号に基づいて音声を出力することとしてもよい。
【0013】
映像音声入力システムは、映像入力装置によって取得された映像信号と複数の音声入力装置によって取得された各音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した音声映像信号を映像音声出力システムに送信する入力制御装置をさらに有し、映像音声出力システムは、映像音声入力システムから送信された音声映像信号を受信し、受信した音声映像信号から各音声信号と映像信号とを抽出し、抽出した各音声信号を取得先の各音声入力装置に対応する各音声出力装置に出力するとともに抽出した映像信号を映像出力装置に出力する出力制御装置をさらに有し、映像出力装置は、出力制御装置によって出力された映像信号に基づいて表示面に映像を出力し、複数の音声出力装置は、出力制御装置によって出力された音声信号に基づいて音声を出力することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、視聴者が撮影された映像を見るとともに集音された音声を聴くことによって撮影および集音がなされた場所の様子をリアルに感じることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係る映像音声入出力システムの構成図である。
【図2】音声入力装置が設置される様子の一例を示す図である。
【図3】音声出力装置が設置される様子の一例を示す図である。
【図4】出力音声の音量および遅延時間の算出を説明するための図である。
【図5】基準点からの距離と距離減衰の大きさ(音量の低下量)との対応関係を示す図である。
【図6】基準点からの距離とディレイ補正量(遅延時間)との対応関係を示す図である。
【図7】センターマイクが設置されている仮想的な位置と現実的な位置との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、説明は以下の順序で行う。
【0017】
1. 第1実施形態
1−1. 映像音声入出力システムの構成
1−2. 映像音声入力システムの構成
1−3. 映像音声出力システムの構成
1−4.出力音声の音量および遅延時間の算出
2. 第1実施形態の変形例
3. まとめ
【0018】
<1.第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
[1−1.映像音声入出力システムの構成]
図1は、本実施形態に係る映像音声入出力システムの構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る映像音声入出力システム1は、映像音声入力システム100と、映像音声出力システム200とを備えるものである。映像音声入力システム100は、例えば、多くの観客が集まるコンサート会場やスポーツイベントが行われる会場等に設置されるシステムである。しかし、映像音声入力システム100が設置される場所については、これらの会場に限定されるものではなく、視聴者によって視聴される映像や音声が取得できる場所であればどこであってもよい。
【0020】
映像音声出力システム200は、映像音声入力システム100によって取得された映像や音声を視聴者が視聴するために使用されるシステムである。例えば、会場に行くことができない視聴者や会場に入れない視聴者が会場から離れた場所に集まり、集まった視聴者が一緒に会場の様子を視聴する場合等が想定される。したがって、映像音声出力システム200は、映像音声入力システム100が設置される会場とは離れた場所に設置されることが想定される。例えば、視聴者の数が千人以上といった規模である場合には、映像音声出力システム200は、広い場所に設置されることが想定される。しかし、視聴者の数が数人といった規模である場合には、映像音声出力システム200は、視聴者個人の家等の狭い場所に設置されることも想定される。
【0021】
[1−2.映像音声入力システムの構成]
映像音声入力システム100は、少なくとも、映像入力装置110と、複数の音声入力装置120とを有するものである。以下、図1および図2を参照しながら、映像音声入力システム100を構成する各装置について説明する。
【0022】
図2は、音声入力装置が設置される様子の一例を示す図である。図2に示すように、音声入力装置120は、例えば、サッカー競技場内の至る場所に、低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM9〜17、高層マイクHM18,19として設置される。図2に示す例では、ピッチレベル(低層)に低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8が設置され、スタンドレベル(中層)に中層マイクMM9〜17が設置され、上空レベル(高層)に高層マイクHM18,19が設置されている。つまり、ピッチレベル(低層)では8chのサラウンド、スタンドレベル(中層)では9chのサラウンド、上空レベル(高層)では2chのステレオの合計19chを使用した集音を実現する。
【0023】
ピッチレベル(低層)とスタンドレベル(中層)と上空レベル(高層)とは、それぞれ高さが異なるものである。このように、ピッチレベル(低層)、スタンドレベル(中層)、上空レベル(高層)という3つの層において集音した音声を再生することによって、サッカー競技場における競技の様子をよりリアルに再現することができる。図2に示す例では、層の数は3であるとするが、層の数はこれに限定されるものではなく、複数であればいくつであってもよい。また、各層にはマイクが1つ以上設定されることとすればよい。なお、競技を妨害することを防ぐために、センターマイクCM8は、例えば、パラボラアンテナ等によって構成され、このパラボラアンテナが遠方から吊るされることによって実現される。
【0024】
図1に戻って説明を続ける。映像入力装置110は、所定の方向に対して所定の倍率で撮影することによって映像を取得し、取得した映像を電気信号に変換し、変換後の電気信号を映像信号として取得するものである。所定の方向は特に限定されるものではなく、映像入力装置110によって撮影された映像を見る視聴者が要望するような方向に自由に決めることが可能である。また、所定の倍率は特に限定されるものではなく、映像入力装置110によって撮影された映像を見る視聴者が要望するような倍率に自由に決めることが可能である。しかし、映像入力装置110は、所定の方向に対して所定の倍率で撮影することとするので、所定のエリアを固定的に撮影した映像が取得される。映像入力装置110が設置される位置は特に限定されるものではなく、映像入力装置110によって撮影された映像を見る視聴者が要望するような位置に自由に決めることが可能であり、例えば、特別席の前に設置することが可能である。映像入力装置110は、例えば、カメラ等によって構成されるものである。
【0025】
複数の音声入力装置120は、映像入力装置110が設置された地点からの水平距離および高さが異なる複数の地点のそれぞれに設置され、周囲の振動を検知し、検知した振動を電気信号に変換し、変換後の電気信号を音声信号として取得するものである。周囲の振動とは、例えば、音声入力装置120に接している媒質(例えば、空気)の振動である。音声入力装置120は、例えば、マイク等によって構成されるものである。図2に示した例では、低層マイクLM1〜LM7およびセンターマイクCM8と中層マイクMM9〜17と高層マイクHM18,19とはそれぞれ異なる高さに設置されている。また、図2に示した例では、映像入力装置110が設置される位置(例えば、特別席の前)からの水平距離が異なる複数の地点にマイク(低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM9〜17、高層マイクHM18,19)が設置されている。
【0026】
[1−3.映像音声出力システムの構成]
映像音声出力システム200は、少なくとも、映像出力装置210と、複数の音声出力装置220とを有するものである。以下、図1および図3を参照しながら、映像音声出力システム200を構成する各装置について説明する。
【0027】
図3は、音声出力装置が設置される様子の一例を示す図である。図3に示すように、音声出力装置220は、例えば、映像出力装置210が有する表示面211内または表示面211の延長上に、スピーカーS1〜S19として設置される。図3に示す例では、スピーカーS8が表示面211内に設置され、他のスピーカーS1〜S7、S9〜S19が表示面211の延長上に設置されている。スピーカーS8は、表示面211に表示されている映像に出現するセンターマイクCM8の位置に合わせて設置される。同様に、スピーカーS1〜S7、S9〜S19は、撮影エリアが無限に拡がったと仮定した場合に表示面211に表示される映像に出現する各マイク(低層マイクLM1〜LM7、中層マイクMM9〜17、高層マイクHM18,19)の位置に合わせて設置される。図3に示した例では、表示面(スクリーン)220の大きさは、横が100m、縦が20mであるが、この大きさに限定されるものではない。また、図3に示した例では、音声出力装置220(スピーカーS1〜S19)は、表示面211に表示されている映像の中心に向かって音声を出力することが可能な向きに設置されている。
【0028】
図1に戻って説明を続ける。映像出力装置210は、表示面211を有し、映像入力装置110によって取得された映像信号に基づいて表示面211に映像を出力するものである。映像出力装置210は、例えば、大型スクリーンやテレビ等の表示装置等によって構成されるが、映像出力装置210の種類は特に限定されるものではない。
【0029】
複数の音声出力装置220は、複数の音声入力装置120のそれぞれに対応するものである。複数の音声出力装置220は、対応する複数の音声入力装置120のそれぞれが設置されている各地点から表示面211に対して垂線を引いた場合における垂線の足のそれぞれを、実物大に対する映像の縮小率または拡大率に従って映像の中心を基準として縮小または拡大させた場合に決定される各位置に設置される。ただし、この垂線の起点となる複数の音声入力装置120のそれぞれが設置されている各地点とは、表示面211を取り巻いて仮想的に複数の音声入力装置120が設置されているとした場合の各地点を指すものである。すなわち、実際に設置されている複数の音声入力装置120と映像入力装置110との間において各装置の位置関係や向きを維持したまま、映像入力装置110を表示面211の中点に移動させると仮定するとともに適切に回転したと仮定した場合に決定される複数の音声入力装置120の移動後および回転後の各位置を各地点とする。適切な回転とは、例えば、視聴者が表示面211に表示される映像を表示面211に対して垂直な方向に見た場合における視聴者の視線の方向と上記した所定の方向とを一致させるような回転である。音声出力装置220は、対応する音声入力装置120によって取得された音声信号に基づいて音声を出力する。複数の音声出力装置220は、例えば、スピーカー等によって構成される。
【0030】
また、複数の音声出力装置220は、表示面211に表示されている映像の中心に向かって音声を出力することが可能な向きに設置されることとしてもよい。このような構成によれば、映像と音声との原点を合わせることが可能となる。
【0031】
映像音声出力システム200は、出力制御装置230を有することとしてもよい。出力制御装置230は、複数の音声入力装置120が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた時間だけ音声が出力される時刻を遅延させて、対応する複数の音声出力装置220に音声を出力させるものである。これは、複数の音声入力装置120が設置されている位置から所定の地点までの距離が大きいほど、所定の地点には音声入力装置120から発せられる音声が遅れて到着することによる。複数の音声出力装置220は、表示面211内または表示面211の延長上に設置されるために、音声出力装置220から視聴者までの距離は複数の音声出力装置220間においてほとんど差が生じない。そのため、出力制御装置230が音声の出力される時刻を調整することとすればよい。どの程度の遅延を生じさせるかについては後述する。所定の地点は、特に限定されるものではないが、例えば、表示面211に表示されている映像の中心に映っている地点であるとすることができる。このようにすれば、映像と音声との原点を合わせることが可能となる。
【0032】
また、出力制御装置230は、複数の音声入力装置120が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた音量だけ音声の音量を小さくして、対応する複数の音声出力装置220に音声を出力させることとしてもよい。これは、複数の音声入力装置120が設置されている位置から所定の地点までの距離が大きいほど、所定の地点には音声入力装置120から発せられる音声が小さい音量となって到着することによる。複数の音声出力装置220は、表示面211内または表示面211の延長上に設置されるために、音声出力装置220から視聴者までの距離は複数の音声出力装置220間においてほとんど差が生じない。そのため、出力制御装置230が出力される音声の音量を調整することとすればよい。どの程度の音量を小さくするかについては後述する。所定の地点は、特に限定されるものではないが、例えば、表示面211に表示されている映像の中心に映っている地点であるとすることができる。このようにすれば、映像と音声との原点を合わせることが可能となる。
【0033】
映像音声入力システム100は、入力制御装置130を有することとしてもよい。入力制御装置130は、映像入力装置110によって取得された映像信号と複数の音声入力装置120によって取得された各音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した音声映像信号を記録媒体に記録するものである。入力制御装置130は、映像信号が取得された時刻と各音声信号が取得された時刻とを対応付けて映像信号と各音声信号とを結合する。
【0034】
映像音声入力システム100が入力制御装置130を有する場合には、出力制御装置230は、記録媒体に記録された音声映像信号を読み出し、読み出した音声映像信号から各音声信号と映像信号とを抽出することとしてもよい。また、この場合には、出力制御装置230は、抽出した各音声信号を取得先の各音声入力装置120に対応する各音声出力装置220に出力するとともに抽出した映像信号を映像出力装置210に出力することとしてもよい。さらに、この場合には、映像出力装置210は、出力制御装置230によって出力された映像信号に基づいて表示面211に映像を出力し、複数の音声出力装置220は、出力制御装置230によって出力された音声信号に基づいて音声を出力することとしてもよい。
【0035】
映像音声入力システム100は、上記したような入力制御装置130の機能と異なる機能を有する入力制御装置130を有することとしてもよい。すなわち、入力制御装置130は、映像入力装置110によって取得された映像信号と複数の音声入力装置120によって取得された各音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した音声映像信号を映像音声出力システム200に送信することとしてもよい。入力制御装置130は、映像信号が取得された時刻と各音声信号が取得された時刻とを対応付けて映像信号と各音声信号とを結合する。例えば、入力制御装置130と出力制御装置230とが通信可能に構成されることによって、映像音声入力システム100と映像音声出力システム200との間で情報の送受信を行うことを可能にすることができる。
【0036】
映像音声入力システム100がこのような入力制御装置130を有する場合には、入力制御装置130は、映像音声入力システム100から送信された音声映像信号を受信し、受信した音声映像信号から各音声信号と映像信号とを抽出することとしてもよい。また、この場合には、出力制御装置230は、抽出した各音声信号を取得先の各音声入力装置120に対応する各音声出力装置220に出力するとともに抽出した映像信号を映像出力装置210に出力することとしてもよい。さらに、この場合には、映像出力装置210は、出力制御装置230によって出力された映像信号に基づいて表示面211に映像を出力し、複数の音声出力装置220は、出力制御装置230によって出力された音声信号に基づいて音声を出力することとしてもよい。
【0037】
[1−4.出力音声の音量および遅延時間の算出]
図4は、出力音声の音量および遅延時間の算出を説明するための図である。図5は、基準点からの距離と距離減衰の大きさ(音量の低下量)との対応関係を示す図である。図6は、基準点からの距離とディレイ補正量(遅延時間)との対応関係を示す図である。図7は、センターマイクが設置されている仮想的な位置と現実的な位置との関係を示す図である。
【0038】
以下、図4〜図7を参照しながら、音声出力装置220によって出力される音声の音量および遅延時間の算出技術について説明する。なお、図4においては、便宜上、低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM8〜MM12、スピーカーSP13〜SP19の位置をそれぞれ「01」〜「19」で示すものとする。
【0039】
また、ここでは、映像出力装置210の表示面211の幅(スクリーン幅)が20m以下で、SPV(映像出力装置210の表示面211(スクリーン))を見る観客(視聴者)が20m四方以内に収まるような小規模SPVの場合を想定した算出例について説明する。しかしながら、映像出力装置210の表示面211の規模や、視聴者の規模はこれらに限定されるものではない。
【0040】
映像出力装置210の表示面211として小規模SPVを使用する場合には、各スピーカーS1〜S19から観客までの距離が収録側の各マイク(低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM9〜17、高層マイクHM18,19)間の距離と比べて小さいので、SPVが設置された会場の各スピーカーが存在する位置の違いによる影響は無視して計算することにする。なお、リアルサイズに近い大規模SPVを使用する場合には、下記計算に加えて、観客から実際のスピーカーが存在する位置までの距離に相当する分を差し引いて出力音声の音量および遅延時間を算出すればよい。
【0041】
まず、2つの基準点と1つの基準長が必要となるため、全ての基準となるreference pointsを決める。基準点の1つは低層マイクLM5と低層マイクLM6とを結ぶ線の中点から低層スタンド前縁まで引いた垂線の中点とし、ここをSPVの観客席前方の音の調整基準とする。この点を基準点Aとする。しかしながら、この基準点Aの位置は特に限定されるものではない。
【0042】
もう1つの基準点は、表示面211(スクリーン)中央からスタンド上方の中層マイクMM17まで引いた垂線の中点とし、ここをSPVの観客席後方の音の調整基準とする。これを基準点Bとする。しかしながら、この基準点Bの位置は特に限定されるものではない。中層マイクMM13,MM14は、SPVの観客席のやや前方(表示面211(スクリーン)側)に位置していることになるが、選手達がプレイするピッチが前面スクリーン(表示面211(スクリーン)側)にあるので観客席後方の音のグループに入れることにする。
【0043】
この基準点Bが実際の試聴ポイントの中央に相当する。なおここで規定するスピーカーS13〜S19の位置は、スタジアム規模のリアルサイズSPVに設置する場合の便宜上の位置であり、小規模SPVを使用した場合に設置されるスピーカーS13〜S19の位置を示すものではない。
【0044】
次に、距離減衰の基準となる基準長を算出する。基準長は基準点Aから低層マイクLM6(または低層マイクLM5)までの距離とする。低層マイクLM5と低層マイクLM6とを結ぶ線から低層スタンド前縁までの距離が28m、センターラインから低層マイクLM6までの距離が30mであるときには、以下の計算式(1)によって基準長を算出することが可能である。
【0045】
√(14m×14m+30m×30m)=33m …(1)
【0046】
しかしながら、基準長の算出方法については、このような方法に限定されない。また、基準長を実際に測定することによって求めることとしてもよい。
【0047】
次に、基準点Aから低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM8〜MM12、基準点BからスピーカーSP13〜SP19までの距離を計算または実測して距離減衰(低下音量)とディレイ補正値(遅延時間)を計算する。ここで、基準点Aから低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM8〜MM12までの距離は水平距離で構わないが、基準点BからSP13〜SP19までの距離は高さも含めて3次元的に計算して距離を求める。
【0048】
このようにすることで、基準点Aを元に算出したピッチ前方の音声が、基準点Bを中心とした位置に移動してスクリーン(表示面211)後方に定位し、スクリーン(表示面211)に映し出された俯瞰映像と聴感的に一致した音場を形成することができる。それぞれの距離をXとすると距離減衰(低下音量)は次の計算式(2)によって導出される。
【0049】
20×log(33m/Xm)dB …(2)
【0050】
例えば、基準点Aから低層マイクLM1までの距離は92mなので、上記計算式(2)により距離減衰(低下音量)は−8.9dBと算出される。同様に、ディレイ補正値も次の計算式(3)によって導出される。
【0051】
Xm/340m/s×1000ms/s …(3)
(ただし、音速を340m/sとして計算)
【0052】
例えば、基準点Aから低層マイクLM1までの距離は92mなので、上記計算式(3)により距離減衰は271msと算出される。まず、この計算式(3)でセンターマイクCM8による収録音を除く全てのチャンネルの素の補正値を算出する。なお、センターマイクCM8を使用しないSPVの場合は、ここで算出した補正値がそのままディレイ補正値となる。
【0053】
センターマイクCM8はパラボラマイクでセンターサークル前縁付近を中心とした音を拾っているため、収録時に大きな空間ディレイを含んでおり、この遅れを逆補正しなければならない。
【0054】
センターマイクCM8の仮想位置(virtual08)は、基準点Aから41mの位置にある。しかし、実際のセンターマイクCM8の位置は仮想位置から73m離れているので、その差分の32mに相当する負のディレイ分を、センターマイクCM8を除く全てのチャンネルに加算することで補正を行う。
【0055】
例えば、基準点Aから低層マイクLM1〜LM7までの距離は92mであるが、上記逆補正分を加え124mとして計算するので、先に示した計算式(3)により距離減衰は365msとなる。
【0056】
なお、大規模SPVの場合は、例えば、後方のスピーカーは実際の音源の位置に近づくので距離減衰もディレイ補正もほとんど不要になり、基準点Aから低層マイクLM1〜LM7、センターマイクCM8、中層マイクMM8〜MM12に関して、上記で計算した距離から実際のスピーカー設置位置までの距離分を差し引いて計算すればよい。
【0057】
<2.第1実施形態の変形例>
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0058】
<3.まとめ>
本実施形態によれば、視聴者が撮影された映像を見るとともに集音された音声を聴くことによって撮影および集音がなされた場所の様子をリアルに感じることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 映像音声入出力システム
100 映像音声入力システム
110 映像入力装置
120 音声入力装置
130 入力制御装置
200 映像音声出力システム
210 映像出力装置
211 表示面
220 音声出力装置
230 出力制御装置
LM1〜LM7 低層マイク
CM8 センターマイク
MM9〜MM17 中層マイク
HM18,HM19 高層マイク
S1〜S19 スピーカー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の方向に対して所定の倍率で撮影することによって映像を取得し、取得した前記映像を電気信号に変換し、変換後の前記電気信号を映像信号として取得する映像入力装置と、
前記映像入力装置が設置された地点からの水平距離および高さが異なる複数の地点のそれぞれに設置され、周囲の振動を検知し、検知した前記振動を電気信号に変換し、変換後の前記電気信号を音声信号として取得する複数の音声入力装置と、
を有する、映像音声入力システムと、
表示面を有し、前記映像入力装置によって取得された前記映像信号に基づいて前記表示面に映像を出力する映像出力装置と、
前記複数の音声入力装置のそれぞれに対応する複数の音声出力装置と、
を有し、
前記複数の音声出力装置は、
対応する前記複数の音声入力装置のそれぞれが設置されている各地点から前記表示面に対して垂線を引いた場合における前記垂線の足のそれぞれを、実物大に対する前記映像の縮小率または拡大率に従って前記映像の中心を基準として縮小または拡大させた場合に決定される各位置に設置され、対応する前記音声入力装置によって取得された前記音声信号に基づいて音声を出力する、映像音声出力システムと、
を備える、映像音声入出力システム。
【請求項2】
前記複数の音声出力装置は、
前記映像の中心に向かって前記音声を出力することが可能な向きに設置されている、
請求項1に記載の映像音声入出力システム。
【請求項3】
映像音声出力システムは、
前記複数の音声入力装置が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた時間だけ前記音声が出力される時刻を遅延させて、対応する前記複数の音声出力装置に前記音声を出力させる出力制御装置、
をさらに有する、請求項1に記載の映像音声入出力システム。
【請求項4】
映像音声出力システムは、
前記複数の音声入力装置が設置されている位置から所定の地点までの距離に応じた音量だけ前記音声の音量を小さくして、対応する前記複数の音声出力装置に前記音声を出力させる出力制御装置、
をさらに有する、請求項1に記載の映像音声入出力システム。
【請求項5】
前記所定の地点は、
前記映像の中心に映っている地点である、
請求項3または請求項4に記載の映像音声入出力システム。
【請求項6】
前記映像音声入力システムは、
前記映像入力装置によって取得された前記映像信号と前記複数の音声入力装置によって取得された各前記音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した前記音声映像信号を記録媒体に記録する入力制御装置をさらに有し、
前記映像音声出力システムは、
前記記録媒体に記録された前記音声映像信号を読み出し、読み出した前記音声映像信号から前記各音声信号と前記映像信号とを抽出し、抽出した前記各音声信号を取得先の各前記音声入力装置に対応する各前記音声出力装置に出力するとともに抽出した前記映像信号を前記映像出力装置に出力する出力制御装置をさらに有し、
前記映像出力装置は、
前記出力制御装置によって出力された前記映像信号に基づいて前記表示面に前記映像を出力し、
前記複数の音声出力装置は、
前記出力制御装置によって出力された前記音声信号に基づいて前記音声を出力する、
請求項1に記載の映像音声入出力システム。
【請求項7】
前記映像音声入力システムは、
前記映像入力装置によって取得された前記映像信号と前記複数の音声入力装置によって取得された各前記音声信号とを結合することによって音声映像信号を生成し、生成した前記音声映像信号を前記映像音声出力システムに送信する入力制御装置をさらに有し、
前記映像音声出力システムは、
前記映像音声入力システムから送信された前記音声映像信号を受信し、受信した前記音声映像信号から前記各音声信号と前記映像信号とを抽出し、抽出した前記各音声信号を取得先の各前記音声入力装置に対応する各前記音声出力装置に出力するとともに抽出した前記映像信号を前記映像出力装置に出力する出力制御装置をさらに有し、
前記映像出力装置は、
前記出力制御装置によって出力された前記映像信号に基づいて前記表示面に前記映像を出力し、
前記複数の音声出力装置は、
前記出力制御装置によって出力された前記音声信号に基づいて前記音声を出力する、
請求項1に記載の映像音声入出力システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−252102(P2010−252102A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100133(P2009−100133)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】