説明

時間振幅変換装置

【課題】複数の時間振幅変換回路を有する場合でも、素子ばらつきの影響を小さくすることのできる時間振幅変換装置を得る。
【解決手段】電圧電流変換素子3a,3bは、増幅器11a,11bの出力電圧に対応した電流を出力する。校正時は、時間振幅変換回路20a,20bに対して、スイッチ2a,2b及びスイッチ5a,5bを切り替えることで、各々基準電流源1を接続し、電圧電流変換素子3a,3bの出力電流値を基準電流源1の電流値に収束させた際の電圧値を容量素子4a,4bの値として記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ距離計などに利用される時間振幅変換装置に関し、特に複数の時間振幅変換回路を使用した時間振幅変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、パルスレーザレーダ等のレーダシステムでターゲットまでの距離計測を行う方法として、レーダからターゲットに向けてレーザパルスを照射すると共に、時間振幅変換回路で時間と共に振幅が増大するアナログ信号を発生させ、ターゲットによって反射、もしくは散乱されたパルスがレーダに帰還するまでの時間を振幅に変換し、その振幅を信号処理することで、ターゲットまでの距離を求める方式が知られている。
【0003】
図7に、例えば特許文献1に記載された従来の時間振幅変換回路の例を示す。電流源101とコンデンサ102、電流源101とコンデンサ102の間に直列に接続されたスイッチ103と、コンデンサ102に並列に接続されたスイッチ104と、出力端子105とから構成されている。スイッチ103がオンし、スイッチ104がオフすると電流源101からコンデンサ102に電荷が供給され、コンデンサ102の電極間電圧が増加する。電流源101を定電流源とすると、時間に対して一定の割合で電荷が供給されるため、出力端子105から時間に対して一定の割合で電圧が増加するランプ電圧が出力される。
【0004】
また、図7に示すような時間振幅変換回路を複数備えた時間振幅変換装置が用いられている。図8に、時間振幅変換回路を複数並べた時間振幅変換装置の一例を示す。
電流源101とダイオード接続されたトランジスタ106a及び時間振幅変換回路200−1,200−2,…がN回路並列に並んだ構成である。それぞれの時間振幅変換回路200−1,200−2,…には、トランジスタ106aとカレントミラーを形成するトランジスタ106bを備え,理想状態において充電電流はトランジスタ106aに流れる電流Iと等しく、また、コンデンサ102が全て等しい値Cとすると全ての時間振幅変換回路200−1,200−2,…の経過時間に対する出力電圧の増加率はすべてI/Cで表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−227483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、時間振幅変換回路を複数並べた時間振幅変換装置では、現実のトランジスタ106bにおいては、トランジスタ106bの特性ばらつきが充電電流Iの電流値ばらつきの原因となり、その結果、経過時間に対する出力電圧の増加率のばらつきが生じるという問題点があった。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、複数の時間振幅変換回路を有する場合でも、素子ばらつきの影響を小さくすることのできる時間振幅変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る時間振幅変換装置は、経過時間により出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路からなる時間振幅変換装置において、それぞれの時間振幅変換回路は、制御電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換素子と、電圧電流変換素子の出力電流を蓄えるコンデンサと、校正時に任意の電圧電流変換素子に基準電流源を接続し、任意の電圧電流変換素子の出力電流値を、基準電流源の基準電流値に収束させた際の電圧電流変換素子への制御電圧を保持する制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の時間振幅変換装置は、校正時に任意の電圧電流変換素子に基準電流源を接続し、任意の電圧電流変換素子の出力電流値を、基準電流源の基準電流値に収束させた際の電圧電流変換素子への制御電圧を保持するようにしたので、複数の時間振幅変換回路を有する場合でも、素子ばらつきの影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による時間振幅変換装置の主要な信号波形のタイミングチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による時間振幅変換装置の主要な信号波形のタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3による時間振幅変換装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3による時間振幅変換装置の主要な信号波形のタイミングチャートである。
【図7】従来の時間振幅変換回路を示す構成図である。
【図8】従来の時間振幅変換装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による時間振幅変換装置を示す構成図である。ここでは、図面を簡略化するため複数の時間振幅変換回路を二つだけとしている。
図示の時間振幅変換装置は、基準電流源1、時間振幅変換回路20a,20b、スイッチ2a,2b、制御信号入力端子12,13,14、デコーダ15を備えている。それぞれの時間振幅変換回路20a,20bは、電圧電流変換素子3a,3b、容量素子4a,4b、スイッチ5a,5b、スイッチ6a,6b、端子7a,7b、スイッチ8a,8b、コンデンサ9a,9b、端子10a,10b、増幅器11a,11bからなる。
【0012】
基準電流源1は、時間振幅変換回路20a,20bの各々に対して、基準となる電流Iを供給するための電流源である。スイッチ2a,2bはデコーダ15の出力でそのオン/オフが制御され、基準電流源1を時間振幅変換回路20a,20bに接続するためのスイッチである。電圧電流変換素子3a,3bは、増幅器11a,11bからの出力電圧に応じた電流を出力する変換素子である。容量素子4a,4bは、一端が増幅器11a,11bの入力側に、他端が接地された容量素子である。即ち、容量素子4a,4bの出力は増幅器11a,11bを経て、電圧電流変換素子3a,3bの制御端子に接続され、増幅器11a,11bの出力によって電圧電流変換素子3a,3bの出力電流を制御するよう構成されている。
【0013】
スイッチ5a,5bは、その一端側が容量素子4a,4bの一端に、他端側が電圧電流変換素子3a,3bの電流出力端子とスイッチ6a,6bの一端に接続され、デコーダ15の出力によってそのオン/オフが制御されるスイッチである。スイッチ6a,6bは、他端側がコンデンサ9a,9bの一端側及び端子7a,7bとスイッチ8a,8bの一端側に接続され、制御信号入力端子12からの制御信号によって、そのオン/オフが制御されるスイッチである。端子7a,7bは、ランプ電圧の出力端子である。スイッチ8a,8bはコンデンサ9a,9bと並列に接続され、制御信号入力端子13の制御信号によってそのオン/オフが制御されるスイッチである。コンデンサ9a,9bは、電圧電流変換素子3a,3bからの電荷が供給されるコンデンサであり、一端側はスイッチ6a,6bに接続され、他端側は接地されている。端子10a,10bは、電圧電流変換素子3a,3bの電流出力端子に接続され、時間振幅変換回路20a,20bを基準電流源1に接続するための端子である。
【0014】
制御信号入力端子14はデコーダ15に接続され、デコーダ15は制御信号入力端子14の信号に対し、任意の一つの時間振幅変換回路20a,20b内のスイッチ5a,5bと、これらスイッチ5a,5bと直列に接続されたスイッチ2a,2bとを共にオンするものとする。
【0015】
次に、実施の形態1における時間振幅変換装置の動作について説明する。図2に図1の各部から出力される主要な信号波形のタイミングチャートを示す。
本装置は、電源オンの後、スイッチ2a,2bを順次切り替え、全ての時間振幅変換回路20a,20bの端子10a,10bを基準電流源1と接続することで校正を行う。ここで、デコーダ15は、制御信号入力端子14から入力される信号が0のときに、全てのスイッチ5a,5b及びスイッチ2a,2bをオフとし、制御信号入力端子14から入力される信号が1の場合、スイッチ2a,5aをオンし、制御信号入力端子14から入力される信号が2の場合、スイッチ2b,5bをオンするという機能を有するものとする。
【0016】
基準電流源1の電流をIとする。また、電圧電流変換素子3a,3bは、それぞれ特性のばらつきがあり、電圧電流変換素子3aのトランスコンダクタンスをgma、電圧電流変換素子3bのトランスコンダクタンスをgmbとする。また、電圧電流変換素子3a,3bの内部抵抗は共にRとし、R>>Iとする。さらに、コンデンサ9a,9bのコンデンサ値は等しくCとする。
【0017】
先ず、制御信号入力端子14より1を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオンする。ここで、電圧電流変換素子3aに流れる電流をIx,内部抵抗より流れる電流をI0,増幅器11aの入力電圧をVxとすると、過渡応答が収束した後において、VDD−Vx=I0・R,Ix+I0=I,Ix=Vx・A・gmaが成り立つ。
上記式を、V,Iについて解くと、下記式のように表される。

【0018】
次に、制御信号入力端子14の信号から2を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオフし、増幅器11aの入力抵抗は非常に高いため,容量素子4aの電極間電圧Vxは保持される。また、スイッチ5bとスイッチ2bがオンする。ここで、電圧電流変換素子3bに流れる電流をIy、内部抵抗に流れる電流をI0、増幅器11aの入力電圧をVyとすると、過渡応答が収束した後において、同様に、VDD−Vy=I0・R,Iy+I0=I,Iy=Vy・A・gmbが成り立つ。
上記式をVy,Iyについて解くと、下記式のように表される。

【0019】
次に、制御信号入力端子14の信号から0を入力すると、スイッチ5bとスイッチ2bがオフし、同様に容量素子4bの電極間電圧Vyは保持される。ここで、時間振幅変換装置の校正は完了となり、測定を開始する。
【0020】
制御信号入力端子13より一定の時間HIGHの信号が入力され、スイッチ8a,8bがオンとなり、コンデンサ9a,9bそれぞれの電極間電圧は0となる。次に、制御信号入力端子12よりHIGHを入力する。制御信号入力端子12からの信号がHIGHを継続する時間において、コンデンサ9a,9bは、電圧電流変換素子3a,3bによって、それぞれ一定の電流で充電される。電圧電流変換素子3a,3bの制御端子には、それぞれ容量素子4a,4bの電極間電圧はそれぞれVx,Vyが印加されている.ここで、Agma>>0,R>>Iとすると、電圧電流変換素子3a,3bの出力電流値は,Ix=Iy=Iとなる。よって、全ての電圧電流変換素子3a,3bの経過時間に対する出力電圧の増加率は全てI/Cで表される。
【0021】
このように、本実施の形態では、校正時間を確保し、それぞれの時間振幅変換回路20a,20bの充電電流値を共通の基準電流源1で校正し、記憶することで、複数の時間振幅変換回路20a,20b内の充電電流値がばらついた場合でも、電流値ばらつきを完全に補正することが可能となり、素子ばらつきの影響を無くすことができる。
尚、本実施の形態では、時間振幅変換回路20a,20bが二つのものを示したが、三つ以上であってもよい。
【0022】
以上説明したように、実施の形態1の時間振幅変換装置によれば、経過時間により出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路からなる時間振幅変換装置において、それぞれの時間振幅変換回路は、制御電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換素子と、電圧電流変換素子の出力電流を蓄えるコンデンサと、校正時に任意の電圧電流変換素子に基準電流源を接続し、任意の電圧電流変換素子の出力電流値を、基準電流源の基準電流値に収束させた際の電圧電流変換素子への制御電圧を保持する制御手段とを備えたので、複数の時間振幅変換回路を有する場合でも、素子ばらつきの影響を小さくすることができる。
【0023】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2における時間振幅変換装置を示す構成図である。尚、実施の形態2においても、図面を簡略化するため時間振幅変換回路を二つだけとしている。
実施の形態2では、実施の形態1における電圧電流変換素子3a,3bをトランジスタ30a,30bに置き換えたものであり、トランジスタ30a,30bのゲート端子とソース端子間に容量素子4a,4bが接続されている。その他の構成部分は図1と同様であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0024】
次に、実施の形態2における時間振幅変換装置の動作について説明する。図4に図3の各部から出力される主要な信号波形のタイミングチャートを示す。
本装置は、電源オンの後、スイッチ2a,2bを順次切り替え、全ての時間振幅変換回路20a,20bの端子10a,10bを基準電流源1と接続することで校正を行う。ここで、デコーダ15は、制御信号入力端子14から入力される信号が0のときに、全てのスイッチ5a,5b及びスイッチ2a,2bをオフとし、制御信号入力端子14から入力される信号が1の場合、スイッチ2a及びスイッチ5aをオンし、制御信号入力端子14から入力される信号が2の場合、スイッチ2b及びスイッチ5bをオンするという機能を有するものとする。
【0025】
基準電流源1の電流をIとする。また、トランジスタ30a,30bは、それぞれ特性のばらつきがあり、トランジスタの閾値電圧はそれぞれトランジスタ30aがVt,トランジスタ30bがVt+ΔVtとする。またコンデンサ9a,9bのコンデンサ値は等しくCとする。
【0026】
先ず、制御信号入力端子14より1を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオンし、電流Iがトランジスタ30aに流れる。ここで、トランジスタ30aは、ドレイン端子とゲート端子が短絡しているためダイオードとなり、容量素子4aの電極間電圧は

となる。
【0027】
次に、制御信号入力端子14の信号から2を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオフし、ゲート端子の入力抵抗は非常に高いため、容量素子4aの電極間電圧は保持される。また、スイッチ5bとスイッチ2bがオンし、電流Iがトランジスタ30bに流れる。ここでトランジスタ30bは同様にダイオードとなり、容量素子4bの電極間電圧は

となる。
【0028】
次に、制御信号入力端子14の信号から0を入力すると、スイッチ5bとスイッチ2bがオフし、同様に容量素子4bの電極間電圧V4−bは保持される。ここで、時間振幅変換回路20a,20bの校正は完了となり、測定を開始する。
【0029】
制御入力端子13より一定の時間HIGHの信号が入力され、コンデンサ9a,9bそれぞれの電極間電圧は0となる。次に、制御信号入力端子12よりHIGHを入力する。制御信号入力端子12からの信号がHIGHを継続する時間において、コンデンサ9a,9bはトランジスタ30a,30bによって、それぞれ一定の電流で充電される。トランジスタ30a,30bのゲート端子には、それぞれ容量素子4a,4bの電極間電圧である以下の電圧が印加されている。

【0030】
よって、トランジスタ30a,30bの出力電流値は、以下の式で表される。

上式より、トランジスタ30a,30bは、基準電流源1の電流値Iとなり、時間振幅変換回路20a,20bそれぞれの充電傾きは、V/t=I/Cとなり、それぞれの時間振幅変換回路20a,20bの出力波形は完全に一致し、素子ばらつきの影響をなくすことが可能となる。
【0031】
本実施の形態のように,校正時間を確保し、それぞれの時間振幅変換回路20a,20bの充電電流値を共通の基準電流源1で校正し、トランジスタ30a,30bを一時的にダイオード接続し、電圧を記憶することで、複数の時間振幅変換回路20a,20bの経過時間に対する出力電圧の増加率がばらついた場合でも、ばらつきを完全に補正することが可能となり、素子ばらつきの影響を無くすことが可能となる。また、本実施の形態では、時間振幅変換回路20a,20bが二つのものを示したが、三つ以上であってもよい。
【0032】
以上説明したように、実施の形態2の時間振幅変換装置によれば、経過時間により出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路からなる時間振幅変換装置において、それぞれの時間振幅変換回路は、ゲート電圧に応じた電流を出力するトランジスタと、トランジスタの出力電流を蓄えるコンデンサと、校正時に任意のトランジスタに基準電流源を接続すると共に、任意のトランジスタをダイオード接続し、基準電流源の基準電流値に収束させた際のゲート電圧を保持する制御手段とを備えたので、複数の時間振幅変換回路を有する場合でも、素子ばらつきの影響を小さくすることができる。
【0033】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3における時間振幅変換装置を示す構成図である。尚、実施の形態3においても、図面を簡略化するため時間振幅変換回路を二つだけとしている。
実施の形態3では、実施の形態2における図3の容量素子4a,4bを、ADC(Analog To Digital Converter:A/Dコンバータ)40a,40b、レジスタ41a,41b、DAC(Digital To Analog Converter:D/Aコンバータ)42a,42b、スイッチ43a,43bに置き換えたものである。
【0034】
ADC40a,40bは、トランジスタ30a,30bのゲート端子に接続され、レジスタ41a,41bは、ADC40a,40bの出力に接続されている。レジスタ41a,41bの出力にはDAC42a,42bが接続され、DAC42a,42bの出力には、スイッチ43a,43bが接続されている。スイッチ43a,43bは、SPDTスイッチであり、その出力端子の一方はトランジスタ30a,30bのゲート端子に接続され、もう一方は接地されている。
【0035】
制御信号入力端子14はデコーダ15に接続され、デコーダ15は、制御信号入力端子14の信号に対応して、任意の一つの時間振幅変換回路20a,20bのスイッチ5a,5bと、このスイッチ5a,5bと直列に接続されたスイッチ2a,2bとをオンするものとする。また、デコーダ15の出力は、スイッチ43a,43bの制御も行い、スイッチ5a,5bがオンの場合、スイッチ5a,5bと同一の時間振幅変換回路20a,20b内のスイッチ43a,43bは、出力端子の1に接続され、スイッチ5a,5bがオフの場合、出力端子の2に接続されるという動作を行うものとする。
【0036】
また、レジスタ41aは、制御信号入力端子44aからの信号がLOWからHIGHに変化した時刻のADC40aの出力ビットを記憶する機能を有するものとし、レジスタ41bは、制御信号入力端子44bからの信号がLOWからHIGHに変化した時刻のADC40bの出力ビットを記憶する機能を有するものとする。また、ADC40a,40bのビット数をN、基準電圧をVrefとし、DAC42a,42bのビット数をN、基準電圧をVrefとする。その他の構成部分は図3と同一であるため、対応する部分に同一符号を付してその説明を省略する。
【0037】
次に、実施の形態3の時間振幅変換装置の動作について説明する。
回路動作に関して、実施の形態2で示したものとほぼ同様であるが、トランジスタ30a,30bのゲート電圧を決定する方法が異なる。図6に、図5の装置の各部から出力される主要な信号波形のタイミングチャートを示す。
【0038】
制御信号入力端子14より、信号1を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオンし、電流Iがトランジスタ30aに流れる。また、スイッチ43aは、端子1側に切り替わる。ここで、トランジスタ30aは、ドレイン端子とゲート端子が短絡しているためダイオードとなり、トランジスタ30aのゲート電圧は、

となる。
また、ADC40aの出力は、

を満たすディジタルビットXとなる。次に、制御信号入力端子44aより、LOWからHIGHに変化する信号が入力され、レジスタ41aは、ADC40aの出力であるディジタルビットXを記憶し、出力する。
【0039】
次に、制御信号入力端子14より2を入力すると、スイッチ5aとスイッチ2aがオフし、スイッチ43aが端子2側へ切り替わる。DAC42aは、ディジタルビットXが入力されているため、トランジスタ30aのゲート電圧は、

を満たす

となる。
【0040】
一方、スイッチ5bとスイッチ2bがオンし、スイッチ43bは端子1側に切り替わる。同様に電流Iがトランジスタ30bに流れるため、トランジスタ30bのゲート電圧は

となる。
また、ADC40bの出力は、

を満たすディジタルビットYとなる。次に、制御信号入力端子44bよりLOWからHIGHに変化する信号が入力され、レジスタ41bは、ADC40bの出力であるディジタルビットYを記憶し、出力する。
【0041】
次に、制御信号入力端子14より信号0を入力すると、スイッチ5bとスイッチ2bがオフし、スイッチ43bが端子2側へ切り替わる。DAC42bは、ディジタルビットYが入力されているため、トランジスタ30bのゲート電圧は、

を満たす

となる。
【0042】
ここで、NがVrefに対し十分大きいとすると、トランジスタ30a,30bのゲート電圧はそれぞれ以下のように表される。

上式より、トランジスタ30a,30bの出力電流値は、以下の式で表される。

【0043】
上式より、トランジスタ30a,30bは、基準電流源1の電流値Iとなるため、コンデンサ9a,9bのばらつきがないとすると、時間振幅変換回路20a,20bそれぞれの充電傾きは、V/t=I/Cとなり、それぞれの時間振幅変換回路20a,20bの出力波形は一致し、素子ばらつきの影響を無くすことが可能となる。
【0044】
本実施の形態のように、校正時間を確保し、それぞれの時間振幅変換回路20a,20bの充電電流値を共通の基準電流源1で校正することで、複数の時間振幅変換回路20a,20bの経過時間に対する出力電圧の増加率がばらついた場合でも、ばらつきを完全に補正することが可能となり、素子ばらつきの影響を無くすことが可能となる。また、本実施の形態では、時間振幅変換回路20a,20bが二つのものを示したが、三つ以上であってもよい。
【0045】
以上説明したように、実施の形態3の時間振幅変換装置によれば、制御手段として、トランジスタをダイオード接続した際のゲート電圧に対応したディジタル値を出力するA/Dコンバータと、A/Dコンバータの出力を保持するレジスタとを用いたので、実施の形態1,2と同様の効果を奏すると共に、容量素子を不要とすることができる。
【0046】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 基準電流源、2a,2b,5a,5b,6a,6b,8a,8b,43a,43b スイッチ、3a,3b 電圧電流変換素子、4a,4b 容量素子、7a,7b,10a,10b 端子、9a,9b コンデンサ、11a,11b 増幅器、12,13,14,44a,44b 制御信号入力端子、15 デコーダ、20a,20b 時間振幅変換回路、30a,30b トランジスタ、40a,40b ADC、41a,41b レジスタ、42a,42b DAC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経過時間により出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路からなる時間振幅変換装置において、
それぞれの時間振幅変換回路は、
制御電圧に応じた電流を出力する電圧電流変換素子と、
当該電圧電流変換素子の出力電流を蓄えるコンデンサと、
校正時に任意の電圧電流変換素子に基準電流源を接続し、当該任意の電圧電流変換素子の出力電流値を、前記基準電流源の基準電流値に収束させた際の当該電圧電流変換素子への制御電圧を保持する制御手段とを備えたことを特徴とする時間振幅変換装置。
【請求項2】
経過時間により出力電圧が変化する複数の時間振幅変換回路からなる時間振幅変換装置において、
それぞれの時間振幅変換回路は、
ゲート電圧に応じた電流を出力するトランジスタと、
当該トランジスタの出力電流を蓄えるコンデンサと、
校正時に任意のトランジスタに基準電流源を接続すると共に、当該任意のトランジスタをダイオード接続し、前記基準電流源の基準電流値に収束させた際のゲート電圧を保持する制御手段とを備えたことを特徴とする時間振幅変換装置。
【請求項3】
制御手段は、トランジスタをダイオード接続した際のゲート電圧に対応したディジタル値を出力するA/Dコンバータと、当該A/Dコンバータの出力を保持するレジスタとを用いたことを特徴とする請求項2記載の時間振幅変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251942(P2012−251942A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126526(P2011−126526)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】