説明

暖房便座装置

【課題】電磁誘導を利用した暖房便座装置において均等な加熱状態を得る。
【解決手段】便座1の着座面側に配置した発熱体を底板上に配置した誘導コイルUで誘導加熱する暖房便座装置Sにおいて、誘導コイルUを、着座面の輪郭に沿って配設した主誘導コイルPと、主誘導コイルPの内部領域Rのうち幅寸法が広くなっている個所R1〜R3に配設した副誘導コイルQ1〜Q3とで構成する。内部領域Rの幅寸法が広くなっている個所では副誘導コイルQ1〜Q3の補助によって通電時の磁界を強化する。副誘導コイルの巻き数を適切に設定することで、各誘導コイルに対する通電量を個別に制御せず、直列に接続するだけで、均等加熱が可能であり、便座1の表面をむらなく暖められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導を利用した暖房便座装置に関し、均等な加熱状態あるいは所望に調節された加熱状態が得られるようにすることを目的とする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載される暖房便座装置は、便座の表面材の表面にアルミ箔より成る発熱体を配置し、表面材の裏面側に誘導コイルを配置し、誘導コイルに通電することで発熱体を誘導加熱することにより、便座表面を短時間で暖めることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−8859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される暖房便座は、便座の表面材が湾曲した形状であるため、その裏面に誘導コイルを配置する際、表面材の湾曲形状に合わせた形態に誘導コイルを製作する必要があり、製作が難しいという欠点がある。そこで、誘導コイルを表面材から離して、底板上に平面的に配置することが考えられる。しかし、この場合、便座表面の形状が特殊なため、コイルをどのように配置すれば便座の表面温度を均一にできるかが不明である。つまり、部位によって熱くなりすぎたり冷たかったりして、使用者に不快感を与えるおそれあるという問題が有った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、誘導加熱方式を利用した暖房便座装置において、便座表面温度の均一化または調節を可能とする手段の提供を目的とする。本発明の特徴とするところは、請求項1に記載する如く、便座の着座面側に導電性材料より成る発熱体が配置され、便座の底板上に誘導コイルが配置され、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座着座面の輪郭に沿って主誘導コイルを配設し、主誘導コイルの内部領域に副誘導コイルを配設すると共に、主誘導コイルと副誘導コイルとを直列に接続したことである。
【0006】
前記暖房便座において、便座表面における加熱しにくい個所を確実に暖めるため、請求項2に記載する如く、副誘導コイルを、主誘導コイルの内部領域における幅の広い個所に配設することが望ましい。
【0007】
さらに、便座表面の温度均一化又は最適化を図るため、請求項3に記載する如く、主誘導コイルの内部領域における複数個所に副誘導コイルを配設し、主誘導コイルの内部領域の幅寸法が広くなるほど、副誘導コイルの巻き数を多く設定する構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る暖房便座装置は、誘導加熱方式を採用した場合に、便座着座面の輪郭に沿って配設した主誘導コイルのみでは、発熱体を均一に加熱することが難しいため、主誘導コイルの内部領域における所要個所に副誘導コイルを配設し磁束を強化する。これにより、所要個所において発熱体の加熱量を高めて、便座表面の暖まりにくい個所を確実に昇温させることができる。また、主誘導コイルと副誘導コイルとを直列に接続したことにより、複数のコイルに対し個別に通電しないから、通電制御が簡単であり、誘導加熱回路の設計も容易になる。また誘導コイルを平坦な底板上に配置するから、コイルの配置作業が容易である。
【0009】
請求項2に記載するように、副誘導コイルを、主誘導コイルの内部領域における幅の広い個所に配設することにより、便座表面の暖まりにくいと予想される個所に対し、磁束を増強して確実に昇温させることができる。
【0010】
請求項3に記載するように、主誘導コイルの内部領域における複数個所に副誘導コイルを配設し、主誘導コイルの内部領域の幅寸法が広くなるほど副誘導コイルの巻き数が多くなるように構成した場合は、便座表面の暖めにくい個所ほど磁束が強くなるように設定される。よって、便座の表面温度を均一化又は最適化することができ、熱くなりすぎたり冷たかったりする部位が形成されて使用者に不快感を与えるおそれがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1に本発明に係る暖房便座装置Sの一例を示す。但し図面は、暖房便座装置Sの内部構造のうち、主として本発明に関連する部分を概略的に示すものである。暖房便座装置Sは、便座1と、便器(図示省略)の上面に設置される便座支持体10とから構成される。便座支持体10は、例えば箱状の形態を有し、その内部に、電源Wに接続され、電源Wから供給された電力を、後述の給電装置30へ送電する支持体側制御部C1が設けられる。支持体側制御部C1には、便座支持体10の側面に設けたスイッチ基板14が接続され、該スイッチ基板14の表面に設けたスイッチボタン(図示せず)を押すことにより、給電装置30への通電量を制御し、または給電装置30への通電を停止させる。また、便座支持体2が、人体検出手段・便蓋の自動開閉装置・音楽再生装置・温水洗浄装置・便器自動洗浄装置・脱臭装置などを備える場合は、前記制御部C1に、人体検出手段の人体検知信号やスイッチボタンの操作に基づいて、上記各装置の動作を制御する機能を持たせることができる。
【0012】
本例の便座1は、後端部の左右に所定間隔を置いて後方へ突出するように取付腕部2,2が設けられ、該取付腕部2,2の間に、便座支持体10の前面部に設けた膨出部11を挟持するように構成してある。そして、便座支持体10における膨出部11の左右側面から突出させた支持軸20,20で、左右の取付腕部2,2を支持することにより、便座1を揺動可能としている。なお便座1は、支持軸10から分離可能とする構造が採用されている。また支持軸20の一方に、便蓋を自動的に開き上げるための駆動モータMを設ける場合もある。
【0013】
便座1の内部には、便座側制御部C2と、誘導コイルU及び発熱体Dから成る加熱手段H(図2参照)と、温度センサ(図示せず)とが設けられる。制御部C2は、誘導コイルU及び温度センサが接続され、整流回路・高周波発生回路・制御回路を有し、後述する給電装置30から相互誘導方式により電力の供給を受け、この電力から高周波電流を生成するための整流器機能及びインバータ機能を備える。また、温度センサの検知温度信号に基づき、誘導コイルUへの通電量を調整し、あるいは異常昇温を検知したときに送電を停止させる機能を有している。
【0014】
図2に示す如く、発熱体Dは、便座1の着座面Tを形成する表面材1aの裏面側に配置される。他方、誘導コイルUは、発熱体Dの下方側で、基材である底板1b上に配置される。発熱体Dは電磁誘導により発熱する導電性材料で形成され、例えばアルミ蒸着、金属スパッタリング、銅メッキ等で形成した金属薄膜で形成される。あるいは、鉄・銅・アルミニウム等の金属や、これらを主体とする合金又は金属化合物などの導電性材料を板状・シート状・箔状の形態としたものでもよい。特にZn−Al合金は、展延性が良く加工性に優れている。さらには、金属紛や金属片を多量に混合した合成樹脂層で形成することも考えられる。いずれも、表面材1aの裏面に密接するよう設けられる。誘導コイルUと発熱体Dとの間の空間は、所望により適宜の断熱材で充填してもよい。
【0015】
便座1と便座支持体10との間には、相互誘導作用を利用することにより、無配線方式で便座支持体10から便座1へ電力を送給する給電装置30が設けられる。給電装置30は、便座支持体10の膨出部11に配置した送電部31と、便座1の後端部に配置される受電部32とから構成される。送電部31は、一次コイルL1を外周に巻き付けたコ字状の一次側コアK1から成り、支持体側制御部C1に接続される。受電部32は、二次コイルL2を巻き付けたコ字状の二次側コアK2から成り、便座側制御部C2と接続される。一次側コアK1及び二次側コアK2の配置は、便座1が伏倒位置(使用者が着座可能である位置)に在るとき、端面どうしが近接対向するように設定される。従って、便座1が伏倒位置に在るときに、支持体側制御部C1から一次コイルL1へ適当な周波数の交流電力を与えると、相互誘導作用により二次コイルL2に起電力が発生し、この電力が便座側制御部C2へ供給される。便座側制御部C2は、この電力を高周波電流に変換して、誘導コイルUへ送電する。その結果、電磁誘導作用により発熱体Dが加熱され、便座1表面を昇温させる。
【0016】
なお図示は省略したが、便座1を揺動可能に支持する支持軸20を、一次コイル及び二次コイルを巻き付けるコアに利用して給電装置30を構成し、便座位置にかかわらず、常時、電力供給可能とする場合もある。
【0017】
ところで本発明に係る暖房便座装置Sは、便座1の底板上1b上に配設される誘導コイルUを、便座1の着座面Tを平面視したときの輪郭に沿って配設した主誘導コイルPと、主誘導コイルPの内部領域Rのうち、幅寸法が広くなっている個所R1〜R3に配設した副誘導コイルQ1〜Q3とで構成したところを特色とする。具体的には、本例の便座1にあっては、中央開口部1c周囲に形成される着座面Tのうち、後方側の中央領域が最も幅広くなっており(図2(B)参照)、当該領域から前方へ向かうに従って、幅寸法が小さくなるよう形成されている(図2(A)参照)。主誘導コイルPは、着座面Tの輪郭に沿って配設したから、通電したときに着座面Tを全体的に加熱するものの、着座面Tの幅が広い個所では、幅の狭い個所に比べて磁界強度が弱くなり、表面材1aを十分に昇温させることができない。
【0018】
そこで本発明では、着座面Tの幅が広くなっている個所に対応させて、主誘導コイルPの内部領域Rに、副誘導コイルQ1〜Q3を配設する構成を採用した。すなわち、内部領域Rにおける後方中央領域R1と、当該領域R1からやや前方へ移動した左右領域R2,R3とに、それそれ副誘導コイルQ1〜Q3を配設する。これにより、図2(A)に示すように、着座面Tの幅寸法が狭い個所は主誘導コイルPだけによる加熱とし、図2(B)に示すように内部領域Rの幅寸法が広くなっている個所では、副誘導コイルQ1〜Q3の補助によって通電時の磁界を強化する。その結果、主誘導コイルPだけでは十分に昇温することができなかった領域について、確実に加熱することができ、便座1表面の温度を均一化することが可能となる。
【0019】
なお副誘導コイルQ1〜Q3の配置については、図2(B)に示すように、その全体が主誘導コイルPの内部領域Rに収まるよう配置する態様のほか、図2(C)に示す如く、その一部又は全部が主誘導コイルPと上下に重なるように配置する態様も可能である。また、便座1の表面温度を均一化又は最適化するためには、副誘導コイルQ1〜Q3は、その大半が主誘導コイルPの内部領域R内に収まっていればよく、主誘導コイルPの外側へ一部がはみ出るように設計することも妨げない。
【0020】
また本発明では、主誘導コイルPと各副誘導コイルQ1〜Q3とを直列に接続しているから、副誘導コイルQ1〜Q3それぞれの巻き数を、主誘導コイルPの内部領域Rにおける幅寸法に応じて増減させることにより、通電時における発熱体Dの発熱量が、全域でなるべく均等化されるよう設定することが可能である。例えば図3は、本発明に係る誘導コイルUの捲き形態を模式的に表したものであるが、主誘導コイルPの内部領域Rの幅が広い領域R1(幅寸法W1)では、副誘導コイルQ1の捲き数N1を多くし、内部領域Rの幅が狭い領域R2(幅寸法W2<W1)では、副誘導コイルQ2の捲き数N2を少なくする(N1>N2)。具体例を示せば、主誘導コイルPの巻き数N=30、第1の副誘導コイルQ1の巻き数N1=15、第2の副誘導コイルQ2の巻き数N2=5とすれば、領域R1については、捲き数N+N1=45の誘導コイルで励磁するのに等しく、領域R2については、捲き数N+N2=35の誘導コイルで励磁するのに等しくなる。
【0021】
要するに、主誘導コイルPの内部領域Rに副誘導コイルを配設するに際しては、内部領域Rの幅寸法に応じて副誘導コイルの巻き数を適切に設定することで、各誘導コイルに対する通電量を個別に制御しなくても、直列に接続して同時に通電するだけで、発熱体Dを均等に加熱することが可能である。それ故、便座1の表面が均一にむらなく暖められるから、熱すぎたり冷たかったりする部位を生じさせて使用者に不快感を与えるおそれがなくなる。
【0022】
前述した実施形態は、主誘導コイルPの内部領域Rにおける幅の広い個所だけに副誘導コイルを配設したものであるが、内部領域R全体にわたり均等に副誘導コイルを配設し、幅寸法に応じて副誘導コイルの巻き数だけを調節することにより、便座1表面を均等加熱することも考えられる。あるいは、所望個所について副誘導コイルの巻き数を多く設定することにより、所望個所(例えば便座の後方中央部)だけを周囲より暖かくする態様も可能である。
【0023】
本発明に係る暖房便座装置Sが採用する加熱方式は、電磁誘導を利用するものであるため、発熱体Dの昇温は短時間になされ、通電を始めれば即座に便座1が暖かくなる。従って、例えば便座支持体10に人体検知センサーを設け、不使用時は通電を停止しておき、使用者を検知したときに誘導コイルUに通電するよう構成しておけば、節電効果を得ることが可能である。
【0024】
例示した実施形態では、無配線方式の給電装置を採用したが、便座1と便座支持体10との間に給電用配線を設けてもよく、給電方式は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るものであって、暖房便座装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るものであって、図(A)は、図1のa−a線における便座の断面図、図(B)は、図1のb−b線における便座の断面図、図(C)は、図1のb−b線における異なる態様の便座の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るものであって、誘導コイルの巻き形態を説明する概略平面図である。
【符号の説明】
【0026】
S…暖房便座装置 C1…支持体側制御部 C2…便座側制御部 D…発熱体 P…主誘導コイル Q1〜Q3…副誘導コイル R…主誘導コイルの内部領域 U…誘導コイル H…加熱手段 W…電源 1…便座 1a…表面材 1b…底板 2…取付腕部 10…便座支持体 11…膨出部 14…スイッチ基板 20…支持軸 30…給電装置 K1…一次側コア K2…二次側コア L1…一次コイル L2…二次コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の着座面側に導電性材料より成る発熱体が配置され、便座の底板上に誘導コイルが配置され、誘導コイルに通電することにより発熱体を誘導加熱するようになされた暖房便座装置において、便座着座面の輪郭に沿って主誘導コイルが配設され、主誘導コイルの内部領域に副誘導コイルが配設され、主誘導コイルと副誘導コイルとは直列に接続されていることを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
副誘導コイルは、主誘導コイルの内部領域における幅の広い個所に配設した請求項1に記載の暖房便座装置。
【請求項3】
主誘導コイルの内部領域における複数個所に副誘導コイルが配設され、主誘導コイルの内部領域の幅寸法が広くなるほど、副誘導コイルの巻き数を多く設定した請求項2に記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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