説明

最終糖化産物生成阻害組成物

【課題】 糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応に対して、それぞれに適した医薬品が使用されてはいるものの、AGE生成阻害剤のような医薬品はまだ開発段階である。最近では、副作用が伴うことが多い合成医薬品による治療よりは食生活を通じて疾患を予防、抑制、改善及び治療できるな機能を持った成分又は食品成分に対する研究も注目されるようになってきている。本発明は、幅広い飲食品及び医薬品に使用可能な糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与する最終糖化産物生成を阻害する効果のある組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品を提供することを目的とする。
【解決手段】 アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする最終糖化産物生成阻害組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は、21世紀の初頭には65歳以上の人口が国民の4分の1以上を占めるという本格的な高齢化社会を迎える。これに比例して加齢による糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病等の各種疾患が急激に増加している。
最終糖化産物(Advanced Glycation Endproducts:AGE)は、グルコースなどの還元糖とタンパク質のアミノ基とが非酵素的に反応し、いくつかの化学反応を経て形成される不可逆な高分子架橋物質をいう。調理時の褐変反応として知られているメイラード反応からスタートし、いくつかの可逆的な化学反応を経た後に不可逆的に高分子化したものがAGEである。生体内ではこれらの反応は、長期間に渡り、ゆっくりとした化学反応を経て生成される。
最近、生体内における複雑なAGE形成メカニズムが解明され、AGEは、これまで生体内においてグルコースに由来する経路のみから生成されると考えられてきたが、メイラード反応中間体や糖の自動酸化分解物、又は糖代謝中間体などからも生成することが明らかになった。
AGEの蓄積 および AGE レセプター(Receptor for Advanced Glycation Endproducts:RAGE)が糖尿病合併症のみならず、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与していることが明らになってきている。糖尿病合併症との関連では、生成したAGEは血管内皮細胞にある特異的なRAGEに結合して糖尿病血管症の発症に寄与しているとの報告がある。動脈硬化症では、AGEを生成する過程で生じた悪玉の活性酸素は血管内皮を障害するが、さらに、このメイラード反応は血中の脂質の輸送蛋白であるリポ蛋白にも起こり、悪玉コレステロールが糖化されたり、AGEと結合する。これらの変性した悪玉コレステロールは代謝されにくいため血中に長くとどまり、動脈の内膜に蓄積して掃除役のマクロファージに取り込まれて泡沫細胞となり、アテロームの形成を促進し動脈硬化を促進する。アルツハイマー病では、AGEが老人斑と神経原線維変化に沈着していること、また、AGE 受容体の一つである RAGEがアミロイドβ蛋白質による神経細胞毒性を媒介しうることなどの報告がある。老化では、老化における特徴的な現象である心臓血管系の弾性喪失の現象は糖が非酵素的に反応して寿命の長いタンパク(コラーゲンやAGE)になってしまうためであり、このAGEを分解する薬剤を老犬に投与した試験で、老化の指標である左心室の剛度が改善されたとの報告がある。炎症反応では、慢性日光障害として日光弾性線維症にAGEが局在化することが免疫組織学的に確認されている。
【0003】
糖尿病合併症の治療は、基本的には血糖コントロール又はタンパク制限食を基本とした糖尿病治療が行われる。血糖コントロールには食事療法、運動療法及び薬物療法があるが、薬物療法には、インスリン抵抗性を改善するメルホルミンやピログリダゾンがあり、インスリン分泌改善薬としてαグルコシダーゼ阻害薬、インスリン及びスルホニル尿素薬がある、このような治療は細心の注意を払って患者を監視する必要があり、費用が係り、しばしば有害な副作用を伴う。動脈硬化治療薬には、高脂血症を防ぐ脂質代謝改善薬(プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、プロブコール)、高血圧での降圧薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤やアンジオテンシン1受容体拮抗薬)、粥状動脈硬化を抑えたり、LDLコレステロールを下げてHDLコレステロールを増やすカルシウム拮抗剤(ヘルベッサーR、バイミカード、ノルバスク、ヒポカ等)等が使われる。アルツハイマー病治療薬として抗精神病薬(ハロペリドールなど)、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(塩酸ドネペジル、タクリン)等がある。老化の治療薬に関しては、まだ、痴呆症関係のものがあるだけであり、皮膚の老化及び皮膚炎症治療としては、レチノイン酸、ビタミンC、トラネキサム酸などがある。
AGE形成阻害剤としてアミノグアニジン、OPB−9195、ALT−711などが開発・治験中であるが、製品化にはまだかなりの時間が必要である。
【0004】
このように糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応に対して、それぞれに適した医薬品が使用されてはいるものの、AGE生成阻害剤のような医薬品はまだ開発段階である。最近では、副作用が伴うことが多い合成医薬品による治療よりは食生活を通じて疾患を予防、抑制、改善及び治療できるな機能を持った成分又は食品成分に対する研究も注目されるようになってきている。
最終糖化産物(AGE)生成阻害効果に関する食品成分としては、茶抽出物及びエピガロカテキンガレート等の茶中の成分(例えば、非特許文献1参照。)が報告されているだけである。食品成分以外では、化学合成可能なオリゴペプチド(例えば、特許文献1参照。)、ピリジウム系の化合物(例えば、特許文献2、3参照。)、ペニシラミン類および他のα−アミノ−β, β−メルカプト−β, β−ジメチルエタン化合物(例えば、特許文献4参照。)AGE生成阻害関連阻害剤としてのプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1産生抑制剤(例えば、特許文献5参照。)が報告されている。
【0005】
【非特許文献1】J. Agric. Food Chem., Vol. 50, p.2418-2422,2002
【特許文献1】特開2003−230382号公報(第2-4頁)
【特許文献2】特開2002−275158号公報(第2−17頁)
【特許文献3】特表2003−511369号公報(第2−17頁)
【特許文献4】特表2003−530434号公報(第1−2頁)
【特許文献5】特開2000−119183号公報(第1−2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、幅広い飲食品及び医薬品に使用可能な糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与する最終糖化産物生成を阻害する効果のある組成物及びそれを含有する飲食品及び医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは様々な天然植物を利用して糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与する最終糖化産物生成を阻害する効果のある組成物を捜す目的で、多角的に研究検討した結果、アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物に優れた最終糖化産物生成の阻害する効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本発明で得られたアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する最終糖化産物生成阻害組成物は、牛血清アルブミン、グルコース及びフラクトースの反応によって生成される最終糖化産物の生成を阻害試験結果から、最終糖化産物の生成を阻害する効果が高いことがわかった。
特にアムラーは、昔から人間が日常食生活に使用してきた天然植物なので、従来使用していた薬剤とは違い、副作用が無く安全である。
本発明はアムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有する最終糖化産物生成阻害組成物を各種飲食品及び医薬品等に利用して、糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与する最終糖化産物生成を阻害することによって糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応の予防、改善、治療ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明に用いるアムラーとは、学名:エンビリカ・オフィシナル(Emblica officinale)又は、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus embilica)といい、トウダイグサ科コミカンソウ属に属する落葉の亜高木であり、インドからマレーシア地域及び中国南部にかけて分布しており、インドが原産地と考えられている。また、各地方又は言語により、各々固有の名称があり、余柑子、油甘、奄摩勒、エンブリック・ミロバラン、アーマラキー、マラッカノキ、マラッカツリー、インディアングーズベリー、アロンラ、アミラ、アミラキ、アミラキャトラ、ネリカイ、ネルリ、タシャ、カユラカ、ケムラカ、ナックホンポン等とも称されている。
【0010】
本発明において、アムラーの部位としては、果実が用いられる。その形態は、特に限定するものではなく、未熟果実、完熟果実、乾燥果実、果汁、果汁粉末等のいずれでも良い。
果汁又は果汁粉末の場合は、そのままでも使用できるが、生果実又は乾燥果実等、水不溶性成分を含む物を使用する場合は、抽出により、水不溶性成分が除去されていることが効果を上げる点好ましい。
抽出の際、生果実を使用する場合は、種子を除去した後、水を添加又は無添加で、抽出効率を高めるためにミキサー等により破砕、均質化したものを用いることが好ましい。
乾燥果実を使用する場合は、抽出効率を高めるために40メッシュ以下の粒度になるように粉砕されていることが好ましい。
【0011】
抽出方法は、抽出溶媒、抽出温度等、特に限定されるものではなく、抽出溶媒としては、水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンを使うことができる。親水性溶媒はメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコール群より選ばれる1種類以上が操作性、抽出効率の点から好ましい。特に好ましくは、水、塩基、酸のいずれかである。
酸又は塩基を抽出溶媒に使用する場合、抽出物を中和させることが好ましい。中和反応によって生成された塩は、透析法やゲル濾過等、公知の方法により、取り除くことができる。水を抽出溶媒として用いた場合には、上記のような中和反応は必要なく、生成された塩を取り除く必要もないため、水を用いることが更に好ましい。
この時使用する酸としては、特に限定するものではなく、大部分の酸を使うことができるが、好ましくは、入手しやすい点及び操作性の点により塩酸、硫酸より選ばれる1種又は両者の併用である。
また、塩基としては、特に限定するものではなく、大部分の塩基を使うことができるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムより選ばれる1種又は両者の併用である。
抽出に使用される酸又は塩基の濃度は、抽出物を酵素処理する前であっても後であっても特に限定するものではなく、酸又は塩基の強さによって変化するが、操作性及び抽出効率の点より、0.01〜0.5モルの濃度を使用することが好ましい。
【0012】
上記の抽出において、酵素処理することによって収率や風味の改善ができるので、酵素処理をすることは好ましい。酵素処理する時のpHは使用する酵素の至摘pH及びpH安定性を指標に適宜選択できる。また、処理する時の温度に関しても酵素の至摘温度及び温度安定性を指標に適宜選択できる。本発明の酵素処理に使用する酵素は限定するものではないが、食品工業用に用いるものであれば、特に限定するものではなく、ペクチナーゼ、セルラーゼ、へミセルラーゼ、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトトリオヒドロラーゼ、β−アミラーゼ、トランスグルコシダーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルタミナーゼ、ヌクレアーゼ、デアミナーゼ、デキストラナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラクターゼ、タンナーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、プルラナーゼ、トリプシン、パパイン、レンネット、ホスホリパーゼA2等より選ばれる1種類または2種類を併用することができる。好ましくは、ぺクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼより選ばれる1種類または2種類を併用することができる。酵素の使用量は特に限定するものではないが、酵素の種類や反応条件によっても異なるが、アムラに対して0.05〜2%使用するのが好ましい。更に、上記の抽出において、抽出残渣に対して再度抽出工程を1回又はそれ以上繰り返すことで、抽出率が向上し、収率が向上するので、好ましい。この場合の抽出に用いる溶媒は、同じでも良いし、別の溶媒を用いても良い。
【0013】
上記の果汁又は抽出物は、そのままでも使用できるが、濾過、遠心分離及び分留により、不溶性物質及び溶媒を取り除くことにより、最終糖化産物生成を阻害する効果が高くなり、応用範囲が広がるので好ましい。
不溶性物質及び溶媒を取り除いた後、果汁又は抽出液をそのまま又は濃縮した後に親水性溶媒又は疎水性溶媒用いて分配を行い、それぞれの溶媒可溶画分を得る。これら溶媒可溶画分は、更に最終糖化産物生成阻害効果が高くなるので好ましい。親水性溶媒としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの低級アルコールが使用でき、疎水性溶媒としては酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、アセトン又はクロロホルムが使用できる。また可溶画分の純度を上げる為には、他の疎水性溶媒による分配を組み合わせることもできる。これら溶媒の濃度としては、特に限定するものではないが、収率及び効果の点より、終濃度として30〜90%が好ましく、50〜80%が更に好ましい。
さらに純度を高める為に、フェノール系、スチレン系、アクリル酸系、エポキシアミン系、ピリジン系、メタクリル系など母体とした疎水性樹脂を用いることも可能である。その場合、樹脂吸着後の溶離液としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどの低級アルコール及びアセトンを単独又は水溶液として使用できる。
抽出物及び画分はそのままでの使用も可能だが、必要であれば噴霧乾燥や凍結乾燥等の手段により乾燥粉末化させて使用することも可能である。
【0014】
本願発明において最終糖化産物生成阻害効果は、例えば、牛血清アルブミン、グルコース及びフラクトースの反応によって生成される最終糖化産物の生成量を測定する方法であり、これらの生成量の低下割合より、最終糖化産物生成阻害効果を確認することができる。
【0015】
本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物は、飲食品、医薬品、飼料等に応用でき、好ましくは、人が手軽に摂食できる飲食品又は医薬品が好ましい。
本願発明における飲食品とは溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等経口摂取可能な形態であれば良く特に限定するものではない。より具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品等の即席食品類、清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の飲料類、パン、パスタ、麺、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品、飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子等の菓子類、ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類等の調味料、加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂類、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料、アイスクリーム類、クリーム類等の乳製品、冷凍食品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品等の水産加工品、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品、農産缶詰、ジャム・マーマレード類、漬け物、煮豆、シリアル等の農産加工品、栄養食品、錠剤、カプセル等が例示される。
【0016】
本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物の飲食品としての摂取量は、本発明の病気の状態、病人の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、一般に1日あたり、最終糖化産物生成阻害組成物として0.05g〜20g、好ましくは0.1g〜5gの範囲で適宜選択することができる。これを病気の状態や食品等の形態によって1日1ないし数回にわけて摂取することができる。
【0017】
本願発明において、最終糖化産物生成阻害組成物又は、飲食品等に加工する際に、各種栄養成分を強化することができる。
強化できる栄養成分としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ナイアシン(ニコチン酸)、パントテン酸、葉酸等のビタミン類、リジン、スレオニン、トリプトファン等の必須アミノ酸類や、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅等のミネラル類及び、例えば、α−リノレン酸、EPA、DHA、月見草油、オクタコサノール、カゼインホスホペプチド(CPP)、カゼインカルシウムペプチド(CCP)、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖等の人の健康に寄与する物質類、その他の食品や食品添加物として認可されている有用物質の1種又は2種以上が使用できる。
【0018】
本願発明における医薬品とは、経口または非経口投与に適した賦形剤、その他の添加剤を用いて、常法に従って、経口製剤または注射剤として調製することができる。好ましいのは、経口製剤であり、最も好ましいのは、容易に服用でき且つ保存、持ち運びに便利な経口固形製剤である。
経口固形製剤としては、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等が用いられる。このような固形製剤においては、適宜の薬理学的に許容され得る坦体、賦形剤(例えばデンプン、乳糖、白糖、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなど)、結合剤(例えばデンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピリドンなど)、滑沢剤(例えばステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなど)、崩壊剤(例えばカルボキシメチルセルロース、タルクなど)、などと混合し、常法により錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤等を調整することができる。経口液状製剤は、製薬学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノールを含む。この組成物は不活性な希釈剤以外に湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与しての注射剤としては、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤、乳濁剤を包含する。水性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えば注射用蒸留水及び生理食塩水が含まれる。非水溶性の溶液剤、懸濁剤の希釈剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、ポリソルベート80等がある。このような組成物は、さらに防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤(例えばラクトース)、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)のような補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保管フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。これらはまた無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解して使用することもできる。
【0019】
尚、本発明の薬剤はインスリン製剤、スルホニル尿素系薬剤、スルホンアミド系薬剤、ビグアナイド系薬剤、アルドース還元酵素阻害剤、α−グルコシダーゼ阻害剤、インスリン抵抗性改善薬、その他血糖降下薬などの糖尿病の治療に用いる薬剤、プロスタノイド関連薬、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤、トロンボキサン合成酵素阻害剤、ビタミンB製剤、漢方製剤、カルシウム拮抗剤、利尿剤等の高血圧の治療に用いる降圧薬治剤、高脂血症薬としての脂質代謝改善薬やアルツハイマー病治療薬としての抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬等と同時にまたは時間をおいて併用することができる。糖尿病治療薬としてはインスリン、中性インスリン、インスリン亜鉛水性懸濁、イソフェンインスリン水性懸濁、プロタミンインスリン亜鉛水性懸濁、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、グリクロピラミド、トラザミド、トルブタミド、グリブゾール、塩酸メトホルミン、塩酸ブホルミン、エパルレスタット、アカルボース、トログリタゾン、ピオグリタゾン、ナテグリニド、アルプロスタジルアルファデックス、リポPGE、リマプロストアルファデックス、高血圧治療薬としてはレニベース、ロンゲス、テノーミン、インデラールマレイン酸エナラプリル、ブロプレス、ニューロタン、アダラート、アムロジン、カルスロットなど、脂質代謝改善薬としてはプラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、コレスチラミン、コレスチミド、シンレスタール、ロレルコ挙げられる。アルツハイマー病治療薬としてはハロペリドール、塩酸ドネペジル、タクリン、タルサクリジン,コリン、ネフィラセタム,アセチルコリンなどが挙げられる。
【0020】
以下本発明を、実施例にて詳細に説明するが、次の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0021】
(実施例1)最終糖化産物生成阻害組成物の調製1
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせ、減圧濃縮後、凍結乾燥し、本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物A35.0gを得た。収率は43.8%であった。
【0022】
(実施例2)最終糖化産物生成阻害組成物の調製2
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸留水2Lを加え、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを加え、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液にエタノールを加え、1Lになるように調製(最終エタノール濃度80%)した後、4℃で24時間静置後、不溶性成分を沈殿させた。沈澱物を遠心分離で分離除去し、上清を減圧濃縮後、水1Lに再溶解し、濾過して不溶性成分除去後、濾液を減圧濃縮後、凍結乾燥して本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物B12.5gを得た。
同様にして、エタノールの終濃度が20%、40%、60%にして、本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物C13.6g,D20.8g,E21.2gを得た。
【0023】
(実施例3)最終糖化産物生成阻害組成物の調製3
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末80gに、蒸溜水2Lを入れ、55℃で3時間抽出した。その後、遠心分離し、その上清を濾過し、抽出物と残渣を分離した。その残渣に蒸留水2Lを入れ、同条件でもう1回繰り返し抽出し、それぞれの抽出液をあわせて、減圧濃縮し、200mLとした。この濃縮液に酢酸エチルを加え、500mLになるように調製(最終酢酸エチル濃度60%)し、よく攪拌後、4℃で24時間静置した後、酢酸エチル層を分離し、減圧濃縮後、濾液を凍結乾燥して本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物F12.5gを得た。
【0024】
(実施例4)最終糖化産物生成阻害組成物の調製4
アムラー乾燥果実を40メッシュ以下に粉砕し、その粉末100gに、蒸留水2Lを加え、さらにペクチナーゼ0.1g及びタンナーゼ0.1gを加えて、55℃で2時間抽出した。その後、90℃で30分間酵素失活させた。その後、遠心分離(3000rpm、10分間)し、その上清を濾過し、濾液をスプレードライし、本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物G45gを得た。
【0025】
(比較例1)茶抽出物の調製
かぶせ伊勢茶(四日市産)50gに70℃の温水1Lを加え、5分間振とうして抽出した。その後、遠心分離し、その上清を濾過し、濾液を凍結乾燥して比較試料の茶抽出物18.4gを得た。
【0026】
(試験例1)最終糖化産物生成阻害効果の確認
牛血清アルブミン(和光純薬社製)10mg/mLを50mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、さらに0.02%アジ化ナトリウム、グルコース25mM及びフラクトース25mMを加えて、反応溶液を調整した。この反応溶液にそれぞれ実施例1の最終糖化産物生成阻害組成物A、実施例2の最終糖化産物生成阻害組成物B、実施例3の最終糖化産物生成阻害組成物F及び比較例1の茶抽出物を加え、37℃下で2週間インキュベートした。対照は反応溶液に何も加えないものとした。そして、350nmの励起波長と450nmの放射波長を持つ蛍光スペクトロメーターで最終糖化産物の蛍光強度を測定した。最終糖化産物生成阻害率は下記の式に基づいて計算した。
最終糖化産物生成阻害率(%)
=(2週間インキュベート後の最終糖化産物生成阻害組成物を添加した反応溶液の蛍光強度)/(2週間インキュベート後の反応溶液の蛍光強度)×100
その結果を図1に示す
【0027】
最終糖化産物生成阻害効果
図1に示すように本発明の最終糖化産物生成阻害組成物は、比較例の茶抽出物に比べて有意に高い最終糖化産物生成阻害率を示すことが認められ、最終糖化産物生成阻害に効果があることが示唆された。
【0028】
(実施例4)最終糖化産物生成阻害組成物含有食品(錠菓)の調製
実施例1で得られた最終糖化産物生成阻害組成物A50g、乳糖30g、DHA含有粉末油脂(サンコートDY−5;太陽化学株式会社製)12g、ショ糖脂肪酸エステル4g、ヨーグルト香料4gを混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して1錠が300mgの本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物含有飲食品(錠菓)を得た。
【0029】
(実施例5)最終糖化産物生成阻害組成物含有飲料の調製
実施例2で得られた最終糖化産物生成阻害組成物B5g及び、1/5濃縮グレープフルーツ透明果汁2.1g、エリスリトール30g、クエン酸結晶2.5g、クエン酸三ナトリウム0.5g、L−アスコルビン酸0.5g、乳酸カルシウム1.93g、CCP0.15g、グレープフルーツ香料1.0を水に混合溶解して、全量を1000mlとし、それを100mLの瓶に充填し、キャップで密栓した後、90℃、30分間加熱殺菌をして、本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物含有飲食品を得た。
【0030】
(実施例6)最終糖化産物生成阻害組成物含有飲料(野菜果汁混合飲料)の調製
実施例2で得られた最終糖化産物生成阻害組成物組成物C1.0g及びグアーガム分解物(サンファイバーR;太陽化学株式会社製)3gを市販の野菜果汁混合飲料100mlに添加混合溶解して、本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物含有飲食品(野菜果汁混合飲料)を得た。
【0031】
(実施例7)最終糖化産物生成阻害組成物含有クッキーの調製
実施例2で得られた最終糖化産物生成阻害組成物D4.0g及び、市販のケーキミックス粉200gを容器に入れた後、バター35gを入れ、木杓子で混ぜ合わせた。それに溶き卵25gを加えて、なめらかな生地になるまで良く練った。小麦粉を振った台の上に生地を取り出し、さらに小麦粉を振って麺棒で5mmの厚さに伸ばし、丸型で抜き、それを170℃のオーブンで10分間焼いて、1個約5gの本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物含有クッキーを得た。
【0032】
(実施例8)最終糖化産物生成阻害組成物含有ヨーグルトの調製
実施例3で最終糖化産物生成阻害組成物E10g、市販の脱脂乳(明治乳業社製。蛋白質含量34%)0.95kg、及び市販の無塩バター(雪印乳業社製)0.35kgを温水8Lに溶解し、均質化し、全量を10Lに調整した。次いで、90℃で15分間加熱殺菌し、冷却し、市販の乳酸菌スターター(ハンゼン社製)0.03kg(ストレプトコッカス・サーモフィラス0.02kg及びラクトバシラス・ブルガリクス0.01kg)を接種し、均一に混合し、100mLの容器に分注、充填し、密封し、37℃で20時間発酵させ、のち冷却し、本願発明の脂質代謝改善組成物含有ヨーグルトを得た。
【0033】
(実施例9)最終糖化産物生成阻害組成物含有錠剤の調製
実施例3で得られた最終糖化産物生成阻害組成物F20g、結晶セルロース10g、トウモロコシデンプン27.5g、乳糖65g、ヒドロキシプロピルセルロース6.5gを混合し、顆粒化した。この顆粒化物にステアリン酸マグネシウム2.0gを加え、均一に混合し、この混合物をロータリー式打錠機を用いて加圧成形して一錠が130mgの本願発明の最終糖化産物生成阻害組成物含有錠剤を得た。
【0034】
(実施例10)最終糖化産物生成阻害組成物含有カプセルの調製
実施例3で得られた最終糖化産物生成阻害組成物F20g、乳糖198g、コーンスターチ18.8g、及びポリビニルピロリドン3.2gを均一混合しゼラチンカプセルにこの混合物500mgを充填して最終糖化産物生成阻害組成物含有カプセルを得た。
【0035】
本発明の実施態様ならびに目的生成物を挙げれば以下の通りである。
(1) アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする最終糖化産物生成阻害組成物。
(2) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒のいずれかにより抽出されていることを特徴とする前記(1)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(3) アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水により抽出されていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(4) アムラー果実、果汁又はそれら抽出物を酵素処理したことを特徴とする前記(1)〜(3)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(5) アムラー果実、果汁又はそれら抽出物をぺクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、クロロゲン酸エステラーゼ、タンナーゼより選ばれる1種類または2種類以上を併用する酵素処理により抽出されていることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(6) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、親水性溶媒もしくは疎水性溶媒により分画されていることを特徴とする前記(1)〜(5)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(7) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、エタノールにより抽出し、エタノール可溶分画を特徴とする前記(1)〜(6)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(8) エタノールで分画する際のエタノール濃度が、終濃度として10〜90%であり、そのエタノール可溶化成分であることを特徴とする前記(7)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(9) エタノールで分画する際のエタノール濃度が、終濃度として30〜50%であり、そのエタノール可溶化成分であることを特徴とする前記(7)又は(8)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(10) アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から、酢酸エチルにより抽出し、酢酸エチル可溶分画を特徴とする前記(1)〜(5)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(11) 酢酸エチルで分画する際の酢酸エチル濃度が、終濃度として30〜90%であり、その酢酸エチル可溶化成分であることを特徴とする前記(10)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(12) 酢酸エチルで分画する際の酢酸エチル濃度が、終濃度として50〜80%であり、その酢酸エチル可溶化成分であることを特徴とする前記(10)又は(11)記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
(13) 前記(1)〜(12)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物を含有することを特徴とする飲食品。
(14) 前記(1)〜(12)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物を含有することを特徴とする医薬品。
(15) 前記(1)〜(12)いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物を含有することを特徴とする飼料。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明で得られたアムラー抽出物を含有する最終糖化産物生成阻害組成物は、牛血清アルブミン、グルコース及びフラクトースの反応によって生成される最終糖化産物の生成を阻害する効果が高く、幅広い飲食品及び医薬品に利用して糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応等、多種の疾患に関与する最終糖化産物生成を阻害することによって糖尿病合併症、動脈硬化症、アルツハイマー病、老化、炎症反応の予防、改善、治療ができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】最終糖化産物生成阻害組成物A(○)、B(▲)、F(□)および茶抽出物(◆)の濃度と最終糖化産物生成阻害率を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アムラーの果実、果汁又はそれらの抽出物を含有することを特徴とする最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項2】
アムラー果実又は果汁の抽出物が、アムラー果実又は果汁から水、塩基、酸、親水性溶媒、アセトンのいずれかにより抽出されていることを特徴とする請求項1記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項3】
アムラー果実、果汁又はそれら抽出物を酵素処理したことを特徴とする請求項1又は2記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項4】
親水性溶媒がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールの群より選ばれる1種類以上の低級アルコールであることを特徴とする請求項1又は2記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項5】
アムラー果実又は果汁の抽出物、又は果汁から親水性溶媒もしくは疎水性溶媒のいずれか1種類又は2種類以上により分画されていることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項6】
疎水性溶媒が酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルエーテル、メチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、又はクロロホルムからなる群より選ばれる少なくともの1種類であることを特徴記載の最終糖化産物生成阻害組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項8】
請求項1〜6いずれか記載の最終糖化産物生成阻害組成物を含有することを特徴とする医薬品。

【図1】
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【公開番号】特開2006−28090(P2006−28090A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−209331(P2004−209331)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】