説明

暖房システム

【課題】対象室内の温度を均一にしてエネルギー消費を抑えつつ快適な暖房を行うことができる暖房システムを提供する。
【解決手段】対象室1の上部に設けられる加熱手段2を備える。対象室1の床暖房を行う床暖房手段3を備える。対象室1内の天井側の空気を床側に送る機能又は床側の空気を天井側に送る機能のうちの少なくとも一の機能を有する送風手段4を備える。対象室1内の快適度を検知する快適度検知手段を備える。快適度検知手段で検知される快適度が、設定された目標快適度に近づくように加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4を連携制御する制御手段5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱手段と床暖房手段を備える暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のように室内機と床暖房装置を制御する暖房システムが知られている。この暖房システムでは、設定温度入力手段で設定した設定温度から、PMV値からなる快適度に基づいて目標室温と目標床面温度を決定し、室温検知手段により検知した室温と床面温度検知手段で検知した床面温度が前記目標室温と目標床面温度になるよう室内機と床暖房装置の両者を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−120945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の暖房システムでは、対象室の上部に設けられる室内機と下部に設けられる床暖房装置の両者を制御して暖房を行う。このため、室温検知手段で検知した室温と床面温度検知手段で検知した床面温度の夫々が目標の温度になったとしても、天井側の室温と床側の室温との間に大きな温度差が生じる恐れがある。この場合、対象室内には目標温度から外れた快適でない領域が存在し、この領域に居る利用者は不快に感じる。また、対象室内の上部の室温が利用者が居る下部の室温よりも高い場合は、対象室内の上部を無駄に暖めていると捉えると、暖房システム全体として効率の良い暖房が行われているとは言い難い。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、対象室内の温度を均一にしてエネルギー消費を抑えつつ快適な暖房を行うことができる暖房システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の暖房システムは、対象室の上部に設けられる加熱手段と、前記対象室の床暖房を行う床暖房手段と、前記対象室内の天井側の空気を床側に送る機能又は床側の空気を天井側に送る機能のうちの少なくとも一の機能を有する送風手段と、前記対象室内の快適度を検知する快適度検知手段と、この快適度検知手段で検知される快適度が設定された目標快適度に近づくように、前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段を連携制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記対象室内の上部の室温を検知する上部室温検知手段と、前記対象室内の下部の室温を検知する下部室温検知手段を備え、前記制御手段は、前記上部室温検知手段で検知した対象室内の上部の室温と前記下部室温検知手段で検知した対象室内の下部の室温との温度差に基づいて送風手段を制御すると共に、この送風手段の制御によって想定される前記対象室内の温度環境に応じて前記加熱手段を制御するものであることが好ましい。
【0008】
また、前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記対象室の床面温度を検知する床面温度検知手段を備え、前記制御手段が前記室温検知手段で検知される室温及び前記床面温度検知手段で検知される床面温度の組み合わせが予め設定された所定範囲内に収まるように前記加熱手段及び床暖房手段を制御するものであることが好ましい。
【0009】
また、前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記対象室の壁面温度を検知する壁面温度検知手段を備え、前記制御手段は、前記壁面温度検知手段で検知した壁面温度と前記室温検知手段で検知した室温との温度差が小さくなるように前記加熱手段を制御するものであることが好ましい。
【0010】
また、前記対象室内に室外空気を取り込む室外空気取込手段と、前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記室外空気の温度を検知する室外空気温度検知手段を備え、前記制御手段は、前記室外空気温度検知手段で検知した室外空気の温度が、前記室温検知手段で検知した室温又はこの室温に予め設定された所定温度を加えた値よりも高くなった場合に、前記室外空気取込手段により前記室外空気を前記対象室内に取り込むものであることが好ましい。
【0011】
また、前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段を連携制御する連携制御モードに加えて、前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段の夫々を個別に操作する個別操作モードを備え、前記連携制御モードと個別操作モードを切り替えるための操作手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、加熱手段、床暖房手段、及び送風手段を目標快適度になるよう連携制御して行う暖房時において、対象室内の略全域を利用者にとって快適な温度環境にすることができ、エネルギー消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の暖房システムを示す説明図である。
【図2】同上の暖房システムのブロック図である。
【図3】同上の送風手段の説明図であり、(a)は攪拌運転時の状態を示し、(b)は室外空気取込運転時の状態を示している。
【図4】同上の暖房システムのフローである。
【図5】同上の暖房システムの制御に用いられる快適領域を床面温度と中間部室温との関係で示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1乃至図5に示す本実施形態の空調システムは、建物の一室からなる対象室1の上部に設けられた加熱手段2、対象室1の床暖房を行う床暖房手段3、及び対象室1内の空気を攪拌する送風手段4を備えている。加えて、操作手段25、快適度検知手段、及び制御手段5を備えている。
【0015】
図1に示すように加熱手段2は対象室1の壁面の上端部に取り付けられたエアコンディショナーの室内機からなり、対象室1内に暖気を送る暖房運転と対象室1内に冷気を送る冷房運転を切り替えて行えるものである。
【0016】
床暖房手段3は対象室1の床に設けられた床暖房装置からなり、対象室1の床面を加温して床暖房を行う。
【0017】
送風手段4は対象室1内の空気を循環させる機能と対象室1内に室外空気を取り込む機能を有するパネル装置4aで構成されている。すなわち、本実施形態の送風手段4は室外空気取込手段を兼ねている。パネル装置4aは建物の間柱間に設置されて対象室1の壁面の一部を構成する。
【0018】
図3に示すようにパネル装置4aの上下の端部には対象室1内に開口する上側通気口6と下側通気口7の夫々が設けられている。パネル装置4a内には、上側通気口6と下側通気口7を通じさせる通気路16が形成され、通気路16には正逆両方向に回転駆動する循環用ファン17が設けられている。通気路16の下端部は外気取込口18を介して屋外に通じ、通気路16には外気取込口18又は下側通気口7を選択的に閉塞する切替ダンパ19が設けられている。
【0019】
図3(a)のように切替ダンパ19により外気取込口18を閉塞した状態で、循環用ファン17を回転駆動させることで、対象室1内の空気は循環する。すなわち、循環用ファン17を一方向に回転させると、図1の矢印aのように対象室1内の天井近傍の空気が上側通気口6から通気路16内に吸い込まれると共にこの空気が矢印bに示すように下側通気口7を介して対象室1内の床近傍に送られる。以下、この運転を下向き送風運転という。逆に循環用ファン17を下向き送風時とは逆方向に回転させることで、図1の矢印cのように対象室1内の床近傍の空気が下側通気口7から通気路16内に吸い込まれると共にこの空気が矢印dに示すように上側通気口6を介して対象室1内の天井近傍に送られる。以下、この運転を上向き送風運転といい、この上向き送風運転と前記下向き送風運転をまとめて攪拌運転という。
【0020】
また、図3(b)のように切替ダンパ19で下側通気口7を閉塞した状態で、循環用ファン17を上向き送風運転時と同方向に回転駆動させると、室外空気(屋外空気)が外気取込口18、通気路16、及び上側通気口6を経て対象室1内に取り込まれる。以下、これを室外空気取込運転という。なお、本実施形態のパネル装置4aは室外空気が上側通気口6から対象室1内に取り込まれるようにしたが、下側通気口7から対象室1内に取り込まれるようにしても構わない。
【0021】
前記快適度検知手段は対象室1の空調環境の指標となる快適度を検知するために用いられる。この快適度は利用者の温冷感を示す指標となるPMV(Predicted Mean Vote:予測平均温冷感申告)値であり、室温の他、湿度、輻射温度、風速、着衣量、及び活動量をパラメーターとして決定される。
【0022】
快適度検知手段は、図1及び図2に示す、室温検知手段8、天井面温度検知手段9、壁面温度検知手段10、床面温度検知手段11、人体検知手段12、及び湿度検知手段13で構成され、検知手段8〜13で検知した情報に基づいて快適度が算出される。
【0023】
図1のように対象室1には、室温検知手段8として、上部室温検知手段8a、中間部室温検知手段8b、及び下部室温検知手段8cが設けられている。上部室温検知手段8a及び下部室温検知手段8cの夫々はパネル装置4aの上端部と下端部に設けられた温度センサーからなり、対象室1内の上部と下部の夫々の室温を検知する。中間部室温検知手段8bは操作手段25が有する温度センサーからなる。操作手段25は対象室1の壁面において中程の高さ位置に設けられた操作器からなり、すなわち、中間部室温検知手段8bは上下方向において上部室温検知手段8aと下部室温検知手段8cの間に配置されている。
【0024】
天井面温度検知手段9は対象室1の天井に設けられ、対象室1の天井面の温度を検知する。壁面温度検知手段10はパネル装置4aに設けられ、パネル装置4aの対象室1内に臨む面の温度を検知する。湿度検知手段13は対象室1の壁に設けられて対象室1内の湿度を検知する湿度センサーからなる。人体検知手段12は対象室の壁の上部又は天井に設けられて対象室1内に居る人の動きを検知する人感センサーからなる。
【0025】
また、本実施形態の空調システムは、前記快適度検知手段を構成する検知手段8〜13の他に、室外空気温度検知手段14を備えている。室外空気温度検知手段14は屋外やパネル装置4aの外気取込口18等の室外空気(屋外空気)の温度を検知可能な箇所に設けられた温度センサーからなる。
【0026】
図2のように制御手段5は、加熱手段用制御部21、床暖房手段用制御部22、送風手段用制御部23、及びこれらを制御するコントローラー24で構成されている。
【0027】
加熱手段用制御部21、床暖房手段用制御部22、及び送風手段用制御部23は、制御対象である加熱手段2、床暖房手段3、送風手段4の夫々の運転状況の情報をコントローラー24に送信する。床暖房手段用制御部22は床面温度検知手段11と通信し、床面温度検知手段11で検知した情報を集中制御部であるコントローラー24に送信する。送風手段用制御部23は、上部室温検知手段8a、下部室温検知手段8c、壁面温度検知手段10、湿度検知手段13、室外空気温度検知手段14の夫々と通信し、これら検知手段8a,8c,10,13,14で検知した情報をコントローラー24に送信する。
【0028】
コントローラー24は操作手段25に設けられ、加熱手段用制御部21、床暖房手段用制御部22、及び送風手段用制御部23を介して、加熱手段2、床暖房手段3、送風手段4の夫々を制御する。また、コントローラー24は、中間部室温検知手段8b、天井面温度検知手段9、及び人体検知手段12と通信し、これら検知手段8b,9,12で検知した情報を取得する。
【0029】
利用者は操作手段25を操作することで、後述する個別操作モードと連携制御モードの切替えを行えるようになっている。個別操作モードに切り替えられた状態では、操作手段25により、加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4の夫々を個別に操作して運転できる。また、操作手段25を操作して、個別操作モードにおける加熱手段2の冷暖房の切替えや設定温度、風量の設定、床暖房手段3の暖房温度の設定、送風手段の風量等を個別に設定できる。
【0030】
また、操作手段25を操作することで、連携制御モードの運転時における、対象室1の目標の快適度を設定できるようになっている。以下、この快適度を設定快適度という。
【0031】
そして、操作手段25が操作されて、設定快適度が設定され、連携制御モードに切り替えられて暖房運転の開始の指令がなされると、コントローラー24により、加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4を連携制御して行う以下の連携制御運転が実行される。
【0032】
図4に示すように連携制御運転時には設定快適度に基づいて目標快適度が設定される(S1)。目標快適度の設定にあたっては、まず人体検知手段12で検知した情報から対象室1内に居る人の活動量が多いか否かが判定される。そして、肯定されると設定快適度から所定PMV値(例えば0.5)を差し引いた値が目標快適度として設定され、否定されると設定快適度がそのまま目標快適度として設定される。なお、この目標快適度の設定は所定時間毎に行われるものであるが、連携制御運転開始時にのみ設定されるものであってもよい。
【0033】
連携制御運転時には、所定時間(例えば5分)毎に、環境情報の取得(S2)、これら取得データに基づく判定(S3,S4)、これら判定に基づく機器の制御(S5,S6)がなされる。
【0034】
S2では、検知手段8a〜8c,9〜14の検知により環境データが取得される。S3では、S2で取得した環境情報と、温度調節手段2と送風手段4の運転状況、及び日付情報に基づいて現在の快適度(PMV値)が算出される。
【0035】
ここで、中間部室温検知手段8b、人体検知手段12、及び湿度検知手段13により取得した情報は室温、活動量、湿度の夫々の指標となり、天井面温度検知手段9、壁面温度検知手段10、及び床面温度検知手段11で検知した情報は輻射温度の指標となる。また、加熱手段2と送風手段4の運転状況の情報は風速の指標となり、日付情報は着衣量の指標となる。従って、これら情報に基づいて、室温、湿度、輻射温度、風速、着衣量、及び活動量をパラメーターとしたPMV値からなる現在の快適度を算出することができる。以下、この算出した快適度を検知快適度という。
【0036】
S4では、S1で得た目標快適度と、S2で取得した環境データ、及びS3で得た検知快適度に基づいて、表1に示す以下の判定(1)〜(11)を行う。
【0037】
【表1】

【0038】
判定(1)では、検知快適度と目標快適度の差が所定値a1未満で且つ壁面温度検知手段10で検知した壁面温度(以下、検知壁面温度という)が中間部室温検知手段8bで検知した中間部室温(以下検知中間部室温という)に所定温度T1を加えた値を超えた場合に肯定する。表1ではa1=0.5、T1=1(℃)に設定されている。
【0039】
判定(2)では、検知快適度が目標快適度よりも所定値a1以上で且つ検知中間部室温が目標室温よりも所定温度T2以上高い場合に肯定する。表1ではT2=2(℃)に設定されている。
【0040】
判定(3)では、検知快適度が目標快適度よりも所定値a1以上で且つ検知壁面温度が検知中間部室温に所定温度T3を加えた値を超えた場合に肯定する。表1ではT3=2(℃)に設定されている。
【0041】
判定(4)では、検知快適度が目標快適度よりも所定値a1以上で且つ床面温度検知手段11で検知した床面温度(以下、検知床面温度)が所定温度T4を超えた場合に肯定する。表1ではT4=30(℃)に設定されている。
【0042】
判定(5)では、検知快適度が目標快適度以下で且つ検知中間部室温に所定温度T5を加えた値よりも室外空気温度検知手段14で検知した室外空気温度(以下、検知室外空気温度という)が大きい場合に肯定する。表1では所定温度T5=1(℃)に設定されている。
【0043】
判定(6)〜(11)では、検知快適度が目標快適度よりも所定値a1以下で且つ以下の追加要件を満たした場合に肯定する。
【0044】
判定(6)の追加要件は、検知中間部室温と検知床面温度の両者が図5のハッチングで示した快適領域内に入っていないことである。
【0045】
判定(7)の追加要件は、検知中間部室温と検知床面温度が前記快適領域内に入っていることである。
【0046】
判定(8)の追加要件は、検知床面温度が目標床面温度より所定温度T6以上低いことである。表1ではT6=3(℃)に設定されている。なお、目標床面温度は操作手段25により予め設定され、例えば25℃に設定される。
【0047】
判定(9)の追加要件は、検知中間部室温が目標室温より所定温度T7以上低いことである。表1ではT7=2(℃)に設定されている。なお、前記目標室温は表2に基づいて目標快適度に応じて決定される。
【0048】
【表2】

【0049】
判定(10)の追加要件は、上部室温検知手段8aで検知した上部室温(以下、検知上部室温という)が、下部室温検知手段8cで検知した下部室温(以下、検知下部室温という)よりも所定温度T8以上高いことである。表1ではT8=3(℃)に設定されている。
【0050】
判定(11)の追加要件は、検知壁面温度が検知中間部室温よりも所定温度T9以上低いことである。表1ではT9=2(℃)に設定されている。
【0051】
S5では加熱手段2、床暖房手段3及び送風手段4の制御方法が決定され、これに基づいてS6では加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4が制御される。
【0052】
具体的には、判定(1)〜(11)の全てが否定された場合、加熱手段2及び床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。また、送風手段4は判定(5),(10)で肯定される場合を除き停止される。
【0053】
また、判定(1)で肯定された場合、加熱手段2は停止され、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。
【0054】
また、判定(2)で肯定された場合、加熱手段2はその暖房温度が所定温度T10下げられて運転される又は停止され、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。
【0055】
また、判定(3)で肯定された場合、加熱手段2はその暖房温度が所定温度T11下げられて運転される又は停止され、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。
【0056】
また、判定(4)で肯定された場合、加熱手段2は前回判定後の運転状態で維持され、床暖房手段3は停止される。
【0057】
また、判定(5)で肯定された場合、加熱手段2及び床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。また、送風手段4の室外空気取込運転が実行される。
【0058】
また、判定(6)で肯定された場合、加熱手段2及び床暖房手段3の夫々の暖房温度が、図5において、検知中間部室温及び検知床面温度により決定されるポイントに最も近い快適領域のポイントの中間部室温及び床面温度に設定される。そして、この条件で加熱手段2及び床暖房手段3が運転される。例えば検知中間部室温が19℃で検知床面温度が22℃であって現在の図5におけるポイントがP1である場合、快適領域においてポイントP1に最も近いポイントP2は、中間部室温が20℃、床面温度が25℃である。従って、この場合は加熱手段2の暖房温度が20℃に、床暖房手段3の暖房温度が25℃に設定される。
【0059】
また、判定(7)で肯定された場合、加熱手段2の暖房温度が所定温度T12上げられ、この状態で加熱手段2が運転される。表1ではT12=1(℃)に設定されている。また、床暖房手段は前回判定後の運転状態で維持される。例えば検知中間部室温が20℃で検知床面温度3が25℃であって現在の図5におけるポイントがP2であり、且つ、加熱手段2の暖房温度が20℃に、床暖房手段3の暖房温度が25℃に設定されているとする。この場合は、加熱手段2の暖房温度が1℃上げられて21℃とされ、床暖房手段3の暖房温度が25℃に設定される。
【0060】
また、判定(8)で肯定された場合、床暖房手段3の暖房温度が目標床面温度に設定され、この状態で床暖房手段3が運転される。また、加熱手段2は前回判定後の運転状態で維持される。
【0061】
また、判定(9)で肯定された場合、加熱手段2の暖房温度は所定温度T13上げられ、この状態で加熱手段2が運転される。また、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。表1ではT13=2(℃)に設定されている。
【0062】
また、判定(10)で肯定された場合、送風手段4は攪拌運転され、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。また、加熱手段2の暖房温度は予想温度に設定され、この状態で加熱手段2は運転される。前記予想温度は、室温検知手段8で検知された情報に基づいて算出されるものであり、前記送風手段4の運転によって想定される対象室1内の温度環境に応じて変化する。具体的には、検知上部室温、検知中間部室温、及び検知下部室温に基づいて決定されるものであり、これら室温の平均値等からなる。なお、前記送風手段4の運転は下向き運転又は上向き運転のいずれであってもよいものとする。また、判定(5)と判定(10)の両者が肯定された場合は、予め決められた優先順位により、判定(5)に応じた制御又は判定(10)に応じた制御のいずれか一方が実行される。
【0063】
また、判定(11)で肯定された場合、検知壁面温度と検知中間部室温の差に応じて加熱手段2の暖房温度が上げられ、この状態で加熱手段2が運転される。例えば加熱手段2の暖房温度は検知壁面温度と検知中間部室温の差の半分の値だけ上げられる。また、床暖房手段3は前回判定後の運転状態で維持される。
【0064】
なお、判定(1)〜(11)のうち、肯定する判定が複数ある場合は、予め設定された順序に従って、肯定した各判定に応じた制御方法の変更が行われ、最終的に変更された制御方法により加熱手段2、床暖房手段3、送風手段4が制御される。
【0065】
例えば、目標快適度が0、検知快適度が−0.8、検知上部室温が26℃、検知中間部室温が20℃、検知下部室温が20℃、検知床面温度が20℃、現在の加熱手段2の暖房温度(設定温度)が22℃であり、判定(6)、(9)、(10)が肯定されたとする。この場合は、送風手段4は判定(10)に従って送風手段4が攪拌運転されることが決定される。また、加熱手段2の暖房温度は、まずは判定(6)に従って20℃に一旦変更される。次に判定(9)に従って所定温度T13(2℃)上げられ、22℃に変更される。次に判定(10)に従って加熱手段2の暖房温度は予想温度22℃(=(26℃+20℃+20℃)/3)に設定される。従って、この場合は、暖房温度を22℃として加熱手段2が運転される。また、床暖房手段3は判定(6)に従って26℃に設定される。
【0066】
本実施形態の暖房システムでは、判定(1)〜(11)に基づく制御により、加熱手段2及び床暖房手段3に送風手段4を加えた三者を連携制御して検知快適度を目標快適度に近づけることができる。このため、連携制御運転時においては、判定(10)に基づく制御のように送風手段4により対象室1内の空気を上下に攪拌して対象室1内の温度を均一にできる。従って、対象室1内の快適度を目標快適度近くに保ちながら、対象室1内の略全域を利用者にとって快適な温度環境にすることができ、また、加熱手段2及び床暖房手段3のエネルギー消費を抑えることができる。
【0067】
また、判定(10)に基づく制御では、検知上部室温と検知下部室温の温度差に基づいて送風手段4が制御されると共に、この送風手段4の制御によって想定される対象室1内の温度環境に応じて加熱手段2及び床暖房手段3の夫々が制御される。この制御により、検知上部室温と検知下部室温とに温度差が生じた場合に、送風手段4で対象室1内の空気を上下に攪拌し、対象室1内の温度を均一にできる。また、この場合、送風手段4の制御によって想定される対象室1内の温度環境に応じて加熱手段2の運転を制御するので、加熱手段2の運転によるエネルギー消費をさらに抑えることができる。
【0068】
また、判定(6)に基づく制御では、検知中間部室温と検知床面温度の組み合わせが予め設定された所定範囲内に収まるように加熱手段2及び床暖房手段3が制御される。このため、対象室1の室温と床面温度の両者をさらに利用者に適した温度にできる。
【0069】
また、検知快適度が目標快適度に近くても、室温と壁面温度に温度差があると、対象室1の壁面近くに居る利用者は壁面からの輻射により寒い又は暑いと感じる。しかし、判定(11)に基づく制御では、検知壁面温度と検知中間部温度との温度差が小さくなるように加熱手段2が制御される。このため、前記輻射による不快感を生じ難くすることができる。
【0070】
また、判定(5)に基づく制御では、検知室外空気温度が検知中間部室温に予め設定された所定温度を加えた値よりも高くなった場合に、送風手段4からなる室外空気取込手段により室外空気を対象室1内に取り込む制御を行う。これにより、対象室1の室温よりも温度が高い室外空気を対象室1内に取り込んで対象室1内の温度を高めることができ、エネルギー消費をより抑えることができる。なお、本実施形態では、検知室外空気温度が検知中間部室温に予め設定された所定温度を加えた値よりも高くなった場合に、室外空気を対象室1内に取り込むようにした。しかし、検知室外空気温度が検知中間部室温よりも高くなった場合に送風手段4で室外空気を対象室1内に取り込むようにしてもよい。また、本実施形態では、室外空気取込手段を送風手段4で構成したが、送風手段4とは別に室外空気取込手段を設けてもよい。また、判定(5)や前述した判定(6)に基づく制御では、検知中間部室温に基づいて加熱手段2や床暖房手段3、送風手段4を制御しているが、この検知中間部室温に代えて、検知中間部室温、検知上部室温、及び検知下部室温の三者の平均値等を採用してもよいものとする。
【0071】
また、加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4を連携制御する連携制御モードと、加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4の夫々を個別に操作する個別操作モードを備え、連携制御モードと個別操作モードを切り替える操作手段25を備えている。このため、操作手段25により個別操作モードに切り替えて、加熱手段2、床暖房手段3、及び送風手段4の夫々を単独で利用することができる。
【0072】
なお、本実施形態では、快適度をPMV値としたが、ET(Effective Temperature:有効温度)等のその他の快適性指標を快適度として検知するものであっても構わない。また、本実施形態では設定快適度と人体検知手段12の検知情報に基づいて目標快適度を決定したが、設定快適度を目標快適度としてもよいものとする。また、加熱手段2は対象室1の上部を加熱するものであれば、輻射暖房パネル等のその他の加熱手段で構成してもよい。また、送風手段4は対象室1内の天井側の空気を床側に送る機能又は床側の空気を天井側に送る機能のうちの少なくとも一の機能を有するものであればよい。また、送風手段4はパネル装置4aに限られるものではなく、天井扇等のその他の送風手段であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 対象室
2 加熱手段
3 床暖房手段
4 送風手段
5 制御手段
8a 上部室温検知手段
8b 下部室温検知手段
10 壁面温度検知手段
11 床面温度検知手段
25 操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象室の上部に設けられる加熱手段と、前記対象室の床暖房を行う床暖房手段と、前記対象室内の天井側の空気を床側に送る機能又は床側の空気を天井側に送る機能のうちの少なくとも一の機能を有する送風手段と、前記対象室内の快適度を検知する快適度検知手段と、この快適度検知手段で検知される快適度が設定された目標快適度に近づくように、前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段を連携制御する制御手段を備えたことを特徴とする暖房システム。
【請求項2】
前記対象室内の上部の室温を検知する上部室温検知手段と、前記対象室内の下部の室温を検知する下部室温検知手段を備え、前記制御手段は、前記上部室温検知手段で検知した対象室内の上部の室温と前記下部室温検知手段で検知した対象室内の下部の室温との温度差に基づいて送風手段を制御すると共に、この送風手段の制御によって想定される前記対象室内の温度環境に応じて前記加熱手段を制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の暖房システム。
【請求項3】
前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記対象室の床面温度を検知する床面温度検知手段を備え、前記制御手段は、前記室温検知手段で検知される室温及び前記床面温度検知手段で検知される床面温度の組み合わせが予め設定された所定範囲内に収まるように前記加熱手段及び床暖房手段を制御するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の暖房システム。
【請求項4】
前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記対象室の壁面温度を検知する壁面温度検知手段を備え、前記制御手段は、前記壁面温度検知手段で検知した壁面温度と前記室温検知手段で検知した室温との温度差が小さくなるように前記加熱手段を制御するものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項5】
前記対象室内に室外空気を取り込む室外空気取込手段と、前記対象室の室温を検知する室温検知手段と、前記室外空気の温度を検知する室外空気温度検知手段を備え、前記制御手段は、前記室外空気温度検知手段で検知した室外空気の温度が、前記室温検知手段で検知した室温又はこの室温に予め設定された所定温度を加えた値よりも高くなった場合に、前記室外空気取込手段により前記室外空気を前記対象室内に取り込むものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の暖房システム。
【請求項6】
前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段を連携制御する連携制御モードに加えて、前記加熱手段、床暖房手段、及び送風手段の夫々を個別に操作する個別操作モードを備え、前記連携制御モードと個別操作モードを切り替えるための操作手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−13402(P2012−13402A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153370(P2010−153370)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】