説明

時刻表示同期装置

【課題】時刻を表示するための処理時間の差により複数の装置で時刻表示を一致させることができない。
【解決手段】2つの装置200は、時刻装置から分配される時刻情報をユーザーインタフェースで表示する時刻表示部を有する。時刻受信回路は時刻情報を同期して受信し、時刻表示変換回路は受信した時刻情報を表示情報に変換する。補正値記憶回路は装置で表示タイミングが一致するように表示情報を補正するための補正値を記憶し、表示補正回路は表示情報の時刻表示部への送出タイミングを補正値に従い補正する。表示時間差抽出回路は各時刻表示部における表示時間差を抽出し、補正値調整回路は抽出された時間差により装置それぞれの補正値を算出し表示補正回路へ通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の装置が時刻装置の時刻と同期して時刻を表示する時刻表示同期装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の時刻表示同期装置の一例として、複数のステーションをもつプロセス監視制御装置において、各ステーションは、他のステーションから時刻同期データを受けると、この時刻同期データに、時刻同期データの伝送路による伝送遅れ時間やCPUがタイマーにセットする時間を加算した補正値を加えて補正した時刻を表示する技術が知られている。この通信制御システムは、複数のステーション間の距離や、各ステーション内のCPU負荷により時刻の表示に時間がかかる場合であっても時刻を同期できるようにしたものである。
【0003】
しかしながら、この技術では、ステーション間の距離や各ステーション内のCPU負荷により時刻同期データに補正を加えているため、ステーション間で補正による誤差が伝搬し時刻装置における正しい時刻に対する時刻ずれが入り込む可能性が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−161915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、時刻を表示するための処理時間の差により複数の装置で時刻表示を一致させることができない点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の装置で時刻表示を一致させるために、各装置で一致した表示タイミングとなるように、表示情報の送出タイミングを補正することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の時刻表示同期装置は、時刻装置の時刻情報に同期して動作している複数の装置の時刻表示部から時刻ずれを検出し、表示タイミングのみを補正する構成としたため、時刻装置に同期した時刻に影響することなく、時刻表示処理に要する処理時間の差から生じる時刻ずれ補正し、複数の装置の時刻表示を同期させることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の時刻表示同期装置の適用例を示すブロック図である。
【図3】時刻ずれの抽出方法を示す図である。
【図4】プローブから出力される電気信号の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施例を示すブロック図である。この時刻表示同期装置は、例えば、衛星電波を受信する地上局の設備であって、時刻装置100から分配される基準時刻情報1のユーザーインタフェース(例えば、ディスプレイや時刻表示盤)への表示タイミングを2つのデータ処理装置200(1)と200(2)で補正することによって時刻表示を一致させるようにしたものである。ここでは、説明を単純化するために、2つの装置構成としているが、任意の複数構成としてもよい以下では、データ処理装置200を装置200と記す。
【0011】
時刻装置100は、装置200(1)と200(2)へ正確な基準時刻情報1を分配しており、本実施例では一般的なIRIG(Inter-Range Instrumentation Group)タイムコードフォーマットの信号を想定する。装置200(1)と200(2)は、局内やシステム内で時刻装置100に同期する装置であって、装置内部を流れる信号、他装置(例えば図2に示すデータ復調装置1002)からの受信データに時刻情報をタイミング信号に合わせて付加する。
【0012】
図2は、本発明の時刻表示同期装置の適用例であって衛星電波受信設備を示している。アンテナ設備1000は衛星からの電波を受信し、電波受信装置1001は受信された電波を電気信号に変換し、データ復調装置1002は電気信号をデジタルデータに変換する。データ復調装置1002は上記の他装置に相当し、変換されたデジタルデータを装置200の時刻処理回路212等へ出力する。時刻処理回路212等は、このデジタルデータをユーザーデータに変換し、時刻受信回路211からの時刻情報を付加して、ユーザーインターフェース1003へ出力する。
【0013】
装置200(1),200(2)は、時刻情報を付加した装置内部を流れる信号を他の装置(不図示)へ流すと共に、時刻情報を例えばユーザーインタフェース(図2における1003)に表示したり、その表示は日本時刻または外国の現地時刻だったりというように、タイプの異なる装置であったり、また、同じタイプであっても装置構成部品等のばらつきに起因して時刻の表示にズレが生じ得る。この補正のために、時刻装置200(1)と時刻装置200(2)の間に補正値調整回路300および時刻差分抽出回路400が介在させている。
【0014】
装置200(1)は、時刻受信回路211、時刻処理回路212、時刻表示変換回路213、表示補正回路214、時刻表示部215および補正値記憶回路216から成る。装置200(2)と200(1)は、時刻表示に係る部分については同構成であるため、その内部構成の説明は装置200(1)について行なうものとする。
【0015】
時刻同期回路211は、時刻装置100から送信される基準時刻情報1を受信し、基準時刻情報1に含まれる時刻を数値化した時刻情報とタイミング信号を抽出して、抽出した時刻情報およびタイミング信号2,3を時刻処理回路212,時刻表示変換回路213へ出力する。
【0016】
時刻処理回路212は、装置内部に流れる信号、他装置(図2におけるデータ復調装置1002)からの受信データに時刻同期回路211が抽出した時刻情報をタイミング信号に合わせて付加する。タイミング信号は、ミリ秒、マイクロ秒の秒針にあたり、このようにタイミング信号に合わせることで精度の高い時刻情報の付加が可能である。タイミング信号は、ミリ秒、マイクロ秒の秒針にあたり、このようにタイミング信号に合わせることで精度の高い時刻情報の付加が可能である。
【0017】
時刻表示変換回路213は、時刻受信回路211が抽出した時刻情報を入力して時刻表示部215が表示できる時刻信号4(ユーザーインタフェースの表示情報)に変換する。しかし、装置200(1)と装置200(2)は上述のように異なることから、この処理時間は各々の装置により差が生じ、ディスプレイや時刻表示盤へ時刻が表示されるタイミングにズレが生じ得る。
【0018】
そこで、表示補正回路214は、補正値記憶回路の補正情報6に従い、時刻信号4の送出タイミングを早めたり遅らせたりして、装置200(1)と装置200(2)で表示タイミングが一致するようにする。時刻表示部215は補正時刻信号5に従って時刻をユーザーインタフェースで表示する。補正値記憶回路216は、補正値調整回300からの補正値7を受信して記憶し、補正値調整回300が取り外されても補正値7を失うことがない。
【0019】
時刻表示部215が表示する時刻は、時刻処理回路212で受信データ等に付加された時刻情報に対応し、これを補正したものである。補正値記憶回路216および表示補正回路214が、補正値調整回300および時刻差分抽出回路400による支援を受けて、この補正を行なう。
【0020】
時刻差分抽出回路400は、装置200(1)の時刻表示部215と装置200(2)の時刻表示部225に直接プローブを当て、時刻変化情報8と時刻変化情報18から装置200(1)と装置200(2)の時刻変化の差を時間として検出し、検出した時間差16を補正値調整回路300へ出力する。補正値調整回路300は、時刻差分抽出回路400からの時間差16を元に装置200(1)と装置200(2)のどちらをどの程度遅らせるべきか、または早めるべきか算出し、補正値7を補正値記憶回路216、補正値14を補正値記憶回路226へ出力する。
【0021】
図1においては、主に表示時刻の補正に係る部分を示し、図2においては、装置内部を流れる信号に時刻情報を付加することを説明するのに必要な装置200の部分(時刻受信回路211と時刻処理回路212)のみを示している。このように、装置200において、表示時刻を補正する機能と、装置内部を流れる信号に時刻情報を付加する機能とは別個に働く。
【0022】
次に、以上のように構成された本時刻表示同期装置の動作について説明する。先ず、時刻装置100は基準時刻情報1を装置200(1)と200(2)に分配する。装置200(1)においては、時刻受信回路211で基準時刻情報1を入力し、時刻情報とタイミング信号2を抽出し、時刻情報およびタイミング信号2を時刻処理回路212と時刻表示変換回路213へ分配する。時刻処理回路212は、装置200(1)の内部に流れる信号、例えば他装置からの受信データに時刻情報をタイミング信号に合わせて付加する。
【0023】
時刻表示変換回路213は、時刻情報3をディスプレイや時刻表示盤へ表示するための時刻信号4に変換する。表示補正回路214は、時刻信号4に対し補正記憶回路216の補正値6の指示に従い、時刻信号5の送出タイミングを早めたり遅らせることで、表示タイミングを補正する。時刻表示部8は、タイミングを補正された時刻信号5をディスプレイや、時刻表示盤へ表示する。
【0024】
装置200(2)の内部動作は装置200(1)と同様である。但し、装置200(1)と200(2)では、ディスプレイや時刻表示盤へ時刻が表示される時間が前述の事情から若干異なる惧れがある。そこで、装置200(1)と200(2)の各々の時刻表示部215,225へプローブを当て、変化情報8,15を表示時間差抽出回路400に取り込み、変化情報8,15の時間差を求め、補正値調整回路300へ時間差16を送出する。
【0025】
補正値調整回路300は、時間差16を元に一方を基準とし、どちらをどの程度遅らせるべきか、または早めるべきか算出し、装置200(1),200(2)の補正値記憶回路216,226へ補正値7,14を出力する。この補正処理を数分間繰り返すことで、装置200(1)と200(2)の表示タイミングが一致する。一致した時点で表示時間差抽出回路400および補正値調整回路300を取り外し、補正値記憶回路216,226に保持した補正値6,13で補正を継続することで表示タイミングの一致を保つことが可能である。
【0026】
図3は、ディスプレイや時刻表示盤の時刻の変化タイミングを抽出する方法を例示している。401はプローブで、カップのような形状で外部の光を遮り、時刻表示部215,225それぞれの時刻表示盤の数字の変化による明るさの変化を電流の変化として捕らえる素子、例えばフォトトランジスタにより電気信号に変換する装置である。図3において、時刻表部215,225からプローブ401,402で抽出した変化タイミングから、表示時間差抽出回路400が時間差を抽出し、補正値調整回路300がこの時間差を元にして補正値を算出して補正し、時刻表部215,225は同じ表示タイミングで「16:28:40」という時刻を表示している。
【0027】
図4は、プローブ401から出力される電気信号の波形を示す。時刻表示盤の数字が変化することにより明るさが変化するので、1秒間周期で照度が変化する。プローブは、この照度の変化点を表示の切替りと捉えることで、時刻の変化タイミングを検出することができる。
【0028】
なお、補正は、装置200の1つを基準として他方の装置を補正する方法や、近い装置同士を順々に補正する方法が有効である。また、ここでの表示補正は、表示タイミングの調整であり、装置自身が持つ時刻を変更する訳ではないので、装置200の内部的に処理されるデータには、時刻処理回路212,222で時刻装置100に同期した高精度の時刻が付加される。
【0029】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0030】
(付記1)時刻装置から分配される時刻情報を同期して受信した各装置において、前記受信した時刻情報をユーザーインタフェースの表示情報に変換するための処理時間を補正し、一致した表示タイミングで前記時刻情報による時刻を前記ユーザーインタフェースで表示することを特徴とする時刻表示同期装置。
(付記2)時刻装置から分配される時刻情報をユーザーインタフェースで表示する時刻表示部を有する複数の装置それぞれに、前記時刻情報を同期して受信する時刻受信回路と、 前記受信した時刻情報をユーザーインタフェースの表示情報に変換する時刻表示変換回路と、全装置で表示タイミングが一致するように前記表示情報を補正するための補正値を記憶する補正値記憶回路と、前記表示情報の前記時刻表示部への送出タイミングを前記補正値に従い補正する表示補正回路を備え;前記各時刻表示部における表示時間差を抽出する表示時間差抽出回路と、前記抽出された時間差により前記装置それぞれの前記補正値を算出し前記表示補正回路へ通知する補正値調整回路を設けたことを特徴とする時刻表示同期装置。
【0031】
(付記3)前記表示時間差の抽出は、前記各装置の時刻表示部でプローブにより検出した電気信号に基づいて行うことを特徴とする付記2に記載の時刻表示同期装置。
【0032】
(付記4)前記プローブは、カップ形状で外部の光を遮り、前記時刻表示部それぞれの時刻表示盤の数字の変化による明るさの変化を前記電気信号に変換することを特徴とする付記3に記載の時刻表示同期装置。
【産業上の利用可能性】
【0033】
精度の高い時刻装置を求められる局設備等で、特に複数の時刻表示盤を並べて配置するような場合の時刻表示同期装置として好適である。
【符号の説明】
【0034】
100 時刻装置
200(1) 装置
200(2) 装置
211,221 時刻受信回路
212,222 時刻処理回路
213,223 時刻表示変換回路
214,224 表示補正回路
215,225 時刻表示部
216,226 補正値記憶回路
300 補正値調整回路
400 表示時間差抽出回路
401 プローブ
402 プローブ
1000 アンテナ装置
1001 電波受信装置
1002 データ復調装置
1003 ユーザーインタフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻装置から分配される時刻情報を同期して受信した各装置において、前記受信した時刻情報をユーザーインタフェースの表示情報に変換するための処理時間を補正し、一致した表示タイミングで前記時刻情報による時刻を前記ユーザーインタフェースで表示することを特徴とする時刻表示同期装置。
【請求項2】
時刻装置から分配される時刻情報をユーザーインタフェースで表示する時刻表示部を有する複数の装置それぞれに、
前記時刻情報を同期して受信する時刻受信回路と、
前記受信した時刻情報をユーザーインタフェースの表示情報に変換する時刻表示変換回路と、
全装置で表示タイミングが一致するように前記表示情報を補正するための補正値を記憶する補正値記憶回路と、
前記表示情報の前記時刻表示部への送出タイミングを前記補正値に従い補正する表示補正回路を備え;
前記各時刻表示部における表示時間差を抽出する表示時間差抽出回路と、
前記抽出された時間差により前記装置それぞれの前記補正値を算出し前記表示補正回路へ通知する補正値調整回路を設けたことを特徴とする時刻表示同期装置。
【請求項3】
前記表示時間差の抽出は、前記各装置の時刻表示部でプローブにより検出した電気信号に基づいて行うことを特徴とする請求項2に記載の時刻表示同期装置。
【請求項4】
前記プローブは、カップ形状で外部の光を遮り、前記時刻表示部それぞれの時刻表示盤の数字の変化による明るさの変化を前記電気信号に変換することを特徴とする請求項3に記載の時刻表示同期装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−154814(P2012−154814A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14510(P2011−14510)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】