説明

曲面型スクリーン装置及び曲面スクリーンシステム

【課題】前方の曲面スクリーンに、あたかも実際に走っているような印象を与えることで違和感ない映像を提供できるようにする。
【解決手段】曲面型スクリーン装置1は、曲面スクリーン2と、湾曲ミラー3と、プロジェクター4等を立体枠ユニット5で支持した構成である。
立体枠ユニット5に収められている曲面スクリーン2は楕円状であり、かつ湾曲ミラー3の面に映像を受ける面が略対向するように傾斜されているため、曲面スクリーン2の全域に渡って映像を投射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランニングマシーン等のトレーニング装置用いて運動する利用者に対して、前方の曲面スクリーンに、あたかも実際に走っているような印象を与える映像を提供できる曲面型スクリーン装置及び曲面スクリーンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
運動不足を解消するため、或いはリハビリテーション等の目的のためのトレーニングマシーンがある。
【0003】
一般に、トレーニングマシーンは、ベルトをローラで動かす走行装置と、走行装置の前にある操作盤等を備え、この操作盤を操作して所望の速度で走行させる。
【0004】
また、近年は操作盤の表示機に散歩コース、マラソンコース等の画像を表示するものがある。
【0005】
例えば、特開2004−121592号公報(特許文献1)には、走行者の速度に応じた速度でビデオ画像を再生させることが開示されている。
【0006】
また、特開2006−33048号公報(特許文献2)には、3台のスクリーンを使ってコの字状に配置し、各スクリーンの正面にプロジェクターを配置し、正面のスクリーン、に道路前方の画像及び右のスクリーンに右側の画像、左に左側の画像を表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−121592号公報
【特許文献2】特開2006−33048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に散歩、ランニングを行う際には人間の目線視野は左右・後方よりも前方を中心にとらえている。
【0009】
しかしながら、特許文献1のように走行装置の前に表示器を備えた場合は、画像を再生したとしても、その画像を見るためには走行しながら目線を下げなければならない。
【0010】
また、例え表示器を大型にして走行者の前面に1台設けたとしても、視野が90度程度の画像しか得られず、現実感に薄れる。また、表示器を大型にすると装置が高額になる。
【0011】
さらに、特許文献2は、前方、左右にスクリーンを設けてコの字状を形成するものであるが、スクリーン及びプロジェクターを3台最低必要とするので装置がコスト高になる。また、前面、左右毎にスクリーンを個別に設けるので、映像の連続感が欠けてしまう。
【0012】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、前方の曲面スクリーンに、視野角は90度以上で連続性のある映像を投影ずることで、あたかも実際に走っているような印象を与える提供するための曲面型スクリーン装置及び曲面スクリーンシステムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の曲面型スクリーン装置は、
前面部にトレーニング装置が入る程度に開口され、高さが前記トレーニング装置の利用者の頭部より上の所定高さにされ、所定の奥行長を有した立体枠ユニットと、
前記利用者の頭部上となる前記立体枠ユニットの天井枠の中央下の位置に反射面を前記立体枠ユニットの奥面に向けて設けられ、長方形状にされて両端方向及び下端方向に従って湾曲した湾曲ミラーと、
前記立体枠ユニットの天井枠の中央の下で奥面側に設けられて、映像が前記湾曲ミラーに結像する所定距離にされたプロジェクターと、
前記湾曲ミラーからの映像を受けるように、所定角度傾斜され、かつ前記湾曲ミラーから所定距離離されて前記立体枠ユニットの内部に取り付けられた曲面スクリーンと
を備えたことを要旨とする。
【0014】
また、本発明の曲面スクリーンシステムは、曲面型スクリーン装置と映像生成装置とを備えた曲面スクリーンシステムである。
【0015】
前記曲面スクリーン装置は、
前面部にトレーニング装置が入る程度に開口され、高さが利用者の頭部より上の所定高さにされ、所定の奥行長を有した立体枠ユニットと、
前記利用者の頭部上となる前記立体枠ユニットの天井枠の中央下の位置に反射面を前記立体枠ユニットの奥面に向けて設けられ、長方形状にされて両端方向及び下端方向に従って湾曲した湾曲ミラーと、
前記立体枠ユニットの天井枠の中央の下で奥面側に設けられて、映像が前記湾曲ミラーに結像する所定距離にされたプロジェクターと、
前記湾曲ミラーからの映像を受けるように、所定角度傾斜され、かつ前記湾曲ミラーから所定距離離されて前記立体枠ユニットの内部に取り付けられた曲面スクリーンと
を備え、
前記映像作成装置は、
所定速度で走行しながら前方を撮影したときの原画像から前記湾曲ミラーに対応した長方形状に切り出され、この切り出し画像に対して偏歪処理を施した変換画像を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段から変換画像を、入力された指定の速度で再生し、この再生画像を前記プロジェクターに送出して前記湾曲ミラーに投影させる手段と
を備えたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の曲面型スクリーン装置によれば、立体枠ユニット5に収められている曲面スクリーン2は楕円状又は円型としているので、曲面スクリーン2の全域に渡って映像を投射できる。
【0017】
つまり、人間の走行時の視野特性を再現するための曲面スクリーンであって、利用者にとっては違和感がない印象を与えることができるという効果が得られている。
【0018】
また、曲面スクリーン2は楕円形にしたことで、例えば走行向けのトレーニング装置(トレッドミル、エアロバイク等)に適用した場合は、それらの装置を覆うように配置でき、スペースを取らず、多数並列に配置することができる。
【0019】
さらに、本発明の曲面スクリーンシステムは、湾曲ミラー3の面形状に合わせた長方形状の画像を生成して、この画像の中心線から次第に画素を引き伸ばして、これを再生してプロジェクター4に送出する。プロジェクター4からの映像は湾曲ミラー3に投射させられて曲面スクリーン2の全域に投射される。
【0020】
また、曲面スクリーン2に映し出される映像は、視野の90°以上の左右部分の映像が中心部より大きく、速く、移動するために、いかにも実際に走った感じを得ることができるので非常に臨場感が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態の曲面型スクリーン装置1の斜視図である。
【図2】湾曲ミラーの調整を説明する説明図である。
【図3】プロジェクター4の調整を説明する説明図である。
【図4】図1の曲面型スクリーン装置1の上面図である。
【図5】図1の曲面型スクリーン装置1の側面図である。
【図6】曲面スクリーン2の構造を説明する説明図である。
【図7】本実施の形態の湾曲型スクリーン装置1をトレッドミル20に適用した場合の説明図である。
【図8】湾曲型スクリーン2に映し出された映像を説明する説明図である。
【図9】湾曲ミラーに投射される映像範囲を説明する説明図である。
【図10】実施の形態2の曲面型スクリーンシステムの概略構成図である。
【図11】原画像からの切り出し画像を説明する説明図である。
【図12】切り出し画像に対しての黒ベタ処理をかけたときの説明図である。
【図13】画像変換部の動作を説明するフローチャートである。
【図14】中心線に近くなるに従って画素を横方向に引き延ばす処理を説明する説明図である。
【図15】レンズディストレーション処理による得られる画像を説明する説明図である。
【図16】その他の実施の形態の画像を説明する説明図である。
【図17】ステップS11及びステップS12の補足説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施の形態は、ランニングマシーンやエアロバイクなどを用いた運動時に、あたかも走っているような臨場感のある映像を曲面型スクリーン装置及び曲面スクリーンシステムを提供する。
【0023】
<実施の形態1:トレーニング装置>
図1は本実施の形態1の曲面型スクリーン装置1の斜視図である。曲面型スクリーン装置1は、曲面スクリーン2と、湾曲ミラー3と、プロジェクター4等を立体枠ユニット5で支持した構成である。
【0024】
前述の立体枠ユニット5は、底部枠6と、天井枠7と、左面枠8と右面枠9と奥面枠10とを接続してなる。
【0025】
底部枠6は、フレーム6dとフレーム6bとをフレーム6cと6aとで挟んで四角形状の底部枠6を構成する。但し、フレーム6cと6aとは、前方に長い。つまり、前方に倒れ難くしている。
【0026】
左面枠8と右面枠9と奥面枠10は例えば140〜260cm程度の高さを調整可能である。
【0027】
左面枠8は、高さ調整可能な縦フレーム8a(8a1、8a2:スライド構造)と、高さ調整可能な縦フレーム8b(8b1、8b2:スライド構造)等で構成されている。
【0028】
右面枠9は、高さ調整可能な縦フレーム9a(9a1、9a2:スライド構造)と、高さ調整可能な縦フレーム9b(9b1、9b2:スライド構造)等で構成されている。
【0029】
奥面枠10は、高さ調整可能な縦フレーム10a(10a1、10a2:スライド構造)と、縦フレーム10aを補強支持するための補強フレーム10c、10bによって補強されている。前述の縦フレーム10aは、底部枠6の最も奥にあるフレーム6dの中央に垂直に立てられている。
【0030】
天井枠7は、底部枠6のフレーム6dと同じ長さの上フレーム7a、7f、7dとを上フレーム7b、7cで接続している。また、上フレーム7aの中央と上フレーム7dの中央とには、上フレーム7eが接続されている。この上フレーム7eは上フレーム7e1と7e2とからなり、上フレーム7e1の一方は、上フレーム7dの中央に接続され、他方が上フレーム7fの中央に接続されている。さらに、上フレーム7e2は、一方が上フレーム7fの中央に接続され、他方が上フレーム7aの中央に接続されている。
【0031】
すなわち、上フレーム7fと上フレーム7eとで十字架状のフレームを形成している。
【0032】
この十字架上のフレームの下にはプロジェクター4が接続され、上フレーム7dの中央には湾曲ミラー3が接続されている。この湾曲ミラー3は、図2に示す調整具3aが取り付けられ、上下移動、左右角、傾斜角度を調整可能である。
【0033】
また、上フレーム7c及び上フレーム7bは、底部枠のフレーム6c、6aより長い寸法である。これは暗幕を上部枠7にかぶせた場合に、投影する輝度を保ったためである。
【0034】
さらに、プロジェクター4の上には図3に示すように天板4aが取り付けられ、この天板4aのネジ4bによって角度調整が可能である。
【0035】
図4は図1の曲面型スクリーン装置1の上面図である。図5は図1の曲面型スクリーン装置1の側面図である。
【0036】
図4及び図5に示すように、曲面スクリーン2と、湾曲ミラー3と、プロジェクター4とを支持する立体枠ユニット5は、幅が約97cm(上フレーム7aの長さ)で、高さが約206cm(縦フレーム8aの長さ)である。また、上部枠8の上フレーム7cは、長さを調整できるようにしている。さらに、底部枠6のフレーム6cの長さは約110cm〜143cm程度に調整可能である(140cm程度が好ましい)。
【0037】
また、プロジェクター4の天板4aは、十字フレーム(7e、7f)に対して水平に取り付けられ、ネジ4bによってレンズからの映像の中心光軸が湾曲ミラー3の中心より僅かに下向けになるように調整されている。なお、プロジェクター4と湾曲ミラー3との距離は約70cm(焦点距離相当)にされている。
【0038】
プロジェクター4には図示しないサーバが接続されており、このサーバに移動されているデータは、湾曲ミラー3の横幅に対応するピクセルサイズ(長方形状)で、中心線から次第に画素が引き伸ばされた画像(動画)が作成されて送出される。この画像については後述する。
【0039】
前述の湾曲ミラー3は、幅が約393mmで、左右の高さが約235mmで、曲面Rが中(860R)程度である。
【0040】
一方、曲面スクリーン2は、図6に示すように、高さが約80cm×約200cmの反射スクリーン2a(白っぽい、下が黒のゴム磁石)をまげて楕円枠2b(2b1、2b2)に取り付けたものである。この楕円枠2bは、楕円板2b1と楕円板2b2とを繋げて構成している。また、軽量化のために、穴2cをあけている。
【0041】
そして、奥面の縦フレーム10aに取り付けたブラケット2dによって、水平軸に対して5〜12度程度傾けている。そして、枠に取り付けたときの側面の寸法は約80mである。
【0042】
すなわち、曲面スクリーン2は、枠に取り付けたときは楕円形状になるように取り付けられ、この曲面スクリーン2のほぼ中心が湾曲ミラー3の反射面に対向するように取り付けられている。
【0043】
図7は本実施の形態の曲面スクリーン装置1をトレッドミル20(ランニングマシーン20ともいう)に適用した場合の説明図である。図8は曲面スクリーン2に映し出された映像を説明する説明図である。図8のほぼ一定速度で走行しながら撮影したときの画像である。
【0044】
図7に示すように、トレッドミル20の前部を曲面スクリーン装置1の底部枠6に入れる。この位置は、湾曲ミラー3が利用者の頭上より僅かに前になるようにトレッドミル20を置くのが好ましい。
【0045】
そして、プロジェクター4に入力する画像の横軸のピクセル数は、湾曲ミラー3の横幅に対応するように処理されている。この画像がプロジェクター4から湾曲ミラー3に投射されると、この投射光の中心軸は湾曲ミラー3のほぼ中心にあたる(投射点という)。この映像の投射範囲は図9に示すようになる。
【0046】
また、曲面スクリーン2と湾曲ミラーとはそれぞれの面がほぼ対向しているようにされている(湾曲ミラー3の投射点は、曲面スクリーン2の中心部分と対向しており、また湾曲型スクリーン2は水平軸に対して5度〜12度(好ましくは約10度)傾いている)。
【0047】
このため、図8に示すように曲面スクリーン2のほぼ中心に撮影方向中心の映像を映し出すことになる。なお、図8に示す映像については詳細に説明する。
【0048】
一般に、走行時には視点は、前方が中心となり、走行時よりも視野範囲が狭くなっている。曲面スクリーン2は楕円型で、この曲面スクリーン2には湾曲ミラー3から反射される映像が左右端までの範囲で投影されている(視野90度以上相当)。このため、運動者は曲面スクリーン3に映し出された映像のほぼ中心を見ながら走ることになる。
【0049】
また、トレッドミル20はできるだけ多く配置するために詰めて配置されることが多い。
【0050】
曲面スクリーン2は、トレッドミル(ランニングマシーン)を覆うように設計されているので、余分なスペースが少なく、ランニングマシーンの配置で影響を与え難い。
【0051】
すなわち、ラニングマシーン上の利用者は、スクリーン上の映像中心を見ながら走ることになり、かつスクリーンの両袖が両目の近傍当たりに来ていることになり、また中心より外側になるほど画素が引き伸ばされているため、曲面スクリーン2の両端に向かうほど縮尺が大きく、また対地速度が速くなるために、いかにも実際に走った感じを得ることができ。
【0052】
<実施の形態2>
実施の形態2はトレッドミル20に曲面スクリーン装置1を適用した場合を一例として説明する。
【0053】
図10は実施の形態2の曲面スクリーンシステムの概略構成図である。本実施の形態ではソフトウエアを主にして説明する。
【0054】
図10に示すようにトレッドミル20には、速度等をコントロールするためのマシーンコントローラ21と、曲面スクリーン2に映し出す映像を選択したり、映像を早送り、巻き戻ししたりする映像用コントローラ22等を備えている。
【0055】
また、プロジェクター4には、サーバ40が専用ケーブル35で接続されている。また、サーバ40には端末50が接続されている。
【0056】
端末50又は他のパソコンには、前方を撮影した原画像(全周囲画像)を記憶したデータベース41と、画像変換部42と、登録部43と、サブ画面作成部45を備え、サーバ40に変換された画像が記憶されるデータベース44と、後方或いは左右の画像が記憶されるデータベース46と、画像ファイル引当部47と、再生・出力部48等を備えている。
【0057】
(データベース)
データベース41に記憶される原画像(動画)は、自動車、電動自転車等に搭載した前後左右を撮影する最大4台までのビデオカメラ(ハイビジョン)或いは全周囲360度カメラ等により、ほぼ一定速度(時速10km程度が好ましい、自動車の場合は法定速度)で撮影した原画像を記憶されている。これらの原画像としては、例えばマラソンコース毎日、サイクリングコース毎、風景街道毎に分離されて記憶されている。また、原画像の再生時間は、約20分程度である。
【0058】
画像変換部42は、例えば原画像が2048×1024ピクセル(px)のサイズの場合は、図11に示すように横方向62.5%(1280px)、縦方向46.9%(480px)のエリア部分(以下長方形状)を取り出す。このエリア部分の横サイズは、プロジェクターから約70cmに位置する湾曲ミラー3に画像を投射したときにミラーの横全体を満たし、ミラーから反射した映像が曲面スクリーン2に縦方向及び横方向全体を満たすピクセルサイズとなる。
【0059】
また、原画像の上部180pxは例えば空の部分が写った内で不要な部分であり、下部の364pxは撮影車輌が写っている部分であり、その部分は黒(色情報無し:「0」)となるようにデータ変換する。
【0060】
さらに、この長方形状の切り出し画像に対して幾何学的画像変換を行う。これは中心部分の画素を引き伸ばす。これは、中心程遠くに左右程近くにあるように走行時の人間の視野感覚を再現するためである。
【0061】
また、画像変換部42は切り出し画像に対して偏歪処理を中心とした画像処理をかける。例えば図12に示すように上部は、曲率を弱めに設定し、下部は強めに設定する。これは画像を偏歪しないで、湾曲ミラー3を介して曲面スクリーン2に映像を投射した場合は、曲面スクリーン2の範囲を超えてしまう。このようなことを防止するための処理である。
【0062】
このようにして生成した曲面スクリーン用画像をデータベース44に予め保存しておく。
【0063】
サブ画像作成部45は、前述の原画像にリンク付け(年月日、時刻等)されている後方を撮影しているビデオカメラの原画像(384×384px)の範囲を切り出す(図11と同様である)。そして、これを160×160pxサイズにして、データベース46に保存する。
【0064】
本実施の形態ではこの後方の右画像、左画像をサブ画面として表示した例を示している。
【0065】
画像ファイル引当部47は、映像コントローラ22で選択されたモードのコースを読み込み、このコースに該当する曲面スクリーン用画像のファイルをデータベース44から引当て、これを再生・出力部48に知らせる。
【0066】
再生・出力部48は、コントローラ22に選択された速度を読み込み、選択された曲面スクリーン用画像を、選択された速度に対応するようにシーンを再生し、これをプロジェクター4に送出する。
【0067】
一方、プロジェクター4と湾曲ミラー3と曲面スクリーン2と利用者の関係は、図4及び図5並びに図7に示すような関係にある(プロジェクターと湾曲ミラーは70cm、利用者と曲面スクリーンとは110cm〜143cm、曲面スクリーンの傾斜角度は10度)。
【0068】
このため、プロジェクター4から曲面スクリーン用画像(1280×480)が湾曲ミラー3に映像として投射されると、この映像光は湾曲ミラー3にあたって反射して曲面スクリーン2に投射される。
【0069】
図8に示すように曲面スクリーン2のほぼ中心に撮影方向中心の映像を映し出すことになる。なお、図8に示す映像は、中心線から横方向に従って画素が引き伸されている。
【0070】
なお、図8の映像は曲面スクリーン2の全面に映し出されていることを示すものである。
【0071】
前述の画像変換部の処理について図13のフローチャートを用いて説明する。本実施の形態ではビデオカメラ(ハイビジョン)又は全周囲画像等の撮影データ(原画像)を図11に示すようにして切り出す(S1、S2、S3、S4)。
【0072】
本実施の形態では全周囲画像の例であり、サブ画面を表示している。ここでは、後方の画像からの例であり、サブ画面用の画像を切り出し、前方画像と合成する(S5、S6)。サブ画面の合成は、サブ画面作成部が行っている。
【0073】
次に、動画化処理を行った後(S7)で揺れ補正を行う(S8)。
【0074】
前述の動画化処理は、ピントが甘い場合は必要に応じて軽くシャープネス(強調処理)を施す。
【0075】
そして、偏歪処理のために、原画像(動画)に黒ベタ(「0」にする)の余白を付ける。これは上:160px、下240pxが好ましい(図12参照)。
【0076】
ただし、映像の上端は水平になるようにするよりは、上端部もある程度曲げたほうがしっくりする。その理由は、上端部はミラー経由でも直線が綺麗に左右方向に投影されるものの、下端部のカーブがミラー経由でスクリーンに投影されたときカーブが残るためである。
【0077】
次に、画像偏歪に伴う処理(例えばAdobe Premiere Pro CS3を利用)について説明する。原画像を読み込んで数種のエフェクト処理を適用する。
【0078】
適用エフェクトは以下の通りである。
【0079】
トランスフォームにて、パラメータ設定を行う。
【0080】
トランスフォーム
原画像のスケール(高さ);90%
スケール(幅);70%
と設定する。
【0081】
つまり、画像の引き伸ばし処理による幾何補正(縦横比補正)を行う(S9)。
【0082】
トランスフォームにて幅を70%に狭めているのは、レンズディストレーションで周辺が引き伸ばされて左右両端(スクリーン)で画面外に出てしまう量を抑えるためである。
【0083】
次に、レンズ偏歪処理を行う(S10)。
【0084】
これは、レンズディストーションに関する計数を指定する。
【0085】
曲率;−40
水平方向;1
水平プリズム;−10
というパラメータを設定することで実現される。
【0086】
ここでは、曲率をマイナス方向にすることで凹レンズでの撮影イメージにすることができる。水平方向、水平プリズムのパラメータでは、映像上下の適用量を変えることで、下部を大きく湾曲するように処理する(図15参照)。マイナス方向でレンズ中心原点(画面上)に移動し、逆に位置するレンズ周辺部で大きく歪むようになる。
【0087】
その結果、曲面スクリーンから映像が大きくはみ出しせずに投影する画像を作成することができる(図15)。
【0088】
(S9)(S10)の処理の結果、画像中心部分が縦に伸張された状態になっている。このため、中心軸(縦)に近くなるに従って図14に示すように、画素を横方向に引き伸ばすフィルタを適用することで中央部分を引き伸ばす(S11)。
【0089】
例えば、中心を横に1.5倍引き伸ばす場合の画素毎の倍率は次の数式になる。
【0090】
〔数1〕
倍率=0.5×(640−α)/640
α:中心軸から横方向の画素数
但し、水平方向のピクセル数が変わらないように横方向スケール変換(80%)を、また処理途中ではアップスケールして行い、最後に線形補完を行う(S12)。
【0091】
さらに、オフセットによる調整処理を行うことで、出力領域を調整する(S13)。
【0092】
オフセット
中央をシフト;640.0 380.0
というパラメータを設定する。
【0093】
すなわち、このオフセットで曲面スクリーンでの出力領域に収まるように、下に伸びた映像の端を画面内に収めるようにする。但し、この部分は、動画編集ソフト(AviUtl)の黒ベタフィルタの適用量を調整して対応する。
【0094】
このような幾何処理を映像に施すことにより曲面スクリーン2に視覚的違和感のない映像を投影することができる。
【0095】
このようにして生成した画像に対して、WMV(マイクロソフト・ウンドウズメディアビデオ)に映像フォーマット変換処理を施して、最終的に曲面型スクリーン用画像を生成してデータベースに保存する(S13,S14)。この処理は登録部43が行う。
【0096】
ここで、上記S11及びS12の処理について図17を用いて説明する。
【0097】
図17(a)は、ステップS10までの処理によって得られた画像を説明している。そして、図17(b)が中心部分を引き伸ばした図である(ステップS11)。このため、図17(b)に示すように横方向に画像全体が引き伸ばされることになる。中心部分は例えば数1を適用して倍率nにしている。図17(b)は、中心部分が一番拡大されて次第に小さくなっていることを示す。
【0098】
そして、図17(c)に示すように、線形補完を併用して全ての画素の横方向を中心軸に向かうに従って縮小する(S12に対応)。
【0099】
なお、nは現状ではn=1.5前後が適当である。
【0100】
また、 n=1.5のように整数値ではないとき、ピクセル単位の離散的な値しか保持できないビットマップでは、整数になるよう内部的にはさらに2倍しておく(アップスケールする)必要がある。そして、最後に1/2倍する。
【0101】
特にnが2以上のときは、補間アルゴリズムは、線形補間(バイリニア法)よりも、双三次補間(バイキュービック法)あるいは平均画素法のほうが情報の欠落が少なく高品位に出力できる。
【0102】
なお、上記実施の形態では、速度を映像用コントローラ22で選択としたが、マシーンコントローラ21で設定された速度を読み取って、この速度にあわせて画像を再生させてもよい。
【0103】
また、上記の原画像に対しては、必要に応じてプライバシー対策のために顔消し処理を施しておく。
【0104】
また、曲面スクリーン用画像に対してサイド部分に視覚的なギミックを追加して、動画に擬似的にスピード感を与えた映像を曲面スクリーンに表示させてもよい。
【0105】
さらに、再生・出力部48が画像再生時において、数シーン後の画像を読み出して、図16に示すように小さく前方に表示したり、或いは予め設定されている数シーン、数シーン、数百シーン前後の店の画像を表示したり、サイドにコマーシャルを表示させてもよい。
【0106】
また、原画像の各シーンに緯度経度がリンク付けされている場合は、これを読み出して表示させてもよい。
【0107】
また、上記実施の形態の原画像は、カヌー等の船からの画像、洞窟の画像、ヘリコプターなどの空中の画像であってもよい。
【0108】
さらに、上記の曲面スクリーン用画像に対しては、上下の調整を施してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 曲面型スクリーン装置
2 曲面スクリーン
3 湾曲ミラー
4 プロジェクター
5 立体枠ユニット
40 サーバ
42 画像変換部
47 画像ファイル引当部
48 再生・出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面部にトレーニング装置が入る程度に開口され、高さが前記トレーニング装置の利用者の頭部より上の所定高さにされ、所定の奥行長を有した立体枠ユニットと、
前記利用者の頭部上となる前記立体枠ユニットの天井枠の中央下の位置に反射面を前記立体枠ユニットの奥面に向けて設けられ、長方形状にされて両端方向及び下端方向に従って湾曲した湾曲ミラーと、
前記立体枠ユニットの天井枠の中央の下で奥面側に設けられて、映像が前記湾曲ミラーに結像する所定距離にされたプロジェクターと、
前記湾曲ミラーからの映像を受けるように、所定角度傾斜され、かつ前記湾曲ミラーから所定距離離されて前記立体枠ユニットの内部に取り付けられた曲面スクリーンと
を備えた曲面型スクリーン装置。
【請求項2】
前記曲面スクリーンは、長方形の平板を中央からまげた楕円型又は半円形であり、これを前記所定角度傾斜を付けさせて取り付けていることを特徴とする請求項1記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項3】
前記曲面スクリーンは、
表面が反射スクリーンの長方形状の平板であり、この平板の中央の下部を前記立体枠ユニットの奥面の中央に取り付け、左袖側の端の上部を前記立体枠ユニットの左面に取り付け、右袖側の端の上部を前記立体枠ユニットの右面に取り付けて前記所定角度傾斜させていることを特徴とする請求項2記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項4】
前記所定角度は、5度〜12度の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項5】
前記湾曲ミラーと前記プロジェクターとの前記所定距離は、70cm程度以内にされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項6】
前記立体枠ユニットの天井枠は、前記利用者が使用するトレーニング装置が置かれるほうに向かって長棒を取り付けていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項7】
前記天井枠には、撮影した映像の輝度を保つための暗幕を張って奥面、左面及び右面にたらしていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項8】
前記立体枠ユニットの全体は、軽量の支柱で形成され、これらの支柱は長さを調整可能にされていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の曲面型スクリーン装置。
【請求項9】
曲面型スクリーン装置と映像生成装置とを備えた曲面スクリーンシステムであって、
前記曲面スクリーン装置は、
前面部にトレーニング装置が入る程度に開口され、高さが利用者の頭部より上の所定高さにされ、所定の奥行長を有した立体枠ユニットと、
前記利用者の頭部上となる前記立体枠ユニットの天井枠の中央下の位置に反射面を前記立体枠ユニットの奥面に向けて設けられ、長方形状にされて両端方向及び下端方向に従って湾曲した湾曲ミラーと、
前記立体枠ユニットの天井枠の中央の下で奥面側に設けられて、映像が前記湾曲ミラーに結像する所定距離にされたプロジェクターと、
前記湾曲ミラーからの映像を受けるように、所定角度傾斜され、かつ前記湾曲ミラーから所定距離離されて前記立体枠ユニットの内部に取り付けられた曲面スクリーンと
を備え、
前記映像作成装置は、
所定速度で走行しながら前方を撮影したときの原画像から前記湾曲ミラーに対応した長方形状に切り出され、この切り出し画像に対して偏歪処理を施した変換画像を記憶した記憶手段と、
前記記憶手段から変換画像を、入力された指定の速度で再生し、この再生画像を前記プロジェクターに送出して前記湾曲ミラーに投影させる手段と
を有することを特徴とする曲面スクリーンシステム。
【請求項10】
前記変換画像は、
前記切り出し画像に対して、縦方向より横方向が狭められた縦横幾何補正が施された後に、中心部分の画素が引き伸ばされていることを特徴とする請求項9記載の曲面スクリーンシステム。
【請求項11】
前記変換画像は、
画像の下端が前記中心軸で最も大きな曲率にされ、画像の上端が僅かな曲率が施されて、画像以外の部分は黒ベタが施されていることを特徴とする請求項9又は10記載の曲面スクリーンシステム。
【請求項12】
前記切り出し画像は、縦方向よりも横方向に縮小が施されていることを特徴とする請求項9、10又は11のいずれかに記載の曲面スクリーンシステム。
【請求項13】
前記映像作成装置は、
前記湾曲ミラーの曲率、大きさ並びに前記湾曲スクリーンの曲率、湾曲ミラーとの距離とに基づいて、前記変換画像を得る手段を有することを特徴とする請求項9、10、11又12のいずれかに記載の曲面スクリーンシステム。
【請求項14】
前記トレーニング装置は、ランニング用又はウォーキング用の運動装置或いは二輪車又は四輪車
であることを特徴とする請求項9、10、11、12又は13のいずれかに記載の曲面スクリーンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−175844(P2010−175844A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18556(P2009−18556)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(591074161)アジア航測株式会社 (48)
【Fターム(参考)】