曝露指標デバイス
レスピレータシステムに配置された曝露指標デバイス。この曝露指標デバイスが光学的回折エレメントを含む。曝露指標デバイスが、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する材料を含み、そして曝露指標デバイスが、化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は曝露指標デバイスを目的とする。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
危険な化学物質への曝露からユーザを保護するため、さまざまなレスピレータシステムが存在する。このようなシステムの例には、周囲空気から有害物質を除去するための吸着材料を収納したカートリッジを使用する負圧又は動力付きレスピレータ、及び給気式レスピレータが挙げられる。
【0003】
ユーザに送達される空気を評価するために、数多くのプロトコルが開発されている。これらのプロトコルは、吸収剤が消耗状態に近いかどうかを判定するのにも使用することができる。このプロトコルには知覚的警告、管理的コントロール、受動的インジケータ、及び能動的インジケータが挙げられる。
【0004】
例えば、製品寿命終了センサ(「EOLS」)又は耐用期間終了日インジケータ(ESLI)は、このようなデバイスのフィルターエレメントが、飽和状態に近づいているか、又は特定の物質に対して無効であり得ることを警告することができる。個人保護又は呼吸器保護(場合によってはセンサ又はインジケータ一般、あるいは特にEOLS又はESLI)に関する特許及び出願としては、米国特許第1,537,519号(Yablick)、同第3,966,440号(Roberts)、同第4,146,887号(Magnante)、同第4,154,586号(Jones et al.)、同第4,155,358号(McAllister et al.)、同第4,326,514号(Eian)、同第4,421,719号(Burleigh)、同第4,530,706号(Jones)、同第4,597,942号(Meathrel)、同第4,684,380号(Leichnitz)、同第4,847,594号(Stetter)、同第5,297,544号(May et al.)、同第5,323,774号(Fehlauer)、同第5,376,554号(Vo−Dinh)、同第5,512,882号(Stetter et al.)、同第5,666,949号(Debe et al.949)、同第5,659,296号(Debe et al.296)、同第6,375,725 B1号(Bernard et al.)、同第6,497,756 B1号(Curado et al.)及び同第6,701,864 B2号(Watson,Jr.et al.);米国特許出願公開第US2004/0135684 A1号(Steinthal et al.)、同第US 2004/0189982 A1号(Galarneau et al.)、同第US 2004/0223876 A1号(Kirollos et al.)、及び同第US 2005/0188749 A1号(Custer et al.);並びにPCT国際特許出願第WO 2004/057314 A2号が挙げられる。
【0005】
センサ及びインジケータに関するが、EOLSにもESLIにも関連しない他の特許及び特許出願としては米国特許第5,611,998号(Aussenegg et al.)、第5,783,836号(Liu et al.)、同6,007,904号(Schwotzer et al.)、同6,130,748号(Kruger et al.)、同6,248,539号(Ghadiri et al.);米国特許出願公開第US2004/0184948A1号(Rakow et al.)、及び米国法定発明登録第H1470(Ewing et al.)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様により、曝露指標デバイスがレスピレータシステム内に配置される。この曝露指標デバイスは光学的回折エレメントを含む。この曝露指標デバイスは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する材料を含む。この曝露指標デバイスは、その蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する。1つの態様では、この光学的回折エレメントは回折格子を含む。
【0007】
別の態様では、この材料は化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含む。別の態様では、このナノ多孔質材料は、シリコン、炭素、水素及び酸素を含む、平均孔径が約0.5〜約10ナノメートルの範囲の、非晶質ランダム共有結合ネットワークを含む。
【0008】
別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料で形成されている。
【0009】
1つの別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれている。この光学的回折エレメントは、取り囲んでいるナノ多孔質材料の、化学物質蒸気に曝露する前の屈折率に実質的に等しい屈折率を有する回折格子を含む。また、この回折格子は、取り囲んでいるナノ多孔質材の、化学物質蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する。
【0010】
1つの態様では、このデバイスは受動的デバイスである。別の態様では、このデバイスは能動的デバイスである。
【0011】
1つの態様では、この光学的回折エレメントはパターンになった微多孔性非晶質炭素材料を含む。
【0012】
本発明の別の態様により、レスピレータシステムに配置された曝露指標デバイスは、吸着材料を含む交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジが少なくとも1つ搭載されたフェースマスクを含む。この曝露指標デバイスは、少なくとも1つのレスピレータカートリッジの内側側壁に取り付けられた基材上に形成された光学的回折エレメントを含む。この少なくとも1つのレスピレータカートリッジの側壁上の取り付け位置は、実質的に透明である。この曝露指標デバイスは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含み、曝露指標デバイスが化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する。
【0013】
1つの態様では、この光学的回折エレメントは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料で形成される。
【0014】
別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれ、かつこのナノ多孔質材料が、吸着材料によって実質的に取り囲まれている。
【0015】
別の態様では、この光学的回折エレメントは、取り囲むナノ多孔質材料の、化学物質蒸気に曝露前の屈折率に実質的に等しく、かつ、取り囲むナノ多孔質材料の、この蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する回折格子を含む。1つの態様では、この曝露指標デバイスは受動的デバイスである。
【0016】
本発明の上記の概要は、本発明のそれぞれの図示の実施形態又は全ての実施を説明しようとするものではない。下記の図及び発明を実施するための形態によって、これらの実施形態を更に詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付図面を参照して更に詳しく記述される。
【図1】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスを有するレスピレータの概略図。
【図2】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスを有するレスピレータカートリッジの断面図。
【図3A】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスの概略図。
【図3B】本発明の別の態様による曝露指標デバイスの概略図。
【図4A】代表的な格子の概略図。
【図4B】本発明の1つの態様による、曝露前と曝露後の曝露指標デバイスの概略図。
【図4C】本発明の1つの態様による、曝露前と曝露後の曝露指標デバイスの概略図。
【図5A】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図5B】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図5C】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図6】変化する曝露に対するある回折格子例の光学的応答を示すグラフ。
【0018】
本発明は種々の修正及び代替形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示しており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することにないことを理解するべきである。むしろ、付随する請求項によって定義される本発明の範囲内に入る修正、等価物、及び代替物すべてを網羅することを意図するものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例として示す。この点に関して、「上」、「底」、「前」、「後」、「先」、「前方」、「後方」などのような方向用語は、説明する図の方向に関して用いられ得る。本発明の実施形態の構成要素は多くの異なる方向に置かれ得るので、方向に関する用語は、説明のために使われるものであって、決して限定するものではない。他の実施形態を利用することもでき、また、構造的又は論理的な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされうることが理解される。
【0020】
本発明は曝露指標デバイスを目的とする。1つの態様では、この曝露指標デバイスは個人用レスピレータに利用され、このレスピレータに使用されている浄化カートリッジの交換が必要であることを着用者に知らせる。好ましい1つの態様では、この曝露指標デバイスは光学系の受動的デバイスであり、有害な蒸気又はその他の空気中物質に対する曝露に相関してその屈折率が変化する。更に、この曝露指標デバイスは回折格子などの光学的回折エレメントを利用し、浄化カートリッジの消耗が近いことを視覚的に知らせる。1つの態様では、この曝露指標デバイスはナノ多孔質材料であり得る。別の態様では、この曝露指標デバイスはナノ多孔質材料内に埋め込まれたものであり得る。
【0021】
ここで図1を参照する。代表的な個人用レスピレータ1は、フェースマスク2を含み、この上に1組の交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジ3が搭載される。カートリッジ3はそれぞれ、吸着材料(例えば、活性炭及び/又は後述するその他の物質)(図1には示されていない)のための封入容器の役割をする。各カートリッジ3の前側カバー4は、気体入口として機能する複数の開口部5を含み、周囲空気が外部環境からカートリッジ3へと流入することを可能にし、吸着材料を通過し、カートリッジ3からの気体出口及びフェースマスク2への入口として機能する通路(図1には識別されていない)を通過する。各カートリッジ3の側壁6は透明であるか、又はフェースマスク2の着用者がこれを通して曝露指標デバイス8(本明細書ではインジケータ8又はインジケーター8’とも記載される)を見ることができる透明部分7を少なくとも含む。好ましい態様では、側壁6の少なくとも実質部分が透明である。曝露指標デバイス8は、より直接的に着用者から見えるよう、側壁6の上面近くに配置することができる。
【0022】
より詳しく後述するように、曝露指標デバイス8は光学的に変化し、吸着材料が所定の曝露条件で特定の蒸気又は対象化学種(本明細書では単に蒸気と記載される)との平衡に達すると、視覚的に認識可能な色彩変化が起こり、これによって着用者が、(1つ又は複数の)カートリッジ3を交換する時期を認識するのに役立つ。呼気は、呼気バルブ9を通じて、レスピレータ1から出る。インジケータは、様々な呼吸安全装置に使用することが可能である。例えば、インジケータはまた、単一のカートリッジレスピレータ又は動力付き空気浄化レスピレータ内に配備することもできる。
【0023】
図2は、レスピレータカートリッジ3の部分断面側面図である。所望により、開口部5は、例えば使用前に取り外すことができる取り外し可能カバー(図1及び図2には示されていない)を使用して、使用まで密封され得る。カートリッジ内に配置される吸着材料21のベッドが、開口部5から出口23へ通る関心対象の蒸気を吸収又は吸着する。一方向吸入バルブも利用することができる。一方向吸入バルブは、レスピレータの主フェースピース上に取り付けることができ、又は所望により、一方向吸入バルブ25はポスト27上に取り付け、呼気がカートリッジ3内に入るのを防ぐことができる。ねじ付き、又は好ましくは差し込みコネクタ(1つ又は複数)29は、カートリッジ3をマスク2に取り外し可能に連結するために使用され得る。側壁6は全体が透明であるか、又は実質的に透明な部分7を少なくとも含む。この透明な側壁により、周囲光が曝露指標デバイス8を通り抜けることができる。
【0024】
曝露指標デバイス8の下にある吸着材料21がその曝露条件で蒸気との平衡に達したことが、曝露指標デバイス8の外観における視覚的に認識可能な変化により示されたときに、カートリッジ3は取り外し、新しいカートリッジ3に交換し得る。好ましい態様では、更に詳しく以下に説明するように、曝露指標デバイス8は、蒸気平衡に達すると、明るい虹様の多色の外観を呈し得る。別の方法としては、そのような外観の変化には、例えば緑から赤又はその他の色へなど、色の変化が含まれ得る。
【0025】
更に別の方法として、曝露指標デバイス8が蒸気の流路の全長をカバーするような形状にすることにより、外観変化(例えば色変化)は、吸着材料21を通り曝露指標デバイス8を通り過ぎる蒸気の流れに伴って進行し得る。進行する外観変化は、単なる耐用期間終了日ではなく、むしろカートリッジ3の残存耐用期間を示し(バーゲージ又は燃料計と同様)、特に、残存耐用期間が、インジケータ8を通り過ぎ、空間的に広がる蒸気の最前線の浸透と線形的に比例するように、適切な注意を払ってカートリッジ3が設計される。
【0026】
あるいは、曝露指標デバイス8は、望ましい残存耐用期間のパーセンテージにおいてのみ警告を与えるのみのために、流路の末端部に向かって配置され得る。曝露指標デバイス8は、所望により、曝露指標デバイス8の外観における変化の視覚的認識を助けるために、パターン又は基準色を含んでもよい。
【0027】
すでに述べたように、曝露指標デバイス8の外観変化は、周囲光のもとで視覚的に監視することができ、これにより受動的デバイスとしてのEOLS又はESLIを提供することができる。あるいは、インジケータ8が、発光ダイオード(LED)などの外部光源を使用して照明され、カートリッジ3の周辺に搭載される光検出器を使用して光電子信号をもたらすことにより、評価することができる。更に、1本又は複数の光ファイバを介して曝露指標デバイス8に光を送達することができる。周囲光の下で見ても、又は外部光源及び検出器を使用して見ても、化学的検出の幅は、所望によって、様々な方法で増やすことができる。例えば、蒸気流路を横断する小さなインジケータの配列を採用することができる。
【0028】
図3A及び3Bは、代表的な曝露指標デバイスの異なる実施形態、すなわちインジケータ8(図3A)及びインジケータ8’(図3B)を示す。
【0029】
図3Aは代表的なインジケータ8の概略図である。1つの実施形態では、インジケータ8には回折エレメントが含まれる。好ましい態様では、この回折エレメントは、基材53上に配置された回折格子52を含む。基材53上の格子52の形成については、以下に詳しく説明される。別の方法としては、格子52は基材53にエッチングすることができる。
【0030】
この回折エレメント、ここでは回折格子52は、ナノ多孔質材料54中に埋め込まれ、これが実質的に回折格子を実質的に取り囲んでいる(すなわち、すべての面上にあるわけではない)。この埋め込みは、従来のスプレーコーティングプロセス、ディップコーティングプロセス、又は同様の方法によって達成することができ、これによりナノ多孔質材料が固体の格子を埋め込むか、及び/又は、回折エレメント上に形成された「溝」を充填する。基材53は側壁6の内側表面上に配置され、これは例えばエポキシなどの従来の接着剤を使用して、側壁6の表面に接着することができる。吸着材料21は、この埋め込まれたインジケーター8を覆い、実質的に取り囲む。
【0031】
本発明の代表的な態様に従い、この曝露指標デバイスは、曝露に相関してその屈折率が変化する。図3Aの特定の実施形態では、格子52は一定の屈折率(ng)を有し、ナノ多孔質材料54は可変の屈折率を有し、この屈折率は特定の蒸気に対するこの材料の曝露に相関して変化する。実際の使用では、ナノ多孔質材料54は、屈折率初期値(npi)が、代表的な回折格子の屈折率と同じ値を有するよう選択される(すなわち、npi=ng)。しかしながら、吸着材料21が蒸気に曝露すると、この屈折率(npe)が変化し、npe≠ngとなる。
【0032】
例えば、図4A〜4Cに図示されているように、格子の外観は、ナノ多孔質材料54の蒸気に対する曝露レベルに依存する。この実施形態では、回折エレメントは回折格子を含む。図4Aに示すように、回折格子52は、頂点と谷が交互にある従来の構造を有するよう形成することができる。別の方法としては、格子52は、本明細書の説明によって当業者には明らかなように、ブレーズ格子、チャープ格子、又はその他の回折格子として形成することができる。回折格子52の形成に使用される材料は、ある屈折率初期値(ng)を有する。
【0033】
実際の使用において、この実施形態では、回折格子52は実質的にナノ多孔質材料54によって取り囲まれている。よって、図4Bに示すように、ナノ多孔質材料54は回折格子の屈折率(ng)と同じ屈折率初期値(npi)を有しているため(すなわちnpi=ng)、ナノ多孔質材料54に入射する光80は、埋め込まれている回折格子52の存在によって影響を受けない。しかしながら、図4Cに示すように、ナノ多孔質材料54が蒸気に曝されると、その屈折率は(npi)から(npe)へと変化し、これによりnpe≠ngとなる。格子は光の拡散性が非常に高いため、曝露したナノ多孔質材料54に入射した光80の一部が、埋め込まれた回折格子52によって回折し(回折光82)、これはユーザには回折パターン(例えば虹様のパターン)として見える。この回折パターンは、吸着カートリッジを交換すべきだということをユーザに知らせる。
【0034】
別の実施形態において、この回折エレメントは例えばレンズなどの屈折性エレメントに置き換えることができる。この方法では、レンズと、それを取り囲むナノ多孔質材料とが、同じ屈折率初期値を有する。ナノ多孔質材料が蒸気に曝されると、その屈折率が変化する。これにより、ナノ多孔質材料の屈折率が変化する前は見えなかった記号又はその他の構造が、レンズにより見えるようになる。
【0035】
ナノ多孔質材料54は、均質又は不均質の材料を含んでいてよく、例えば、無機化合物の混合物、有機化合物の混合物、又は無機化合物と有機化合物の混合物から製造することができる。ナノ多孔質材料は、望ましくは、吸着媒体の蒸気吸着特性と同様な、蒸気吸着特性をもたらすように選択された、孔径又は表面積の範囲を有する。好適な多孔性は、米国特許第6,573,305 B1号(Thunhorst et al.)に記載されるものなどのような、高内相エマルションから作製されるフォームなどの多孔質の材料を使用して得ることができる。多孔性はまた、ミクロ孔質材料を作製するために二酸化炭素のフォーミングを介して(「Macromolecules」,2001,vol.34,pp.8792〜8801を参照)又はポリマーブレンドのナノ相分離(「Science」,1999,vol.283,p.520を参照)によって得ることもできる。一般的に、孔の直径は、好ましくは、望ましいインジケータ着色のピーク波長よりも小さい。例えば約0.5〜約20nm、0.5〜約10nm、0.5〜約5nmの平均孔径のナノサイズの孔が好ましい。
【0036】
代表的な無機ナノ多孔質材料には、多孔質シリカ、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びその他の無機化合物で、特定の蒸気に曝露することにより屈折率が変化するものが挙げられる。例えば、無機ナノ多孔質材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、酸窒化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、ゼオライト、又はこれらの組み合わせであってよい。多孔質シリカが代表的なナノ多孔質材料である。
【0037】
多孔質シリカは、例えば、ゾルゲルプロセス法を用いて調製することができ、有機テンプレートを用いて、又は用いずに調製できる。代表的な有機テンプレートとしては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩などのアニオン性又は非イオン性界面活性剤、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー及び他の界面活性剤又は当業者に明らかなポリマーが挙げられる。ゾルゲル混合物は、ケイ酸塩に変えてもよく、有機テンプレートは取り除かれてシリカ内の網状組織をミクロ孔質のままにしてもよい。
【0038】
代表的な多孔質シリカ物質は、Ogawa et al.,Chem.Commun.Pp.1149〜1150(1996)、Kresge et al.,Nature,Vol.359,pp.710〜712(1992)、Jia et al.,Chemistry Letters,Vol.33(2),pp.202〜203(2004)、及び米国特許第5,858,457号(Brinker et al.)に記載されている。様々な有機分子もまた、有機テンプレートとして使用することができる。例えば、グルコースやマンノースなどの糖類を有機テンプレートとして使用して、多孔質シリケートを生成してもよく、これについては、Wei et al,Adv.Mater.1998,Vol.10,p.313(1998)を参照のこと。有機置換シロキサン又は有機−ビス−シロキサンがゾルゲル組成物に含まれて、ミクロ孔質をより疎水性にし、水蒸気の収着を制限してもよい。プラズマ化学蒸着もまた、多孔質無機材料を生成するのに使用され得る。そのような材料の例は、米国特許第6,312,793号(Grill et al.)及び米国特許公開第20070141580号に記述されている。例えば米国特許公開第20070141580号は、シリコン、炭素、水素及び酸素を含み、平均孔径が0.5〜10ナノメートルの範囲の、非晶質ランダム共有結合ネットワークについて記述している。他の材料例には、米国特許出願第11/618,010号に記述されている、シリコン/炭素/酸素プラズマ蒸着フィルム(SiCO)が含まれる。
【0039】
代表的なナノ多孔質材料には、疎水性アクリレート及びメタクリレート、二官能モノマー、ビニルモノマー、炭化水素モノマー(オレフィン)、シランモノマー、フッ素化モノマー、ヒドロキシル化モノマー、アクリルアミド、無水物、アルデヒド官能化モノマー、アミン官能化若しくはアミン塩官能化モノマー、酸官能化モノマー、エポキシド官能化モノマー、並びにこれらの混合物又は組み合わせを包含するモノマーから調製した又は調製可能な、ポリマー、コポリマー(ブロックコポリマーを包含する)、及びこれらの混合物が挙げられる。米国特許出願公開第2004/0184948 A1号には、かかるモノマーの広範なリストが収容されており、更なる詳細についてはこれを参照する。固有ミクロ孔質を有する上述のポリマー(PIM)は、特に望ましい材料を提供する。PIMは、典型的には、ミクロ孔質の固体を形成する非網状ポリマーである。これらの典型的に、高度に剛性で回旋状の分子構造のために、PIMsは、空間を有効に満たすことができず、したがって開示されるミクロ構造を提供する。好適なPIMには、「Polymers of intrinsic microporosity(PIMs):robust,solution−processable,organic microporous materials,」Budd et al.,Chem.Commun.,2004,pp.230〜231に開示されたポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。他のPIMは、Budd et al.,J.Mater.Chem.,2005,15,pp.1977〜1986、McKeown et al.,Chem.Eur.J.2005,11,No.9,2610〜2620、及びPCT国際特許出願第WO 2005/012397 A2(McKeown et al.)に開示されている。
【0040】
有機層内の1つ以上のポリマーは、少なくとも部分的に架橋されていてよい。機械的安定性及び、一定の被検質に対する感度を向上するため、いくつかの実施形態では、架橋は望ましい。架橋は、1つ以上の多官能モノマーを層に組み込むことにより、層を例えば、電子線又はγ線処理に付することにより、配位化合物又はイオン性化合物を層内に添加又は形成することにより、又は水素結合を層内に形成することにより、達成することができる。1つの代表的な実施形態では、その後多孔質材料を生成するために、架橋系から抽出されてもよい、ポロゲンの存在下で実行される。好適なポロゲンとしては、直鎖アルカン(例えば、デカン)又は芳香族(例えば、ベンゼン又はトルエン)などの、不活性有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。他の架橋ポリマーとしては、上述の、高度に架橋されたスチレンポリマーが挙げられる。
【0041】
所望に応じて、ナノ多孔質材料は、その表面特性又は吸着特性を変性するために処理されてもよい。さまざまな、かかる処理は、例えば、ナノ多孔質材料のミクロ細孔を好適なオルガノシラン化合物に晒すことによって、利用されてよい。
【0042】
多くの用途について、このナノ多孔質材料は疎水性である。これにより水蒸気(又は液体の水)がナノ多孔質材料に変化を起こす可能性が低減される。
【0043】
図3Bは、別の代表的なインジケータ8’の概略図を示す。好ましい態様では、インジケータ8’には、基材53上に配置された回折エレメント(例えば回折格子52’)が含まれている。格子52’の形成については、下記に詳しく説明される。別の方法としては、格子52’は基材53にエッチングすることができる。
【0044】
回折エレメント、ここでは回折格子52’はナノ多孔質材料を含み、このナノ多孔質材料の屈折率は、蒸気に対する曝露に相関して変化し、これにより屈折率は初期値(ngi)から曝露値(nge)へと変化し、nge≠ngiである。基材53は側壁6の内側表面上に配置され、これは例えばエポキシなどの従来の接着剤を使用して、側壁6の表面に接着することができる。吸着材料21は、埋め込まれたインジケータ8を覆う。
【0045】
1つの態様では、図3Aの実施形態に戻って参照し、回折エレメントはシリカ又は他の透明な基材上に形成された回折格子52であり得る。この態様において、回折格子52の屈折率は一定である一方、周囲のナノ多孔質材料の屈折率は、曝露に相関して変化する。
【0046】
別の態様では、図3Bの実施形態について、回折格子52’は、曝露に相関して屈折率が変化するナノ多孔質材料を含む。この回折格子52’は次のように製造することができる。1つの代表的な態様では、回折格子52は、ダイヤモンド様炭素(DLC)及びダイヤモンド様ガラス(DLG)の薄いフィルムの積層物として形成される。DLC及びDLG材料の蒸着は、米国特許出願第11/618,010号に記述されている。
【0047】
図5Aは、最終的な格子52’を形成するのに使用されるプロセス中の格子101aの概略図である。最初の積層物は、基材102、その基材の上に形成されたDLC層104、そのDLC層の上に形成されたDLG層106、及びそのDLG層の上に形成されたフォトレジスト層108を含む。好ましい態様では、基材102はシリカ材料である。着色ガラス又はその他の透明な基質材料も利用することができる。他の格子は、シリコン系基材上に形成することができ、これは、例えば前述のように、別個の光源及び/又は光ファイバを組み込んだ能動的システムに利用するのに最適である。
【0048】
蒸着は、例えばPlasmathermから販売されているばっちりアクター(例えばモデルNo.3032)で実施することができる。基質102は、例えば酸素プラズマ及びテトラメチルシランプラズマを使用して、DLC及びDLGの蒸着の前にプライミングすることができる。DLC 104の厚さは約500nm〜約1000nm(好ましくは約800nm)、DLG 106の厚さは約20nm〜約100nm(好ましくは約50nm)に形成することができる。従来型のフォトレジスト材料、例えば厚さ約500nmのポジ型フォトレジスト材料を使用することができる(例えばRohm and Hass Electronic materials(マサチューセッツ州マールボロ)から販売されているMICROPOSIT S1805)。図5Aに示すように、フォトレジスト108は標準的な交互のパターンを有し得る。別の方法としては、フォトレジスト108はブレーズ格子、チャープ格子、その他の回折エレメント用に、好適なパターンを有し得る。パターン形成及び現像は、従来のフォトリソグラフィー技術を使用して達成することができる。
【0049】
フォトレジストパターンは次に、図5Bのプロセス中の格子101bに示すように、DLGに転写される。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)技法を、パターンを転写するのに採用することができる。1つの実施例では、DLG 106はC3F8/O2エッチング液を使用してエッチングを行うことができる。もちろん、他のエッチング液も利用することができる。このパターンは更に、DLC層104に転写することができる。例えば、O2エッチングなどの従来のRIE技法を利用することができる。結果として得られるプロセス中構造101cを図5Cに示す。エッチングの後、格子を焼きなましすることにより、特定の蒸気に対する曝露に相関して屈折率が変化するような、パターンになった微多孔性非晶質炭素材料が得られる。
【0050】
図5A〜5Cの形成プロセスに従って形成された格子を用いて実施される実験では、一定範囲のトルエン濃度負荷に対して、格子の試験が行われた。サンプルの格子を、試験チャンバ内に入れた。蒸発器を利用してトルエン蒸気を発生させ、これを、試験チャンバにポンプ(調製可能ポンプを使用)で送り込まれる空気流内に注入した。サンプルの格子を約45度の角度で置いて、従来の顕微鏡用ランプで照らした。大口径のコア光ファイバを使用して、反射した光信号の一部を収集した。反射光は虹用のパターンを含んでいた。50ppmのトルエンに曝露した後、このサンプルでは、775nmにおいて、反射信号の17%増加が見られた。500ppmのトルエンに曝露した後、このサンプルでは、775nmにおいて、反射信号の25%増加が見られた。
【0051】
図6は、事前曝露の場合及び50ppm曝露レベルについて、トルエン曝露に対するサンプル回折格子のグラフを提供する。タングステンハロゲン光源(R−LS−1、Ocean Opticsから販売)、反射プローブ、及びUSB−2000スペクトロメーターを用いて、サンプルの光学スペクトルデータがモニターされた。
【0052】
したがって、回折エレメントと連携したナノ多孔質材料は、レスピレータシステムのための曝露指標デバイスの一部として、EOLS又はESLI用途に利用することができる。
【0053】
本明細書を検討すれば、本発明が適用可能であっても良い様々な変更、等価の処理、並びに多数の構造が、本発明が対象とする技術の当業者には容易に明らかになるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は曝露指標デバイスを目的とする。
【背景技術】
【0002】
(関連技術)
危険な化学物質への曝露からユーザを保護するため、さまざまなレスピレータシステムが存在する。このようなシステムの例には、周囲空気から有害物質を除去するための吸着材料を収納したカートリッジを使用する負圧又は動力付きレスピレータ、及び給気式レスピレータが挙げられる。
【0003】
ユーザに送達される空気を評価するために、数多くのプロトコルが開発されている。これらのプロトコルは、吸収剤が消耗状態に近いかどうかを判定するのにも使用することができる。このプロトコルには知覚的警告、管理的コントロール、受動的インジケータ、及び能動的インジケータが挙げられる。
【0004】
例えば、製品寿命終了センサ(「EOLS」)又は耐用期間終了日インジケータ(ESLI)は、このようなデバイスのフィルターエレメントが、飽和状態に近づいているか、又は特定の物質に対して無効であり得ることを警告することができる。個人保護又は呼吸器保護(場合によってはセンサ又はインジケータ一般、あるいは特にEOLS又はESLI)に関する特許及び出願としては、米国特許第1,537,519号(Yablick)、同第3,966,440号(Roberts)、同第4,146,887号(Magnante)、同第4,154,586号(Jones et al.)、同第4,155,358号(McAllister et al.)、同第4,326,514号(Eian)、同第4,421,719号(Burleigh)、同第4,530,706号(Jones)、同第4,597,942号(Meathrel)、同第4,684,380号(Leichnitz)、同第4,847,594号(Stetter)、同第5,297,544号(May et al.)、同第5,323,774号(Fehlauer)、同第5,376,554号(Vo−Dinh)、同第5,512,882号(Stetter et al.)、同第5,666,949号(Debe et al.949)、同第5,659,296号(Debe et al.296)、同第6,375,725 B1号(Bernard et al.)、同第6,497,756 B1号(Curado et al.)及び同第6,701,864 B2号(Watson,Jr.et al.);米国特許出願公開第US2004/0135684 A1号(Steinthal et al.)、同第US 2004/0189982 A1号(Galarneau et al.)、同第US 2004/0223876 A1号(Kirollos et al.)、及び同第US 2005/0188749 A1号(Custer et al.);並びにPCT国際特許出願第WO 2004/057314 A2号が挙げられる。
【0005】
センサ及びインジケータに関するが、EOLSにもESLIにも関連しない他の特許及び特許出願としては米国特許第5,611,998号(Aussenegg et al.)、第5,783,836号(Liu et al.)、同6,007,904号(Schwotzer et al.)、同6,130,748号(Kruger et al.)、同6,248,539号(Ghadiri et al.);米国特許出願公開第US2004/0184948A1号(Rakow et al.)、及び米国法定発明登録第H1470(Ewing et al.)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様により、曝露指標デバイスがレスピレータシステム内に配置される。この曝露指標デバイスは光学的回折エレメントを含む。この曝露指標デバイスは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する材料を含む。この曝露指標デバイスは、その蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する。1つの態様では、この光学的回折エレメントは回折格子を含む。
【0007】
別の態様では、この材料は化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含む。別の態様では、このナノ多孔質材料は、シリコン、炭素、水素及び酸素を含む、平均孔径が約0.5〜約10ナノメートルの範囲の、非晶質ランダム共有結合ネットワークを含む。
【0008】
別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料で形成されている。
【0009】
1つの別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれている。この光学的回折エレメントは、取り囲んでいるナノ多孔質材料の、化学物質蒸気に曝露する前の屈折率に実質的に等しい屈折率を有する回折格子を含む。また、この回折格子は、取り囲んでいるナノ多孔質材の、化学物質蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する。
【0010】
1つの態様では、このデバイスは受動的デバイスである。別の態様では、このデバイスは能動的デバイスである。
【0011】
1つの態様では、この光学的回折エレメントはパターンになった微多孔性非晶質炭素材料を含む。
【0012】
本発明の別の態様により、レスピレータシステムに配置された曝露指標デバイスは、吸着材料を含む交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジが少なくとも1つ搭載されたフェースマスクを含む。この曝露指標デバイスは、少なくとも1つのレスピレータカートリッジの内側側壁に取り付けられた基材上に形成された光学的回折エレメントを含む。この少なくとも1つのレスピレータカートリッジの側壁上の取り付け位置は、実質的に透明である。この曝露指標デバイスは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含み、曝露指標デバイスが化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する。
【0013】
1つの態様では、この光学的回折エレメントは、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料で形成される。
【0014】
別の態様では、この光学的回折エレメントはナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれ、かつこのナノ多孔質材料が、吸着材料によって実質的に取り囲まれている。
【0015】
別の態様では、この光学的回折エレメントは、取り囲むナノ多孔質材料の、化学物質蒸気に曝露前の屈折率に実質的に等しく、かつ、取り囲むナノ多孔質材料の、この蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する回折格子を含む。1つの態様では、この曝露指標デバイスは受動的デバイスである。
【0016】
本発明の上記の概要は、本発明のそれぞれの図示の実施形態又は全ての実施を説明しようとするものではない。下記の図及び発明を実施するための形態によって、これらの実施形態を更に詳細に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、添付図面を参照して更に詳しく記述される。
【図1】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスを有するレスピレータの概略図。
【図2】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスを有するレスピレータカートリッジの断面図。
【図3A】本発明の1つの態様による曝露指標デバイスの概略図。
【図3B】本発明の別の態様による曝露指標デバイスの概略図。
【図4A】代表的な格子の概略図。
【図4B】本発明の1つの態様による、曝露前と曝露後の曝露指標デバイスの概略図。
【図4C】本発明の1つの態様による、曝露前と曝露後の曝露指標デバイスの概略図。
【図5A】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図5B】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図5C】本発明の別の態様による曝露指標デバイス用に格子を製造するためのプロセスの概略図。
【図6】変化する曝露に対するある回折格子例の光学的応答を示すグラフ。
【0018】
本発明は種々の修正及び代替形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示しており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することにないことを理解するべきである。むしろ、付随する請求項によって定義される本発明の範囲内に入る修正、等価物、及び代替物すべてを網羅することを意図するものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の発明を実施するための形態では、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照し、本発明を実施することができる特定の実施形態を例として示す。この点に関して、「上」、「底」、「前」、「後」、「先」、「前方」、「後方」などのような方向用語は、説明する図の方向に関して用いられ得る。本発明の実施形態の構成要素は多くの異なる方向に置かれ得るので、方向に関する用語は、説明のために使われるものであって、決して限定するものではない。他の実施形態を利用することもでき、また、構造的又は論理的な変更が、本発明の範囲から逸脱することなくなされうることが理解される。
【0020】
本発明は曝露指標デバイスを目的とする。1つの態様では、この曝露指標デバイスは個人用レスピレータに利用され、このレスピレータに使用されている浄化カートリッジの交換が必要であることを着用者に知らせる。好ましい1つの態様では、この曝露指標デバイスは光学系の受動的デバイスであり、有害な蒸気又はその他の空気中物質に対する曝露に相関してその屈折率が変化する。更に、この曝露指標デバイスは回折格子などの光学的回折エレメントを利用し、浄化カートリッジの消耗が近いことを視覚的に知らせる。1つの態様では、この曝露指標デバイスはナノ多孔質材料であり得る。別の態様では、この曝露指標デバイスはナノ多孔質材料内に埋め込まれたものであり得る。
【0021】
ここで図1を参照する。代表的な個人用レスピレータ1は、フェースマスク2を含み、この上に1組の交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジ3が搭載される。カートリッジ3はそれぞれ、吸着材料(例えば、活性炭及び/又は後述するその他の物質)(図1には示されていない)のための封入容器の役割をする。各カートリッジ3の前側カバー4は、気体入口として機能する複数の開口部5を含み、周囲空気が外部環境からカートリッジ3へと流入することを可能にし、吸着材料を通過し、カートリッジ3からの気体出口及びフェースマスク2への入口として機能する通路(図1には識別されていない)を通過する。各カートリッジ3の側壁6は透明であるか、又はフェースマスク2の着用者がこれを通して曝露指標デバイス8(本明細書ではインジケータ8又はインジケーター8’とも記載される)を見ることができる透明部分7を少なくとも含む。好ましい態様では、側壁6の少なくとも実質部分が透明である。曝露指標デバイス8は、より直接的に着用者から見えるよう、側壁6の上面近くに配置することができる。
【0022】
より詳しく後述するように、曝露指標デバイス8は光学的に変化し、吸着材料が所定の曝露条件で特定の蒸気又は対象化学種(本明細書では単に蒸気と記載される)との平衡に達すると、視覚的に認識可能な色彩変化が起こり、これによって着用者が、(1つ又は複数の)カートリッジ3を交換する時期を認識するのに役立つ。呼気は、呼気バルブ9を通じて、レスピレータ1から出る。インジケータは、様々な呼吸安全装置に使用することが可能である。例えば、インジケータはまた、単一のカートリッジレスピレータ又は動力付き空気浄化レスピレータ内に配備することもできる。
【0023】
図2は、レスピレータカートリッジ3の部分断面側面図である。所望により、開口部5は、例えば使用前に取り外すことができる取り外し可能カバー(図1及び図2には示されていない)を使用して、使用まで密封され得る。カートリッジ内に配置される吸着材料21のベッドが、開口部5から出口23へ通る関心対象の蒸気を吸収又は吸着する。一方向吸入バルブも利用することができる。一方向吸入バルブは、レスピレータの主フェースピース上に取り付けることができ、又は所望により、一方向吸入バルブ25はポスト27上に取り付け、呼気がカートリッジ3内に入るのを防ぐことができる。ねじ付き、又は好ましくは差し込みコネクタ(1つ又は複数)29は、カートリッジ3をマスク2に取り外し可能に連結するために使用され得る。側壁6は全体が透明であるか、又は実質的に透明な部分7を少なくとも含む。この透明な側壁により、周囲光が曝露指標デバイス8を通り抜けることができる。
【0024】
曝露指標デバイス8の下にある吸着材料21がその曝露条件で蒸気との平衡に達したことが、曝露指標デバイス8の外観における視覚的に認識可能な変化により示されたときに、カートリッジ3は取り外し、新しいカートリッジ3に交換し得る。好ましい態様では、更に詳しく以下に説明するように、曝露指標デバイス8は、蒸気平衡に達すると、明るい虹様の多色の外観を呈し得る。別の方法としては、そのような外観の変化には、例えば緑から赤又はその他の色へなど、色の変化が含まれ得る。
【0025】
更に別の方法として、曝露指標デバイス8が蒸気の流路の全長をカバーするような形状にすることにより、外観変化(例えば色変化)は、吸着材料21を通り曝露指標デバイス8を通り過ぎる蒸気の流れに伴って進行し得る。進行する外観変化は、単なる耐用期間終了日ではなく、むしろカートリッジ3の残存耐用期間を示し(バーゲージ又は燃料計と同様)、特に、残存耐用期間が、インジケータ8を通り過ぎ、空間的に広がる蒸気の最前線の浸透と線形的に比例するように、適切な注意を払ってカートリッジ3が設計される。
【0026】
あるいは、曝露指標デバイス8は、望ましい残存耐用期間のパーセンテージにおいてのみ警告を与えるのみのために、流路の末端部に向かって配置され得る。曝露指標デバイス8は、所望により、曝露指標デバイス8の外観における変化の視覚的認識を助けるために、パターン又は基準色を含んでもよい。
【0027】
すでに述べたように、曝露指標デバイス8の外観変化は、周囲光のもとで視覚的に監視することができ、これにより受動的デバイスとしてのEOLS又はESLIを提供することができる。あるいは、インジケータ8が、発光ダイオード(LED)などの外部光源を使用して照明され、カートリッジ3の周辺に搭載される光検出器を使用して光電子信号をもたらすことにより、評価することができる。更に、1本又は複数の光ファイバを介して曝露指標デバイス8に光を送達することができる。周囲光の下で見ても、又は外部光源及び検出器を使用して見ても、化学的検出の幅は、所望によって、様々な方法で増やすことができる。例えば、蒸気流路を横断する小さなインジケータの配列を採用することができる。
【0028】
図3A及び3Bは、代表的な曝露指標デバイスの異なる実施形態、すなわちインジケータ8(図3A)及びインジケータ8’(図3B)を示す。
【0029】
図3Aは代表的なインジケータ8の概略図である。1つの実施形態では、インジケータ8には回折エレメントが含まれる。好ましい態様では、この回折エレメントは、基材53上に配置された回折格子52を含む。基材53上の格子52の形成については、以下に詳しく説明される。別の方法としては、格子52は基材53にエッチングすることができる。
【0030】
この回折エレメント、ここでは回折格子52は、ナノ多孔質材料54中に埋め込まれ、これが実質的に回折格子を実質的に取り囲んでいる(すなわち、すべての面上にあるわけではない)。この埋め込みは、従来のスプレーコーティングプロセス、ディップコーティングプロセス、又は同様の方法によって達成することができ、これによりナノ多孔質材料が固体の格子を埋め込むか、及び/又は、回折エレメント上に形成された「溝」を充填する。基材53は側壁6の内側表面上に配置され、これは例えばエポキシなどの従来の接着剤を使用して、側壁6の表面に接着することができる。吸着材料21は、この埋め込まれたインジケーター8を覆い、実質的に取り囲む。
【0031】
本発明の代表的な態様に従い、この曝露指標デバイスは、曝露に相関してその屈折率が変化する。図3Aの特定の実施形態では、格子52は一定の屈折率(ng)を有し、ナノ多孔質材料54は可変の屈折率を有し、この屈折率は特定の蒸気に対するこの材料の曝露に相関して変化する。実際の使用では、ナノ多孔質材料54は、屈折率初期値(npi)が、代表的な回折格子の屈折率と同じ値を有するよう選択される(すなわち、npi=ng)。しかしながら、吸着材料21が蒸気に曝露すると、この屈折率(npe)が変化し、npe≠ngとなる。
【0032】
例えば、図4A〜4Cに図示されているように、格子の外観は、ナノ多孔質材料54の蒸気に対する曝露レベルに依存する。この実施形態では、回折エレメントは回折格子を含む。図4Aに示すように、回折格子52は、頂点と谷が交互にある従来の構造を有するよう形成することができる。別の方法としては、格子52は、本明細書の説明によって当業者には明らかなように、ブレーズ格子、チャープ格子、又はその他の回折格子として形成することができる。回折格子52の形成に使用される材料は、ある屈折率初期値(ng)を有する。
【0033】
実際の使用において、この実施形態では、回折格子52は実質的にナノ多孔質材料54によって取り囲まれている。よって、図4Bに示すように、ナノ多孔質材料54は回折格子の屈折率(ng)と同じ屈折率初期値(npi)を有しているため(すなわちnpi=ng)、ナノ多孔質材料54に入射する光80は、埋め込まれている回折格子52の存在によって影響を受けない。しかしながら、図4Cに示すように、ナノ多孔質材料54が蒸気に曝されると、その屈折率は(npi)から(npe)へと変化し、これによりnpe≠ngとなる。格子は光の拡散性が非常に高いため、曝露したナノ多孔質材料54に入射した光80の一部が、埋め込まれた回折格子52によって回折し(回折光82)、これはユーザには回折パターン(例えば虹様のパターン)として見える。この回折パターンは、吸着カートリッジを交換すべきだということをユーザに知らせる。
【0034】
別の実施形態において、この回折エレメントは例えばレンズなどの屈折性エレメントに置き換えることができる。この方法では、レンズと、それを取り囲むナノ多孔質材料とが、同じ屈折率初期値を有する。ナノ多孔質材料が蒸気に曝されると、その屈折率が変化する。これにより、ナノ多孔質材料の屈折率が変化する前は見えなかった記号又はその他の構造が、レンズにより見えるようになる。
【0035】
ナノ多孔質材料54は、均質又は不均質の材料を含んでいてよく、例えば、無機化合物の混合物、有機化合物の混合物、又は無機化合物と有機化合物の混合物から製造することができる。ナノ多孔質材料は、望ましくは、吸着媒体の蒸気吸着特性と同様な、蒸気吸着特性をもたらすように選択された、孔径又は表面積の範囲を有する。好適な多孔性は、米国特許第6,573,305 B1号(Thunhorst et al.)に記載されるものなどのような、高内相エマルションから作製されるフォームなどの多孔質の材料を使用して得ることができる。多孔性はまた、ミクロ孔質材料を作製するために二酸化炭素のフォーミングを介して(「Macromolecules」,2001,vol.34,pp.8792〜8801を参照)又はポリマーブレンドのナノ相分離(「Science」,1999,vol.283,p.520を参照)によって得ることもできる。一般的に、孔の直径は、好ましくは、望ましいインジケータ着色のピーク波長よりも小さい。例えば約0.5〜約20nm、0.5〜約10nm、0.5〜約5nmの平均孔径のナノサイズの孔が好ましい。
【0036】
代表的な無機ナノ多孔質材料には、多孔質シリカ、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、及びその他の無機化合物で、特定の蒸気に曝露することにより屈折率が変化するものが挙げられる。例えば、無機ナノ多孔質材料は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、窒化チタン、酸窒化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、ゼオライト、又はこれらの組み合わせであってよい。多孔質シリカが代表的なナノ多孔質材料である。
【0037】
多孔質シリカは、例えば、ゾルゲルプロセス法を用いて調製することができ、有機テンプレートを用いて、又は用いずに調製できる。代表的な有機テンプレートとしては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩などのアニオン性又は非イオン性界面活性剤、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ブロックコポリマー及び他の界面活性剤又は当業者に明らかなポリマーが挙げられる。ゾルゲル混合物は、ケイ酸塩に変えてもよく、有機テンプレートは取り除かれてシリカ内の網状組織をミクロ孔質のままにしてもよい。
【0038】
代表的な多孔質シリカ物質は、Ogawa et al.,Chem.Commun.Pp.1149〜1150(1996)、Kresge et al.,Nature,Vol.359,pp.710〜712(1992)、Jia et al.,Chemistry Letters,Vol.33(2),pp.202〜203(2004)、及び米国特許第5,858,457号(Brinker et al.)に記載されている。様々な有機分子もまた、有機テンプレートとして使用することができる。例えば、グルコースやマンノースなどの糖類を有機テンプレートとして使用して、多孔質シリケートを生成してもよく、これについては、Wei et al,Adv.Mater.1998,Vol.10,p.313(1998)を参照のこと。有機置換シロキサン又は有機−ビス−シロキサンがゾルゲル組成物に含まれて、ミクロ孔質をより疎水性にし、水蒸気の収着を制限してもよい。プラズマ化学蒸着もまた、多孔質無機材料を生成するのに使用され得る。そのような材料の例は、米国特許第6,312,793号(Grill et al.)及び米国特許公開第20070141580号に記述されている。例えば米国特許公開第20070141580号は、シリコン、炭素、水素及び酸素を含み、平均孔径が0.5〜10ナノメートルの範囲の、非晶質ランダム共有結合ネットワークについて記述している。他の材料例には、米国特許出願第11/618,010号に記述されている、シリコン/炭素/酸素プラズマ蒸着フィルム(SiCO)が含まれる。
【0039】
代表的なナノ多孔質材料には、疎水性アクリレート及びメタクリレート、二官能モノマー、ビニルモノマー、炭化水素モノマー(オレフィン)、シランモノマー、フッ素化モノマー、ヒドロキシル化モノマー、アクリルアミド、無水物、アルデヒド官能化モノマー、アミン官能化若しくはアミン塩官能化モノマー、酸官能化モノマー、エポキシド官能化モノマー、並びにこれらの混合物又は組み合わせを包含するモノマーから調製した又は調製可能な、ポリマー、コポリマー(ブロックコポリマーを包含する)、及びこれらの混合物が挙げられる。米国特許出願公開第2004/0184948 A1号には、かかるモノマーの広範なリストが収容されており、更なる詳細についてはこれを参照する。固有ミクロ孔質を有する上述のポリマー(PIM)は、特に望ましい材料を提供する。PIMは、典型的には、ミクロ孔質の固体を形成する非網状ポリマーである。これらの典型的に、高度に剛性で回旋状の分子構造のために、PIMsは、空間を有効に満たすことができず、したがって開示されるミクロ構造を提供する。好適なPIMには、「Polymers of intrinsic microporosity(PIMs):robust,solution−processable,organic microporous materials,」Budd et al.,Chem.Commun.,2004,pp.230〜231に開示されたポリマー類が挙げられるが、これらに限定されない。他のPIMは、Budd et al.,J.Mater.Chem.,2005,15,pp.1977〜1986、McKeown et al.,Chem.Eur.J.2005,11,No.9,2610〜2620、及びPCT国際特許出願第WO 2005/012397 A2(McKeown et al.)に開示されている。
【0040】
有機層内の1つ以上のポリマーは、少なくとも部分的に架橋されていてよい。機械的安定性及び、一定の被検質に対する感度を向上するため、いくつかの実施形態では、架橋は望ましい。架橋は、1つ以上の多官能モノマーを層に組み込むことにより、層を例えば、電子線又はγ線処理に付することにより、配位化合物又はイオン性化合物を層内に添加又は形成することにより、又は水素結合を層内に形成することにより、達成することができる。1つの代表的な実施形態では、その後多孔質材料を生成するために、架橋系から抽出されてもよい、ポロゲンの存在下で実行される。好適なポロゲンとしては、直鎖アルカン(例えば、デカン)又は芳香族(例えば、ベンゼン又はトルエン)などの、不活性有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。他の架橋ポリマーとしては、上述の、高度に架橋されたスチレンポリマーが挙げられる。
【0041】
所望に応じて、ナノ多孔質材料は、その表面特性又は吸着特性を変性するために処理されてもよい。さまざまな、かかる処理は、例えば、ナノ多孔質材料のミクロ細孔を好適なオルガノシラン化合物に晒すことによって、利用されてよい。
【0042】
多くの用途について、このナノ多孔質材料は疎水性である。これにより水蒸気(又は液体の水)がナノ多孔質材料に変化を起こす可能性が低減される。
【0043】
図3Bは、別の代表的なインジケータ8’の概略図を示す。好ましい態様では、インジケータ8’には、基材53上に配置された回折エレメント(例えば回折格子52’)が含まれている。格子52’の形成については、下記に詳しく説明される。別の方法としては、格子52’は基材53にエッチングすることができる。
【0044】
回折エレメント、ここでは回折格子52’はナノ多孔質材料を含み、このナノ多孔質材料の屈折率は、蒸気に対する曝露に相関して変化し、これにより屈折率は初期値(ngi)から曝露値(nge)へと変化し、nge≠ngiである。基材53は側壁6の内側表面上に配置され、これは例えばエポキシなどの従来の接着剤を使用して、側壁6の表面に接着することができる。吸着材料21は、埋め込まれたインジケータ8を覆う。
【0045】
1つの態様では、図3Aの実施形態に戻って参照し、回折エレメントはシリカ又は他の透明な基材上に形成された回折格子52であり得る。この態様において、回折格子52の屈折率は一定である一方、周囲のナノ多孔質材料の屈折率は、曝露に相関して変化する。
【0046】
別の態様では、図3Bの実施形態について、回折格子52’は、曝露に相関して屈折率が変化するナノ多孔質材料を含む。この回折格子52’は次のように製造することができる。1つの代表的な態様では、回折格子52は、ダイヤモンド様炭素(DLC)及びダイヤモンド様ガラス(DLG)の薄いフィルムの積層物として形成される。DLC及びDLG材料の蒸着は、米国特許出願第11/618,010号に記述されている。
【0047】
図5Aは、最終的な格子52’を形成するのに使用されるプロセス中の格子101aの概略図である。最初の積層物は、基材102、その基材の上に形成されたDLC層104、そのDLC層の上に形成されたDLG層106、及びそのDLG層の上に形成されたフォトレジスト層108を含む。好ましい態様では、基材102はシリカ材料である。着色ガラス又はその他の透明な基質材料も利用することができる。他の格子は、シリコン系基材上に形成することができ、これは、例えば前述のように、別個の光源及び/又は光ファイバを組み込んだ能動的システムに利用するのに最適である。
【0048】
蒸着は、例えばPlasmathermから販売されているばっちりアクター(例えばモデルNo.3032)で実施することができる。基質102は、例えば酸素プラズマ及びテトラメチルシランプラズマを使用して、DLC及びDLGの蒸着の前にプライミングすることができる。DLC 104の厚さは約500nm〜約1000nm(好ましくは約800nm)、DLG 106の厚さは約20nm〜約100nm(好ましくは約50nm)に形成することができる。従来型のフォトレジスト材料、例えば厚さ約500nmのポジ型フォトレジスト材料を使用することができる(例えばRohm and Hass Electronic materials(マサチューセッツ州マールボロ)から販売されているMICROPOSIT S1805)。図5Aに示すように、フォトレジスト108は標準的な交互のパターンを有し得る。別の方法としては、フォトレジスト108はブレーズ格子、チャープ格子、その他の回折エレメント用に、好適なパターンを有し得る。パターン形成及び現像は、従来のフォトリソグラフィー技術を使用して達成することができる。
【0049】
フォトレジストパターンは次に、図5Bのプロセス中の格子101bに示すように、DLGに転写される。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)技法を、パターンを転写するのに採用することができる。1つの実施例では、DLG 106はC3F8/O2エッチング液を使用してエッチングを行うことができる。もちろん、他のエッチング液も利用することができる。このパターンは更に、DLC層104に転写することができる。例えば、O2エッチングなどの従来のRIE技法を利用することができる。結果として得られるプロセス中構造101cを図5Cに示す。エッチングの後、格子を焼きなましすることにより、特定の蒸気に対する曝露に相関して屈折率が変化するような、パターンになった微多孔性非晶質炭素材料が得られる。
【0050】
図5A〜5Cの形成プロセスに従って形成された格子を用いて実施される実験では、一定範囲のトルエン濃度負荷に対して、格子の試験が行われた。サンプルの格子を、試験チャンバ内に入れた。蒸発器を利用してトルエン蒸気を発生させ、これを、試験チャンバにポンプ(調製可能ポンプを使用)で送り込まれる空気流内に注入した。サンプルの格子を約45度の角度で置いて、従来の顕微鏡用ランプで照らした。大口径のコア光ファイバを使用して、反射した光信号の一部を収集した。反射光は虹用のパターンを含んでいた。50ppmのトルエンに曝露した後、このサンプルでは、775nmにおいて、反射信号の17%増加が見られた。500ppmのトルエンに曝露した後、このサンプルでは、775nmにおいて、反射信号の25%増加が見られた。
【0051】
図6は、事前曝露の場合及び50ppm曝露レベルについて、トルエン曝露に対するサンプル回折格子のグラフを提供する。タングステンハロゲン光源(R−LS−1、Ocean Opticsから販売)、反射プローブ、及びUSB−2000スペクトロメーターを用いて、サンプルの光学スペクトルデータがモニターされた。
【0052】
したがって、回折エレメントと連携したナノ多孔質材料は、レスピレータシステムのための曝露指標デバイスの一部として、EOLS又はESLI用途に利用することができる。
【0053】
本明細書を検討すれば、本発明が適用可能であっても良い様々な変更、等価の処理、並びに多数の構造が、本発明が対象とする技術の当業者には容易に明らかになるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レスピレータシステムに配置される曝露指標デバイスであって、曝露指標デバイスが、光学的回折エレメントを含み、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する材料を含み、そして前記化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する、曝露指標デバイス。
【請求項2】
前記材料が、前記化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含む、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項3】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料で形成されている、請求項2に記載の曝露指標デバイス。
【請求項4】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれている、請求項2に記載の曝露指標デバイス。
【請求項5】
前記光学的回折エレメントが、前記取り囲んでいるナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に曝露する前の屈折率に実質的に等しい屈折率を有する回折格子を含む、請求項4に記載の曝露指標デバイス。
【請求項6】
前記回折格子が、前記取り囲んでいるナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する、請求項5に記載の曝露指標デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが受動的デバイスである、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項8】
前記デバイスが能動的デバイスである、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項9】
前記回折格子が、パターンになった微多孔性非晶質炭素材料を含む、請求項3に記載の曝露指標デバイス。
【請求項10】
前記ナノ多孔質材料が、シリコン、炭素、水素及び酸素を含む、約0.5〜約10ナノメートルの範囲の平均孔径を有する非晶質ランダム共有結合ネットワークを含む、請求項4に記載の曝露指標デバイス。
【請求項11】
吸着材料を含む交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジが少なくとも1つ搭載されたフェースマスクを含むレスピレータシステムに配置された曝露指標デバイスであって、
基材上に形成された光学的回折エレメントを含み、前記基材が少なくとも1つのレスピレータカートリッジの内側側壁に取り付けられ、ここにおいて少なくとも1つのレスピレータカートリッジの側壁上の取り付け位置は実質的に透明であり、またここにおいて前記曝露指標デバイスが化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含み、またここにおいて前記曝露指標デバイスが前記化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する、曝露指標デバイス。
【請求項12】
前記光学的回折エレメントが、前記化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する前記ナノ多孔質材料で形成されている、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【請求項13】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれ、かつ、前記ナノ多孔質材料が、前記吸着材料によって実質的に取り囲まれている、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【請求項14】
前記光学的回折エレメントが、前記取り囲むナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に曝露前の屈折率に実質的に等しく、かつ、前記取り囲むナノ多孔質材料の、前記蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する、回折格子を含む、請求項13に記載の曝露指標デバイス。
【請求項15】
前記デバイスが受動的デバイスである、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【請求項1】
レスピレータシステムに配置される曝露指標デバイスであって、曝露指標デバイスが、光学的回折エレメントを含み、化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する材料を含み、そして前記化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する、曝露指標デバイス。
【請求項2】
前記材料が、前記化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含む、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項3】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料で形成されている、請求項2に記載の曝露指標デバイス。
【請求項4】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれている、請求項2に記載の曝露指標デバイス。
【請求項5】
前記光学的回折エレメントが、前記取り囲んでいるナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に曝露する前の屈折率に実質的に等しい屈折率を有する回折格子を含む、請求項4に記載の曝露指標デバイス。
【請求項6】
前記回折格子が、前記取り囲んでいるナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する、請求項5に記載の曝露指標デバイス。
【請求項7】
前記デバイスが受動的デバイスである、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項8】
前記デバイスが能動的デバイスである、請求項1に記載の曝露指標デバイス。
【請求項9】
前記回折格子が、パターンになった微多孔性非晶質炭素材料を含む、請求項3に記載の曝露指標デバイス。
【請求項10】
前記ナノ多孔質材料が、シリコン、炭素、水素及び酸素を含む、約0.5〜約10ナノメートルの範囲の平均孔径を有する非晶質ランダム共有結合ネットワークを含む、請求項4に記載の曝露指標デバイス。
【請求項11】
吸着材料を含む交換可能な空気浄化レスピレータカートリッジが少なくとも1つ搭載されたフェースマスクを含むレスピレータシステムに配置された曝露指標デバイスであって、
基材上に形成された光学的回折エレメントを含み、前記基材が少なくとも1つのレスピレータカートリッジの内側側壁に取り付けられ、ここにおいて少なくとも1つのレスピレータカートリッジの側壁上の取り付け位置は実質的に透明であり、またここにおいて前記曝露指標デバイスが化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有するナノ多孔質材料を含み、またここにおいて前記曝露指標デバイスが前記化学物質蒸気への曝露に相関して光学的特性が変化する光学的信号を提供する、曝露指標デバイス。
【請求項12】
前記光学的回折エレメントが、前記化学物質蒸気への曝露に相関して変化する屈折率を有する前記ナノ多孔質材料で形成されている、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【請求項13】
前記光学的回折エレメントが、前記ナノ多孔質材料内に実質的に埋め込まれ、かつ、前記ナノ多孔質材料が、前記吸着材料によって実質的に取り囲まれている、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【請求項14】
前記光学的回折エレメントが、前記取り囲むナノ多孔質材料の、前記化学物質蒸気に曝露前の屈折率に実質的に等しく、かつ、前記取り囲むナノ多孔質材料の、前記蒸気に十分に曝露した後の屈折率とは異なる屈折率を有する、回折格子を含む、請求項13に記載の曝露指標デバイス。
【請求項15】
前記デバイスが受動的デバイスである、請求項11に記載の曝露指標デバイス。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【公表番号】特表2011−527008(P2011−527008A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516437(P2011−516437)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/047360
【国際公開番号】WO2010/002575
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/047360
【国際公開番号】WO2010/002575
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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