説明

最大電力スイッチングコンバーター

【課題】 太陽電池等にてピーク電力の特性を持つ発電量を効率的に低コストで高効率及び高速応答で最大電力に制御するDC−DCスイッチングコンバーター。
【解決手段】 入力の最大電力点の特性による電圧と電流の比率より、コイルに電流の増加を設定と比較してスイッチングすることにより、追従制御することなく簡易な回路で最大電力点での作動を可能にする。また最大電力点の検出をスイッチング時間と電圧変化より検出して最大電力点を自動調整し、電圧と電流の比率を時間として数値制御し、パルス重畳によるスイッチングにて変換効率を向上させた最大電力スイッチングコンバーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、風力発電機等の出力電力にピーク電力特性を生じる発電力を最大電力となる様に調整する電力機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来,最大電力点を制御するには、計測電力によりスイッチングタイミングを制御して最大電力に追従させることが必要であり、追従制御の方法として以下の方法があり、追従制御が必要なためMPPT(max power point tracking)と一般的に呼ばれるものである。
【0003】
1 発生電力を直接計測し、最大になるように調整する方法。
規定の抵抗に出力または入力電流を流してその電圧差により電流換算するか、電流による磁界から電流を検出する方法であるが、簡易に抵抗を用いる場合は検出精度を上げるか抵抗値を上がるかしないと精度の高い検出が出来無い欠点があり、抵抗値が大きいとそのまま電力の損失となる。また、電流検出センサーを用いることは回路のコストがかった。 (たとえば特許文献1)
【0004】
2 太陽電池にあっては、発生電圧より推測した最大効率電圧に調整する方法。
電流測定が不要なため簡単な回路で実現できるため低コストで有るが、予め発電素子の性状が判明していなければならず、高効率な運転をするには制御が複雑となり、性状の判明した太陽電池以外の適用は困難であった。
また、太陽電池の解放電圧を測定している間はその太陽電池からの電力は利用できないと言う欠点もあった。
(たとえば特許文献2)
【0005】
3 入力側の電圧脈動を計測して調整パラメータとする方法。
検出演算方法が複雑であり、高性能な演算装置を必要とした。
(たとえば特許文献3)
【0006】
4 入力側の電圧/電流の比率と変動率−ΔI/ΔVの比率と同じになるよう追従制御する方法。
アナログ制御のみで制御されるが検出方法が複雑であり、追尾動作を必要とした。
(たとえば特許文献4)
【0007】
【特許文献1】特開2001−169535号公報 最大電力運転コンバータ制御装置
【特許文献2】特開2006−32612号公報 太陽電池モジュールの出力制御方法
【特許文献3】特開2005−251039号公報 太陽電池の最大電力制御方法及びその制御装置
【特許文献4】特開2002−272094号公報 最大電力動作点追尾方法及びその制御
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、複雑な追尾演算処理をすることなく、簡易な回路で応答性の良い最大電力を得る方法である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、単位パルス制御中のスイッチングによりコイル電流の増大分を入力電圧に比例させてスイッチングして、コイル電流を制御し電力量の検出及びMPPTの様に追従制御することなく、簡易な回路で応答性がよく高精度に最大電力を得ることが出来るものである。
【0010】
請求項1において、入力機器の出力電圧と出力電流の特性であるI/V出力曲線に於ける作動点の接線となる変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定比率に保持する様にスイッチングを行うことに於いて、
【0011】
図1のI/V特性曲線Aにて、動作点における入力電流は一定で入力電圧が変動した場合の特性は、入力機器のI/V特性a1aの動作点電圧のみが変動したI/V特性b1bの状態になるとしたとき、動作点I/V特性a1aのI/V接線a3aの傾き−ΔI/ΔVはI/V特性b1bのI/V接線b3bと同じ傾きで動作点電圧に電力は比例する。この時の電力はP/V特性a2aからP/V特性b2bに変化する。
【0012】
図2のI/V特性曲線Bにて、動作点における入力電圧は一定で入力電流が変動した場合の特性は、入力機器のI/V特性a1aの動作点電流のみが変動したI/V特性c1cの状態になるとしたとき、動作点I/V特性a1aのI/V接線a3aの傾き−ΔI/ΔVはI/V特性c1cのI/V接線c3cの傾きは動作点電流Iが減少することにより−ΔIも同様に減少して、I/V接線a3aの傾き−ΔI/ΔVは入力電流に比例して傾き、I/V接線c3cとI/V特性c1cの接点となる動作点の電流に電力は比例する。この時の電力はP/V特性a2aからP/V特性c2cに変化する。
【0013】
実際上は電圧または電流のみが変動することは無く、電流と電圧が連動することになるが動作点は電流電圧の変動に応じ、作動点の接線となる変動率−ΔI/ΔVの接点となる。
【0014】
また、図1及び図2の特性曲線の形状変化無い物としているが、起電力因子により垂直方向に平行移動し、内部抵抗因子により水平方向の移動が主成分であり、線形の変化は小さく大きな誤差要因とはならない。
【0015】
また発電特性のI/V特性が直線となる場合は、I/Vの比率が−ΔI/ΔVとなるI/Vは入力電圧により違う値を取るので、I/V特性における設定電圧に対するI/Vの比率になる点に作動点が特定でき、入力電圧が変化してもI/V比率は変化しないので−ΔI/ΔVと同様に電圧に対する作動点は特定される。
【0016】
−ΔI/ΔVが最大電力点となる時は、ΔP/ΔV=0でありこの時、P=VIをVで微分したΔP/ΔV=I+V・ΔI/ΔVより−ΔI/ΔV=I/Vが成り立ち、電流が変化したときは、変動率−ΔI/ΔVはIに比例するので、常に−ΔI/ΔV=I/Vとなり、ΔP/ΔV=0が保持され、電流が変化しても最大電力点になる。
【0017】
また電圧が変化したときは−ΔI/ΔVは変わらないので最大電力点と僅かながらずれを生じるが、入力の特性が変化しなければ電力に対する電圧の変化は小さいので大きな誤差は生じない。
【0018】
以上の原理により、変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持すれば、電圧及び電流が変化しても出力電力の出力比率を一定に保持が可能となる。
【0019】
請求項2において、入力機器の出力を最大電力に制御するときは、変動率−ΔI/ΔVの比率を入力機器の最大電力点における−ΔI/ΔVの比率を最大電力出力時の比率として設定することで、電圧電流の変動が生じても作動点を最大電力に保持できる。
【0020】
また、入出力負荷条件によって−ΔI/ΔVの比率設定を変更して入出力制御を行うことで、バッテリー充電時等の出力電圧の制御も可能となり、風力発電等ではトルク、回生ブレーキ発電などではブレーキ力を制御することを可能にする。
【0021】
請求項3において、変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する手段として、回路中の抵抗における電圧変動に応じてスイッチングすることにより、
【0022】
図3の昇圧動作線図において、コイル電流増分が入力電圧の一定比率となったところで、スイッチングOFFしてコイルに蓄積されたエネルギーを出力として放出し、入力電圧の回復にてスイッチングONして再度コイルに電流を流し始めるサイクルを繰り返す。
【0023】
図4の降圧動作線図においては、コイル電流増分が入力電圧の一定比率となったところで、スイッチングOFFしてコイルに蓄積されたエネルギーを出力として放出し、入力電圧の回復にてスイッチングONして再度コイルに電流を流し始めるサイクルを繰り返す。
【0024】
コイル電流はコイルのインダクタンスに反比例し、入力電圧に比例するので回路中のインダクタンスが変わらなければ電流は入力電圧に比例して増加する。
スイッチングOFFの条件としてコイル電流は入力電圧に比例するが、その比率は一定であり、変動電圧ΔV:入力電圧Vinの設定比をxとおくと、ΔI/ΔV=xとなりxの値を設定することで入力電圧に関わらず変動幅−ΔI/ΔVの比率を設定することが出来る。
【0025】
xの値は入力電圧を分圧してコイル電流増分の電圧変化と電圧比較とすることで容易に実現でき、可変抵抗で分圧比の手動調整、自動調整する場合は電子ボリューム等による抵抗の切り換えまたは入力電圧のPWM制御による分圧の手段によることもできる。
【0026】
コイル電流増分の電圧変化は回路中抵抗成分の電流変化により生じる電圧変化でよく、回路中の抵抗は抵抗特性の良い抵抗体を用いることで精度が良く制御可能であり、専用抵抗以外の回路中のスイッチング素子のオン抵抗等を利用することでも実現できる。
【0027】
また入力電流Iが変化した場合は、コイル電流に対して入力電流が変化するとコイル電流の増加率は同じであっても、入力電圧は平滑コンデンサーの容量により流れ込む電流とコイル電流の比率により入力電圧が変動して入力電流Iに反比例してスイッチングOFFの時間が変化する。
【0028】
従って時間当たりのΔIは入力電流Iに比例することになるので、入力としての変動幅−ΔI/ΔVは電流に比例することになる。
【0029】
図3及び図4はコンバーターの作動モードが電流不連続モードを示すが、入力電流が増加して電流連続モードとなったときは、臨界状態でコイル電流は連続三角波となり、臨界を超えると直流電流が付加され、入力電力に相対して電流ピークが低くなる。
この状態でも入力としての変動幅−ΔI/ΔVは電流に比例することは変わりない。
【0030】
以上の様にスイッチングを行うことで、入力の変動幅−ΔI/ΔVは電圧に対して一定で電流に比例する。
【0031】
請求項4において、変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する手段として、入力部電圧変動に応じてスイッチングすることにより、
【0032】
電流の検出は前記抵抗による電圧変化と同様に、入力電圧は平滑コンデンサーの容量に比例して変化するため、平滑コンデンサーの容量が一定であり容量が変動電流に対して十分に大きければ充放電電圧は電流に比例すると見なすことが出来るので、抵抗による電圧変化と符号が異なるだけで同様に扱うことが出来、入力電圧の変動よりスイッチングを行うことで、入力の変動幅−ΔI/ΔVは入力電圧に対して一定で電流に比例することが出来る。
【0033】
請求項5において、スイッチングON信号時に高周波パルスを重畳してスイッチングすることにより、
【0034】
入力の変動幅−ΔI/ΔVの変動サイクルでスイッチングON時間中は、変動サイクルより早い周期のON/OFF信号にてスイッチング駆動して、スイッチング一回当たりのピーク電流を小さくする。
【0035】
図5の重畳スイッチング動作線図において、入力電圧によりスイッチングONとなるスイッチング信号は高周波を重畳されて櫛歯状のスイッチ駆動となり入力電流をスイッチングする。この時入力電圧はコイル電流に応じて階段状に電圧降下する。
入力電圧がスイッチングOFF条件まで降下した時スイッチング信号はOFFとなり重畳されていた櫛歯状のスイッチング駆動は停止する。
スイッチング駆動が停止されると入力電圧は上昇してスイッチングONの状態まで復帰する。
【0036】
スイッチ駆動が櫛歯状に為されるときコイル電流は電流が電流連続モードの条件を満たすときは、直流電流と連続三角波の合成波形となり損失を小さくすることとなる。
また電流連続モードの条件に満たなくてとも、入力電流に対してピーク電流が小さくなるので損失は少なくなる。
【0037】
また、電流連続モードで作動する条件は電流に関わりなく、スイッチングのON/OFF比は入力電圧と出力電圧の比になるので測定電圧比によりON/OFF比を合わせることにより常に電流連続モードにて作動させることが出来、ダイオードに流れる電流もスイッチングのOFFの時に限定されるのでスイッチングOFF信号で制御するスイッチング素子に置き換えて同期スイッチング方式することも可能となる。
【0038】
またこの時、電流電圧の条件により電流連続モードとなるようにスイッチングタイミング及び周波数の行うことでコンバーター動作の最適化を計る。
【0039】
この時の入力の変動幅−ΔI/ΔVは、ΔIはスイッチングON時間の直流電流も含めた平均電流であり、ΔVはその間の電圧変動となる。スイッチング時間中の徴小ON/OFF時間は損失が最小となる様に設定すれば変動幅ΔI/ΔVを一定に保ちながら損失を小さくできる。
【0040】
また、コイル電流が飽和してしまった場合に於いても、重畳パルスの時間で制御するので、パルス時間と制御電流は必ず比例し従来のMPPT制御法でのパルス幅制御における操作量と変化量が不整合を起こして制御不能になることはない。
【0041】
請求項6において、入力電圧と出力電圧の条件により、昇圧作動、降圧作動、直結回路にスイッチング動作を切り換えることにより、
【0042】
前述したスイッチング方法は昇圧作動と降圧作動のスイッチは違っても動作タイミングは同じとなるので、入力電圧と出力電圧の比較をすればいずれかの作動に選択することが出来、入力電圧と出力電圧がほぼ同じになる条件であればスイッチングを停止して、昇圧スイッチング素子を開とし、降圧スイッチング素子を閉とすることで直通とすることが可能である。
【0043】
請求項7において、変動率−ΔI/ΔVの比率をスイッチングON時間として制御することにより、
【0044】
スイッチONにてコイルに流れる電流はI=1/2・(Vin/L)・tであるから、時間tはインダクタンスLが一定であれば電流I/入力電圧Vinに比例するので−ΔI/ΔVとスイッチングONの時間は比例する。
スイッチング信号ONの時間T1の時間内には徴小パルスにて制御する場合でもパルスの倍数となるだけであるから、T1は−ΔI/ΔVと比例の関係にある。
【0045】
また、スイッチング信号OFFの時間T2はVinが同電圧に復帰する時間をT2とすると、T1とT2が同じΔVの時に入力電圧は平衡となり、T2が長ければVinは上昇、短ければ降下するので入力電圧を保持する様にT2を調節すればよい。
【0046】
また、T2の時間設定として、電圧の復帰をコンパレーターの信号にて入力電圧の平衡を制御することも出来、この場合T2を制御する必要がなく応答がリアルタイムとなり制御の負荷も減少し、復帰までの時間をCPUをスリープ状態に置き制御電力を最小にすることも可能となる。
【0047】
これにより、数値(時間)制御にて−ΔI/ΔVを一定比率に保持することができる。
−ΔI/ΔVは定数Aで表すことが出来るので、最大出力点に調整するときはAの値を変動させるだけで可能になる。また電圧の復帰時間T2はスイッチングOFFの状態での平滑コンデンサーに充電される電流に反比例するのでVin/T2は電力に比例するのでAの値をVin/T2が最大点となるように設定することで可能となる。
【0048】
またT1のスイッチングを徴小パルスで行う場合は、T2=0となったときは徴小パルス幅を増大又は徴小パルスの周波数を低くして電流を増やしてT2を増加させることが出来るので、電流及び損失により適宜設定する。
【0049】
また、太陽電池では部分陰などによりP/V曲線に頂点が複数となることがある。
このようなときは−ΔI/ΔVと入力電圧が、P/V曲線の山と谷では変化率逆転が生じるので、全域スイープして最適な入力電圧で−ΔI/ΔVと入力電圧の比率となるように制御する。入力機器の代表特性をデータテーブル化しておき補正を加えてもよい。このとき−ΔI/ΔVが同じであっても電流T2の範囲を調節することにより入力電圧に対応した特定制御が可能である。
【0050】
コイルのインダクタンスLによる比例定数として、所要−ΔI/ΔVが得られるT1のパルス時間が一定であればよいので、T1パルス幅固定PFM (Pulse Frequency Modulation)にて入力電圧の変動が小さくなるようにすればよいことになる。
【0051】
T1の設定時間はタイマーICによるコンデンサーの充放電時間、CPUのタイマー等の方法により設定することが出来、数値制御時はタイマーの時間を容易に変更制御できる。
【0052】
請求項8における、変動率−ΔI/ΔVの比率をΔT1としてΔT1/ΔVの最大値または変化率の符号反転する点の−ΔI/ΔVの比率を最大電力点とすることにより、
【0053】
図6のT1/V特性曲線にて、変動率−ΔI/ΔVの比率をT1として、VinとT1の曲線の接線となるΔT1/ΔVはΔP/ΔV=0となる電力曲線の最大値に対応してΔVは最大値となり、接線の傾きの回転方向が最大点の通過により反転する。これよりT1を可変して入力電圧Vinの変動分によるΔVにより最大点の判断が可能となる
また、T1の可変スイープの方向を変えて最大値をスキャンすれば、最大値が1つであれば両者は一致し、一致しなければピークが複数あることが判断できる。
【0054】
請求項9における、スイッチングONの時間T1と入力電圧より求めたコイル蓄積電力より、最大電力点を推定することで、
【0055】
コイル蓄積電力はP=1/2・L・V^2・T1で表され、コイルのインダクタンスLが一定であると見なすと入力電圧の二乗とスイッチングON時間の積であるから、電流を計らずとも電力値を計算で求めることが容易に出来る。
【0056】
一定周波数で制御する汎用的に用いられるPWMでは、スイッチングON時間とOFF時間においては、P=Vin^2・T1により電力を推定でき、
【0057】
パルス幅固定PFMの場合は、周波数の変化による補正をしてP=Vin^2・T1/(T1+T2)より推定できる。
【発明の効果】
【0058】
以下に項目別に効果を説明する。
【0059】
請求項1において、−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する様にスイッチングを行ことによる効果は、
1 予め最大電力点を設定するのみで、入力機器の特性が変化しない限り最大点を保持できる。
2 追従、演算処理が不要なので回路が簡単で時間遅れが無く、低コストである。
3 追従制御による入力変動が無く効率がよい。
4 演算処理が無いため、高速スイッチングによるコイルの小型化が計れる。
5 制御に関わる消費電力が小さく、徴小電力から対応できる。
6 MPPTによる制御ミスマッチがなくなる。
7 入力変動に対してリアルタイム制御になる。
【0060】
請求項2において、入出力負荷条件によって−ΔI/ΔVの比率設定を変更して入出力制御することで
1 出力負荷により、出力電力を調節可能となり、バッテリーなどの充電制御が別回路の制御装置が不要となる。
2 入力負荷により、入力電力を調節可能となり、風力発電機の回転数および回転トルクを出来機械的負荷を調節することが出来る。
【0061】
請求項3において、電流を検出する手段として抵抗を用いることにより、
1 精確な検出が可能である
2 電流のピーク値の比較であるから、抵抗値を同じとすると平均電流を計測するより電圧変化が大きく計測誤差が小さくなる。
【0062】
請求項4において、電流を検出する手段として入力電圧変動用いることにより、
1 回路の直流抵抗が低減でき損失の低減が計れる。
2 平滑コンデンサーの充放電による電圧変動によれば部品の増加が無い。
【0063】
請求項5において、高周波を重畳してスイッチングすることにより、
1 ピーク電流を小さくすることが可能となり、損失の低減が計れる。
2 徴小電流から大電流まで幅広い範囲で高効率運転が可能となる。
3 コイルの磁気飽和を防ぐことが出来る。
4 直流成分電流によりコイルのインダクタンスの有効利用が出来る。
【0064】
請求項6において、昇圧作動、降圧作動、直結回路にスイッチング動作を切り換えることで
1 回路切り替えだけで入力電圧と出力電圧の制限が無くなる。
2 入力と出力が同じ電圧の時は、スイッチング回路をバイパス出来るので、スイッチング損失が無くなる。
3 出力にキャパシタ充電などの電圧変動を伴う場合であっても効率よく電力変換が可能である。
4 在来の太陽電池から直結して充電利用しているシステムに回路付加するだけで利用でき、現存のシステムの効率を上げることが容易に出来る。
【0065】
請求項7において、変動率−ΔI/ΔVの比率を時間として数値制御することにより、
1 簡単な回路で複雑な条件での制御が可能になる。
2 入力特性の多様な変化にも適切な対応することが可能。
3 出力制御などの制御も同時に行うことが出来る。
【0066】
請求項8において、−ΔV/ΔT1の最大値または変化率の反転する点の−ΔI/ΔVの比率を最大電力点とすることの効果は
1 特別なセンサーを設けることなく、自動で最大電力点にて作動させることが出来る。
2 最大点が複数生じても、最大点を入力電圧にて特定して制御できる。
【0067】
請求項9において、スイッチングONの時間T1と入力電圧より求めたコイル蓄積電力より、最大電力点を推定して最大電力点とすることの効果は
1 電流センサーを設けることなく、従来のMPPTの制御法でも用いることができ、簡易な演算のみで最大電力点にて作動させることが出来る。
2 電圧検出のみであるから、複合して検出して演算することにより最大点をより精度良く制御できる。
【0068】
以上の様な利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
本発明の1実施形態を示すものであり、基本的構成である。
以下にその各要素を実施例において説明する。
【実施例1】
【0070】
図7に昇降圧回路を示し。ハードウェアーによる電流値によるスイッチングタイミングと動作切り換えの基本構成を説明する。
【0071】
入力電圧を抵抗a17と抵抗b18にて分圧した電圧はコンデンサーa20を介してコンパレーターb13の+に入力し、入力電圧を可変抵抗16にて分圧比を調整可能にして分圧電圧をコンパレーターa12の−に入力する。
入力側グランドは入力平滑コンデンサー5を接続され、出力側グランドに電流測定抵抗15を介して接続する。
【0072】
コンパレーターa12の+とコンパレーターb13の−は出力側のグランドに接続し、コンパレーターa12の出力は分圧調整された電圧と電流測定抵抗15による電流に比例した電圧を比較して、電流が設定電圧に達した時にフリップフロップ22をセットする。
コンパレーターb13は入力電圧の脈動によりコンデンサーa20が充電されるとフリップフロップ22をリセットする。
【0073】
入力は降圧スイッチング素子9を介してダイオードb11のアノード側と接続してコイル7へ、コイルから昇圧スイッチング素子8にて出力側グランドに短絡制御されてダイオードa10を介して出力となり、出力は出力平滑コンデンサー6を接続する。
【0074】
コンパレーターc14の−に入力電圧、+に出力電圧を接続し、そのロジック出力は
1出力側の電圧が高い場合は、フリップフロップ22の出力はAND(1)23を介して昇圧スイッチング素子8をスイッチング動作し、降圧スイッチング素子9はNOT(1)25とAND(2)24及びNOT(2)26により閉の状態を保持し、昇圧コンバーターとして作動する。
2 出力側の電圧が低い場合は、フリップフロップ22の出力はAND(1)23を介して昇圧スイッチング素子8の開を保持し、降圧スイッチング素子9はNOT(1)25とAND(2)24及びNOT(2)26によりスイッチング動作し、降圧コンバーターとして作動する。
3 入力と出力の電圧差が小さいときに直結とする場合は、適宜電圧比較にヒステリシス回路を付加して行うことも出来る。
【0075】
本構成により、入力電圧に比例した電流が電流測定抵抗15に電位差を生じて、可変抵抗16の設定で変動率−ΔI/ΔVの比率になるようにスイッチングOFFとなり、入力電圧の復帰によりスイッチングONのサイクルを繰り返す。
【0076】
制御された入力電圧と負荷による出力電圧によりコンパレーターc14によりスイッチング動作を昇圧又は降圧に切り換えが行われ、入力と出力電圧が変動しても最大電力として出力される。
【実施例2】
【0077】
図8に昇圧回路を示し。ハードウェアーによる入力電圧変動によるスイッチングタイミングの基本構成を説明する。
【0078】
入力電圧を抵抗a17と抵抗b18にて分圧した電圧はコンデンサーa20を介してコンパレーターb13の+に入力し、−はグランドに接続する。
入力電圧を可変抵抗16にて分圧比を調整可能にして分圧電圧をコンパレーターa12の−に入力し、+を入力から抵抗c19を介してコンデンサーb21にて入力平均電圧を接続する。
【0079】
コンパレーターa12の出力は分圧調整された電圧と入力平均電圧を比較して、分圧入力電圧が入力平均電圧に降下した時にフリップフロップ22をセットする。
コンパレーターb13は入力電圧の脈動によりコンデンサーa20が充電されるとフリップフロップ22をリセットする。
【0080】
入力は入力平滑コンデンサー5に接続しコイル7へ、コイルから昇圧スイッチング素子8にてグランドに短絡制御されてダイオードa10を介して出力となり、出力は出力平滑コンデンサー6を接続する。
【0081】
本構成により、入力電圧に比例した電流が入力電圧を降下させ、可変抵抗16の設定で変動率−ΔI/ΔVの比率になるようにスイッチングOFFとなり、入力電圧の復帰によりスイッチングONのサイクルを繰り返す。
【実施例3】
【0082】
図9に重畳スイッチング回路図を示し、ハードウェアーによる基本構成とその動作を説明する。
前述の実施例3にフリップフロップ22のロジック出力をAND(1)23にて発振器27からの高周波を重畳し、スイッチングONの時のみ高周波にて昇圧スイッチング素子8を駆動する。
【0083】
本構成により、スイッチングONにて入力電圧に比例した高周波スイッチング電流が入力電圧を降下させ、可変抵抗16の設定で変動率−ΔI/ΔVの比率になるようにスイッチングOFFとなり、入力電圧の復帰によりスイッチイングONのサイクルを繰り返す。
【実施例4】
【0084】
図10にマイクロコンピュータによる制御回路を示し、ソフトウェアーによるスイッチング時間数値制御を説明する。
入力電圧を抵抗a17と抵抗b18にて分圧した電圧と出力側の電圧をマイクロコンピュータ28のA/Dに入力し、ロジック出力I/Oを 昇圧スイッチング素子8及び降圧スイッチング素子9に接続する。
入力は入力平滑コンデンサー5を経由して降圧スイッチング素子9を介してダイオードb11のアノードに接続された後コイル7に接続される。コイル7から昇圧スイッチング素子8にてグランドに短絡制御されてダイオードa10を介して出力となり、出力は出力平滑コンデンサー6を接続する。
【0085】
次にソフトウェアーによる動作を説明する。
1 モード設定動作として、出力電圧と入力電圧を比較して昇圧モードか降圧モードに切り換える。制御中の電圧が入力と出力がほぼ同じになった場合はスイッチング動作を停止して直結状態に置き、随時制御を開始して制御電圧の確認を行う。
2 入力電圧と出力電圧の測定値から高周波の電流連続モード作動のスイッチングタイミングを設定する。
3 1の動作モードにて2のスイッチングタイミングにてスイッチング動作を開始する。
4 入力電圧が変動しないようにスイッチングOFFの時間(T2)を調整する。
5 T2が調整幅にないとき、0または短い場合は高周波の周波数を下げて時間あたりの電流を多く調整し、長い場合は周波数を上げて電流値を小さく調整する。
6 4の動作中にスイッチングONの時間(T1)をスイープしてT1変化率に対する入力電圧の変動率が最大となるT1の値を記憶し、逆方向にスイープしてT1の値を記憶しT1の平均をT1として設定する。
7 T1が設定された後は4の動作の繰り返しで入力を変動率−ΔI/ΔVの比率を一定に保ち最大電力点を保持しながら動作する。
【0086】
また随時1、2の動作を組込環境の変化に伴う最適化を図る。
動作中に5の動作が必要となったときは再度T1の最適値をスイープするか山登り法等の最大値探索法にてT1を再設定する。
【0087】
また出力電圧を監視して、充電電圧過大等の制御が必要なときは随時T1を可変させて出力電流を制御する。
【0088】
また最大電力の推定においては、コイル蓄積電力P=Vin^2*T1/(T1+T2)より求めた値で制御することも出来、複合して制御することでより精度良く制御が可能となる。
【0089】
またスイッチング信号ONをコンパレーター信号などよりCPUの作動と非同期で取る場合は、スイッチング信号OFFの状態ではCPUをスリープ動作に切り換えて消費電力をより少なくする事もでき、入力電力がCPUの連続作動に満たない徴小であっても作動させることが出来る。
【0090】
本構成により、実施例1から3迄のハードウェアーの機能を全て盛り込むことに加え、最大電力点の設定が自動調整され、出力の制御も行える。
【0091】
実証として、図10の回路にて、10BITA/Dを内蔵する8BITマイコンを用いて、コイル容量20μHの回路に公称4V/200mAの太陽電池を入力して作動確認を行った。
【0092】
プログラムにて最大電力点の変動率−ΔI/ΔVの比率を一度のみスイープして設定し、スイープ中の電力値と設定後の電力値が精確に最大値に設定されるか確認したところ、ほぼ最大値に設定がなされ、太陽電池に当てる光強度を変化させてもその特性は維持される事を確認した。
【0093】
太陽電池に実際の太陽光を当てて太陽電池の角度を変えて、角度による太陽電池の起電力変化の計算値と実測値を測定して比較したものが図11の実測値であり、変動率−ΔI/ΔVの比率を一定に保つことで最大電力点を保持することが確認でき、設定をマイコン不揮発メモリーに記憶させておくことで再起動後は保持した設定値での最大電力点を保持することも確認した。
【0094】
また、変動率−ΔI/ΔVの比率設定を山登り法での追従制御であっても最大電力点の保持が可能であり、昇圧と降圧作動モードの切り換えを行っても動作に支障をきたすことなく切り替えが可能であった。
【0095】
スイッチングの高周波を重畳する場合としない場合では、重畳しないときにDC−DCコンバーターの動作モードが電流不連続モードとなるときにおいては、重畳して電流連続モードとして作動させることで変換効率が約10%程度の向上が確認された。
【0096】
また確認のため、一般的にMPPTで用いられる制御法として山登り法にてのPWM制御で、コイル蓄積電力によるP=Vin^2・T1による最大電力追尾動作に於いても最大電力点を追尾することを確認した。
【0097】
以上のように用途により、実施例を単独及び複合してシステムを構成する。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明により構成された装置は、構造が簡単で製造コストは少なく、大電力を制御する場合でも検出制御系は同じであり、アナログによる精密な部品も使用しないのでノイズにも強く、温度変化による精度劣化も起きない。
構成部品点数も少ないため小型で耐久性に優れる。
利用可能用途別に以下に列記する。
【0099】
1 太陽電池パネルまたはセルに分散配置が低コストで組み込めるので照度不均衡によるシステムの効率が低下を防ぎ、個々のユニットの送電を高電圧により行えるので送電ロスが低減でき合わせて送電線を細くすることも出来、ユニット毎の逆流防止ダイオードも不要となる。
2 独立系の小型太陽電池パネルにて徴小電力で有っても制御が可能で、ソーラーカーのような照度の変化が激しい移動体に設置しても高速な追従で発電効率が改善される。
3 電力による制御のため、風力発電、水力発電、燃料電池、熱電素子発電などにも利用可能であり、バッテリー充電コントローラー機能を持たせることも容易で、発電しない時は電力を消費しないのでバッテリーの利用効率も上昇する。
4 制御に関わるプログラムが小さく、僅かなデジタルI/O使用で構成されるので 充放電コントローラー等のユニットに組み込みも容易である。
5 小型で徴小電力から制御できるので、衣服、鞄、帽子に取り付けた小面積の太陽電池であっても2次電池に充電することが効率よくでき、直射光から室内照明における幅広い照度で利用できる。
6 既存の独立系太陽電池システムに接続するだけで、太陽電池の定格出力電圧が充電側より高いシステムにおいても、光強度が大きいときは降圧して電流を増加し、光強度が低いときは昇圧して無駄なく太陽光を電力に変換可能となる。
7 鉛バッテリーに充電する場合は、パルス出力を平滑する事無く、バッテリーにパルスを加えることでサルフェーションを除去防止する効果があり、バッテリーの充電に加えて劣化防止及び長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】I/V特性曲線A
【図2】I/V特性曲線B
【図3】昇圧動作線図
【図4】降圧動作線図
【図5】重畳スイッチング動作線図
【図6】T1/V特性曲線
【図7】昇降圧回路(実施例1)
【図8】昇圧回路(実施例2)
【図9】重畳スイッチング回路(実施例3)
【図10】マイクロコンピュータ制御回路(実施例4)
【図11】実測値
【符号の説明】
【0101】
1a I/V特性a
1b I/V特性b
1c I/V特性c
2a P/V特性a
2b P/V特性b
2c P/V特性c
3a I/V接線a
3b I/V接線b
3c I/V接線c
5 入力平滑コンデンサー
6 出力平滑コンデンサー
7 コイル
8 昇圧スイッチング素子
9 降圧スイッチング素子
10 ダイオードa
11 ダイオードb
12 コンパレーターa
13 コンパレーターb
14 コンパレーターc
15 電流測定抵抗
16 可変抵抗
17 抵抗a
18 抵抗b
19 抵抗c
20 コンデンサーa
21 コンデンサーb
22 フリップフロップ
23 AND(1)
24 AND(2)
25 NOT(1)
26 NOT(2)
27 発振器
28 マイクロコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池等の出力電力にピーク電力特性を生じる入力の最大電力点で作動させる制御を行うスイッチングコンバーターにおいて、入力機器の出力電圧と出力電流の特性であるI/V出力曲線に於ける作動点の接線となる変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する様にスイッチングを行う最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項2】
出力を最大電力に制御するときは、変動率−ΔI/ΔVの比率を入力機器の最大電力点における−ΔI/ΔVの比率を最大電力出力時の比率として設定し、入出力負荷条件によって−ΔI/ΔVの比率設定を変更して入出力制御を行う請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項3】
変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する手段として、回路中の抵抗における電圧変動に応じてスイッチングする請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項4】
変動率−ΔI/ΔVの比率を入力平均電圧変動に対して一定に保持する手段として、入力電圧変動に応じてスイッチングする請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項5】
最大電力点で作動させる制御を行うスイッチングコンバーターにおいて、スイッチングON信号時に高周波パルスを重畳してスイッチングする最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項6】
入力電圧と出力電圧の条件により、昇圧作動、降圧作動、直結回路にスイッチング動作を切り換える請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項7】
変動率−ΔI/ΔVの比率をスイッチング信号ON時間として制御する請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項8】
変動率−ΔI/ΔVの比率をΔT1としてΔT1/ΔIの最大値または変化率の反転する点の−ΔI/ΔVの比率を最大電力点とする請求項1の最大電力スイッチングコンバーター。
【請求項9】
最大電力点で作動させる制御を行うスイッチングコンバーターにおいて、スイッチングONの時間T1と入力電圧より求めたコイル蓄積電力より、最大電力点を推定する最大電力スイッチングコンバーター。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2009−303310(P2009−303310A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152336(P2008−152336)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(592206673)
【Fターム(参考)】