説明

暖房便座

【課題】着座部の温度分布を均一にすることができる暖房便座を提供する。
【解決手段】内部に空洞1を有する便座ケース2と、該便座ケース2の空洞1内に該空洞1の長手方向に沿って伸びる輻射ヒータ3と、空洞1内の輻射ヒータ3の下方に配置され該輻射ヒータ3からの輻射を空洞1の天面部に反射するリフレクタ4と、を備えた暖房便座5である。輻射ヒータ3直上の天面部又はリフレクタ4の輻射ヒータ3直下の部分に、輻射ヒータ3に向けて凸形状となり輻射ヒータ3からの輻射を輻射ヒータ3直上及び直下以外の側方に反射させる凸形状リフレクタ6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座の内部の空洞に輻射ヒータが配設される暖房便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、便座の内部の空洞に輻射ヒータが配設され、輻射ヒータからの輻射により便座の着座部が速やかに加熱される暖房便座が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−34311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記暖房便座5は、図6に示すように、便座ケース2の内部の空洞1の中央部に該空洞1の長手方向に沿って伸びる輻射ヒータ3が配設される共に、空洞1の底面部にリフレクタ4が配設され、輻射ヒータ3からの直接の輻射とリフレクタ4で反射する輻射とが、着座部となる前記空洞1の天面部に照射されることで、着座部が加熱される。
【0004】
この時、天面部の輻射ヒータ3直上の部分は、輻射ヒータ3からの直接の輻射が垂直に近い入射角で天面部に入射するためエネルギー密度が大きくなるうえ、リフレクタ4で反射してから入射する輻射も同様にエネルギー密度が大きく、これに対し、天面部の輻射ヒータ3直上から離れた部分には輻射が小さい入射角で入射するためエネルギー密度が小さい。このため、天面部の輻射ヒータ3直上の部分は吸収される輻射が多くて過熱され、着座部の輻射ヒータ3直上から離れた部分は吸収される輻射が少なくて冷たくなり、着座部の温度分布が不均一となってしまう、という問題があった。
【0005】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、着座部の温度分布を均一にすることができる暖房便座を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、内部に空洞1を有する便座ケース2と、該便座ケース2の空洞1内に該空洞1の長手方向に沿って伸びる輻射ヒータ3と、空洞1内の輻射ヒータ3の下方に配置され該輻射ヒータ3からの輻射を空洞1の天面部に反射するリフレクタ4と、を備えた暖房便座5である。輻射ヒータ3直上の天面部又は/及びリフレクタ4の輻射ヒータ3直下の部分に、輻射ヒータ3に向けて凸形状となり輻射ヒータ3からの輻射を輻射ヒータ3直上及び直下以外の側方に反射させる凸形状リフレクタ6を設けてなる。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記凸形状リフレクタ6をリフレクタの輻射ヒータ3直下の部分に設けてなる。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記凸形状リフレクタ6を輻射ヒータ3直上の天面部に設けてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にあっては、凸形状リフレクタにより輻射ヒータからの輻射を輻射ヒータから離れる方向に反射させることができて、着座部の輻射ヒータ直上の部分で吸収される輻射が減少すると共に、着座部の輻射ヒータ直上から離れた部分で吸収される輻射が増加し、着座部の温度分布を均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0011】
暖房便座5は、図示しないが、その後端部が便器本体の後部に回動自在に設けられ、便蓋とともに便器を構成している。また、便蓋もその後端部が便器本体の後部に回動自在に設けられている。なお、便器本体に局部洗浄装置や脱臭装置が組み込まれていてもよく、また、便器本体の後部に前記装置が取り付けてあると共に、該装置に暖房便座5や便蓋の後端部が回動自在に取り付けてあってもよい。
【0012】
暖房便座5は、図5に示すように、平面視略O字状や略U字状(本実施形態では略O字状)をしたもので、図1に示すように、内部に空洞1を有する便座ケース2と、便座ケース2の空洞1内に配置され輻射エネルギを放射する輻射ヒータ3と、空洞1の底面部に配設されるリフレクタ4と、商用電源等の電源に接続され輻射ヒータ3に電力を供給する電力供給部(図示せず)と、を備える。暖房便座5の便座ケース2は、合成樹脂からなる上ケース21と下ケース22の2つの部材を、それぞれの内周縁および外周縁で溶着接合することにより形成され、その内部には水等の浸入を阻止できる密閉された空洞1を有する構造としてある。本実施形態では、上ケース21の断面形状は下方に開口する横長の略逆U字状に形成してあり、下ケース22の断面形状は略直線状に形成してあり、上ケース21と下ケース22とを合わせた全体の断面形状は偏平状をしている。また、便座ケースは、剛性を有する構造矩体として機能するようになっており、空洞1の天面部となる上ケース21の上壁が着座部となる。
【0013】
上ケース21は、図示しないが、例えばカーボンブラックを含有させてなる輻射吸収層が形成してあり、さらに表面(上面)に表面硬度、耐薬品性能、光沢等を考慮した光遮断層である表面化粧層が形成されていて、輻射吸収層及び表面化粧層は輻射ヒータ3から放射された輻射エネルギを効率良く吸収し、熱容量が非常に小さくて瞬時に昇温すると同時に、放射可視光を完全に遮蔽する。
【0014】
輻射ヒータ3は、本実施形態では、ガラス管の内部にタングステンからなるフィラメントが貫通され、ハロゲンガスが封入されたランプヒータで、その長手方向が空洞1の長手方向に沿って伸びるように空洞1の略中央部に配設される。輻射ヒータ3は、フィラメントの発熱に伴ってハロゲン化タングステンを形成するハロゲンサイクル反応を繰り返すことにより、フィラメントの消耗を防止するよう作用するため、熱容量の非常に小さいフィラメントを熱源とすることができ、極めて温度上昇の急峻な立ち上がりを行わせることができる。この輻射ヒータ3は、本実施形態では、図示しないが弾性材であるゴムブッシュを有する輻射ヒータ3の固定具によりリフレクタ4に固定され、リフレクタ4はゴム足を介して便座ケース2の下ケース22に固定されている。
【0015】
輻射ヒータ3の近傍には、輻射ヒータ3と電気的に直列接続されたサーモスタットおよび温度ヒューズが設けられ、温度過昇を防止するよう作用する。
【0016】
暖房便座5のリフレクタ4は、アルミニウム板やアルミニウムシートやアルミニウムテープ等からなり、本実施形態では図1に示すように空洞1の底面部すなわち下ケース22の上面に接着剤やビス等で固定されるが、少なくとも輻射ヒータ3の下方に配置され、該輻射ヒータ3からの輻射を空洞1の天面部に反射するものであればよい。
【0017】
本発明では、輻射ヒータ3直上の天面部又はリフレクタ4の輻射ヒータ3直下の部分に、凸形状リフレクタ6が設けられる。凸形状リフレクタ6は、輻射ヒータ3に向けて凸形状となり、輻射ヒータ3からの輻射を輻射ヒータ3から離れる方向に反射させて、天面部の輻射ヒータ3から離れた部分に入射させるもので、本実施形態では、空洞1及び輻射ヒータ3の長手方向と垂直な断面において、リフレクタ4の輻射ヒータ3直下の部分に、上方に凸形状となる断面三角形状をした凸形状リフレクタ6aが設けてある。
【0018】
本実施形態のような凸形状リフレクタ6aを設けることで、輻射ヒータ3からの輻射が凸形状リフレクタ6aの傾斜面61に入射すると、該傾斜面61により外側方に反射されて、天面部の輻射ヒータ3直上から離れた部分に照射される。これにより、従来、輻射ヒータ3直下で反射して輻射ヒータ3直上の着座部で吸収されていた輻射が減少すると共に、凸形状リフレクタ6aで反射して着座部の輻射ヒータ3直上から離れた部分で吸収される輻射が増加し、着座部の温度分布が均一になるものである。
【0019】
凸形状リフレクタ6の他の実施形態としては、図2に示すように、空洞1及び輻射ヒータ3の長手方向と垂直な断面において、輻射ヒータ3直上の天面部に、下方に凸形状となる断面三角形状をした凸形状リフレクタ6bが設けてある。
【0020】
本実施形態のような凸形状リフレクタ6bを設けることで、輻射ヒータ3からの輻射が凸形状リフレクタ6bの傾斜面61に入射すると、該傾斜面61により外側方に反射されて、天面部の輻射ヒータ3直上から離れた部分に照射される。これにより、従来と比較して、着座部(天面部)の輻射ヒータ3直上の部分で吸収される輻射が減少すると共に、着座部の輻射ヒータ3直上から離れた部分で吸収される輻射が増加し、着座部の温度分布が均一になるものである。
【0021】
また他の実施形態として、図3に示すように、凸形状リフレクタ6(6a、6b)が、輻射ヒータ3直上の天面部と、リフレクタ4の輻射ヒータ3直下の部分と、の両方に設けてあってもよく、これにより、輻射ヒータ3直上の着座部で吸収されていた輻射が減少すると共に、凸形状リフレクタ6(6a、6b)で反射して着座部の輻射ヒータ3直上から離れた部分で吸収される輻射が増加し、着座部の温度分布が均一になる、という効果がより一層得られる。
【0022】
他の実施形態について図4に基づいて説明する。
【0023】
本実施形態では、空洞1及び輻射ヒータ3の長手方向に垂直な断面において、輻射ヒータ3が空洞の略中央部から左右に偏心した位置に配設してある。これは、平面視において便座ケース2の中央側となる、便座ケース2の左右の一側方に偏った位置に輻射ヒータ3が配設してあり、人体が着座される部分がより温まるようにしたものである。
【0024】
この場合も、輻射ヒータ3直上の天面部により多くの輻射が吸収されるため、リフレクタ4上に断面三角形状の凸形状リフレクタ6cを設けて着座部の温度分布の均一化を図るものである。しかしながら、輻射ヒータ3は上述したように便座ケース2の左右の一側方に偏っているため、凸形状リフレクタ6cにより輻射ヒータ3が偏っている側と反対側により多くの輻射を反射させる方が、温度分布をより均一化させる上で好ましい。そこで、本実施形態では、輻射ヒータ3が偏っている側(図では右側)と反対側(図では左側)に輻射を反射させる傾斜面61aを、輻射ヒータ3直下よりも輻射ヒータ3が偏っている側にずれた位置にまで設けている。これにより、輻射ヒータ3の直下よりも輻射ヒータ3が偏っている側にずれた方向への輻射も、輻射ヒータ3が偏っている側と反対側に反射させることができて、温度分布をより均一化させることができる。
【0025】
また、リフレクタ4の端部41を、先端側程上方に位置するように傾斜させることで、輻射ヒータ3から端部41に入射する輻射を天面部の輻射ヒータ3直上から離れた部分に照射させて、この部分で吸収される輻射をより一層増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の断面図である。
【図2】他の実施形態の断面図である。
【図3】更に他の実施形態の断面図である。
【図4】更に他の実施形態の断面図である。
【図5】暖房便座の斜視図である。
【図6】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 空洞
2 便座ケース
21 上ケース
22 下ケース
3 輻射ヒータ
4 リフレクタ
5 暖房便座
6 凸形状リフレクタ
61 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞を有する便座ケースと、該便座ケースの空洞内に該空洞の長手方向に沿って伸びる輻射ヒータと、空洞内の輻射ヒータの下方に配置され該輻射ヒータからの輻射を空洞の天面部に反射するリフレクタと、を備えた暖房便座において、輻射ヒータ直上の天面部又は/及びリフレクタの輻射ヒータ直下の部分に、輻射ヒータに向けて凸形状となり輻射ヒータからの輻射を輻射ヒータ直上及び直下以外の側方に反射させる凸形状リフレクタを設けて成ることを特徴とする暖房便座。
【請求項2】
前記凸形状リフレクタをリフレクタの輻射ヒータ直下の部分に設けて成ることを特徴とする請求項1記載の暖房便座。
【請求項3】
前記凸形状リフレクタを輻射ヒータ直上の天面部に設けて成ることを特徴とする請求項1又は2記載の暖房便座。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate