説明

普通型コンバイン

【課題】刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間における絡み付きが分草作用で解されない場合にも、茎稈の引きちぎりを避けて的確に収穫し易い普通型コンバインを提供する。
【解決手段】水平方向に沿う横向き姿勢で植立茎稈を刈り取る主刈取装置63の刈取作用域における未刈側の横側端部で、かつ刈取作用姿勢にある前記主刈取装置63の茎稈切断箇所よりも後方側位置に、上下方向に沿う起立姿勢で茎稈の切断を行う縦向き刈取装置7を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈り取られた茎稈の全体を扱室に投入して脱穀処理する脱穀部と、脱穀処理物を選別処理する選別部とを備えた普通型コンバインの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の普通型コンバインにおいては、稲麦などのように条列に沿って植え付けられた茎稈を有する穀物の他に、菜種やひまわりなどのように条列に沿って植え付けられたものではない茎稈を有する作物の着粒部や花托等を収穫対象とすることがあり、従来では下記[1],[2]に記載の構造のものが知られている。
[1] 茎稈の頂部側を掻き込みリールで掻き込んで、茎稈の根本側を切断装置で切断して刈り取り、全稈を後方の脱穀装置に送り込むように構成するとともに、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との絡み付きは分草具で分離させるように構成したもの(特許文献1参照)。
[2] 前端側の刈取装置を持ち上げ姿勢にして、茎稈の頂部近くでひまわりの花托を切断して収穫し、圃場に残る残茎稈は地面近くに位置する後方側の刈取装置で切断して圃場へ刈倒し、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との絡み付きは分草具で分離させるように構成したもの(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−211043号公報(段落〔0012〕、図1,2)
【特許文献2】特開2007−89464号公報(段落〔0019〕、〔0025〕、〔0038〕図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記[1]及び[2]に記載の従来構造のものでは、刈取対象の茎稈に対しては、掻き込みリールによる掻き込み作用などにより、姿勢矯正して刈取作業を行うようにしているが、未刈側に近い位置の刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間で絡み付きが生じた場合には、分草具で押し分けることによって強制的に解きほぐすように構成されている。
【0004】
このため、絡み付きの度合いが強い場合には、分草具による押し分け作用によっても絡み合った茎稈が解されなければ、着粒部での脱粒や、絡み合った茎稈が引きちぎられて圃場に散乱してしまうなどの虞があった。
【0005】
本発明の目的は、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間における絡み付きが分草作用で解されない場合にも、着粒部の脱粒や茎稈の引きちぎりが生じることを避けて的確に収穫し易い普通型コンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、水平方向に沿う横向き姿勢で植立茎稈を刈り取る主刈取装置を備えるとともに、その主刈取装置によって刈り取られた茎稈の全体を扱室に投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインにおいて、
前記主刈取装置の刈取作用域における未刈側の横側端部で、かつ刈取作用姿勢にある前記主刈取装置の茎稈切断箇所よりも後方側位置に、上下方向に沿う起立姿勢で茎稈の切断を行う縦向き刈取装置を設けたことである。
【0007】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の普通型コンバインでは、主刈取装置の刈取作用域における未刈側の横側端部に、上下方向に沿う起立姿勢で茎稈の切断を行う縦向き刈取装置を設けたものであるから、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間における絡み付きが解消されていなくても、その絡み合った茎稈部分を縦向き刈取装置で切断して、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間における繋がりを断ってしまうことができる。
そして、前記縦向き刈取装置の配設位置は、主刈取装置の刈取作用域における未刈側の横側端部であることに加えて、刈取作用姿勢にある主刈取装置の茎稈切断箇所よりも後方側位置であるように設定されているので、この縦向き刈取装置によって切断された茎稈が主刈取装置の存在箇所や主刈取装置の前方側へ落下する可能性も少なくて済む。
【0008】
したがって、刈取対象の茎稈群と未刈側の茎稈群とは、絡み合った茎稈部分が存在していても、その絡み合った茎稈部分が引きちぎられるような強い押し分け分草作用を要することなく分離させることができ、刈取対象茎稈の刈取収穫を円滑に行うことができる利点がある。
そして、縦向き刈取装置で切断された茎稈部分は、切断後に主刈取装置の存在箇所へ落下して損傷したり、主刈取装置の前方側へこぼれ落ちてしまう可能性も少なくて、脱穀部への回収が的確に行われ易いという利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明の普通型コンバインにおける第2の解決手段は、請求項2の記載のように、縦向き刈取装置が、上下方向に長い縦長の刈刃を備え、その縦長の刈刃が上端側ほど機体後方側へ傾く後傾姿勢で配設されている点に特徴がある。
【0010】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の普通型コンバインでは、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、縦向き刈取装置は前述のように主刈取装置の茎稈切断箇所よりも後方側に配置されているものであり、その縦向き刈取装置の上下方向に長い縦長の刈刃が、上端側ほど機体後方側へ傾く後傾姿勢で配設されているので、この縦向き刈取装置の上方側で刈り取られた茎稈部分ほど、主刈取装置の茎稈切断箇所から後方側への離反距離が大きくなる。
したがって、主刈取装置から上方側へ離れた高い位置で切断された茎稈部分が、その落下途中で多少前方側へ位置ずれして落下したとしても、主刈取装置の切断箇所や、主刈取装置よりも前方側へ運ばれてしまう可能性を少なくし得る利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明の普通型コンバインにおける第3の解決手段は、請求項3の記載のように、主刈取装置の刈幅方向での端部に分草具を備え、その分草具による分草箇所よりも刈幅方向での外側位置に縦向き刈取装置を配設してある点に特徴がある。
【0012】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明の普通型コンバインでは、前記解決手段1及び2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、分草具による分草箇所よりも刈幅方向での外側位置に縦向き刈取装置を配設してあるので、この縦向き刈取装置は、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間で絡み合った茎稈部分に対して、分草具で分草作用を受けている箇所よりも外側を切断することになる。
したがって、前記絡み合っていた茎稈部分のうちの未刈側の茎稈が切断されて、刈取対象の茎稈側は縦向き刈取装置によっては切断されずに残り、主刈取装置によって刈り取られてから脱穀部に回収される。これによって、縦向き刈取装置によって切断された茎稈部分が主刈取装置による刈取作用領域外へ脱落する可能性を少なくして収穫することができる利点がある。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明の普通型コンバインにおける第4の解決手段は、請求項4の記載のように、主刈取装置の刈幅方向での端部に設けた分草具よりも機体前方側に杆状の分草体を設け、その分草体の機体後方側に縦向き刈取装置を配設してある点に特徴がある。
【0014】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明の普通型コンバインでは、前記解決手段3にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、縦向き刈取装置よりも内側に位置する分草具のみでは、主刈取装置の刈幅を基準として刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈とが区分されてしまうが、前記分草具よりも機体前方側に設けた杆状の分草体が縦向き刈取装置の前方に配置されているので、前記縦向き刈取装置の存在位置を含めて刈取り対象領域が設定されることになる。
したがって、刈取対象の茎稈と未刈側の茎稈との間で茎稈の絡まりがない場合に、未刈側の茎稈が縦向き刈取装置に接触して切断作用を受けてしまうような事態の発生を極力回避し易い点で有利である。
【0015】
〔解決手段5〕
本発明の普通型コンバインにおける第5の解決手段は、請求項5の記載のように、主刈取装置の上方側位置に、掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作するリール式掻き込み装置を備え、縦向き刈取装置はリール式掻き込み装置よりも未刈側に位置して、リール式掻き込み装置の回転軌跡と前後方向で重複する位置に配設されていることを特徴とする。
【0016】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段5にかかる本発明の普通型コンバインでは、前記解決手段1〜4にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、リール式掻き込み装置よりも未刈側に位置する縦向き刈取装置が、リール式掻き込み装置の回転軌跡と前後方向で重複する位置に配設されているので、縦向き刈取装置で切断された絡み付き茎稈部分は、切断された後に直ちにリール式掻き込み装置によって脱穀部側へ送り込まれる作用を受ける。したがって切断後の茎稈部分が脱落なく回収され易い点で有利である。
【0017】
〔解決手段6〕
本発明の普通型コンバインにおける第6の解決手段は、請求項6の記載のように、主刈取装置の後方側に刈取茎稈を刈幅方向の中央側へ送る搬送用オーガを備え、縦向き刈取装置は前記搬送用オーガの駆動軸から取り出された動力で駆動されるように構成してあることを特徴とする。
【0018】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段6にかかる本発明の普通型コンバインでは、前記解決手段1〜5にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、縦向き刈取装置の設置箇所に近い位置に配設される搬送用オーガへの伝動系を利用して、その伝動系から駆動用動力を取り出すものであるから、別途駆動軸を設けたり、原動部から動力伝達機構を導出するような構造に比べて、その伝動構造を簡素化し得る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面の記載に基づいて説明する
【0020】
〔全体構成〕
図1乃至図3に示すように、本発明の普通型コンバインは、機体フレーム10を左右一対のクローラ走行装置11,11上に搭載して自走機体1を構成し、この自走機体1上に、運転座席20が装備された搭乗運転部2と、及び運転座席20の下方に位置するエンジン30が装備された原動部3と、脱穀対象の被処理物を脱穀及び選別処理する脱穀装置4と、脱穀された被処理物を袋詰めする袋詰め装置5とを搭載設置してある。
そして、自走機体1の機体前方側には、刈り取り対象茎稈を収穫するための刈取前処理装置6のフィーダ60を、その後端部の横軸心x周りで回動自在に連結してあり、これらの各装置の組み合わせによって、刈り取られた脱穀処理対象物の全稈を脱穀処理する普通型コンバインを構成してある。
【0021】
〔脱穀系の構成〕
前記脱穀装置4は、扱室に供給された刈取り穀稈を走行機体前後向きの軸芯周りに回動する軸流型の扱胴40によって脱穀処理し、脱穀処理物を脱穀粒と排稈とに選別処理し、脱穀粒を前記袋詰め装置5の貯留タンク50に供給するように構成してある。袋詰め対象の脱穀処理物以外の排稈などは、自走機体1の後方に落下放出するように構成してある。
【0022】
前記袋詰め装置5は、前記貯留タンク50を備える他、この貯留タンク50の走行機体前後方向に並ぶ二つの穀粒吐出筒51のそれぞれに対応させて貯留タンク50の下方に設けた袋支持杆52と、この袋支持杆52の下方に配置して前記機体フレーム10に設けた袋受けデッキに兼用の作業デッキ53と、前記機体フレーム10の横端部に支持された補助デッキ54とを備えている。補助デッキ54は、上下揺動自在に支持されており、機体フレーム10から走行機体横外側に水平に突出した下降使用姿勢と、この下降使用姿勢から上昇揺動して走行機体上下方向に沿った上昇格納姿勢とに切り換わる。
【0023】
〔刈取系の構成〕
前記刈取前処理装置6は、前処理フレーム61の前部に分草具として、左右一対のデバイダ62,62と、そのデバイダ62,62によって分草された刈取り対象領域の植立茎稈を刈り取るバリカン型の主刈取装置63と、後述する縦向き刈取装置7とを備えている。
そして、その主刈取装置63の上方に位置して前記植立茎稈の上端側を前処理フレーム61の後方側に掻き込むように回転するリール式掻き込み装置64を備えるとともに、前記前処理フレーム61の下部に位置するプラットホーム61Aの上面側に搬送用オーガ65を備えて、前記主刈取装置63で刈り取られ、プラットホーム61A上に掻き込まれた刈取茎稈を、搬送用オーガ65によってフィーダ60の前側に寄せ搬送し、フィーダ60の前側に位置した刈取茎稈を前記搬送用オーガ65が一体回転自在に備えている掻き込み杆65aによってフィーダ60側へ送り込むように構成されている。
【0024】
前記フィーダ60は、その内部に設置されたフィーダコンベヤ60aによって前記搬送用オーガ65から供給される刈取茎稈をフィーダ60の後端側に搬送し、この後端側の排出口(図示せず)から脱穀装置4の扱室(図示せず)に対して、刈取って搬送した茎稈の全体を供給する。
前記フィーダ60は、機体フレーム10との間に介装したリフトシリンダ12の作動により、前記横軸心x周りで前端側を昇降揺動自在に構成してあり、脱穀装置4に対する上下揺動操作により、前処理フレーム61の下部に位置するプラットホーム61Aが地面付近に下降した下降刈取作業状態と、前記プラットホーム61Aが地面から高く上昇した上昇刈取作業状態とに姿勢変更自在に構成してある。
【0025】
〔伝動系の構成〕
図4は、エンジン30の駆動力を前記クローラ走行装置11、及び機体フレーム上の各装置に対する動力伝達系を示す線図である。
この図に示すように、クローラ走行装置11に対する伝動機構は、前記エンジン30の出力軸30aの駆動力を、ベルト伝動機構21を介して静油圧式無段変速装置22の入力軸22aに伝達し、この静油圧式無段変速装置22の出力軸22bの駆動力を、ミッションケース23内のギヤトランスミッション(図外)に入力してこのギヤトランスミッションによって前記左右一対のクローラ走行装置11,11に駆動力を伝達する。
【0026】
前記静油圧式無段変速装置22は、前記ミッションケース23に連設されている。この静油圧式無段変速装置22は、前記入力軸22aをポンプ軸として備えた可変容量形でアキシャルプランジャ形の油圧ポンプと、この油圧ポンプからの圧油によって駆動されるアキシャルプランジャ形の油圧モータとを備えて構成されている。
【0027】
前記脱穀装置4に対する伝動機構は、前記エンジン30の出力軸30aをベルト伝動機構31を介して脱穀装置4の唐箕駆動軸41の一端側に連動させ、この唐箕駆動軸41の他端側をベルト伝動機構42を介して脱穀装置4の一番スクリューコンベヤ43と二番スクリューコンベヤ44とに連動させ、前記ベルト伝動機構42に設けた動力取り出し軸45をベルト伝動機構46を介して脱穀装置4の選別装置駆動軸47に連動させている。
【0028】
前記刈取前処理装置6に対する伝動機構は、前記エンジン30の前記出力軸30aから出力される駆動力を、前記ベルト伝動機構31と、前記唐箕駆動軸41と、この唐箕駆動軸41の他端側に設けたベルト伝動機構32とを介して伝動ケース33のケース入力軸34に伝達し、このケース入力軸34の駆動力を伝動ケース33の扱胴出力軸35から扱胴40に伝達し、前記ケース入力軸34の駆動力を、正回転クラッチ37を介して、あるいは、伝動ケース33の刈取り出力軸36と、逆回転クラッチ38とを介して刈取前処理装置6の刈取り入力軸66に伝達する。この動力伝達についてさらに詳述すると、次の如く構成してある。
【0029】
前記伝動ケース33は、前記ケース入力軸34の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48aを備えたベベルギヤ機構48を収容している。このベベルギヤ機構48は、前記ベベルギヤ48aを備える他、前記刈取り出力軸36の端部に一体回転自在に設けたベベルギヤ48bと、前記ベベルギヤ48aと48bとに噛み合った状態で前記扱胴出力軸35に一体回転自在に設けたベベルギヤ48cとを備えて構成してある。つまり、ベベルギヤ機構48は、走行機体横向きのケース入力軸34と走行機体前後向きの扱胴出力軸35との連動を可能にし、かつケース入力軸34の回転方向と刈取り出力軸36の回転方向とが逆の回転方向になる状態でケース入力軸34と刈取り出力軸36とを連動させている。
【0030】
図4に示すように、前記正回転クラッチ37は、前記ケース入力軸34と前記刈取り入力軸66の一端側とに巻回された伝動ベルト37aがテンション輪体37bによって張り状態と緩み状態とに切り換え操作されることで入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。この正回転クラッチ37は、入り状態に切り換え操作されることにより、ケース入力軸34の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を正回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0031】
図4に示すように、前記逆回転クラッチ38は、前記刈取り出力軸36と前記刈取入力軸66の他端側とに巻回された伝動ベルト38aがテンション輪体38bによって緊張状態と弛緩状態とに切り換え操作されることで入り状態と切り状態とに切り換わるようベルトテンションクラッチになっている。この逆回転クラッチ38は、入り状態に切り換え操作されることにより、刈取り出力軸36の駆動力を刈取入力軸66に対して刈取り前処理装置6を逆回転方向に駆動する駆動力として伝達する。
【0032】
図1,4に示すように、前記刈取入力軸66は、前記フィーダコンベヤ60aを駆動するコンベヤ駆動軸になっている。前記刈取入力軸66は、伝動チェーン66aを介して主刈取り装置63の駆動軸67に連動されている。この駆動軸67と前記搬送用オーガ65の駆動軸68とが伝動チェーン66bによって連動されている。搬送用オーガ65の駆動軸68と、リール式掻き込み装置64の駆動軸64aとが、伝動チェーン66cと伝動ベルト66dとを利用した連動機構によって連動されている。
【0033】
前記駆動軸67からの動力は、駆動軸67に装備された運動方向変換機構69に入力され、この運動方向変換機構69により駆動軸67の回転運動が伝動軸67aの往復回動に変換される。そして、前記伝動軸67aの往復回動により主刈取装置63の刈刃が往復駆動するように構成されている。
【0034】
刈取入力軸66は、正回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取装置63とリール式掻き込み装置64とを通常の前処理作業や搬送作業を行うよう正回転方向に駆動し、逆回転方向の駆動力が伝達されると、刈取り前処理装置6のフィーダコンベア60aと搬送用オーガ65と主刈取装置63とリール式掻き込み装置64とを通常の作業用回転方向とは逆の回転方向に駆動する。
【0035】
前記搬送用オーガ65の駆動軸68の他端側には、後述する縦向き刈取装置7への動力伝達機構が装備されている。この縦向き刈取装置7への動力伝達機構については、縦向き刈取装置7の構成とともに後述する。
【0036】
〔縦向き刈取装置の構成〕
図2乃至図5に示すように、刈取前処理装置6の左側部には、前記主刈取装置63の刈取作用域における未刈側の横側端部位置において、上下方向に沿う起立姿勢で、菜種の茎稈の切断を行う縦向き刈取装置7を設けてある。
この縦向き刈取装置7は、図5乃至図8に示すように、固定刃7Aに対して可動刃7Bを相対摺動自在に構成された縦長のバリカン型刈刃によって構成してあり、刈取前処理装置6の搬送用オーガ65の駆動軸68から取り出された駆動力で駆動されるように構成されている。
【0037】
前記固定刃7Aと可動刃7Bとは、刈取前処理装置6の左側の前処理フレーム61に対して下端側を横向きの枢支軸71周りで揺動可能に枢支された取付枠70に対して装着されている。すなわち、図5及び図6に示されているように、左側の前処理フレーム61と取付枠70とにわたって貫通する状態に固定された枢支軸71に対して、プーリ72a付きのクランク状回転部材72が外嵌装着してあり、このクランク状回転部材72の駆動ロッド取付軸73が、前記枢支軸71に対して偏心した状態で設けられている。
そして、この駆動ロッド取付軸73に対して刈刃駆動ロッド74が相対回転自在に外嵌されていることにより、刈刃駆動ロッド74は、前記駆動ロッド取付軸73側端部が回転運動で駆動され、反対側端部が連結軸75によって可動刃7Bに連結され、この機構によりクランク状回転部材72の回転運動が往復運動に変換されて、取付枠70に沿って可動刃7Bを往復運動させるように構成してある。
【0038】
前記固定刃7Aは取付枠70に固定して設けてあり、可動刃7Bは、その長手方向の中間部を前記連結軸75を介して刈刃駆動ロッド74に連結してある。
したがって、クランク状回転部材72のプーリ72aに回転動力が伝達されると、クランク状回転部材72が枢支軸71の軸心P1周りで回転し、駆動ロッド取付軸73の軸心P2が前記軸心P1周りで回転駆動される。これに伴って刈刃駆動ロッド74の他端側の連結軸75の軸心P3が取付枠70の長手方向に沿って往復運動して可動刃7Bを往復作動させる。
【0039】
刈取前処理装置6の搬送用オーガ65の駆動軸68から前記クランク状回転部材72への動力伝達は、図4,5、及び図6に示されているように、搬送用オーガ65の駆動軸68に設けた駆動スプロケット68aと、左側の前処理フレーム61の横壁部分に固定された中継軸76に形成された中継スプロケット76aとにわたって巻回された伝動チェーン77と、前記中継軸76に設けた中継プーリ76bと、前記クランク状回転部材72のプーリ72aとにわたって掛張された伝動ベルト78とで行われるように構成してある。
【0040】
前記伝動ベルト78の中間位置には、テンションプーリ79aと、そのテンションプーリ79aをクラッチ入り側へ弾性付勢するスプリング79bとによって構成される縦向き刈取クラッチ79が設けてあり、この縦向き刈取クラッチ79は、前記スプリング79bを緩み側へ操作する人為操作レバー79cの操作によって、クラッチ入り状態と切り状態とに切換操作自在に構成してある。
【0041】
この縦向き刈取装置7の前記取付枠70は、その上端部近くに連結された支持ステー8の支持長さを変更することにより、前処理フレーム61に対する取付姿勢を変更できるように構成されている。つまり、支持ステー8に備えられる取付孔80の位置を選択して前処理フレーム61との連結点Cの位置を変更することにより、その支持長さを変更可能に構成してある。
ただし、その縦向き刈取装置7の前処理フレーム61に対する取付姿勢の変更は、図9に示すように、主刈取装置63を走行地面から持ち上げて作物の上部側を刈取作業する上昇作業姿勢で、縦向き刈取装置7の切断箇所が主刈取装置63による切断箇所よりも機体進行方向での後方側であるのが、刈取作物の脱落を抑制する上で好ましい。尚、図中の水平方向の線分hは、上昇作業姿勢での主刈取装置63による刈取高さ位置を示す。また、同図中の上下方向の線分yは、主刈取装置63がこの上昇作業姿勢で使用される際の主刈取装置63の先端箇所における鉛直線を示す。
【0042】
また、縦向き刈取装置7の切断箇所c1は、図10に示すように、正面視では、左側のデバイダ62の分草中心c2よりも機体横外側方に少し位置ずれした位置に設けてあり、同図中に仮想線で示すように穂先側が絡み付いた状態の茎稈を分草する際に、絡みがほぐれないままで切断箇所に達した未刈側の茎稈を、前記分草中心c2よりも少し外側の切断点c1で切断するように構成されている。
したがって、このように外側の未刈側茎稈が切断され、かつ、主刈取装置63で刈幅内の茎稈が刈り取られると、前記絡み付いた状態がほぐれないままの茎稈もリール式掻き込み装置64や搬送用オーガ65などの作用も加わって、刈取前処理装置6から脱落する可能性少なく、フィーダ60側へ送り込まれ易くなる。
【0043】
上記縦向き刈取装置7は、掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作するリール式掻き込み装置64の未刈側側方位置に設けられ、刈取り作業状態では、側面視でリール式掻き込み装置64と重複する状態で使用されるように配置されている。
【0044】
〔別実施形態の1〕
図11(a),(b)に示すように、刈取前処理装置6において、分草手段としてデバイダ62,62を設けただけのものに限らず、デバイダ62よりも機体前方側で、かつデバイダ62よりも急角度で、分草を行う杆状の分草体9を設けてもよい。この場合、分草体9がデバイダ62よりも前方に位置していることで、より早い時期から分草作用を与えて絡みついた茎稈のほぐしを行えるものであるが、前記分草体9が縦向き刈取装置7の切断箇所の直前方に位置するように設けると、デバイダ62よりも機体横外側方位置から茎稈を収集することができる。
【0045】
〔別実施形態の2〕
縦向き刈取装置7は、菜種の刈取り用のものに限らず、穂先側を刈取り対象とする各種の茎稈刈取り用のものに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】普通型コンバイン全体の右側面図
【図2】普通型コンバイン全体の左側面図
【図3】普通型コンバイン全体の平面図
【図4】伝動系統を示す線図
【図5】縦向き刈取装置部分を示す左側面図
【図6】縦向き刈取装置への伝動構造を示す平面図
【図7】図5におけるVII-VII線断面図
【図8】図5におけるVIII-VIII線断面図
【図9】刈取り前処理装置の使用状態を示す左側面図
【図10】刈取り前処理装置の使用状態を示す正面図
【図11】分草手段の別実施形態を示す左側面図と平面図
【符号の説明】
【0047】
4 脱穀装置
6 刈取り前処理装置
7 縦向き刈取装置
7A,7B 刈刃
9 分草体
62 分草具
63 主刈取装置
64 リール式掻き込み装置
65 搬送用オーガ
68 駆動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿う横向き姿勢で植立茎稈を刈り取る主刈取装置を備えるとともに、その主刈取装置によって刈り取られた茎稈の全体を扱室に投入して脱穀及び選別処理する脱穀装置を備えた普通型コンバインであって、
前記主刈取装置の刈取作用域における未刈側の横側端部で、かつ刈取作用姿勢にある前記主刈取装置の茎稈切断箇所よりも後方側位置に、上下方向に沿う起立姿勢で茎稈の切断を行う縦向き刈取装置を設けてある普通型コンバイン。
【請求項2】
縦向き刈取装置は、上下方向に長い縦長の刈刃を備え、その縦長の刈刃が上端側ほど機体後方側へ傾く後傾姿勢で配設されている請求項1記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
主刈取装置の刈幅方向での端部に分草具を備え、その分草具による分草箇所よりも刈幅方向での外側位置に縦向き刈取装置を配設してある請求項1又は2記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
主刈取装置の刈幅方向での端部に設けた分草具よりも機体前方側に杆状の分草体を設け、その分草体の機体後方側に縦向き刈取装置を配設してある請求項3記載の普通型コンバイン。
【請求項5】
主刈取装置の上方側位置に、掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作するリール式掻き込み装置を備え、縦向き刈取装置はリール式掻き込み装置よりも未刈側に位置して、リール式掻き込み装置の回転軌跡と前後方向で重複する位置に配設されている請求項1〜4のいずれか1項記載の普通型コンバイン。
【請求項6】
主刈取装置の後方側に刈取茎稈を刈幅方向の中央側へ送る搬送用オーガを備え、縦向き刈取装置は前記搬送用オーガの駆動軸から取り出された動力で駆動されるように構成してある請求項1〜5のいずれか1項記載の普通型コンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−22320(P2010−22320A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190009(P2008−190009)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】