暖房便座装置
【課題】誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、高周波電流の伝送ロスを低減でき、高い信頼性を得ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座または便蓋と、前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記磁界によって誘導加熱される導電体と、前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、を備え、前記電線は、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、を有し、前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられた暖房便座装置が提供される。
【解決手段】便座または便蓋と、前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記磁界によって誘導加熱される導電体と、前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、を備え、前記電線は、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、を有し、前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられた暖房便座装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、ポリプロピレン等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷感を感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置について、省エネルギー化を図るための提案がされている。
【0003】
例えば、交流電力を発生する誘導加熱用電源と、誘導加熱用電源から送られる電流により磁界を発生する加熱用励磁コイルと、加熱用励磁コイルで誘起される誘導電流により発熱する発熱体と、を備えた温水式洗浄便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された温水式洗浄便座装置では、誘導加熱の原理により、便座を短時間で昇温させることができる。そのため、便座を保温状態に保つことなく、着座時以外は、電力供給を停止させることができ、待機時の電力を削減することができる。
【0004】
誘導加熱は、コイルに高周波電流を通電させて、コイルから磁界を発生させ、その磁界が導電体を通過することにより渦電流を生成させて導電体を加熱するものである。ところで、高周波電源装置から加熱用励磁コイルまで高周波電流を効率よく伝送するには、絶縁素線を複数本撚り合わせた、いわゆるリッツ線を用いるのが好ましい。リッツ線は、表皮効果による伝送ロスが少ないため、周波数の高い電流を伝送するのに適しているからである。
【0005】
しかしながら、リッツ線が可動部に用いられ、曲げ伸ばし等の繰り返しによって絶縁素線の絶縁被覆に剥がれが生じると、絶縁素線で絶縁されていた導線どうしの接触による表皮面積の変動や減少が生じ、伝送効率が不安定になったり、伝送効率が低下したりすることがある。このため、固定されたケーシングと、頻繁に開閉される便座と、の間の配線にリッツ線を使用して高周波電流を伝送すると、このような問題を招きやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−228964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、高周波電流の効率のよい伝送、及び高い信頼性を得ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、便座または便蓋と、前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記磁界によって誘導加熱される導電体と、前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、を備え、前記電線は、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、を有し、前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0009】
第1の電線は、複数本の導線が撚り合わされて一体化された状態で被覆されているので、捩れによって導線どうしが擦れ合ったとしても、高周波電流に対する電気伝導性は変わらない。そのため、高周波電流の伝送効率は安定し、伝送効率の低下が生じにくい。一方、第2の電線は、導線1本ごとに絶縁された絶縁素線が用いられているため、第1の電線よりも高い伝送効率となるが、捩れによって絶縁素線どうしが擦れ合って絶縁被覆が剥がれると、高周波電流に対する電気伝導性が変わる。そのため、高周波電流の伝送効率は不安定となり、伝送効率の低下が生じることがある。
この暖房便座装置によれば、誘導加熱コイルが内蔵された便座または便蓋の開閉によって電線に捩れが生じた場合、その捩れは複数本の導線を撚り線にして被覆した第1の導線にのみ生じ、絶縁素線を複数本撚り合わせた第2の電線には捩れは伝わらない。このため、便座または便蓋の開閉、あるいは便座または便蓋の取り外しによって電線に捩れが生じても、高周波電流の伝送効率は安定し、伝送効率の低下を防止することが可能となる。
また、電線の一部を、複数の絶縁素線を撚り合わせた第2の電線で構成したので、高周波電流の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の電線の前記第2の電線と接続される端部が前記便座または便蓋に固定され、前記便座または便蓋の開閉による前記第1の電線の捩れが前記第2の電線に伝わらないことを特徴とする暖房便座装置である。
【0011】
この暖房便座装置によれば、第1の電線の第2の電線と接続される端部が便座または便蓋に固定されるので、第1の電線の捩れは固定部分よりも先に伝わらない。そのため、第2の電線を構成する絶縁素線への捩れの発生を確実に防いで、ケーシングに対する便座または便蓋の相対的な位置の変化による第2の電線の絶縁被覆の剥がれを確実に防止することができる。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記便座または便蓋内における開閉時の回転中心軸の近傍に固定され、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を接続する第1の中継部をさらに備え、前記第1の中継部によって、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を互いに異なる方向から接続したことを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、便座または便蓋の開閉時の回転中心軸の近傍に第1の中継部を配置したので、第1の電線の長さを短くすることができ、その分、第2の電線の長さを長くして、高周波電流の伝達ロスを抑えることができる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第1の電線が、導電体で磁気シールドされたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、第1の電線を磁気シールドすることにより、便座コードからの磁界漏れを効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、第5の発明は、第3の発明において、前記ケーシング内に設けられた第2の中継部をさらに備え、前記電線は、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線であって、前記ケーシング内で前記高周波電源装置と、前記第1の電線と、の間に接続された第3の電線をさらに有し、前記第3の電線は、前記第2の中継部によって、前記第1の電線と接続されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、ケーシングから便座または便蓋に電力を供給する第1の電線のみを、複数の本の導線を撚り線にて被覆し構成としたので、高周波電源装置と第1の電線との間、及び、第1の電線と誘導加熱コイルとの間が、絶縁素線を複数本撚り合わせた第2の電線、及び第3の電線になり、高周波電流の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、高周波電流の伝送ロスを低減でき、高い信頼性を得ることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図3】便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
【図4】図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
【図5】第1及び第2の電線の筐体への引き込み状態を例示する模式図である。
【図6】第1の中継台について例示した模式図である。
【図7】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図8】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図9】電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
【図10】暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
【図11】第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式的平面図である。
【図12】他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
【図13】他の実施の形態における他の構成を例示する模式的平面図である。
【図14】第1の電線の取り付け構造を例示する模式図である。
【図15】本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
【図16】他の実施の形態におけるその他の構成を例示する模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
図2は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図で、(a)は、暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図、(b)は、(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。
【0021】
本実施の形態に係る暖房便座装置100は、トイレ装置10における洋式腰掛便器800の上に設置されるもので、便座200と、便蓋300と、便座200及び便蓋300を開閉可能に支持するケーシング400と、を備える。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。ケーシング400には、高周波電流を生成する高周波電源装置420が内蔵される。便座200または便蓋300には、高周波電源装置420から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイル222が設けられる。便座200には、磁界によって誘導加熱される導電体231が設けられる。より具体的には、導電体231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0022】
高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電流を誘導加熱コイル222へ送る電線を備えた電力供給線(電力コード)500が接続されている。そして、本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500が、ケーシング400から便座200へ配線された第1の電線501と、便座200の中において第1の電線501と直列に接続され、誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する第2の電線502と、を備えている。
【0023】
ここで、第1の電線501には、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された電線が用いられる。以下、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された電線のことを「普通線」という。
また、第2の電線502には、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線が用いられる。以下、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線のことを「リッツ線」という。
【0024】
本実施の形態に係る暖房便座装置100において、第1の電線501の一方の端部は、ケーシング400内で固定されている。本具体例では、第1の電線501の一方の端部は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420に固定されている。また、第1の電線501の他方の端部は、便座200の筐体210内で固定されている。本具体例では、第1の電線501の他方の端部は、筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。
そして、第2の電線502の一方の端部は、第1の中継台510に固定されている。これにより、第2の電線502は、第1の中継台510を介して第1の電線501と導通する。
なお、本実施形態において電線(第1の電線501及び第2の電線502)の端部には、端部の近傍部位も含まれる。
【0025】
本実施の形態のように、第1の電線の一方の端部がケーシング400内で固定され、他方の端部が便座200に固定されていることで、便座200の開閉や着脱の際に第1の電線501に捩れが生じても、その捩れが第2の電線502に伝達されない。したがって、第2の電線502を構成する絶縁素線に捩れが発生せず、第2の電線502を構成する絶縁素線の絶縁被覆の剥がれの発生を抑制することができる。
【0026】
ここで、ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などが内蔵されていてもよい。
【0027】
また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本実施の形態においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、制御部410が設けられている。そして、商用電源から供給される電力(以下、説明の便宜上「商用電力」と称する)は、ケーシング400の内部に設けられた制御部410と高周波電源装置420に投入される。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて高周波電流を生成する。
【0029】
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0030】
便座200の筐体210の内部には、高周波電源装置420から供給された高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222と、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する第2の電線502と、誘導加熱コイル222を支持する支持体280と、が設けられている。第2の電線502は、第1の電線501と接続され、高周波電源装置420から供給される高周波電流を誘導加熱コイル222へと導く。先に説明したように、第2の電線502は、リッツ線である。
【0031】
なお、図2(b)に表した誘導加熱コイル222は、支持体280により支持されているが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、支持体280に支持されることなく、例えば便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていてもよい。
【0032】
ここで、誘導加熱コイル222は、第2の電線502と同じ材質の導線(例えば、リッツ線)であっても、異なる材質の導線であってもよい。誘導加熱コイル222と第2の電線502とが同じ材質の導線の場合、誘導加熱コイル222は、導線のうちコイルとしての巻線の開始位置から終了位置までの部分をいう。また、第2の電線502は、第1の電線501との接続位置から誘導加熱コイル222までの部分をいう。
【0033】
誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0034】
導電体231の材料としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装、コーティング、フィルムなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0035】
制御部410と高周波電源装置420とは、給電線415により接続されている。商用電力などの低周波電流と、制御部410から供給される制御信号と、は給電線415を通して高周波電源装置420に供給される。つまり、制御部410は、高周波電源装置420の動作を制御する。給電線415は、高周波電源装置420から出力される高周波電流よりも相対的に周波数が低い低周波電流を高周波電源装置420に供給する。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて、低周波電流を高周波電流に変換する。すなわち、高周波電源装置420は、給電線415を通して供給される低周波電流を、その周波数よりも高い周波数の電流(以下、説明の便宜上「高周波電流」と称する)に変換する。
【0036】
高周波電源装置420により変換された高周波電流は、電力供給線500を通して誘導加熱コイル222へ流れる。そうすると、誘導加熱コイル222は、磁界を発生する。誘導加熱コイル222が磁界を発生すると、導電体231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。そのため、本実施の形態に係る暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などの抵抗加熱手段により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
なお、図2に例示した暖房便座装置100では、便座200の筐体210の内部に誘導加熱コイル222が設けられているが、便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられていてもよい。便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられた暖房便座装置100では、便蓋300が閉じた状態において、誘導加熱コイル222により磁界を発生させる。これにより、便座200に設けられた導電体231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。また、導電体231についても、便座200ではなく、便蓋300に設けられていてもよい。なお、以下の説明では、便座200に誘導加熱コイル222及び導電体231が設けられている構成を例とする。
【0038】
また、図1には、便座200及び便蓋300が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、便座200のみがケーシング400に軸支され、便蓋300が設けられていないものも、本発明の範囲に含まれる。この場合には、誘導加熱コイル222と導電体231は、いずれも便座200に設けることができる。
【0039】
図3は、便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
図4は、図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
図3に表したように、便座200は、後方側の左右に設けられたヒンジ部250を支点として、前方側が上方に開く。便座200を開くと、ヒンジ部250の近傍において、ケーシング400から便座200に引き込まれた第1の電線501の一部がケーシング400及び筐体210から外に露出する。
【0040】
図4では、ヒンジ部250の近傍における第1の電線501の取り回し状態が例示されている。ここで、便座200の筐体210内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260に第1の電線501が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、筐体210に固定され、他端は、挿入された第1の電線501の途中に固定されている。これにより、便座200の脱着の際、第1の電線501の引き出し、引き戻しが確実に行われる。
【0041】
すなわち、便座200をケーシング400から取り外し、引き離そうとすると、筐体210内に引き込まれていた第1の電線501の一部が筐体210から引き出される。第1の電線501が引き出されるため、便座200とケーシング400との隙間を十分に確保でき、便座200やケーシング400の掃除を容易に行うことができる。ここで、筐体210から第1の電線501を引き出した量に応じて、コイルスプリング260が縮むことになる。
【0042】
一方、便座200をケーシング400の装着位置に戻すと、コイルスプリング260の伸張力によって第1の電線501が便座200の筐体210内に自動的に引き込まれる。便座200をケーシング400に装着した状態では、第1の電線501は、コイルスプリング260の伸張力によって元の位置に確実に戻されることになる。
【0043】
ここで、第1の電線501の他方の端部は、便座200の筐体210内に固定された第1の中継台510に固定されている。コイルスプリング260を貫通した第1の電線501は、第1の中継台510までの間、筐体210の中で若干の弛みを持たせた状態で敷設されている。この弛みは、便座200をケーシング400から取り外した際、第1の電線501を筐体210から引き出すための余裕分となる。
【0044】
図5は、第1及び第2の電線の筐体への引き込みを例示する模式図である。
図5では、便座200の裏面側からみた一部透視の平面を例示している。第1の電線501は、ケーシング400から便座200の筐体210内に引き込まれている。筐体210内において、第1の電線501は先に説明したコイルスプリング260に挿入され、その先で湾曲するように取り回されている。
【0045】
第1の電線501の他方の端部を固定する第1の中継台510は、便座200において着座範囲外(図中ハッチングで示す領域)に設けられている。着座範囲には誘導加熱コイル222が設けられていることから、第1の中継台510を着座範囲外に設けることで、誘導加熱コイル222の巻線の邪魔にならずに済む。また、第1の中継台510が着座範囲外に設けられていれば、誘導加熱コイル222による導電体231の加熱の妨げにもならずに済むことになる。
【0046】
なお、着座範囲外には、非加熱金属(例えば、フェライト焼結体)の電磁シールドを設けるようにしてもよい。これにより、筐体210の第1の電線501、第1の中継台510及び第2の電線502のうち導電体231によってシールドされない部分について磁界の漏れを抑制することが可能になる。
【0047】
次に、第1の電線501の固定について説明する。
図6は、第1の電線の筐体側の中継台について例示する模式図である。
図6(a)に表した第1の中継台510は、丸型端子511a及び511bと螺子513とを用いて固定するものである。すなわち、第1の電線501の端部には丸型端子511aが取り付けられている。一方、筐体側には端子台512が固定されている。また、第2の電線502の端部にも丸型端子511bが取り付けられている。この端子台512に丸型端子511a及び511bを螺子513によって固定することにより、第1の電線501及び第2の電線502のそれぞれの端部を端子台512に固定する。これにより、筐体210の開閉によって第1の電線501に捻れが生じても、その捻れは端子台512よりも先の第2の電線502には伝わらず、第2の電線502の固定状態を維持することができる。
【0048】
図6(b)に表した第1の中継台510は、U字状の固定具515を用いて固定するものである。すなわち、この第1の中継台510では、U字状の固定具515を第1の電線501の被覆の上に取り付け、この固定具515を螺子513によって筐体210に固定している。この固定具515によって第1の電線501を筐体210に固定すると、筐体210の開閉によって生じる第1の電線501は固定具515よりも先には伝わらない。したがって、筐体210の開閉を行っても、第2の電線502が捻れることはなく、固定状態を維持することができる。
【0049】
図6(c)に表した第1の中継台510は、クリップ式の固定具517を用いて固定するものである。すなわち、この第1の中継台510は、一端側に第1の電線501を挟み込むクリップ部分517aが設けられ、他端側に筐体210への固定を行う螺子止め部分517bが設けられている。このクリップ部分517aに第1の電線501を挟み込み、螺子止め部分517bによって固定具を筐体210に螺子513で固定する。これにより、筐体210の開閉によって生じる第1の電線501の捻れは固定具517よりも先には伝わらない。したがって、第2の電線502の捻れを防止することができる。
【0050】
図7は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図7(a)は、便座を開いた状態、図7(b)は、便座を閉じた状態をそれぞれ例示している。
図7に表したように、この暖房便座装置101において、便座200を支持するヒンジ部250には、ヒンジサポート251が設けられている。ヒンジサポート251は、ケーシング400から立ち上がり、ヒンジ部250を支持している。電力供給線500の第1の電線501は、ケーシング400からヒンジサポート251を介して便座200の筐体210に引き込まれている。ヒンジ部250には、中空形状の柱252が設けられている。第1の電線501は、ケーシング400からこの中空形状の柱252内を介して便座200の筐体210内に引き込まれている。中空形状の柱252内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260内に第1の電線501が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、中空形状の柱252に固定され、他端は第1の電線501の途中に固定されている。これにより、便座200を取り外す場合において、第1の電線501をケーシング400から引き出そうとすると、中空形状の柱252の中でコイルスプリング260が縮む状態になる。
【0051】
一方、便座200を取り付け位置に戻すと、第1の電線501が自由状態になるので、コイルスプリング260が伸張し、自動的に第1の電線501をケーシング400内に引き込むことができるようになる。
【0052】
このような取り付け構造において、第1の電線501の一端は、ケーシング400内に固定されている。また、コイルスプリング260を貫通して便座200の筐体210内に引き込まれた第1の電線501の他端は、筐体210に設けられた第1の中継台510に固定されている。また、第1の中継台510には、第2の電線502の一端が接続され、他端が誘導加熱コイル222に接続されている。
【0053】
これにより、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510から先の第2の電線502には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0054】
図8は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図8に表したように、この暖房便座装置102においては、便座200のヒンジ部250の中に第1の電線501が通されている。第1の電線501は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から便座200のヒンジ部250を介して筐体210内の誘導加熱コイル(図示せず)まで引き回されている。すなわち、第1の電線501は、ケーシング400内において、高周波電源装置420からヒンジ部250まで延出し、ここで屈曲して便座200の筐体210内へ引き込まれている。
【0055】
このような取り付け構造において、第1の電線501の一端は、ケーシング400内の高周波電源装置420に固定されている。また、第1の電線501の他端は、便座200の筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。これにより、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、この捩れが第2の電線には伝達しないことになる。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0056】
図9は、電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
図10は、図9に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
図9及び図10に表した暖房便座装置103では、便座200とケーシング400との間に接続された第1の電線501が、外側に露出している。この第1の電線501は、外側に露出した状態で垂れ下げられている。この垂れ下げは、便座200をケーシング400から着脱する際、第1の電線501に余裕を持たせるためである。
【0057】
電力供給線500の第1の電線501の一端は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420に固定されている。第1の電線501は、ケーシング400の外側に延出し、露出した部分が垂れ下げられ、便座200の筐体210内に引き込まれている。筐体210内に引き込まれた第1の電線501の他端は、筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。この第1の中継台510には、第2の電線502の一端が固定されている。そして、第2の電線502の他端は、誘導加熱コイル222に接続されている。
【0058】
このような取り付け構造により、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れや曲げ伸ばしなどの動きが生じても、この動きが第2の電線には伝達しない。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができるようになる。
【0059】
図11は、第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式的平面図である。
図11に表したように、この暖房便座装置104では、便座200における開閉の中心となるヒンジ部250寄りに、第1の中継台510が配置されている。この第1の中継台510には、ケーシング400内の高周波電源装置420から第1の中継台510の方向a1に沿って第1の電線501が接続されている。また、第1の中継台510には、便座200の筐体210内から第1の中継台510の方向a2に沿って第2の電線502が接続されている。
【0060】
この取り付け構造においては、第1の中継台510がヒンジ部250寄りに配置されているため、電力供給線500のうち第1の電線501の長さを短くすることができる。すなわち、第1の電線501は普通線、第2の電線502はリッツ線である。このため、第1の電線501である普通線を短く、第2の電線502であるリッツ線を長くすることで、高周波電流の伝送ロスの低減を抑制できることになる。
【0061】
また、第1の中継台510には、第1の電線501及び第2の電線502が互いに異なる方向a1及びa2から接続されている。つまり、第1の中継台510によって電力供給線500の方向を変換している。これにより、第1の電線501及び第2の電線502をそれぞれ直線的に接続しつつ、電力供給線500の方向を変換できるようになる。
【0062】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図12は、他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
図12に表したように、この暖房便座装置110は、ケーシング400内に第2の中継台520をさらに備える。また、電力供給線500は、リッツ線による第3の電線503をさらに備える。
【0063】
第2の中継台520は、ケーシング400内に固定されている。一方、便座200の筐体210内には第1の中継台510が固定されている。第3の電線503は、ケーシング400内の高周波電源装置420と、第2の中継台520と、の間に接続されている。また、第2の中継台520と、第1の中継台510と、の間には、第1の電線501が接続されている。そして、第1の中継台510には、第2の電線502が接続されている。つまり、第1の電線501の両端は、第1の中継台510及び第2の中継台520にそれぞれ固定されている。
【0064】
このような暖房便座装置110では、第1の電線501を第1の中継台510と、第2の中継台520と、の間のみに設ければよい。したがって、電力供給線500のうち、第1の電線501の長さを短くでき、高周波電流の伝送ロスを抑制できるようになる。
【0065】
また、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510及び第2の中継台520から先の第2の電線502及び第3の電線503には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502及び第3の電線503を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0066】
図13は、他の実施の形態における他の構成を例示する模式的平面図である。
図13に表した暖房便座装置111は、ケーシング400内に第2の中継台520が設けられている点で図12に表した暖房便座装置110と共通する。一方、暖房便座装置111では、第1の電線501が、ケーシング400及び筐体210の外側に延出し、垂れ下げされている。
【0067】
すなわち、第1の電線501の一端は、第2の中継台520に固定され、他端は第2の中継台520に固定される。そして、第1の電線501の途中は、ケーシング400及び筐体210の外側に延出して設けられ、垂れ下げられた状態になっている。
【0068】
このような暖房便座装置111では、第1の電線501を垂れ下げて設けた分、便座200をケーシング400から取り外した際、便座200とケーシング400との間を広くあけることができる。これにより、便座200やケーシング400等の清掃が容易となる。
【0069】
また、暖房便座装置110と同様、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510及び第2の中継台520から先の第2の電線502及び第3の電線503には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502及び第3の電線503を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0070】
図14は、図13に表したような外側に露出した第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式図である。
図14に例示した固定手段は、差し込み式の固定手段550である。すなわち、この固定手段550では、第1の電線501の途中に、矩形状のブッシュ551が設けられている。一方、ケーシング400または便座200の筐体210側には、ブッシュ551が差し込まれる矩形状の凹部を備えた開口部552が取り付けられている。
【0071】
開口部552の凹部は、ブッシュ551の外形に合わせた広さに設けられている。したがって、第1の電線501に取り付けられたブッシュ551を、ケーシング400または筐体210側の開口部552の凹部552aに差し込むことで、ブッシュ551が開口部552に嵌合される。
【0072】
また、ブッシュ551には切り欠き部551aが設けられ、開口部552には切り欠き部551aに対応した突起部552bが設けられている。したがって、ブッシュ551を開口部552に嵌合させる際、ブッシュ551の切り欠き部551aに、開口部552の突起部552bがはまり込み、ブッシュ551の電線方向に沿った抜けを防止する。このような固定手段550によって、第1の電線501をケーシング400または筐体210側にしっかりと固定できることになる。
【0073】
このような第1の電線501の固定により、便座200の開閉や着脱の際に第1の電線501に捩れが生じても、この捩れが第2の電線502には伝達しないことになる。すなわち、便座200の開閉や着脱には、第1の電線501の捩れが伴う。この第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510よりも誘導加熱コイル222側の第2の電線502や、第2の中継台520よりも高周波電源装置420側の第3の電線503は固定されたままであり、第2の電線502及び第3の電線503に捩れが伝わらない。これにより、第2の電線502の筐体210に対する位置及び第3の電線503のケーシング400に対する位置が変化せず、リッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0074】
図15は、他の実施の形態におけるその他の構成を例示する模式的平面図である。
図15に表した暖房便座装置112は、便座200の筐体210内に第1の中継台510が設けられ、ケーシング400内に第2の中継台520が設けられている点で、暖房便座装置110及び111と同様である。一方、暖房便座装置112では、第1の中継台510が、ヒンジ部250寄りに設けられている。
【0075】
このような暖房便座装置112では、第1の中継台510がヒンジ部250寄りに配置されているため、電力供給線500のうち第1の電線501の長さを短くすることができる。したがって、第1の電線501である普通線を短く、第2の電線502及び第3の電線503であるリッツ線を長くすることで、高周波電流の伝送ロスの低減を抑制できることになる。
【0076】
また、第1の中継台510及び第2の中継台520によって、電力供給線500を構成する第1の電線501、第2の電線502及び第3の電線503の接続方向を変換できる。したがって、第1の電線501、第2の電線502及び第3の電線503をそれぞれ直線的に接続しつつ、電力供給線500の方向を変換できるようになる。
【0077】
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。
図16は、他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
図16(a)には、暖房便座装置120が例示され、図16(b)には、暖房便座装置121が例示されている。
暖房便座装置120及び121では、第1の電線501が保護部材600でシールドされている。
【0078】
図16(a)に表した暖房便座装置120においては、ケーシング400から便座200の第1の中継台510まで接続された第1の電線501の周囲を被覆する保護部材600が設けられている。この保護部材600によって、第1の電線501で発生した磁界の外部への漏れを防止する。
【0079】
保護部材600の材料は、磁界を透過させにくいもの、すなわち、磁界を吸収または反射するものを用いることができる。具体的には、保護部材600の材料としては、アルミニウム、ステンレスのほか、銅、金、銀、ニッケル、これらを含む合金などが挙げられる。
【0080】
ここで、便座200の筐体210内に設けられた第1の中継台510以降の第2の電線502には、導電体231が被せられている。導電体231は、誘導加熱コイル222で発生した渦電流によりって発熱する発熱体であるとともに、便座200の外への磁界の漏れを抑制するシールドとしての役目も果たす。したがって、導電体231で覆われた部分には、必ずしも保護部材600を設ける必要はない。
【0081】
図16(b)に表した暖房便座装置121においては、ケーシング400及び便座200の外側に垂れ下げられた第1の電線501の周囲を被覆する保護部材600が設けられている。保護部材600は、一端がケーシング400内の高周波電源装置420に接続され、他端が便座200内の第1の電線501まで接続された第1の電線501の全体を覆う。
【0082】
第1の電線501は、外部に垂れ下げられていることから、被覆する保護部材600には可撓性を有する材料を用いることが望ましい。可撓性を有する保護部材600としては、例えば、弾性体に導電性材料を含有させたものや、導電体で形成されたコイルスプリング状のものや、導電体で形成されたメッシュ状のものが挙げられる。これにより、外部に垂れ下げられる第1の電線501であっても、動きを制限することなく、磁界の漏れを抑制できるようになる。
【0083】
また、図16(a)及び(b)に例示したいずれの例でも、ケーシング400から便座200に第1の電線501を引き回す場合、特に、ヒンジ部250の隙間(ケーシング400と便座200との隙間)において磁界の漏れが発生しやすい。本具体例によれば、ヒンジ部250の隙間にも保護部材600が設けられるため、ここからの磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222へ高周波電流を送る電力供給線500について、外部へ漏れる磁界を抑制することができる。特に、ケーシング400に高周波電源装置420が内蔵されている場合、電力供給線500の敷設経路で磁界の漏れが発生しやすい。本実施の形態では、保護部材600によって、シールドしにくいヒンジ部250の隙間などでも確実に磁界の漏れを抑制することができる。これにより、ケーシング400内の制御部410に過度の磁界が入射することを抑えることができ、その制御部410を安定化させることができる。また、人体への磁界の入射量をより小さく抑えることができる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、電力供給線500に設けられる保護部材600の態様として、いずれか1つに限られず、一つの電力供給線500に保護部材600の複数の態様を適宜組み合わせるようにしてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0086】
10…トイレ装置、100,101,102,103,104,110,111,120,121…暖房便座装置、200…便座、210…筐体、222…誘導加熱コイル、231…導電体、250…ヒンジ部、260…コイルスプリング、300…便蓋、400…ケーシング、410…制御部、415…給電線、420…高周波電源装置、500…電力供給線、501…第1の電線、502…第2の電線、503…第3の電線、510…第1の中継台、520…第2の中継台、600…保護部材、800…洋式腰掛便器
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、暖房便座装置に関し、具体的には便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、ポリプロピレン等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷感を感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置について、省エネルギー化を図るための提案がされている。
【0003】
例えば、交流電力を発生する誘導加熱用電源と、誘導加熱用電源から送られる電流により磁界を発生する加熱用励磁コイルと、加熱用励磁コイルで誘起される誘導電流により発熱する発熱体と、を備えた温水式洗浄便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された温水式洗浄便座装置では、誘導加熱の原理により、便座を短時間で昇温させることができる。そのため、便座を保温状態に保つことなく、着座時以外は、電力供給を停止させることができ、待機時の電力を削減することができる。
【0004】
誘導加熱は、コイルに高周波電流を通電させて、コイルから磁界を発生させ、その磁界が導電体を通過することにより渦電流を生成させて導電体を加熱するものである。ところで、高周波電源装置から加熱用励磁コイルまで高周波電流を効率よく伝送するには、絶縁素線を複数本撚り合わせた、いわゆるリッツ線を用いるのが好ましい。リッツ線は、表皮効果による伝送ロスが少ないため、周波数の高い電流を伝送するのに適しているからである。
【0005】
しかしながら、リッツ線が可動部に用いられ、曲げ伸ばし等の繰り返しによって絶縁素線の絶縁被覆に剥がれが生じると、絶縁素線で絶縁されていた導線どうしの接触による表皮面積の変動や減少が生じ、伝送効率が不安定になったり、伝送効率が低下したりすることがある。このため、固定されたケーシングと、頻繁に開閉される便座と、の間の配線にリッツ線を使用して高周波電流を伝送すると、このような問題を招きやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−228964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、高周波電流の効率のよい伝送、及び高い信頼性を得ることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、便座または便蓋と、前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記磁界によって誘導加熱される導電体と、前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、を備え、前記電線は、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、を有し、前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0009】
第1の電線は、複数本の導線が撚り合わされて一体化された状態で被覆されているので、捩れによって導線どうしが擦れ合ったとしても、高周波電流に対する電気伝導性は変わらない。そのため、高周波電流の伝送効率は安定し、伝送効率の低下が生じにくい。一方、第2の電線は、導線1本ごとに絶縁された絶縁素線が用いられているため、第1の電線よりも高い伝送効率となるが、捩れによって絶縁素線どうしが擦れ合って絶縁被覆が剥がれると、高周波電流に対する電気伝導性が変わる。そのため、高周波電流の伝送効率は不安定となり、伝送効率の低下が生じることがある。
この暖房便座装置によれば、誘導加熱コイルが内蔵された便座または便蓋の開閉によって電線に捩れが生じた場合、その捩れは複数本の導線を撚り線にして被覆した第1の導線にのみ生じ、絶縁素線を複数本撚り合わせた第2の電線には捩れは伝わらない。このため、便座または便蓋の開閉、あるいは便座または便蓋の取り外しによって電線に捩れが生じても、高周波電流の伝送効率は安定し、伝送効率の低下を防止することが可能となる。
また、電線の一部を、複数の絶縁素線を撚り合わせた第2の電線で構成したので、高周波電流の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の電線の前記第2の電線と接続される端部が前記便座または便蓋に固定され、前記便座または便蓋の開閉による前記第1の電線の捩れが前記第2の電線に伝わらないことを特徴とする暖房便座装置である。
【0011】
この暖房便座装置によれば、第1の電線の第2の電線と接続される端部が便座または便蓋に固定されるので、第1の電線の捩れは固定部分よりも先に伝わらない。そのため、第2の電線を構成する絶縁素線への捩れの発生を確実に防いで、ケーシングに対する便座または便蓋の相対的な位置の変化による第2の電線の絶縁被覆の剥がれを確実に防止することができる。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記便座または便蓋内における開閉時の回転中心軸の近傍に固定され、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を接続する第1の中継部をさらに備え、前記第1の中継部によって、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を互いに異なる方向から接続したことを特徴とする暖房便座装置である。
【0013】
この暖房便座装置によれば、便座または便蓋の開閉時の回転中心軸の近傍に第1の中継部を配置したので、第1の電線の長さを短くすることができ、その分、第2の電線の長さを長くして、高周波電流の伝達ロスを抑えることができる。
【0014】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第1の電線が、導電体で磁気シールドされたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0015】
この暖房便座装置によれば、第1の電線を磁気シールドすることにより、便座コードからの磁界漏れを効果的に防ぐことができる。
【0016】
また、第5の発明は、第3の発明において、前記ケーシング内に設けられた第2の中継部をさらに備え、前記電線は、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線であって、前記ケーシング内で前記高周波電源装置と、前記第1の電線と、の間に接続された第3の電線をさらに有し、前記第3の電線は、前記第2の中継部によって、前記第1の電線と接続されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0017】
この暖房便座装置によれば、ケーシングから便座または便蓋に電力を供給する第1の電線のみを、複数の本の導線を撚り線にて被覆し構成としたので、高周波電源装置と第1の電線との間、及び、第1の電線と誘導加熱コイルとの間が、絶縁素線を複数本撚り合わせた第2の電線、及び第3の電線になり、高周波電流の伝達ロスを最低限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、高周波電流の伝送ロスを低減でき、高い信頼性を得ることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図3】便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
【図4】図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
【図5】第1及び第2の電線の筐体への引き込み状態を例示する模式図である。
【図6】第1の中継台について例示した模式図である。
【図7】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図8】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図9】電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
【図10】暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
【図11】第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式的平面図である。
【図12】他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
【図13】他の実施の形態における他の構成を例示する模式的平面図である。
【図14】第1の電線の取り付け構造を例示する模式図である。
【図15】本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
【図16】他の実施の形態におけるその他の構成を例示する模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
図2は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図で、(a)は、暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図、(b)は、(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。
【0021】
本実施の形態に係る暖房便座装置100は、トイレ装置10における洋式腰掛便器800の上に設置されるもので、便座200と、便蓋300と、便座200及び便蓋300を開閉可能に支持するケーシング400と、を備える。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。ケーシング400には、高周波電流を生成する高周波電源装置420が内蔵される。便座200または便蓋300には、高周波電源装置420から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイル222が設けられる。便座200には、磁界によって誘導加熱される導電体231が設けられる。より具体的には、導電体231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0022】
高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電流を誘導加熱コイル222へ送る電線を備えた電力供給線(電力コード)500が接続されている。そして、本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500が、ケーシング400から便座200へ配線された第1の電線501と、便座200の中において第1の電線501と直列に接続され、誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する第2の電線502と、を備えている。
【0023】
ここで、第1の電線501には、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された電線が用いられる。以下、複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された電線のことを「普通線」という。
また、第2の電線502には、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線が用いられる。以下、複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線のことを「リッツ線」という。
【0024】
本実施の形態に係る暖房便座装置100において、第1の電線501の一方の端部は、ケーシング400内で固定されている。本具体例では、第1の電線501の一方の端部は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420に固定されている。また、第1の電線501の他方の端部は、便座200の筐体210内で固定されている。本具体例では、第1の電線501の他方の端部は、筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。
そして、第2の電線502の一方の端部は、第1の中継台510に固定されている。これにより、第2の電線502は、第1の中継台510を介して第1の電線501と導通する。
なお、本実施形態において電線(第1の電線501及び第2の電線502)の端部には、端部の近傍部位も含まれる。
【0025】
本実施の形態のように、第1の電線の一方の端部がケーシング400内で固定され、他方の端部が便座200に固定されていることで、便座200の開閉や着脱の際に第1の電線501に捩れが生じても、その捩れが第2の電線502に伝達されない。したがって、第2の電線502を構成する絶縁素線に捩れが発生せず、第2の電線502を構成する絶縁素線の絶縁被覆の剥がれの発生を抑制することができる。
【0026】
ここで、ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などが内蔵されていてもよい。
【0027】
また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本実施の形態においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、制御部410が設けられている。そして、商用電源から供給される電力(以下、説明の便宜上「商用電力」と称する)は、ケーシング400の内部に設けられた制御部410と高周波電源装置420に投入される。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて高周波電流を生成する。
【0029】
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0030】
便座200の筐体210の内部には、高周波電源装置420から供給された高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222と、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する第2の電線502と、誘導加熱コイル222を支持する支持体280と、が設けられている。第2の電線502は、第1の電線501と接続され、高周波電源装置420から供給される高周波電流を誘導加熱コイル222へと導く。先に説明したように、第2の電線502は、リッツ線である。
【0031】
なお、図2(b)に表した誘導加熱コイル222は、支持体280により支持されているが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、支持体280に支持されることなく、例えば便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていてもよい。
【0032】
ここで、誘導加熱コイル222は、第2の電線502と同じ材質の導線(例えば、リッツ線)であっても、異なる材質の導線であってもよい。誘導加熱コイル222と第2の電線502とが同じ材質の導線の場合、誘導加熱コイル222は、導線のうちコイルとしての巻線の開始位置から終了位置までの部分をいう。また、第2の電線502は、第1の電線501との接続位置から誘導加熱コイル222までの部分をいう。
【0033】
誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する導電体231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。あるいは、導電体231は、便座200の筐体210の内部に設けられていてもよい。あるいは、導電体231は、便座200の内部の上面210aに付設されていてもよい。
【0034】
導電体231の材料としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を導電体231に用いることがより好ましい。なお、導電体231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と導電体231とが直接的に接触しないように、塗装、コーティング、フィルムなどが導電体231の表面に施されることがより好ましい。
【0035】
制御部410と高周波電源装置420とは、給電線415により接続されている。商用電力などの低周波電流と、制御部410から供給される制御信号と、は給電線415を通して高周波電源装置420に供給される。つまり、制御部410は、高周波電源装置420の動作を制御する。給電線415は、高周波電源装置420から出力される高周波電流よりも相対的に周波数が低い低周波電流を高周波電源装置420に供給する。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて、低周波電流を高周波電流に変換する。すなわち、高周波電源装置420は、給電線415を通して供給される低周波電流を、その周波数よりも高い周波数の電流(以下、説明の便宜上「高周波電流」と称する)に変換する。
【0036】
高周波電源装置420により変換された高周波電流は、電力供給線500を通して誘導加熱コイル222へ流れる。そうすると、誘導加熱コイル222は、磁界を発生する。誘導加熱コイル222が磁界を発生すると、導電体231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。そのため、本実施の形態に係る暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などの抵抗加熱手段により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
なお、図2に例示した暖房便座装置100では、便座200の筐体210の内部に誘導加熱コイル222が設けられているが、便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられていてもよい。便蓋300の筐体内に誘導加熱コイル222が設けられた暖房便座装置100では、便蓋300が閉じた状態において、誘導加熱コイル222により磁界を発生させる。これにより、便座200に設けられた導電体231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。また、導電体231についても、便座200ではなく、便蓋300に設けられていてもよい。なお、以下の説明では、便座200に誘導加熱コイル222及び導電体231が設けられている構成を例とする。
【0038】
また、図1には、便座200及び便蓋300が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、便座200のみがケーシング400に軸支され、便蓋300が設けられていないものも、本発明の範囲に含まれる。この場合には、誘導加熱コイル222と導電体231は、いずれも便座200に設けることができる。
【0039】
図3は、便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
図4は、図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
図3に表したように、便座200は、後方側の左右に設けられたヒンジ部250を支点として、前方側が上方に開く。便座200を開くと、ヒンジ部250の近傍において、ケーシング400から便座200に引き込まれた第1の電線501の一部がケーシング400及び筐体210から外に露出する。
【0040】
図4では、ヒンジ部250の近傍における第1の電線501の取り回し状態が例示されている。ここで、便座200の筐体210内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260に第1の電線501が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、筐体210に固定され、他端は、挿入された第1の電線501の途中に固定されている。これにより、便座200の脱着の際、第1の電線501の引き出し、引き戻しが確実に行われる。
【0041】
すなわち、便座200をケーシング400から取り外し、引き離そうとすると、筐体210内に引き込まれていた第1の電線501の一部が筐体210から引き出される。第1の電線501が引き出されるため、便座200とケーシング400との隙間を十分に確保でき、便座200やケーシング400の掃除を容易に行うことができる。ここで、筐体210から第1の電線501を引き出した量に応じて、コイルスプリング260が縮むことになる。
【0042】
一方、便座200をケーシング400の装着位置に戻すと、コイルスプリング260の伸張力によって第1の電線501が便座200の筐体210内に自動的に引き込まれる。便座200をケーシング400に装着した状態では、第1の電線501は、コイルスプリング260の伸張力によって元の位置に確実に戻されることになる。
【0043】
ここで、第1の電線501の他方の端部は、便座200の筐体210内に固定された第1の中継台510に固定されている。コイルスプリング260を貫通した第1の電線501は、第1の中継台510までの間、筐体210の中で若干の弛みを持たせた状態で敷設されている。この弛みは、便座200をケーシング400から取り外した際、第1の電線501を筐体210から引き出すための余裕分となる。
【0044】
図5は、第1及び第2の電線の筐体への引き込みを例示する模式図である。
図5では、便座200の裏面側からみた一部透視の平面を例示している。第1の電線501は、ケーシング400から便座200の筐体210内に引き込まれている。筐体210内において、第1の電線501は先に説明したコイルスプリング260に挿入され、その先で湾曲するように取り回されている。
【0045】
第1の電線501の他方の端部を固定する第1の中継台510は、便座200において着座範囲外(図中ハッチングで示す領域)に設けられている。着座範囲には誘導加熱コイル222が設けられていることから、第1の中継台510を着座範囲外に設けることで、誘導加熱コイル222の巻線の邪魔にならずに済む。また、第1の中継台510が着座範囲外に設けられていれば、誘導加熱コイル222による導電体231の加熱の妨げにもならずに済むことになる。
【0046】
なお、着座範囲外には、非加熱金属(例えば、フェライト焼結体)の電磁シールドを設けるようにしてもよい。これにより、筐体210の第1の電線501、第1の中継台510及び第2の電線502のうち導電体231によってシールドされない部分について磁界の漏れを抑制することが可能になる。
【0047】
次に、第1の電線501の固定について説明する。
図6は、第1の電線の筐体側の中継台について例示する模式図である。
図6(a)に表した第1の中継台510は、丸型端子511a及び511bと螺子513とを用いて固定するものである。すなわち、第1の電線501の端部には丸型端子511aが取り付けられている。一方、筐体側には端子台512が固定されている。また、第2の電線502の端部にも丸型端子511bが取り付けられている。この端子台512に丸型端子511a及び511bを螺子513によって固定することにより、第1の電線501及び第2の電線502のそれぞれの端部を端子台512に固定する。これにより、筐体210の開閉によって第1の電線501に捻れが生じても、その捻れは端子台512よりも先の第2の電線502には伝わらず、第2の電線502の固定状態を維持することができる。
【0048】
図6(b)に表した第1の中継台510は、U字状の固定具515を用いて固定するものである。すなわち、この第1の中継台510では、U字状の固定具515を第1の電線501の被覆の上に取り付け、この固定具515を螺子513によって筐体210に固定している。この固定具515によって第1の電線501を筐体210に固定すると、筐体210の開閉によって生じる第1の電線501は固定具515よりも先には伝わらない。したがって、筐体210の開閉を行っても、第2の電線502が捻れることはなく、固定状態を維持することができる。
【0049】
図6(c)に表した第1の中継台510は、クリップ式の固定具517を用いて固定するものである。すなわち、この第1の中継台510は、一端側に第1の電線501を挟み込むクリップ部分517aが設けられ、他端側に筐体210への固定を行う螺子止め部分517bが設けられている。このクリップ部分517aに第1の電線501を挟み込み、螺子止め部分517bによって固定具を筐体210に螺子513で固定する。これにより、筐体210の開閉によって生じる第1の電線501の捻れは固定具517よりも先には伝わらない。したがって、第2の電線502の捻れを防止することができる。
【0050】
図7は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図7(a)は、便座を開いた状態、図7(b)は、便座を閉じた状態をそれぞれ例示している。
図7に表したように、この暖房便座装置101において、便座200を支持するヒンジ部250には、ヒンジサポート251が設けられている。ヒンジサポート251は、ケーシング400から立ち上がり、ヒンジ部250を支持している。電力供給線500の第1の電線501は、ケーシング400からヒンジサポート251を介して便座200の筐体210に引き込まれている。ヒンジ部250には、中空形状の柱252が設けられている。第1の電線501は、ケーシング400からこの中空形状の柱252内を介して便座200の筐体210内に引き込まれている。中空形状の柱252内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260内に第1の電線501が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、中空形状の柱252に固定され、他端は第1の電線501の途中に固定されている。これにより、便座200を取り外す場合において、第1の電線501をケーシング400から引き出そうとすると、中空形状の柱252の中でコイルスプリング260が縮む状態になる。
【0051】
一方、便座200を取り付け位置に戻すと、第1の電線501が自由状態になるので、コイルスプリング260が伸張し、自動的に第1の電線501をケーシング400内に引き込むことができるようになる。
【0052】
このような取り付け構造において、第1の電線501の一端は、ケーシング400内に固定されている。また、コイルスプリング260を貫通して便座200の筐体210内に引き込まれた第1の電線501の他端は、筐体210に設けられた第1の中継台510に固定されている。また、第1の中継台510には、第2の電線502の一端が接続され、他端が誘導加熱コイル222に接続されている。
【0053】
これにより、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510から先の第2の電線502には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0054】
図8は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図8に表したように、この暖房便座装置102においては、便座200のヒンジ部250の中に第1の電線501が通されている。第1の電線501は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から便座200のヒンジ部250を介して筐体210内の誘導加熱コイル(図示せず)まで引き回されている。すなわち、第1の電線501は、ケーシング400内において、高周波電源装置420からヒンジ部250まで延出し、ここで屈曲して便座200の筐体210内へ引き込まれている。
【0055】
このような取り付け構造において、第1の電線501の一端は、ケーシング400内の高周波電源装置420に固定されている。また、第1の電線501の他端は、便座200の筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。これにより、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、この捩れが第2の電線には伝達しないことになる。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0056】
図9は、電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
図10は、図9に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
図9及び図10に表した暖房便座装置103では、便座200とケーシング400との間に接続された第1の電線501が、外側に露出している。この第1の電線501は、外側に露出した状態で垂れ下げられている。この垂れ下げは、便座200をケーシング400から着脱する際、第1の電線501に余裕を持たせるためである。
【0057】
電力供給線500の第1の電線501の一端は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420に固定されている。第1の電線501は、ケーシング400の外側に延出し、露出した部分が垂れ下げられ、便座200の筐体210内に引き込まれている。筐体210内に引き込まれた第1の電線501の他端は、筐体210内に設けられた第1の中継台510に固定されている。この第1の中継台510には、第2の電線502の一端が固定されている。そして、第2の電線502の他端は、誘導加熱コイル222に接続されている。
【0058】
このような取り付け構造により、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れや曲げ伸ばしなどの動きが生じても、この動きが第2の電線には伝達しない。したがって、第2の電線502を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができるようになる。
【0059】
図11は、第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式的平面図である。
図11に表したように、この暖房便座装置104では、便座200における開閉の中心となるヒンジ部250寄りに、第1の中継台510が配置されている。この第1の中継台510には、ケーシング400内の高周波電源装置420から第1の中継台510の方向a1に沿って第1の電線501が接続されている。また、第1の中継台510には、便座200の筐体210内から第1の中継台510の方向a2に沿って第2の電線502が接続されている。
【0060】
この取り付け構造においては、第1の中継台510がヒンジ部250寄りに配置されているため、電力供給線500のうち第1の電線501の長さを短くすることができる。すなわち、第1の電線501は普通線、第2の電線502はリッツ線である。このため、第1の電線501である普通線を短く、第2の電線502であるリッツ線を長くすることで、高周波電流の伝送ロスの低減を抑制できることになる。
【0061】
また、第1の中継台510には、第1の電線501及び第2の電線502が互いに異なる方向a1及びa2から接続されている。つまり、第1の中継台510によって電力供給線500の方向を変換している。これにより、第1の電線501及び第2の電線502をそれぞれ直線的に接続しつつ、電力供給線500の方向を変換できるようになる。
【0062】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図12は、他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
図12に表したように、この暖房便座装置110は、ケーシング400内に第2の中継台520をさらに備える。また、電力供給線500は、リッツ線による第3の電線503をさらに備える。
【0063】
第2の中継台520は、ケーシング400内に固定されている。一方、便座200の筐体210内には第1の中継台510が固定されている。第3の電線503は、ケーシング400内の高周波電源装置420と、第2の中継台520と、の間に接続されている。また、第2の中継台520と、第1の中継台510と、の間には、第1の電線501が接続されている。そして、第1の中継台510には、第2の電線502が接続されている。つまり、第1の電線501の両端は、第1の中継台510及び第2の中継台520にそれぞれ固定されている。
【0064】
このような暖房便座装置110では、第1の電線501を第1の中継台510と、第2の中継台520と、の間のみに設ければよい。したがって、電力供給線500のうち、第1の電線501の長さを短くでき、高周波電流の伝送ロスを抑制できるようになる。
【0065】
また、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510及び第2の中継台520から先の第2の電線502及び第3の電線503には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502及び第3の電線503を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0066】
図13は、他の実施の形態における他の構成を例示する模式的平面図である。
図13に表した暖房便座装置111は、ケーシング400内に第2の中継台520が設けられている点で図12に表した暖房便座装置110と共通する。一方、暖房便座装置111では、第1の電線501が、ケーシング400及び筐体210の外側に延出し、垂れ下げされている。
【0067】
すなわち、第1の電線501の一端は、第2の中継台520に固定され、他端は第2の中継台520に固定される。そして、第1の電線501の途中は、ケーシング400及び筐体210の外側に延出して設けられ、垂れ下げられた状態になっている。
【0068】
このような暖房便座装置111では、第1の電線501を垂れ下げて設けた分、便座200をケーシング400から取り外した際、便座200とケーシング400との間を広くあけることができる。これにより、便座200やケーシング400等の清掃が容易となる。
【0069】
また、暖房便座装置110と同様、便座200の開閉や着脱の際、第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510及び第2の中継台520から先の第2の電線502及び第3の電線503には、第1の電線501の捩れは伝達しない。したがって、第2の電線502及び第3の電線503を構成するリッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0070】
図14は、図13に表したような外側に露出した第1の電線の他の取り付け構造を例示する模式図である。
図14に例示した固定手段は、差し込み式の固定手段550である。すなわち、この固定手段550では、第1の電線501の途中に、矩形状のブッシュ551が設けられている。一方、ケーシング400または便座200の筐体210側には、ブッシュ551が差し込まれる矩形状の凹部を備えた開口部552が取り付けられている。
【0071】
開口部552の凹部は、ブッシュ551の外形に合わせた広さに設けられている。したがって、第1の電線501に取り付けられたブッシュ551を、ケーシング400または筐体210側の開口部552の凹部552aに差し込むことで、ブッシュ551が開口部552に嵌合される。
【0072】
また、ブッシュ551には切り欠き部551aが設けられ、開口部552には切り欠き部551aに対応した突起部552bが設けられている。したがって、ブッシュ551を開口部552に嵌合させる際、ブッシュ551の切り欠き部551aに、開口部552の突起部552bがはまり込み、ブッシュ551の電線方向に沿った抜けを防止する。このような固定手段550によって、第1の電線501をケーシング400または筐体210側にしっかりと固定できることになる。
【0073】
このような第1の電線501の固定により、便座200の開閉や着脱の際に第1の電線501に捩れが生じても、この捩れが第2の電線502には伝達しないことになる。すなわち、便座200の開閉や着脱には、第1の電線501の捩れが伴う。この第1の電線501に捩れが生じても、第1の中継台510よりも誘導加熱コイル222側の第2の電線502や、第2の中継台520よりも高周波電源装置420側の第3の電線503は固定されたままであり、第2の電線502及び第3の電線503に捩れが伝わらない。これにより、第2の電線502の筐体210に対する位置及び第3の電線503のケーシング400に対する位置が変化せず、リッツ線の絶縁被覆の剥がれを抑制することができる。
【0074】
図15は、他の実施の形態におけるその他の構成を例示する模式的平面図である。
図15に表した暖房便座装置112は、便座200の筐体210内に第1の中継台510が設けられ、ケーシング400内に第2の中継台520が設けられている点で、暖房便座装置110及び111と同様である。一方、暖房便座装置112では、第1の中継台510が、ヒンジ部250寄りに設けられている。
【0075】
このような暖房便座装置112では、第1の中継台510がヒンジ部250寄りに配置されているため、電力供給線500のうち第1の電線501の長さを短くすることができる。したがって、第1の電線501である普通線を短く、第2の電線502及び第3の電線503であるリッツ線を長くすることで、高周波電流の伝送ロスの低減を抑制できることになる。
【0076】
また、第1の中継台510及び第2の中継台520によって、電力供給線500を構成する第1の電線501、第2の電線502及び第3の電線503の接続方向を変換できる。したがって、第1の電線501、第2の電線502及び第3の電線503をそれぞれ直線的に接続しつつ、電力供給線500の方向を変換できるようになる。
【0077】
次に、本発明のさらに他の実施の形態について説明する。
図16は、他の実施の形態に係る暖房便座装置を説明する模式的平面図である。
図16(a)には、暖房便座装置120が例示され、図16(b)には、暖房便座装置121が例示されている。
暖房便座装置120及び121では、第1の電線501が保護部材600でシールドされている。
【0078】
図16(a)に表した暖房便座装置120においては、ケーシング400から便座200の第1の中継台510まで接続された第1の電線501の周囲を被覆する保護部材600が設けられている。この保護部材600によって、第1の電線501で発生した磁界の外部への漏れを防止する。
【0079】
保護部材600の材料は、磁界を透過させにくいもの、すなわち、磁界を吸収または反射するものを用いることができる。具体的には、保護部材600の材料としては、アルミニウム、ステンレスのほか、銅、金、銀、ニッケル、これらを含む合金などが挙げられる。
【0080】
ここで、便座200の筐体210内に設けられた第1の中継台510以降の第2の電線502には、導電体231が被せられている。導電体231は、誘導加熱コイル222で発生した渦電流によりって発熱する発熱体であるとともに、便座200の外への磁界の漏れを抑制するシールドとしての役目も果たす。したがって、導電体231で覆われた部分には、必ずしも保護部材600を設ける必要はない。
【0081】
図16(b)に表した暖房便座装置121においては、ケーシング400及び便座200の外側に垂れ下げられた第1の電線501の周囲を被覆する保護部材600が設けられている。保護部材600は、一端がケーシング400内の高周波電源装置420に接続され、他端が便座200内の第1の電線501まで接続された第1の電線501の全体を覆う。
【0082】
第1の電線501は、外部に垂れ下げられていることから、被覆する保護部材600には可撓性を有する材料を用いることが望ましい。可撓性を有する保護部材600としては、例えば、弾性体に導電性材料を含有させたものや、導電体で形成されたコイルスプリング状のものや、導電体で形成されたメッシュ状のものが挙げられる。これにより、外部に垂れ下げられる第1の電線501であっても、動きを制限することなく、磁界の漏れを抑制できるようになる。
【0083】
また、図16(a)及び(b)に例示したいずれの例でも、ケーシング400から便座200に第1の電線501を引き回す場合、特に、ヒンジ部250の隙間(ケーシング400と便座200との隙間)において磁界の漏れが発生しやすい。本具体例によれば、ヒンジ部250の隙間にも保護部材600が設けられるため、ここからの磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。
【0084】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222へ高周波電流を送る電力供給線500について、外部へ漏れる磁界を抑制することができる。特に、ケーシング400に高周波電源装置420が内蔵されている場合、電力供給線500の敷設経路で磁界の漏れが発生しやすい。本実施の形態では、保護部材600によって、シールドしにくいヒンジ部250の隙間などでも確実に磁界の漏れを抑制することができる。これにより、ケーシング400内の制御部410に過度の磁界が入射することを抑えることができ、その制御部410を安定化させることができる。また、人体への磁界の入射量をより小さく抑えることができる。
【0085】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、電力供給線500に設けられる保護部材600の態様として、いずれか1つに限られず、一つの電力供給線500に保護部材600の複数の態様を適宜組み合わせるようにしてもよい。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0086】
10…トイレ装置、100,101,102,103,104,110,111,120,121…暖房便座装置、200…便座、210…筐体、222…誘導加熱コイル、231…導電体、250…ヒンジ部、260…コイルスプリング、300…便蓋、400…ケーシング、410…制御部、415…給電線、420…高周波電源装置、500…電力供給線、501…第1の電線、502…第2の電線、503…第3の電線、510…第1の中継台、520…第2の中継台、600…保護部材、800…洋式腰掛便器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座または便蓋と、
前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、
前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、
前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、
前記磁界によって誘導加熱される導電体と、
前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、
を備え、
前記電線は、
複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、
前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、
を有し、
前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記第1の電線の前記第2の電線と接続される端部は前記便座または便蓋に固定され、前記便座または便蓋の開閉による前記第1の電線の捩れが前記第2の電線に伝わらないことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座または便蓋内における開閉時の回転中心軸の近傍に固定され、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を接続する第1の中継部をさらに備え、
前記第1の中継部によって、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を互いに異なる方向から接続したことを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第1の電線は、導電体で磁気シールドされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記ケーシング内に設けられた第2の中継部をさらに備え、
前記電線は、
複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線であって、前記ケーシング内で前記高周波電源装置と、前記第1の電線と、の間に接続された第3の電線をさらに有し、
前記第3の電線は、前記第2の中継部によって、前記第1の電線と接続されたことを特徴とする請求項3記載の暖房便座装置。
【請求項1】
便座または便蓋と、
前記便座または便蓋を開閉可能に支持するケーシングと、
前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、
前記便座または便蓋に内蔵され、前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、
前記磁界によって誘導加熱される導電体と、
前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルに前記高周波電流を送る電線と、
を備え、
前記電線は、
複数本の導線を束ねた状態で全体が被覆された第1の電線と、
前記第1の電線と直列に接続され、複数本の絶縁素線が撚り合わされた第2の電線と、
を有し、
前記第1の電線は、前記便座または便蓋の開閉によって前記電線に捩れが生ずる範囲に設けられたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記第1の電線の前記第2の電線と接続される端部は前記便座または便蓋に固定され、前記便座または便蓋の開閉による前記第1の電線の捩れが前記第2の電線に伝わらないことを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記便座または便蓋内における開閉時の回転中心軸の近傍に固定され、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を接続する第1の中継部をさらに備え、
前記第1の中継部によって、前記第1の電線と、前記第2の電線と、を互いに異なる方向から接続したことを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記第1の電線は、導電体で磁気シールドされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記ケーシング内に設けられた第2の中継部をさらに備え、
前記電線は、
複数本の絶縁素線が撚り合わされた電線であって、前記ケーシング内で前記高周波電源装置と、前記第1の電線と、の間に接続された第3の電線をさらに有し、
前記第3の電線は、前記第2の中継部によって、前記第1の電線と接続されたことを特徴とする請求項3記載の暖房便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−205818(P2012−205818A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74713(P2011−74713)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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