説明

最も一般的な形態の常染色体性優性遺伝性痙性対麻痺に応答し得るSPG遺伝子のクローニング、発現および同定

【課題】スパスチンをコードするSPG遺伝子、および最も頻繁な形態の常染色体性優性家族性痙性対麻痺の原因であるそのいくつかの突然変異の同定および特性決定方法の提供。
【解決手段】遺伝子のcDNAおよび対応するポリペプチドのクローニング、特性決定、ベクター、形質転換細胞、トランスジェニック動物の作成、ならびに診断方法およびキット、該ポリペプチドと直接的または間接的に相互作用し得る化学化合物または生化学化合物を選択する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は最も一般的な形態の常染色体性優性遺伝性痙性対麻痺(HSP)の原因である、スパスチンをコードしているSPG4遺伝子の同定および特性決定、そのcDNAのクローニングおよび特性決定、およびまた対応するポリペプチドに関する。本発明はまたベクター、形質転換細胞、およびトランスジェニック動物、また診断方法ならびにキットおよび本発明のポリペプチドと直接的または間接的に相互作用し得る化学的または生化学的化合物を選択する方法に関する。
【0002】
背景技術
優性遺伝性痙性対麻痺(HSP)は下肢の両側相称かつ進行性痙直を特徴とする中枢神経系の変性疾患である。それら自体は臨床的には歩行困難により現れ、両肢の全体麻痺に進行する可能性がある。この種の疾患の生理病理学はこれまでのところ割合に記載されていない。しかしながら、病理解剖学的データにより発病が脊髄の随意運動性を担う錐体索に限定されると推定できる(Reid, 1997)。HSPには様々な臨床型および遺伝子型のものがある。下肢の部分痙直に相当するいわゆる「単純」HSPは、その下肢痙直が神経学的または非神経学的タイプの他の臨床徴候に関連している「複合」HSPとは臨床上区別される(Bruyn et al., 1991)。遺伝学的見地から、HSPは常染色体性優性(AD−HSP)、常染色体性劣性(AR−HSP)またはX染色体性(X−HSP)様式により遺伝し得る。常染色体性優性様式により最も一般的に遺伝する「単純」型HSPが最もよく起こる(HSPの約80%)(Reid, 1997)。HSPの発病率は、疫学的研究が少なく、さらに臨床学的変化が多くあることから統計的に予測することは難しいが、デンマークでは0.9:100000、スペインのある地域では3〜9.6:100000(Polo et al., 1991)またはノルウェイでは14:100000(Skre, 1974)(フランスでは約3:100000)と様々である。
【0003】
HSPは、異なる家系間だけでなく、同じ家系の異なる患者間でも観察されるこの多くの臨床学的変化に加え、重要な遺伝子異質性によっても特徴づけられる。AD−HSPの場合、これまでに4つの遺伝子座が第14染色体(遺伝子座SPG3)(Hazan et al., 1993)、第2染色体(遺伝子座SPG4)(Hazan et al., 1994; Hentali et al., 1994)、第15染色体(遺伝子座SPG8)(Fink et al., 1995)および第8染色体(遺伝子座SPG8)(Hedera et al., 1999)上で同定されている。AD−HSPを示す多くの家系の調査では、第2染色体にある遺伝子がこの型の疾患の主要な遺伝子座であり、調査した家系の40〜50%に見られることがわかった(The Hereditary Spastic Paraplegia Working Group, 1996; Durr et al., 1996)。いくつかの遺伝子座SPG4関連HSP家系では先行的徴候が見られた:この徴候はデンマーク人の6家系においてRED(Rapid Expansion Detection)手法を用いて示された(CAG)n反復配列の延長に関係していた(Nielsen et al., 1997)。しかしながら、調べたいずれの家系においてもこの方法またはYAC(酵母人工染色体)またはBAC(細菌人工染色体)クローン(Hazan et al., Genomics, 60 (3), 309-19, 1999)からなる物理的マップにおける(CAG)nタイプの配列の系統調査によりこの延長が確認される可能性はなかった。
【0004】
これまでのところ、2つの形態のX−HSPおよび1つの形態のAR−HSPの原因である3つの遺伝子が同定されている。ニューロン特異的細胞付着分子、L1−CAM(L1細胞付着分子)をコードする、Xq28番(遺伝子座SPG1)にある遺伝子の変異はその痙直が知的障害に関連している複合型HSPを引き起こし、ミエリン層の構成性分子をコードする、Xq21番(遺伝子座SPG2)にあるPLP(プロテオリピドタンパク質)遺伝子の変異は単純および複合型X−HSPを引き起こす(Saugier-Veber. P. et al., 1994)。さらに最近、対麻痺をコードする、16q24.3番(座SPG7)にある遺伝子、AAA(様々な細胞活性に関連するATPアーゼ)タンパク質系(Confalonien et al., 1995)のミトコンドリアATPアーゼの変異は複合および単純型AR−HSPに関連していた(Casari et al., 1998)。
【0005】
従って現在、最も一般的な形態のAD−HSPの原因である遺伝子を同定し、特性決定する必要性が大いに残っている。この遺伝子の同定により、特に、関係する家系の出生前スクリーニング用試験の将来性のほか、脊髄の神経管束に特異的なこれらの変性をもたらす分子機構のいくつかがよりよく理解され、また患者の治療処置に関して基本的応答を得ることが可能になりさえするであろう。
正確にはこれが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
遺伝子座SPG4関連HSP家系において組換え結果を調査することにより、D2S352およびD2S2347遺伝子マーカー間の位置範囲を決定した後、本発明者らは、約1.5Mbと見積もった物理的距離にわたるBACのコンティグを確立し、SPG4範囲を配列決定することに基づく位置クローニング戦略に取り組み、候補領域にある総ての遺伝子を完全に同定した。2つのBAC、D(b336P14)およびG(B763N4)の配列の解析により、約100kbの距離にわたって延びる17のエキソンからなり、かつAAA系のタンパク質をコードする遺伝子と相同性を示す遺伝子の存在が明らかになった。この遺伝子の配列をAD−HSP家系の健康な人と影響を受けた人との間で比較することで患者の様々な突然変異を証明することができる。
【0007】
従って本発明の目的は最も一般的な型のAD−HSPの原因である、AAA系の新規細胞核要素をコードするSPG4(またはSPAST)遺伝子の同定および特性決定である。
【0008】
第一の態様において、本発明の目的は、
ヒトSPG4遺伝子のゲノム配列である配列番号1の配列;
配列番号1の配列の核酸の相同体または変異体である核酸配列;
それに対して相補的な配列;および
その対応するRNAの配列
からなる群から選択される配列の、少なくとも15個の連続するヌクレオチド、好ましくは20、25、30、35、40、45、50、75、100または200個の連続するヌクレオチドを含んでなることを特徴とする、精製または単離されたSPG4遺伝子の核酸である。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明はもちろんDNAおよびRNA配列の両方とそれらとハイブリダイズする配列、ならびにそれに対応する二本鎖DNAに関する。
【0010】
「核酸」、「核酸配列」または「核酸の配列」、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、および「ヌクレオチド配列」とは、本明細書において等しく使用されており、二本鎖DNA、一本鎖DNAならびにそのDNAの転写産物、および/またはRNA断片、核酸の断片または領域が定義できる、改変されていても改変されていなくてもよい、正確に連続したヌクレオチドをさす、異常なヌクレオチドを含んでも含まなくてもよいその単離された天然、または合成断片をいうものとする。「異常なヌクレオチドを含んでも含まなくてもよい単離された天然、または合成DNAおよび/またはRNA断片」とは、核酸の断片、セグメントまたは領域が定義できる、改変されていても改変されていなくてもよい、正確に連続したヌクレオチドを意味するものである。
【0011】
本発明はそれらの天然の染色体環境、すなわち自然状態におけるゲノムヌクレオチド配列に関するものでないものと理解されるべきである。それは単離および/または精製された、すなわちそれらの環境が少なくとも部分的に改変されており、それらが直接的または間接的に、例えばコピーにより分離された配列を含んでいる。
【0012】
「相同な核酸配列」とは、参照核酸配列に関して、特に欠失、末端切断、延長、キメラ融合および/または変異、特に点変異などのある改変を有し、かつ整列後にその核酸配列が参照核酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%または95%同一性を示す、配列をいうものとする。
【0013】
本発明の目的のため、2つの核酸またはアミノ酸配列間の「同一性%」とは、最良の整列後に得られた、比較する2つの配列間で同一であるヌクレオチドのまたはアミノ酸残基の割合%をいい、この割合%は単に統計的なものであり、2つの配列間の差はランダムにかつその長さ全体にわたって分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列間の配列比較は通常それらを最良に整列した後にこれらの配列を比較することにより行われる。この比較はセグメントによりまたは「比較のウィンドウ」により行われ、配列の類似する局所領域を同定して比較する。手動にの他、Smith and Waterman (1981) [Ad. App. Math. 2:482]の局所相同アルゴリズムにより、Neddleman and Wunsch (1970) [J. Mol. Biol. 48:443]の局所相同アルゴリズムにより、Pearson and Lipman (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444]の類似性調査方法により、およびこれらのアルゴリズムを用いるコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr. Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA、またはBLAST NまたはBLAST P比較プログラムを用いて)により、比較する配列の最良の整列を行うことができる。
【0014】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性%は、これら2つの最良に整列された配列を、比較する核酸またはアミノ酸配列の領域がこれら2つの配列間の最良の整列のために参照核酸配列に対して付加または欠失を含んでなってもよい、比較のウィンドウにより比較することで求められる。同一性%は2つの配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一である同一位置数を求めて算出する。ここでは比較のウィンドウにおけるこの同一位置数を全位置数で割り、得られた結果に100を掛けてこれら2つの配列間の同一性%を得る。
【0015】
例えば、サイトhttp://www.ncb.nim.nih.gov/gorf/bj2.htmlで入手可能なBLASTプログラム「BLAST2配列」(Tatusova et al., "Blast2 sequences-a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol. Lett. 174: 247-260)を用いてもよい。ここで用いるパラメーターは誤りにより得られるものであり(特に、パラメーター「オープンギャップペナルティー」;5および「エクステンションギャップペナルティー」;2:選択されるマトリックスが、例えばプログラムにより推奨される「BLOSUM62」マトリックス)、比較する2つの配列間の同一性%はプログラムにより直接算出される。
【0016】
好ましくは、その相補配列が本発明の配列の1つと特異的にハイブリダイズし得る配列が含まれる。好ましくは特異的または高いストリンジェントハイブリダイゼーション条件とは、それらが2つの配列の一方とそのもう一方に相補的な配列間の整列後の同一性が少なくとも80%、好ましくは90%または95%であるよう保証するものである。
【0017】
高いストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションとは、温度およびイオン強度条件によって2つの相補DNA断片間のハイブリダイゼーションを継続し得るようにそれらを選択することを意味する。例えば、上述のポリヌクレオチド断片を定義するためにはハイブリダイゼーション工程の高いストリンジェント条件が以下のように有利である。
【0018】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションを2工程で行う:(1)5×SSC(1×SSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウム溶液に相当する)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハート、5%硫酸デキストランおよび1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブの大きさによる温度で(すなわちプローブの大きさ>100個ヌクレオチドの場合、42℃)20時間の実際のハイブリダイゼーション、次いで2×SSC+2%SDSにより20℃で20分間、2回の洗浄および0.1×SSC+0.1%SDSにより20℃で20分間、1回の洗浄。最終洗浄は0.1×SSC+0.1%SDSによりプローブの大きさ>100個ヌクレオチドの場合、60℃で30分間行う。規定の大きさのポリヌクレオチドの高いストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、Sambrook et al., 1989の教示に従い、当業者によって、より大きなまたはより小さなオリゴヌクレオチド用にも調整される。
【0019】
参照核酸配列の「変異体である核酸配列」または「変異体である核酸」とは、対立遺伝子変異体、すなわち参照核酸配列の各々の変異に対応する核酸配列群をいうものである。これらの天然の変異配列は哺乳類、特にヒトに存在する多形性、特に病状を引き起こしおよび/または進行させ得る多形性に対応している。
【0020】
本発明の配列は正常配列に関するものであるが、またそれらは正常配列に関して少なくとも1つの点突然変異、および好ましくは多くて10%の突然変異を含む範囲で変異させた配列に関する。
【0021】
特に変異核酸配列は配列番号1の配列のヒトSPG4遺伝子のゲノム配列の多形配列の、少なくとも15個の連続するヌクレオチド、好ましくは20、25、30、50、100または200個の連続するヌクレオチドのいずれもの配列および配列番号1の配列に関して、特にアミノ酸残基の末端切断、欠失、置換および/または付加に相当する少なくとも1つの突然変異を有する核酸配列を含んでなる。この場合、ここでは少なくとも1つの突然変異を有する変異核酸配列はSPG4遺伝子と関連しているAD−HSP型の病状と関連している。
【0022】
好ましくは、本発明はその突然変異が正常配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列の改変を引き起こす変異核酸配列に関する。
【0023】
「変異核酸配列」とはまた、配列番号1のゲノム核酸配列のスプライス部位の突然変異の結果として生じるいずれのRNAまたはcDNAをも意味するものである。
【0024】
好ましくは、本発明は、
a)配列番号1、配列番号2、配列番号72、配列番号106の配列、または配列番号1、配列番号2、配列番号72もしくは配列番号106の配列の少なくとも15個、好ましくは20、25、30、35、40、45、50、75、100もしくは200個の連続するヌクレオチドの配列;
b)配列番号1、配列番号2、配列番号72または配列番号106の配列の相同体または変異体である核酸配列;および
c)a)およびb)で定義される配列に対応する相補配列またはRNA配列
(好ましくは、受託番号AB029006としてGenBankデータベースで確認される核酸を除く)
からなる群から選択される配列を含んでなる、精製または単離されたSPG4遺伝子の核酸に関する。
【0025】
その配列が受入番号AB029006としてGenBankデータバンクで開示されている核酸はKazusa DNA Research Institute in Japan(Kikuno et al., DNA Research, 6, 197-205, 1999)により同定されたヒト脳mRNAライブラリーの100のcDNAのうちの1つの配列に対応している。
【0026】
好ましくは、本発明は、配列番号2の配列の、それに対して相補的な配列の、またはその対応するRNAの配列の、nt714〜809(末端を含む)断片の少なくとも15個の連続するヌクレオチド、好ましくは20、25、30、50または75個の連続するヌクレオチドの配列を少なくとも1つ含んでなる、本発明の精製または単離された核酸に関する。
【0027】
好ましくは、本発明は次の群:
配列番号1の配列;
ヒト・スパスチンをコードしているcDNA配列である、配列番号2の配列;
図5に示されたネズミ・スパスチンをコードしている不完全cDNA配列を示す、「マウス」系、配列番号72、およびその完全配列を示す配列番号106の配列;
配列番号1、配列番号2、配列番号72または配列番号106の配列の相同体または変異体である核酸配列;
それに対して相補的な配列;および
その対応するRNAの配列
から選択される配列を含んでなる、精製または単離された本発明の核酸に関する。
【0028】
好ましくは、本発明は、ヒトの本来の多形性に対応する少なくとも1つの突然変異を含んでなる、本発明の精製または単離された核酸に関するものであり、特にその位置および性質は表5で確認できる。
【0029】
本発明の核酸配列を含んでなるプローブまたはプライマーもまた本発明の一部をなす。
【0030】
従って本発明は本発明のヌクレオチド配列から誘導できるものであり、さらに特にPCR法などの増幅方法、または関連する方法を用いて本発明のヌクレオチド配列、特に変異配列を証明することのできるプライマーセットに関する。
【0031】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列から、特にそれらとハイブリダイズし得る配列から推定でき、さらにそのヌクレオチド配列を証明できる、特に正常配列と変異配列とを識別することのできるプローブセットに関する。
【0032】
本発明は特に、配列番号4〜配列番号71の配列から選択される配列を有するプローブまたはプライマーに関する。
【0033】
本発明はまた、核酸配列を検出、同定、アッセイまたは増幅するためのプローブまたはプライマーとしての本発明の核酸配列の使用に関する。
【0034】
本発明によれば、核酸配列を検出、同定、アッセイまたは増幅するプロセスにおいてプローブまたはプライマーとして使用できるポリヌクレオチドの最小サイズは15塩基、好ましくは20塩基、またはより好ましくは25〜30塩基である。
【0035】
本発明のプローブおよびプライマーセットは、当業者に十分公知な方法を用いて放射性または非放射性化合物で直接的または間接的に標識して検出および/または定量シグナルを得ればよい。
【0036】
本発明の非標識ポリヌクレオチド配列はプローブまたはプライマーとして直接使用できる。
【0037】
一般に、多くの用途に使用できる配列を得るためには配列を標識する。本発明のプライマーまたはプローブの標識は放射性元素または非放射性分子を用いて行われる。
【0038】
使用される放射性同位元素としては32P、33P、35S、Hまたは125Iが挙げられる。非放射性物質としてはビオチン、アビジンまたはストレプトアビジンなどのリガンド、ジオキシゲニン、ハプテン、色素および放射発光性、化学発光性、生物発光性、蛍光性または燐光性薬剤などの発光剤から選択される。
【0039】
従って本発明のポリヌクレオチドは特に、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法(Erlich. 1989; Innis et al., 1990、およびRolfs et al., 1991)を用いるプロセスにおいてプライマーおよび/またはプローブとして使用できる。この手法では増幅しなければならない断片を組み立てるオリゴヌクレオチドプライマー対を選択する必要がある。例えば、米国特許第4,683,202号に記載される手法を挙げられる。例えばアガロースもしくはポリアクリルアミドゲル電気泳動後、またはゲル濾過もしくはイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法の後に増幅された断片を同定し、次いで配列決定することができる。増幅の特異性は、プライマーとして本発明のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびマトリックスとしてこれらの配列または誘導された増幅産物を含有するプラスミドを用いて制御できる。増幅されたヌクレオチド断片をハイブリダイゼーション反応において試薬として用い、生物学的サンプルにおいてその増幅されたヌクレオチド断片のものと相補的な配列を有する標的核酸の存在を証明することができる。
【0040】
本発明はまた本発明のプライマーを用いた増幅により得ることのできる核酸にも向けられる。
【0041】
PCR(PCR様)の代わりとして標的核酸を増幅する他の手法を、本発明のヌクレオチド配列を有するプライマー対を用いて使用できることが有利である。「PCR様」とは、核酸配列の直接的または間接的再生産を用いる、またはその標識系が増幅されているあらゆる方法をいうものとする。これらの手法はもちろん公知であり、一般にそれらはポリメラーゼによるDNAの増幅を含んでいる:元のサンプルがRNAである場合、事前に逆転写を行うことが望ましい。現在、この増幅が可能な、例えばSDA(鎖置換増幅)法(Walker et al., 1992)、Kwoh et al. in 1989により記載されたTAS(転写に基づく増幅系)法、Guatelli et al. in 1990により記載された3SR(自立配列複製)法、Kievitis et al. in 1991により記載されたNASBA(核酸配列に基づく増幅)法、TMA(転写により媒介される増幅)法、Landegren et al. in 1988により記載され、Barany et al. in 1991により改変された、易熱性リガーゼを用いるLCR(リガーゼ鎖反応)手法、Segev in 1992により記載されたRCR(修復連鎖反応)法、Duck et al. in 1990により記載されたCPR(サイクリングプローブ反応)法、およびMiele et al. in 1983により記載され、特にChu et al. in 1986ならびにLizardi et al. in 1988、後にBurg et al.、さらにまたStone et al. in 1996 により改変されたQ−β−レプリカーゼ増幅法などの極めて多くの方法がある。
【0042】
検出される標的ポリヌクレオチドがmRNAである場合、本発明のプライマーを用いる増幅反応を行う前に、または本発明のプローブを用いる検出プロセスを行う前に逆転写型酵素を用いて生物学的サンプルに含まれるmRNA由来のcDNAを得ることが有利である。次いで得られたcDNAは本発明の増幅または検出プロセスにおいて用いられるプライマーまたはプローブの標的として役立つ。
【0043】
プローブハイブリダイゼーション法は種々の方法により行うことができる(Matthews et al., 1988)。最も一般的な方法は、種々の組織の細胞から、または培養中の細胞から抽出した核酸を支持体(ニトロセルロース、ナイロンまたはポリスチレン)に固定化し、さらに所定の条件下で固定化した標的核酸をプローブとともにインキュベートするものである。ハイブリダイゼーション後に過剰なプローブを排除し、形成されたハイブリッド分子を適当な方法(プローブと結合した放射能、蛍光性または酵素活性の測定)を用いて検出する。
【0044】
本発明の核酸プローブのもう1つの具体例によれば、後者を捕捉プローブとして用いることができる。本件では「捕捉プローブ」とよばれるプローブを支持体に固定化し、これを用いて調べる生物学的サンプルから得られた標的核酸を特異的ハイブリダイゼーションにより捕捉する。次いで容易に検出可能なエレメントで標識した「検出プローブ」とよばれる第2のプローブを用いて標的核酸を検出する。
【0045】
表3で確認される本発明のスプライス受容部位または供与部位配列(配列番号74〜配列番号105)もまた本発明の一部をなす。
【0046】
もう1つの態様では、本発明は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングする、またはスパスチンをコードしている単離されたゲノムまたはcDNAをクローニングする方法であって、本発明の核酸配列を用いる方法を含んでなる。
【0047】
これらの方法のうち、特に、
本発明の核酸配列を用いるcDNAライブラリーのスクリーニングおよび単離されたcDNAのクローニング(Sambrook et al., 1989; Suggs et al., 1981; Woo et al., 1979);
ゲノムライブラリー、例えばBACのスクリーニング(Chumakov et al., 1992;Chumakov et al., 1995)、および所望によりスパスチンをコードしているSPG4遺伝子の単離および染色体の限局化、さらに完全配列決定を可能にする本発明の配列を用いるFISHによる遺伝子解析(Cherif et al., 1990)が挙げられる。
【0048】
特に本発明によれば、これらの方法は他の哺乳類、特にマウスのSPG4遺伝子のゲノム配列またはcDNAを同定して得るために用いてよい。
【0049】
これらのスクリーニングおよび/またはクローニング方法は特に、本発明の核酸とゲノムまたはcDNAライブラリーにある核酸とのハイブリダイゼーション工程を含んでなる。
【0050】
本発明はまた、配列番号1の配列のSPG4遺伝子の発現を促進および/または調節する核酸配列を同定する方法であって、本発明の核酸を用いる方法を含んでなる。
【0051】
当業者に利用できるコンピュータツールにより、本発明のゲノム核酸配列を用い、遺伝子発現を制御するのに必要かつ十分なプロモーター調節ボックスを容易に同定することが可能となる。特にTATA、CCAATおよびGCボックス、またシス位で本発明の遺伝子発現を制御する刺激性調節配列(「エンハンサー」)または阻害性調節配列(「サイレンサー」)が挙げられ、これらの調節配列の中でもIRE、MREおよびCREが挙げられる。
【0052】
本発明はまた、ヒトSPG4にある突然変異、特に常染色体性優性遺伝性痙性対麻痺の原因である突然変異を同定する方法であって、本発明の核酸配列を用いる方法に関する。
【0053】
これらの突然変異を同定するこれらの方法は特に以下の工程を含んでなる:(i)解析される生物学的サンプル由来のDNAの単離、または生物学的サンプルのmRNAからのcDNAの作製;(ii)本発明のプライマーを用いる、突然変異を含むと考えられる標的DNAの特異的増幅;(iii)増幅産物、特に増幅産物の大きさおよび/または配列の、参照配列に対する解析。
【0054】
「本発明の突然変異を同定する方法」とはまた、それに対して突然変異が同定された核酸を得ることが可能な方法をいうものとする。
【0055】
対応するタンパク質の発現を改変し得る突然変異を有する本発明のSPG4遺伝子のプロモーターおよび/または調節配列も本発明の一部をなす。
【0056】
本発明のこれまでの方法の1つを用いて得られることを特徴とする核酸、または高いストリンジェント条件(2つの配列の一方と、もう一方に相補的な配列との間の相同性が少なくとも80%)下で該核酸とハイブリダイズし得る核酸、特に変異体または相同体、特に配列番号1の配列のSPG4遺伝子の対立遺伝子変異体の、または配列番号2の配列のそのcDNAの核酸配列、またマウスなどの他の哺乳類の相同遺伝子のゲノム配列も本発明の一部をなす。
【0057】
本明細書において「Spg4」とはヒトSPG4遺伝子に相同なマウス遺伝子をいうものとする。
【0058】
もちろんゲノムライブラリーまたはcDNAをスクリーニングするための本発明の核酸配列の、プローブまたはプライマーとしての使用も本発明の主題の一部をなす。
【0059】
もう1つの態様では、本発明は、本発明の核酸によってコードされている精製または単離されたポリペプチドであって、好ましくはその配列が受託番号AB029006としてGenBankデータベースで確認される584アミノ酸ペプチドを除くものを含んでなる。
【0060】
本明細書において「ポリペプチド」とは、同等にタンパク質またはペプチドをいうのに使用される。
【0061】
好ましくは、本発明は、以下の群から選択されるアミノ酸を含んでなる本発明のポリペプチドに関する:
配列番号3の配列、ヒトSPG4遺伝子のcDNAの配列番号2の配列によってコードされているヒト・スパスチンに対応;
配列番号73の配列、マウスSpg4遺伝子の不完全なcDNAの配列番号72の配列によってコードされているネズミ・スパスチン断片に対応(なおこの配列73は図4Aの「SPAST_マウス」の欄に示されている;
配列番号107の配列、マウスSpg4遺伝子の完全cDNAの配列番号106の配列によってコードされているネズミ・スパスチンに対応;
配列番号3、配列番号73または配列番号107の配列のポリペプチドの相同体および変異体であるポリペプチド配列;および
少なくとも8、10、15、30または50個の連続するアミノ酸の、その断片配列。
【0062】
また好ましくは、本発明の主題は、
a)配列番号3、配列番号73、配列番号107の配列、またはこれらの配列の1つの少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列;および
b)配列番号3、配列番号73または配列番号107の配列の相同体または変異体である配列
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、本発明のポリペプチドである。
【0063】
また好ましくは、本発明の主題は、配列番号3の配列のaa197〜228(末端を含む)断片の少なくとも8個、好ましくは少なくとも10、15、20または30個の連続するアミノ酸の配列を含んでなる、本発明のポリペプチドである。
【0064】
また好ましくは、本発明の主題は、以下の群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる本発明のポリペプチドである:
配列番号3、配列番号73および配列番号107の配列(なお、この配列はヒトにおける本来の多形性に対応する少なくとも1つの突然変異、特にその性質と位置が以下の表5で確認されるもの、または本発明に従いSPG4遺伝子の突然変異を同定する方法を用いて同定され得るものを有する);および
少なくとも8、10、15、30または50個の連続するアミノ酸の、その断片配列。
【0065】
本発明は天然型のポリペプチドに関するものではない、すなわちそれらの環境中では得られないと理解されるべきである。特に本発明は天然源から精製によって得られるか、あるいは遺伝子組換えによるか、または化学合成によって得られ、従って非天然アミノ酸を含むペプチドに関する。本発明のヌクレオチド配列の1つを用いて行うことができる組換えペプチドの生産は、高い純度の所望のポリペプチドを得ることができるので特に有利である。
【0066】
「同種ポリペプチド」とは特に1以上の欠失もしくは末端切断、延長、キメラ融合および/または1以上の置換といった参照ポリペプチドに対してある改変を有するポリペプチドをいうものとし、そのアミノ酸配列は整列後に参照アミノ酸配列に対して少なくとも80%、好ましくは90%または95%の同一性を示す。
【0067】
「変異型ポリペプチド」(またはタンパク質変異体)とは、上記の変異型核酸配列によってコードされているポリペプチドのセットをいうものとする。
【0068】
特に変異型ポリペプチドは配列番号1の配列のSPG4遺伝子の変異型ゲノム配列によってコードされているいずれかのポリペプチドを含み、そのアミノ酸配列は配列番号3の配列に対して特に末端切断、欠失、置換および/またはアミノ酸残基の付加に対応する少なくとも1つの突然変異を有する。この場合、少なくとも1つの突然変異を有する変異型ポリペプチドはAD−HSP型の病状に関連している。
【0069】
「変異型ポリペプチド」とはまた、配列番号1のゲノム核酸配列におけるスプライス部位の突然変異から生じたいずれかのポリペプチドをいうものとする。
【0070】
本発明はまた、本発明の核酸配列を含むクローニングおよび/または発現ベクターも含む。
【0071】
宿主細胞において該配列の発現および/もしくは分泌させるエレメント、または本細胞接近配列を含むことを特徴とする発明のベクターもまた本発明の一部をなす。
【0072】
本発明のプロモーターおよび/または調節配列を含むことを特徴とするベクターもまた本発明の一部をなす。
【0073】
該ベクターは好ましくはプロモーター、末端切断開始および終結シグナル、また転写調節に好適な領域を含む。それらは細胞内で安定して維持でき、かつ、所望により翻訳タンパク質の分泌を具現化する特定のシグナルを持つべきである。
【0074】
これら種々の制御シグナルは使用される宿主細胞に対して選択される。これを達成するため、本発明の核酸配列は選択された宿主内で自律的に複製するベクター、または選択された宿主に組み込まれるベクターに挿入することができる。
【0075】
自律的に複製する系のうち、宿主細胞に対してプラスミドまたはウイルス型の系が用いるのが好ましく、可能なウイルスベクターとしては特にアデノウイルス(Perricaudet et al., 1992)、レトロウイルス、レンチウイルス、ポックスウイルスまたはヘルペスウイルス(Epstein et al., 1992)がある。当業者ならばこれらの系の各々に対して使用可能な技術が分かる。
【0076】
宿主細胞の染色体への配列の組み込みが望まれる場合には、例えばプラスミドまたはウイルス型の系を使用すればよく、かかるウイルスとしては例えばレトロウイルス(Temin, 1986)またはAAV(Carter, 1993)がある。
【0077】
非ウイルスベクターの中でも、付随VICAL、酵母での発現のための酵母人工染色体(YAC)、ネズミ細胞での発現のためのマウス人工染色体(MAC)、好ましくはヒト細胞での発現のためのヒト人工染色体(HAC)によって開発された技術に従う裸のDNAまたは裸のRNA裸などの裸のポリヌクレオチドが好ましい。
【0078】
かかるベクターは当業者に一般に用いられている方法に従い製造され、それらから得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーションまたは熱ショックのような標準的な方法を用いて好適な宿主に導入することができる。
【0079】
本発明はまた宿主細胞、特に本発明のベクターで形質転換された原核および真核細胞、また本発明の形質転換細胞の1つを含んでなる、ヒトを除くトランスジェニック動物を含む。
【0080】
これらの目的に使用できる細胞の中では、もちろん細菌細胞(Oline and Lee, 1993)が挙げられるが、酵母細胞(Buckholz, 1993)、ならびに動物細胞、特に哺乳類細胞の培養物(Edwards and Aruffo, 1993)および特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、また例えばバキュウロウイルスを手段とする方法の使用が可能となる昆虫細胞(Luckow, 1993)も挙げられる。本発明のタンパク質を発現するのに好ましい細胞宿主はCHO細胞である。
【0081】
本発明の哺乳類の中でも、本発明のポリペプチドを発現するマウス、ラットまたはウサギなどの動物が好ましい。
【0082】
本発明の哺乳類の中でも、SPG4遺伝子の2つの対立遺伝子のうち少なくとも一方の配列がヒトの本来の多形性に対応する少なくとも1つの突然変異を含むことを特徴とする形質転換細胞を含んでなるもの、特にその性質および位置が以下の表5で確認されるもの、または本発明に従うSPG4遺伝子の突然変異を同定するための方法を用いて同定され得るものもまた好ましい。
【0083】
本発明の哺乳類の中でも、本発明のスパスチンをコードする遺伝子が機能的でないか、またはノックアウトされていることを特徴とする、マウス、ラットまたはウサギなどの動物も好ましい。
【0084】
本明細書でさらに特に有利な動物モデルには、特に、
SPG4遺伝子の2つの対立遺伝子配列のうち少なくとも一方に、その位置および性質が表5で確認されるか、または本発明に従う方法を用いて同定される少なくとも1つの突然変異を有するトランスジェニック動物(これらのトランスジェニック動物は例えば胚幹細胞における相同組換え、これらの幹細胞の胚への導入、生殖系細胞に作用するキメラの選択および該キメラの増殖によって得られる);
本発明の突然変異の1つが導入され得るSPG4遺伝子を過剰発現するトランスジェニック動物(好ましくはマウス)(このマウスは例えば本来、または組織種選択的に偏在する強いプロモーターの制御下での遺伝子コピーの徒論巣Fe句ションにより、あるいはウイルス転写後に得られる);
LOXP/CREレコンビナーゼ系(Rohlmann et al., 1996)またはこの遺伝子の発現を不活性化する他のいずれかの系を用いて不活性化することによる本発明のSPG4遺伝子の欠失を作り出したトランスジェニック動物(好ましくはマウス)
がある。
【0085】
本発明の細胞および哺乳類は以下に記載されるように本発明のポリペプチドを生産する方法に使用できるし、また解析およびDNA(ゲノムまたはcDNA)ライブラリースクリーニングのためモデルとしても使用できる。
【0086】
このように上記の形質転換細胞または哺乳類は本発明のポリペプチドと、本発明のポリペプチドの活性に直接的または間接的に関わる化学またはタンパク質化合物との間の相互作用を調べるためにモデルとして使用することができ、これは働きを持つようになる種々のメカニズムや相互作用を調べるためともなる。
【0087】
それらは特に本発明のポリペプチド、特に本発明の配列番号3の配列のヒト・スパスチンまたはその変異体と、補因子として、あるいは阻害剤、特に競合阻害剤として(すなわちこれらは本発明のポリペプチドの活性に対してアゴニストまたはアンタゴニスト活性を有する)相互作用する産物を選択するのに使用できる。好ましくは該形質転換細胞またはトランスジェニック動物は特に上記のSPG4遺伝子と関連している病状に対抗することができる産物の選択を可能にするモデルとして使用される。
【0088】
本発明はまた、本発明のポリペプチドと直接的または間接的に相互作用し得る、かつ/またはこれらのポリペプチドの発現もしくは活性を調整し得る化学または生化学化合物をスクリーニングするための、本発明の細胞、哺乳類またはポリペプチドの使用に関する。
【0089】
本発明はまた、組換えポリペプチドを合成するための、本発明の核酸配列の使用に関する。
【0090】
組換え型で本発明のポリペプチドを生産する方法はそれ自体本発明に含まれ、形質転換細胞、特に本発明の細胞または哺乳類が本発明の核酸配列によりコードされている組換えポリペプチドを発現させる条件下で培養して組換えポリペプチドを回収することを特徴とする。
【0091】
前記の生産方法を用いて得ることができる組換えポリペプチドもまた本発明の一部をなす。
【0092】
上記のようにして得られた組換えポリペプチドはグリコシル化形態および非グリコシル化形態のいずれであってもよく、天然の三次構造を持っていても持っていなくともよい。
【0093】
これらのポリペプチドは当業者に公知の組換えポリペプチド生産法に従って、上記に定義された核酸配列に基づいて生産できる。この場合、使用される核酸配列は細胞宿主内でその発現が可能となるシグナルの制御下に置かれる。
【0094】
組換えポリペプチドの生産に有効な系は本発明のベクターおよび宿主細胞を必要とする。
【0095】
これらの細胞は上記で定義されたベクターに挿入されたヌクレオチド配列を宿主細胞に導入し、次いでトランスフェクトされたヌクレオチド配列の複製および/または発現させる条件下で該細胞を培養することによって得ることができる。
【0096】
使用される組換えポリペプチド精製法は当業者には公知である。組換えポリペプチドは細微溶解物および抽出物から、および/または培地上清から、分画、クロマトグラフィー法、モノクローナルまたはポリクローナル抗体を用いる免疫親和性技術などといった個々に使用される、または併用される方法により精製することができる。
【0097】
本発明のポリペプチドは、化学合成により(これは多くの公知のペプチド合成法の1つ、例えば固相を手段とする技術、もしくは部分的固相技術を用いる技術を用いる)、あるいは断片の縮合または通常の溶液合成によって得ることができる。
【0098】
固相合成法は当業者に十分公知である。特にStewart et al.(1984)およびBodansky (1984)を参照。
【0099】
化学合成によって得られ、かつ、対応する非天然アミノ酸を含み得るポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0100】
本発明のポリペプチドを特異的に認識し得ることを特徴とするモノクローナルもしくはポリクローナル抗体またはその断片、キメラ抗体、あるいは免疫複合体も本発明の一部をなす。
【0101】
特に通常の手順に従い遺伝子組換えまたはペプチド合成によって作製された特異的ポリクローナル抗体は本発明のポリペプチドに対して免疫化された動物の血清から得ることができる。
【0102】
本発明のあるポリペプチド、その変異体または免疫フラグメントを特異的に認識する抗体が有利であることが特に記載される。
【0103】
特異的モノクローナル抗体はKohler and Milstein, 1975によって記載された通常のハイブリドーマ培養法に従って得ることができる。
【0104】
本発明の抗体は例えばキメラ抗体、ヒト化抗体、またはFabもしくはF(ab’)フラグメントである。それらはまた検出可能かつ/または定量可能なシグナルを得るために標識抗体または免疫複合体の形態であってもよい。
【0105】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを検出および/または精製する方法であって、本発明の抗体を使用することを特徴とする方法に関する。
【0106】
本発明はまた、本発明の方法を用いて得られる精製ポリペプチドを含んでなる。
【0107】
さらにポリペプチドを精製するためのそれらの使用の他、本発明の抗体、特にモノクローナル抗体はまた生物学的サンプルにおいてこれらのポリペプチドを検出するのに使用できる。
【0108】
このようにそれらは例えば免疫蛍光もしくは金標識により、または酵素的免疫複合体を用い、特異的組織切片において本発明のポリペプチド、特に配列番号3の配列のポリペプチドまたはその変異体の配列を免疫細胞化学的または免疫組織化学的に解析する手段からなる。
【0109】
それらは特に、生物学的サンプルまたは組織におけるこれらのポリペプチドの異常な発現を証明することを可能にし、これによって疾病の進行の監視や分子診断に有用なものとなる。
【0110】
さらに一般的には、本発明の抗体は、本発明の正常なまたは変異型のポリペプチドの発現が認められるはずであるいずれの状況にも有利に使用できる。
【0111】
本発明に従い対立遺伝子変異性、突然変異、欠失、異形接合性の欠如、またはSPG4遺伝子のいずれかの遺伝的異常性を調べる方法であって、本発明の核酸配列または抗体を用いることを特徴とする方法もまた本発明の一部をなす。
【0112】
このように本発明はSPG4遺伝子に関連した病状の遺伝子型診断法であって、本発明の核酸配列を用いることを特徴とする方法を含む。
【0113】
好ましくは、本発明は、患者由来の生物学的サンプルを用いる、SPG4遺伝子配列の少なくとも1つの突然変異の存在に関連する疾患の遺伝子型診断法であって、以下の工程:
a)必要に応じて、解析される生物学的サンプル由来のゲノムDNAを単離し、または生物学的サンプルのRNAからのcDNAを作製し;
b)本発明のプライマーを用いて、突然変異を含むと考えられるSPG4遺伝子のDNA配列を特異的増幅させ;
c)得られた増幅産物を解析し、それらの配列とその対応する正常なSPG4遺伝子配列との比較する、
ことを含むことを特徴とする方法に関する。
【0114】
本発明はまた、SPG4遺伝子によりコードされているポリペプチド、特に配列番号3の配列のポリペプチドの異常な発現に関連する疾病を診断する方法であって、そのポリペプチドとその抗体との特異的な免疫学的複合体の形成を可能にする条件下で本発明の1以上の抗体と試験される生物学的材料とを接触させて、形成される可能性のある免疫学的複合体を検出および/または定量することを特徴とする方法に関する。
【0115】
これらの方法は例えば、患者由来の生物学的サンプルを用いて上記の配列のうち少なくとも1つにおける突然変異の存在を調べることによる、本発明に従うSPG4遺伝子における突然変異の存在に関連するAD−HSPの診断法、特に出生前診断法に向けられる。解析される核酸配列は等しくゲノムDNAであっても、cDNAであっても、あるいはmRNAであってもよい。
【0116】
本発明に基づく核酸または抗体はまた、患者における陽性診断、またはリスクのある個体、特に家系に疾病履歴を持つ個体における前徴候診断を可能にするために用いてもよい。
【0117】
もちろん野生型遺伝子に対してある遺伝子の突然変異を証明することが可能な極めて多くの方法が存在する。それらは本質的に2つの主要なカテゴリーに分類できる。第1のタイプの方法は、変異型配列とその対応する野生型配列とを比較することによって突然変異の存在を検出するものであり、第2のタイプの方法は、例えば突然変異の存在による誤対合の証拠によって突然変異の存在を間接的に検出するものである。
【0118】
これらの方法では記載されている本発明のプローブおよびプライマーを使用できる。それらは通常、少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは20、25または30個のヌクレオチドを含んでなる精製された核酸ハイブリダイゼーション配列であり、本発明の核酸配列と特異的にハイブリダイズし得ることを特等とする。
【0119】
好ましくは特異的ハイブリダイゼーション条件は上記または実施例に記載されているようなものである。これらの核酸ハイブリダイゼーション配列の長さは15、20または30〜200ヌクレオチド、好ましくは10〜50ヌクレオチドの範囲であってよい。
【0120】
対立遺伝子変異性、突然変異、欠失、異形接合性の欠如、または遺伝的異常性を調べる方法の中でも、本発明の核酸配列を有するプライマー対を用いる、異常性があると思われる本発明の標的配列に関する少なくとも1つのいわゆるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)またはPCR様増幅工程を含む方法が好ましい。これらの増幅産物は標的とされる産物の検出およびアッセイを行う前に好適な制限酵素で処理してもよい。
【0121】
本発明のSPG4遺伝子の突然変異はその翻訳産物の種々の改変の原因であり得、これらの改変はおそらく診断的アプローチに使用できる。具体的にはこれらの突然変異に関連する抗原性の改変は特異的抗体の開発を可能とすると考えられる。変異型の遺伝子産物はこれらの方法を用いて識別できる。これらの改変は総て例えばRIAまたはELISAのような、正常なポリペプチドまたは変態を認識するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用に基づいたいくつかの十分公知な方法を用いて診断的アプローチに利用できる。
【0122】
このように本発明の主題はまた、以下の化合物群から選択される少なくとも1つの化合物:
a)本発明の特にプライマーまたはプローブとしての核酸;および
b)本発明の抗体
を含んでなることを特徴とする、本発明に従うSPG4遺伝子における突然変異の存在に関連するAD−HSPを特に診断するための診断キットまたはパックでもある。
【0123】
もう1つの態様では、本発明はSPG4遺伝子に関連するAD−HSPを予防および/または治療することができる化学化合物または生化学化合物を選択する方法であって、本発明の核酸配列、本発明のポリペプチド、本発明のベクター、本発明の細胞、本発明の哺乳類または本発明の抗体を使用することを特徴とする方法を含む。
【0124】
本発明のポリペプチドと、または本発明の核酸と直接的または間接的に相互作用し得る化学化合物または生化学化合物を選択し、かつ/またはこれらのポリペプチドの発現もしくは活性を調整することを可能とする方法であって、本発明のポリペプチド、本発明の形質転換細胞または本発明の哺乳類と候補化合物とを接触させて該ポリペプチドの活性の改変を検出することを含む方法も本発明に含まれる。
【0125】
例えば、限定するものではないが、マッチメーカー・ツー・ハイブリッド・システム2など、細菌または酵母のツーハイブリッド系を、マッチメーカー・ツー・ハイブリッド・システム2(カタログ番号K1604−1, Clontech)とともに提供されている取扱い説明書に従って用いて、本発明のポリペプチドと相互作用し得る分子を同定する方法が挙げられる。
【0126】
本発明に従いSPG4遺伝子のプロモーターおよび/または調節配列と相互作用するタンパク質をコードしている核酸はClontech製のマッチメーカー・ワン・ハイブリッド・システムキット(カタログ番号K1603−)とともに提供されている取扱い説明書に記載されるもののようなワンハイブリッド系を用いてスクリーニングおよび/または選択することができる。
【0127】
その他の態様では、本発明は、SPG4遺伝子の発現または活性を調べるための本発明の核酸もしくはポリペプチド、本発明のベクター、本発明の細胞、または本発明の哺乳類の使用を含む。
【0128】
本発明のその他の特徴および利点は実施例および図面を示す本明細書の以下の説明で明らかにする。なお、図面の説明は以下に示されている。
【実施例】
【0129】
例1:材料および方法
1)候補領域のサブクローニングおよび配列決定
2種のヒトゲノムライブラリー、CITB_978_SKB(Research Geneticsgが販売)およびRPCI−11(Osoegawa et al., 1998)を起源とし、SPG4範囲を包含する12のBACを選択し、配列決定した(Hazan et al., Genomics, 60 (3), 309-19, 1999)。各BACの40μgのDNAをCviJI制限酵素(CHIMERx)で部分的に消化し、0.4%LMPアガロースゲル(FMC)での電気泳動により分離した。そのサイズが3.5および10kbの領域で変化するDNA画分をβ−アガラーゼ(Biolabs)で溶出し、予め、Smalで消化して脱リン酸化したプラスミドベクターpBAM3と5×ベクターにつき1×挿入物の割合で連結した。エレクトロコンピテント大腸菌(E. coli)DH10B菌(GIBCO-BRL)をエレクトロポレーションにより種々の連結物で形質転換した。各BACより、20%が10kbの挿入物を有するクローン、40%が5kbの挿入物を有するクローンおよび40%が3kbの挿入物を有するクローンからなる、約1000〜1500のサブクローン(8〜10当量のゲノム)を単離した。これらのクローンの挿入物の末端をLICOR4200自動シーケンサーで配列決定した。各BACの配列をPhredおよびPhrapプログラムを用いていくつかのコンティグからなる主鎖に構成した。各コンティグ間のホールを標識したジデオキシヌクレオチドを用いてABI377シーケンサー(PE-Applied Biosystems)で配列決定した。これらの配列コンティグに含まれるエキソンをGRAIL II、GENSCAN、FGENEHおよびGenieコンピュータプログラムを用いて推定した。またその配列をBLASTNおよびBLASTXプログラムを用いてEMBLおよびGenBank核酸およびタンパク質データベースにおいて比較した。プロモーター配列の決定はTSSGおよびTSSWコンピュータプログラムを用いて行った。これら総ての配列解析の結果をGenotator配列注解プログラムを用いて視覚化した。
【0130】
2)cDNAクローニング
SPG4遺伝子のcDNAをMarathon cDNA増幅キット(Clontech)を用いて製造業者の教示に従い、胎児脳、成人脳および成人肝臓のポリA+RNAにおける5’および3’RACE−PCR試験により単離した。種々のプライマー対を用い、第1のPCRに次ぎに内部PCRを行った。そのプライマーの配列を以下の表1に示す。
【0131】
【表1】

【0132】
RACE−PCR産物をTA−クローニングキットを用いてクローニングし、その対応するクローンをABI377(PE-Applied Biosystems)で配列決定した。SPG4転写物の配列は6人の健康な個体のリンパ芽球由来のcDNA集団から増幅したPCR産物の配列決定により確認した。
【0133】
3)突然変異の検出
調査される家系の1患者と6人の対照個体のリンパ芽球株からRNA PLUSRキット(bioprobe Systems)を用いて全RNAを抽出した。cDNA合成を標準条件下で、ランダム6量体プライマー(Pharmacia)100pmolおよびSuperscript II逆転写酵素(Gibco BRL)200単位を用いて、RNA500ng〜1μgにおいて行った。親および対照のcDNAにおいてSPG4オープンリーディングフレームの総てを包含する重複断片を生ずる4種のPCR増幅を行った。断片IをSPA_Db/SPA_Dmプライマーを用い、次いでSPA_Dc/SPA_Dnプライマーを用いて、内部PCRにより増幅した。断片II、IIIおよびIVを各々、SPA_Ad/SPA_Am、SPA_Ba/SPA_BmおよびSPA_Ca/SPA_Cmプライマー(表1にあるこれらのプライマーの配列を参照)を用いて増幅した。各々の増幅をcDNA4μl(−1/7番目の調製物)、各プライマー20pmol、dNTP200μM、KCl50mM、Tris10mM、pH9、1.5mM MgCl、tritonX−100 0.1%、ゼラチン0.01%およびTaqポリメラーゼ(Cetus−PE)2.5単位を含有する全量50μlで行った。PCR反応は「ホットスタート」プロセスに従い行った:94℃で5分間の最初の変性工程後にTaqポリメラーゼを92℃で加える。次ぎにサンプルを変性(94℃で40秒間)、ハイブリダイゼーション(55℃で50秒間、断片Iを除く:58℃で50秒間)および伸長(72℃で1分間)、次ぎに最終伸長工程(72℃で5分間)35サイクルに付す。PCR産物を断片I、II、IIIおよびIV各々に対して、SPA_Dc/SPA_Dn、SPA_Ac/SPA_An、SPA_Bb/SPA_BnおよびSPA_Cb/SPA_Cmプライマーを用いてABI377自動シーケンサー(PE-Applied Biosystems)で配列決定した。
【0134】
また親および対照のSPG4遺伝子の17の推定エキソンを配列決定することにより突然変異を探し、または確認した。各エキソンをエキソン1(gSPAex1c/gSPAex1m)、およびgSPAex10a/gSPAex12mおよびgSPAex11a/gSPAex12mプライマー対を用いて同時増幅されるエキソン10、11および12を除く、対応する「a+m」プライマー対(以下の表2参照)を用いて増幅した。
【0135】
【表2】


【0136】
アドバンテージGCゲノムPCRキット(Clontech) を用いて製造業者の教示に従い増幅されるエキソン1以外には、4種のわずかに異なるPCRプログラム(1、2、3および4)を用いてSPG4エキソン(表2参照)を増幅した。増幅は総て、ゲノムDNA100ng、各プライマー50pmol、dNTP250μM、1×TakaraバッファーおよびTakara La Taq Taqポリメラーゼ(Shuzo Co.)1単位を含有する容量50μlで行った。PCR反応は「ホットスタート」プロセスに従い行った:96℃で5分間の最初の変性工程後にTaqポリメラーゼを94℃で加える。次ぎにサンプルを変性(94℃で40秒間)、ハイブリダイゼーション(プログラム1:60℃で50秒間、プログラム2:58℃で50秒間、プログラム3および4:55℃で50秒間)および伸長(プログラム1および4:72℃で1分間、プログラム2および3:72℃で40秒間)、次ぎに最終伸長工程(72℃で10分間)30サイクルに付す。これらのPCR産物の配列決定をPCRプライマーまたは「b」および「n」と呼ばれる内部プライマー(表2参照)のいずれかを用いてABI377シーケンサー(PE-Applied Biosystems)で行った。
【0137】
4)SPG4の同定
ネズミ・オルトログSPG4に対応するマウス胚盤胞およびE8胚cDNAライブラリー由来のcDNAクローン977312(EST AA560327)および568234(EST AA107866)をIMAGEコンソーシアムを用いて単離し、ABI377シーケンサー(PE-Applied Biosystems)で実験室で配列決定した。SPG4およびそのネズミ・オルトログSPG4の発現プロフィールを調べるために、種々の胎児ならびに成人ヒト組織、およびまたマウス組織(MTCパネル、Clontech)由来のcDNAコレクションを、ヒトcDNAについてはSPA_Ca/SPA_Cmプライマー対を用いた、およびマウスcDNAについてはSPA_Ca/spam(spam:5’−ACCGAAGTCAAGAGCCTATC−3’)対を用いたPCRにより製造業者のプロトコールに従って調べた。PCR条件は、サンプルを成人ヒト組織ならびにマウス組織由来のcDNAについては32サイクル、および胎児組織由来のcDNAについては28サイクルに付したことを除き、リンパ芽球株cDNA由来のSPG4の増幅に用いるもの(§突然変異の検出参照)である。増幅産物を2%LMPアガロースゲルでの電気泳動により泳動させた。
【0138】
5)患者由来の筋肉生検の組織学的解析
Casari et al., 1998に記載された標準的な方法によりSPG4遺伝子座に関する家系の患者由来の筋肉生検において組織学的かつ組織酵素解析を行った。
【0139】
6)公開データベースにおける受託番号
SPG4(またはSPAST)cDNAおよび推定タンパク質配列、GenBank/EMBL AJ246001;不完全Spg4 cDNAクローン、GenBank/EMBL AJ246002;SPG4(またはSPAST)遺伝子、GenBank/EMBL AJ246003。
【0140】
例2:SPG4遺伝子範囲の配列解析
組換え結果の解析によりSPG4候補領域をD2S352およびD2S2347マーカー(19、20)間0cMの遺伝子範囲に限定することが可能になる。37BACからなるSPG4範囲の予備配列決定マップを作製した(Hazan et al., in press in Genomics);候補領域は約1.5Mbの物理的距離に及んでいる。クローンAおよびE間の4kbの単一ホールを除く、SPG4領域にわたって伸びている12の重複BACを選択し、配列決定した(図1A)。注目される領域の約70%に及んでいるこれらの7のBAC(A、B、C、D、E、FおよびG)はすでに配列決定されている。これらの7のBAC配列を核酸およびタンパク質データベースのものと比較し、4種のエキソン推定プログラムを用いて解析した。これらの予備的配列解析により、キサンチンデヒドロゲナーゼ、ステロイドSα−レダクターゼ2およびTGFβ結合タンパク質をコードする遺伝子に対応する3つを含む、14の可能性ある転写単位を示すことが可能になる。配列解析により検出された14の遺伝子のうち9つのものはすでにEST(「Expressed Sequence Taq」)データベースにおいて確認されており、SPG4範囲に位置していた(Hazan et al., in press in Genomics):残る5つの遺伝子は候補領域の配列決定により同定のみできる。これら5つの新規遺伝子の1つはそのコード領域の3’においてAAAタンパク質系をコードする遺伝子と相同性を示した(Confalonieri et al., 1995)。より完全な配列解析により、SPG4(またはSPAST)と呼ばれるこの遺伝子が17のエキソンからなり、かつ2つの隣接するBACクローン、DおよびGに包含される約90kbの領域にわたっていることが示された(図1B参照)。この遺伝子の最初の3つの推定エキソンは用いられる4種の推定プログラムのうちの2種、GRAIL IIおよびGENSCAN(それらはマウス胚盤胞EST、AA560327と強い相同性を示す)によりBAC Dにおいて同定された。最後の14のエキソンはBAC Gにおいて見出せる。エキソン7〜17から推定されるタンパク質配列はYta6p(Schnail et al., 1994)、TBP6(Schnail et al., 1994)およびEnd13酵母タンパク質、またSKD1マウスタンパク質(Perier et al., 1994)も含む、AAA系サブクラスと有意に相同である。
【0141】
4種のエキソン推定プログラムのうちFGENEHが最も信頼性がありかつ最も能力が優れており、2p21〜22のこの染色体領域の大部分の遺伝子の検出を可能にすると思われる。この所見はまたSPG4遺伝子にも当てはまる。この15のエキソンはこのプログラムを用いて示されるが、4、9または11のエキソンだけは各々、Genie、GRAIL IIおよびGENSCANプログラムを用いて位置決定する。次ぎにこの遺伝子のゲノム構成(図1B)をSPG4cDNAの配列を決定することにより確認する。イントロン/エキソン連結については以下の表3に示す:エキソンサイズは41bp(エキソン16)〜1.410kb(エキソン17)の範囲にわたっており、イントロンサイズは140bp(イントロン11)〜23.247kb(イントロン1)の範囲にわたっている。
【0142】
【表3】

【0143】
例3:SPG4cDNAの同定
成人肝臓ならびに脳および胎児脳cDNAのコレクションにおいて5’および3’RACE−PCRにより数度の連続増幅を行い、SPG4転写物の同定を行った。転写物の5’領域がGC高含量であることから(90%のGCはnt263位の前に置かれた60bpにある)、総ての5’RACE−PCRによりSPG4cDNAのnt263位で終結する(図2)増幅産物を得た。コード領域の総てを包含する4つの重複PCR産物を6人の対照個体のリンパ芽球由来のcDNAから増幅し、SPG4転写物の配列を確かめる補助手段により完全に配列決定した。PCRおよびRACE−PCR産物総ての配列を調節することにより125bpの非翻訳5’領域(「5’非翻訳領域」の代わりに5’UTR)を前に置いた1848bpのオープンリーディングフレーム、さらに後に続くポリAテール上流〜35bpのnt3227−3232位間のポリアデニル化部位を含む(図2)1290bpの3’UTR領域を含んでなる、3263bpの配列を再構築することができる。SPG4cDNAとESTデータバンクとの比較により、第2のポリアデニル化部位を含んでなるさらに延長された3’非コード領域(+180bp)を含むEST N47973をはじめとする6人のヒトESTとの有意な相同性を検出することができる。翻訳開始部位を、プリンがイニシエーターATGの3nt上流に配置され、それ自身が停止コドンを前に置かれることとなる翻訳開始に「好適な関係」として定義されるコサック共通配列(CTGTGAatgA)の存在により同定した。3263bpのcDNA配列はSPG4遺伝子の17のエキソンから推定される転写配列と同一である。TSSGおよびTSSWコンピュータプログラムを用いる5’領域の配列解析によりエキソン1のnt1位の43bp上流に配置されたTATAボックス型のプロモーター配列の存在が示される。
【0144】
例4:SPG4遺伝子における突然変異
SPG4遺伝子座が関連した家系の14人の患者(各家系から1人の患者)のリンパ芽球由来のSPG4 cDNAにおいてヘテロ接合突然変異を調べた。14人の患者と、また6人の健康な対照個体においてSPG4 cDNAのオープンリーディングフレームを包含する4つの重複PCR断片I、II、IIIおよびIVを増幅し、配列決定した。PCR断片IVのアガロースゲル電気泳動により、スイスの同じ地域に源を発する家系2992、5226および5330の3人の患者ではスプライス部位の微量欠失または突然変異を示す同じ強度の3つのバンドが示された;家系2992および5330の2人の健康な個体には2つの付加的なバンドは存在しなかった(図3A)。これらの3家系の患者ではエキソン16のゲノム配列によりイントロン15のスプライス受容部位(AG)のヘテロ接合A→G突然変異が示された(図3B);この突然変異はエキソン16の欠失の後、異常転写物におけるリーディングフレームシフトを引き起こすものである。夫および妻をはじめとする健康な構成員のうち、スプライス部位のこの突然変異を有するものはいない。これらのスイスの3家系の総ての患者における同一突然変異の同定により、おそらくはハプロタイプの研究により示された共通の祖先の存在が立証される。
【0145】
アミノ酸置換をタンパク質配列(S362C、C448YおよびR499C)に導入する3つの点突然変異、1210C→G、1468G→Aおよび1620C→Tが、各々家系624、4014および618の患者におけるPCR断片IIIおよびIVを配列決定することにより示された。これらの3つの置換総てにはタンパク質配列におけるシステインの欠失または挿入を誘導するシステイン残基が含まれる。465個のアミノ酸(aa)からなる末端切断型タンパク質を誘導する停止コドンを出現させる1bpの欠失、1520delTをA家系の患者において検出した。以下の表4に概略を示す5つの突然変異はいずれも、彼らが本明細書において調べた7家系の健康な兄弟姉妹または配偶者のいずれであろうと、調べた対照個体では見られなかった。これらの5つの突然変異はAAA系の総ての構成員においてATPアーゼ活性を担うと推定されるいくつかのタンパク質モチーフからなる非常に保存されたドメイン、またはAAAカセット(Beyer, 1997)のタンパク質配列に重大な影響を与える。
【0146】
【表4】

【0147】
上記のこれらの5つの突然変異に加え、その他の36の家系のAD−HSP患者においてヘテロ接合突然変異の研究を行い、SPG4遺伝子の発現産物を改変するまたは改変すると思われるその他の34の突然変異を示すことができた。
【0148】
これらその他の34の突然変異の特徴を、上記の最初の5つの変異も加えて以下の表5に概略を示している。
【0149】
【表5】


【0150】
例5:スパスチンのタンパク質配列の解析
SPG4のオープンリーディングフレームはスパスチンと呼ばれ、その分子量が約67.2キロダルトン(kD)である616aaタンパク質をコードする。タンパク質データベースのこのアミノ酸配列をBLASTプログラムを用いて比較することにより、スパスチンのC末端においてAAA系のいくつかの構成員と著しく相同である領域を示すことができた。AAAカセットに含まれるAAA系の「典型的」モチーフはProDomおよびPrositeタンパク質ドメインデータベースにおける配列比較により342位と599位との間に確認される(図2参照)。WalkerAならびにBモチーフおよびまたAAAタンパク質の最小共通モチーフを含む3つの保存された典型的ドメインはそれぞれ、aa382〜389、437〜442および480〜498位のAAAカセットにおいて確認される(図2)。ATP結合ドメインに対応し、p−ループとも呼ばれるWalkerAモチーフ、「GPPGNGKT」およびBモチーフ、「IIFIDE」はスパスチンをはじめとしてAAA系の総ての構成員の間で非常に保存される。
【0151】
進化上極めて遠い生物由来のこのATPアーゼ系の150のタンパク質に存在するAAAカセットを比較することにより、この群のタンパク質を確認されたAAAカセット数(1または2)およびこれらの種々のカセット間の配列相同性(Beyer, 1997)に関して、いくつかの部分群に分類することができる。AAA系の総てのタンパク質のうち、スパスチンはAAAの特定のサブクラスと、より詳しくは問題の生物体のゲノムの完全な配列決定によりその大部分が同定された次のタンパク質:シーノラブディチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)の2つのタンパク質、O16299およびQ18128;サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の26Sプロテアソーム2つのサブユニット、Yta6p(Q02845)およびTBP6(P40326)(Schnail et al., 1994);シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)のプロテアソームのサブユニット(O43078);S.セレビシエのSAP1(P39955)およびEND13(P52917)タンパク質およびネズミSKD1タンパク質(P46467)(Perier et al., 1994)とより著しい相同性を示している。スパスチンとこれら8種のタンパク質との多数のアライメントを図4Aに示している。AAAカセットを含む257個のアミノ酸(aa342〜599位)のうち、スパスチンはYta6p(Q02845)酵母タンパク質、O16299線虫類タンパク質およびTBP6(P40326)酵母タンパク質とそれぞれ、52%、51%および50%の配列同一性を示している。ProDomデータベースにおいてスパスチンのタンパク質配列を解析することにより同様の結果が得られた。ここでは酵母の26Sプロテアソームの推定サブユニットで見られる相同な3つのドメインの存在(92、179および6226と呼ばれ、aa342〜409位、411〜509位および512〜599位に対応している)が示された。さらにこのAAA部分群の構成員は共通してロイシンジッパー型モチーフを含んでおり、このうち2つがPrositeデータベースにおいて配列を解析することにより、aa50〜78位および508〜529位のスパスチンのタンパク質配列において検出できた(図2参照)。またこの解析によりaa478〜486位間に確認されるヘリックスループの二量体化モチーフ−ヘリックス型の存在も推定できた。
【0152】
スパスチンのタンパク質配列とAFG3、RCA1およびYME1酵母タンパク質などのミトコンドリアメタロプロテアーゼ、およびさらに稀少型AR−HSPに関連するパラプレギンのものとを比較することにより、AAA系のこれら5つの構成員間の相同性がAAAカセットを含む257aa領域に限定されることがわかる(図4B)。この領域においてスパスチンとパラプレギンとの配列同一性はわずか29%であるが、タンパク質配列のこの同一部分でパラプレギンとAFG3酵母タンパク質とは57%同一である。この配列比較によりスパスチンがパラプレギンおよび他のミトコンドリアメタロプロテアーゼのように、同じAAA部分群に属していないことが示される。さらに、タンパク質の細胞下分布が推定できるPSORTIIプログラムを用いるスパスチン配列のコンピュータ解析によりスパスチンが核タンパク質であることが示されることは明らかである。可能性ある核分布シグナル(NLS)、RGKKKはaa7〜11位間に示されたが、パラプレギンでの観察とは異なり、ミトコンドリアへの引き入れの特徴であるシグナルペプチドは検出されなかった。
【0153】
例6:SPG4およびそのネズミ類似遺伝子Spg4の発現プロフィール
ESTデータバンクにおいてSPG4の核酸配列を比較することにより、SPG4と著しい相同性を示す数種類のヒト、ネズミおよびラットESTが検出できた。2つのネズミEST、AA560327およびAA107866に対応するマウス胚盤胞およびE8胚cDNAクローンをIMAGEコンソーシアムから得て、完全に配列決定した。これらのcDNAクローンの配列を構成することにより、1514bpの不完全オープンリーディングフレームを含む1689bpの一致配列が再構築できた。ヒトSPG4cDNAとこのマウスcDNAとを比較することにより、ネズミ転写物が翻訳開始コドンを含む5’末端において約460bpを欠失していることがわかった。マウスオープンリーディングフレームの後にポリAテール〜20bp上流にあるポリアデニル化部位を含む175bpの3’非コード領域(3’UTR)が続いている(図5)。SPG4の核酸配列およびヒトスパスチンのタンパク質配列はマウスcDNAおよび推定タンパク質配列とそれぞれ、89%(nt460〜1982位間)および96%(aa113〜616位間)の同一性を示す。このようにかなりの相同性であることから、マウス転写物がSPG4のネズミ類似遺伝子に対応していることが確認でき、従ってSpg4と呼ばれている。
【0154】
種々のヒトおよびネズミ組織(Clontech)のmRNAを含んでなるノーザンブロットのSPG4およびSpq4cDNAクローンとのハイブリダイゼーションでは10日間の暴露後、マウス精巣の2.5kb転写物に対応する極めて弱いバンド以外、いずれの納得のゆく結果も得られなかった。この遺伝子の発現レベルが低いため、SPG4およびSpq4の発現プロフィールを種々の成人および胎児組織由来の標準cDNAコレクションにおけるPCR試験により求めた(図6A〜6C参照)。ネズミSpq4遺伝子はマウス成人組織、さらにマウス胚E7〜E17期においても至る所で発現される(図6A)。Spq4のより高い発現は肝臓、骨格筋および精巣、さらに胚E15期においても検出された。胚発生期のSpq4の初期発現は公開ESTデータバンクの胚盤胞、E8胚および胚癌腫cDNAライブラリー由来のESTの存在により確認された。ヒトSPG4遺伝子はそれ自体、成人(図6B)および胎児(図6C)組織の至る所で発現されるが、胎児脳で顕著に発現されるであろう。
【0155】
例7:SPG4遺伝子座が関連したAD−HSPにおける酸化的リン酸化障害の否定
スパスチン突然変異がパラプレギンの場合と同様にミトコンドリアにおける酸化的リン酸化(OXPHOS)障害を誘発するか否かを確認するため、SPG4遺伝子座が関連した1AD−HSP家系の患者において筋生検を行った。筋生検の形態学的かつ組織酵素解析ではミトコンドリアにおけるOXPHOS障害に特徴的なRRF(「破れた赤色線維(ragged red fiber)」)型筋繊維は全く示されなかった。総ての筋繊維が正常であろうという事実、さらにはスパスチンの核分布の推定によっても、SPG4遺伝子座が関連したAD−HSPが、SPG7遺伝子座が関連したAR−HSPとは異なり、OXPHOS型のミトコンドリア疾患ではないことが示されているようである。
【0156】
1.5Mb領域の配列決定に基づく位置的クローニングアプローチを用いて、発明者らは染色体バンド2p21〜p22にすでに確認されている最も一般的な型のAD−HSPの原因となるSPG4(またはSPAST)遺伝子を同定した。SPG4遺伝子座との関連を示すAD−HSPを有する41家系の患者においてスパスチンと呼ばれる発現産物を改変するまたは改変すると思われる39の突然変異が検出できた。スパスチンは核分布すると考えられ、かつ酵母の26Sプロテアソームのサブユニットと著しい相同性を示すAAAタンパク質系の新規構成員である。AAAカセットとよばれる230〜250aaのドメインに限定された高い相同性にもかかわらず、このタンパク質系の多くの構成員は液胞内のタンパク質の輸送、細胞周期制御、細胞小器官の発生、すなわち転写制御などといった極めて多様な細胞機構に関係し得る。しかしながら、これら総ての細胞機構はタンパク質複合体の構成、機能または分解に関係しており、このことによりAAA系の構成員がいわゆる「シャペロン(chaperon)」タンパク質であることが示唆される。
【0157】
参考文献
【表6】

【表7】

【表8】

【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】SPG4の範囲およびSPG4のゲノム構成の物理的マップを示す。 図1A: 太字で示されるD2S352およびD2S2347遺伝子マーカーによって1.5Mbの候補領域が定められている。多形マーカーおよびその他のSTSの位置は標準的な文字で示され、ESTの位置はイタリックで示されている。予備配列決定マップを構成するBACクローンが四角で示され、名称が上に示され、決定されていればクローンの正確な大きさが下に示されている。BAC A、B、Cなどの名称の後には、クローンがBACライブラリーCITB_978_SKBに由来する場合には「b」で始まり、またはライブラリーRPSI−11に由来する場合には「B」で始まるクローン名を含む括弧で示されている。 図1B: SAC D(b336P14)およびG(B563N4)が重複するSPG4遺伝子の模式図。エキソン黒い四角でで示され、上にそれらの名称が示されている。 図1C: 7つのSPG4遺伝子座関連AD−HSP家系で同定されている5つの突然変異がエキソン7、11および13、ならびにイントロン15のスプライス受容部位の位置にある。
【図2】スパスチンのSPG4 cDNAの核酸およびタンパク質配列を示す。 下にある数字とともに17本の垂直な線が種々のエキソン間の連結を示している。ATG開始コドンはnt126〜128番に位置し、終結に関する停止コドンはnt1974〜1976番に位置している。エキソン16の欠失を含むこれまでに確認された5つの突然変異はイタリックで示されている(nt1210、nt1468、nt1520、nt1620およびエキソン16の欠失に関するnt1813〜1853)。ポリアデニル化部位は下線を施したイタリックで示されている。推定核局在化シグナル(NLS)、RGKKK、またProDomデータベースにおける解析によって推定された3つの保存されたドメインはそれぞれaa7〜11番(NLS)、342〜409番(ドメイン92)、411〜509番(ドメイン179)、および512〜599番(ドメイン6226)に位置している。Prositeデーターベースにおける配列比較によって推定された4つのモチーフはaa50〜78番と508〜529番の2つの「ロイシンジッパー」、aa382〜386番のATP結合部位(またはWalker Aモチーフ)、およびaa478〜486番の「ヘリックス−ループ−ヘリックス」二量化ドメインである。Walker AおよびBモチーフ「GPPGNGKT」および「IIFIDE」、またAAA最小共通[欠文]に下線で示されている。
【図3A】3つのSPG4遺伝子座関連AD−HPS家系の影響を受けた個々のものにおけるスプライス部位突然変異の同定。 図3Aは、リンパ芽球cDNAを用いるSPG4 cDNAの断片IVのPCR増幅を示す:ウェルM、サイズマーカーVII(Boehringer);ウェル1、影響を受けていない家系2992のメンバー;ウェル2、家系2992の患者;ウェル3、影響を受けていない家系5330のメンバー;ウェル4、家系5330の患者;ウェル5、家系5226の患者;ウェル6、陰性対照(ヒトゲノムDNA)。
【図3B】3つのSPG4遺伝子座関連AD−HPS家系の影響を受けた個々のものにおけるスプライス部位突然変異の同定。 図3Bは、イントロン15のスプライス受容部位の突然変異の配列グラフを示す。上は対照個体および下は家系2992の患者のゲノム配列。nt1813〜4番のアステリスクは患者のイントロン15のスプライス受容部位の非保存的ヌクレオチドに影響を及ぼすA→Cの多形性を示している。
【図4A】スパスチンの相同性。同一の残基は網掛け領域で強調されている。 種々の生物に由来する8つのタンパク質のCLUSTAL Wによって作り出され、ヒト・スパスチンとネズミ・スパスチン(配列番号73)と強い配列相同性を有する複数のアライメント。
【図4B】スパスチンの相同性。同一の残基は網掛け領域で強調されている。 酵母メタロプロテアーゼAFG3、RCA1およびYME1、ならびにヒト・プララプレジンおよびスパスチンのCLUSTAL Wによるアライメント。
【図5】SPG4 cDNAおよびそのマウス・オルトログSpg4の核酸配列(配列番号73)のBLASTNによるアライメント。ネズミcDNAのポリアデニル化部位は下線を施したイタリックで示されている。停止コドンはネズミcDNAではnt1515〜1517番に位置し、ヒトcDNAではnt1974〜1976番に位置している。
【図6】SPG4およびそのネズミ・オルトログSpg4の発現のPCR解析。 図6A: 複数のマウス組織に由来するcDNAコレクション。ウェルM、サイズマーカーV(Boehringer);ウェル1、心臓;ウェル2、脳;ウェル3、脾臓;ウェル4、肺;ウェル5、肝臓;ウェル6、骨格筋;ウェル7、腎臓;ウェル8、精巣;ウェル9、E7 7日胚;ウェル10、E11 11日胚;ウェル11、E15 15日胚;ウェル12、E17 17日胚;ウェル13、陰性対照(ヒトゲノムDNA)。 図6B: 複数のヒト組織に由来するcDNAコレクション。ウェルM、サイズマーカーVII(Boehringer);ウェル1、脳;ウェル2、心臓;ウェル3、腎臓;ウェル4、肝臓;ウェル5、肺;ウェル6、膵臓;ウェル7、胎盤;ウェル8、骨格筋;ウェル9、陰性対照(ヒトゲノムDNA;ウェル10、陰性対照(DNAを含まず)。 図6C: 複数のヒト胎児組織に由来するcDNAコレクション。ウェルM、サイズマーカーV(Boehringer);ウェル1、脳;ウェル2、心臓;ウェル3、腎臓;ウェル4、肝臓;ウェル5、肺;ウェル6、骨格筋;ウェル7、脾臓;ウェル8、胸腺;ウェル9、陰性対照(ヒトゲノムDNA);ウェル10、陰性対照(DNAを含まず)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1、配列番号2、配列番号72、配列番号106の配列、またはこれらの配列の1つの少なくとも15個の連続するヌクレオチドの配列、
b)配列番号1、配列番号2、配列番号72、もしくは配列番号106の配列の相同体または変異体である核酸配列、および
c)a)およびb)で定義される配列に対応する相補配列またはRNA配列、からなる群から選択される配列を含んでなることを特徴とする、精製または単離されたSPG4遺伝子の核酸。
【請求項2】
受託番号AB029006としてGenBankデータバンクで確認される核酸を除く、請求項1に記載の精製または単離された核酸。
【請求項3】
配列番号2の配列、それに対して相補的な配列、またはその対応するRNAの配列についての、nt714〜809(末端を含む)断片の少なくとも15個の連続するヌクレオチドの配列を少なくとも1つ含んでなる、請求項1または2に記載の精製または単離された核酸。
【請求項4】
ヒトの本来の多形性に対応する突然変異を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の精製または単離された核酸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸配列を含んでなる、プローブまたはプライマー。
【請求項6】
該配列が配列番号4〜配列番号71の配列から選択される、請求項5に記載のプローブまたはプライマー。
【請求項7】
配列番号74〜配列番号105の配列から選択される請求項1に記載の核酸配列を含んでなる、スプライス受容部位または供与部位。
【請求項8】
cDNAまたはゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするか、またはスパスチンをコードしている単離されたゲノムまたはcDNAをクローニングする方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸配列を用いる方法。
【請求項9】
哺乳類、特にマウスのSPG4遺伝子のゲノムまたはcDNA配列を同定する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ヒトSPG4遺伝子が有する突然変異を同定する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸配列を用いる方法。
【請求項11】
常染色体性優性遺伝性痙性対麻痺の原因である突然変異を同定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
SPG4遺伝子の発現を促進および/または調節する核酸配列を同定する方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸配列を用いる方法。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法を用いて同定された核酸。
【請求項14】
請求項1〜4および13のいずれか一項に記載の核酸によりコードされているポリペプチド。
【請求項15】
好ましくはその配列が受託番号AB029006としてGenBankデータバンクで確認される584アミノ酸ペプチドを除く、請求項14に記載のポリペプチド。
【請求項16】
a)配列番号3、配列番号73、配列番号107の配列、またはこれらの配列の1つの少なくとも10個の連続するアミノ酸の配列、および
b)配列番号3、配列番号73、または配列番号107の配列の相同体または変異体である配列、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項14または15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
配列番号3の配列のaa197〜228(末端を含む)断片の少なくとも8個の連続するアミノ酸の配列を含んでなる、請求項14または15に記載のポリペプチド。
【請求項18】
ヒトの本来の多形性に対応する少なくとも1つの突然変異を有する、配列番号3、配列番号73、配列番号107の配列、および少なくとも10個の連続するアミノ酸のその断片の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項14または15に記載のポリペプチド。
【請求項19】
請求項1〜4および13のいずれか一項に記載の核酸配列を含む、クローニングおよび/または発現ベクター。
【請求項20】
宿主細胞におけるその発現に必要なエレメントを含む、請求項19に記載のベクター。
【請求項21】
請求項19または20に記載のベクターで形質転換された、宿主細胞。
【請求項22】
請求項21に記載の細胞を含んでなる、ヒトを除く哺乳類。
【請求項23】
形質転換細胞を含んでなり、SPG4遺伝子の2つの対立遺伝子の少なくとも一方の配列がヒトの本来の多形性に対応するか、または請求項10または11に記載の方法を用いて同定される少なくとも1つの突然変異を含む、請求項22に記載のヒトを除く哺乳類。
【請求項24】
核酸配列を検出および/または増幅するためのプローブまたはプライマーとしての、請求項5、6および13のいずれか一項に記載の核酸配列の使用。
【請求項25】
ゲノムまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするための、請求項1〜7および13のいずれか一項に記載の核酸配列の使用。
【請求項26】
組換えまたは合成ポリペプチドを生産するための、請求項1〜4および13のいずれか一項に記載の核酸配列の使用。
【請求項27】
組換えポリペプチドを発現させる条件下で請求項21に記載の形質転換細胞を培養してその組換えポリペプチドを回収する、組換えポリペプチドの生産方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法を用いて得られるポリペプチド。
【請求項29】
請求項14〜18および28のいずれか一項に記載のポリペプチドを特異的に認識し得る、モノもしくはポリクローナル抗体、またはそれらの断片、キメラ抗体もしくは免疫複合体。
【請求項30】
請求項14〜18および28のいずれか一項に記載のポリペプチドを検出および/または精製する方法であって、請求項29に記載の抗体を用いる方法。
【請求項31】
SPG4遺伝子に関連するAD−HSPの遺伝子型診断法であって、請求項1〜7および13のいずれか一項に記載の核酸配列を用いる方法。
【請求項32】
患者由来の生物学的サンプルを用いる、SPG4遺伝子配列の少なくとも1つの突然変異の存在に関連するAD−HSPの遺伝子型診断法であって、
以下の工程:
a)必要に応じて、解析される生物学的サンプル由来のゲノムDNAを単離し、または生物学的サンプルのRNAからのcDNAを作製し、
b)請求項5および6のいずれか一項に記載のプライマーまたは請求項13に記載の核酸を用いて、突然変異を含むと考えられるSPG4遺伝子の前記DNA配列を特異的増幅させ、
c)得られた増幅産物の解析し、それらの配列とその対応する正常なSPG4遺伝子配列との比較する、
ことを含んでなる方法。
【請求項33】
SPG4遺伝子によりコードされているポリペプチドの異常な発現に関連するAD−HSPを診断する方法であって、
そのポリペプチドとその抗体との特異的な免疫学的複合体の形成を可能にする条件下で請求項29に記載の1以上の抗体と、試験される生物学的材料とを接触させて、形成される可能性のある免疫学的複合体を検出および/または定量する、方法。
【請求項34】
請求項14〜18および28のいずれか一項に記載のポリペプチド、または請求項1〜7および13のいずれか一項に記載の核酸と、直接的または間接的に相互作用でき、かつ/またはこれらのポリペプチドの発現または活性を調整することを可能にする、化学的もしくは生化学的化合物を選択する方法であって、
請求項1〜7および13のいずれか一項に記載の核酸、請求項14〜18および28のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項19および20のいずれか一項に記載のベクター、請求項21に記載の細胞、請求項22および23のいずれか一項に記載の哺乳類、または請求項29に記載の抗体と、候補化合物とを接触させて、そのポリペプチドの活性の改変を検出する、方法。
【請求項35】
SPG4遺伝子の発現または活性を調べるための、請求項1〜7および13のいずれか一項に記載の核酸配列、請求項14〜18および28のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項19および20のいずれか一項に記載のベクター、請求項21に記載の細胞、請求項22および23のいずれか一項に記載の哺乳類または請求項29に記載の抗体の使用。
【請求項36】
以下の化合物の群から選択される少なくとも一種の化合物を含んでなる、診断キットまたはパック。
a)請求項5および6のいずれか一項に記載の核酸、および
b)請求項29に記載の抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254824(P2011−254824A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158305(P2011−158305)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2001−521734(P2001−521734)の分割
【原出願日】平成12年9月4日(2000.9.4)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】