暖房便座装置
【課題】誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、漏れ磁界をより小さく抑えることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【解決手段】便座または便蓋と、前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、を備えた暖房便座装置が提供される。
【解決手段】便座または便蓋と、前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、を備えた暖房便座装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、ポリプロピレン等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷たさを感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置について、省エネルギー化を図るための提案がされている。
【0003】
例えば、交流電力を発生する誘導加熱用電源と、誘導加熱用電源から送られる電流により磁界を発生する加熱用励磁コイルと、加熱用励磁コイルで誘起される誘導電流により発熱する発熱体と、を備えた温水式洗浄便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された温水式洗浄便座装置では、誘導電流により発熱体が瞬時に発熱し、便座面は瞬間的に暖まる。そのため、便座を保温状態に保つことなく、着座時以外は、電力供給を停止させることができ、大きな省エネルギー効果を発揮させることができる。
【0004】
ところが、家庭用電源から高周波電流を発生する高周波電源装置を、暖房便座装置のケーシング(便座や便蓋の開閉を支持する筐体)に内蔵した場合、ケーシング内の高周波電源装置から便座の加熱用励磁コイルまで配線を設ける必要がある。従来の便座コードに高周波電流を流すと、便座コードから磁界の漏れが発生してしまう。便座コードは、便座やケーシングから露出しているので、便座コードから漏れる磁界が大きくなると、暖房便座装置に設けられた制御部へ影響を与える恐れがある。また、トイレを利用する人への影響も考慮すると、磁界の漏れを一定以下に抑える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−228964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、漏れ磁界をより小さく抑えることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、便座または便蓋と、前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0008】
この暖房便座装置によれば、高周波電流を電力コードに流しても、保護部材により電力コードから外部へ漏れる磁界を低減できる。これにより、マイコン等の制御部や人への磁界の入射量を低減することができ、安全性の高い誘導加熱式の暖房便座装置を提供することができるようになる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記保護部材が導電体からなり、前記導電体が、前記電線を通る高周波電流により生じる磁界によって誘導加熱され、前記電力コードから外部への磁界漏れを低減させることを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、電線から発生する磁界で、電線の周囲を被覆する導電体製の保護部材は発熱させて磁界を消費することにより、電力コードから外部への磁界の漏れが低減される。
【0011】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記導電体が、アルミニウムからなることを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、アルミニウムによって、電力コードから外部への磁界の漏れを効果的に低減できるようになる。すなわち、アルミニウムは磁界を反射しやすい性質を有する。磁界は、アルミニウムの保護部材の中で反射しながら少しずつ保護部材で誘導加熱される。よって、電力コードが極度に熱くなることはない。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、弾性体に導電性材料を含有させた材料により形成されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、ゴム等の弾性体に導電性材料を含有させた材料で保護部材が形成されていることから、弾性体の可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0015】
また、第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、導電体で形成されたコイルスプリングであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0016】
この暖房便座装置によれば、コイルスプリングで保護部材が形成されていることから、コイルスプリングの可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0017】
また、第6の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、導電体で形成されたメッシュであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、導電体のメッシュで保護部材が形成されていることから、コイルスプリングの可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0019】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記電力コードとして、電流が流れる方向が逆となる対の電線を撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルが用いられた暖房便座装置である。
【0020】
この暖房便座装置によれば、電力コード内で磁界が打ち消されるので、電力コードの外に放出される磁界をさらに低減させることができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、漏れ磁界をより小さく抑えることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する模式的斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図3】便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
【図4】図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
【図5】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図6】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図7】保護部材の態様を例示する模式的斜視図である。
【図8】電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
【図9】電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
【図10】本実施の形態で適用される電力供給線及び保護部材を例示する模式図である。
【図11】電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
【図12】図11に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
【図13】本実施の形態で適用される高周波電源部の要部構成の一例を例示するブロック図である。
【図14】本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
【図15】本実施の形態で適用される高周波電源部の動作を説明するための回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
図2は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図で、(a)は、暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図、(b)は、(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。
【0024】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。本実施の形態に係る暖房便座装置100は、便座200と、便蓋300と、便座200及び便蓋300の開閉を支持するケーシング400と、を備える。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。ケーシング400には、高周波電流を生成する高周波電源装置420が内蔵される。便座200には、高周波電源装置420から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイル222が設けられる。便座200には、磁界によって誘導加熱される導電体からなる発熱部231が設けられる。より具体的には、発熱部231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0025】
高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電流を誘導加熱コイル222へ送る電線を備えた電力供給線(電力コード)500が接続されている。すなわち、電力供給線500には、便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所がある。そして、本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500の電線の周囲の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材600が設けられている。
これにより、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置100であって、電力供給線500から外へ漏れ出る磁界をより小さく抑えることができるようになる。
【0026】
なお、ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などが内蔵されていてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0027】
また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、制御部410が設けられている。そして、商用電源から供給される電力(以下、説明の便宜上「商用電力」と称する)は、ケーシング400の内部に設けられた制御部410と高周波電源装置420に投入される。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて高周波電流を生成する。
【0029】
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0030】
便座200の筐体210の内部には、高周波電源装置420から供給された高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222と、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する電力供給線500の一部と、誘導加熱コイル222を支持する支持体280と、が設けられている。電力供給線500は、例えば個々に絶縁された複数の導体素線を撚り合わせた構造を有するリッツ線である。
【0031】
なお、図2(b)に表した誘導加熱コイル222は、支持体280により支持されているが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、支持体280に支持されることなく、例えば便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていてもよい。
【0032】
ここで、誘導加熱コイル222は、電力供給線500と同じ材質の導線(例えば、リッツ線)であっても、異なる材質の導線であってもよい。誘導加熱コイル222と電力供給線500とが同じ材質の導線の場合、誘導加熱コイル222は、導線のうちコイルとしての巻線の開始位置から終了位置までの部分をいう。また、電力供給線500は、導線のうち高周波電源装置420から誘導加熱コイル222までの部分をいう。
【0033】
誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する発熱部231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。
【0034】
発熱部231の材料としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を発熱部231に用いることがより好ましい。なお、発熱部231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と発熱部231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが発熱部231の表面に施されることがより好ましい。
【0035】
制御部410と高周波電源装置420とは、給電線415により接続されている。商用電力などの低周波電流と、制御部410から供給される制御信号と、は給電線415を通して高周波電源装置420に供給される。つまり、制御部410は、高周波電源装置420の動作を制御する。給電線415は、高周波電源装置420から出力される高周波電流よりも相対的に周波数が低い低周波電流を高周波電源装置420に供給する。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて、低周波電流を高周波電流に変換する。すなわち、高周波電源装置420は、給電線415を通して供給される低周波電流を、その周波数よりも高い周波数の電流(以下、説明の便宜上「高周波電流」と称する)に変換する。
【0036】
高周波電源装置420により変換された高周波電流は、電力供給線500を通して誘導加熱コイル222へ流れる。そうすると、誘導加熱コイル222は、磁界を発生する。誘導加熱コイル222が磁界を発生すると、発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。そのため、本実施の形態に係る暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などの抵抗加熱手段により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
図2に例示した暖房便座装置100では、便座200の筐体210の内部に誘導加熱コイル222が設けられているが、便蓋300に誘導加熱コイル222が設けられていてもよい。便蓋300に誘導加熱コイル222が設けられた暖房便座装置100では、便蓋300が閉じた状態において、誘導加熱コイル222により磁界を発生させる。これにより、便座200に設けられた発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0038】
また、発熱部231についても、便座200ではなく、便蓋300に設けられていてもよい。なお、以下の説明では、便座200に誘導加熱コイル222及び発熱部231が設けられている構成を例とする。
【0039】
本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500の電線510a及び510bのうち、少なくとも便座200または便蓋300、及びケーシング400のいずれにも内蔵されていない箇所を、磁界の漏れを抑制する保護部材600で覆っている。これにより、電力供給線500から外部へ漏れる磁界を抑制する。保護部材600は、電力供給線500の全てを被覆してもよい。少なくとも、電力供給線500において、磁界の漏れを抑制する部材(例えば、発熱部231)が設けられていない部分については、保護部材600で被覆する。これにより、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500から外部へ磁界が漏れ出すことを抑制できる。
【0040】
図2に例示した暖房便座装置100では、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまで電力供給線500が接続されている。電力供給線500は、ケーシング400から便座200の筐体210内に引き込まれている。ここで、便座200の筐体210に設けられた発熱部231は、誘導加熱コイル222で発生した渦電流によって発熱する発熱体であるとともに、便座200の外への磁界の漏れを抑制するシールドとしての役目も果たす。したがって、保護部材600は、電力供給線500における高周波電源装置420側から便座200の筐体210内における発熱部231の位置までを少なくとも覆うよう設けられる。すなわち、電力供給線500において、発熱部231や他の導電体などの磁界の漏れを抑制するシールドの役目を果たす部材によって覆われている部分については、必ずしも保護部材600を被覆する必要はない。
【0041】
一方、ケーシング400の内部において、電力供給線500を保護部材600で被覆することにより、ケーシング400の内部での電力供給線500からの磁界の漏れを抑制できる。その結果として、ケーシング400に内蔵された制御部410やその他各種の回路や部品に磁界が及ぶことによる誤動作やその他の良くない影響を解消できる。
【0042】
なお、保護部材600は、電力供給線500の周りを囲むよう設けられ、高いシールド効果を得られる。したがって、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500の全体を覆うように設けると、磁界の漏れの抑制に対して非常に効果的である。
【0043】
図3は、便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
図4は、図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
図3に表したように、便座200は、後方側の左右に設けられたヒンジ部250を支点として、前方側が上方に開く。便座200を開くと、ヒンジ部250の近傍において、ケーシング400から便座200に引き込まれる電力供給線500の一部がケーシング400及び筐体210から外に露出している。
【0044】
図4では、ヒンジ部250の近傍における電力供給線500の取り回し状態が例示されている。本実施の形態では、このような電力供給線500の周囲に保護部材600が被せられている。図4に例示した保護部材600は、一部破断で示されている。実際には、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から、ケーシング400の外に延出し、屈曲して便座200の筐体210内に至るまで保護部材600が設けられている。
【0045】
ここで、便座200の筐体210内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260に電力供給線500が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、筐体210に固定され、他端は、挿入された電力供給線500の途中に固定されている。これにより、便座200の脱着の際、電力供給線500の引き出し、引き戻しが確実に行われる。
【0046】
すなわち、便座200をケーシング400から取り外し、引き離そうとすると、筐体210内に引き込まれていた電力供給線500の一部が筐体210から引き出される。電力供給線500が引き出されるため、便座200とケーシング400との隙間を十分に確保でき、便座200やケーシング400の掃除を容易に行うことができる。ここで、筐体210から電力供給線500を引き出した量に応じて、コイルスプリング260が縮むことになる。
【0047】
一方、便座200をケーシング400の装着位置に戻すと、コイルスプリング260の伸張力によって電力供給線500が便座200の筐体210内に自動的に引き込まれる。便座200をケーシング400に装着した状態では、電力供給線500は、コイルスプリング260の伸張力によって元の位置に確実に戻されることになる。
【0048】
図5は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図5(a)は、便座を開いた状態、図5(b)は、便座を閉じた状態をそれぞれ例示している。
便座200を支持するヒンジ部250には、ヒンジサポート251が設けられている。ヒンジサポート251は、ケーシング400から立ち上がり、ヒンジ部250を支持している。電力供給線500は、ケーシング400からヒンジサポート251を介して便座200の筐体210に引き込まれている。ヒンジ部250には、中空形状の柱252が設けられている。電力供給線500は、ケーシング400からこの中空形状の柱252内を介して便座200の筐体210内に引き込まれている。中空形状の柱252内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260内に電力供給線500が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、中空形状の柱252に固定され、他端は電力供給線500の途中に固定されている。これにより、便座200を取り外す場合において、電力供給線500をケーシング400から引き出そうとすると、コイルスプリング260を縮める状態になる。
【0049】
一方、便座200を所定位置に固定すると、電力供給線500が自由状態になるので、コイルスプリング260が伸張し、自動的に電力供給線500をケーシング400内に引き込むことができるようになる。
【0050】
上記のような取り付け構造を有する暖房便座装置100であっても、電力供給線500の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所に保護部材600が設けられている。例えば、電力供給線500のうち、便座200及び中空形状の柱252から露出する部分や、シールド部材によって覆われていない部分に保護部材600を設ける。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0051】
図6は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
この便座200においては、ヒンジ部250の中に電力供給線500が通されている。電力供給線500は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から便座200のヒンジ部250を介して筐体210内の誘導加熱コイル(図示せず)まで引き回されている。すなわち、電力供給線500は、ケーシング400内において、高周波電源装置420からヒンジ部250まで延出し、ここで屈曲して便座200の筐体210内へ引き込まれている。
【0052】
このような取り付け構造であっても、電力供給線500の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所には保護部材600が設けられている。例えば、電力供給線500のうち、ケーシング400内からヒンジ部250を介して便座200内の途中まで、保護部材600が設けられている。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0053】
図7は、保護部材の態様を例示する模式的斜視図である。
なお、図7では、電力供給線500がヒンジ部250を貫通する構造を例示しているが、図3及び図4に例示した構造であっても同様に適用可能である。
【0054】
図7(a)に表した保護部材600は、ケーシング400内に設けられた第1保護部材610と、ケーシング400の外側に延出した第2保護部材620と、を備える。第1保護部材610は筒状をなしており、ケーシング400内に敷設された電力供給線500の周囲を覆うよう設けられている。第2保護部材620は、筒状であってL字型に屈曲して設けられている。すなわち、第2保護部材620の一端620aはケーシング400の内側に設けられ、他端620bはケーシング400の外側へ延出して、途中で屈曲している。
【0055】
第1保護部材610の一端610aは、第2保護部材620の一端620a側に、わずかな隙間を持って内挿されている。また、第1保護部材610はケーシング400内で固定されている。これにより、便座200の開閉動作に伴い、第2保護部材620が第1保護部材610を中心として回動する状態になる。
【0056】
電力供給線500は、第1保護部材610の中を通り、第2保護部材620の屈曲に従い曲げられる。したがって、電力供給線500は、ケーシング400の中から外に至るまで保護部材600に覆われることになる。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0057】
図7(b)に表した保護部材600は、ケーシング400内からケーシング400外へ延出する筒状の第1保護部材610を備える。第1保護部材610の他端610b側はケーシング400内に配置され、一端610a側はケーシング400の外側(便座内)へと延出している。電力供給線500は、他端610bから第1保護部材610の中を通り、一端610aから外へと延出する。これにより、ケーシング400内及びヒンジ部250の隙間において、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する。なお、ケーシング400から外側においては、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する別のシールド部材SPを設けておく必要がある。
【0058】
図7(c)に表した保護部材600は、ケーシング400内からケーシング400外へ延出する筒状であってL字型の第2保護部材620を備える。第2保護部材620の一端620aはケーシング400内に配置され、他端620bはケーシング400の外側(便座内)へと延出し、途中で屈曲している。電力供給線500は、一端620aから第2保護部材620の中を通り、他端620bから外へと延出する。これにより、ヒンジ部250の隙間からケーシング400の外側において、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する。なお、ケーシング400内においては、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する別のシールド部材SPを設けておく必要がある。
【0059】
いずれの例でも、ケーシング400から便座200に電力供給線500を引き回す場合、特に、ヒンジ部250の隙間(ケーシング400と便座200との隙間)において磁界の漏れが発生しやすい。つまり、ケーシング400内や便座200内にシールド部材が設けられていても、ヒンジ部250の隙間は、シールドの漏れが生じる部分だからである。本実施の形態によれば、ヒンジ部250の隙間にも保護部材600が設けられるため、ここからの磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。
【0060】
図8〜図9は、電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
漏れ磁束の測定点Pは、図中の十字点で示される。
図8は、電力供給線500を構成する2本の導線510a及び510bの態様による漏れ磁束の測定について説明する図である。
図9は、電力供給線500と保護部材600との位置関係による漏れ磁束の測定について説明する図である。
なお、いずれの図においても、導線510a及び510bをそれぞれ1本の実線で示しているが、実際には複数本の被覆線が撚りあわされたリッツ線が用いられている。また、2本の導線510a及び510bでは、高周波電流について互いに電流の流れる方向が逆になっている。
また、この測定は、電力供給線500の周囲に保護部材600を被せることによる漏れ磁束の影響を比較するため、電力供給線500の仮想モデルにある一定電流を流して測定したものである。
【0061】
図8(a)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを離間して配置した状態での測定を例示している。この態様において、導線510aの測定点P1での漏れ磁束は、85.3マイクロテスラ(μT)、導線510bの測定点P2での漏れ磁束は、87.4μTであった。
【0062】
図8(b)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを平行に隙間なく配置した状態での測定を例示している。この態様において、電力供給線500の測定点P3での漏れ磁束は、23.8μTであった。
【0063】
図8(c)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを撚り込んだ、シールド・ツイステッド・ペア・ケーブルにした状態での測定を例示している。この態様において、電力供給線500の測定点P4での漏れ磁束は、10.5μTであった。
【0064】
図8に例示する漏れ磁束の測定結果によれば、電力供給線500の2本の導線510a及び510bの間隔は狭い方がよい。また、2本の導線510a及び510bを撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルを用いるのがより好ましい。
【0065】
図9(a)では、電力供給線500を保護部材600の一方側に寄せて配置し、寄せた側での測定を例示している。なお、保護部材600には、アルミニウムの管が用いられている。この態様において、測定点P5での漏れ磁束は、2.8μTであった。
【0066】
図9(b)では、電力供給線500を保護部材600の他方側に寄せて配置し、寄せた側とは反対の側での測定を例示している。なお、保護部材600には、アルミニウムの管が用いられている。この態様において、測定点P6での漏れ磁束は、2.5μTであった。
【0067】
図9(a)、(b)に例示する漏れ磁束の測定結果によれば、電力供給線500から離れている方が漏れ磁束が少ない。しかし、電力供給線500に対してどの方向に漏れ磁束で影響を受ける対象物が配置されるか分からない。したがって、図9(c)に例示したように、電力供給線500を保護部材600の中央に通すことが好ましい。
【0068】
ここで、図9(c)に例示した測定点P7において、保護部材600の材質、形状、大きさ(径)等を変えた場合の漏れ磁束の測定結果について説明する。
【0069】
(1)材質:アルミニウム、形状:管、径:25ミリメートル(mm)、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、0.7μTであった。
(2)材質:アルミニウム、形状:管、径:18mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.2μTであった。
(3)材質:アルミニウム、形状:テープ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、8.8μTであった。
(4)材質:ステンレス、形状:管、径:32mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.8μTであった。
(5)材質:ステンレス、形状:管、径:19mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.8μTであった。
(6)材質:ステンレス、形状:テープ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、5.9μTであった。
(7)材質:ステンレス、形状:メッシュ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、18.7μTであった。
(8)材質:ステンレス、形状:テープ、による保護部材600を接地した場合、測定点P7での漏れ磁束は、5.9μTであった。
【0070】
これらの測定結果のなかでは、保護部材600として、材質はアルミニウム、形状は管、径は25mm、にすると最も漏れ磁束を抑制できることが分かった。
【0071】
なお、保護部材600の材料は、磁界を透過させにくいもの、すなわち、磁界を吸収または反射するものを用いることができる。具体的には、保護部材600の材料としては、アルミニウム、ステンレスのほか、銅、金、銀、ニッケル、これらを含む合金などが挙げられる。
【0072】
図10は、本実施の形態で適用される電力供給線及び保護部材を例示する模式図である。
図10(a)に例示した電力供給線500は、2本の導線510a及び510bを撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルである。2本の導線510a及び510bは、高周波電流について互いに電流の流れる方向が逆になっている。これにより、導線510a及び510bで発生した磁界が互いに打ち消され、漏れ磁束の発生を抑制する。図8(c)に例示した漏れ磁束の測定結果より、電力供給線500としては、シールド・ツイステッド・ペア・ケーブルを用いることが望ましい。
【0073】
図10(b)に例示した保護部材600は、弾性体650に導電性材料660を含有させたものである。弾性体650には、例えばゴムが用いられる。導電性材料660には、アルミニウム、ステンレス、銀、銅、ニッケル等の金属粉末や金属繊維が用いられる。この例では、保護部材600の略中心に電力供給線500を通している。電力供給線500と保護部材600とは、電気的に絶縁されている。このような保護部材600により、可撓性とともに磁界の漏れを抑制するシールド効果を得られるようになる。
【0074】
図10(c)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたコイルスプリング670である。電力供給線500は、このコイルスプリング670内に挿入されている。このようなコイルスプリング670による保護部材600を用いることで、可撓性とともに磁界の漏れを抑制するシールド効果を得られるようになる。保護部材600がコイルスプリング670である場合、このコイルスプリング670と、図4及び図5に例示したコイルスプリング260と、を兼用にしてもよい。これにより、便座200の着脱時における電力供給線500の引き出し、引き戻しのための付勢と、磁界のシールド効果とを兼ね合わせることが可能になる。
【0075】
図10(d)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたコイルスプリング670と、コイルスプリング670の周囲を被覆する樹脂チューブ700と、を備える。樹脂チューブ700には、例えばゴム製チューブが用いられる。このような保護部材600では、コイルスプリング670による磁界のシールド効果とともに、コイルスプリング670及び樹脂チューブ700による可撓性を得られる。また、樹脂チューブ700によってコイルスプリング670を保護することができる。
【0076】
図10(e)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたメッシュ680である。電力供給線500は、このメッシュ680内に挿入されている。このようなメッシュ680による保護部材600を用いることで、可撓性とともに磁界のシールド効果を得られるようになる。
【0077】
図10(b)〜(e)に例示した可撓性を有する保護部材600は、図1に例示した暖房便座装置100以外に、電力供給線500が洋式腰掛便器800の外側に露出する暖房便座装置に適用可能である。
【0078】
図11は、電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
図12は、図11に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
図11及び図12に表した暖房便座装置110では、便座200とケーシング400との間に接続された電力供給線500が、外側に露出している。電力供給線500は、外側に露出した状態で垂れ下げられている。
【0079】
本実施の形態において、電力供給線500における少なくとも外側に露出する部分には、保護部材600が被覆されている。図12に例示した暖房便座装置110では、高周波電源装置420から便座200の発熱部231の位置まで保護部材600が設けられている。ここで、ケーシング400内や便座200の筐体210内に発熱部231以外の磁界のシールド効果を有する部材が設けられている場合、その部分の下側には保護部材600を必ずしも設けなくてよい。なお、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500の全体を保護部材600で覆うようにすれば、磁界の漏れの抑制に対して非常に効果的である。
【0080】
また、電力供給線500が垂れ下がる部分については、ある程度自由な動きが必要になる。したがって、少なくとも垂れ下がる部分については、図10(b)〜(e)に例示したような可撓性を有する保護部材600で被覆することが望ましい。
【0081】
本実施の形態に係る暖房便座装置110によれば、電力供給線500が外側に露出している場合でも、磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。また、可撓性を有する保護部材600を適用することで、外側に垂れ下がる部分の電力供給線500の動きを制限せずに、磁界のシールド効果を発揮できるようになる。
【0082】
次に、高周波電源装置420について、図面を参照しつつ説明する。
図13は、本実施の形態で適用される高周波電源部の要部構成の一例を例示するブロック図である。
また、図14は、本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
また、図15は、本実施の形態で適用される高周波電源部の動作を説明するための回路構成図である。
【0083】
高周波電源装置420は、交流電源である商用電源430から供給される電流を整流する整流部421と、整流部421により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する平滑部423と、コンデンサ426と、スイッチ部427と、を有する。コンデンサ426と、便座200または便蓋300に内蔵された誘導加熱コイル222と、は共振現象を生ずる共振部425として機能する。高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電源装置420で生成した高周波電流を誘導加熱コイル222に供給する電力供給線500が設けられる。電力供給線500の少なくとも一部には、保護部材600が被覆されている。これにより、電力供給線500から外側に漏れる磁界を抑制する。
【0084】
整流部421は、正負が入れ替わる商用電源430の電流や電圧を例えば正のみに整流し、共振しやすい状態とする。平滑部423は、共振部425において電力が不足した場合には、電力を供給することができる。
【0085】
スイッチ部427は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。スイッチ部427は、制御部410から給電線415を介して供給される制御信号により、「入」(オン)と「切」(オフ)の動作をする。
【0086】
まず、制御部410がスイッチ部427を「入」の状態に制御すると、商用電源430から供給された電流は、図15(a)に表したように、整流部421により整流され、平滑部423により平滑化され、誘導加熱コイル222に流れる。そして、誘導加熱コイル222にエネルギーが溜まる。
【0087】
続いて、制御部410がスイッチ部427を「切」の状態に制御すると、図15(b)に表したように、商用電源430からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル222に溜められたエネルギーがコンデンサ426へ移動し共振する。
続いて、制御部410がスイッチ部427を再び「入」の状態に制御すると、図15(c)に表したように、コンデンサ426へ移動していたエネルギーが誘導加熱コイル222へ戻り共振する。
【0088】
このように、制御部410がスイッチ部427の「入」の状態と「切」の状態とを切り替え制御することにより、共振部425において共振が生じる。その結果、高周波電源装置420は、高周波電流を生成し、その高周波電流を誘導加熱コイル222へ供給することができる。
【0089】
なお、本実施形態の高周波電源装置420は、図13〜図15に例示したものには、限定されない。例えば、図13に表した構成において、整流部421を含まないものや、整流部421と平滑部423を含まないものを、高周波電源装置420としてもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222へ高周波電流を送る電力供給線500について、外部へ漏れる磁界を抑制することができる。特に、ケーシング400に高周波電源装置420が内蔵されている場合、電力供給線500の敷設経路で磁界の漏れが発生しやすい。本実施の形態では、保護部材600によって、ケーシング400内やシールドしにくいヒンジ部250の隙間などでも確実に磁界の漏れを抑制することができる。これにより、ケーシング400内の制御部410に過度の磁界が入射することを抑えることができ、その制御部410を安定化させることができる。また、人体への磁界の入射量をより小さく抑えることができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、電力供給線500に設けられる保護部材600の態様として、いずれか1つに限られず、一つの電力供給線500に保護部材600の複数の態様を適宜組み合わせるようにしてもよい。
また、上記説明した暖房便座装置100及び110としては、便座200及び便蓋300が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、便座200のみがケーシング400に軸支され、便蓋300が設けられていないものも、本発明の範囲に含まれる。この場合には、誘導加熱コイル222と発熱部231は、いずれも便座200に設けるようにすればよい。
【0092】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0093】
10…トイレ装置、100,110…暖房便座装置、200…便座、210…筐体、222…誘導加熱コイル、231…発熱部、250…ヒンジ部、260…コイルスプリング、300…便蓋、400…ケーシング、410…制御部、415…給電線、420…高周波電源装置、421…整流部、423…平滑部、425…共振部、426…コンデンサ、427…スイッチ部、600…保護部材、800…洋式腰掛便器
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、便器に設けられる便座を暖めることができる暖房便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、便座の座面は、ポリプロピレン等の樹脂で製造されているため、使用者は、冬場などの気温の低いときに冷えた便座に座ると冷たさを感じる場合がある。そこで、便座を暖めることができる暖房便座装置がある。このような暖房便座装置について、省エネルギー化を図るための提案がされている。
【0003】
例えば、交流電力を発生する誘導加熱用電源と、誘導加熱用電源から送られる電流により磁界を発生する加熱用励磁コイルと、加熱用励磁コイルで誘起される誘導電流により発熱する発熱体と、を備えた温水式洗浄便座装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された温水式洗浄便座装置では、誘導電流により発熱体が瞬時に発熱し、便座面は瞬間的に暖まる。そのため、便座を保温状態に保つことなく、着座時以外は、電力供給を停止させることができ、大きな省エネルギー効果を発揮させることができる。
【0004】
ところが、家庭用電源から高周波電流を発生する高周波電源装置を、暖房便座装置のケーシング(便座や便蓋の開閉を支持する筐体)に内蔵した場合、ケーシング内の高周波電源装置から便座の加熱用励磁コイルまで配線を設ける必要がある。従来の便座コードに高周波電流を流すと、便座コードから磁界の漏れが発生してしまう。便座コードは、便座やケーシングから露出しているので、便座コードから漏れる磁界が大きくなると、暖房便座装置に設けられた制御部へ影響を与える恐れがある。また、トイレを利用する人への影響も考慮すると、磁界の漏れを一定以下に抑える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−228964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、漏れ磁界をより小さく抑えることができる暖房便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、便座または便蓋と、前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、を備えたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0008】
この暖房便座装置によれば、高周波電流を電力コードに流しても、保護部材により電力コードから外部へ漏れる磁界を低減できる。これにより、マイコン等の制御部や人への磁界の入射量を低減することができ、安全性の高い誘導加熱式の暖房便座装置を提供することができるようになる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記保護部材が導電体からなり、前記導電体が、前記電線を通る高周波電流により生じる磁界によって誘導加熱され、前記電力コードから外部への磁界漏れを低減させることを特徴とする暖房便座装置である。
【0010】
この暖房便座装置によれば、電線から発生する磁界で、電線の周囲を被覆する導電体製の保護部材は発熱させて磁界を消費することにより、電力コードから外部への磁界の漏れが低減される。
【0011】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記導電体が、アルミニウムからなることを特徴とする暖房便座装置である。
【0012】
この暖房便座装置によれば、アルミニウムによって、電力コードから外部への磁界の漏れを効果的に低減できるようになる。すなわち、アルミニウムは磁界を反射しやすい性質を有する。磁界は、アルミニウムの保護部材の中で反射しながら少しずつ保護部材で誘導加熱される。よって、電力コードが極度に熱くなることはない。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、弾性体に導電性材料を含有させた材料により形成されたことを特徴とする暖房便座装置である。
【0014】
この暖房便座装置によれば、ゴム等の弾性体に導電性材料を含有させた材料で保護部材が形成されていることから、弾性体の可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0015】
また、第5の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、導電体で形成されたコイルスプリングであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0016】
この暖房便座装置によれば、コイルスプリングで保護部材が形成されていることから、コイルスプリングの可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0017】
また、第6の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記保護部材が、導電体で形成されたメッシュであることを特徴とする暖房便座装置である。
【0018】
この暖房便座装置によれば、導電体のメッシュで保護部材が形成されていることから、コイルスプリングの可撓性によって電力コードを楽に曲げることができる。これにより、無理なく便座の開閉や着脱を行うことができるようになる。
【0019】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記電力コードとして、電流が流れる方向が逆となる対の電線を撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルが用いられた暖房便座装置である。
【0020】
この暖房便座装置によれば、電力コード内で磁界が打ち消されるので、電力コードの外に放出される磁界をさらに低減させることができるようになる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の態様によれば、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置であって、漏れ磁界をより小さく抑えることができる暖房便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する模式的斜視図である。
【図2】本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図である。
【図3】便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
【図4】図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
【図5】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図6】他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
【図7】保護部材の態様を例示する模式的斜視図である。
【図8】電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
【図9】電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
【図10】本実施の形態で適用される電力供給線及び保護部材を例示する模式図である。
【図11】電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
【図12】図11に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
【図13】本実施の形態で適用される高周波電源部の要部構成の一例を例示するブロック図である。
【図14】本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
【図15】本実施の形態で適用される高周波電源部の動作を説明するための回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
図2は、本実施の形態にかかる暖房便座装置を表す模式図で、(a)は、暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図、(b)は、(a)に表した切断面A−Aにおける模式的断面図である。
【0024】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器800と、その上に設けられた暖房便座装置100と、を備える。本実施の形態に係る暖房便座装置100は、便座200と、便蓋300と、便座200及び便蓋300の開閉を支持するケーシング400と、を備える。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。ケーシング400には、高周波電流を生成する高周波電源装置420が内蔵される。便座200には、高周波電源装置420から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイル222が設けられる。便座200には、磁界によって誘導加熱される導電体からなる発熱部231が設けられる。より具体的には、発熱部231は、誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0025】
高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電流を誘導加熱コイル222へ送る電線を備えた電力供給線(電力コード)500が接続されている。すなわち、電力供給線500には、便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所がある。そして、本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500の電線の周囲の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材600が設けられている。
これにより、誘導加熱の原理を利用した暖房便座装置100であって、電力供給線500から外へ漏れ出る磁界をより小さく抑えることができるようになる。
【0026】
なお、ケーシング400の内部には、衛生洗浄装置としての機能部が併設されていてもよい。すなわち、ケーシング400には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴出する図示しない吐水ノズルを有する衛生洗浄機能部などが内蔵されていてもよい。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0027】
また、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などに向けて温風を吹き付けて乾燥させる「温風乾燥機能」や「脱臭ユニット」や「室内暖房ユニット」などの各種の機構が適宜設けられていてもよい。ただし、本発明においては、衛生洗浄機能部やその他の付加機能部は必ずしも設けなくてもよい。
【0028】
図2(a)に表したように、ケーシング400の内部には、制御部410が設けられている。そして、商用電源から供給される電力(以下、説明の便宜上「商用電力」と称する)は、ケーシング400の内部に設けられた制御部410と高周波電源装置420に投入される。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて高周波電流を生成する。
【0029】
図2(b)に表したように、便座200は、便座200の外形を形成する筐体210を有する。筐体210は、樹脂などの絶縁性を有する材料により形成されている。なお、筐体210は、複数の部材により形成されていてもよいし、1つの部材により形成されていてもよい。
【0030】
便座200の筐体210の内部には、高周波電源装置420から供給された高周波電流が通電されることにより磁界を発生する誘導加熱コイル222と、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に高周波電流を供給する電力供給線500の一部と、誘導加熱コイル222を支持する支持体280と、が設けられている。電力供給線500は、例えば個々に絶縁された複数の導体素線を撚り合わせた構造を有するリッツ線である。
【0031】
なお、図2(b)に表した誘導加熱コイル222は、支持体280により支持されているが、本発明はこれだけに限定されるわけではない。誘導加熱コイル222は、支持体280に支持されることなく、例えば便座200の内部の上面(着座面に対向する内面)210aに付設されていてもよい。
【0032】
ここで、誘導加熱コイル222は、電力供給線500と同じ材質の導線(例えば、リッツ線)であっても、異なる材質の導線であってもよい。誘導加熱コイル222と電力供給線500とが同じ材質の導線の場合、誘導加熱コイル222は、導線のうちコイルとしての巻線の開始位置から終了位置までの部分をいう。また、電力供給線500は、導線のうち高周波電源装置420から誘導加熱コイル222までの部分をいう。
【0033】
誘導加熱コイル222から発生する磁界で誘起される渦電流により発熱する発熱部231は、便座200の上面(着座面)に付設されている。
【0034】
発熱部231の材料としては、例えば鉄やステンレスなどの強磁性体、またはアルミニウムなどの常磁性体といった金属を用いることができる。便座200の外部に磁界を放出させにくくするためには、電気抵抗が大きい鉄やステンレスなどの強磁性体を発熱部231に用いることがより好ましい。なお、発熱部231が便座200の上面に設けられる場合には、人体と発熱部231とが直接的に接触しないように、塗装やコーティングなどが発熱部231の表面に施されることがより好ましい。
【0035】
制御部410と高周波電源装置420とは、給電線415により接続されている。商用電力などの低周波電流と、制御部410から供給される制御信号と、は給電線415を通して高周波電源装置420に供給される。つまり、制御部410は、高周波電源装置420の動作を制御する。給電線415は、高周波電源装置420から出力される高周波電流よりも相対的に周波数が低い低周波電流を高周波電源装置420に供給する。高周波電源装置420は、制御部410から供給される制御信号に基づいて、低周波電流を高周波電流に変換する。すなわち、高周波電源装置420は、給電線415を通して供給される低周波電流を、その周波数よりも高い周波数の電流(以下、説明の便宜上「高周波電流」と称する)に変換する。
【0036】
高周波電源装置420により変換された高周波電流は、電力供給線500を通して誘導加熱コイル222へ流れる。そうすると、誘導加熱コイル222は、磁界を発生する。誘導加熱コイル222が磁界を発生すると、発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。そのため、本実施の形態に係る暖房便座装置100は、誘導加熱の原理を利用し、便座200の着座面を急速に加熱することができ、より早く着座面を適温にすることができる。また、本実施形態にかかる暖房便座装置100は、便座200の着座面を急速に加熱することができるため、使用者が便座200を使用していないときには便座200を保温しておく必要はない。そのため、例えば「シーズヒータ」や、「ハロゲンヒータ」や、「カーボンヒータ」などの抵抗加熱手段により便座200の着座面を加熱する場合よりも省エネルギー化を図ることができる。
【0037】
図2に例示した暖房便座装置100では、便座200の筐体210の内部に誘導加熱コイル222が設けられているが、便蓋300に誘導加熱コイル222が設けられていてもよい。便蓋300に誘導加熱コイル222が設けられた暖房便座装置100では、便蓋300が閉じた状態において、誘導加熱コイル222により磁界を発生させる。これにより、便座200に設けられた発熱部231は、その磁界で誘起される渦電流により発熱する。
【0038】
また、発熱部231についても、便座200ではなく、便蓋300に設けられていてもよい。なお、以下の説明では、便座200に誘導加熱コイル222及び発熱部231が設けられている構成を例とする。
【0039】
本実施の形態に係る暖房便座装置100では、電力供給線500の電線510a及び510bのうち、少なくとも便座200または便蓋300、及びケーシング400のいずれにも内蔵されていない箇所を、磁界の漏れを抑制する保護部材600で覆っている。これにより、電力供給線500から外部へ漏れる磁界を抑制する。保護部材600は、電力供給線500の全てを被覆してもよい。少なくとも、電力供給線500において、磁界の漏れを抑制する部材(例えば、発熱部231)が設けられていない部分については、保護部材600で被覆する。これにより、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500から外部へ磁界が漏れ出すことを抑制できる。
【0040】
図2に例示した暖房便座装置100では、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまで電力供給線500が接続されている。電力供給線500は、ケーシング400から便座200の筐体210内に引き込まれている。ここで、便座200の筐体210に設けられた発熱部231は、誘導加熱コイル222で発生した渦電流によって発熱する発熱体であるとともに、便座200の外への磁界の漏れを抑制するシールドとしての役目も果たす。したがって、保護部材600は、電力供給線500における高周波電源装置420側から便座200の筐体210内における発熱部231の位置までを少なくとも覆うよう設けられる。すなわち、電力供給線500において、発熱部231や他の導電体などの磁界の漏れを抑制するシールドの役目を果たす部材によって覆われている部分については、必ずしも保護部材600を被覆する必要はない。
【0041】
一方、ケーシング400の内部において、電力供給線500を保護部材600で被覆することにより、ケーシング400の内部での電力供給線500からの磁界の漏れを抑制できる。その結果として、ケーシング400に内蔵された制御部410やその他各種の回路や部品に磁界が及ぶことによる誤動作やその他の良くない影響を解消できる。
【0042】
なお、保護部材600は、電力供給線500の周りを囲むよう設けられ、高いシールド効果を得られる。したがって、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500の全体を覆うように設けると、磁界の漏れの抑制に対して非常に効果的である。
【0043】
図3は、便座を開いた状態を例示する模式的斜視図である。
図4は、図3における矢印Bの部分を拡大した模式的斜視図である。
図3に表したように、便座200は、後方側の左右に設けられたヒンジ部250を支点として、前方側が上方に開く。便座200を開くと、ヒンジ部250の近傍において、ケーシング400から便座200に引き込まれる電力供給線500の一部がケーシング400及び筐体210から外に露出している。
【0044】
図4では、ヒンジ部250の近傍における電力供給線500の取り回し状態が例示されている。本実施の形態では、このような電力供給線500の周囲に保護部材600が被せられている。図4に例示した保護部材600は、一部破断で示されている。実際には、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から、ケーシング400の外に延出し、屈曲して便座200の筐体210内に至るまで保護部材600が設けられている。
【0045】
ここで、便座200の筐体210内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260に電力供給線500が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、筐体210に固定され、他端は、挿入された電力供給線500の途中に固定されている。これにより、便座200の脱着の際、電力供給線500の引き出し、引き戻しが確実に行われる。
【0046】
すなわち、便座200をケーシング400から取り外し、引き離そうとすると、筐体210内に引き込まれていた電力供給線500の一部が筐体210から引き出される。電力供給線500が引き出されるため、便座200とケーシング400との隙間を十分に確保でき、便座200やケーシング400の掃除を容易に行うことができる。ここで、筐体210から電力供給線500を引き出した量に応じて、コイルスプリング260が縮むことになる。
【0047】
一方、便座200をケーシング400の装着位置に戻すと、コイルスプリング260の伸張力によって電力供給線500が便座200の筐体210内に自動的に引き込まれる。便座200をケーシング400に装着した状態では、電力供給線500は、コイルスプリング260の伸張力によって元の位置に確実に戻されることになる。
【0048】
図5は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
図5(a)は、便座を開いた状態、図5(b)は、便座を閉じた状態をそれぞれ例示している。
便座200を支持するヒンジ部250には、ヒンジサポート251が設けられている。ヒンジサポート251は、ケーシング400から立ち上がり、ヒンジ部250を支持している。電力供給線500は、ケーシング400からヒンジサポート251を介して便座200の筐体210に引き込まれている。ヒンジ部250には、中空形状の柱252が設けられている。電力供給線500は、ケーシング400からこの中空形状の柱252内を介して便座200の筐体210内に引き込まれている。中空形状の柱252内にはコイルスプリング260が設けられ、このコイルスプリング260内に電力供給線500が挿入されている。コイルスプリング260の一端は、中空形状の柱252に固定され、他端は電力供給線500の途中に固定されている。これにより、便座200を取り外す場合において、電力供給線500をケーシング400から引き出そうとすると、コイルスプリング260を縮める状態になる。
【0049】
一方、便座200を所定位置に固定すると、電力供給線500が自由状態になるので、コイルスプリング260が伸張し、自動的に電力供給線500をケーシング400内に引き込むことができるようになる。
【0050】
上記のような取り付け構造を有する暖房便座装置100であっても、電力供給線500の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所に保護部材600が設けられている。例えば、電力供給線500のうち、便座200及び中空形状の柱252から露出する部分や、シールド部材によって覆われていない部分に保護部材600を設ける。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0051】
図6は、他の取り付け構造を有する便座を例示する模式的斜視図である。
この便座200においては、ヒンジ部250の中に電力供給線500が通されている。電力供給線500は、ケーシング400に内蔵された高周波電源装置420から便座200のヒンジ部250を介して筐体210内の誘導加熱コイル(図示せず)まで引き回されている。すなわち、電力供給線500は、ケーシング400内において、高周波電源装置420からヒンジ部250まで延出し、ここで屈曲して便座200の筐体210内へ引き込まれている。
【0052】
このような取り付け構造であっても、電力供給線500の少なくとも便座200及びケーシング400に内蔵されていない箇所には保護部材600が設けられている。例えば、電力供給線500のうち、ケーシング400内からヒンジ部250を介して便座200内の途中まで、保護部材600が設けられている。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0053】
図7は、保護部材の態様を例示する模式的斜視図である。
なお、図7では、電力供給線500がヒンジ部250を貫通する構造を例示しているが、図3及び図4に例示した構造であっても同様に適用可能である。
【0054】
図7(a)に表した保護部材600は、ケーシング400内に設けられた第1保護部材610と、ケーシング400の外側に延出した第2保護部材620と、を備える。第1保護部材610は筒状をなしており、ケーシング400内に敷設された電力供給線500の周囲を覆うよう設けられている。第2保護部材620は、筒状であってL字型に屈曲して設けられている。すなわち、第2保護部材620の一端620aはケーシング400の内側に設けられ、他端620bはケーシング400の外側へ延出して、途中で屈曲している。
【0055】
第1保護部材610の一端610aは、第2保護部材620の一端620a側に、わずかな隙間を持って内挿されている。また、第1保護部材610はケーシング400内で固定されている。これにより、便座200の開閉動作に伴い、第2保護部材620が第1保護部材610を中心として回動する状態になる。
【0056】
電力供給線500は、第1保護部材610の中を通り、第2保護部材620の屈曲に従い曲げられる。したがって、電力供給線500は、ケーシング400の中から外に至るまで保護部材600に覆われることになる。これにより、電力供給線500から外に漏れ出す磁界を抑制できることになる。
【0057】
図7(b)に表した保護部材600は、ケーシング400内からケーシング400外へ延出する筒状の第1保護部材610を備える。第1保護部材610の他端610b側はケーシング400内に配置され、一端610a側はケーシング400の外側(便座内)へと延出している。電力供給線500は、他端610bから第1保護部材610の中を通り、一端610aから外へと延出する。これにより、ケーシング400内及びヒンジ部250の隙間において、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する。なお、ケーシング400から外側においては、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する別のシールド部材SPを設けておく必要がある。
【0058】
図7(c)に表した保護部材600は、ケーシング400内からケーシング400外へ延出する筒状であってL字型の第2保護部材620を備える。第2保護部材620の一端620aはケーシング400内に配置され、他端620bはケーシング400の外側(便座内)へと延出し、途中で屈曲している。電力供給線500は、一端620aから第2保護部材620の中を通り、他端620bから外へと延出する。これにより、ヒンジ部250の隙間からケーシング400の外側において、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する。なお、ケーシング400内においては、電力供給線500から放出される磁界の漏れを抑制する別のシールド部材SPを設けておく必要がある。
【0059】
いずれの例でも、ケーシング400から便座200に電力供給線500を引き回す場合、特に、ヒンジ部250の隙間(ケーシング400と便座200との隙間)において磁界の漏れが発生しやすい。つまり、ケーシング400内や便座200内にシールド部材が設けられていても、ヒンジ部250の隙間は、シールドの漏れが生じる部分だからである。本実施の形態によれば、ヒンジ部250の隙間にも保護部材600が設けられるため、ここからの磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。
【0060】
図8〜図9は、電力供給線の漏れ磁束の測定について説明する図である。
漏れ磁束の測定点Pは、図中の十字点で示される。
図8は、電力供給線500を構成する2本の導線510a及び510bの態様による漏れ磁束の測定について説明する図である。
図9は、電力供給線500と保護部材600との位置関係による漏れ磁束の測定について説明する図である。
なお、いずれの図においても、導線510a及び510bをそれぞれ1本の実線で示しているが、実際には複数本の被覆線が撚りあわされたリッツ線が用いられている。また、2本の導線510a及び510bでは、高周波電流について互いに電流の流れる方向が逆になっている。
また、この測定は、電力供給線500の周囲に保護部材600を被せることによる漏れ磁束の影響を比較するため、電力供給線500の仮想モデルにある一定電流を流して測定したものである。
【0061】
図8(a)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを離間して配置した状態での測定を例示している。この態様において、導線510aの測定点P1での漏れ磁束は、85.3マイクロテスラ(μT)、導線510bの測定点P2での漏れ磁束は、87.4μTであった。
【0062】
図8(b)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを平行に隙間なく配置した状態での測定を例示している。この態様において、電力供給線500の測定点P3での漏れ磁束は、23.8μTであった。
【0063】
図8(c)では、電力供給線500の2本の導線510a及び510bを撚り込んだ、シールド・ツイステッド・ペア・ケーブルにした状態での測定を例示している。この態様において、電力供給線500の測定点P4での漏れ磁束は、10.5μTであった。
【0064】
図8に例示する漏れ磁束の測定結果によれば、電力供給線500の2本の導線510a及び510bの間隔は狭い方がよい。また、2本の導線510a及び510bを撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルを用いるのがより好ましい。
【0065】
図9(a)では、電力供給線500を保護部材600の一方側に寄せて配置し、寄せた側での測定を例示している。なお、保護部材600には、アルミニウムの管が用いられている。この態様において、測定点P5での漏れ磁束は、2.8μTであった。
【0066】
図9(b)では、電力供給線500を保護部材600の他方側に寄せて配置し、寄せた側とは反対の側での測定を例示している。なお、保護部材600には、アルミニウムの管が用いられている。この態様において、測定点P6での漏れ磁束は、2.5μTであった。
【0067】
図9(a)、(b)に例示する漏れ磁束の測定結果によれば、電力供給線500から離れている方が漏れ磁束が少ない。しかし、電力供給線500に対してどの方向に漏れ磁束で影響を受ける対象物が配置されるか分からない。したがって、図9(c)に例示したように、電力供給線500を保護部材600の中央に通すことが好ましい。
【0068】
ここで、図9(c)に例示した測定点P7において、保護部材600の材質、形状、大きさ(径)等を変えた場合の漏れ磁束の測定結果について説明する。
【0069】
(1)材質:アルミニウム、形状:管、径:25ミリメートル(mm)、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、0.7μTであった。
(2)材質:アルミニウム、形状:管、径:18mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.2μTであった。
(3)材質:アルミニウム、形状:テープ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、8.8μTであった。
(4)材質:ステンレス、形状:管、径:32mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.8μTであった。
(5)材質:ステンレス、形状:管、径:19mm、肉厚:1mm、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、1.8μTであった。
(6)材質:ステンレス、形状:テープ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、5.9μTであった。
(7)材質:ステンレス、形状:メッシュ、の場合、測定点P7での漏れ磁束は、18.7μTであった。
(8)材質:ステンレス、形状:テープ、による保護部材600を接地した場合、測定点P7での漏れ磁束は、5.9μTであった。
【0070】
これらの測定結果のなかでは、保護部材600として、材質はアルミニウム、形状は管、径は25mm、にすると最も漏れ磁束を抑制できることが分かった。
【0071】
なお、保護部材600の材料は、磁界を透過させにくいもの、すなわち、磁界を吸収または反射するものを用いることができる。具体的には、保護部材600の材料としては、アルミニウム、ステンレスのほか、銅、金、銀、ニッケル、これらを含む合金などが挙げられる。
【0072】
図10は、本実施の形態で適用される電力供給線及び保護部材を例示する模式図である。
図10(a)に例示した電力供給線500は、2本の導線510a及び510bを撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルである。2本の導線510a及び510bは、高周波電流について互いに電流の流れる方向が逆になっている。これにより、導線510a及び510bで発生した磁界が互いに打ち消され、漏れ磁束の発生を抑制する。図8(c)に例示した漏れ磁束の測定結果より、電力供給線500としては、シールド・ツイステッド・ペア・ケーブルを用いることが望ましい。
【0073】
図10(b)に例示した保護部材600は、弾性体650に導電性材料660を含有させたものである。弾性体650には、例えばゴムが用いられる。導電性材料660には、アルミニウム、ステンレス、銀、銅、ニッケル等の金属粉末や金属繊維が用いられる。この例では、保護部材600の略中心に電力供給線500を通している。電力供給線500と保護部材600とは、電気的に絶縁されている。このような保護部材600により、可撓性とともに磁界の漏れを抑制するシールド効果を得られるようになる。
【0074】
図10(c)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたコイルスプリング670である。電力供給線500は、このコイルスプリング670内に挿入されている。このようなコイルスプリング670による保護部材600を用いることで、可撓性とともに磁界の漏れを抑制するシールド効果を得られるようになる。保護部材600がコイルスプリング670である場合、このコイルスプリング670と、図4及び図5に例示したコイルスプリング260と、を兼用にしてもよい。これにより、便座200の着脱時における電力供給線500の引き出し、引き戻しのための付勢と、磁界のシールド効果とを兼ね合わせることが可能になる。
【0075】
図10(d)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたコイルスプリング670と、コイルスプリング670の周囲を被覆する樹脂チューブ700と、を備える。樹脂チューブ700には、例えばゴム製チューブが用いられる。このような保護部材600では、コイルスプリング670による磁界のシールド効果とともに、コイルスプリング670及び樹脂チューブ700による可撓性を得られる。また、樹脂チューブ700によってコイルスプリング670を保護することができる。
【0076】
図10(e)に例示した保護部材600は、導電体で形成されたメッシュ680である。電力供給線500は、このメッシュ680内に挿入されている。このようなメッシュ680による保護部材600を用いることで、可撓性とともに磁界のシールド効果を得られるようになる。
【0077】
図10(b)〜(e)に例示した可撓性を有する保護部材600は、図1に例示した暖房便座装置100以外に、電力供給線500が洋式腰掛便器800の外側に露出する暖房便座装置に適用可能である。
【0078】
図11は、電力供給線が便器の外側に露出した暖房便座装置を例示する模式的斜視図である。
図12は、図11に例示した暖房便座装置を上方から眺めた模式的平面図である。
図11及び図12に表した暖房便座装置110では、便座200とケーシング400との間に接続された電力供給線500が、外側に露出している。電力供給線500は、外側に露出した状態で垂れ下げられている。
【0079】
本実施の形態において、電力供給線500における少なくとも外側に露出する部分には、保護部材600が被覆されている。図12に例示した暖房便座装置110では、高周波電源装置420から便座200の発熱部231の位置まで保護部材600が設けられている。ここで、ケーシング400内や便座200の筐体210内に発熱部231以外の磁界のシールド効果を有する部材が設けられている場合、その部分の下側には保護部材600を必ずしも設けなくてよい。なお、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222に至るまでの電力供給線500の全体を保護部材600で覆うようにすれば、磁界の漏れの抑制に対して非常に効果的である。
【0080】
また、電力供給線500が垂れ下がる部分については、ある程度自由な動きが必要になる。したがって、少なくとも垂れ下がる部分については、図10(b)〜(e)に例示したような可撓性を有する保護部材600で被覆することが望ましい。
【0081】
本実施の形態に係る暖房便座装置110によれば、電力供給線500が外側に露出している場合でも、磁界の漏れを確実に抑制できるようになる。また、可撓性を有する保護部材600を適用することで、外側に垂れ下がる部分の電力供給線500の動きを制限せずに、磁界のシールド効果を発揮できるようになる。
【0082】
次に、高周波電源装置420について、図面を参照しつつ説明する。
図13は、本実施の形態で適用される高周波電源部の要部構成の一例を例示するブロック図である。
また、図14は、本実施の形態で適用される高周波電源部の回路構成の一例を例示する回路構成図である。
また、図15は、本実施の形態で適用される高周波電源部の動作を説明するための回路構成図である。
【0083】
高周波電源装置420は、交流電源である商用電源430から供給される電流を整流する整流部421と、整流部421により整流された電流の中に含まれている脈流を平滑化する平滑部423と、コンデンサ426と、スイッチ部427と、を有する。コンデンサ426と、便座200または便蓋300に内蔵された誘導加熱コイル222と、は共振現象を生ずる共振部425として機能する。高周波電源装置420と誘導加熱コイル222との間には、高周波電源装置420で生成した高周波電流を誘導加熱コイル222に供給する電力供給線500が設けられる。電力供給線500の少なくとも一部には、保護部材600が被覆されている。これにより、電力供給線500から外側に漏れる磁界を抑制する。
【0084】
整流部421は、正負が入れ替わる商用電源430の電流や電圧を例えば正のみに整流し、共振しやすい状態とする。平滑部423は、共振部425において電力が不足した場合には、電力を供給することができる。
【0085】
スイッチ部427は、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)である。スイッチ部427は、制御部410から給電線415を介して供給される制御信号により、「入」(オン)と「切」(オフ)の動作をする。
【0086】
まず、制御部410がスイッチ部427を「入」の状態に制御すると、商用電源430から供給された電流は、図15(a)に表したように、整流部421により整流され、平滑部423により平滑化され、誘導加熱コイル222に流れる。そして、誘導加熱コイル222にエネルギーが溜まる。
【0087】
続いて、制御部410がスイッチ部427を「切」の状態に制御すると、図15(b)に表したように、商用電源430からは電流が供給されない一方で、誘導加熱コイル222に溜められたエネルギーがコンデンサ426へ移動し共振する。
続いて、制御部410がスイッチ部427を再び「入」の状態に制御すると、図15(c)に表したように、コンデンサ426へ移動していたエネルギーが誘導加熱コイル222へ戻り共振する。
【0088】
このように、制御部410がスイッチ部427の「入」の状態と「切」の状態とを切り替え制御することにより、共振部425において共振が生じる。その結果、高周波電源装置420は、高周波電流を生成し、その高周波電流を誘導加熱コイル222へ供給することができる。
【0089】
なお、本実施形態の高周波電源装置420は、図13〜図15に例示したものには、限定されない。例えば、図13に表した構成において、整流部421を含まないものや、整流部421と平滑部423を含まないものを、高周波電源装置420としてもよい。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高周波電源装置420から誘導加熱コイル222へ高周波電流を送る電力供給線500について、外部へ漏れる磁界を抑制することができる。特に、ケーシング400に高周波電源装置420が内蔵されている場合、電力供給線500の敷設経路で磁界の漏れが発生しやすい。本実施の形態では、保護部材600によって、ケーシング400内やシールドしにくいヒンジ部250の隙間などでも確実に磁界の漏れを抑制することができる。これにより、ケーシング400内の制御部410に過度の磁界が入射することを抑えることができ、その制御部410を安定化させることができる。また、人体への磁界の入射量をより小さく抑えることができる。
【0091】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、電力供給線500に設けられる保護部材600の態様として、いずれか1つに限られず、一つの電力供給線500に保護部材600の複数の態様を適宜組み合わせるようにしてもよい。
また、上記説明した暖房便座装置100及び110としては、便座200及び便蓋300が設けられた具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。すなわち、便座200のみがケーシング400に軸支され、便蓋300が設けられていないものも、本発明の範囲に含まれる。この場合には、誘導加熱コイル222と発熱部231は、いずれも便座200に設けるようにすればよい。
【0092】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0093】
10…トイレ装置、100,110…暖房便座装置、200…便座、210…筐体、222…誘導加熱コイル、231…発熱部、250…ヒンジ部、260…コイルスプリング、300…便蓋、400…ケーシング、410…制御部、415…給電線、420…高周波電源装置、421…整流部、423…平滑部、425…共振部、426…コンデンサ、427…スイッチ部、600…保護部材、800…洋式腰掛便器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座または便蓋と、
前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、
前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、
前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、
前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、
前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、
前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記保護部材は、導電体からなり、
前記導電体は、前記電線を通る高周波電流により生じる磁界によって誘導加熱され、前記電力コードから外部への磁界漏れを低減させることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記保護部材の導電体は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記保護部材は、弾性体に導電性材料を含有させた材料により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記保護部材は、導電体で形成されたコイルスプリングであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記保護部材は、導電体で形成されたメッシュであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記電力コードは、電流の流れる方向が互いに逆となる対の電線を撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項1】
便座または便蓋と、
前記便座または前記便蓋の開閉を支持するケーシングと、
前記ケーシングに内蔵され、高周波電流を生成する高周波電源装置と、
前記便座または前記便蓋に設けられ前記高周波電源装置から供給された高周波電流により磁界を発生させる誘導加熱コイルと、
前記便座の着座部に設けられ前記磁界により誘導加熱される発熱部と、
前記高周波電流を前記高周波電源装置から前記誘導加熱コイルへ送る電線を有する電力コードと、
前記電線の周囲を覆い、磁界の漏れを低減させる保護部材と、
を備えたことを特徴とする暖房便座装置。
【請求項2】
前記保護部材は、導電体からなり、
前記導電体は、前記電線を通る高周波電流により生じる磁界によって誘導加熱され、前記電力コードから外部への磁界漏れを低減させることを特徴とする請求項1記載の暖房便座装置。
【請求項3】
前記保護部材の導電体は、アルミニウムからなることを特徴とする請求項2記載の暖房便座装置。
【請求項4】
前記保護部材は、弾性体に導電性材料を含有させた材料により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項5】
前記保護部材は、導電体で形成されたコイルスプリングであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項6】
前記保護部材は、導電体で形成されたメッシュであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【請求項7】
前記電力コードは、電流の流れる方向が互いに逆となる対の電線を撚り込んだシールド・ツイステッド・ペア・ケーブルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の暖房便座装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−70901(P2012−70901A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217543(P2010−217543)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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