説明

有利なμ−オピエート受容体ペプチド化合物

本発明は、μ-オピエート受容体ペプチドの有利な新しい塩を提供する。これらの塩は、その活性の点で優れた特性を有することが見出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、μ(モルヒネ)オピエート受容体に高い親和性および選択性で結合するペプチドの塩および遊離塩基;有効量の化合物を含有する薬学的調製物;ならびに有効量のペプチド化合物を含有する、無痛法、下痢などの胃腸障害からの軽減、および薬物依存療法を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
オピエート受容体に結合することによってオピエート様活性を示す多くのペプチドが発見されている。3種類のオピエート受容体デルタ(δ)、カッパ(κ)およびミュー(μ)が発見されてきた。オピエートの推定される主な機能は、疼痛緩和における役割である。オピエートが治療において使用するのに適している他の領域は、胃腸障害、統合失調症、肥満、血圧、痙攣、および発作に関する状態である。δ受容体およびκ受容体もまた無痛を媒介し得るが、μ受容体の活性化は無痛誘導の主要かつ最も有効な手段であり、モルヒネが作用する主要な機構である。
【0003】
モルヒネおよび臨床上の有用性のある他の化合物は主にμ受容体で働くので、この部位に対して高い親和性および選択性を有するペプチドを有する薬学的組成物は極めて重要である。簡単で、効率的で、かつ経済的なやり方で、これらのペプチド組成物を生成することが望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0004】
簡単な概要
本発明は、μ-オピエート受容体ペプチドの有利な新しい塩および遊離塩基を提供する。これらの化合物は、優れた活性を有することが見出されている。
【0005】
本明細書において具体的に例示されるものは、μ-オピエート受容体ペプチドの酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩、ならびに本ペプチドの遊離塩基である。
【0006】
本発明に従って使用することができるペプチドは、一般式Tyr-X1-X2-X3を有する。式中、X1は、Pro、D-Lys、またはD-Ornであり、X2は、Trp、Phe、またはN-アルキル-Pheであり、アルキルは1〜約6個の炭素原子を含有し、かつX3は、Phe、Phe-NH2、D-Phe、D-Phe-NH2、またはp-Y-Pheであり、Yは、NO2、F、Cl、またはBrである。
【0007】
特定の有利な態様において、本発明は、環式エンドモルフィン-1ペプチド(本明細書ではCYT-1010と命名した)の酢酸塩を提供する。
【0008】
本発明は、これらの有利なペプチド化合物を含む薬学的組成物をさらに提供する。
【0009】
本発明は、本明細書に記載の塩、遊離塩基、および組成物を利用する治療方法をさらに提供する。
【0010】
本発明は、本発明の化合物を調製する方法をさらに提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
配列の簡単な説明
SEQ ID NO:1は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:2は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:3は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:4は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:5は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:6は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:7は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:8は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:9は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:10は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:11は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NO:12は、本発明の有用なペプチドである。
SEQ ID NOS:13〜26は、本発明の有用なさらなるペプチドである。
【0012】
詳細な開示
本発明は、高い親和性、選択性、および効力でμ(モルヒネ)オピエート受容体に結合する有利なペプチド塩および遊離塩基を提供する。
【0013】
本明細書において具体的に例示されるものは、μ-オピエート受容体ペプチドの酢酸塩およびトリフルオロ酢酸(TFA)塩、ならびにその遊離塩基である。
【0014】
有利なことに、本発明の化合物は、活性の点で優れた特性を有する。
【0015】
本発明はまた、有効量の1種類または複数の種類のペプチド塩および/または遊離塩基を含有する薬学的調製物を提供する。本発明は、無痛法、下痢などの胃腸障害からの軽減、抗炎症治療、および薬物依存療法を提供する方法をさらに提供する。この方法は、このような治療を必要とする患者に、有効量の1種類または複数の種類の本発明のペプチド化合物を含有する組成物を投与する工程を伴う。
【0016】
ペプチド
本発明に従って使用することができるペプチドは、一般式Tyr-X1-X2-X3を有する。式中、X1は、Pro、D-Lys、またはD-Ornであり、X2は、Trp、Phe、またはN-アルキル-Pheであり、アルキルは1〜約6個の炭素原子を含有し、かつX3は、Phe、Phe-NH2、D-Phe、D-Phe-NH2、またはp-Y-Pheであり、Yは、NO2、F、Cl、またはBrである。本発明の好ましいペプチドの一部は、以下である。

【0017】
列挙した最後の14個のペプチドは、直線の一次アミノ酸配列がSEQ ID NO:13〜SEQ ID NO:26に示されている環式ペプチドである。こういった意味合いで、出願人は、米国特許第6,303,578号の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0018】
SEQ ID NO:1のペプチドは、μオピエート受容体に対して高度に選択的でありかつ非常に抗力があり、δ受容体に対する結合は4000倍弱く、κ受容体に対する結合は15,000倍弱く、このために、副作用の可能性は小さい。
【0019】
本発明のペプチドは、適切な保護基およびカップリング剤を用いる従来の溶相法(Bodansky, M., Peptide Chemistry: A Practical Textbook, 2nd Edition, Springer-Verlag, New York (1993))または固相法(Stewart, J.M.; Young. J.D. Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, 1984)によって調製することができる。次いで、特定の保護基または全ての保護基を除去するために、固相合成が適用された場合の樹脂の分離を含めて、適切な脱保護法を使用することができる。
【0020】
直鎖ペプチドの環化は、例えば、ペプチドの位置2にあるProを適切なジアミノカルボン酸に置換し、2位置の側鎖アミノとC末端カルボキシ官能基を環化反応することによって行うことができる。環化反応は、ジフェニルホスホリルアジド法を用いて行うことができる(Schmidt, R.. Neuhert, K., Int. J. Pept. Protein Res. 37:502-507, 1991)。
【0021】
固相合成を用いて合成したペプチドは、適切な酸化防止剤およびスカベンジャーの存在下で、液体フッ化水素(HF)を用いて樹脂から分離することができる。
【0022】
反応を促進しかつ効率的に完了させるのに必要な条件と同様に、この反応において用いられる反応物の量は、反応条件の違いおよび反応物の特性に応じて大きく異なる場合がある。
【0023】
望ましい生成物は、結晶化、電気泳動、抽出、クロマトグラフィー、または他の手段によって反応混合物から単離することができる。しかしながら、好ましい単離方法はHPLCである。粗ペプチドは全て調製用HPLCによって精製することができ、ペプチドの純度は分析用HPLCによってチェックすることができる。HPLCを用いて、95%超の純度の合成された化合物を得ることができる。
【0024】
本明細書において具体的に例示される好ましい態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:13(環式エンドモルフィン-1ペプチド)として示され、かつ以下の構造:

を有するペプチドである。
【0025】
薬学的組成物
本発明はまた、薬学的に有効な量の本発明のペプチド塩および薬学的に許容される担体またはアジュバントを含有する薬学的調製物を提供する。担体は、外用、経腸用途、または非経口用途に適した、有機担体でも無機担体でもよい。
【0026】
本発明のペプチド塩は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル、リポソーム、坐剤、鼻腔内スプレー、溶剤、エマルジョン、懸濁剤、エアゾール剤、標的化学送達系(Prokai-Tatrai. K.; Prokai, L; Bodor, N., J. Med. Chem. 39:4775-4782, 1991)、および使用に適した他の任意の形態のための、通常の無毒な薬学的に許容される担体と共に調合することができる。使用することができる担体は、水、グルコース、ラクトース、アラビアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイドシリカ、バレイショデンプン、尿素、および固体、半固体、液体、またはエアゾールの形をした、調製物の製造において使用するのに適した他の担体であり、さらに、補助剤、安定化剤、増粘剤および着色剤、ならびに香料が用いられてもよい。
【0027】
治療方法
本発明はまた、ヒトを含む哺乳動物などの患者において、無痛法、下痢などの胃腸障害からの軽減、および薬物依存療法を提供する方法を提供する。この方法は、有効量の本発明のペプチドまたはその塩を患者に投与する工程を含む。下痢は、感染症、コレラ、または癌療法に用いられる薬物もしくは療法を含む様々な薬物もしくは療法の作用もしくは副作用などの多数の原因によって引き起こされ得る。本発明のペプチド塩をヒトに適用するために、非経口投与または経腸投与によって本発明のペプチド塩を投与することが好ましい。
【0028】
本発明のペプチド塩はまた、抗炎症治療を提供するのに使用することもできる。こういった意味合いで、出願人は、U.S.2004/0266805の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0029】
有効量のペプチドの投与は、治療しようとする患者一人一人の年齢および状態によって異なり、また、これらに依存する。しかしながら、適切な単位投与量は約0.01〜約100mgであり得る。例えば、単位用量は約0.2mg〜約50mgであり得る。このような単位用量は、1日に複数回、例えば、1日2回または1日3回投与されてもよい。
【0030】
本明細書において言及または引用された全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明白な開示と一致しない程度まで、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0031】
以下は、本発明の局面を例示する実施例である。本実施例は限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0032】
実施例1-活性
アッセイは標準的なラットのテールフリックアッセイであった。試験用の剤は、20%PEG中の懸濁液として静脈内に投与した。
【0033】

【0034】
本明細書に記載の実施例および態様は例示にすぎず、これを考慮して様々な変更または変化が当業者に示唆され、本願の精神および範囲の中に含まれることが理解されるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドが、SEQ ID NO:1〜26より選択される配列を有し、かつペプチド化合物が、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、および遊離塩基からなる群より選択される、ペプチド化合物。
【請求項2】
ペプチドがSEQ ID NO:13である、請求項1記載のペプチド化合物。
【請求項3】
塩が酢酸塩である、請求項2記載のペプチド化合物。
【請求項4】
ペプチドが、SEQ ID NO:1〜16より選択される配列を有し、かつペプチド化合物が、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、および遊離塩基からなる群より選択される、ペプチド化合物を含む薬学的組成物。
【請求項5】
ペプチドがSEQ ID N0:13である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
塩が酢酸塩である、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
μ-オピエート受容体活性によって調節される状態を治療するための方法であって、
該方法が、このような治療を必要とする患者に、ペプチドの遊離塩基または塩を投与する工程を含み、該ペプチドが、SEQ ID NO:1〜26より選択される配列を有し、かつ該塩が、酢酸塩およびトリフルオロ酢酸塩からなる群より選択される、方法。
【請求項8】
ペプチドがSEQ ID NO:13である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
塩が酢酸塩である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
無痛法を提供するために、または胃腸障害、炎症、および薬物依存からなる群より選択される状態を治療するために用いられる、請求項7記載の方法。

【公表番号】特表2013−504619(P2013−504619A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529763(P2012−529763)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/043482
【国際公開番号】WO2011/034659
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(510163938)サイトジェル ファーマ リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】