説明

曲再生制御装置、曲再生システム、プログラム

【課題】ターンテーブルを使った場合に劣らない音楽パフォーマンスを、ターンテーブルを使わない音楽パフォーマンスにおいて実現する。
【手段】ディスクジョッキーが、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Lを振り始めた場合、演奏制御装置20の演奏制御部44は、曲データ記憶メモリ41からRAM46に読み出した曲データにおけるオーディオデータ列をサウンドシステム60へ時系列順に出力する順方向再生処理を行う。一方、ディスクジョッキーが、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Rを振り始めた場合、曲データにおけるオーディオデータ列をサウンドシステム60へ逆時系列順に出力する逆方向再生処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクジョッキーによる音楽パフォーマンスを支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクジョッキーによる音楽パフォーマンスは、一台または複数台のターンテーブル(レコードプレーヤ)とその再生音を出力する音響設備とを用いて行われる。ディスクジョッキーは、ディスコやクラブ、野外ライブなどの会場において、その会場の雰囲気にマッチした曲を選び、即興の歌詞や台詞を織り交ぜながらその曲をターンテーブルにより再生することにより、その会場内の雰囲気を盛り上げる。
ディスクジョッキーの中には、DJ支援ソフトウェアを実装したパーソナルコンピュータをターンテーブルの代わりに用いて音楽パフォーマンスを行う者もいる。このディスクジョッキーは、MP3(MPEG Audio Layer-3)などのファイルフォーマットの曲データを自らのパーソナルコンピュータ内に準備し、操作子の操作を通じて各種音響効果を付与しながらその曲データを再生する。特許文献1には、ディスクジョッキーによるパーソナルコンピュータを用いた音楽パフォーマンスを支援する技術が開示されている。この特許文献1に開示された伴奏付加装置は、ターンテーブルがレコードからピックアップした演奏音が入力されると、その演奏音のピッチや音量を検出し、そのピッチや音量とマッチする伴奏音を生成する。そして、演奏音と伴奏音をミキシングした合成音を、所定のクオンタイズタイミングに合わせて発音する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−338602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ターンテーブルを用いた音楽パフォーマンスにおいてディスクジョッキーが頻繁に行う動作の1つにスクラッチがある。スクラッチは、レコード盤を直接手指で回転させて曲の同じ部分を前後方向に反復再生させ、リズムを刻んでいるかのようなスクラッチ音を奏でる動作である。このスクラッチによれば、他の楽器では表現できないような刺激的な音を表現することが可能である。しかしながら、ターンテーブルを用いない音楽パフォーマンスの場合、スクラッチのような動作ができないため、ターンテーブルを用いた場合と同じような音楽パフォーマンスを実現できないという問題があった。
本発明は、このような背景の下に案出されたものであり、ターンテーブルを使わずに、ターンテーブルを使った音楽パフォーマンスに見劣りしない音楽パフォーマンスを実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、曲データを記憶する記憶手段と、操作子の挙動を示す物理量を取得する取得手段と、前記記憶手段に記憶された曲データを再生する手段であって、前記取得手段が取得した物理量の波形に現れる特徴に基づき、前記曲データの再生の方向を制御する再生制御手段とを具備する曲再生制御装置を提供する。
本発明では、操作子の挙動を示す物理量の波形に現れる特徴に基づき、曲データの再生の方向を制御する。よって、この曲再生制御装置を利用するディスクジョッキーは、曲データの再生の方向を切り換えるような操作子の操作を行うことにより、他の楽器によっては表現できない刺激的な音を表現し、ターンテーブルを用いた音楽パフォーマンスに劣らない音楽パフォーマンスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】この発明の第1実施形態である曲再生制御装置を含む曲再生システムの構成を示すブロック図である。
【図2】演奏操作子を振る動作と図1に示す曲再生制御装置による曲データの再生の態様の関係を示す図である。。
【図3】図1に示す曲再生制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す曲再生制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の第2実施形態である曲再生制御装置を含む曲再生システムの構成を示すブロック図である。
【図6】演奏操作子を振る動作と図2に示す曲再生制御装置による曲データの再生の態様の関係を示す図である。
【図7】図2に示す曲再生制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】図2に示す曲再生制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、この発明の第1実施形態を説明する。
図1は、この発明の第1実施形態である曲再生制御装置20を含む曲再生システムの構成を示すブロック図である。この曲再生システムは、ディスクジョッキーによる音楽パフォーマンスを支援するものである。
図1において、演奏操作子10L,10Rは、ディスクジョッキーが左右の手にそれぞれ把持し、振る、ひねるなどの動作をする棒状の操作子である。演奏操作子10Lには、加速度センサ11Lおよび無線信号送信部12Lが内蔵され、演奏操作子10Rには、加速度センサ11Rおよび無線信号送信部12Rが内蔵される。
【0008】
加速度センサ11L,11Rは、演奏操作子10L,10Rを振ったときの演奏操作子10L,10Rの挙動を示す物理量である加速度を検出する手段である。より具体的に説明すると、加速度センサ11Lは、当該加速度センサ11Lに加わる加速度ベクトルを3つの検出軸x,y,z方向に分解して検出し、それらの検出軸x,y,zに加わる正方向または負方向の加速度成分al,al,alを示す各アナログ信号を各々出力する。加速度センサ11Rは、当該加速度センサ11Rに加わる加速度ベクトルを3つの検出軸x,y,z方向に分解して検出し、それらの検出軸x,y,zに加わる正方向または負方向の加速度成分ar,ar,arを示す各アナログ信号を各々出力する。
【0009】
無線信号送信部12Lは、一定時間長(例えば5ms)のサンプリング周期ごとに、加速度センサ11Lから出力されるアナログ信号をサンプリングしてデジタル化することにより、加速度成分al,al,alを示すデータを生成し、加速度成分al,al,alを示すデータを含むパケットを無線区間を介して曲再生制御装置20に送信する。また、無線信号送信部12Rは、一定時間長(例えば5ms)のサンプリング周期ごとに、加速度センサ11Rから出力されるアナログ信号をサンプリングしてデジタル化することにより、加速度成分ar,ar,arを示すデータを生成し、加速度成分ar,ar,arを示すデータを含むパケットを無線区間を介して曲再生制御装置20に送信する。
【0010】
曲再生制御装置20は、操作表示部31、無線信号受信部32、制御部30、およびインターフェース33を有する。
操作表示部31は、ユーザから各種の指示を受け取るとともに、ユーザに各種の情報を提供する。
無線信号受信部32は、一定時間長(例えば5ms)のサンプリング周期ごとに、演奏操作子10L,10Rから無線区間を介して送信されたパケットを受信する。そして、無線信号受信部32は、演奏操作子10Lから受信したパケットから加速度成分al,al,alを示すデータを取り出すとともに、演奏操作子10Rから受信したパケットから加速度成分ar,ar,arを示すデータを取り出し、取り出したデータを制御部30に引き渡す。
【0011】
制御部30は、曲データ記憶メモリ41、加速度取得部42、リングバッファ43、および再生制御部44を有する。
曲データ記憶メモリ41は、曲データを記憶した読み出し専用メモリである。曲データは、音楽パフォーマンスにおいて再生する曲を所定のサンプリングレートでサンプリングしたデジタル信号(「オーディオデータ」という)を時系列順に並べたデータである。
【0012】
加速度取得部42は、無線信号受信部32から加速度成分al,al,alおよび加速度成分ar,ar,arを示すデータを取得すると、加速度成分al,al,alを次式(1)に代入することにより加速度絶対値salを求めるとともに、加速度成分ar,ar,arを次式(2)に代入することにより加速度絶対値sarを求める。そして、加速度取得部42は、加速度絶対値sal,sarの対を求めるたび、リングバッファ43の書き込み先アドレスを歩進させ、リングバッファ43の書き込み先アドレスにその対を書き込む。
sal=(al+al+al1/2 …(1)
sar=(ar+ar+ar1/2 …(2)
【0013】
再生制御部44は、ROM45、RAM46、CPU47を有する。
ROM45は、制御プログラム50を記憶した読み出し専用メモリである。CPU47は、RAM46をワークエリアとして利用しつつ、ROM45に記憶された制御プログラム50を実行する。制御プログラム50は、再生制御機能を有する。再生制御機能は、加速度取得部42によってリングバッファ43に書き込まれた加速度絶対値sal,sarの各々の加速度波形から閾値thasを超える加速度の大きさをもったローカルピーク(「有効ピーク」という)を検出し、曲データのオーディオデータ列をサウンドシステム60へ時系列順に出力する処理(「順方向再生処理」という)とそのオーディオデータ列をサウンドシステム60へ逆時系列順に出力する処理(「逆方向再生処理」という)を、加速度波形からの有効ピークの検出内容に基づいて切り換えながら実行する機能である。
インターフェース33には、発音手段たるサウンドシステム60が接続される。サウンドシステム60は、曲再生制御装置20からオーディオデータを受け取ってアナログ信号に変換するD/A変換器61、そのアナログ信号を増幅するアンプ62、およびアンプ62による増幅を経たアナログ信号を音として放音するスピーカ63を有する。
【0014】
以上が、本実施形態における曲再生システムの構成である。この曲再生システムにおける曲再生制御装置20は、ディスクジョッキーが演奏操作子10L,10Rを振る動作を検出し、その動作の組み合わせに応じて、以下に説明する態様で曲データの再生を行う。図2(A),(B),(C),(D)は、演奏操作子10L,10Rを振る動作が行われた時刻Pとそれらの動作が行われたときの曲データの再生の態様とを示す図であり、これらの図における横軸は、時間に対応する。
図2(A)に示すように、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Lを振り始めた場合、曲再生制御装置20では、曲データの通常再生(順方向再生)を始める。以後、曲再生制御装置20では、演奏操作子10Lを所定時間T(例えば、3秒間とする)より短い間隔で振っている限りその通常再生を続ける。
図2(B)に示すように、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Rを振り始めた場合、曲再生制御装置20では、曲データの逆再生(逆方向再生)を始める。以後、再生制御装置20では、演奏操作子10Rを所定時間Tより短い間隔で振っている限りその逆再生を続ける。
図2(C)に示すように、演奏操作子10Lを振り始めた後に演奏操作子10Rを振り始めてそのまま演奏操作子10L,10Rの両方を振り続けた場合、曲再生制御装置20では、先に開始した通常再生を排他的に継続し、演奏操作子10Lの振りを先に止めて所定時間Tが経過した時からはそれまで継続していた通常再生を逆再生に切り換えて再生する。
図2(D)に示すように、演奏操作子10Rを振り始めた後に演奏操作子10Lを振り始めてそのまま演奏操作子10L,10Rの両方を振り続けた場合、曲再生制御装置20では、先に開始した逆再生を排他的に継続し、演奏操作子10Rの振りを先に止めて所定時間Tが経過した時からはそれまで継続していた逆再生を通常再生に切り換えて再生する。
【0015】
次に、本実施形態の動作を説明する。本実施形態において、CPU47は、図3に示す一連の処理を実行する処理タスクと、図4に示す一連の処理を実行する処理タスクとを立ち上げる。CPU47は、これらの両処理タスクを立ち上げるにあたり、曲データ記憶メモリ41に記憶された曲データをRAM46に読み出すとともに、RAM46の記憶領域の一部を読み出し先アドレス記憶領域およびフラグ記憶領域として確保する。読み出し先アドレス記憶領域は、RAM46における曲データの読み出し先アドレスを記憶するための領域として利用される。フラグ記憶領域は、以下に示す2種類のフラグを記憶するための領域として利用される。
a.通常再生フラグ
これは、曲データを通常再生している間は「オン」にし、通常再生していない間は「オフ」にするフラグである。
b.逆再生フラグ
これは、曲データを逆再生している間は「オン」にし、逆再生していない間は「オフ」にするフラグである。
CPU47は、RAM46における曲データの先頭のオーディオデータを記憶したアドレスを読み出し先アドレス記憶領域に記憶するとともに、フラグ記憶領域における2種類のフラグを初期値である「オフ」にした後、加速度絶対値sal,sarの対が加速度取得部42によってリングバッファ43へ書き込まれるたび、図3および図4に示す処理タスクの繰り返しを並行して行う。
【0016】
図3において、CPU47は、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現したかを判定する(S100)。より具体的には、CPU47は、リングバッファ43に閾値thsaを上回る加速度絶対値salが書き込まれると、閾値thsaを上回った加速度絶対値salとその前後の加速度絶対値salとを比較する。そして、閾値thsaを上回った加速度絶対値salがその前後の加速度絶対値salより大きい場合、有効ピークが出現したとみなし、これを波形に現れた特徴とする。
CPU47は、ステップS100において、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現したと判定した場合(S100:Yes)、逆再生フラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S110)。
【0017】
CPU47は、ステップS110において、逆再生フラグが「オフ」であると判定した場合(S110:Yes)、順方向再生処理を開始した後(S120)、通常再生フラグを「オン」にする(S130)。ステップS120における順方向再生処理において、CPU47は、読み出し先アドレス記憶領域に記憶されているアドレスをRAM46から探索し、そのアドレスよりも後のアドレスに記憶されている一連のオーディオデータをRAM46から1つずつ読み出し、インターフェース33を介してサウンドシステム60のD/A変換器61へ出力する。
CPU47は、通常再生フラグを「オン」にした後、ステップS100に戻り、加速度絶対値sal,sarの次の対がリングバッファ43に書き込まれると、以降の処理を繰り返す。
【0018】
CPU47は、ステップS100において、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現していないと判定した場合(S100:No)、その波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたかを判定する(S140)。CPU47は、ステップS140において、加速度絶対値salの波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたと判定した場合(S140:Yes)、順方向再生処理を停止し(S150)、通常再生フラグを「オフ」にし(S160)、順方向再生処理の停止の直前に出力したオーディオデータの読み出し先であったRAM46のアドレスを読み出し先アドレス記憶領域に上書した後(S170)、ステップS100に戻る。
CPU47は、ステップS140において、前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えていないと判定した場合(S140:No)、ステップS150からステップS170を実行することなく、ステップS100に戻る。
【0019】
図4において、CPU47は、加速度絶対値sarの波形に有効ピークが出現したかを判定する(S200)。より具体的には、CPU47は、リングバッファ43に閾値thsaを上回る加速度絶対値sarが書き込まれると、閾値thsaを上回った加速度絶対値sarとその前後の加速度絶対値sarとを比較する。そして、閾値thsaを上回った加速度絶対値sarがその前後の加速度絶対値sarより大きい場合、有効ピークが出現したとみなす。
CPU47は、ステップS200において、加速度絶対値sarの波形に有効ピークが出現したと判定した場合(S200:Yes)、通常再生フラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S210)。
【0020】
CPU47は、ステップS210において、通常再生フラグが「オフ」であると判定した場合(S210:Yes)、逆方向再生処理を開始した後(S220)、逆再生フラグを「オン」にする(S230)。ステップS220における逆方向再生処理において、CPU47は、読み出し先アドレス記憶領域に記憶されているアドレスをRAM46から探索し、そのアドレスよりも前のアドレスに記憶されている一連のオーディオデータをRAM46から1つずつ読み出し、インターフェース33を介してサウンドシステム60のD/A変換器61へ出力する。
CPU47は、逆再生フラグを「オン」にした後、ステップS200に戻り、加速度絶対値sal,sarの次の対がリングバッファ43に書き込まれると、以降の処理を繰り返す。
【0021】
CPU47は、ステップS200において、加速度絶対値sarの波形に有効ピークが出現していないと判定した場合(S200:No)、その波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたかを判定する(S240)。CPU47は、ステップS240において、加速度絶対値sarの波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたと判定した場合(S240:Yes)、逆方向再生処理を停止し(S250)、逆再生フラグを「オフ」にし(S260)、逆方向再生処理の停止の直前に出力したオーディオデータの読み出し先であったRAM46のアドレスを読み出し先アドレス記憶領域に上書した後(S270)、ステップS200に戻る。
CPU47は、ステップS240において、前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えていないと判定した場合(S240:No)、ステップS250からステップS270を実行することなく、ステップS200に戻る。
【0022】
以上説明した本実施形態では、ディスクジョッキーが左手に把持した演奏操作子10Lを振り続けている間は、曲データが通常再生され、右手に把持した演奏操作子10Rを振り続けている間は、曲データが逆再生される。よって、ディスクジョッキーは、演奏操作子10Lを振る動作と演奏操作子10Rを振る動作を交互に繰り返すことにより、音楽パフォーマンスを行う会場内の雰囲気を盛り上げるような刺激的な音を表現することができる。また、ディスクジョッキーが演奏操作子10L,10Rを振る動きは、ターンテーブルを用いた音楽パフォーマンスには見られない斬新なものであるため、この動き自体が見る者を惹きつけ、会場内の雰囲気をより効果的に盛り上げることができる。
【0023】
(第2実施形態)
以下、図面を参照し、この発明の第2実施形態を説明する。
図5は、本発明の第2実施形態である曲再生制御装置20Aを含む曲再生システムの構成を示すブロック図である。なお、この図5において、上記第1実施形態の曲再生制御装置20(図1)の各部と共通する部分には、同じ符号が付されている。
図5において、サウンドシステム60Aは、曲再生制御装置20Aから左右2チャネルのオーディオデータをそれぞれ受け取ってアナログ信号に変換するD/A変換器61L,61R、そのアナログ信号を増幅するアンプ62L,62R、およびアンプ62L,62Rによる増幅を経たアナログ信号を音として放音するスピーカ63L,63Rを有する。
【0024】
曲再生制御装置20Aの加速度取得部42は、無線信号受信部32から加速度成分al,al,alおよび加速度成分ar,ar,arを示すデータを取得すると、加速度成分al,al,alを前掲の式(1)に代入することによって求めた加速度絶対値sal、加速度成分ar,ar,arを前掲の式(2)に代入することによって求めた加速度絶対値sar、および加速度成分ar,ar,arのセットをリングバッファ43の書き込み先アドレスに書き込む。
【0025】
また、曲再生制御装置20Aの再生制御部44は、ROM45、RAM46、CPU47、ピッチシフタ51、乗算器52L,52R、および加算器55を有する。ピッチシフタ51は、曲データを通常再生または逆再生させた再生音に、そのピッチを高周波側または低周波側にシフトさせる音響効果(「ピッチシフト効果」という)を付与する役割を果たす回路である。このピッチシフタ51は、CPU47から出力されるオーディオデータにそのピッチを高周波側または低周波側へシフトする信号処理を施し、信号処理を施したオーディオデータを出力する。ピッチシフタ51がオーディオデータのピッチを高周波側と低周波側のどちらへどの程度シフトするかは、CPU47から出力されるピッチシフトパラメータに応じて決まる。詳しくは、後述する。
【0026】
乗算器52L,52Rは、曲データを通常再生または逆再生させた再生音に、その左右の音量バランスを左または右に偏らせる音響効果(「パニング効果」という)を付与する役割を果たす回路である。乗算器52L,52Rは、ピッチシフタ51から出力されるオーディオデータから左右2チャネルのオーディオデータを発生し、これら左右2チャネルのオーディオデータに個別の係数を乗算する信号処理を施し、信号処理を施したオーディオデータを出力する。乗算器52L,52Rがオーディオデータに乗算する係数は、CPU47から出力されるパニング係数パラメータに応じて決まる。詳しくは、後述する。
【0027】
以上が、本実施形態における曲再生システムの構成である。この曲再生システムにおける曲再生制御装置20Aは、第1実施形態における曲再生制御装置20と同様に、ディスクジョッキーが演奏操作子10L,10Rを振る動作を検出する。そして、演奏操作子10Lを所定時間T(たとえば、3秒とする)より短い間隔で任意の方向へ振る動作を基本動作とし、この基本動作と演奏操作子10Rを振る動作の組み合わせに応じて、以下に示す態様で曲データの再生を行う。
図6(A),(B),(C),(D)は、演奏操作子10L,10Rを振る動作が行われた時刻Pとそれらの動作が行われたときの曲データの再生の態様とを示す図であり、これらの図における横軸は、時間に対応する。
【0028】
図6(A)に示すように、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Lの基本動作を始め、その基本動作を行いつつ演奏操作子10Rを加速度センサ11Rの検出軸xの正の方向に振った場合、曲再生制御装置20Aでは、曲データの通常再生を始める。以後、曲再生制御装置20Aでは、所定時間Tより短い間隔で演奏操作子10L,10Rのうち少なくとも一方を任意の方向へ振っている限り、その通常再生を続ける。
図6(B)に示すように、演奏操作子10L,10Rを両方とも振っていない状態から演奏操作子10Lの基本動作を始め、その基本動作を行いつつ演奏操作子10Rを加速度センサ11Rの検出軸xの負の方向に振った場合、曲再生制御装置20Aでは、曲データの逆再生を始める。以後、曲再生制御装置20Aでは、所定時間Tより短い間隔で演奏操作子10L,10Rのうち少なくとも一方を任意の方向へ振っている限り、その逆再生を続ける。
図6(C)に示すように、曲データの通常再生または逆再生を開始した後、演奏操作子10Lの基本動作を行いつつ演奏操作子10Rを加速度センサ11Rの検出軸yの正または負の方向に振った場合、曲再生制御装置20Aでは、その時から演奏操作子10Lの基本動作が止まるまでの間の曲データの再生音にピッチシフト効果を付与する。
図6(D)に示すように、曲データの通常再生または逆再生を開始した後、演奏操作子10Lの基本動作を行いつつ演奏操作子10Rを加速度センサ11Rの検出軸zの正または負の方向に振った場合、曲再生制御装置20Aでは、その時から演奏操作子10Lの基本動作が止まるまでの間の曲データの再生音にパニング効果を付与する。
【0029】
次に、本実施形態の動作を説明する。本実施形態において、CPU47は、図7に示す一連の処理を実行する処理タスクと、図8に示す一連の処理を実行する処理タスクを立ち上げる。CPU47は、これらの両処理タスクを立ち上げるにあたり、曲データ記憶メモリ41に記憶された曲データをRAM46に読み出すとともに、RAM46の記憶領域の一部を読み出し先アドレス記憶領域およびフラグ記憶領域として確保する。読み出し先アドレス記憶領域の用途は第1実施形態における同記憶領域の用途と同様である。また、本実施形態において、フラグ記憶領域には、以下に示す4種類のフラグを記憶する。
a.基本動作フラグ
これは、基本動作が行われている間は「オン」にし、基本動作が行われていない間は「オフ」にするフラグである。
b.再生フラグ
これは、曲データを通常再生または逆再生している間は「オン」にし、通常再生と逆再生のいずれも行っていない間は「オフ」にするフラグである。
c.ピッチシフトフラグ
これは、曲データを通常再生または逆再生した再生音にピッチシフト効果を付与している間は「オン」にし、ピッチシフト効果を付与していない間は「オフ」にするフラグである。
d.パニングフラグ
これは、曲データを通常再生または逆再生した再生音にパニング効果を付与している間は「オン」にし、パニング効果を付与していない間は「オフ」にするフラグである。
【0030】
CPU47は、RAM46における曲データの先頭のオーディオデータを記憶したアドレスを読み出し先アドレス記憶領域に記憶するとともに、フラグ記憶領域における4種類のフラグを初期値である「オフ」にした後、加速度絶対値sal,sar、および加速度成分ar,ar,arのセットが加速度取得部42によってリングバッファ43に書き込まれるたび、図7および図8に示す処理タスクの繰り返しを並行して行う。
【0031】
図7において、CPU47は、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現したかを判定する(S300)。
CPU47は、ステップS300において、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現したと判定した場合(S300:Yes)、基本動作フラグを「オン」にした後(S310)、ステップS300に戻り、加速度絶対値sal,sar、および加速度成分ar,ar,arの次のセットがリングバッファ43に書き込まれると、以降の処理を行う。ディスクジョッキーが、演奏操作子10Lを任意の方向に振る動作である基本動作を行っている間は、図7の処理タスクにおけるステップS300からステップS310が繰り返され、基本動作フラグは「オン」であり続ける。
【0032】
図8において、CPU47は、基本動作フラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S400)。CPU47は、ステップS400において、基本動作フラグが「オン」であると判定した場合(S400:Yes)、加速度絶対値sarの波形に有効ピークが出現したかを判定する(S410)。
ディスクジョッキーが、基本動作を続けながら、演奏操作子10Rを検出軸x,y,zの正または負のいずれかの方向に振った場合、このステップS410の判定結果は「Yes」になり、基本動作を続けているものの、演奏操作子10Rを検出軸x,y,zの正負のいずれの方向にも振っていない場合、このステップS410の判定結果は「No」になる。
CPU47は、ステップS410において、加速度絶対値sarの波形に有効ピークが出現したと判定した場合(S410:Yes)、再生フラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S420)。
【0033】
CPU47は、ステップS420において、再生フラグが「オフ」であると判定した場合(S420:No)、加速度絶対値sarの波形に出現した有効ピークにおける加速度成分arをリングバッファ43から読み出し、その加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きいかを判定する(S430)。
CPU47は、ステップS430において、有効ピークにおける加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きいと判定した場合(S430:Yes)、順方向再生処理および逆方向再生処理のうちその加速度成分arの符号の向きに応じた一方を開始する(S440)。より具体的には、CPU47は、加速度絶対値sarに出現した有効ピークにおける加速度成分arの符号が正である場合には順方向再生処理を開始し、その符号が負である場合は逆方向再生処理を開始する。
【0034】
CPU47は、順方向再生処理または逆方向再生処理を開始した後、再生フラグを「オン」にし(S450)、ステップS400に戻る。
CPU47は、ステップS430において、有効ピークにおける加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きくないと判定した場合(S430:No)、ステップS440およびステップS450を実行することなく、ステップS400に戻る。
【0035】
また、CPU47は、ステップS420において、再生フラグが「オン」であると判定した場合(S420:Yes)、加速度絶対値sarの波形に出現した有効ピークにおける加速度成分arをリングバッファ43から読み出し、その加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きいかを判定する(S460)。
CPU47は、ステップS460において、加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きいと判定した場合(S460:Yes)、ピッチシフト効果付与処理を開始する(S470)。
より詳細に説明すると、CPU47は、有効ピークにおける加速度成分arの符号が正である場合は、その加速度成分arの絶対値をピッチの高周波側へのシフト量+sに換算し、換算したシフト量+sを示すピッチシフトパラメータを出力する。また、CPU47は、有効ピークにおける加速度成分arの符号が負である場合は、その加速度成分arの絶対値をピッチの低周波側へのシフト量−sに換算し、換算したシフト量−sを示すピッチシフトパラメータを出力する。CPU47から出力されたピッチシフトパラメータは、ピッチシフタ51へ入力される。
【0036】
ピッチシフタ51は、CPU47から高周波側へのシフト量+sを示すピッチシフトパラメータが入力されると、以後にCPU47から出力されるオーディオデータに、そのピッチをピッチシフトパラメータが示す分だけ高周波側へシフトさせる信号処理を施し、信号処理を施したオーディオデータを出力する。また、ピッチシフタ51は、CPU47から低周波側へのシフト量−sを示すピッチシフトパラメータが入力されると、以後にCPU47から出力されるオーディオデータに、そのピッチをピッチシフトパラメータが示す分だけ低周波側へシフトさせる信号処理を施し、信号処理を施したオーディオデータを出力する。ピッチシフタ51の出力信号は、乗算器52L,52Rからインターフェース33を介してサウンドシステム60のD/A変換器61L,61Rへ入力される。よって、加速度成分arの符号が正であった場合におけるピッチシフト効果付与処理が行われている間は、曲データの本来の再生音よりもピッチが高周波側にシフトされた再生音がサウンドシステム60のスピーカ63L,63Rから放音され、加速度成分arの符号が負であった場合におけるピッチシフト効果付与処理が行われている間は、曲データの本来の再生音よりもピッチが低周波側にシフトされた再生音がサウンドシステム60のスピーカ63L,63Rから放音される。
【0037】
CPU47は、ピッチシフト効果付与処理を開始した後、ピッチシフトフラグを「オン」にし(S480)、次のステップへ進む。
また、CPU47は、ステップS460において、加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きくないと判定した場合(S460:No)、ステップS470およびステップS480を実行することなく、次のステップへ進む。
【0038】
次に、CPU47は、加速度絶対値sarの波形に出現した有効ピークにおける加速度成分arをリングバッファ43から読み出し、その加速度成分arが閾値tharよりも大きいかを判定する(S490)。
CPU47は、ステップS490において、有効ピークにおける加速度成分arが閾値tharよりも大きいと判定した場合(S490:Yes)、パニング効果付与処理を開始する(S500)。より詳細に説明すると、CPU47は、有効ピークにおける加速度成分arの符号が正である場合は、その最新の加速度成分arの絶対値をその大きさに比例した係数c(0≦c≦1.0)に換算し、換算した係数cを示すパニング係数パラメータを出力する。また、CPU47は、最新の加速度成分arの符号が負である場合は、その最新の加速度成分arの絶対値をその大きさに反比例した係数c(0≦c≦1.0)に換算し、換算した係数cを示すパニング係数パラメータを出力する。CPU47から出力されたパニング係数パラメータは、乗算器52Lと加算器55へ入力される。
【0039】
加算器55は、このパニング係数パラメータを1から減算した数値を乗算器52Rへ出力する。乗算器52L,52Rは、パニング係数パラメータが入力されると、以後にピッチシフタ51から入力されるオーディオデータにそのパニング係数パラメータが示す係数cを乗算する信号処理を施し、信号処理を施したオーディオ信号を出力する。乗算器52Lの出力信号はサウンドシステム60のD/A変換器61Lに入力され、乗算器52Rの出力信号はサウンドシステム60のD/A変換器61Rに入力される。よって、加速度成分arの符号が正であった場合におけるパニング効果付与処理では、左右2チャネルの音量バランスが左に偏った再生音がスピーカ63L,63Rから放音され、加速度成分arの符号が負であった場合におけるパニング効果付与処理では、左右2チャネルの音量バランスが右に偏った再生音がスピーカ63L,63Rから放音される。
【0040】
CPU47は、パニング効果付与処理を開始した後、パニングフラグを「オン」にし(S510)、ステップS400に戻る。
また、CPU47は、ステップS490において、加速度成分arの絶対値が閾値tharよりも大きくないと判定した場合(S490:No)、ステップS500およびステップS510を実行することなく、ステップS400に戻る。
【0041】
図7において、CPU47は、加速度絶対値salの波形に有効ピークが出現していないと判定した場合(S300:No)、加速度絶対値salの波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたかを判定する(S320)。CPU47は、ステップS320において、前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えていないと判定した場合(S320:No)、ステップS300に戻る。
CPU47は、ステップS320において、加速度絶対値salの波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えていると判定した場合(S320:Yes)、基本動作フラグを「オフ」にする(S330)。
【0042】
次に、CPU47は、ピッチシフトフラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S340)。
CPU47は、ステップS340において、ピッチシフトフラグが「オン」であると判定した場合(S340:Yes)、ピッチシフト効果付与処理を停止した後(S350)、ピッチシフトフラグを「オフ」にする(S360)。
CPU47は、ステップS340において、ピッチシフトフラグが「オフ」であると判定した場合(S340:No)、ステップS350およびステップS360を実行することなく、次のステップへ進む。
【0043】
次に、CPU47は、パニングフラグが「オン」であるかそれとも「オフ」であるかを判定する(S370)。
CPU47は、ステップS370において、パニングフラグが「オン」であると判定した場合(S370:Yes)、パニング効果付与処理を停止した後(S380)、パニングフラグを「オフ」にする(S390)。
CPU47は、パニングフラグを「オフ」にした後、ステップS300に戻る。
CPU47は、ステップS370において、パニングフラグが「オフ」であると判定した場合(S370:No)、ステップS380およびステップS390を実行することなく、ステップS300に戻る。
【0044】
図8において、CPU47は、基本動作フラグが「オフ」であると判定した場合(S400:No)、加速度絶対値sarの波形に前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えたかを判定する(S520)。ディスクジョッキーが、演奏操作子10Lを所定時間T以上振っておらず、演奏操作子10Rも所定時間T以上振っていない場合、ステップS400からステップS520に進み、ステップS520の判定結果は「Yes」になる。また、ディスクジョッキーが、演奏操作子10Lを所定時間T以上振っていないものの、演奏操作子10Rを振っている場合、ステップS400からステップS520に進み、ステップS520の判定結果は「No」になる。
CPU47は、ステップS520において、前回の有効ピークが出現した時からの経過時間が所定時間Tを超えていると判定した場合(S520:Yes)、ステップS440において開始した順方向再生処理または逆方向再生処理を停止し(S530)、再生フラグを「オフ」にし(S540)、順方向再生処理または逆方向再生処理の停止の直前に出力したオーディオデータの読み出し先であったRAM46のアドレスを読み出し先アドレス記憶領域に上書した後(S550)、ステップS400に戻る。
【0045】
以上説明した本実施形態では、演奏操作子10Lを任意の方向に振り続ける動作を基本動作とし、ディスクジョッキーが、基本動作を行いながら演奏操作子10Rを検出軸xの正の方向に振ったときに曲データが通常再生され、検出軸xの負の方向に振ったときに曲データが逆再生される。また、ディスクジョッキーが、基本動作を行いながら演奏操作子10Rを検出軸yの正または負の方向に振ったときに、曲データの再生音にピッチシフト効果が与えられ、検出軸zの正または負の方向に振ったときに、曲データの再生音にパニング効果が与えられる。よって、第1実施形態の曲再生制御装置20よりも豊かな音楽的表情の再生音を表現することができる。
【0046】
(他の実施形態)
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態があり得る。例えば、以下の通りである。
(1)上記第1および第2実施形態では、加速度絶対値sal,sarの波形における閾値thasを超える加速度の大きさをもったローカルピークを波形に現れる特徴である有効ピークとし、曲再生制御装置20,20AのCPU47は、加速度絶対値sal,sarの波形に有効ピークが現れたことをトリガーとして、通常再生と逆再生の間の切り換えやその再生音への音響効果の付与を行った。しかし、閾値thasを超える加速度の大きさをもったローカルピークとは異なる所定の特徴が加速度絶対値sal,sarの波形に現れたことをトリガーとして、通常再生と逆再生の間の切り換えやその再生音への音響効果の付与を行ってもよい。たとえば、ディスクジョッキーが演奏操作子10L,10Rを把持した手をある方向に振ったとき、演奏操作子10L,10Rには、その方向の力が加わる直前に逆向きの反動力が加わる。このため、演奏操作子10L,10Rの挙動がそれを把持した人の手の動きによるものであるならば、厳密には、加速度絶対値sal,sarの波形にある僅かな時間差Δtをもった2つのローカルピークが連続して発生するはずである。よって、CPU47は、加速度絶対値sal,sarの波形に閾値thback(thback<thas)を超えるローカルピークが発生し、そのローカルピークからΔtだけ遅れて閾値thasを超えるローカルピークが発生している場合に、これを波形の特徴として検出し、通常再生と逆再生の間の切り換えやその再生音への音響効果の付与を行うようにしてもよい。この態様によれば、ディスクジョッキーの手の動きによる演奏操作子10L,10Rの挙動とそうでない挙動の違いを認識し、ディスクジョッキーの意図によりマッチした音楽パフォーマンスを実現することができる。
【0047】
(2)上記第2実施形態において、曲再生制御装置20Aは、有効ピークにおける加速度成分arが閾値tharよりも大きくなったときに、曲データの再生音にピッチシフト効果を付与し、有効ピークにおける加速度成分arが閾値tharよりも大きくなったときに、曲データの再生音にパニング効果を付与した。しかし、リバーブやディストーションなどの他の種類の音響効果を付与してもよい。
【0048】
(3)上記第1および第2実施形態において、演奏操作子の数を1つにしてもよいし、3つ以上にしてもよい。演奏操作子を1つにする場合、曲再生制御装置20,20Aは、その演奏操作子に加わる加速度ベクトルを3つの検出軸x,y,z方向に分解して検出した加速度成分a,a,aを取得し、それらの3種類の加速度成分a,a,aのうちの1つ(たとえば、加速度成分a)の波形に閾値を超える大きさの正のローカルピークが出現したときに曲データを通常再生し、閾値を超える大きさの負のローカルピークが出現したときに曲データを逆再生するとよい。さらに、残りの1つまたは2つの加速度成分の波形に閾値thを超える大きさの正または負のローカルピークが出現したときにその曲データの再生音に各種音響効果を付与するとよい。また、演奏操作子を1つにする場合、曲再生制御装置20,20Aは、その演奏操作子に加わる加速度ベクトルを合成した加速度絶対値を取得し、その加速度絶対値の波形に閾値を超える大きさの正または負のローカルピークが出現するたびに、通常再生から逆再生、または、逆再生から通常再生へと曲データの再生の方向を制御するようにしてもよい。
【0049】
(4)上記第1および第2実施形態において、磁気センサ、ジャイロセンサ、圧力センサ、傾斜センサ、速度センサ、振幅センサなどの加速度センサ11L,11R以外の種類のセンサを演奏操作子10L,10Rに内蔵させ、そのセンサが検出した演奏操作子の挙動を示す物理量の波形に有効ピークが出現したことをトリガーとして、通常再生と逆再生の間の切り換えやその再生音への音響効果の付与を行ってもよい。
【0050】
(5)上記第1および第2実施形態において、曲データ記憶メモリ41に記憶された曲データは、音楽パフォーマンスにおいて再生する曲を所定のサンプリングレートでサンプリングしたデジタル信号を時系列順に並べたデータであった。しかし、音楽パフォーマンスにおいて再生する曲の演奏内容を示すMIDI(Musical Instrument Digital Interface)イベントを時系列順に並べたMIDIデータを曲データとして再生させてもよい。
【0051】
(6)第1および第2実施形態において、無線信号送信部12L,12Rは演奏操作子10L,10Rに内蔵されていた。しかし、無線信号送信部12L,12Rを演奏操作子10L,10Rとは別の筐体に内蔵させ、その無線信号送信部12L,12Rを内蔵させた筐体をディスクジョッキーの身体に装着させるようにしてもよい。
【0052】
(7)上記第1および第2実施形態における演奏制御装置20,20Aの加速度取得部42、リングバッファ43、および再生制御部44と同様の機能を実現させるプログラムを、コンピュータにインストールさせ、そのコンピュータを演奏制御装置20として動作させてもよい。この場合において、たとえば、加速度センサ11L,11Rと音源を内蔵する携帯電話機に制御プログラム50をインストールさせ、携帯電話機そのものの筺体を演奏操作子として機能させるようにするとよい。
【0053】
(8)第2実施形態では、演奏操作子10Lを所定時間T(たとえば、3秒とする)より短い間隔で任意の方向へ振る動作を基本動作とし、この基本動作と演奏操作子10Rを振る動作の組み合わせに応じて、順方向再生処理、逆方向再生処理、ピッチシフト効果付与処理、およびパニング効果付与処理の実行の有無を決定した。しかし、演奏操作子10L,10Rのうち一方(たとえば、演奏操作子10Lとする)の操作に応じて順方向再生処理と逆方向再生処理の実行の有無を決定し、他方の操作に応じてピッチシフト効果付与処理とパニング効果付与処理の実行の有無を決定するようにしてもよい。この態様では、演奏制御装置20AのCPU47は、たとえば、以下のような処理を行う。CPU47は、静止状態になっていた演奏操作子10Lがその加速度センサ11Lの検出軸xの正の方向に振られると順方向再生処理を開始し、検出軸xの負の方向に振られると逆向再生処理を開始する。そして、CPU47は、順方向再生処理または逆方向再生処理を開始した後、演奏操作子10Lが所定時間Tより短い間隔で振られている限りその再生処理を続ける。さらに、CPU47は、順方向再生処理または逆方向再生処理を行っている間に演奏操作子10Rがその加速度センサ11Rの検出軸yの正または負の方向に振られるとピッチシフト効果付与処理を行う。また、CPU47は、順方向再生処理または逆方向再生処理を行っている間に演奏操作子10Rがその加速度センサ11Rの検出軸zの正または負の方向に振られるとパニング効果付与処理を行う。
【0054】
(9)第2実施形態では、演奏操作子10Rがその加速度センサ11Rの検出軸yの正または負の方向に振られたときの振りの大きさ(具体的には、加速度成分arの絶対値)に応じてピッチシフト効果付与処理におけるピッチのシフト量を決定した。しかし、演奏操作子10Lの振りの大きに応じてそのシフト量を決定してもよい。この態様では、演奏制御装置20AのCPU47は、たとえば、以下のような処理を行う。CPU47は、静止状態になっていた演奏操作子10Lがその加速度センサ11Lの検出軸xの正(負)の方向に振られると、そのときの加速度成分alの絶対値|al|をRAM46に記憶するとともに順方向再生処理(逆方向再生処理)を開始する。その後、CPU47は、演奏操作子10Rがその加速度センサ11Rの検出軸yの正(負)の方向に振られると、RAM46に記憶されている加速度成分alの絶対値|al|をピッチの高周波側(低周波側)へのシフト量+s(−s)に換算し、換算したシフト量+s(−s)を示すピッチシフトパラメータをピッチシフタ51に出力する。
【符号の説明】
【0055】
10…演奏操作子、11…加速度センサ、12…無線信号送信部、20…曲再生制御装置、30…制御部、31…操作表示部、32…無線信号受信部、33…インターフェース、41…曲データ記憶メモリ、42…加速度取得部、43…リングバッファ、44…再生制御部、45…ROM、46…RAM、47…CPU、50…制御プログラム、51…ピッチシフタ、52…乗算器、53…加算器、60…サウンドシステム、61…D/A変換器、62…アンプ、63…スピーカ。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲データを記憶する記憶手段と、
操作子の挙動を示す物理量を取得する取得手段と、
前記記憶手段に記憶された曲データを再生する手段であって、前記取得手段が取得した物理量の波形に現れる特徴に基づき、前記曲データの再生の方向を制御する再生制御手段と
を具備することを特徴とする曲再生制御装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記操作子の挙動を示す複数の種類の物理量を取得し、
前記再生制御手段は、前記取得手段が取得した複数の種類の物理量のうち第1の種類の物理量の波形に所定の特徴が現れたとき、前記曲データを順方向に再生し、前記取得手段が取得した複数の種類の物理量のうち第2の種類の物理量の波形に所定の特徴が現れたとき、前記曲データを逆方向に再生することを特徴とする請求項1に記載の曲再生制御装置。
【請求項3】
前記取得手段は、前記複数の種類の物理量のうち第3の種類の物理量の波形に所定の特徴が現れたとき、前記曲データの再生音に所定の音響効果を付与することを特徴とする請求項2に記載の曲再生制御装置。
【請求項4】
前記取得手段は、複数の操作子の各々に加わる加速度を前記複数の種類の物理量として取得することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の曲再生制御装置。
【請求項5】
前記取得手段は、複数の操作子の各々に加わる加速度を互いに異なる複数の軸方向に分解した加速度成分を前記複数の種類の物理量として取得することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の曲再生制御装置。
【請求項6】
前記操作子に内蔵され、当該操作子に加わる加速度を検出するセンサと、
前記センサが検出した加速度を送信する送信手段と、
請求項4または5に記載の曲再生制御装置と、
前記曲再生制御装置から曲データの再生音を示す信号を受け取り、その信号が示す音を発音する発音手段と
を有する曲再生システム。
【請求項7】
コンピュータに、
記憶手段に記憶された曲データを再生する手段であって、操作子の挙動を示す物理量の波形に現れる特徴に基づき、前記曲データの再生の方向を制御する再生制御手段
を実現させるプログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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