説明

暖房便座装置

【課題】便器の使用終了を迅速に検知することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、着座面を加熱する加熱源を有する便座と、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、前記着座面を覆う便蓋と、前記便座の前方の人体を検知すると検知信号を出力する前方検知センサと、前記便座の側方の人体を検知すると検知信号を出力する側方検知センサと、前記便蓋を閉じる便蓋駆動装置と、前記前方検知センサおよび前記側方検知センサの両方が検知信号を出力しないと、前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じる制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暖房便座の省エネルギー化を図るためには、例えば、便蓋を閉じて便座からの放熱を防ぐことが有効な手段の1つである。そこで、便器の使用後に便蓋を自動的に閉じる便器電装品がある(特許文献1)。しかしながら、便器電装品や暖房便座装置が備える人体検知手段により便器の使用終了を精度良く検知することは困難である。そのため、人体検知手段が人体を検知しなくなってから、約数分程度が経過した後に便蓋を閉じている。これによれば、使用者が便座から離座した後に迅速に便蓋を閉じることはできず、その間に便座からの放熱が進み、エネルギーロスが生じたり、着座面が冷えるなどの問題がある。
【0003】
また、ロータンクの前面に焦電型センサを設置することにより、便器に対する接近方向の如何に拘わらず人体を検知可能な局部洗浄装置付便器がある(特許文献2)。しかしながら、焦電型センサにより静止している人体を検知することは、技術的に困難であるため、便器側方に静止している人体を検知することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−156572号公報
【特許文献2】実開平6−14274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便器の使用終了を迅速に検知することができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ケーシングと、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、着座面を加熱する加熱源を有する便座と、前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、前記着座面を覆う便蓋と、前記便座の前方の人体を検知すると検知信号を出力する前方検知センサと、前記便座の側方の人体を検知すると検知信号を出力する側方検知センサと、前記便蓋を閉じる便蓋駆動装置と、前記前方検知センサおよび前記側方検知センサの両方が検知信号を出力しないと、前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じる制御部と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、便座あるいは便器の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断することができる。そのため、便器の使用終了をより迅速に検知し、便蓋を閉じることができる。また、便座からの放熱やエネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。また、便座の着座面の冷えを抑制することができ、快適な暖房便座を提供することができる。
【0007】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記前方検知センサが、前記便座の前方近傍にいる人体を検知した際の前記検知信号を出力している状態から前記検知信号を出力しない状態に遷移するまでの時間が所定時間以内である場合には、前記制御部は、前記側方検知センサを起動させて前記便座の側方の人体を検知可能とすることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、側方検知センサを通常「OFF」に設定し、前方検知センサが、便座の前方に人がいる状態を示す第2の出力電圧(検知信号出力状態)から便座の前方に人がいない状態を示す第1の出力電圧(検知信号非出力状態)になるまでの時間が所定時間以内であるときに、側方検知センサを起動させて便座の側方確認を行うことができる。これによれば、前方検知センサおよび側方検知センサを常時起動させておく必要はないため、暖房便座装置の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0008】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記前方検知センサの出力電圧が、前記便座の前方近傍にいる人体を検知した際の前記検知信号を出力している状態から前記検知信号を出力しない状態に遷移するまでの時間が所定時間よりも長い場合には、前記制御部は、前記側方検知センサを起動させることなく前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、制御部は、前方検知センサが、第2の出力電圧から第1の出力電圧になるまでの時間により、使用者がトイレ室から退室したか、便座あるいは便器の側方に回り込んだか、を判断する。そして、制御部は、使用者がトイレ室から退室したと判断すると、側方検知センサを起動させることなく便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じる。そのため、暖房便座装置の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0009】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記側方検知センサは、下方に向けて検知光を投光する光センサであることを特徴とする暖房便座装置である。
この暖房便座装置によれば、側方検知センサは、便座あるいは便器の側方に居る人体の姿勢にかかわらず、その人体を検知できる。そのため、便座あるいは便器の側方に人体が存在するか否かをより正確に判断することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、便器の使用終了を迅速に検知することができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】前方検知センサおよび側方検知センサの検知範囲を例示する平面模式図である。
【図3】前方検知センサの出力電圧を例示するグラフ図である。
【図4】使用者がトイレ室に入室し、そのまま退室するときの状況を説明するための平面模式図である。
【図5】本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図6】使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けするように移動するときの状況を説明するための平面模式図である。
【図7】本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図8】使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けし、便座の側方に移動するときの状況を説明するための平面模式図である。
【図9】本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図10】使用者がトイレ室に入室し、そのまま退室するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図11】使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けするように移動するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図12】使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けし、便座の側方に移動するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【図13】本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態の変形例を表す拡大模式図である。
【図14】本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態の他の変形例を表す拡大模式図である。
【図15】本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態のさらに他の変形例を表す拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0013】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。暖房便座装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。また、便蓋300は、便座200の上方を覆うことができる。
【0014】
ケーシング400は、便座200の前方の人体を検知すると検知信号を出力する前方検知センサ420と、便座200の側方の人体を検知すると検知信号を出力する側方検知センサ430と、を内蔵する。図1に表した暖房便座装置100では、ケーシング400の右側に設けられ便座200の右側方の人体を検知する側方検知センサ430を表しているが、ケーシング400の左側には、便座200の左側方の人体を検知する側方検知センサ430が設けられている。つまり、側方検知センサ430は、便座200の右側方の人体を検知する右側方検知センサ430aと、便座200の左側方の人体を検知する左側方検知センサ430bと、を有する(図2参照)。
【0015】
前方検知センサ420および側方検知センサ430としては、例えば、焦電センサや、測距センサなどの赤外線投光式の光センサ、超音波センサ、またはドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどを用いることができる。また、ケーシング400は、便座200への人体の着座を検知する図示しない着座検知センサや、トイレ室への人体の入室を検知する図示しない入室検知センサなどを内蔵してもよい。この場合には、着座検知センサや入室検知センサなどは、例えば、前方検知センサ420と同様の位置に設けられる。
【0016】
また、ケーシング400は、便蓋300を閉じる便蓋駆動装置450を内蔵する。この便蓋駆動装置450は、便蓋300を閉じるだけではなく、便蓋300を開閉できる装置であってもよい。便蓋駆動装置450は、例えば、便蓋300がケーシング400に対して軸支された位置の近傍に設置され、制御部410からの信号により便蓋300を閉止できる。つまり、ケーシング400内に設けられた制御部410は、前方検知センサ420および側方検知センサ430の検知結果に基づいて便蓋駆動装置450の駆動を制御し、便蓋300を閉じることができる。
【0017】
便座200は、ヒータ(加熱源)210を内蔵する。このヒータ210は、通電されて発熱することにより、便座200を暖めることができる。つまり、ヒータ210は、便座の表面(着座面)に伝えられる熱を発生する。ヒータ210の通電量は、制御部410により制御される。なお、図1に表した便座200では、1本のヒータ210が往復するように設置されているが、ヒータ210の設置形態や設置数はこれだけに限定されず、例えば2本以上の複数のヒータ210が設置されていてもよい。
【0018】
ヒータ210としては、いわゆる「チュービングヒータ」や、「シースヒータ」、「ハロゲンヒータ」、「カーボンヒータ」などを用いることができる。また、ヒータ210の形状は、ワイヤ状やシート状やメッシュ状などのいずれであってもよい。
【0019】
また、便座200は、その表面近傍に、弾力性(クッション性)を有するクッション部を有していてもよい。クッション部は、例えばPP(polypropylene:ポリプロピレン)等の樹脂から形成された基材よりも柔らかい材料により形成され、使用者が便座200に着座すると、その体重に応じて変形して体重を分散させる。これによれば、クッション部は、基材の上に設けられクッション性を有するため、使用者が便座200に座ったときの座り心地を向上させることができる。さらに、便座200は、放熱を抑制可能な断熱材を内部に有していてもよい。
【0020】
なお、ケーシング400は、衛生洗浄装置としての機能部を併設してもよい。すなわち、ケーシング400は、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などを適宜備えてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0021】
また、図1に表したトイレ装置の洗浄機構は、ケーシング400の後方に設けられたロータンク850(図2参照)を用いる、いわゆる「ロータンク式」でもよいし、ロータンク850を用いない、いわゆる「水道直圧式」であってもよい。
【0022】
図2は、前方検知センサおよび側方検知センサの検知範囲を例示する平面模式図である。
また、図3は、前方検知センサの出力電圧を例示するグラフ図である。
なお、図3は、前方検知センサとして測距センサを使用した場合の出力電圧を例示しており、図3に表したグラフ図の縦軸は、前方検知センサの出力電圧を表しており、図3に表したグラフ図の横軸は、前方検知センサからの距離を表している。
【0023】
前方検知センサ420の検知範囲は、図2に表した前方検知範囲(以下、単に「検知範囲」と称する)421のように、便座200の前方である。すなわち、前方検知センサ420は、トイレ室の扉10から入室し便座200の前に移動してきた使用者、あるいは便座200の前に立った使用者を検知できる。
また、ケーシング400の右側に設けられた右側方検知センサ430aの検知範囲は、図2に表した右側方検知範囲(以下、単に「検知範囲」と称する)431aのように、便座200の右側方である。一方、ケーシング400の左側に設けられた左側方検知センサ430bの検知範囲は、図2に表した左側方検知範囲(以下、単に「検知範囲」と称する)431bのように、便座200の左側方である。すなわち、側方検知センサ430は、例えば掃除などにより便座200の側方に移動してきた使用者、あるいは便座200の側方に立った使用者を検知できる。
【0024】
前方検知センサ420が人体や衣服などの対象物を検知したときの出力電圧は、図3に表したグラフ図のように、前方検知センサ420に近づくにつれて大きくなり、前方検知センサ420近傍に設けられたセンサ窓の位置で最大となる。そして、センサ窓が設けられた位置からさらに前方検知センサ420に近づくと、前方検知センサ420の出力電圧は低下する。これは、対象物が前方検知センサ420に近づきすぎると、前方検知センサ420は、投光素子から投光され対象物で反射された赤外線(検知光)を受光素子において受光できない、あるいは受光しにくくなるためである。
【0025】
但し、前方検知センサ420がケーシング400に内蔵された状態においては、人体あるいは衣服などの対象物がセンサ窓よりも前方検知センサ420に近づくことはない。そのため、前方検知センサ420の出力電圧は、図3に表したセンサ窓よりも遠い距離における出力電圧となる。そして、使用者(人体)が便座200の前にいるときの前方検知センサ420の出力電圧(検知信号)は、図3に表した着座位置における出力電圧(第3の出力電圧)と、便器800の先端(前端)から約30cm前方の位置における出力電圧と、の間の出力電圧のいずれかとなる。
【0026】
ここで、前方検知センサ420は、便座200の前方を検知するため、トイレ室の扉10や壁などを検知し、それを便座200の前にいる人体であると誤検知するおそれがある。そのため、図3に表したように、例えば便器800の先端から約30cm前方の位置における出力電圧よりも低い出力電圧を非検知電圧(非検知信号:第1の出力電圧)とする閾値を設定することが好ましい。これによれば、制御部410は、前方検知センサ420がトイレ室の扉10や壁などを検知しても、その出力電圧や検知信号などを排除できるため、前方検知センサ420による誤検知を抑制できる。
【0027】
また、側方検知センサ430が人体や衣服などの対象物を検知したときの出力電圧(検知信号)は、前方検知センサ420の出力電圧と同様に、側方検知センサ430に近づくにつれて大きくなり、側方検知センサ430近傍に設けられたセンサ窓の位置で最大となる。ここで、側方検知センサ430は、便座200の側方を検知するため、トイレ室の壁面20a、20bを検知し、それを便座200の側方にいる人体であると誤検知するおそれがある。あるいは、便座200の側方に例えば観賞用植物などの物が置かれた場合には、側方検知センサ430は、それを便座200の側方にいる人体であると誤検知するおそれがある。
【0028】
側方検知センサ430からみた壁面20a、20bなどの位置は、前方検知センサ420からみた扉10などの位置よりも接近しているため、側方検知センサ430は、前方検知センサ420よりも誤検知するおそれが大きい。そのため、側方検知センサ430の閾値は、前方検知センサ420の閾値よりも大きいことが好ましい。すなわち、側方検知センサ430により近い位置における出力電圧を排除できる閾値を設定することが好ましい。これによれば、制御部410は、側方検知センサ430がトイレ室の壁面20a、20bなどを検知しても、その出力電圧や検知信号などを排除できるため、側方検知センサ430による誤検知を抑制できる。
【0029】
あるいは、制御部410は、側方検知センサ430の検知信号により壁面20a、20bなどの静止物の位置を学習する学習機能を有していてもよい。つまり、制御部410は、側方検知センサ430から離間した位置における出力電圧が所定時間継続すると、その位置には壁面20a、20bなどの静止物が存在すると学習してもよい。これによれば、暖房便座装置100を設置した後に、例えば観賞用植物などの物が置かれた場合などにも柔軟に対応することができる。
【0030】
そして、制御部410は、前方検知センサ420および側方検知センサ430の両方が検知信号を出力しなくなる(人体を検知しなくなる)と、あるいは前方検知センサ420および側方検知センサ430の両方の出力電圧が非検知電圧(第1の出力電圧)になると、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる。このとき、前方検知センサ420は便座200の前方に存在する人体を検知し、側方検知センサ430は便座200の側方に存在する人体を検知するため、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。そのため、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。これによれば、本実施形態の暖房便座装置100は、便座200からの放熱やエネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。また、便座200の着座面の冷えを抑制することができ、快適な暖房便座を提供することができる。
【0031】
次に、本実施形態にかかる暖房便座装置の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、使用者がトイレ室に入室し、そのまま退室するときの状況を説明するための平面模式図である。
図5は、本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【0032】
本具体例では、使用者は、図4に表したように、トイレ室の扉10から入室し、例えば用便を済ませてそのまま扉10から退室する。すなわち、使用者は、便座200の前方の検知範囲421内から横抜けするように移動したり、便座200の側方に移動したりせず、便座200の前方の扉10から退室する。
【0033】
この場合において、まず、使用者がトイレ室に入室し(タイミングt1)、前方検知センサ420の出力電圧が非検知電圧(閾値)よりも大きくなると、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を開く(タイミングt2)。そして、使用者は、便座200の前方近傍で脱衣を行い(タイミングt3〜t4)、便座200に着座する(タイミングt4〜t5)。続いて、使用者は、用便を済ませると、便座200から離座し(タイミングt5〜t6)、便座200の前方近傍で着衣を行う(タイミングt6〜t7)。
【0034】
ここで、図3に関して前述したように、使用者が脱衣および着衣を行うとき、すなわち便座200の前方近傍にいるときの前方検知センサ420の出力電圧(第2の出力電圧)は、使用者が便座200に着座しているときの前方検知センサ420の出力電圧(第3の出力電圧)よりも小さい。なお、便座200への使用者の着座を検知するセンサは、前方検知センサ420であってもよいし、前方検知センサ420とは別体として設けられた図示しない着座検知センサであってもよい。すなわち、図5に表した着座時(タイミングt4〜t5)の出力電圧は、前方検知センサ420の出力電圧を表したものであり、使用者の便座200への着座を前方検知センサ420により検知したことを意味しているわけではない。
【0035】
続いて、使用者が便座200の前方近傍から離れ、トイレ室の扉10から退室すると、前方検知センサ420の出力電圧は、図5に表したように、徐々に低下する(タイミングt7〜t8)。つまり、使用者が便座200の前方にある扉10から退室すると、前方検知センサ420の出力電圧は、第2の出力電圧から非検知電圧に徐々に低下する。これは、使用者が、前方検知センサ420の検知範囲421内において、前方検知センサ420から徐々に遠ざかるためである。
【0036】
ここで、前方検知センサ420の出力電圧が第2の出力電圧から非検知電圧(第1の出力電圧)に低下するまでにかかる時間(退室動作時間)T1が、所定時間(例えば、約1秒程度)よりも長いときには、制御部410は、その後に便蓋300を閉じる(タイミングt9)。より具体的には、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)よりも長いときには、制御部410は、側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断することなく(便座200の側方確認を行うことなく)、適宜設定された便蓋閉動作開始時間T2の経過後に便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt9)。
【0037】
これによれば、制御部410は、退室動作時間T1が所定時間よりも長いときには、使用者が便座200の前方にある扉10から退室したと判断する。そして、制御部410は、より早いタイミングで便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を閉じる。つまり、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。これによれば、本実施形態の暖房便座装置100は、便座200からの放熱やエネルギーロスを低減し、省エネルギー化を図ることができる。また、便座200の着座面の冷えを抑制することができ、快適な暖房便座を提供することができる。
【0038】
なお、トイレ室によっては、扉10が、壁面20aあるいは壁面20bに設置されている場合がある。この場合には、使用者がトイレ室の扉10から退室すると、前方検知センサ420の出力電圧は、本具体例の場合よりも早く低下する。これについては、図6および図7に関して後述する。
【0039】
図6は、使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けするように移動するときの状況を説明するための平面模式図である。
また、図7は、本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【0040】
本具体例では、使用者は、図6に表したように、トイレ室の扉10から入室し、例えばトイレ室内の掃除を行うために前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けするように、便座200の前方から移動する。あるいは、トイレ室の扉10が壁面20a、20bに設置されている場合には、使用者は、トイレ室から退室するために前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けするように退室することになる。すなわち、使用者は、便座200の側方に移動することなく便座200の前方から横に移動する。
【0041】
この場合において、まず、タイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作については、図5に関して前述したタイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作と同様である。続いて、使用者が、前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けするように便座200の前方から移動すると、前方検知センサ420の出力電圧は、図7に表したように、図5に表した具体例よりも早く低下する(タイミングt7〜t8)。つまり、使用者が便座200の前方から横に移動すると、前方検知センサ420の出力電圧は、使用者が便座200の前方にある扉10から退室するときよりも早く低下する。これは、使用者(人体)が、便座200の前方にある扉10から退室するときよりも早く前方検知センサ420の検知範囲421外に移動するためである。
【0042】
そのため、本具体例における退室動作時間T1は、図5に表した具体例における退室動作時間T1よりも短い。そこで、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには、制御部410は、便座200の側方確認、すなわち側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断する(タイミングt8)。そして、前方検知センサ420の出力電圧が検知信号の電圧レベルから非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、前方検知センサ420および側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧であるときには、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt9)。
【0043】
ここで、側方非検知確定時間T3は、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けし、便座200の側方に移動して側方検知センサ430の検知範囲431a、431b内に移動するまでの時間を考慮して設定された推定時間である。あるいは、前方検知センサ420および側方検知センサ430が人体を検知できない範囲(検知範囲421、431a、431b外の範囲)に使用者が移動し、前方検知センサ420および側方検知センサ430の少なくともいずれかの検知範囲内に使用者が再び移動するまでの時間を考慮して設定された推定時間である。
【0044】
これによれば、制御部410は、退室動作時間T1が所定時間以内であるときには、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けしたと判断し、便座200の側方確認を行う。そして、制御部410は、側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、前方検知センサ420および側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧であるときには、便蓋駆動装置450を駆動し便蓋300を閉じる。そのため、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。したがって、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。また、その他の効果についても、図4および図5に関して前述した前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
図8は、使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けし、便座の側方に移動するときの状況を説明するための平面模式図である。
また、図9は、本具体例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
【0046】
本具体例では、使用者は、図8に表したように、トイレ室の扉10から入室し、例えばトイレ室内の掃除を行うために前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けし、便座200の側方に移動する。すなわち、使用者は、用便を済ませてそのまま退室したりせずに、便座200の側方に回り込む。
【0047】
この場合において、まず、タイミングt1〜t8における暖房便座装置100の動作については、図7に関して前述したタイミングt1〜t8における暖房便座装置100の動作と同様である。つまり、本具体例における退室動作時間T1は、図5に表した具体例における退室動作時間T1よりも短い。そこで、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには、制御部410は、便座200の側方確認、すなわち側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断する(タイミングt8)。
【0048】
そして、前方検知センサ420の出力電圧が検知信号の電圧レベルから非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、側方検知センサ430の出力電圧が非検知信号の電圧レベルよりも大きくなり検知信号の電圧レベルになると(タイミングt9)、制御部410は、便蓋300を開いた状態に維持する(タイミングt9〜t12)。続いて、使用者が、便座200の側方から移動し、側方検知センサ430の検知範囲431a、431b外に移動すると、制御部410は、便座200の側方確認を再び行う(タイミングt12)。そして、側方検知センサ430の出力電圧が非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、前方検知センサ420および側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧であるときには、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt13)。
【0049】
これによれば、制御部410は、退室動作時間T1が所定時間以内であるときには、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けしたと判断し、便座200の側方確認を行う。そして、側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧よりも大きくなると、制御部410は、便座200の側方に使用者がいると判断し、便蓋300を開いた状態に維持する。そのため、使用者が例えばトイレ室内を掃除している場合などに、便蓋300が不意に閉じることを抑制することができる。つまり、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。したがって、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。また、その他の効果についても、図4および図5に関して前述した前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0050】
以上説明した暖房便座装置の動作の具体例では、制御部410は、側方検知センサ430を常時「ON」に設定しているが、これだけに限定されず、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定していてもよい。この場合には、制御部410は、退室動作時間T1が所定時間以内であるときには、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けしたと判断し、側方検知センサ430を「ON」に設定し便座200の側方確認を行う。これによれば、前方検知センサ420および側方検知センサ430を常時「ON」に設定しておく必要はないため、暖房便座装置100の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。以下、制御部410が側方検知センサ430を通常「OFF」に設定している具体例について、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
図10は、使用者がトイレ室に入室し、そのまま退室するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
なお、図10は、図4および図5に関して前述した具体例の変形例であり、本変形例の状況は、図4に表した状況と同様である。
【0052】
本変形例において、まず、タイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作については、図5に関して前述したタイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作と同様である。但し、本変形例の制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定している。そのため、図10に表したタイミングt1〜t7において、側方検知センサ430への通電は「OFF」である。
【0053】
続いて、使用者が便座200の前方近傍から離れ、トイレ室の扉10から退室すると、前方検知センサ420の出力電圧は、徐々に低下する(タイミングt7〜t8)。そして、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)よりも長いときには、制御部410は、使用者が便座200の前方にある扉10から退室したと判断し、側方検知センサ430を「OFF」の状態に維持する(タイミングt8)。続いて、制御部410は、側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断することなく(便座200の側方確認を行うことなく)、適宜設定された便蓋閉動作開始時間T2の経過後に便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt9)。
【0054】
つまり、図2および図3に関して前述した「前方検知センサ420および側方検知センサ430の両方が検知信号を出力しない」という範囲には、本願明細書において、「側方検知センサ430が「OFF」の状態に維持され、前方検知センサ420は「ON」の状態に維持されて非検知信号の電圧レベルを出力する結果、前方検知センサ420および側方検知センサ430の両方の出力電圧が非検知電圧になる」という範囲も含まれるものとする。
【0055】
これによれば、制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定し、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)よりも長いときには側方検知センサ430を「OFF」の状態に維持する。そのため、側方検知センサ430を常時「ON」に設定しておく必要はなく、暖房便座装置100の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。また、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。さらに、その他の効果についても、図4および図5に関して前述した前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0056】
図11は、使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けするように移動するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
なお、図11は、図6および図7に関して前述した具体例の変形例であり、本変形例の状況は、図6に表した状況と同様である。
【0057】
本変形例において、まず、タイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作については、図5に関して前述したタイミングt1〜t7における暖房便座装置100の動作と同様である。但し、本変形例の制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定している。そのため、図10に表したタイミングt1〜t7において、側方検知センサ430への通電は「OFF」である。
【0058】
使用者が、前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けするように便座200の前方から移動すると、前方検知センサ420の出力電圧は、使用者が便座200の前方にある扉10から退室するときよりも早く低下する(タイミングt7〜t8)。そして、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには、制御部410は、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けしたと判断し、側方検知センサ430を「OFF」から「ON」に切り替える(タイミングt8)。これと同時にあるいはこの後に、制御部410は、便座200の側方確認、すなわち側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断する(タイミングt8)。
【0059】
そして、前方検知センサ420の出力電圧が非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、前方検知センサ420および側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧であるときには、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt9)。続いて、制御部410は、便蓋300を閉じた後に、側方検知センサ430を「ON」から「OFF」に切り替え、通常「OFF」に設定する(タイミングt10)。
【0060】
これによれば、制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定し、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには側方検知センサ430を「OFF」から「ON」に切り替える。そのため、側方検知センサ430を常時「ON」に設定しておく必要はなく、暖房便座装置100の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。また、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。したがって、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。また、その他の効果についても、図4および図5に関して前述した前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0061】
図12は、使用者がトイレ室に入室し、便座の前方の検知範囲内から横抜けし、便座の側方に移動するときの変形例にかかる暖房便座装置の動作を表すタイミングチャートである。
なお、図12は、図8および図9に関して前述した具体例の変形例であり、本変形例の状況は、図8に表した状況と同様である。
【0062】
本変形例において、まず、タイミングt1〜t8における暖房便座装置100の動作については、図11に関して前述したタイミングt1〜t8における暖房便座装置100の動作と同様である。そして、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには、制御部410は、使用者が前方検知センサ420の検知範囲421内から横抜けしたと判断し、側方検知センサ430を「OFF」から「ON」に切り替える(タイミングt8)。これと同時にあるいはこの後に、制御部410は、便座200の側方確認、すなわち側方検知センサ430の検知結果(出力電圧)を判断する(タイミングt8)。
【0063】
そして、前方検知センサ420の出力電圧が非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧よりも大きくなると(タイミングt9)、制御部410は、便蓋300を開いた状態に維持する(タイミングt9〜t12)。続いて、使用者が、便座200の側方から移動し、側方検知センサ430の検知範囲431a、431b外に移動すると、制御部410は、便座200の側方確認を再び行う(タイミングt12)。そして、側方検知センサ430の出力電圧が非検知信号の電圧レベルになってから適宜設定された側方非検知確定時間T3が経過するまでの間に、前方検知センサ420および側方検知センサ430の出力電圧が非検知電圧であるときには、制御部410は、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる(タイミングt13)。続いて、制御部410は、便蓋300を閉じた後に、側方検知センサ430を「ON」から「OFF」に切り替え、通常「OFF」に設定する(タイミングt14)。
【0064】
これによれば、制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定し、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときには側方検知センサ430を「OFF」から「ON」に切り替える。そのため、側方検知センサ430を常時「ON」に設定しておく必要はなく、暖房便座装置100の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。また、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断することができ、使用者が例えばトイレ室内を掃除している場合などに、便蓋300が不意に閉じることを抑制することができる。したがって、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。また、その他の効果についても、図4および図5に関して前述した前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0065】
次に、本実施形態の側方検知センサ430の設置位置あるいは設置形態の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図13は、本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態の変形例を表す拡大模式図である。
【0066】
本実施形態のケーシング400は、右側面部401と、法線方向が斜め下方であり右側面部401の下側に設けられた右傾斜面部402と、を有する。図1に表した暖房便座装置100では、右側方検知センサ430aは、右側面部401に設けられている。これに対して、本変形例にかかる暖房便座装置では、右側方検知センサ430aは、右傾斜面部402に設けられている。
【0067】
そして、右側方検知センサ430aは、例えば赤外線(検知光)を斜め下方(右傾斜面部402の略法線方向)に投光し、便座200の右側方の範囲であって便座200よりも低い範囲を検知できる。これによれば、右側方検知センサ430aは、例えば便座200の右側方の床などを屈み(かがみ)つつ掃除している使用者(人体)も検知できる。そのため、本変形例の右側方検知センサ430aは、便座200あるいは便器800の右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。
【0068】
また、右側方検知センサ430aは、法線方向が斜め下方の右傾斜面部402に設けられているため、起立した使用者からは見えにくい。そのため、暖房便座装置100の意匠性を向上させることができる。さらに、トイレ室の壁面20aが暖房便座装置100により接近している場合などにおいては、側方検知センサ430と壁面20aとの間の距離をより確実に確保することができる。そのため、側方検知センサ430が誤検知することをより抑制することができる。
【0069】
なお、本変形例では、ケーシング400の右側に設置された右側方検知センサ430aを例に挙げて説明したが、ケーシング400の左側に設置された左側方検知センサ430bの設置位置あるいは設置形態についても同様である。これは、図14および図15に関して後述する変形例においても同様である。
【0070】
図14は、本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態の他の変形例を表す拡大模式図である。
本変形例にかかる暖房便座装置では、図1に表した暖房便座装置100と同様に、右側方検知センサ430aは、ケーシング400の右側面部401に設けられている。本変形例の右側面部401には、右側面部401の表面から後退した凹設部401aが設けられている。右側方検知センサ430aは、この凹設部401aに一部が埋め込まれるように設置されている。すなわち、右側方検知センサ430aあるいはセンサ窓は、右側面部401の表面から後退した位置に設置されている。
【0071】
これによれば、例えば使用者の衣服などが、ケーシング400の右側面部401に覆い被さった場合でも、右側方検知センサ430aあるいはセンサ窓と、衣服などの対象物と、の距離をより確実に確保することができる。そのため、対象物が右側方検知センサ430aに近づきすぎることにより、右側方検知センサ430aが対象物を検知できないということをより抑制することができる。これに対して、対象物が前方検知センサ420や側方検知センサ430に近づきすぎると、図2および図3に関して前述したように、前方検知センサ420や側方検知センサ430は、投光素子から投光され対象物で反射された赤外線を受光素子において受光できない、あるいは受光しにくくなる。
【0072】
図15は、本実施形態の側方検知センサの設置位置あるいは設置形態のさらに他の変形例を表す拡大模式図である。
本実施形態のケーシング400は、前面部403と、法線方向が斜め下方であり前面部403の下側に設けられた前傾斜面部404と、をさらに有する。そして、本変形例では、右側方検知センサ430aは、右傾斜面部402と、前傾斜面部404と、の境界部である角部に設けられている。また、右側方検知センサ430aは、ケーシング400に設けられた凹設部401aに一部が埋め込まれるように設置されている。
【0073】
本変形例の右側方検知センサ430aは、例えば赤外線を斜め下方(右傾斜面部402の略法線方向)に投光し、便座200の右側方および前方の範囲であって便座200よりも低い範囲を検知できる。これによれば、便座200の右側方に回り込むことなく、手を延ばして便座200の右側方の床などを屈み(かがみ)つつ掃除している使用者(人体)も検知できる。つまり、便座200あるいは便器800と、壁面20aと、の間に人体を入れることができない、あるいは入れづらいときに、使用者は、便座200の右側方に回り込むことなく手を延ばして掃除などを行う場合があるが、この場合であっても、本変形例の右側方検知センサ430aは、人体を検知できる。また、その他の効果についても、図13および図14に関して前述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態によれば、制御部410は、前方検知センサ420および側方検知センサ430の両方が検知信号を出力しないと、便蓋駆動装置450を駆動して便蓋300を閉じる。これによれば、制御部410は、便座200あるいは便器800の前方および左右側方に人体が存在するか否かをより正確に判断できる。そのため、制御部410は、便器800の使用終了をより迅速に検知し、便蓋300を閉じることができる。また、制御部410は、側方検知センサ430を通常「OFF」に設定し、退室動作時間T1が所定時間(例えば、約1秒程度)以内であるときに、側方検知センサ430を「OFF」から「ON」に切り替えて便座200の側方確認を行ってもよい。これによれば、前方検知センサ420および側方検知センサ430を常時「ON」に設定しておく必要はないため、暖房便座装置100の使用電力を削減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座200や便蓋300などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや前方検知センサ420や側方検知センサ430の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0076】
10 扉、 20a、20b 壁面、 100 暖房便座装置、 200 便座、 210 ヒータ、 300 便蓋、 400 ケーシング、 401 右側面部、 401a 凹設部、 402 右傾斜面部、 403 前面部、 404 前傾斜面部、 410 制御部、 420 前方検知センサ、 421 前方検知範囲、 430 側方検知センサ、 430a 右側方検知センサ、 430b 左側方検知センサ、 431a 右側方検知範囲、 431b 左側方検知範囲、 450 便蓋駆動装置、 800 便器、 850 ロータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、着座面を加熱する加熱源を有する便座と、
前記ケーシングに対して開閉自在に軸支され、前記着座面を覆う便蓋と、
前記便座の前方の人体を検知すると検知信号を出力する前方検知センサと、
前記便座の側方の人体を検知すると検知信号を出力する側方検知センサと、
前記便蓋を閉じる便蓋駆動装置と、
前記前方検知センサおよび前記側方検知センサの両方が検知信号を出力しないと、前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じる制御部と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記前方検知センサが、前記便座の前方近傍にいる人体を検知した際の前記検知信号を出力している状態から前記検知信号を出力しない状態に遷移するまでの時間が所定時間以内である場合には、前記制御部は、前記側方検知センサを起動させて前記便座の側方の人体を検知可能とすることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記前方検知センサの出力電圧が、前記便座の前方近傍にいる人体を検知した際の前記検知信号を出力している状態から前記検知信号を出力しない状態に遷移するまでの時間が所定時間よりも長い場合には、前記制御部は、前記側方検知センサを起動させることなく前記便蓋駆動装置を駆動させて前記便蓋を閉じることを特徴とする請求項1または2に記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記側方検知センサは、下方に向けて検知光を投光する光センサであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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