説明

暖房椅子

【課題】 使用者にとって温熱的な快適感が得られる暖房椅子を提供する。
【解決手段】
背もたれ2と、背もたれ2の前方に設けられ、使用者が着座する座面3と、座面3の左右の側面に設けられる肘掛4と、座面3の下方に設けられる脚部5と、座面3から斜め下前方に設けられる2本のレッグレスト6と、レッグレスト6に設けられるフットレスト7と、肘掛4に対して前後方向に移動するサイドボード11とを備え、背もたれ2には背面ヒータ21、座面3には座面ヒータ22、サイドボード11には膝側面ヒータ23と、フットレスト7には足元ヒータ25とを有する構成の暖房椅子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暖房機能を有する椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
背もたれと、座部と、在席検出手段と、制御手段と、背もたれに格納延出可能なシート状部材を有する暖房椅子であって、シート状部材に電気ヒータを配置して腹部ヒータとし、在席検出手段が、座席に人の着座の有無を検出したとき制御手段が腹部ヒータに通電制御する構成とした自動車用の暖房椅子が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−173339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される自動車用の暖房椅子では、使用者が使用時に腹部以外の部位に冷えを感じることがあり、身体の一部に冷えを感じると温熱的な快適感を得ることの妨げとなるという問題が発生し得る。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みて成されたものであり、使用者に温熱的な快適感が得られる暖房椅子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するために講じた手段は、背もたれと、前記背もたれの前方に設けられ、使用者が着座する座面と、前記座面の下方に設けられる脚部と、前記座面の前方に設けられるフットレストとを備える暖房椅子であって、前記背もたれに設けられ、使用者の背面を暖める背面ヒータと、前記座部側面に設けられ、使用者の膝側面を暖める膝面ヒータと、前記フットレストに設けられ、使用者の足元を暖める足元ヒータと、前記背面ヒータと前記膝面ヒータと前記足元ヒータを制御する制御装置とを備える構成とした。
【0007】
この場合、前記膝面ヒータは、使用者の膝前面を温める構成とすると良い。
【0008】
また、前記膝面ヒータは使用者の膝面に対して近接離反が可能であるサードボードに設けられる構成とすると良い。
【0009】
また、側面に肘掛を備え、前記膝面ヒータは、前記肘掛に対して可動し、調整自在となっている構成とすると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の暖房椅子では、背面ヒータ、膝面ヒータおよび足元ヒータとにより、使用者が冷えを感じた場合に、背面、膝面、足元と言った複数の部位を部分的に暖めると効果的に温かさを感じられるものとなり、温熱的な快適感を得ることが可能である。
【0011】
また、使用者の背面、膝側面、膝前面、足元といった、暖めると効果的に温かさを感じられる箇所を個別に温度を設定し暖めることで、部分的な温度制御を行うことにより温熱的な快適感が得られる。
【0012】
また、制御装置により複数の設定温度を設けて、温度勾配を設定することで、例えば高い温度から低い温度に温度勾配を設定するときは一定の温度に達したら徐々に温度を下げていき適度な温かさを感じられるようにすることで、暑くなりすぎず適度な温熱感を感じることができ、低い温度から高い温度に温度勾配を設定するときは徐々に温かくなる感覚をより長い時間感じることができ、温熱的な快適感が持続する。
【0013】
また、膝面ヒータは、使用者の膝面に対して近接離反が可能であるサイドボードに設けられる構成であると、膝が動いても膝を暖めることができ、立つ時、座る時に邪魔にならない構成とすることが可能である。
【0014】
また、着座者のお尻も暖めることで、より温熱的な快適感が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の暖房椅子を正面から見た図である。
【図2】本発明の暖房椅子を平面から見た図である。
【図3】本発明の暖房椅子を側面から見た図である。
【図4】本発明の暖房椅子のサイドボードアームの動きを示す状態遷移図である。
【図5】本発明の暖房椅子を正面から見た図である。
【図6】本発明の暖房椅子の第1の変形例を正面から見た図である。
【図7】本発明の暖房椅子の第2の変形例を正面から見た図である。
【図8】本発明の暖房椅子の第3の変形例を正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の第1の実施例について、図面を参照に詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の暖房椅子1を正面から見た説明図である。暖房椅子1は、背もたれ2と、背もたれ2と垂直に設けられる座面3と、座面3の左右の側面に垂直に設けられる2つの肘掛4と、使用者が着座する座面(座部)3の下方に設けられる4本の脚部5と、座面3から斜め下前方に角度調整可能に延設されるレッグレスト6と、レッグレスト6の先端に角度調整可能に取り付けられるフットレスト7とを備える。また、肘掛4は前方に開口した断面四角形状の凹部40と、肘掛4に対して前後方向に移動するサイドボード11と、サイドボード11と第1アーム12(図2参照)を接続する第1サイドボードジョイント14とを有する。さらに、背もたれ2は背面ヒータ21を有し、座面3は座面ヒータ22を有し、サイドボード11は膝側面ヒータ23(膝面ヒータ)を有し、レッグレスト6はふくらはぎヒータ24を有し、フットレスト7は足元ヒータ25を有する。使用者が座るとき、立ち上がるときにこの形態をとる。
【0018】
図2は本発明の暖房椅子1を平面から見た説明図である。暖房椅子1は、サイドボード11を肘掛4の凹部40に前後方向にスライド可能に連結され、第1アーム12と、第2アーム13とを備える。また、暖房椅子1は、サイドボード11と第1アーム12とを左右方向に回動可能に接続する第1ジョイント14と、第1アーム12と第2アーム13とを座面に対して左右方向に回動可能に接続する第2ジョイント15とを有する。
【0019】
図3は本発明の暖房椅子1を側面から見た説明図である。暖房椅子1は、レッグレスト6とフットレスト7とを上下方向に回動可能に接続するフットレストジョイント8と、レッグレスト6と座面3とを前後方向に回動可能に接続するレッグレストジョイント9とを備える。また、肘掛4は、背面ヒータ21と座面ヒータ22と膝側面ヒータ23とふくらはぎヒータ24と足元ヒータ25の制御、例えば、温度設定を制御する制御装置10を有する。
【0020】
図4は本発明の暖房椅子1の向かって左側の第1アーム12及び第2アーム13の動きを示す説明図である。(I)から(II)では凹部40から第2アーム13が前方向にスライド移動している。また、(II)から(III)ではさらに第1サイドボードジョイント14は、サイドボード11前方を右方向に回動させ、第2サイドボードジョイント15は、第1アーム12前方を左方向に回動させた状態である。
【0021】
図5は本発明の第1アーム12と第2アーム13とが図4の(III)の状態の暖房椅子を正面から見た説明図である。図1に対してサイドボード11が肘掛4の凹部から前方向にスライド移動し、さらに第1サイドボードジョイント14は、サイドボード11前方を座面3に対して外側(暖房椅子1の向かって左側のサイドボード11では左側、暖房椅子1の向かって右側のサイドボード11では右側)に回動させ、サイドボード11は使用者の膝面に対して可動し幅方向に調整自在となっており、近接離反が可能である。第2サイドボードジョイント15は、第1アーム12前方を座面3に対して内側(暖房椅子1の向かって左側の第1アーム12では右側、暖房椅子1の向かって右側の第1アーム12では左側)に回動させた状態である。使用者が本発明の暖房椅子1を使用するときにこの形態をとる。
【0022】
本発明の実施形態の動作について説明する。
【0023】
使用者が暖房椅子1に着座する際や起立する際に図1に示すようサイドボード11を座面3に対して外側に回動させ、着座状態においては図5に示すよう、サイドボード11を座面3に対して内側に回動させ使用者の膝側面に接する状態にする。
【0024】
図1の状態から図5の状態となるには、まず、図4に示すように、肘掛4に設けられた凹部40から、第2アーム13を前方に向かって突出させる。次に第2サイドボードジョイント15で第1アーム12を第1アーム12前方が座面3に対して内側に回動させる。さらに第1サイドボードジョイント14でサイドボード11をサイドボード11前方が座面3に対して外側に回動させる。
【0025】
逆に図5の状態から図1の状態になるには、まず、第1サイドボードジョイント14でサイドボード11をサイドボード11前方が座面3に対して内側に回動させる。次に第2サイドボードジョイント15で第1アーム12を第1アーム12前方が座面3に対して外側に回動させる。さらに、第2アーム13を後方に向かって肘掛4に設けられた凹部40に格納することが可能である。
【0026】
使用者が背面ヒータ21と座面ヒータ22と膝側面ヒータ23とふくらはぎヒータ24と足元ヒータ25の温度設定を変更するには肘掛4に設けられた制御装置10を操作して設定温度を変更する。制御装置10は、背面ヒータ21と座面ヒータ22と膝側面ヒータ23とふくらはぎヒータ24と足元ヒータ25との温度を個別に制御でき、例えば背面ヒータ21と座面ヒータ22を高めの温度設定とし、膝側面ヒータ23は少し低い温度設定とし、ふくらはぎヒータ24と足元ヒータ25はさらに低い温度設定とする部位毎で異なる制御を行うことができる。また、制御装置10は、着座直後に到達させる設定温度に対して、2度目の加温以降の設定温度を低くする制御を行うこともできる。
【表1】

【0027】
表1は、加温時の手、足、膝の温冷感(主観評価)を示す表である。気温18℃、湿度40%の室内で各部位の温冷感を調査した。評価としては「非常に熱い、熱い、温かい、どちらでもない、やや冷たい、冷たい、非常に冷たい」の7段階評価である。表1より、背中、お尻、膝側方、足元を暖めると冷えを感じる箇所がなく、温熱的な快適感が得られることがわかる。
【0028】
本発明の実施形態の効果について説明する。
【0029】
本発明の暖房椅子1では、冷えを感じると温熱的な快適感を得ることの妨げとなる使用者の背面、お尻、膝側面、足元といった、冷えを感じやすく、暖めると効果的に温かさを感じられる箇所を個別に温度を設定し暖めることで温熱的な快適感が得られる。
【0030】
また、着座直後に到達させる設定温度に対して、2度目の加温以降の設定温度を低くすることで、温度勾配を設定することで、最初の設定温度に達したら徐々に温度を下げていき適度な温かさを感じられるようにすることで暑くなりすぎず適度な温熱感を感じることができ、温熱的な快適感が持続する。
【0031】
また、膝側面ヒータ23は、可動式であって暖房椅子1内に格納できることで、使用者の膝が動いても膝の方に図示しないスプリング等をサイドボード11を支持しているアームを連結しているジョイント部の前後に用いることで、使用者の膝に近接あるいは接触させ、使用者の膝を暖めることができ、使用者が立つ時や座る時等に邪魔にならない。
【0032】
図6は本発明の暖房椅子1の第1の変形例を正面から見た説明図である。
【0033】
第1の実施例では図1に示すように第1アーム12及び第2アーム13を用いてサイドボード11に設けられた膝側面ヒータ23が使用者の膝側面に接していたのに対し、本発明の暖房椅子1の第1の変形例では図6に示すようにサイドボード11aが湾曲して膝側面ヒータ23aが使用者の膝側面に接しても良い。
【0034】
図7は本発明の暖房椅子1の第2の変形例を正面から見た説明図である。
【0035】
第1の実施例では図1に示すように第1アーム12及び第2アーム13を用いてサイドボード11に設けられた膝側面ヒータ23が使用者の膝側面に接していたのに対し、本発明の暖房椅子1の第2の変形例では図7に示すように肘掛4bの内側に設けられた膝側面ヒータ23bが使用者の膝側面に接しても良い。
【0036】
図8は本発明の暖房椅子1の第3の変形例を正面から見た説明図である。
【0037】
第1の実施例では図1に示すように第1アーム12及び第2アーム13を用いてサイドボード11に設けられた膝側面ヒータ23が使用者の膝側面に接していたのに対し、本発明の暖房椅子1の第3の変形例では図8に示すようにサイドボード11cが使用者の膝平面で面ファスナー30を用いて接続されて膝側面ヒータ23cが使用者の膝に接しても良い。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に示す態様に変更しても良い。
【0039】
・第1の実施例及び変形例では膝側面を暖めているが、膝側面に加えて膝前面を暖めても良い。
【0040】
・第1の実施例及び変形例では、背中と背面ヒータ21とお尻と座面ヒータ22と足元と足元ヒータ25に比べて、膝と膝側面ヒータ23とふくらはぎとふくらはぎヒータ24の方が人体をヒータ面に押し付ける力が弱く、人体とヒータ面の接触面の比率が小さくなる場合、背面ヒータ21や座面ヒータ23や足元ヒータ25より膝側面ヒータ23やふくらはぎヒータ24も高い温度設定としても良い。
【0041】
・第1の実施例及び変形例では着座直後に到達させる設定温度に対して、2度目の加温以降の設定温度を低くすることで、温度勾配を設定しているが、着座直後に到達させる設定温度に対して、2度目の加温以降の設定温度を高くすることで、温度勾配を設定しても良い。
【0042】
・第1の実施例及び変形例では椅子と記載してあるが、自動車や飛行機の座席に用いても良い。
【0043】
・第1の実施例及び変形例では背面ヒータ及び座面ヒータに比べて、膝側面ヒータと足元ヒータの温度を低く設定しているが、各ヒータの温度設定は使用用途、使用環境によって変えても良い。
【0044】
・第1の実施例及び変形例では加温部にヒータを用いているが、蓄熱剤や触媒を利用したり、廃熱を利用しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 暖房椅子
2 背もたれ
3 座部
4 肘掛
5 脚部
6 レッグレスト
7 フットレスト
21 背面ヒータ
22 座面ヒータ
23 膝側面ヒータ(膝面ヒータ)
24 ふくらはぎヒータ
25 足元ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと、
前記背もたれの前方に設けられ、使用者が着座する座面と、
前記座面の下方に設けられる脚部と、
前記座面の前方に設けられるフットレストとを備える暖房椅子であって、
前記背もたれに設けられ、使用者の背面を暖める背面ヒータと、
前記座部の側面に設けられ、使用者の膝側面を暖める膝面ヒータと、
前記フットレストに設けられ、使用者の足元を暖める足元ヒータと、
前記背面ヒータと前記膝面ヒータと前記足元ヒータを制御する制御装置と、
を備えた暖房椅子。
【請求項2】
前記膝面ヒータは、使用者の膝前面を温めることを特徴とする請求項1に記載の暖房椅子。
【請求項3】
前記膝面ヒータは、使用者の膝面に対して近接離反が可能であるサイドボードに設けられる請求項1または2に記載の暖房椅子。
【請求項4】
側面に肘掛を備え、前記膝面ヒータは、前記肘掛に対して可動し、調整自在となっている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の暖房椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27480(P2013−27480A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164556(P2011−164556)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】