説明

有価媒体処理装置、有価媒体処理システムおよび有価媒体処理方法

【課題】有価媒体を受け入れた際に、処理装置内に履歴の残る形で確実に収納させることができる利用者および管理者にとって使い勝手の良い有価媒体処理装置、有価媒体処理システムおよび有価媒体処理方法を提供する。
【解決手段】利用者を特定する利用者情報を入力させるカード読取部23と、取引される紙幣Sを受入処理する入金口10と、紙幣Sを識別対象として該識別対象の紙幣情報を識別する識別部11と、前記入金口10より受け入れた紙幣Sに関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶するRAM22と、前記識別部11の識別結果に基づいて受付許可された紙幣を確定して収納する確定収納部4A〜4Dと、紙幣Sを確定せずに強制的に収納する際に収納する強制収納部3とを備えた紙幣入金機1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば店舗で売上げた売上金を入金管理する売上金入金機のような有価媒体処理装置に関し、さらに詳しくは損券紙幣であっても確実に入金することが可能な有価媒体処理装置、有価媒体処理システムおよび有価媒体処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デパートや小売店等の流通業界では売上金管理効率の向上と現金管理に対する防犯の観点から店舗内に売上金を入金させて管理する売上金入金機が設置されつつある。
【0003】
この売上金入金機は、例えば紙幣入金時に入金された紙幣を機内の識別部に導いて紙幣の真偽、金種、枚数を識別している。そして、取り扱い可能な紙幣と識別されると、その紙幣を正常紙幣として機内の入金庫に収納処理している。これに対し、偽紙幣と判定されたり識別不能な紙幣と判定されたりすると、入金された紙幣を異常紙幣として利用者に返却し、入金を拒否している。
【0004】
このような売上金入金機では、偽紙幣や異常紙幣が混入しないように紙幣の真偽判定レベルを高く設定している。このため、紙幣の流通過程で該紙幣にしわが寄ったり汚れたりした損券紙幣の場合は、真紙幣であるにも拘らず識別部で偽紙幣や異常紙幣と誤判定されて返却されることがある。この場合は返却された紙幣を店員が手計数して、その金額を店員が売上金入金機に手入力して対処していた。これにより、手入力した金額は明細票に印字され、該明細票と損券紙幣とを店員が封筒に入れて現金外ボックスに投函していた。
【0005】
一方、入金された紙幣を識別部で真偽判定し、その結果、偽紙幣や異常紙幣と判定された紙幣が発生した場合に、識別レベル変更手段によって真偽判定レベルを下げるように変更する。この際、識別部で再度紙幣の真偽判定を行って紙幣が真紙幣と識別されると、正常紙幣として装置内部に収納させることができる貨幣処理装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、返却された紙幣を係員がチェックして真紙幣と認めると、その紙幣を該装置内部に強制的に収納させる強制収納モードを有しており、係員の操作により強制収納モードに切り替えて、その紙幣を強制的に収納するという紙葉類処理装置が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0007】
これらの入金方法に従うと、流通過程で傷んだ紙幣を強制的に紙幣入出金機に入金することができるので、紙幣を装置内で安全に管理することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−265288号公報
【特許文献2】特開2000−30106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような技術によれば、封筒入金された紙幣の場合は、管理者が売上金入金機の紙幣を精査する際に、この売上金入金機内の現金ボックスと合わせて封筒に入れて入金された現金外ボックスからも回収し、封筒毎に入金者、明細票、同封された紙幣を管理者が手作業で確認する必要があり、管理者にとって非常に手間の掛かる作業が発生していた。
【0010】
一方、特許文献1の場合は、真偽判定レベルを調整できるものの紙幣の損傷度合いによっては真偽判定レベルを大幅に下げる必要がある。さらに、真偽判定レベルを複数段階に設定して対処したとしても調整限界が生じ、最終的に返却されてしまうおそれがある。
【0011】
また、特許文献2の場合は、返却された紙幣を係員がチェックして真紙幣と認めた場合のみ強制入金が可能となる。この際、金融機関の窓口端末のように係員が使用する装置であればよいが、売上金入金機のような場合は、紙幣の真偽判定をサポートする係員がその場に常駐しておらず、真偽判定は店舗の店員などの利用者自身の自己判断に委ねざるを得ず、実際の運用上からみて現実的ではない。
【0012】
この発明は上述の問題に鑑み、有価媒体を受け入れた際に、受け入れた有価媒体に関する履歴情報が残る形で確実に収納させることができる利用者および管理者にとって使い勝手の良い有価媒体処理装置、有価媒体処理システムおよび有価媒体処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、利用者を特定する利用者情報を入力させる入力部と、取引される有価媒体を受入処理する受入口と、前記受入口より受け入れた有価媒体を識別対象として該識別対象の有価媒体情報を識別する識別部と、該有価媒体に関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶する記憶部と、前記識別部の識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を確定して収納する確定収納部と、有価媒体を確定せずに強制的に収納する際に収納する強制収納部とを備えた有価媒体処理装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、有価媒体を受け入れた際に、受け入れた有価媒体に関する履歴情報が残る形で確実に収納させることができる利用者および管理者にとって使い勝手の良い有価媒体処理装置、有価媒体処理システムおよび有価媒体処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の紙幣入金機の外観斜視図。
【図2】実施例1の紙幣入金機の内部構造を示す概略構成図。
【図3】実施例1の紙幣入金機の制御部を示す制御ブロック図。
【図4】実施例1の表示操作部に表示される入金受付画面を示す表示図。
【図5】実施例1の表示操作部に表示される選択画面を示す表示図。
【図6】実施例1の表示操作部に表示される入金開始画面を示す表示図。
【図7】実施例1の表示操作部に表示される返却された紙幣の詳細な画面の一例を示す表示図。
【図8】実施例1の表示操作部に表示される強制入金モードの詳細な表示画面の一例を示す表示図。
【図9】実施例1の入金受付開始時の処理動作を示すフローチャート。
【図10】実施例1の通常入金される識別受付モードの入金処理動作を示すフローチャート。
【図11】実施例1の強制入金モードの入金処理動作を示すフローチャート。
【図12】実施例1の図11に続くフローチャート。
【図13】実施例1の強制入金取引終了後のデータ処理手順を示すフローチャート。
【図14】実施例1の表示操作部に表示される強制入金取引の案内画面を示す表示図。
【図15】実施例1の紙幣入金機と上位装置とを通信接続した状態を示す紙幣処理システムの概略説明図。
【図16】実施例1の上位装置に表示される取引別の一覧表示画面を示す表示図。
【図17】実施例1の上位装置に表示される精査に関する表示画面の一例を示す表示図。
【図18】実施例1の紙幣仕分け機と上位装置とを通信接続した状態を示す紙幣仕分け処理システムの概略説明図。
【図19】実施例2の強制入金モードの入金処理動作を示すフローチャート。
【図20】実施例2の図19に続くフローチャート。
【図21】実施例2におけるPOSシステムを利用した概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1は紙幣入金機1の外観を示す図であって、デパートや小売店等の店舗のバックヤードに設置される。この紙幣入金機1を利用する店員(以下利用者と称す)は表示操作部24に表示される入金に関する情報を確認するとともに、紙幣入金機1の入金取引に必要な操作を該表示操作部24の表示画面にタッチ入力させて行う。紙幣入金機1には紙幣処理部2が内蔵されており、上部前面には紙幣の入金口10と、紙幣の返却口12と、カード挿入口18が備えられている。
【0018】
図2は紙幣入金機1の内部構成を示している。
この紙幣入金機1は内部に搭載されている紙幣処理部2によって紙幣Sの繰出し、搬送、収納等のハンドリングを行う。この紙幣処理部2には、入金口10、識別部11、返却口12、振分ゲート13、強制入金庫3、確定入金庫4A〜4Dが内蔵されている。
【0019】
入金口10は取引される紙幣を受入処理する受入口として備えられている。通常はシャッタで閉じられており、入金取引時に開閉操作される。
【0020】
識別部11は入金口10の内方に連通する紙幣搬送路上に備えられている。この識別部11には、紙幣Sの枚数を検出する枚数検知センサ14や紙幣Sの真偽や金種を判別する判別検知センサ16、紙幣Sの画像を取り込むカメラ15などが内蔵されており、入金された紙幣Sが正常であるか異常であるかを複数の判定項目に基づいて識別するとともに、紙幣Sが搬送される際にこれらのセンサ14,16およびカメラ15によって紙幣の状態が識別情報として取り込まれる。ここで取り込まれた識別情報は、後述する主制御部20へ伝達され、予め定められた手法で紙幣入金機1の運用に活用される。
【0021】
返却口12は前記入金口10の近傍に備えられており、識別部11で偽紙幣や識別不能な紙幣と識別された紙幣を返却処理する。
【0022】
この紙幣入金機1は上部に入金口10、識別部11、返却口12を備えて紙幣の出入処理部として扱われ、下部に強制入金庫3と確定入金庫4A〜4Dを備えて紙幣の収納処理部として扱われる。そして、搬送路の各搬送切換部分に紙幣振分用の振分ゲート13を配設している。
【0023】
強制入金庫3は強制収納部として受け入れた紙幣Sを識別部11の識別結果に関わらず、該紙幣を確定しないまま強制的に収納させるものである。また、確定入金庫4A〜4Dは確定収納部として識別部11の識別結果に基づいて正常紙幣であると確定された紙幣を収納させるものである。
【0024】
なお、紙幣処理部2は入金専用に処理する運用上、一時保留部を省略した構成が可能となり、該紙幣入金機1の簡素化を図ることが可能となる。このような構成では一時保留部が構成されていないが、必要な場合には確定入金庫4A〜4Dのうち、一つを一時保留部として利用することも可能であり、もしくは別途一時保留部を搭載してもよい。
【0025】
図3は紙幣入金機1の制御構成を示したブロック図である。
このブロック図において、20は紙幣入金機1の各部を制御する主制御部である。21は主制御部20の動作プログラム等を記録したROM、22は主制御部20が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録するRAMである。
【0026】
紙幣処理部2の内部には上述したように識別部11、振分ゲート13、強制入金庫3、確定入金庫4A〜4Dのほかに入金口10の紙幣Sの有無を検知する入金口紙幣検知センサ17が搭載されている。
【0027】
さらに、紙幣入金機1にはカード挿入口18の内方に連通してカード読取部23が備えられている。このカード読取部23で利用者が入金する際に自身の口座番号等を記録したカードを読み取る。さらに、利用者に必要な情報を表示する表示機能とタッチ入力機能を備えて利用者が入金操作するのに必要な情報を表示させ、また入金操作に必要な操作をタッチ入力させる場合に使用する表示と入力とを兼ねた表示操作部24が備えられている。また、後述する上位装置151(図15参照)との間で情報の送受信を行う通信部25が備えられている。
【0028】
26はRAMから構成される情報格納部であって、所定の領域に、紙幣画像情報27と、識別結果に基づき強制入金時の取引毎のステータス情報を示す取引管理情報28とを格納している。
【0029】
前記主制御部20は紙幣の受入処理時に利用者を特定する利用者情報と入金口10より受け入れた紙幣Sに関する受入情報とを関連付けた関連情報を記憶させるとともに、紙幣Sを該装置内部の入金庫3,4A〜4Dに収納させる制御機能を有している。
【0030】
ここで、利用者情報としては、利用者本人を特定するIDカードをカード挿入口18に挿入してカード読取部23が読み取ることで、そのIDカードから利用者本人を特定することができる。このほか、表示操作部24により利用者本人を特定する必要情報を入力させてもよい。
【0031】
この際、日付情報と、利用者本人を特定した情報を利用者情報として加えた場合は、より正確となり誤りなく利用者を特定できる。また、日付情報やID情報以外にも時間や口座番号等の情報を用いてもよい。この際は、同一の利用者であっても複数の取引に分けて管理することが可能になる。
【0032】
さらに、受入情報は入金口紙幣検知センサ17の検知信号により紙幣が受け入れられたことを確認する。また、識別部11で紙幣の真偽、金種、枚数との識別結果情報により受け入れられた紙幣の状態を1枚ずつ正確に識別する。
【0033】
関連情報はROM21に格納されたプログラムに沿って、利用者情報と受入情報とを関連付けてRAM22に記憶させることにより取引時の履歴が得られ、この関連情報に基づく取引履歴を入金運用時の証拠として管理することができる。
【0034】
このような入金機能を有することで、紙幣受入時の取引履歴を確保して紙幣Sを装置内部の強制入金庫3または確定入金庫4A〜4Dに受け入れさせることができる。このため、装置内に履歴の残る形で収納させることができる。
【0035】
さらに、主制御部20は紙幣の受入処理時に、識別部11の識別結果に基づいて受付許可された紙幣を前記確定入金庫4A〜4Dに収納させ、受付拒否された紙幣を返却口12に返却する識別受付モードと、受け入れた紙幣を識別部11の識別結果に関わらず前記強制入金庫3に収納させ、RAM22に前記関連付けされた関連情報を記憶させる強制収納モードとのいずれか一方に制御する制御機能を備えている。
【0036】
前記識別受付モードは識別部11で紙幣を受け付けて識別した際に、適正に読み取られた正常紙幣であることを確定すると取込処理し、異常紙幣があれば返却するという通常の入金処理を実行するものである(以下、通常入金モードと称す)。
【0037】
前記強制収納モードは受け入れた紙幣を返却することなく、必ず装置内部に収納処理させる強制的な収納処理動作を実行するものを言う。
【0038】
主制御部20は上述のような2通りのモード選択機能を有することで、正常な紙幣を受付許可して確定入金庫4A〜4Dに収納させる。この際、仮に流通過程で傷んだ紙幣が混入していると、通常入金モードの場合であれば識別部11が仮に異常紙幣であると誤識別して返却しても、返却した紙幣に対しては強制収納モードにして再度強制収納させることで、返却された紙幣を確実に装置内に収納し、装置内で全ての紙幣を安全に管理することが可能となる。
【0039】
従って、例えば、封筒入金方式など、別の運用手順に頼る必要がなくなり、取引運用手順が簡易化する。また、返却された未確定の紙幣を強制入金庫3へ収納することで、正常と識別された紙幣と分離して収納することができ、紙幣の精査の際に正常紙幣と異常紙幣が混在するのを防止することができる。
【0040】
また、返却された少数の未確定紙幣だけ関連付けされた情報を記憶して管理するようにすればよく、全ての紙幣のデータを記憶しないため、記憶データ量が少なくて済む。さらに、表示操作部24を用いて強制収納させた金種と枚数を利用者入力手段として入力指示させることも可能である。つまり、返却された紙幣の再受付時に、その返却された紙幣をどの金種が何枚と指定入力させて利用者が指示した情報を利用者情報の一部として記憶させることもできる。
【0041】
なお、この表示操作部24に対しては通常入金モードにおいて、入金時の入金枚数や金種を入力させて取引照合を確保するようにするのが好ましい。
【0042】
さらに、主制御部20には前記識別受付モードにより受付拒否されて返却された紙幣があったとき、該返却された紙幣の再受付時に、前記識別受付モードを実行するか前記強制収納モードを実行するかを利用者により選択可能にする選択手段としての機能を有している。
【0043】
この選択手段を備えることにより、正常でないと判定されて返却された紙幣に対し、利用者が該紙幣を装置内部に強制的に収納させるか否かを選択させることができる。
【0044】
図4は表示操作部24で入金案内する入金受付画面41を示している。この入金受付画面41は入金受付ボタン42を表示しており、この入金受付ボタン42が押下されることで前記通常入金モードの入金取引が実行される。
【0045】
図5は表示操作部24で取引モードを選択入力させる選択入力画面51を示している。この選択入力画面51は前記入金受付画面41で実行される通常入金モードを実行した際に、受付拒否されて返却された紙幣があったとき、該返却された紙幣の再受付時に、前記識別受付モードを実行するか前記強制収納モードを実行するかを利用者により選択可能にする画面を表わしている。
【0046】
52は通常入金ボタンであり、入金された紙幣Sが正常であるか異常であるかを複数の判定項目に基づいて識別する通常入金モードを選択する場合に押下される。53は強制入金ボタンであり、通常入金の結果、返却された紙幣に対して強制入金モードを選択する場合に押下される。
【0047】
図6は表示操作部24での通常入金モード選択後の入金開始画面61である。
【0048】
62は開始/終了ボタンであり、入金口10に紙幣Sを装填後、入金処理を開始あるいは終了する場合に押下される。63は表示入力領域であり、通常入金モード時には入金紙幣の金種、枚数、合計金額を表示する表示領域となり、強制入金モード時には強制入金紙幣の金種、枚数、合計金額を利用者が入力する入力領域となる表示入力機能を有している。なお、通常入金モードであっても、利用者により金種や枚数等の入金情報を入力させて利用者との関連情報を増やして照合情報をより一層高めるようにしてもよい。
【0049】
また、利用者は詳細ボタン64により、入金された紙幣Sが識別部11を通過する際に取得した紙幣の識別情報を詳細に表示させることができる。
【0050】
図7は通常入金モード時に詳細ボタン64が押下されることにより表示される紙幣詳細画面71の一例を表わしている。
この紙幣詳細画面71は識別部11で取得された紙幣の表裏画像72、紙幣の画像から記番号部分のみを切り出した記番号拡大画像73、記番号画像から識別部11が文字認識を行うことにより得られる記番号認識結果74を表示する。
【0051】
記番号拡大画像73と記番号認識結果74を並べて表示することで、利用者は自身が入金した紙幣について誤りなく記番号が認識されていることを目視にて確認することができる。また、記番号の一部分が汚れ付着等のため認識できない場合にも、記番号拡大画像73を表示させることにより認識できなかった原因が明確となり、また、記番号拡大画像73をログとして保存することで認識結果だけでなく画像データを参照し、当該取引終了後にも誤りなく入金紙幣と利用者を関連付けることが可能となる。この際、表裏画像72の画像データは紙幣全体が分かる程度の解像度に抑えることで、データ容量を低減させることが可能となる。75は項目切替ボタン、76は紙幣切替ボタンである。
【0052】
一方、図8は強制入金モード時に詳細ボタン64の押下により表示される返却紙幣詳細画面81の一例を示す。返却紙幣詳細画面81は識別部11により取得された紙幣の表裏画像82、当該強制入金取引の取引管理情報の表示84、強制入金処理を完了させるための確認ボタン85、仮想の封筒83を表示する。86は画像切替用のスクロールボタン、87は落書き、88は紙幣の破損部分を示している。
【0053】
このように表示すれば、識別部11の識別結果によらず、当該取引の全ての画像を利用者がその場で確認することができる。また、識別制限を受けた強制入金時においても利用者は一目で把握することができるため該利用者の納得性を得ることができる。つまり、強制入金モードを選択したときの強制収納される返却紙幣のデータを利用者に明瞭に確認させることができる機能を有している。
【0054】
図9〜図13は紙幣入金時の受入処理手順を示したフローチャートであって各ステップは主制御部20が実行する処理である。
図9は入金受付開始時のフローチャートである。通常、紙幣入金機1は図4に示すように、表示操作部24に入金受付画面41が表示されている。そして、入金受付画面41(ステップS1)の入金受付ボタン42が押されるのを待機している。この入金受付ボタン42が利用者により押されると(ステップS2)、入金口10に受け付けられた紙幣は該入金口10より内部に取り込まれ、識別部11で識別される(ステップS3)。このとき、識別不能な紙幣があれば(ステップS4)、その未識別の紙幣を返却口に返却する(ステップS5)。
【0055】
この返却された紙幣に対し、再受付する画面を表示操作部24に表示する(図5参照)。そして、通常入金モードか強制入金モードかを選択させる(ステップS6)。通常入金モードが選択された場合は、前記ステップS3以降の処理が実行される(ステップS3〜ステップS6)。
【0056】
一方、強制入金モードが選択された場合は、その返却された紙幣を強制入金させて全て紙幣を取り込ませる。これにより、一入金取引が終了する。なお、ステップS4で識別部11が識別した際に識別不能な紙幣がなければ(ステップS4:NO)、全て正常紙幣と判定して取引終了する。また、ステップS7およびステップS8:NOで一定時間経過しても通常入金モードも強制入金モードも選択されなければ、返却紙幣の入金処理を中止したと判定して取引終了する(ステップS7:NO、ステップS8:NO)。
【0057】
図10は通常入金モードでの入金処理手順を示したフローチャートである。
利用者が通常入金ボタン52を選択した後、入金口10に紙幣Sを投入して開始/終了ボタン62を押すと、主制御部20は入金口紙幣検知センサ17の検知出力により入金口10に紙幣Sが有り、かつ紙幣Sの入金指示があったと判断し(ステップS11:YES)、紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送する(ステップS12)。識別部11で真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS13)。
【0058】
合わせて、識別部11はカメラ15により紙幣Sの表裏画像を取得する(ステップS14)。主制御部20は識別部11によって紙幣Sが正常と識別されたか否かを確認し(ステップS15)、正常と識別されていると(ステップS15:YES)、紙幣Sを識別部11から指定された確定入金庫4A〜4Dへ搬送する(ステップS16)。
【0059】
搬送後は、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS17)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS17:NO)、上述したステップS12以降の処理を実行する。
【0060】
一方、ステップS15において、識別部11によって紙幣Sが異常であると識別されていると(ステップS15:NO)、紙幣Sを識別部11から返却口12へ搬送して返却する(ステップS18)。
【0061】
このように識別部11によって異常と識別された紙幣Sは、複数の判定項目のうち少なくとも1つの項目を満足しなかった紙幣であって、例えば紙幣入金機1で取り扱い不可能な金種の紙幣や真紙幣であるが、しわが寄っていたり汚れが付いていたりというように傷んだ状態であるために、識別部11では真紙幣と判定できなかった紙幣も含まれている。
【0062】
その後、主制御部20は、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS19)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS19:NO)、ステップS12へ移行して、入金口10から紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送し、上述したように識別部11で紙幣Sを識別する。これに対し、入金口10の紙幣Sが全てなくなると(ステップS17:YES,ステップS19:YES)、繰出しを終了し、表示入力領域63に紙幣Sの金種、枚数、合計金額を表示する。
【0063】
なお、利用者は返却口12に搬送された紙幣Sを入金口10に再度投入し、開始/終了ボタン62を再度押してもよい。何度、通常入金モードにて入金処理を行っても返却口12へ返却される紙幣Sについては、次に示す図11あるいは図12に示す強制入金モードにて入金処理を行う。
【0064】
図11および図12は強制入金モードの入金処理手順を示すフローチャートである。
利用者は強制入金ボタン53を選択した後、表示入力領域63に強制入金にて入金する金種情報および枚数情報を入力し(ステップS21)、入金口10に紙幣Sを投入して開始/終了ボタン62を押すと、主制御部20は入金口紙幣検知センサ17の検知出力により入金口10に紙幣Sが有り、かつ紙幣Sの入金指示があったと判断して(ステップS22:YES)、紙幣Sを入金口10から繰出して識別部11へ搬送する(ステップS23)。
【0065】
識別部11では枚数検知センサ14と判別検知センサ16により枚数と金種を識別する(ステップS24)。合わせて、識別部11はカメラ15により紙幣Sの表裏画像を取得する(ステップS25)。その後、紙幣Sは強制入金庫3に収納される(ステップS26)。
【0066】
収納後、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS27)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS27:NO)、ステップS23へ移行して、入金口10から紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送し、上述したように識別部11で紙幣Sの枚数と金種を識別する。入金口10の紙幣Sが全てなくなると(ステップS27:YES)、繰出しを終了する。
【0067】
繰出された紙幣に対してはステップS28において、主制御部20が当該強制入金処理での枚数が全て識別されたか否かを判定する。枚数が確定しない場合(ステップS28:NO)は当該強制入金取引の取引管理情報28を「3」(要確認3)と設定し(ステップS22)、強制入金を終了する。利用者は上述したように返却紙幣詳細画面81にて強制入金した紙幣の表裏画像82と取引管理情報の表示84にて取引ステータスが「3」(要確認3)であることを確認することができる。
【0068】
なお、枚数が確定しない場合とは、入金口10からの繰出し時に連れ出しや2枚出し等が発生し、識別部11にて枚数が認識できない場合を含む。
【0069】
一方、ステップS28において、枚数が確定した場合(ステップS28:YES)、次に当該強制入金取引内の全ての紙幣Sについて金種が識別されたか否かを判定する(ステップS29)。全ての金種が確定しない場合(ステップS29:NO)は当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS23)、強制入金を終了する。
【0070】
全ての金種が確定し(ステップS29:YES)、識別された枚数情報と金種情報が利用者から入力された枚数情報と金種情報と一致するか否かを判定し(ステップS30)、一致した場合(ステップS30:YES)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「1」(要確認1)と設定し(ステップS31)、逆に、一致しなかった場合(ステップS30:NO)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS33)、それぞれ強制入金を終了する。
【0071】
以上の手順によると、流通過程で傷んだ紙幣であっても利用者は一旦装置内に全ての現金を収納させることができる。また、紙幣入金機1の管理者が強制入金庫3に収納された取引について画像データ上から各強制入金取引の有効性を精査する際には、取引管理情報28を使用することで、取引管理情報28が「2」(要確認2)、「3」(要確認3)の取引についてのみ注意深く取引データを確認すればよくスムーズかつ効率的に精査を進めることができる。
【0072】
さらに、管理者が強制入金取引の管理手間を低減させるには、強制入金時に識別部11で紙幣枚数が識別できない場合、返却口12へ一旦返却してもよい。
【0073】
さらに、図12において、利用者は選択入力画面51で強制入金ボタン53(図5参照)を選択した後、表示入力領域63に強制入金にて入金する金種情報および枚数情報を入力し(ステップS40)、入金口10に紙幣Sを投入して開始/終了ボタン62を押すと、主制御部20は入金口紙幣検知センサ17の検知出力により入金口10に紙幣Sが有り、かつ紙幣Sの入金指示があったと判断し(ステップS41:YES)、紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送する(ステップS42)。
【0074】
識別部11では枚数検知センサ14と判別検知センサ16により枚数と金種を識別する(ステップS43)。合わせて、識別部11はカメラ15により紙幣Sの表裏画像を取得する(ステップS44)。ここで、主制御部20は枚数が識別されたか否かを判定する(ステップS45)。枚数が確定しない場合は(ステップS45:NO)、紙幣Sを識別部11から返却口12へ搬送して返却する(ステップS52)。
【0075】
返却後、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS53)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS53:NO)、ステップS42へ移行して、入金口10から紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送し、上述したように識別部11で紙幣Sの枚数と金種を識別する。入金口10の紙幣Sが全てなくなると(ステップS53:YES)、入金処理を終了する。なお、利用者は返却口12に搬送された紙幣Sを入金口10に再度投入し、開始/終了ボタン62を再度押してもよい。
【0076】
一方、識別部11にて枚数が確定した場合(ステップS45:YES)、紙幣Sは強制入金庫3に収納される(ステップS46)。収納後、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS47)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS47:NO)、ステップS42へ移行して、入金口10から紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送し、上述したように識別部11で紙幣Sの枚数と金種を識別する。
【0077】
入金口10の紙幣Sが全てなくなると(ステップS47:YES)、繰出しを終了する。次に、ステップS48において、当該強制入金取引内の全ての紙幣Sについて金種が識別されたか否かを判定する。全ての金種が確定しない場合(ステップS48:NO)は当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS51)、強制入金を終了する。
【0078】
全ての金種が確定し(ステップS48:YES)、識別された枚数情報と金種情報が利用者から入力された枚数情報と金種情報と一致するか否かを判定し(ステップS49)、一致した場合(ステップS49:YES)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「1」(要確認1)と設定し(ステップS50)、逆に、一致しなかった場合(ステップS49:NO)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS51)、それぞれ強制入金を終了する。
【0079】
以上の手順によると、強制入金庫内の紙幣は少なくとも枚数が確定しており、管理者は画像データ上から特に金種に関する情報に注力して精査すればよく、管理手間を軽減させることができる。
【0080】
また、図13に強制入金取引終了後のデータ処理手順のフローチャートを示す。強制入金が終了した後、識別部11により取得した紙幣の表裏画像と利用者の口座番号、利用した紙幣入金機1の端末番号、日付等の利用者情報を関連付け、強制入金取引毎に取引データを作成する(ステップS61)。
【0081】
関連付ける方法としては、視認性を保つため紙幣画像上の記番号や肖像画を避けた背景部分に利用者情報を上書きすることで利用者情報付きの画像データとすることができる。具体的には、強制的に収納された紙幣の少なくとも片面の紙幣画像データを画像データ取得手段としてCCDカメラ等の鮮明に撮影可能なカメラ15が取得し、そのカメラ15で取得した前記紙幣画像データを紙幣の受入情報として記憶するものである。
【0082】
これにより、どんな紙幣であっても、入金された紙幣の画像データを取得することで、証拠としての履歴を残すことができるだけでなく、強制入金庫3内の紙幣が、精査時に誰によって入金されたものであるかを明確にすることが可能となる。
【0083】
あるいは利用者情報をテキストデータとして保存し、テキストデータと紙幣画像データとを一括りのデータとして管理してもよい。すなわち、テキストデータと紙幣画像データとを合成させてもよい。この際、改ざん防止を図って利用者情報を画像データに変換し、該変換した画像データを前記紙幣画像データに合成させるとよい。この合成に際しては合成手段としての主制御部20により合成させることができる(図14参照)。これにより、関連付けられた複数のファイルを開くのではなく、一つの画像データにて全ての情報が含まれている。これにより、管理上も都合がよいだけでなく、視認性が高められる。
【0084】
さらに、取引データに電子透かしを付与することで改ざん防止の処理を行うようにしてもよい(ステップS62)。この際は、紙幣画像データに電子情報を埋め込むことで改ざん防止が可能となり、画像データの信頼性および証拠性を一層高めることが可能となる。電子透かし以外にも取引データ毎にパスワードを設定する方法でもよい。
【0085】
以上の手順によると、利用者が行った強制入金取引の履歴を確実に残すことができるとともに、利用者が強制入金処理を行った後、管理者が強制入金取引の精査を行うまでの間に取引データの改ざんが行われていない保証となり、信頼性のある取引成立した確かなデータとして利用者および管理者が利用できる。すなわち、従来の封筒入金の運用に代わる入金手段として取引履歴を確保して取引できるので、特に利用者は不安がなくなり心理的な障壁が解消される。
【0086】
さらに、利用者が強制入金の取引データ処理を紙幣入金機1の表示操作部24で視覚的に確認する手段として、図14に強制入金取引時の動画表示による案内画面の一例を示す。
142は封筒を示し、利用者の口座番号、利用した紙幣入金機1の端末番号、日付を含む利用者情報が印字されている。143は封筒内の紙幣画像を再度確認する際に使用する内容確認ボタン、144は強制入金取引を完了させる完了ボタンである。
【0087】
図8にも示したように、強制入金取引の返却紙幣詳細画面81で利用者は紙幣の表裏画像82を確認し、確認ボタン85を押すと、表裏画像82は画面上の仮想の封筒83に吸い込まれるように装填される。その後、図14に示す仮想の封筒142上に利用者情報が印字されたかのように上書きする。
【0088】
内容確認ボタン143を押すと、再度、返却紙幣詳細画面81が表示され、中身の紙幣画像を確認することができる。このような表示切替を可能にすることで利用者はあたかも今までの封筒入金の運用と同じように、利用者の紙幣が封筒内に収められており、かつ受入情報と利用者情報とが関連付けられていることが直感的に理解することができる。
【0089】
完了ボタン144を押すと、画面145、147に示すように印字された封筒142が仮想の金庫146に投函される様子が動画で表示される。これにより、利用者の強制入金紙幣がデータ上も紙幣入金機1で確かに管理されていることが視覚的に表現されて理解し易くなる。
【0090】
以上述べた実施形態においては、利用者が紙幣入金機1の表示操作部24を操作して、紙幣入金機1に直接指示を行う場合を例に挙げた。これに対し、紙幣入金機1に記憶されている情報を表示させて管理者に視認させることにより電子データ上で間接的に精査する実施形態を次に説明する。
【0091】
この紙幣の精査に際しては、管理者が紙幣入金機1の表示操作部24を直接操作して強制入金取引のステータス情報を確認、精査してもよいし、図15に示すように紙幣入金機1を、通信回線158を介して有価媒体管理装置としての上位装置151と接続し、管理者が上位装置151を操作して、該上位装置151から強制入金取引された紙幣入金機1のステータス情報を確認、精査するようにしてもよい。
【0092】
前記管理者が表示操作部24を用いて強制入金取引のステータス情報を確認、精査する際、利用者と管理者とで単一の表示操作部24を使い分けて表示するように表示内容を適宜利用者用と管理者用とに切り替えることで実現できる。また、前記表示操作部24とは別に、該紙幣入金機1の例えば背面扉の内面に管理者専用の表示操作部を備えて管理するように構成してもよい。
【0093】
図15は既述した紙幣入金機1と上位装置151とを接続して構成される紙幣処理システムの一例を示している。ここに用いられる紙幣入金機1は上述したように、利用者を特定する利用者情報を入力させる利用者入力部としてのカード読取部23と、取引される紙幣を受入処理する入金口10と、紙幣を識別対象として該識別対象の紙幣情報を識別する識別部11と、入金口10より受け入れた紙幣に関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶する記憶部としてのRAM22と、識別部11の識別結果に基づいて受付許可された紙幣を該紙幣入金機1の内部に確定して収納する確定収納部4A〜4Dと、入金口10より入金された紙幣を該紙幣入金機1の内部に確定せずに強制的に収納する強制入金庫3と、該強制入金庫3に強制的に収納された紙幣の少なくとも片面の紙幣画像データを取得するカメラ15とを備えている。
【0094】
一方、上位装置151には、強制入金庫3に強制収納された紙幣に関する紙幣画像データを含む受入情報と利用者情報とを関連付けた情報を取得して管理する制御部152が備えられている。この制御部152は通信部153を介して紙幣入金機1と接続されており、ROM154に格納されたプログラムに沿って入金取引されたデータを制御し、その制御データをRAM155で読出し可能に記憶している。
【0095】
そして、該制御部152が管理している紙幣の紙幣画像データを表示して管理者に視認させる表示部156と、強制入金庫3に強制的に収納された紙幣に関する受入情報に管理者による指示情報を入力許容させる管理者入力部157を備えている。この上位装置151は例えば紙幣の画像を液晶表示する表示部156とキーボード等の管理者入力部157を備えたパーソナルコンピュータで構成することができる。
【0096】
なお、上位装置151には多数台の紙幣入金機1を遠隔監視できるように通信接続されており、この上位装置151側から管理者が任意に遠隔位置の紙幣入金機1の精査を実行できるようになっている。
【0097】
このように上位装置151には紙幣入金機1のRAM22から取得した情報を管理者に視認させる表示部156と管理者により指示される指示情報を入力操作させる入力部としての管理者入力部157を備えている。ここで入力される指示情報としては、例えば後述する図17では入金取引を保留させるか、完了させるかの指示情報に該当し、保留ボタン176または完了ボタン177が押下されることにより操作される。
【0098】
上述のような構成としたことで、管理者にとって紙幣画像データは直感的で分かり易い強制収納取引の履歴情報となり、管理者は精査の際に、収納部の紙幣を確認するのではなく、紙幣画像データ上で金種や枚数の識別結果に基づき、識別できなかった項目にのみ注意して目視確認すれば、紙幣入金機1に直に携わらなくても正確で容易に精査することができる。
【0099】
このため、確認作業の効率がよく、画像データ主体の運用が実現できることから、例えば集中管理センタのような遠隔施設から複数の装置を対象とした精査作業の実現が可能となる。
【0100】
さらに、全て画像データ上で管理できるので上位装置151から管理者が識別したり、必要情報を指示したりすることができる。また、識別不明な紙幣に対して手作業によらず、画像上で能率よく処理できる。
【0101】
ことに、紙幣入金機1に未確定で収納した紙幣について、管理者が目視可能に精査することで、損券紙幣など従来の装置では識別不能紙幣として扱えなかった紙幣を正常紙幣として扱えることになり、紙幣運用上での利便性を格段に向上させることができる。
【0102】
図16は上位装置151に表示される精査表示画面の一例を示す表示図である。この上位装置151の表示部156には、各強制入金取引のステータス情報を表す表示領域161を有している。このうち、上部の1段目領域162には強制入金取引データを2件読取確認できたことを表わす取引管理情報「1」(要確認1)が表示されている。2段目領域163には枚数は確認できたが金種が未確認であることを表わす取引管理情報「2」(要確認2)が1件表示されている。3段目領域164には搬送異常等で枚数が未確認であることを表わす取引管理情報「3」(要確認3)が1件表示されている。
【0103】
図17は上位装置151の表示部156に、電子データとして封入されている封筒内の具体的な情報を表わしている。管理者が取引データを表示するように管理者入力部157により入力指示すると、表示部156には、利用者から申請された金種情報と枚数情報171と強制入金時に取得した紙幣の表裏画像172が並べて表示される。さらに、このとき金種情報と枚数情報171と紙幣の表裏画像172とを比較し、申請額に誤りがなければ入金取引を完了させるために完了ボタン177を押す。この際、正常な紙幣であることが認められたので通常入金モードで入金確定したときとデータ上同じ扱いとする。173はスクロールバー、174は落書き、175は紙幣の破損部分を示している。
【0104】
なお、表示部156に取引データを表示させて比較した際に、管理者が見て例えば偽券と認められるような場合は入金取引を保留とするために管理者が保留ボタン176を押す。そして、管理者は必要に応じて強制入金庫3の現物紙幣を確認すればよい。この際、管理者が確認したい強制入金取引の紙幣を強制入金庫から効率よく抽出するためには、後述する紙幣仕分け機180を使用してもよい。
【0105】
図18は紙幣仕分け機180の紙幣仕分け処理システムの概略構成を示す図であって、強制入金庫3が回収される場所に設置される。
この紙幣仕分け機180は内部に紙幣Sを投入する入金口181、識別部11、スタッカ182A〜182C、振分ゲート183を内蔵し、紙幣仕分け機180は前記した上位装置151と接続されている。
【0106】
管理者は紙幣入金機1の強制入金庫3から紙幣Sを取り出し、入金口181へ投入すると、入金口181から繰出された紙幣は前記識別部11と同機能を有する識別部11へ搬送され、表裏画像が取得される。ここで取得された表裏画像と、強制入金時に取得した紙幣の表裏画像82とを上位装置151経由で比較することにより、紙幣仕分け機180は管理者が確認必要とする強制入金取引時の紙幣のみを特定のスタッカ(例えば182B)に振り分ることが可能となる。なお、強制入金時に取得した紙幣の表裏画像82は接続された上位装置151経由以外にも、強制入金庫3に内蔵されたメモリに記録させ、このメモリを紙幣仕分け機180が参照してもよい。
【0107】
以上の手順によると複数の強制入金取引紙幣が混在している強制入金庫内から前記図17で保留指示された紙幣のみを容易に取り出すことができ、管理者の強制入金取引の精査手間を軽減させることが可能となる。
【0108】
また、上記実施形態では、この発明に関わる有価媒体処理装置を、紙幣を入金する紙幣入金機とした場合を例に挙げているが、この発明はこれに限定するものではなく、これ以外に硬貨を受け付けて入金する硬貨入金機や、紙幣あるいは硬貨の出金も同一装置で行う紙幣入出金機、硬貨入出金機であってもよい。さらには、紙幣ではなく商品券やクーポン券といった有価証券であってもよい。
【0109】
上述した紙幣入金機1は、最初通常入金モードで紙幣を受け付け、取引開始した時に読取不能な返却紙幣が生じた際に、再度通常入金モードにするか、強制入金モードに移行するかを選択させる入金モードを利用者により選択させるという方法で対処している。
【0110】
これに対し、最初から強制入金モードで紙幣を受け付けて入金処理を実行させるという運用プログラムを採用して構成することもできる。以下、その方法を後述する実施例2で説明する。
【実施例2】
【0111】
この実施例2は実施例1と比較して紙幣入金機1の構造は同じであり制御プログラムが一部異なるのみである。このため、異なる制御プログラムの部分について説明する。
ここでの制御プログラムは、紙幣の受入処理時に、識別部11の識別結果に基づいて受付許可された紙幣を前記確定入金庫4A〜4Dに収納させる一方、受付拒否された紙幣を前記強制入金庫3に収納させるとともに、関連付けられた関連情報を前記RAM22に記憶させる機能を備えた構成である。
【0112】
このような構成としたことで、損券紙幣が入金された場合に、識別部11が当該紙幣を異常紙幣であると誤識別した際でも、返却することなく該紙幣を装置内部に収納させることができる。これにより、取引される紙幣の損券度合いに関わらず受け付けた紙幣を全て装置内部に収納させる強制入金機として使用できる。したがって、利用者は返却紙幣を受け取らなくなり、1回の入金で全ての紙幣が確実に内部に取り込まれて入金取引が完了するため、手間が省けて極めて簡単な入金操作となる。
【0113】
図19は強制入金モードでの入金処理手順を示したフローチャートであり、図20は図19に続く強制入金モードのフローチャートである。
図19において、利用者が通常入金ボタン52を選択した後、入金口10に紙幣Sを投入して開始/終了ボタン62を押すと、主制御部20は入金口紙幣検知センサ17の検知出力により入金口10に紙幣Sが有り、かつ紙幣Sの入金指示があったと判断し(ステップS71:YES)、紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送する(ステップS72)。識別部11で真偽判定や金種判定等の複数の判定項目に基づいて紙幣Sが正常であるか異常であるかを識別する(ステップS73)。
【0114】
合わせて、識別部11はカメラ15により紙幣Sの表裏画像を取得する(ステップS74)。主制御部20は識別部11によって紙幣Sが正常と識別されたか否かを確認し(ステップS75)、正常と識別されていると(ステップS75:YES)、紙幣Sを識別部11から指定されたいずれかの確定入金庫4A〜4Dへ搬送する(ステップS76)。
【0115】
搬送後は、入金口10の紙幣Sが全てなくなったか否かを判定し(ステップS77)、入金口10に未だ紙幣Sがあれば(ステップS77:NO)、ステップS72へ移行して、入金口10から紙幣Sを繰出して識別部11へ搬送し、上述したように識別部11で紙幣Sを識別する。
【0116】
一方、ステップS75において、識別部11によって紙幣Sが異常と識別されると(ステップS75:NO)、紙幣Sを識別部11から未確定のまま強制入金庫3へ搬送して強制入金する(ステップS78)。
【0117】
強制入金された紙幣に対してはステップS79において、主制御部20は当該強制入金処理での枚数が全て識別されたか否かを判定する。枚数が確定しない場合は(ステップS79:NO)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「3」(要確認3)と設定し(ステップS83)、強制入金を終了する。利用者は上述したように返却紙幣詳細画面81にて強制入金した紙幣の表裏画像82と取引管理情報表示84にて取引ステータスが「3」(要確認3)であることを確認することができる。
【0118】
一方、ステップS79において、枚数が確定した場合(ステップS79:YES)、次に当該強制入金取引内の全ての紙幣Sについて金種が識別されたか否かを判定する(ステップS80)。全ての金種が確定しない場合(ステップS80:NO)は当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS84)、強制入金を終了する。
【0119】
全ての金種が確定し(ステップS80:YES)、識別された枚数情報と金種情報が利用者から入力された枚数情報と金種情報と一致するか否かを判定し(ステップS81)、一致した場合(ステップS81:YES)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「1」(要確認1)と設定し(ステップS82)、逆に、一致しなかった場合(ステップS81:NO)、当該強制入金取引の取引管理情報28を「2」(要確認2)と設定し(ステップS84)、それぞれ強制入金を終了する。
【0120】
以上の手順によると、流通過程で傷んだ紙幣であっても利用者は一旦装置内に全ての現金を収納させることができる。また、紙幣入金機1の管理者が強制入金庫3に収納された取引について画像データ上から各強制入金取引の有効性を精査する際には、取引管理情報28を使用することで、取引管理情報28が「2」「3」の取引についてのみ注意深く取引データを確認すればよくスムーズかつ効率的に精査を進めることができる。
【0121】
図21は既述した紙幣入金機1とPOS(販売時点情報管理)システム211とを接続して構成した利用者の入金利用能率の向上を図った一例を示している。
この紙幣入金機1をPOSシステム211に接続して構成した場合、利用者のPOS端末212より事前に入力してデータ収集させた入金データはPOS通信網213を介してPOSサーバ214で管理される。このPOSサーバ214と紙幣入金機1とを通信回線で接続することにより、利用者のPOS端末212と紙幣入金機1とを連動させることができ、紙幣入金機1での売上金の入金操作前に利用者のIDカードに基づいて枚数情報と金種情報とをオンラインで能率よく取得させることが可能になる。
【0122】
これにより、紙幣入金機1での入金操作時に利用者が入金する紙幣束の金種と枚数を利用者が把握しておき、かつ入金時点で入力操作するような入力操作の手間を省略することができ、能率のよい入金利用を図ることができる。
【0123】
この発明は上述の実施例の構成に限らず、様々な構成の実施態様を得ることができる。例えば、上述の実施例の一例では紙幣入金機1と上位装置151とを接続した組み合わせ例を示したが、これに限らず紙幣入金機1自体に管理機能を持たせて単独で使用してもよく、また管理機能を持たせた紙幣入金機1にさらに上位装置151を接続して精査利用する場所を選択できるように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
売上金入金機などの紙幣、硬貨、有価証券等の有価媒体を取引させる装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1…紙幣入金機
2…紙幣処理部
3…強制入金庫
4A〜4D…確定入金庫
10…入金口
11…識別部
15…カメラ
20…主制御部
22…RAM
23…カード読取部
24…表示操作部
51…選択入力画面
63…表示入力領域
151…上位装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を特定する利用者情報を入力させる入力部と、
取引される有価媒体を受入処理する受入口と、
前記受入口より受け入れた有価媒体を識別対象として該識別対象の有価媒体情報を識別する識別部と、
該有価媒体に関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記識別部の識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を確定して収納する確定収納部と、
有価媒体を確定せずに強制的に収納する際に収納する強制収納部とを備えた
有価媒体処理装置。
【請求項2】
前記有価媒体の受入処理時に、
前記識別部の識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を前記確定収納部に収納させ、受付拒否された有価媒体を返却する識別受付モードと、
前記受け入れた有価媒体を前記識別部の識別結果に関わらず、前記強制収納部に収納させ、
前記記憶部に前記関連付けされた情報を記憶させる強制収納モードとのいずれか一方に制御する制御手段を備えた
請求項1に記載の有価媒体処理装置。
【請求項3】
前記識別受付モードで受付拒否されて返却された有価媒体があったとき、該返却された有価媒体の再受付時に、前記識別受付モードを実行するか前記強制収納モードを実行するかを選択可能にする選択手段を備えた
請求項2に記載の有価媒体処理装置。
【請求項4】
前記有価媒体の受入処理時に、
前記識別部の識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を前記確定収納部に収納させる一方、受付拒否された有価媒体を前記強制収納部に収納させるとともに、前記記憶部に前記関連付けされた情報を記憶させる制御手段を備えた
請求項1に記載の有価媒体処理装置。
【請求項5】
前記有価媒体の種類と枚数とを利用者により入力させる利用者入力手段を備え、
前記記憶部は、
前記強制収納部に強制的に収納される有価媒体に関する少なくとも種類と枚数とを識別した識別結果情報を前記受入情報として記憶する
請求項2、3または4に記載の有価媒体処理装置。
【請求項6】
前記強制収納部に強制的に収納された前記有価媒体の少なくとも片面の有価媒体画像データを取得する画像データ取得手段を備え、
前記記憶部は、
前記有価媒体画像データを前記受入情報として記憶する
請求項2〜5のいずれか1項に記載の有価媒体処理装置。
【請求項7】
前記記憶部に前記受入情報として記憶されている前記有価媒体画像データに前記利用者情報を合成させる合成手段を備えた
請求項6に記載の有価媒体処理装置。
【請求項8】
前記有価媒体画像データに、
電子透かし処理する電子透かし手段を備えた
請求項6または7に記載の有価媒体処理装置。
【請求項9】
前記強制収納部に強制的に収納された有価媒体に関する前記受入情報と前記利用者情報との関連付けられた情報を表示させて管理者に視認させる表示部を備え、
前記入力部は前記関連付けられた情報に対し、管理者により指示情報を入力許容させる構成をさらに備えた
請求項6〜8のいずれか1項に記載の有価媒体処理装置。
【請求項10】
前記利用者情報は、
日付情報と、利用者本人を特定する特定情報とを備えている
請求項1〜9のいずれか1項に記載の有価媒体処理装置。
【請求項11】
有価媒体を処理する有価媒体処理装置と、該有価媒体処理装置と通信回線を介して接続した有価媒体管理装置とを備えた有価媒体処理システムであって、
前記有価媒体処理装置には、
利用者を特定する利用者情報を入力させる利用者入力部と、
取引される有価媒体を受入処理する受入口と、
該有価媒体を識別対象として該識別対象の有価媒体情報を識別する識別部と、
前記受入口より受け入れた有価媒体に関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶する記憶部と、
前記識別部の識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を確定して収納する確定収納部と、
有価媒体を確定せずに強制的に収納する際に収納する強制収納部と、
前記強制収納部に強制的に収納された前記有価媒体の少なくとも片面の有価媒体画像データを前記受入情報として取得する画像データ取得手段とを備え、
前記有価媒体管理装置には、
前記有価媒体処理装置の記憶部に記憶されている前記強制収納部に強制収納された有価媒体に関する前記有価媒体画像データを含む前記受入情報と前記利用者情報とを関連付けた情報を取得して管理する制御部と、
前記制御部が管理している前記有価媒体に関する前記受入情報と前記利用者情報との関連付けられた情報を表示して管理者に視認させる表示部と、
前記強制収納部に強制的に収納された有価媒体に関する前記関連付けられた情報に対し、管理者により指示情報を入力許容させる管理者入力部とを備えた
有価媒体処理システム。
【請求項12】
利用者を特定する利用者情報を取得する利用者情報取得ステップと、
取引される有価媒体を受入処理する受入ステップと、
前記受入ステップより受け入れた有価媒体を識別対象として該識別対象の有価媒体情報を識別する識別ステップと、
前記受入ステップにより受け入れた有価媒体に関する受入情報と前記利用者情報とを関連付けて記憶する記憶ステップと、
前記識別ステップの識別結果に基づいて受付許可された有価媒体を確定して確定収納部に収納する確定収納ステップと、
有価媒体を確定せずに強制的に収納する際に強制収納部に収納する強制収納ステップとを備えた
有価媒体処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図7】
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【図8】
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【図14】
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【図17】
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