説明

時間的パラメトリック・コントラスト画像を使った超音波病変識別

超音波診断撮像システムが、造影剤のボーラスが病変を含むかもしれない関心領域(ROI)に流入し該ROIから流出する際に、画像データのシーケンスを取得する。コントラスト強度の画像データを使って、ROI内の各点における時間‐強度曲線を計算する。造影剤がROIに灌流する上昇時間期間、ROIにおいて造影剤の極大量が維持される増強時間期間および造影剤がROIから流出する下降時間期間を定義する、時間‐強度曲線のいくつかのレベルが設定される。ROI内の点についての時間期間パラメータの一つまたは複数を使って、パラメトリック・コントラスト画像を形成する。パラメトリック・コントラスト画像はROI内の病変およびその縁を同定するために使われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療診断超音波システムに、特に肝臓腫瘍のような病変を同定し、特徴付けるための、コントラストを増強した撮像検査を実行する超音波システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波造影剤〔コントラスト剤〕は、造影剤が血流に与える増強から疾病状態を診断するために何年も前から使われている。血球は非常に小さく、超音波をよく反射せず、一般に超音波撮像のためにほとんど情報を与えない。しかしながら、血流中の微小気泡造影剤は超音波をよく反射し、血流特性の大幅に向上された画像を可能にする。造影剤の一つの用途は、心臓病によって引き起こされる虚血組織を識別することであった。虚血性であり、血流が欠乏している組織は、造影剤がよく灌流される周囲の正常な心筋組織より黒く見える。この場合、疾病状態の指標となるのは明るさまたは信号振幅である。
【0003】
造影剤はボーラス注射において加えられることができ、また比較的強い超音波によって破壊され、組織に再灌流することが許容されることもできるので、造影剤の到着および離脱の時間的特性も診断のために測定され、使用されることができる。一般的な方策は、米国特許第5,833,613号明細書(Averkiou et al.)に記載されるような造影剤の到着および出発の時間‐強度曲線である。時間‐強度曲線は、灌流される組織の画像における各点について計算されることができ、米国特許第6,692,438号(Skyba et al.)に記載されるような灌流のパラメトリック画像を形成するために、各画像点についての各曲線の一つまたは複数のパラメータがグレースケールの陰影またはカラー・コードで表示されることができる。これらのパラメータは、それぞれ組織灌流の異なる特性を示す、曲線のピークおよび傾きを含む。
【0004】
灌流曲線は、一般に、造影剤が組織の微小血管系に流入し該微小血管系から流出する際の造影剤からの信号戻りを測定することによって計算される。次いで、造影剤の量の上昇および下降のこれらの測定は、ガンマ変量曲線モデル
A*(x−t0)*exp(−β*(x−t0))+C
によって定義されるような曲線に当てはめされる。ここで、Aは曲線のピーク、t0は造影剤の増大開始時刻、βは曲線の上昇の傾き、xは造影剤の量の瞬間測定値である。これらの時間および強度表現は、訓練された臨床担当者に、組織が灌流される仕方の指標を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
病変が、癌性病変のような病理に血液の流れを与えるよう、独自の微小血管系を発達されることが知られている。その結果、時間‐強度曲線のパラメータは、まず病変を同定し、次いで病変を周囲の組織から区別しようとするために使用されてきた。これを行いうる一つの方法は、病変と正常組織の灌流曲線パラメータを計算し、パラメトリックに画像化し、次いで結果を比較することである。そのような測定および比較は、病変の領域、形および大きさを同定および区別するために、使用されてきており、結果はさまざまであった。しかしながら、異なるパラメータは異なる結果を与えることがあり、異なるパラメータを組み合わせることはさらなる結果の集合を生じることがある。すると、臨床担当者は、これらの異なる結果を評価するという課題を突きつけられ、病変の位置、大きさおよび形の自分の定性的評価を下す必要があることもありうる。病変のサイズ、形、そして特にその境界が、高熱療法や高周波アブレーション療法といったその後の治療手順のために精密に位置特定されることができるよう、造影剤試験において病変をより確定的に位置特定することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原理によれば、ユーザーが、造影剤試験において病変およびその境界を定性的に同定し、線引きする(delineate)ことができるようにする診断超音波システムおよび方法が記述される。画像中の種々の点について灌流曲線が計算される。各曲線は、時間的セグメント:造影剤が当該組織位置を灌流する流入時間、造影剤がその組織灌流の最大量を保持する増強時間および造影剤が当該組織位置から流出する流出時間を含むパラメータに分割される。時間的パラメータの一つまたは複数のパラメトリック画像が形成され、病変を位置特定し、望まれるなら病変の境界を線引きするために使われる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の原理に基づいて構築される、超音波診断撮像システムを示すブロック図である。
【図2】コントラスト・パラメトリック画像化のために従来使われる曲線パラメータのいくつかとともに造影剤時間‐強度曲線を示す図である。
【図3】本発明の原理に基づく、時間的コントラスト・パラメトリック画像を形成するためのプロセスのフローチャートである。
【図4】肝臓画像において病変の位置を同定する、本発明の時間的コントラスト・パラメトリック画像を示す図である。
【図5】本発明に基づく、三つの時間期間にセグメント分割された造影剤時間‐強度曲線を示す図である。
【図6】病変の境界を画定する、本発明の時間的コントラスト・パラメトリック画像の3D投影を示す図である。
【図7】病変の境界を画定する、本発明の時間的コントラスト・パラメトリック画像の3D投影を示す図である。
【図8】aおよびbは、肝臓画像における病変の位置を同定する、病変の流入期間および造影期間のパラメトリック画像を示す図である。
【図9】図8のaおよびbのコントラスト・パラメトリック画像を使った病変の境界トレーシングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず図1を参照するに、本発明の原理に基づいて構築された超音波システムがブロック図の形で示されている。超音波プローブ12は、超音波パルスを送信および受信する超音波トランスデューサ素子のアレイ14を含む。アレイは、二次元撮像のための一次元の線形または曲線状アレイであってもよいし、あるいは三次元で電子ビームを操縦するためのトランスデューサ素子の二次元マトリクスであってもよい。アレイはまた、体の三次元体積をスキャンするためにプローブによって前後に機械的に掃引される一次元アレイであってもよい。アレイ14内の超音波トランスデューサは超音波エネルギーを送信し、この送信に応答して返ってくるエコーを受信する。トランスデューサ素子からの信号を、動作の受信フェーズの間、選択的にA/Dコンバータ30に結合するために、アレイ14内の超音波トランスデューサには送受信切り換え(「T/R」)スイッチ22が結合されている。トランスデューサ・アレイが信号を送信するために作動させられる時間は、内部システム・クロック(図示せず)に同期されてもよいし、あるいは心臓サイクルのような身体機能に同期されてもよい。この後者のために、心臓サイクル波形がECG装置26によって与えられる。心拍が、ECG装置26によって与えられる波形によって判定されるところによりそのサイクルの所望される位相にあるとき、プローブは超音波画像を取得するよう指令される。
【0009】
送信された超音波エネルギーからのエコーがアレイ14のトランスデューサによって受信され、エコー信号を生成し、該エコー信号はT/Rスイッチ22を通じて結合され、システムがデジタル・ビーム形成器を使う場合にはアナログ‐デジタル(「A/D」)コンバータ30によってデジタル化される。あるいはアナログ・ビーム形成器を使ってもよい。A/Dコンバータ30は受信されたエコー信号を、中央コントローラ28によって生成される信号fsによって制御されるサンプリング周波数でサンプリングする。サンプリング定理によって規定される所望されるサンプリング・レートは、受信される通過帯域の最高周波数の少なくとも二倍であり、30〜40MHzのオーダーであってもよい。最小限の要求よりも高いサンプリング・レートも望ましい。超音波システムの制御およびプローブ選択のような撮像のためのさまざまな制御設定の制御は、コントロール・パネル20のコントロールのユーザー操作によって実施される。コントロール・パネル20は中央コントローラ28に結合されており、該中央コントローラ28を通じてその制御を適用する。
【0010】
アレイ14の個々のトランスデューサからのエコー信号サンプルは、ビーム形成器32によって遅延され、合計されて、コヒーレントなエコー信号を形成する。二次元アレイによる3D撮像については、米国特許第6,013,032号明細書(Savord)および米国特許第6,375,617号明細書(Fraser)に記載されるように、ビーム形成器を、プローブ内に位置されるマイクロビーム形成器とシステム・メインフレーム内のメイン・ビーム形成器との間で分割することが好ましい。デジタル・コヒーレント・エコー信号は次いでデジタル・フィルタ34によってフィルタ処理される。この実施形態では、送信周波数および受信周波数は個々に制御され、それによりビーム形成器32は、高調波周波数帯域のような送信された帯域とは異なる周波数の帯域を受信するのも自由である。デジタル・フィルタ34は信号を帯域通過フィルタ処理し、また、周波数帯域をより低い周波数範囲またはベースバンド周波数範囲にシフトさせることもできる。デジタル・フィルタは、たとえば米国特許第5,833,613号明細書(Averkiou et al.)に開示される型のフィルタであることもできる。フィルタ処理された組織からのエコー信号は、デジタル・フィルタ34から、Bモード処理のためにBモード・プロセッサ36に結合される。
【0011】
微小気泡のような造影剤のフィルタ処理されたエコー信号は、コントラスト信号プロセッサ38に結合される。造影剤はしばしば、血管の輪郭をより明瞭に描くために、あるいは組織の微小血管系の灌流調査を実行するために使用される。このことは、たとえば米国特許第6,692,438号明細書(Skyba et al.)に記載されている。コントラスト信号プロセッサ38は好ましくは、パルス反転(pulse inversion)法によって高調波造影剤(harmonic contrast agents)から返されるエコーを分離する。パルス反転法では、ある画像位置への複数パルスの送信から帰結するエコーが組み合わされて基本信号成分を打ち消し、高調波成分を増強する。好ましいパルス反転法は、たとえば米国特許第6,186,950号明細書(Averkiou et al.)に記載されている。
【0012】
デジタル・フィルタ34からのフィルタ処理されたエコー信号は、ドップラー・プロセッサ40にも結合される。速度および/またはパワー・ドップラー信号を生成するドップラー処理のためである。これらのプロセッサからの出力信号は、スキャン変換され(scan converted)、平面画像として表示されてもよく、三次元画像のレンダリングのために3D画像プロセッサ42に結合されてもよい。三次元画像は3D画像メモリ44に記憶される。三次元レンダリングは、米国特許第5,720,291号明細書(Schwartz)および米国特許第5,474,073号明細書(Schwartz et al.)および5,485,842号明細書(Quistgaard)に記載されるように実行されてもよい。これらのすべてはここに参照によって組み込まれる。
【0013】
コントラスト信号プロセッサ38、Bモード・プロセッサ36およびドップラー・プロセッサ40からの二次元画像信号ならびに3D画像メモリ44からの三次元画像信号はシネループ(Cineloop[登録商標])メモリ48に結合される。シネループ・メモリは多数の超音波画像のそれぞれについての画像データを記憶する。画像データは好ましくは、諸セットにおいてシネループ・メモリ48に記憶され、各セットの画像データは特定の時間に得られた画像に対応する。グループ内の画像データは、心拍の間の特定の時間における組織灌流を示すパラメトリック画像を表示するために使うことができる。シネループ・メモリ48に記憶された画像データの諸グループは、のちの解析のために、ディスク・ドライブまたはデジタル・ビデオ・レコーダのような持続性メモリ・デバイスに記憶されてもよい。この実施形態では、画像はQLABプロセッサ50にも結合される。QLABプロセッサではそれらの画像が解析され、それらの画像の特性の測定がなされる。QLABプロセッサは、さまざまな画像解析および定量化手順のためにフィリップス・ヘルスケア(Philips Healthcare)超音波システムとともに商業的に入手可能なソフトウェア・パッケージである。QLABプロセッサは、米国特許出願公開第2005-0075567号および国際公開第2005/054898号に記載されまた後述されるような自動化縁トレーシング(automated border tracing)による組織境界および縁の線引きのような画像中の解剖構造のさまざまな側面の定量化された測定をするために使うことができる。QLABプロセッサはコントロール・パネル20のボタンおよびトラックボールのようなコントロールのユーザー操作を通じて制御される。QLABプロセッサによって生成されるデータおよび画像はディスプレイ52上に表示され、ユーザーは、後述するようにコントロール・パネル20のコントロールの操作を通じて、表示された画像を操作し、該画像に注釈付けし、該画像の測定をしてもよい。
【0014】
図2は、米国特許第5,833,613号(Averkiou et al.)に記載される型の時間‐強度灌流曲線60を示している。そのような灌流曲線60は、身体中の特定の点から、造影剤が時刻t0に到着し、造影剤量が積み増すにつれて最大強度まで上昇し、造影剤が血管系のその点から流出するにつれて減少する際に得られる一連のエコー信号から形成されてもよい。上述したように曲線60を灌流曲線モデルに当てはめることによって、いくつかのパラメータが導出されてもよい。パラメータはたとえば、造影剤が身体中のその点に最初に到着する時刻t0、造影剤が身体中のその点で急速に増大する曲線60への接線62の傾きs(またはβ)および造影剤の増大がそのピークに達する際の曲線の最大点Aといったものである。その後、造影剤が身体中のその点における血管系から流出し、徐々に造影剤を含まない血液によって置換されるにつれて曲線は低下し、減少していく。次いで、計算された曲線パラメータの一つまたは複数からパラメトリック画像が形成されてもよい。たとえば、その解剖構造について画像中の各点に最大A値が示される画像が形成されることができる。A値は、すべての曲線について計算されたA値の範囲と揃えられた色の範囲のうちのある色で表せる。同様に、画像中の諸点において曲線の異なるβ値あるいは(1−β)またはA/βのようなパラメータの組み合わせを描写する色でパラメトリック画像が形成されることができる。
【0015】
図3は、本発明に基づく、時間的コントラスト・パラメトリック画像を生成する方法を示している。第一のステップ70は、造影剤が検査される身体領域に流入し該身体領域から流出する際に、超音波画像データを収集する。造影剤は、患者の身体中に、該造影剤のボーラスとして注射されることができる。次いで造影剤は血流中を運ばれ、数秒後についに撮像される組織に到着する。あるいはまた、造影剤のボーラスを、造影剤の連続ストリームから、該連続ストリームを定期的により高い強度の超音波で分裂させることによって形成することができる。それにより、ストリームは明瞭な始点および終点をもつ。これは米国特許第5,944,666号(Hossack et al.)に記載されている。造影剤が検査される身体領域に流入し流出する際に諸画像が取得され、それにより疑われる領域内のすべての点が、造影剤の存在について、迅速にサンプリングされる。取得されたデータは解析のために記憶される。ステップ72として、画像データを調べて、解析のための関心領域(ROI: region of interest)を同定する。これは、図4の超音波画像中のボックス82によって示されるようなROIのまわりのグラフィックを位置決めするまたは描くことによってなされてもよい。次いで、ステップ74に示されるように、ROI内の諸点についての信号の諸シーケンスが曲線当てはめ動作において使用され、ROIの諸点についての時間‐強度曲線が計算される。本発明の原理によれば、ステップ76に示されるように、三つの相続く時間期間を定義する時間‐強度曲線のレベルが設定される。時間期間は、造影剤が蓄積する流入期間(wash-in period)、各点において造影剤の極大レベルが維持される増強期間(enhancement period)およびROI点から造影剤が流出する流出期間(wash-out period)である。これらの設定は、検査開始に先立って、あるいは時間‐強度曲線情報の後処理のはじめに、なされてもよい。次いで、ステップ78に示されるように、時間期間時間のそれぞれのパラメトリック画像が形成されてもよい。次いで、ステップ80において、それらの時間期間のパラメトリック画像の一つまたは複数が使用されて、病変またはその境界が描かれる。
【0016】
図5は、ステップ76に従って設定される、時間‐強度曲線60についての諸時間期間を定義する時間‐強度曲線レベルの例を示している。この例において、上昇または流入期間は、63および時間t1によって示される曲線60のピークAの20%の上昇から65および時間t2によって示される該曲線のピークの80%のレベルまでの間の時間期間である。造影剤量がその灌流のピーク付近にある増強期間は、時間t2における80%マーク65と67および時間t3におけるピークの90%までの減少との間の時間期間である。下降または流出期間は、67および時間t3におけるピークの90%から69および時間t4におけるピークの30%までの時間期間である。この例において、t1‐t2は流入期間であり、t2‐t3は増強期間であり、t3‐t4は流出期間である。肝臓腫瘍の場合、流入期間は心拍の動脈フェーズの間に現れ、流出期間は門脈フェーズ後期の間に現れる。
【0017】
これらの時間期間パラメータから三つのパラメトリック画像が形成されうる。流入時間期間値に基づいて各画像ピクセルがエンコードされるものと、増強時間期間値に基づいて各ピクセルがエンコードされるものと、流出時間期間値に基づいて各ピクセルがエンコードされる第三のものである。ある構築される実施形態では、エンコードは、各ピクセルを、時間期間値の範囲に対応する色範囲からの色で色付けすることによってなされる。値は数値なので、各点の定量化も観察できる。これらの画像および定量化は、臨床担当者が、観察される病変を診断するのを支援する。正常な組織は比較的遅い流入(長い上昇時間期間)、遅い維持された増強(長い増強時間期間)および遅い流出(長い下降時間期間)を示す。異常組織は、比較的速い流入(短い上昇時間期間)、速い増強(短い増強時間期間)および速い流出(短い下降時間期間)を特徴とする。臨床担当者は、正常な画像位置および疑わしい画像位置において、三つの時間期間のカラー・コード画像または定量化において、病変外の正常な組織の領域におけるこれらの時間期間を観察し、次いで、疑われる病変内のこれらの時間期間を観察することができる。比較により、正常な組織と異常な組織の間の差が示される。
【0018】
臨床担当者は、カラーコーディングと定量化された値とを、良性病変と悪性病変の区別をするために使うこともできる。たとえば肝臓では、FNH(focal nodular hyperplasia[限局性結節性過形成])のような良性の病変は、動脈フェーズ(上昇期間)の間は高エコー(周囲の正常組織より明るい)、増強期間の間は高エコー、門脈フェーズ(下降期間)の間は高エコーとして現れる。HCC(hepatocellular carcinoma[肝細胞癌])のような悪性病変は動脈フェーズ(上昇期間)の間は高エコー、増強期間の間は高エコー、門脈フェーズ(下降期間)の間は低エコー(周囲の正常組織より暗い)として現れる。さらに、良性病変は悪性病変より長い増強時間期間および遅い下降時間期間をもつ傾向があり、悪性病変は良性病変より短い増強時間期間および速い下降時間期間をもつ傾向がある。正常組織背景の見え方を当該時間期間の間に病変との比較で観察することによって、悪性の可能性の指示が与えられる。
【0019】
三つの時間期間画像の一つまたは複数が、図6および図7に示されるように病変の境界を描くために使用されうる。境界の線引きは、たとえば高強度の超音波による高周波アブレーションまたは高熱療法治療といった治療を計画および評価するのに有用である。図6では、上昇時間期間画像の色が三次元ディスプレイ84において投影されており、投影されるレベルが高いほど明るい色に、投影されるレベルが低いほど暗い色になっている。より明るい色は、正常組織に対してより特徴的である遅い(長い)時間期間にコーディングされ、一方、より暗い色は異常組織に対してより特徴的であるより短い時間期間についてコーディングされる。3D投影は、疑われる病変の領域の広がり、度合いおよび変動を評価するために、回転および倒置されてもよい。次いで、投影の諸エリアの領域セグメンテーションを実行するために、図7に示されるように選択された諸レベルで投影をスライスする閾値処理が適用されてもよい。図7に示される3D投影のスライスは、この例の病変82の境界および不規則な形状を示す。あるいはまた、病変の境界をセグメンテーションするために、(均一なフィーチャーの類似性を探す)領域成長(region growing)法または(組織差によって領域の輪郭を描く)縁検出(border detection)法が使用されてもよい。
【0020】
図8のaおよびbはそれぞれ、本発明に基づいて形成された病変のパラメトリック画像のカラー・ボックス90がオーバーレイされている肝臓の超音波画像を示している。図8のaのカラー・ボックスは、疑われる病変のある画像における肝臓の領域の上昇期間パラメトリック画像を含んでいる。図8のbのカラー・ボックスは、肝臓の同じ領域の増強期間パラメトリック画像を含んでいる。各パラメトリック画像は、カラー・ボックスROIの正常組織背景に対して鮮鋭に定義された境界をもつ病変の線引きを明瞭に示している。これらのパラメトリック画像の一方または両方は、図9に示されるROI 92における病変の縁の付近の線94を描くために使われてもよい。これらのROI画像はオーバーレイされ、組み合わされてもよい。組み合わせは、空間的に対応するピクセルを平均する、該組み合わせにおいてピクセル値に異なる重み付けをするまたは二つの画像のメジアン値を計算することによってでもよい。次いで、病変の境界を定義するために閾値処理が使われてもよい。病変境界は、パラメトリック画像の一方もしくは両方または組み合わせを画像処理することによって見出されてもよい。たとえば、病変の内部におけるシード点が指示され、病変のエリアを定義するよう成長させられてもよい。隣接するピクセル間の不一致を同定することによる縁ベースの線引きが使われてもよし、病変のピクセルを分類するために病変エリアの均一性を使う領域ベースの同定法が使われてもよい。図9に示されるような結果は、その病理のための療法を計画することにおいて使用されてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心領域における病変を同定するための超音波診断撮像システムであって:
前記関心領域を灌流する造影剤の量の上昇および下降を検出する空間的データ・セットのシーケンスと;
前記関心領域における空間的に異なる点における造影剤灌流の時間‐強度曲線を計算する、灌流曲線計算器と;
各灌流曲線から、上昇時間期間、増強時間期間および下降時間期間から選択される時間期間を画定する一組の時間期間記述値と;
前記関心領域についての選択された時間期間の時間期間値のコントラスト・パラメトリック画像を形成するパラメトリック画像プロセッサと;
前記コントラスト・パラメトリック画像を表示するディスプレイとを有する、
超音波診断撮像システム。
【請求項2】
前記時間期間記述値が時間‐強度曲線のレベルである、請求項1記載の超音波診断撮像システム。
【請求項3】
前記時間期間記述値が時間‐強度曲線のピークに対する割合として定義される、請求項2記載の超音波診断撮像システム。
【請求項4】
前記上昇時間期間は前記関心領域におけるある点での造影剤の量が増加している期間であり、前記増強時間期間は造影剤の量がそのピークまたはピークの付近にある期間であり、前記下降時間期間は造影剤の量が減少している期間である、請求項2記載の超音波診断撮像システム。
【請求項5】
前記上昇時間期間が造影剤流入の際に現れ、前記下降時間期間が造影剤流出の際に現れる、請求項4記載の超音波診断撮像システム。
【請求項6】
比較的長い時間期間値の灌流フェーズ(perfusion phases)のパラメトリック画像が正常な組織を特徴付け、比較的より短い時間期間値の灌流フェーズ(perfusion phases)のパラメトリック画像が異常な組織を特徴付ける、請求項1記載の超音波診断撮像システム。
【請求項7】
比較的長い時間期間の増強灌流フェーズをもつパラメトリック画像が良性の組織を特徴付け、比較的より短い時間期間の増強灌流フェーズをもつパラメトリック画像が悪性の組織を特徴付ける、請求項6記載の超音波診断撮像システム。
【請求項8】
請求項7記載の超音波診断撮像システムであって、前記関心領域における種々の点における造影剤の強度のコントラスト画像を形成するコントラスト信号プロセッサをさらに有しており、
良性組織は前記下降時間期間のコントラスト画像において比較的高エコーであり、悪性組織は前記下降時間期間の前記コントラスト画像において比較的低エコーである、
超音波診断撮像システム。
【請求項9】
病変の縁を描く、前記コントラスト・パラメトリック画像に応答する縁検出器をさらに有する、請求項1記載の超音波診断撮像システム。
【請求項10】
前記縁検出器が前記コントラスト・パラメトリック画像を閾値処理することによって前記病変の縁を描く、請求項9記載の超音波診断撮像システム。
【請求項11】
前記パラメトリック画像プロセッサがさらに、第二の選択された時間期間の時間期間値の第二のパラメトリック画像を形成するよう動作可能であり、
前記第一および第二のパラメトリック画像が両方とも、前記病変の縁を描くために前記縁検出器によって使用される、
請求項9記載の超音波診断撮像システム。
【請求項12】
前記第一および第二のパラメトリック画像が、重み付けまたは平均の少なくとも一方によって組み合わされる、請求項11記載の超音波診断撮像システム。
【請求項13】
前記縁検出器が縁ベースのまたは領域ベースのピクセル処理の少なくとも一方を利用する、請求項9記載の超音波診断撮像システム。
【請求項14】
超音波画像中の異常組織を同定する方法であって:
関心領域を同定する段階と;
前記関心領域に造影剤が流入し前記関心領域から造影剤が流出する際に前記関心領域の超音波データを取得する段階と;
前記関心領域における諸点について時間‐強度曲線を計算する段階と;
前記時間‐強度曲線のそれぞれについて、上昇時間期間、増強時間期間または下降時間期間のパラメータの少なくとも一つを同定する段階と;
前記時間期間パラメータの少なくとも一つのコントラスト・パラメトリック画像を形成する段階とを含む、
方法。
【請求項15】
前記時間‐強度曲線の所望される時間期間を定義する時間‐強度曲線のレベルを設定する段階をさらに含む、請求項14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−508053(P2012−508053A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535187(P2011−535187)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2009/054751
【国際公開番号】WO2010/055426
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】